──宮殿
女勇者「……」
国王「ふむ、おぬしが噂の勇者の末裔か? これはこれは、うら若き乙女だとは思わなんだ」
女勇者「……速やかに用件をお願いします。私はこう見えて、忙しい故」
大臣「ぶ、無礼であるぞッ! 礼節をわきまえろッ!」
国王「よいよい、分かった。用件のみ話そう……」
女勇者「……」コクン
国王「単刀直入に言えば、魔物退治だ。北の森に巣くった、魔物の群れを殲滅してほしい」
女勇者「…なるほど。でしたらお代は『50000G』となりますが、宜しいですか?」
大臣「な、な…! 金だとォーッ!? どこまで失礼なんだこの女ァ!」
国王「む、ちょっと手痛い出費だが、民の平和のためならば致し方あるまい……。大臣、即刻用意せよ」
大臣「何故従うのですかァ! こんな先祖の名前に頼りきった、『弱小』勇者にィ!」
女勇者「……」ピキ
大臣「え…? な──」
瞬間! 大臣の肥えた体は空を飛んだッ!
否、放り投げられたッ!
大臣「おぶ…グハァ! な、なにを──」
女勇者「大臣さん……」
女勇者「命が惜しいなら、先程の発言を撤回していただけますか?」
女勇者「私は、『強い』ですよ…?」
女は威圧しつつも、笑みは崩さない…!
だが、その背後から沸き出る、『闘気』ッ!
その闘気だけで人は、その女が聖母のように優しい微笑みを浮かべようが、畏怖し頭を上げていられないッ!
無論この男も、例外ではない…!
大臣「す、すいませんッ! 勇者様ァ!」ドゲザ
国王「勇者よ、わしの部下の非礼は詫びよう。許してやってくれるか?」
女勇者「良いでしょう。王、貴方に免じてこの豚は赦します」
大臣「ぶ、豚……」
女勇者「ですが」
大臣「!」ビクッ
女勇者「機嫌が悪くなった故、『60000G』に増えますが、宜しいですね?」
国王「……良いだろう」
彼女こそ、伝説の勇者の末裔…!
武力の頂点に君臨する…『兵器』なのであるッ!
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更新ペースはまったりです。
気ままにのんべんだらりと書いていきます。
クーデレ女勇者とかお間抜け女賢者が書きたくなったから書いてみた。
今日はひとまず様子見で数レス投下のみ
──宮殿 北の森 奥地
女勇者「……ここに入ってから数刻、魔物らしきものには一切出会わず……」ザッザッ
女勇者「騙されたのかしら? だったら、あの国はもう消さなきゃいけないわね」ピキッ
女勇者「……ん?」ピタッ
勇者は、ふと突然足を止めた。
それは疲労により止めた訳ではなく、糞を踏みしめたからでもない。ただ興味惹かれる対象が、眼前に映ったからである。
女賢者(MP0)「いやーっ! 誰かお助けをーっ!」ドタバタ
オーク「グヘヘヘ…! 待てよ、人間の女ァ!」ニタニタ
ホイミスライム「悪いようにはしないよー!」ニヤニヤ
ボストロール「おでの嫁にするだーッ!」ニマニマ
女賢者「い、いやーっ! 醜悪ゥ!」
女勇者「これはまた面白い場面に遭遇したわね」
女賢者「ひえーっ!」
女勇者「……はぁ、このままにしておくのも良いけど、一応蹴散らすか」
ホイミスライム「あっ! 新しい人間の女!」
オーク「おっほ! これまた上玉じゃねぇかぁ…!」
ボストロール「おでの種族は嫁を何人も迎えられるだぁ……。そこの女も嫁にするだーよぉ!」ノッシノッシ
女賢者「あ、危ない…!」
女勇者「誰に言ってるの? むしろ危ないのは──」
女勇者「──あなたたちだから!」
身の毛もよだつような剣の横一閃…!
その刹那、空にて泳ぐ雲は雷雲と化し、轟音を響かせるッ!
魔物は一斉に空を見上げ、いつ来るかも分からぬ『雷』に恐怖する…。
否、それは愚の骨頂ッ!
ウサギが百獣の王を前によそ見をするなど、言語道断ッ!
雷よりも熱く、鋭い一撃が、それぞれを斬りつけたッ!
オーク「ぎゃっ…!」バタリ
ホイミスライム「うぐぇっ…!」ヘナヘナ
ボストロール「いでぇぇ…!」ズドン
女勇者「ふう、一丁上がり……」
女賢者「す、凄い…! あっという間に魔物たちが倒されて……」
女賢者「その、あ、ありがとうございます…!」ペコッ
女勇者「……」
深々と頭を下げる『それ』を、勇者は冷えた目で見下ろす。
それは正に、なにをしているんだこいつは、の目であった。
女勇者「……見たところ、貴女は魔法職よね? 何であんな下級相手に逃げ惑っていたの?」
女賢者「あっはは…。それが、道中で魔力を切らしまして……。お恥ずかしい……」
女勇者「…そう。お気の毒に……」クルッ
女賢者「……へ?」
女勇者「それじゃあ、お一人で頑張って」
女賢者「えぇ!?」
無情!
それはあまりにも無情である!
魔力の枯れた魔法使いは、さながら拳の出せないボクシングッ!
攻撃する手段の無いものは、武器を持った者に一方的に貪られるのみっ…!
女賢者「そ、そんな……」ジワッ
女勇者「私に貴女を助ける義理は無い。お金をくれるなら、考えてもいいけど」
女賢者「え、えと……」ガサゴソ
女は必死に鞄をあさり、金を探す。
だが、あったのは僅か『47G』ッ!
宿に泊まれるかも微妙な、あまりにも少ない金額…!
