鶫「なぜそのようなものを作られたのですか?」
クロード「うむ、自白剤を作るときに偶然出来たらしい。まああえて使うことはないだろうが」
鶫「はぁ……」
クロード「それより、お前はお嬢様の護衛に奴の監視とよくやってくれているな」
鶫「はっ」
クロード「ねぎらいといってはなんだが、ビーハイブ特製の栄養ドリンクをやろう。今後も任務に励め」
鶫「はっ! ありがとうございます!」
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――放課後――
千棘「鶫ー! 帰るわよー」
鶫「お嬢。今日は一条楽と帰らなくていいのですか?」
千棘「なんか動物の世話するって言ってたわ。私はいいって」
鶫「そうでしたか」
千棘「それよりその栄養ドリンクみたいなのはなんなの?」
鶫「これですか? これはクロード様が私に、仕事で疲れているだろうとくださったんです」
千棘「あーそっか。私の護衛してくれてるんだもんね。いつもありがとう!」
鶫「いえ、それが私の役目ですから」
千棘「もー、固いわね。それ、せっかくもらったんだし飲んでみたら?」
鶫「そうですね。では失礼して……」ゴクゴク
千棘「どう? おいしい? おいしかったら私ももらおうかなー」
鶫「ええ、味はなかなかです」ピピピ
鶫「っと、すみません。クロード様から電話が」
千棘「出ていいわよ。待ってるから」
鶫「ありがとございます。クロード様? どうなさいまし――うっ」ガクッ
千棘「つ、鶫!? ど、どうしたの!?」
クロード『おい、誠士郎!? 何があった!?』
千棘「ど、どうしようクロード! 鶫が栄養ドリンクを飲んだら急に倒れて……!」
クロード『お嬢様ですか? 栄養ドリンク……一足遅かったか』
鶫「ぐ、うぅぅ……」
千棘「遅かったってどういうこと!?」
クロード『お嬢様、ご安心ください。体に害はありません。ただ……』
千棘「ただ!?」
クロード『実は誠士郎に栄養ドリンクと間違えて感情を反転させる薬を渡してしまいまして、どうやらそれを飲んでしまったようです』
クロード『今気づいて電話したのですが、もっと速く電話していれば……』
千棘「感情を反転? よ、よくわかんないけど、とにかく鶫は無事なのね!? よかったぁ……!」
クロード『はい、ですが目を覚ました誠士郎に驚かないでください。効果は1時間から数時間程度で切れますが……いえ、私もそちらへ向かいましょう』
千棘「効果? 驚く?」
クロード『ええ。感情を反転させる……つまり、好きな相手を嫌いになってしまうのです。もちろん、より好きな相手はより嫌ってしま……』
鶫「……おい、桐崎千棘」
千棘「へ?」
鶫「貴様、何私の携帯を勝手に使っている」バッ
千棘「え、あ、ご、ごめんなさい」
鶫「フン、これだからお嬢様育ちは……」ピッ
千棘「つ、鶫?」
鶫「馴れ馴れしく話しかけるな」チッ
千棘(え、えええ!? だ、誰よこれ! 好きな相手を嫌いになるってこういうこと!?)
鶫「大体貴様が主だということ自体が心底不愉快だ。友人のように話しかけてくるのも迷惑極まりない」
千棘(うぅ……薬のせいだとわかってても傷つくわね……あれ?)
千棘(今って感情が逆になってるのよね? てことは反対のことを言っているってことで)エエト
千棘(つまり、私が主ですっごく嬉しい。友達みたいに話しかけるのもありがたいと思ってるってことよね!)
千棘「鶇、そこまで私のことを……!」ウルウル
鶇「な、なんだ気色悪い」
鶇「言っておくが仕事でなければ貴様なぞ何があっても話すことはないし、まして護衛なんて死んでもするものか!」
千棘「鶇ー!」ギューッ!
鶇「え、ええい! 離せ!」ドンッ
千棘「わっ! もう、鶫ったら」エヘヘ
鶇「ついに頭までおかしくなったか……」
集「……誠士郎ちゃん? どったの?」
鶫「おお、舞子集。どうしたとは何のことだ?」
集「いや、俺の耳がおかしくなってなければ今桐崎さんにすげえこと言ってなかった? つうか突き飛ばしてたよね!?」
鶫「わけのわからないことを言い出したからだ」
集「そういう問題じゃなくて!」
鶫「私があいつのことを嫌いだと分かっていてやってきたのだ。あのくらい当然だろう」
集「誠士郎ちゃん喧嘩でもしたの? いやにしたって信じられないんだけど」
鶫「舞子集。お前のおせっかいなところは好きじゃない……が、喧嘩でもとは何のことだ? 普段から私のあいつへの態度は今と変わらん」
集「……あの、桐崎さん? 誠士郎ちゃんに何があったの?」
千棘「なんかビーハイブが開発した薬飲んじゃったみたいで、好きな相手は嫌いに、嫌いな相手は好きになってるのよ」
集「相変わらず変なもの作るね……」
千棘「今回は感謝してるわ。鶫が私のことをどう思ってくれてるか分かったもの!」
集「ああ、好きより嫌いの方がはっきり態度に出しやすいしね。……あれ、俺いつもより優しくされてる気がするんだけど」
千棘「……ほ、ほら。仲がいいからこそ攻撃的なことも出来るのよ。だから今はむしろ距離が開いてるの!」
集「なるほど。そういうことかー」アッハッハ
集「しかし好きな相手が嫌いになる薬ねえ。……よし!」
千棘「どうしたの?」
集「いや、俺ちょっと呼んできたいやつがいるんだ。桐崎さんその間ちょっと誠士郎ちゃん引き止めといて」
千棘「え?」
集「頼んだよー」タッタッタッ
千棘「えー!」
千棘「引き止めるって……いつもの鶫ならいいけど」チラッ
鶫「なんだ、桐崎千棘。用がないならさっさと帰れ。不本意ながら護衛をやっている私も帰れんだろう」
千棘(本心が分かっててもこんなこと言われ続けるのは辛いわよー!)