それを勇者は──
女勇者「無いみたいね。それじゃあ、ご縁が無かったということで」スタスタ
女賢者「ま、待って…! 助けて…!」
女の悲痛な声は、兵器に届かない…。
勇者の背中は森の奥に消え、辺りに静寂が訪れる…。
女賢者「ああ、行ってしまった……。私の人生、ここまでか……」
未来を諦め、見ず知らずの土地にて骨を埋める覚悟を人知れずした賢者…。
だが、みつけるッ!
一筋の希望を…! 地面に無造作に置かれたそれに…!
女賢者「あれ、これって…『キメラの翼』……? あ、あの移動呪文を封じ込めた道具の……?」
女賢者「嘘…! や、やったッ! これで帰れる! 私にはまだ、未来があるッ!」
女賢者「さらば、鬱蒼としてて臭くて、ろくな思い出が無い、森ッ!」
何の疑問も躊躇も無しに、その道具を使用する賢者…。
その道具を『忘れた』張本人は、徒歩で帰るハメになっているのも露知らずに…。
女勇者「……『キメラの翼』、今度からストックしておくべきね」ザッザッ
乙
ボストロールが志村けんみたいな
ふむふむ
面白いかも
百合来た!これでかつる!
期待
──北の森 最奥
女勇者「……私、人間になんて生まれたくなかったわ」ザッザッ
女勇者「そうすれば、嗅覚で出口を突き止めれたり…何かの『習性』で楽に帰れたはずなのに……」ザッザッ
なんと勇者は迷っていたッ!
来た道を忘却し、ただ本能に従い歩いてきた…!
無論出口へは辿り着かない!
それどころか、勇者は日の光を完全に遮断した森の奥の奥…!
恐ろしい魔物の住まう場所へとやがて辿り着くッ!
正に『本能』が招いた当然の結果…!
必然の未来なのであるッ!
そして彼女が眼にしたのは、木で出来た自然の壁…!
女勇者「ふぅ……。どうやら行き止まりのようね、これで完全に詰みだわ」
その『詰み』とは、ある手段を封じた上でのこと!
どれだけこの世の物質が彼女を妨げようが、彼女はいついかなる刻も『最強』であり『余裕』ッ!
女勇者「仕方ない、私の命のほうが大事だからね…。奥の手、使っちゃおうかしらっ…!」
『闘気』を拡散させ、森を包もうとした瞬間…!
それは重量級故の大袈裟な足音で現れたッ!
ギガンテス「なんだぁ…この気配は……」ズッシズッシ
サイクロプス「兄さん、きっとこれはあの人間の仕業だ」ズッシズッシ
アトラス「喰っちまうか…? 喰っちまおうぜッ!」ズッシズッシ
女勇者「……これはまた、醜いのがおいでなさったわね」
ギガンテス「おれが醜いだァ…? 許せねぇッ!」ズシンズシン
女勇者「久し振りに…『勇者剣技108式』なんて、使ってみようかしら…?」チャキッ
勇者が構えるッ!
ただそれだけの動きで辺りの存在は威圧され押し潰されそうになる…!
確かに!
いくら強い魔物筆頭のギガンテスでさえ、僅かによろけたッ!
ギガンテス「ウガアアーッ!」ブオン
それに必死に抗い、棍棒を勇者へと降り下ろすッ!
だが、無意味ッ!
女勇者「まずは『勇者剣技004』ッ!」
女勇者「『隼斬り』!」ザンッ ザンッ
一つ目の斬撃が棍棒を引き裂きッ!
二つ目の斬撃がギガンテスの胸を裂くッ!
一つ一つが正に悪魔級の連続攻撃ッ!
その剣を素早く振るう姿こそ正に『最終兵器』!
ギガンテス「ぎぃ…ガァァァァァーッ!」ズシンズシン
ギガンテス「……ぐふっ!」ズドンッ
大きく巨体を揺らしながら僅かに後退し絶命ッ!
死の間際まで勇者を恐れ、そして呆気な死んだッ!
サイクロプス「に、兄さんを一瞬で倒す人間が居るとは……」
アトラス「うぐぐ…。俺、聞いたことある! 奴こそ我ら魔物の天敵…『勇者』ッ!」
女勇者「あら、私ってばそっちの世界でも有名なのかしら?」
アトラス「現魔界の王、言ってた! 勇者の一族は皆化け物、倒せるのは『あの方』しか居ないとッ!」
サイクロプス「…ここは退きましょう、アトラスッ! この森は捨て置きますッ!」
だが、獲物が猛獣の王からなど逃れられないッ!
蒼い巨人サイクロプスの移動呪文の詠唱僅か『2秒』…!
更に勇者が接近してきたのが『1秒』ッ!
そして──
女勇者「《疾風剣》ッ!」シュッ
サイクロプスの頭を斬りつけたのに『0.7秒』ッ!
サイクロプス「ウッ!… 仕方無い! アトラスだけでもッ!」
アトラス「サイクロプス…!」
女勇者「《隼斬──」
なんと勇者の剣よりも、速くッ!
そして正確に呪文をサイクロプスは唱えてみせた…!
サイクロプス「《バシルーラ》ァ!」
アトラス「サイクロプス──!」シュン
正に兄弟愛ッ!
兄の力を借り、今この瞬間ッ…!
アトラスこそ勇者と遭遇し生き残れた唯一の存在となったッ!
女勇者「……ふーん。で、あなただけで何が出来るの?」
サイクロプス「何とかしてみせますよ…!」
女勇者「そう…。じゃあ、頑張ってみて?」
女勇者「『勇者剣技085』…《五月雨剣》の中で…!」
勇者から繰り出される無限の剣の雨ッ!
それこそ正に、凌ぐのも困難な『豪雨』ッ…!
手負いの巨人に避けさせるなど到底不可能…!
サイクロプス「な、なんて強さ…! だが、その強さをもってしても……。 あの方にはッ…!」ボロボロ
女勇者「そうね、あなたの指す『あの方』というのに……」
女勇者「──凄く、凄く腹が立ったわよ…?」ギラッ
紅く煌めく眼光ッ!
サイクロプスは既にもう諦めた…!
その絶対的『オーラ』に敵わないと…!
サイクロプス「うぐ、さ、最後に教えて下さい…! 何故、勇者一族は総じて強いのですか…?」
女勇者「……それは、私が知りたいわよッ…!」
サイクロプス「……なるほど」
女勇者「……」チャキッ
サイクロプス「……ッ!」ズキッ
女勇者「それじゃあ、さようなら」ザンッ
サイクロプス「ッ…! ……ぐふっ」ズドン
女勇者「……」
女勇者「また、勝ったわね……」
『勝利』ッ!
否、それは勇者にとっての『孤独』…!
勝ち続けても傍に誰かが来るわけでもなく…。
負けたらそれこそ、勇者としての『死』のみ
ならば、どうあがいても無意味なのであれば…!
勇者は『勝利』を選ぶ…! これから先も永遠にッ!
──数日後 宮殿
女勇者「……」ボロボロ
国王「な、なんと…! 魔物の殲滅、これは勇者様でも苦戦なされたのか……」
大臣「おおっ…。なんと、それは……」
女勇者「いいえ、魔物の群れを指揮していたとされるのは難なく打ち倒しました。ですが……」
国王「?」
女勇者「帰り道が分かりにくかったので、二日さ迷いました。よって、報酬を『65000G』要求します」
大臣「なっ…!」
女勇者「何か……?」チラッ
大臣「ひぃ…!」
国王「……ふうむ、ではもう一つの依頼を頼まれてくれたら、報酬を『70000G』にするが…良いかな?」
女勇者「依頼、とは?」
国王「わが娘を遥か西の海の向こう、大国へと送りたいのだ」
女勇者「その間の護衛、ですか?」
国王「うむ、勇者様の他にもう一人雇った故、貴女が忙しくなる事もあまり無いはずだ」
女勇者「……引き受けましょう」
国王「おおっ! よくぞ言うてくれた! おい、大臣」
大臣「はっ!」
国王「姫と、雇った者を連れてこい」
大臣「ははっ!」
国王「……して、勇者よ。魔物の心配はもうせんで良いのだろう?」
女勇者「はい、迷っている時も魔物を倒してまわっていたので、恐らく森の魔物は全滅したでしょう」
国王「そうか、かたじけない……」
女勇者「……」
女勇者 (……西の大国…。行ったことがないから、少し楽しみだわ)
勇者が遥か西へ想いを馳せる…。
だが、その十分後ッ!
優雅な気持ちも、想いも、皆すべて根こそぎ持っていく者が現れたッ!
大臣「遅れましたが、二人とも連れて参りました」
国王「うむ、ご苦労であった。勇者様、あの白いドレスの似合う者が姫だ」
姫「初めまして、麗しの勇者様……」ペコッ
女勇者「初めまして、お綺麗ですね」
国王「そうであろう、そうであろう! して、その隣のが昨日雇った者だが……」
女勇者「あっ」
勇者は観たッ!
ふわふわとした白いローブ、金色の髪飾り…。
金髪がサラサラと揺れていて、顔はまだ十代前半のあどけない顔…。
そして見た目、不相応の胸…!
勇者は知っているッ!
この女を…!
女賢者「どうもこんにちは、勇者様……」
女賢者「また会いましたねっ!」
女勇者 (あの時の、無計画MP漏れ女…!)
女勇者「……国王に進言します、この女は絶対に足を引っ張るので即刻解雇しましょう」
女賢者「酷いっ!?」ビクッ
国王「わしもそう思ってるのじゃがなあ……」チラッ
女賢者「いやいや、魔法見せましたよね? 凄かったでしょ、ね?」
姫「正直鬱陶しいです」キッパリ
女賢者「姫様までそんな──って、うんざりした顔が凄い可愛い!」
姫 (誰かこの人焼いてくれないかなー……)
女勇者「……はぁ」
女勇者 (優雅な船旅……とは行かないわね、これは)
一人は喚き、一人は気持ちが沈んでいく…。
これが、波乱の幕開けを予感させた…!
──
本日は一旦ここまでー。
夜にまた書き込みに来ますー。
乙
乙
おつおつ
どうでもいいけどサイクロプスってバシルーラ使えたっけ
乙です
地の文のノリが面白いな
>>21 そ、その辺はザオリク使えるバトルレックスも居るから、ま、多少はね…?
このようにDQ大好きですから、それ関連の言葉が出ますが、お許し下さいー。
それでは投下ー。
──西の港町 宿屋
女勇者「……」
姫「……」
女賢者「……」
近衛兵士「……」
宮殿から旅立ち数刻…。
海を越えた遥か西の大国へと向かうため、船に乗れる西の港へ来たのだが…。
なんと船は今日の分の出港は終いだと告げられたッ!
そして一行は宿屋に一泊せざるをえなくなり…!
非常に気まずい時間が流れていたッ!