千棘「こんなときに限って鶫と2人だけだし、誰か来ないかなあ」
小咲「あれ、千棘ちゃん。まだ教室にいたんだ」
千棘「あ、小咲ちゃん。ちょっと待っ――」
鶫「おい、小野寺小咲」
小咲「……つ、鶇ちゃん?」ビクッ
鶫「ちょっとパンを買ってこい」
小咲「え? ……………は、はい」
千棘「小咲ちゃん!? 素直に行っちゃダメ! 鶫も何いきなりそんなこと言ってるのよ」
鶫「うるさい。貴様がさっさと帰らんから小腹が空いたのだ。そこへ小野寺小咲がちょうど来たんだ。買いに行かせるしかないだろう」
千棘「私のせいっぽくされてる!?」
小咲「ち、千棘ちゃん? 鶫ちゃんはどうしたの?」
千棘「実は鶫がビーハイブの作った感情を反転させる薬を飲んじゃって、好きな人のことを嫌いに、嫌いな人のことを好きになっちゃってるのよ」
小咲「……? てことはさっきのは……」
千棘「そう、小咲ちゃんの小腹が空いたときにすぐパンを買いに行ってもいいくらい、鶫は小咲ちゃんのことを好きなのよ」
千棘「……って凄いわねこれ。小咲ちゃん鶫に何したの?」ジー
小咲「え!? な、なんにもしてないよ!」
鶫「貴様ら、何をコソコソと話している。人の目の前でいい度胸だな」
小咲「ひゃっ。ご、ごめんね鶫ちゃん」エヘヘ
鶫「貴様は本当に腹立たしいな」チッ
小咲「えっ」
鶫「怒るべきところでなぜ怒らない」
小咲「だって薬のせいだよね……?」
鶫「そういう優しさが貴様の性格なのだろうが、私からすれば反吐が出る。とてもそうなりたいとは思えん」
小咲「えっと……ありがとう?」
鶫「何の感謝だ? 言ってくれてありがとうとでもいいたいのか。これだけ言われても変わらないのか。その強情なところも腹が立つ」
小咲「こ、これは恥ずかしいね」ヒソヒソ
千棘「そうね。でも嬉しいでしょ?」ヒソヒソ
小咲「うん」テレテレ
鶫「本当に不愉快な奴らだ」イライラ
万里花「何やら面白そうなことをやってますわね」
千棘「あんたまで来たのね」
万里花「感情を反転させる薬ってあなたの組織は変なものばっかり作ってますわね」
千棘「それは私にもよくわからない、っていうかあんたいつから聞いてたのよ?」
万里花「まあ細かいことはいいじゃありませんか。それより私も鶫さんと話してみたいですわ!」
千棘「あんたの場合はどうなるのかしらね」
小咲「私とか千棘ちゃんと似たような感じになるんじゃないかな?」
千棘「それはないわね」
万里花「それはありえませんわ」
小咲「そ、そうかな?」
万里花「まあその辺りは私がよくわかってますわ。だから気になるんですの」
万里花「というわけで行ってきますわ!」
万里花「どうも、鶫さん」
鶫「あ、ああ。橘万里花か」
万里花「はい!」ワクワク
鶫「……あー、さっきはあそこで奴らと何を話していたんだ?」
万里花「まあ大したことじゃありませんわ」
鶫「そ、そうか」
万里花「はい」
鶫「……」
万里花「……」
鶫「……」
万里花「つ、鶫さん。何か私に聞きたいこととか言っておきたいこととかありません?」
鶫「き、聞きたいことか? そ、そうだな……」
鶫「……きょ、今日はいい天気だな」アハハ…
万里花「……そ、そうですわね」ウフフ…
小咲「うわあ……」ヒソヒソ
千棘「凄まじく気まずい会話ね」ヒソヒソ
小咲「なんであんなふうになっちゃってるんだろう」ヒソヒソ
千棘「きっと鶫はなんだかんだ言って、気兼ねなく話せる相手だとは思ってるのよ。だから逆に話しづらい相手に……」ヒソヒソ
小咲「なるほど……」ヒソヒソ
万里花「戻りましたわ……」
小咲「お、おかえりなさい」
千棘「めちゃくちゃグッタリしてるわね」
万里花「あんなに疲れる会話は初めてでしたわ……」
千棘「お互いなんともいえない空気だったわね」
万里花「興味本位で近づくものじゃありませんわね。ひどい火傷をしました」
小咲「いつもと違う鶫ちゃんも新鮮だったけど、やっぱり普段の鶫ちゃんがいいね」
千棘「そうねー。一時間から数時間で戻るって言ってたけど、まだ戻らないのかしら」
集「いやいや、まだ戻ってもらっちゃ困るぜ!」
万里花「あら、舞子さん」
集「おー2人も来てたんだ。てことは誠士郎ちゃんと話した?」
小咲「うん。ちょっとびっくりしたけど、それより少し恥ずかしいかな」エヘヘ
集「わかってたけど俺とは全然違う反応だったんだね……」
千棘「それで連れてきたい奴って誰の事だったの?」
集「そりゃ楽に決まってるじゃん」
千棘「あーまあそりゃそうよね」
小咲「一条くんが来るの!?」ドキッ
万里花(楽様? ……これはまずいのでは)
楽「おい集。人のこと呼んどいて先行くなよ」