女勇者 (暇ね…。こういう時に能天気な人が居てくれると、楽なんだけど)チラッ
女賢者 (はぁ…。お腹すいたなー、夕食はまだなのかなー)ボケーッ
女勇者「……はぁ」ガックリ
姫「あ、あの…! お尋ねしても宜しいですか、勇者様……」
女勇者「何でしょうか、姫様」
姫「その、姫様というのを止めません? 私の事は姫と呼び捨てにして下さっても構いませんし、言葉も砕けた感じのほうが、お互い宜しいでしょうし……」
女勇者「……ならそうするわ、姫。で、尋ねたいことって?」
姫「……勇者様の祖先は、凄い偉業を成し遂げた人だと聞きました。そういう祖先を持って、何か重荷に感じた事などはありましたか?」
女賢者「あー、私も気になりますねー!」ウンウン
近衛兵士「恥ずかしながら、僕も……」
女勇者「そうね…。私自身、そういう重荷は感じなかったけれど、まわりからの『威圧』だけは凄かったわ……」
姫「い、威圧…?」
女勇者「そうよ、威圧。お前は偉大な勇者の血族なのだから、腕も気性も脳内までも『勇者』であれ…ってね、まるで宗教のように繰返し言われたわ」
姫「……苦労、なされたのですね」
苦労ッ!
それは勇者からまるで無縁の言葉…!
それが少しおかしかったのだろう…!
笑ったッ!
勇者は姫を思いきり笑い飛ばしたッ!
女賢者「ゆ、勇者様?」
女勇者「うぷぷ…! だ、駄目、笑ってしまうわ!」
姫「な、何かおかしかったでしょうか……」
女勇者「く、苦労だって…? 私はまだ18よ? 生きた年数がちょびっとだけなんだから、苦労なんてまだそんなにしてないわよ…!」
姫「そうでしたか…。では、もう一つ尋ねたいことが……」
女勇者「何でも聞いていいわよ」
姫「では──」
姫「──私を誘拐して頂けますか?」
女勇者「ブッ」ブシューッ
噴出ッ!
勇者は先程より気に入って飲んでいた茶を吹き出したッ!
王族の誘拐…!
それは有数の大罪の一つ…!
それを王族自ら望むッ! それのなんと異例な事かッ!
例えるならばそれは、人間が甘そうに溶岩を飲むくらい奇妙で有り得なかったッ!
女賢者「えーと、私、よく聞こえなかったのですが……」
近衛兵士「姫は誘拐して欲しいと、そう言ったのです」
女勇者「……どんな冗談よ」
姫「いいえ、冗談ではございません! 私は自ら、父である王に逆らい、勇者と共に世界の隅へ逃げます!」
女賢者「ど、どうしてですか…? 確か、姫様は大国にて王子とのお見合いが……」
姫「それが嫌なのです…! 父は恐らく、今日の見合いを理由に私を無理矢理結婚させる気でいます! 大国との繋がりのためにッ!」
近衛兵士「姫様はそれを嫌がり、城を出るお覚悟を決めました…。僕は、それに従ったのみです」
女勇者「私は直接会ったことは無いけど、大国の王子はさぞ美形だそうよ? 結婚した方がプラスだ思うけど……」
姫「わ、私には…! その、想い人が……」モジモジ
女賢者「ほほーう! それは一体どんな…?」
姫「それはいかなる人にも言えませんッ! それよりも勇者様…! ご決断のほどは……」
女勇者「……うーん、そうね」
女勇者「応えは『NO』ってとこかしらッ…!」
姫「!」ビクッ
以外! それは拒否ッ!
あろうことか、王族の申し出を拒否…!
そのような所業、世の誰が出来ようか…。
いや、勇者は出来る! 勇者はその恐ろしい所業をやってのけたのだッ!
例えるならばそれは、大統領とビンゴゲームをするくらい、畏れ多い行為ッ…!
女勇者「嫌よ、そんな面倒臭いのは…。いくら勇者と言えど、極刑は免れないわ」
姫「ゆ、勇者様は私が男と結婚しても宜しいと、そう仰るのですか!?」
近衛兵士「な、なんと非情なッ…!」
女賢者「いや、さすがにそれは大事過ぎるから勇者様も嫌ですよねっ! 私も──」
女勇者「貴女は黙ってて」
女賢者「えっ…。あ、はい……」ショボン
姫「……そんな、どうしても、どうしても嫌だと仰るのですか…? 勇者様ぁ」ウルウル
女勇者「嫌よ、何も私が貴女を誘拐する必要無いじゃない…。何なら、そこでしょげてるMP漏れ女…略して『M女』にでも頼めば良いじゃないの」
姫「それは絶対にィ! いやですッ!」キッパリ
女賢者「あ、あれ…? また私理不尽な罵倒を受けてる…?」
近衛兵士「心中お察しします」
姫「っく! こうなったら、し、仕方ないですね…! 奥の手を使わざるを得ません!」
女勇者「ん? 力業とかかしら……」
女賢者「…?」
姫「スーッ……」
姫「《ザムディン》ーッ!」カッ
理解不能ッ!
勇者は聞いたことのない呪文もしくは言葉を聞いて、多少戸惑うッ…!
女賢者「っ!? そ、その呪文は…!」
女勇者「何か知ってるの?」
女賢者「いえッ! 全然まったく知らないです…!」
女勇者「……」
姫「ふっふっふ…。この呪文は所謂『通信呪文』…! 私は宮殿に居る父様に、こう伝えました!」
姫「『勇者が突然乱心、拐われる、助けて』…とッ!」
女勇者「…!」
仰天ッ!
それは真っ赤な嘘である!
だが宮殿の王は嘘だと知らないッ!
つまり、信用する可能性があるのだ!
更に実の娘に言われたッ!
これだけでも信用する可能性が十二分にあるッ!
要するに勇者は、初めて『追い込まれた』!
それもただの、王族に…!