集「わりーわりー。ほら、鶫ちゃんはそこだぞ」
楽「ああ、鶫がなんか変な薬飲んだんだって? 大丈夫か?」ヒョイッ
万里花「あ、ちょ、楽さ――」
鶫「」ダンッ
楽「……へ? じゅ、銃!?」ヒイィィ!
鶫「よくも私の前に顔を見せられたものだな一条楽」チャキッ
楽「ま、待て鶫!? 危ねえよ! なんでいきなり撃つんだよ!?」
鶫「なんでだと? いいだろう教えてやろう」
鶫「貴様の存在が不愉快だ。視界に入るのも虫唾が走る。貴様と同じ空気を吸っているかと思うと反吐が出る」
鶫「貴様が話しかけてくることが本当に迷惑だった。貴様と出会ったことは私の人生最大の汚点だ」
鶫「いいか。私は貴様のことが世界で一番、この世界の誰よりも大っっっ嫌いだ!!」
千棘「」
小咲「」
万里花(じゅ、銃に気を取られてしまいましたわ……!)
集「……まさかここまでとは」
楽「お、おい集! 鶫が飲んだ薬はなんだっけ!?」
集「好きな相手が嫌いに、嫌いな相手が好きになる薬だよ」
楽「……俺、今すげえこと言われた気がするんだけど」
集「いや、ほんとすまん。まさかここまでだとは思わなかった」
楽「じゃなくて! お前の言ってた薬の効果が間違ってるんじゃねえの」
集「いや、そんなことないって。ねえ?」
千棘「……!」ハッ
千棘「そ、そうね。じゃなきゃ鶫が私にあんなこというわけないもの」
小咲「う、うん。私もそう思う」
千棘「……うう」
小咲「……うう」
万里花(2人とも、落ち込むくらいなら誤魔化せばよろしいのに。……まあ、それは私の役目ですわね)
楽「いや、でもなあ」
万里花「私は楽様が正しいと思いますわ」
小咲「でも私達のことは嫌いになってたし……」
万里花「別に感情を反転させるという効果を否定するわけではありませんわ。私も体験しておりますし」
万里花「でも、何らかの理由で楽様にだけ別の効果が出てしまったということも考えられますでしょう?」
集「あーそれはありえるかもねえ」
楽「だよな。うん、俺もそうだと思う」
万里花「あとは何が理由かということですが……」
万里花(まあここは適当にでっち上げてしまえばいいですわね)
万里花「そうですわね。例えば――」
クロード「ハーッハッハッハ! 無様だなあ小僧!」
千棘「わっ!? クロード、いきなり叫ばないでよびっくりするじゃない!」
クロード「これは申し訳ございません。しかしこの男の嫌われようが凄まじかったものでつい」
楽「いや、あの薬って好き嫌いを逆にするんじゃねえの?」
クロード「ふん、そのとおり。確かに我々が試験した限り、あの薬はあらゆる例外なく全ての相手に対する感情を逆転させる薬だ」
万里花(こ、こん人は余計なこつば……!)ギギギ
集「あれ、例外はないんですか?」
クロード「ああ。試験した限りではだが」
クロード「しかし、一条楽! 貴様が誠士郎に好かれているなどありえん。つまり、あの薬では一定以上強い感情を反転させることはできなかったのだ!」
小咲「それにしてはいつもと違う態度だったと思いますけど……」
クロード「ふむ、もしかしたら反転させるのではなく、感情を強めるような効果になっているのかもしれません」
クロード「わかったか一条楽。これから私が誠士郎をなだめに行ってくる。貴様は指を加えて見ているがいい!」
楽「あ、はい」
千棘「あの、クロード? 私もすごく嫌われてたんだけど……」
クロード「お嬢様が誠士郎と仲が良いのはよく存じております。しかしながら私はあいつの育ての親といっていい存在であると自負しております」
千棘「……まあそれもそうね」ムー
クロード「申し訳ございません。ですがやはり異性ではどうしても遠慮が出てしまうのでしょう。男同士でなければ伝えづらいこともあるのです」
クロード「数時間で効果がなくなる薬ではありますが、1人にしておくのは忍びありません。では、行ってまいります」
千棘「うん、わかったわ。鶫をよろし……って男同士!? ちょ、クロード待っ――」
クロード「誠士郎。薬程度に負けるとは、情けない。それでも私の鍛えた――」
鶫「なんだエセメガネ」
クロード「エセっ!?」
鶫「会うなり上から目線で説教か。何様のつもりだ」チッ
クロード「せ、誠士郎、お前何を……!?」
鶫「いい機会だ。言っておこう。貴様は私を拾って暗殺者に育て上げたが、何を考えて暗殺者などにしたのだ」
クロード「そ、それは貴様の為を思って……!」
鶫「頼みもしないのに暗殺者などにならせて親気取りか」ハッ
鶫「いいか。私は貴様に感謝したことなど一度もない。むしろ毎日のように恨んでいる。よく覚えておけ!」
クロード「」ガーン!
クロード「……」トボトボ
千棘「あ、あのクロード? あれは薬のせいだからね? 本当は全く逆のことを思ってるのよ?」
クロード「ええ、はい。……お嬢様」
千棘「な、なに?」
クロード「これが反抗期というものなのですね」ガクッ
千棘「全然わかってないじゃない! 違うわよあの子はあなたにすごい感謝してるの!」
クロード「はい。……申し訳ございません。体調が優れないので先に帰らせていただきます」フラフラ
千棘「それは構わないけど、気をつけなさいよ?」
クロード「お気遣いありがとうございます」フラフラ
千棘「大丈夫かしら……」
楽「まあ大丈夫だろ。落ち着けば勘違いだったってわかるだろうし」
千棘「うん、そうだといいんだけど……」
集「そんで楽、お前どうすんの?」
楽「どうって……」
集「お前を連れてきたのは俺だから俺にも責任はあるけどさ。でも女の子にあれだけ言わせてそのままってわけにはいかないだろ?」
千棘「そうよ。鶫にあんなこと言われてなにも返さないなんて許さないんだから」
楽「ま、待てよ。さっきたまたま俺に別の効果が出たのかもって話したばっかりじゃねえか」
集「例外なく全ての人に対する感情を逆転させるってクロードさんが言ってただろ?」
楽「うっ……」
小咲「一条くん。一条くんがどういう結論を出すかわからないけど、でもちゃんと返事はしてあげて? じゃないと鶫ちゃん可哀想だから」
楽「ああ、わかってる。あれが本当だっていうなら俺も無視する気はないよ」
千棘「そう」ドヨーン
小咲「そうなんだ」ドヨーン
楽(あれ、なんか落ち込んでねえか?)
万里花(まったくこの2人は)フゥ
万里花「とはいえ、鶫さんとしては不本意な形での告白でしょうから、覚えていなければ何もなかったことにというのもひとつの方法だと思いますわ」
万里花「この手の薬は飲んだ後に記憶がなくなっているのがパターンですし」
千棘「……まあ、それもそうね。自分の知らないところで告白してるなんて想像したくないわ」
小咲「そ、それもそうだね」
楽「なんか2人ともおかしくないか? 俺もそれでいいと思うけどさ」
集「まーまー。とりあえず誠士郎ちゃんが戻るまで待ってようぜ」
――1時間後――
鶫「まったく、あいつらはいつまで待たせて――うっ」ビクッ
鶫「……! わ、わたしは」ガタガタ
楽「なんか様子がおかしいな」
千棘「治ったのかしら? ちょっと行ってくるわ」
千棘「鶫ー。調子はどう?」ガラッ
鶫「お、お嬢! も、申し訳ありませんでしたー!!」ドゲザ
千棘「ちょ、ちょっと鶫、やめてよもう!」アタフタ
鶫「いえ、薬などに負けてお嬢にあのような暴言を吐いてしまいなんとお詫びすればよいのか……!」
鶫「ご命令とあればこの命を以って償わせていただきます」
千棘「いらないわよそんなの! 悪いのはあんたにあんな薬を渡したクロードなんだから、あんたが責任を感じる必要なんてないの」
鶫「しかし……」
千棘「わかった?」
鶫「は、はい」
千棘「よし。じゃあほら、立ちなさい」
小咲「よかった。鶫ちゃん元に戻ったんだね」
鶫「小野寺様! 本当に申し訳ございませんでした!!」ドゲザ
小咲「ええ!?」
鶫「いつもよくしていただいている小野寺様にあのような失礼なことを言ってしまうなど……!」
鶫「許されるとは思っておりませんが、私の出来る限りどのようなこともやらせていただきますので何でもお申し付けください!」
小咲「い、いいから! 薬のせいなんだから気にしないで!」
鶫「小野寺様、なんとお優しい……!」ウルウル
小咲「本当に気にしなくていいからね」
鶫「ありがとうございます。この御恩は一生忘れません」
小咲「気にしないでって言ってるのに!?」
万里花「鶫さん、元に戻ったようで何よりですわ。ところで私には何をしてくださるのでしょう?」ウフフ
鶫「なんだ橘万里花。貴様にしてやることなど何もない」
万里花「扱いが桐崎さんや小野寺さんとは随分な違いですわね」
鶫「当たり前だ。貴様に何かしてやる理由などないだろう」フン
集「じゃあ俺にはー?」
鶫「同じだ!」
万里花「……ということは記憶は残ってますのね」
鶫「まあ、そうだな。正直消してしまいたいが……」
万里花「そうですか。ならまあしかたありませんわね」ハァ
鶫「一体何の話――」