女賢者「そんな呪文があるなんて…!」
近衛兵士「……」
姫「さあ、勇者様…? どうするかなど、決まっていますよね?」
女勇者「……はぁ、本当に面倒だけど、分かったわ。引き受ける、引き受けるわよ」
姫「ふふふ…。さあ、目指すは西ではなく『南の大陸』ッ! ひとまずそこへ行きましょう…!」
近衛兵士「南の大陸行きの船は今夜です…。夕食のあと、間もなく港へ向かいましょう」
女賢者「あっ、あの、姫様!」
姫「あれ、まだ居たのですね…。どうしました?」
女賢者「私もついていって良いですかっ? この流れだと、一緒にここまで来た私も国王に疑われると思うので……」
姫「!」ハッ
女勇者 (今、それは想定外だったという顔をしたわね……)
女賢者「私も魔法の腕なら良いですよ! どうか、お供させて下さいっ!」
姫「……わ、分かりました、宜しくお願いします」
女賢者「はいっ! 精一杯尽くします!」
コンコンッ…
近衛兵士「ああ、夕食の報せですかね。さあ、食堂へ行きましょうか」
姫「ええ、そうしましょう」
女賢者「よし…! いっぱい食べまくりますよーっ!」
女勇者「……」
女勇者 (ザムディン…? 通信呪文だと言っていたけど、そんな呪文、あったかしら?)
──
近衛兵士「姫様、先程の『ザムディン』というのは…?」コソコソ
姫「ああ、あれはですね」
姫「咄嗟についた、嘘です」ニッコリ
近衛兵士「あ、そ、そうだったんですか……」
姫「ええ。国の歴史という本に載っていた、確かガガだったかジジだったか、そんな感じの名前の魔法使いの祖父がザムディンさんだったそうです」
近衛兵士「それはそれは…。姫様は物識りでございますね」
姫「そうでしょうか? それより、勇者様達は先へ行ってしまいましたよ…? 私たちも急ぎましょう」
近衛兵士「それもそうですね…! 姫様、足元にお気を付けて」
姫「ええ、貴女も鎧をたまには脱いで、足元には注意して下さいね?」
近衛兵士「えっ…。──ッて、ギャア! 何か踏んだッ!」
姫「まったく…。近衛兵士は昔からそうですね」
近衛兵士「ハハハ…。面目ないです」
──夜 港町の宿屋 食堂
女賢者「お、おぉ!」
女勇者「……いいわね、これ」
近衛兵士「……」グーッ
姫「わ、わぁ…!」
魚の焼けた香りッ!
宮殿育ちの姫をも感嘆の声を漏らす程、美味そうな香りッ!
この魚は『さんま』…!
平民の間で親しまれて食される美味なる魚…!
その身を食せば、誰でも笑顔になるという、魔法の食べ物ッ!
それを今、姫が口に運んだッ!
姫「まぁ…! 凄く美味しい!」
近衛兵士「うむ、美味です…!」
女賢者「ふー、ふー…はむっはむっ…! はぁーはぁー……」ムシャムシャ
女勇者「貴女、凄く熱そうに食べるけど、もしかして猫舌?」
女賢者「にゃ、にゃんでそれをっ!」
姫「必死に冷まして食べてる様子なんか、凄く猫舌の人っぽかったですよ」
女賢者「うう…。情けないからバレたくなかったのに…!」
女勇者「愚かな考えね…。私の前で嘘はつけないわよ」
姫「……」ピクッ
近衛兵士「……」ビクビク
女賢者「それは本当ですか? じゃあ、試してみても…?」
女勇者「ええ、いいわよ? 何でも言ってみなさい、当てるから」
挑発ッ!
それは勇者より突きつけられた挑戦状ッ!
賢者は無謀にも、それに乗った…!
女賢者「それじゃあ、行きますよ…?」
女賢者「『私は長女です』」
女勇者「!」
姫「これはわかりませんね……」
近衛兵士「末っ子っぽいですが、案外長女かも……」
女賢者「分かりましたかぁ? 勇者様ァ…?」
女勇者「……」イラッ
女勇者「ええ、分かったわよ…?」
姫「!」
女賢者「では、言って下さい…! 私が告げたのは真実か、嘘か…!」
女勇者「……」
女勇者「『本当』……でしょ?」
女賢者「……」
姫「……」ゴクッ
近衛兵士「……」ゴクッ
女賢者「正解は──」
女勇者「……?」
女賢者「『嘘』でしたァーッ! 私には盗賊の姉と遊び人の姉が居ますゥーッ!」
女勇者「!?」
何と、勇者圧倒的敗北ッ!
屈辱の敗北…! 踏みにじられたプライドッ!
それを嘲笑う賢者…!
溜まる…! 怒りが溜まるッ!
だが、それをグッと堪える…!
我慢する、勇者…!
女勇者「私の……負けね」
女賢者「勝ちましたよ…! 勝ったァ!」グッ
姫「ほっ。これで、勇者様の『嘘発見器』疑惑は取れましたね」
女勇者「疑われてたのね……」
近衛兵士「それより皆さん、急がねば船が出る時間になりますよ。早急にデザートを呼んで、食事は終わりにしましょう!」
女勇者「それもそうね……」
女賢者「まだ食べたかったんですがね…。しょうがないですね」
姫「……私、食べ過ぎじゃありませんよね?」
近衛兵士「僕はもっと食べた方がいいと思いますよ」
姫「そ、そう……」
──それから数時間後
──深夜 西の大海、海上にて 船内 甲板
女勇者「……」
勇者は考えを巡らせる…。
何故自分は波に揺られる船の上に居るのか、馬鹿な女と同室なのか…。
考えても考えても理解できない。
勇者はハマる…『思考の迷路』にッ!