楽「あー鶫? ちょっといいか?」オソルオソル
鶫「!!」ビクゥ
鶫「い、一条楽……貴様さっきの……」
楽「ああ、その話だ。出来れば場所を――」
鶫「ぜ、ぜ……!」
楽「変えたほうがっておい、どうした?」
鶫「全部忘れろーー!!」ダダダッ
楽「あ、おい! 鶫! ……ってもう見えねえ!」
千棘「もう、あの子は……ほら楽! 速く探しなさい! 私達も手伝うから!」
楽「お、おう!」
――動物小屋前――
鶫「薬を飲んでいたからとはいえ私はなんてことを……これでは合わす顔が」
楽「鶫ー!」タッタッタッ
鶫「い、一条楽!? な、なんで……」
楽「お前動物好きだろ? 俺も落ち込んだときとか動物といると落ち着くからもしかしてって思ったんだよ」
鶫「そ、そうかっ」ドキッ
楽「で、その……さっきの続きだけどさ。お前が薬飲んだとき言ってたことは……」カアァァ
鶫「……まあ、そういうことだ」カアァァ
楽「そ、そっか」カアァァ
鶫「……」
楽「……」
鶫「……本当にわからなかったんだ」
楽「え?」
鶫「私は恋なんてしたことがなかったから、お前に感じている感情が恋なのかどうか分からなかった」
鶫「顔を見ただけで胸が高鳴った。声を聞くだけで体が震えた。どうしようもなく苦しくて、切なくて、だけど不思議と嫌ではなかった」キュッ
鶫「それを恋とは気づかなくて……いや、これは言い訳だな。きっと気づいていたんだ。ただ認めたくなかった」
鶫「……それをこんな形ではっきりと気づかされるとは、我ながら間が抜けているな」フッ
楽「鶫、俺は――」
鶫「いい。それ以上言わないでくれ。これは叶わない恋で、何より許されない恋だから。せめて私からそれを奪わないでくれ」
楽「……いや、言わせてくれ。ちゃんと言わないと俺は――」
鶫「あ――お嬢!」ダッ
楽「え?」クルッ
千棘「つ、鶫!? あんたここにいたの……ってもしかして私最悪な場面に来ちゃった?」
鶫「そんなことはございません! お嬢、申し訳ありません。私はお嬢の恋人と知っていながらあの男にこ、恋をしてしまいました」カアァァ
千棘「う、うん」
鶫「で、ですがお嬢に隠していたわけではないのです! 自分でもそれがなんなのかはっきりとわかっていなくて、薬のせいでようやく自覚したという有り様で……」
鶫「とにかく! お嬢の恋人に横恋慕してしまうなど許されるとは思っておりません。明日にでもどこか遠くへ行く任務をもらうつもりです」
千棘「ちょ、ちょっと!? 何言ってんの! そんなことしなくていいわよ!」
鶫「いえ、たとえ叶わないとしても、私はお嬢の幸せを汚すような真似をしてしまいました」
鶫「そんな自分を許すことが出来ませんし、お嬢のそばにいる資格もありません」
千棘「と、とりあえず落ち着きなさい!」
楽「お、おい千棘。ちょっと来い!」
千棘「何よ! 鶫、ちょっと待ってて! 絶対にどこか行っちゃダメよ!」
鶫「……はい」ズキッ
鶫(こんなところを見ただけでも胸が痛む。やはり私はそばにいるわけには……)
楽「さっきからちょっとおかしいと思ってたんだけど、鶫って俺たちの関係知らないんだっけ?」ヒソヒソ
千棘「知らないわよ! そりゃ鶫は親友だけど、クロードの直属の部下なんだから言えるわけないじゃない」ヒソヒソ
楽「あーそうか。……あのさ、鶫に俺たちのことちゃんと言わないか?」ヒソヒソ
千棘「わかってるわよ。さすがにあんな姿を見て嘘をついたままなんて出来ないわ」ヒソヒソ
楽「よし、決まりだな」ヒソヒソ
千棘「いいの? 下手したらクロードに命を狙われるわよ?」ヒソヒソ
楽「なんとかなるだろ。それより鶫がこのままいなくなるほうが嫌だ」ヒソヒソ
千棘「……うん、あんたはそういうやつよね」クスッ
千棘「お待たせ」
鶫「いえ」
楽「あのさ、俺と千棘の関係のことなんだけど……」
鶫「なんだ? わかっているとはいえ、出来れば聞きたくないのだが」ズキッ
千棘「あのね、私たち本当は付き合ってないの」
鶫「ですからわかって――お嬢、今なんと?」
千棘「だから私と楽は本当は恋人じゃないの。事情があって恋人のフリをしていただけなのよ」
鶫「ほ、本当ですか!?」ガッ
千棘「う、うん。本当よ」ビクッ
鶫「……ということは、お嬢は本当は好きでもなんでもないのに、嫌々一条楽と付き合わされていたのですね」
千棘「え? ま、まあそういうことになるわね。……そ、そんなに嫌々ってほどじゃないわよ?」
鶫「そうですか。……一条楽! 貴様ぁ!」ガチャッ
楽「うおお! 頭に銃を突きつけるんじゃねえ! ていうか話聞いてたか!?」
鶫「どんな理由があろうと嫌がるお嬢と恋人のフリをしていたという事実は変わらん!」
鶫「お嬢、申し訳ありませんでした! クロード様からお嬢と一条楽の仲を見極めろという指令を受けていたにもかかわらず、みすみすお嬢を苦しませてしまっていました」
千棘「へ? いや、え!?」
楽「だから聞けって! 集英組とビーハイブの抗争を止めるために仕方がなかったんだよ!」
鶫「む。嘘ではないだろうな」チャキッ
楽「ほんとだって! お互いのボスの子供が付き合ってたら抗争なんてしなくなるだろって、ウチの親父とそっちのボスに頼まれたんだよ!」
鶫「……お嬢、本当ですか?」チラッ
千棘「本当よ! 高校生の間だけでもって言われて仕方なかったの。だから鶫も落ち着いて」
鶫「……お嬢がそういうのであれば」スチャ
楽「ふぅ」
鶫「冷静になってみればそんな理由でもない限り、お嬢がお前と付きあおうなど考えるはずがなかったな」フン
千棘「そ、そうよ! そうじゃなきゃ私がこんなモヤシと付き合うわけないじゃない!」
楽「うるせーよ!」
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楽「……っていうか告白した相手に言いすぎだろ」ボソッ
鶫「なっ」ボッ
鶫「き、貴様! そういうことを自分からいうな!」
楽「やべ、聞こえた? しょうがねえだろ、その、嘘だったのかってどうしても気になっちまうんだからよ」
鶫「う、嘘なわけないだろう!? お嬢のほうが大事というだけで、お前のことも、その……」
鶫「……だ、大好きだ」カアァァ
楽「う、お、おう」カアァァ
千棘(私ここにいていいのかしら)ウゥン
鶫「お嬢、一条楽。確認なのですが、2人はビーハイブと集英組の抗争を止めるために恋人のフリをしているんですよね?」
楽「ああ、そうだよ」
千棘「そ、そうよ。こいつのことなんてなんとも思ってないんだから!」
鶫「お嬢にとって一条楽と付き合っていることは本意ではないということですね?」
千棘「そうね。まあ仕方ないわよ」
鶫「わかりました。では今日からお嬢に代わり、私が一条楽の……ここ、恋人のフリをします!」カアァァ
千棘「……えっ!?」
楽「はぁ!? お前何言ってんだよ!」
鶫「今のままではお嬢は貴重な高校生活をお前の偽物の恋人として浪費してしまう。真相を知った以上、それを続けさせることなど私には出来ん」
楽「いや、それはそうだけどよ」
千棘「だ、ダメよそんなの!」
鶫「何か問題がありましたか?」
千棘「それは……」ウッ
千棘(楽のこと……は好きなのよね。ええと……)
千棘「ほ、ほら。私とこいつの関係が嘘だったなんてクロードに知られたら何するかわからないじゃない! そもそも抗争を止めるために恋人のフリをしてるわけだし!」
鶫「大丈夫です。お嬢が一条楽から解放されるのであればクロード様はお喜びになられますよ」
鶫「それに僭越ではありますが私のことも大切にしてくださっています。私が一条楽のことを、ほ、本気で好きだと説得をすればきっと抗争はやめてくださいます」
鶫「集英組のほうもまあビーハイブ有数の暗殺者を囲えるのですから納得するでしょう。何よりお互いのボス同士が抗争を望んでいないのですから、私ごときでも十分代わりは務まります」
千棘「うっ……で、でもええと……」
楽「やっぱりダメだ」
鶫「え?」
楽「お前俺に告白してくれて、でもまだ返事もしてないしさ。そんな状態で偽物の恋人になんてさせられねえよ」
千棘「そ、そう、それよ! 鶫の気持ちを弄ばせるような真似させられないわ」
鶫「今返事をもらうとして、それは私にとって嬉しいものなのか?」クスッ
楽「それは……」
鶫「いい。わかっている。今の私ではいい答えをもらえないなんて、私が一番よく知っている。……だからこそ今は返事を貰いたくない」
鶫「最初は偽物の恋人でもいいんだ! 恋人のように過ごして、そのうち本当の恋人でいいかもしれないとお前に思わせられるように頑張るから」