だが、その迷路の外より声を掛けられる…。
女賢者「勇者様……」
女勇者「! 何だ、『M女』か」
女賢者「そ、その妙なあだ名は止めて下さいっ! 私には『賢者』というちゃんとした名前があるんですから!」
女勇者「そう…。じゃあ、賢者」
女賢者「はいっ! 何ですか、勇者様?」
女勇者「……貴女は、何か夢とかある?」
女賢者「夢、ですか? うーん……」
女勇者「……」
女賢者「あっはは! たくさんあってどれが本物の夢か分かりません!」
女勇者「何よ、それは……」
女賢者「うーん、まあ……」
女勇者「?」
女賢者「夢を全部叶えるのが…『夢』ってところですかねっ!」
女勇者「……そう」プイッ
女賢者「? どうかしましたか?」
女勇者「いえ、何でもないわ。それよりも、これ以上夜風に当たると冷えるし、中に入らない?」
女賢者「あ、はいっ! さっきからくしゃみが出そうで……」
女賢者「っくしゅん! うー……」ズルズル
女勇者「……鼻水」
女賢者「あ、ずびばせん!」
女勇者「……はぁ。貴女って本当──」
女勇者「──羨ましい、わね」ボソッ
女賢者「はい? 何か言いました?」
女勇者「いえ、何でもないわ」
女賢者「えー、本当ですかぁ?」ニヤニヤ
女勇者「……」スタスタ
女賢者「あ! ちょ、ちょっと待って下さいよォ!」
──
──早朝 西の大海、海上にて 船内 甲板
姫「おはようございます、勇者様。昨夜はよくお休みで…?」
女勇者「いいえ、同室したこの女のいびきが酷くて眠れなかったわ……」
近衛兵士「お気の毒に……」
女賢者「えっ、私ってそんなにうるさいですかね? いびき」
女勇者「賢者は存在がうるさいわね」
女賢者「ひ、ひどっ!?」ビクッ
姫「それにしても、まだ着きま──」
──グラッ… ゴォンーッ!
刹那ッ!
船体が揺れる! 乗客を全て海に叩きつけるかのように!
これを勇者を覗いた『人』達はなんとか堪える…!
そして眼前に広がったのは──
乗客「お、おいッ! なんだよあれはーッ!」
船乗り「な、なんだァーッ! あの化け物ォ!」
船長「ま、魔物だぁ……」
女賢者「ゆ、勇者様…! あ、あれ…!」指差し
女勇者「……ええ」
オセアーノン「射てこますでーッ!」ウネウネ
クラーゴン「行くぞ、兄弟ッ!」ウネウネ
大王イカ「おう! 兄弟ッ!」ウネウネ
姫「ひ…! ひぃ……」ガクガク
近衛兵士「姫様、どうか僕の後ろにッ!」
女勇者「遂に出たわね…!」
女勇者「大海原の主ッ…! 『オセアーノン』ッ!」チャキ
闘気、闘気ッ! 勇者から溢れんばかりの『闘気』ッ!
勇者より発せられる、怒りにも似たそれは…!
目の前の敵を葬るぞと『威圧』する!
それに負けじと近衛兵士も剣を構え、女賢者も謎の構えを取る…。
オセアーノン「何や、人間の癖に生意気じゃのーッ! 息でも喰らっとけッ!」ゴォォォォ…!
女賢者「!」
タコより放たれる《激しい炎》ッ!
それはさながら、調理中のフライパンに触るくらい熱い!
その、船を焦がさんとする業火を防ぐべく、賢者は告げるッ!
女賢者「《フバーハ》ッ!」
女勇者「……へぇ、貴女フバーハが使えるのね」
姫「フバーハ…?」
近衛兵士「確か、炎と冷気を防ぐ呪文です…! 高度な呪文ですよ!」
女賢者「勇者様っ! 私だって魔法使いの端くれ! 戦闘に参加しますからねっ!」
女勇者「確かに魔法は頼もしいけど──」
女勇者「──それより前に、私が倒し尽くすッ!」
女賢者「っ!」
>>27
ここでグルグルかw
キリ悪いけど今日はここまでですー。
百合要素はまだ先です、申し訳ない…。
それでは、また明日! おやすみなさいー
乙!
騎士も女の子か
おはようございますー。
いいわすれてましたが、投下時刻は昨日と同じ19:30頃となってます。
それではその時までさよならー。
ゴミクズ以下スレっと
百合アンチ兄貴オッスオッス
テンションの高いナレーションとネタのチョイスからしてナジミちゃんの人かと思ったが違う?
>>42 違います
申し訳ありません、遅れましたが投下していきますー。
──船の甲板 端
大王イカ「おい兄弟ィ! どっちが人間を多く葬れるかァ…競争だッ!」
クラーゴン「いいねェーッ!」ウネッウネッ
乗客「や…やめてくれェーー!」ダダッ
女勇者「…! 貴方は私の後ろに下がって!」
乗客「ひ…貴女は?」
女勇者「そんなのどうだって良いわ……。」
女勇者「それよりもほら、イカ達…?」チャキッ
大王イカ「あァん…?」
クラーゴン「おいおい、あれが噂の勇者かァーーッ!? 『弱そう』だなァ…おいィ!」
女勇者「……」ピキッ
女勇者「ふふ…もう遠慮はしないわよッ!」
瞬間ッ! 勇者の姿が『消えた』ッ!
否、それは大王イカの背後に『移動』したッ!
大王イカ「なっ!?」
女勇者「──『勇者剣技014』…ッ!」コォォォ…
クラーゴン「おい、兄弟ーッ!」
収集ッ!
大海の水…大空の空気…靴底の土ィ!
自然界全てを『集め』…放出するッ!
女勇者「《稲妻斬り》ィーッ!」ビリビリ
大王イカ「グギャァンーーッ!」ザシュッ
女勇者「更にもういっちょォ…《稲妻斬り》ィ!」ビリビリ
無慈悲…! 勇者の残酷な雷が、大王イカを襲うッ!
それはまるで腐りきった木のように、あっさりと切り刻まれるッ!
大王イカ「──っ!?」ビクッ ビクッ
クラーゴン「兄弟ィィィィーッ!」
──船の甲板 中央
姫「……勇者様は相変わらずお強いですね……」
近衛兵士「そうですが…け、賢者様も頑張っていますよ」
お世辞!