鶫「……それとも、やはり私の乏しい魅力ではそういう対象として見れないだろうか。もしそうならそう言ってくれ」
楽「い、いや、そんなことはねえけど……」
鶫「なら高校生の間だけでいい! その間にお前のことを振り向かせられなかったらきっぱり諦めるから! だから、だから……」グスッ
楽「……わかった」ポン
鶫「えっ」
千棘「え?」
楽「正直、今までお前のことそういうふうに考えたことなかったんだ。だからこれからお前のことそう見れるか、ちゃんと考えるよ」
鶫「ほ、本当か?」グスッ
楽「ああ、まあなるべく速く答えが出せるようにする。あんまり長く待たせるなんて不誠実なことしたくねえからな」
鶫「その場合、断られた後も私は恋人のフリをし続けなければならないんだが……」
楽「えっ? ああ、そっか」
鶫「だから、答えは高校生活が終わる日。高校3年の卒業式。その日にしてくれ」
楽「ああ、わかったよ」
鶫「約束だぞ?」
楽「ああ、約束だ」
千棘「えーっと……」
鶫「お嬢、今まで私が気づくことが出来なかったせいでご苦労をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした」
千棘「え、あ、うん」
鶫「お嬢はもう自由です! こんな男に縛られず、楽しい高校生活をお送りください!」グッ
千棘「あ、うん」
楽「お前こんな男って……まあいいけどよ」
楽「千棘も今までありがとうな。なんだかんだ楽しかったよ」
千棘「え、あ、そう」
鶫「では私たちは集英組の組長とボスのところに報告に行ってきます」
楽「そっちはまだいいとしてクロードに伝えるのは命がけになりそうだな……」
鶫「私が女というところから説明しなければならんからな……まあ、お前のことは守るから、安心しろ」ニコッ
楽「お、おう」ドキッ
鶫「そ、それでは、い、行くぞ」ギュッ
楽「お前、手……!」ドキッ
鶫「こ、恋人同士はこうすると聞いていたのだが間違っていたか?」オロオロ
楽「いや、間違ってはねえけど……」ドキドキ
鶫「じゃあこのままで行く! いいな!」ドキドキ
楽「わかったよ、ておい! 速い! 速いって!」
千棘「行っちゃった……」
千棘「……」
千棘「……」
千棘「どうしてこうなった!」
終わり
乙乙
鶫に見下すような目で罵倒されるとか……
ご褒美だな
縺翫▽
乙
千棘、不憫な子
乙
鶫カワイイ
乙
ここからが本番だよな?
鶫めっちゃ可愛いわ~
これは続きを期待せざるを得ないw
鶫めっちゃ可愛いわ~
これは続きを期待せざるを得ないw
おまけ
――翌日、一条家前――
鶫「」スーハー
鶫「……よし」グッ
鶫「」ピンポーン
楽「お、おう。本当に来たのか」
鶫「む、なんだ信じていなかったのか? 昨日来ると言っただろう」
楽「そうなんだけど、女の子に迎えに来てもらうってなかなかないからさ」
鶫「も、もしかして嫌だったか?」
楽「い、嫌じゃねえって! どっちかっていうと……いや、普通に嬉しいよ」
鶫「そうかっ」パアァァ
楽「お、おう」ドキッ
楽父「おい楽。家の前でいちゃついてんじゃねえ」
鶫「ふゃっ!?」
楽「いちゃついてなんかねえよ!!」
楽父「どう見てもいちゃついてるよ」カッカッカッ
楽「親父は黙っててくれ! 鶫、行こうぜ」
鶫「あ、ああ」
楽父「嬢ちゃん」
鶫「は、はい!」
楽父「立場的に大変だろうと思うけど、まあ今は嬢ちゃんがリードしてんだ。頑張んな」
鶫「? 私がビーハイブの暗殺者だからということでしょうか。クロード様には理解していただいたので大丈夫です! それでは!」
楽父「……そういうこっちゃねえんだが、まあいいか」
――昼休み――
鶫「い、一条楽」
楽「どうした? 学食にでも行くか?」
鶫「い、いや。その……って来た」
楽「え?」
鶫「だ、だから、弁当を作ってきた! よ、よければ一緒に食べないか?」ビクビク
楽「え……マジで!? 俺に!?」
鶫「あ、ああ。ポーラに恋人はこうするものだと聞いたんだ。あまり自信はないが……」
楽「鶫の弁当だろ? 旨いに決まってんじゃん。ありがとな」
鶫「そ、そうか。よかった」ホッ
万里花「あんたなんしとってくれとうたい!?」
千棘「し、知らないわよ。いつの間にかこんなことになってたんだから」
万里花「はぁ……本当に馬鹿じゃありませんのあなた」