それはあまりにも直視できない光景…!
情けない、非常に情けないッ!
女賢者「えいっ! 《メラゾーマ》ーッ!」ボォ!
オセアーノン「じゃーから、わしに火炎は効かんって言ってるやろがァ! このスカボンーッ!」ザパァ
賢者の繰り出す火炎球は、即座に波に打ち消される…!
呆気ない、それは蝋燭の灯火のように脆いッ!
女賢者「え…えーと……。他にどんな魔法を使えたっけェ…私ィ」
オセアーノン「な、なんやとォ!?」
忘却ッ!
あまりにも膨大過ぎる魔法の数々を脳内の闇に葬った賢者…!
必死にその闇より掬い上げようとするが…!
女賢者「……」ウーン
女賢者 (忘れたァ! フバーハとメラゾーマしか覚えてないィ! どーしよ!)
オセアーノン「グググ…このワイをどこまでも愚弄してくれるのォーッ!?」
オセアーノン「あかん…腹が立ったでェーッ!」ウネウネウネ
それは必然的な感情ッ!
現在自分が優位に立てているのは相手が『忘れた』からという現実…!
そんな状況では、誰だってキレるッ…!
タコだってキレるッ!
そして、オセアーノンは自らの弾力性に富んだ触手を賢者へと伸ばす…!
女賢者「や、やば──ッ!」
オセアーノン「伸ばして麺にしたるでェッ!」
近衛兵士「危ないッ! 《スカラ》ーッ!」
姫「! な、なんと! 近衛兵士があの、硬化呪文をッ…!?」
近衛兵士より賢者へと放たれた呪文…!
それは皮膚とみにまとっている衣服・鎧をも硬くする高度な呪文!
それを一介の兵士である近衛兵士が!
完璧に扱えたのだッ! 驚くのも無理はないッ!
女賢者「うぐっ…! ダメージは最小限に抑えられたっ…! ありがとうございます、近衛兵士さんっ!」
オセアーノン「ええいっ! ワイの攻撃はこれだけやないでェ!」ウネウネ
女賢者「ぐぐっ…。でも、攻撃の手段がこちらには、ないッ!」
近衛兵士「いえ…賢者さん、ボクにいい提案があります!」
女賢者「えっ?」
近衛兵士「良いですか、賢者さん…ボクの合図に従って、あの魔物に《メラゾーマ》をお願いします…!」
姫「な、何故……」
女賢者「……何か心配だけど、今はそれにすがるしか無いようですね…! 分かりましたっ!」
オセアーノン「ゴチャゴチャとォーッ! 《激しい炎》でも喰らうんじゃァッ!」ボォ…!
女賢者 (っく! フバーハは効いてるとはいえ、やっぱり熱ィ!)
女賢者「…!」チラッ
近衛兵士「……」フルフル
女賢者 (まだ、まだ合図はない……。待つんだ…私ッ……)
姫「……」ゴクッ
オセアーノン「……何や、急に黙ってほんまに気味悪いで! 続けてこちらから行くどォーッ!?」
近衛兵士「……」
女賢者「……」
緊張…! 辺りに溢れる緊迫感…!
賢者は、待つ…待つ…待つッ!
ゆっくり、ゆっくりとスローのような時間が流れていく…。
そして合図が振られる──ッ!
近衛兵士「スゥゥゥーッ! 『今です』…賢者さんーッ!」
女賢者「待ってましたァ! 《メラゾーマ》ッ!」ボォフ
オセアーノン「! 何度やれば気がすむんじゃタコォ!?」
オセアーノンは波を造りだし火炎球を消そうとする…!
だが、近衛兵士はそこで更に追い討ちをかけたッ!
近衛兵士「──タコはそっちさッ! 《ベギラマ》ーッ!」ゴォォォ…
姫「えーッ!? べ…べ、べ、べべべ…!」
女賢者「ベギラマァーー!? あの閃熱呪文を何で…!」
オセアーノン「ギャアアアアンーーッ!! 何でや、何でワイに熱が…!」
近衛兵士「ふふ…君は何故か火炎球を『わざわざ波を起こして』消していたよね…? 水棲なのにィ…」
近衛兵士「そう、ボクはそれで確信したッ! 君は──」
近衛兵士「茹で蛸は嫌いだァってねェーッ!」
女賢者「……凄い、そんな確証もない事を、リスクを恐れず実行するなんて…!」
姫「賢者さんのは所謂『おとり』ッ…! 波は急には進行方向を変えられないから…!」
オセアーノン「くそォ…! すまんのう…すまんのうッ!」プスプス
オセアーノン「魔王…様ァァァーッ!」
絶叫…。
最後の断末魔に忠誠を誓った魔王の名を選んだ…!
これこそ、オセアーノンが忠誠心溢れる魔物という証!
これをみて…。
近衛兵士は僅かに、敬意を表した。
──
クラーゴン「くそッ! くそッ! 何でオセアーノン様が死んで…っ!」ウネウネ
女勇者「へぇ、向こうは凄い戦闘を繰り広げたわね…。それに比べて、貴方は……」
クラーゴン「うぐぬッ!」ウネ
一方心配無用の勇者はッ!
度重なるクラーゴンの触手攻撃を物ともせずにッ!
鼻唄混じりで余裕の表情を浮かべ、そこに立っていたッ!
女勇者「ねえ、貴方が死ぬ前に教えてくれないかしら? 何で私らを襲ったの…?」
クラーゴン「ふんっ! そんなのは自分の血に聞きなッ!」
女勇者「……そう。それじゃあ、質問を変えるわね」ギラッ
クラーゴン「!」ゾクッ
女勇者「──やっぱり、魔王の指示かしら?」
クラーゴン「そ、それは……」
女勇者「言えないのなら、貴方には飛びっきり酷い死を与えるけど……」
クラーゴン「……」
女勇者「そうねェ…『ライデインブレ──」
クラーゴン「──もうッ! 好きにしてくれーッ! 俺は絶対に何も言わないィッ!」
女勇者「……」
女勇者「……そう」
女勇者「残念……」
──
ズドォンッ…! グラグラッ…!
姫「な、何でしょうか…このおとは……」
近衛兵士「向こうの勇者様の方からでしたし…恐らく、派手にヤっただけかと……」
女賢者「! い、いや…あれを見て下さいっ!」
一同は目を疑ったッ!
否、背けたッ!
そう、眼前に広がっていたのは…!
女賢者「──この船…そこかしこに大穴が空いてますーっ!!」
船長「あわわわ…! 沈む…俺の船がァァーッ! 沈んじまうよォ!」
船乗り「こ、こんな海の真ん中でかよォーッ!? そりゃあねェぜッ!」
姫「近衛兵士! 移動呪文か何かは…!」
近衛兵士「……生憎ですが」
女賢者 (私も何か移動呪文を扱えた気がするんだけど…思い出せないっ!)
冬の大海ッ!
このど真ん中、目を引く中央にて…!
ザパァン…! ザパァン…!
船が一隻ッ!
ゆっくりと海へ降りていく…!
無論ッ! 乗客は放り投げられる…!
冷たい海の中へと…!
──そして幾日かの時間が経った…!
勢いだけで書くのって凄い楽しいですねー。
それではおやすみなさい。
投下はまた明日ー。
勢いだけで書くとか好きだよ
期待してます乙
全然来れなくてすいません
初めて書いたssだから、これは絶対に完結させたいと思っています。
放置のような真似をしでかしてしまい、申し訳ありませんでした。
ひとまず今日の夜、書き込みにきます
その程度の謝罪で許されると思ってんの?ケツだせよ
>>1あってこそのSSだし、リアルの生活もあります
書けない時があっても責めない、むしろ盛り上がって来た所で体調を崩し
永遠に完結しないってケースの人もいます
期待していますので、無理せず頑張ってください
まだかな…!チラッ
まだ~?
忙しくて来れないですー。誰か俺に時間を下さい……
ひとまず、今日の夜…書き留めとか無いけどゴリゴリ書いたプロットを参照の上、更新したいと思いますー
了解です
気長に舞ってます
地の文がカイジみたいなテンションで面白いな
まったり続けてくれ
女勇者「……」
女勇者「……んう」ムクリ
女賢者「あ、起きましたかっ? 勇者様っ!」
女勇者「……」
この時の女勇者の心境を当てるとすれば恐らく……。
『寝起き早々に馬鹿を見た』
だろうッ!
その勇者の残念そうな顔がそう語っている…!
近衛兵士「良かったです…勇者様が起きてくれて……」
女勇者「……」
そしてまたこの時の女勇者の心境を代弁するなら……。
『この茶髪ショートカットの女は誰だ』
だろうッ!
その不思議そうに彼女を見る顔がそう語っている…!
女賢者「どうしました? さっきから黙ってますが……」
女勇者「……」
女勇者「……ええ」
女勇者「頭が本当、騒がしくて困るわ」
やべ、トリップ忘れてた。
ひとまず、10時まで書きます
──『漂流して三日・流れ着いた浜辺にて』
女勇者「それで、ここは何処?」
近衛兵士「えーと、あの大きな山から察するに…『南の大陸』だと僕は思いますよ」
女賢者「確か、仙人だかなんだかが住んでるって言われてるとこでしょ?」
近衛兵士「そう…だったかな……?」
女勇者「……?」
勇者は思考するッ!
何故彼女らは親しげに……。
それでいてあたかもずっと前から行動してきたかのような風を装うのだろうか。
少なくとも勇者はこの茶髪を知らない。
女勇者「……もう一つ聞いて良いかしら?」
近衛兵士「? はい」
女勇者「貴女誰?」
近衛兵士「……」
近衛兵士「えっ」ウルッ
女賢者「えー……」
女勇者「?」
女賢者「ほら、近衛兵士ちゃんですよ? 忘れたんですか?」
女勇者「いや、それは」
女勇者 (あの鉄の塊の事……?)
失礼千万ッ!
鎧を常に身につけ王族を守るのが『騎士』としての常識…!
何も可笑しくない、むしろそれは誇らしい事なのだが……。
この女はッ!
『鉄の塊』としか認識していなかったのだ!
近衛兵士「あの…良いんです。僕、いつも鎧を着ていたから……」
女勇者「……」ウンウン
女賢者「でも酷くない?」
近衛兵士「いや…『漂流』している時に兜を無くした僕が悪いんだ……」
女勇者「!」
漂流ッ!
その単語で勇者は状況をはっきり理解するッ!
女勇者「ああ、そういえば」
女勇者「私達、船から投げ出されて……」
女賢者「えっ…今更ですかっ!?」
女賢者「以外と勇者様ってば抜けてますねっ!」
女勇者「……」カチン
憤怒ッ!
僅かに殺意が見え隠れする…がッ!
それよりも第一に気付くべきであった事を、勇者はあっ と思い出す。
女勇者「あら」
女勇者「それじゃあ、姫は…?」
女賢者「あっ」
近衛兵士「あっ」
近衛兵士「そ、そういえば僕達も起きたばかりで、姫様の事を失念してましたっ!」
女勇者「……探すわよ、別の場所に流れてるかもしれない」
女賢者「王族誘拐の上に殺害とか嫌ですよーっ!」
女勇者「別に私達が殺した訳じゃないじゃない」
女賢者「それと同等ですよ!」
おつおつ
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