千棘「な、何の話よ!」
万里花「まだいいますか。それにしても鶫さんがお弁当を作ってきたりするとは思いませんでしたわ」
千棘「あの子尽くすタイプなのよ。小さい頃から私の世話をよく焼いてくれてたもの」
万里花「なるほど……あなたが恋人のフリをしていたうちは安心してましたけれど、鶫さんとなると厄介ですわね」
千棘「む、それどういう意味よ」
万里花「あなたみたいに素直じゃない人は敵じゃありませんけど、あんなふうに素直な方は厄介という意味ですわ」
千棘「すす、素直じゃない!? ななななんのことかしら!」
万里花「……偽物とはいえ恋人のうちはそれでも良かったかもしれませんが、こんな状況になっても続ける気ですの?」ハァ
千棘「うっ……仕方ないじゃない。今さら態度なんて変えられないわよ」シュン
万里花「めんどくさい方ですわね。……まあ今は鶫さんをどうにかするのが先決ですし、2人で今後の作戦を考えましょうか」
るり「……小咲? あれはどういうこと?」ゴゴゴ
小咲「ヒィ! じ、実はカクカクシカジカみたいなことがあって」ガタガタ
るり「……鶫さんが千棘さんの代わりに一条くんの恋人になったのね。それをあんたは黙って見てたと」ゴゴゴ
小咲「こ、怖いよるりちゃん」アハハ…
るり「そんなアドバンテージをみすみす与えてどうすんのよ」
小咲「うぅ……でも私じゃどうしようも」
るり「……まあ確かに小咲じゃ千棘さんの代わりに恋人になるなんて出来ないわね」ハァ
小咲「で、でしょ?」
るり「それよりこれからが問題ね。ああやって普通の恋人みたいにしてると積極的に行くのは今まで以上に難しい」
るり「何より鶫さんは一条くんのこと好きって言ってるものね。偽物とはいえああしていると一条くんも意識していくでしょうし」
小咲「どうしよう……」
るり「あまり時間をかけてはいられないし、とにかく考えましょう」
鶫「一条楽。あ、あーん」カアァァ
楽「な、い、いいって! 恥ずかしいから!」カアァァ
鶫「だ、大丈夫だ。お嬢にもやったから」
楽「理由になってねえよ!」
鶫「……一度やってみたかったんだ。一度だけ、ダメか?」ウルウル
楽「うっ、わ、わかったよ。ほら」
鶫「あーん」
楽「」モグモグ
鶫「ど、どうだ?」
楽「あ、ああ。旨いよ」
鶫「そうかっ」ニコッ
万里花「お、思った以上に強敵ですわね」ゴクリ
千棘「あーもう、ほんと可愛いわねあの子……!」ウゥ
小咲「」プシュー
るり「小咲、ノックアウトされてないでちゃんと見ておきなさい」
――帰宅中――
鶫「一条楽。私は今日恋人らしく出来ていただろうか」
楽「ん? なんだよ急に」
鶫「私は恋人がどういうことをするのか今まで全然知らなかったから、ちゃんと出来ているのか不安なんだ」
楽「そうだな……まずその恋人らしくってのをやめようぜ」
鶫「え?」
楽「こうすると恋人らしいからこうするってなんか違うと思うんだよ。恋人らしいことをするんじゃなくて、鶫が恋人にしたいことをしたらいいんじゃねえの」
楽「……ってまあ偽物の恋人とかやってる俺の言うことじゃねえか」アハハ…
鶫「……いや、ありがとう。そうだな、私らしくない私を見せてもそれじゃ意味が無い。うん、そのとおりだ」
楽「おう。それに俺は普段の鶫が好きだぜ」
鶫「好っ……!!」カアァァ
楽「あ、いや今のは違……ってのもひでえな。悪い。今のは友達でって意味で、その……」
鶫「だ、大丈夫だ。貴様がそういうやつだということはわかっている。ただ不意をつかれて驚いただけだ」
楽「そ、そっか」
鶫かわいい
鶫「……なあ、一条楽」
楽「ん? どうした?」
鶫「これからは、ら、楽と呼んでいいだろうか」カアァァ
楽「え!?」
鶫「べ、別に恋人らしいからというわけじゃなく、わ、私がそう呼びたいと思ったんだ! ……ダメだろうか?」
楽「い、いや。別にいいけどよ」
鶫「そ、そうか。……ら、楽」カアァァ
楽「お、おう」カアァァ
鶫「……」
楽「……」
鶫「わ、私はこっちだから! ま、また明日!」ダダダッ
楽「ま、また明日!」
楽(い、一日目でこれか。鶫のやつこんなに色々してくれるなんてな)
楽(それだけでだいぶ意識しちまってる俺も大概単純だな)ハハ…
楽(あれだけ俺のこと思ってくれてるんだ。返事はまだ先だけど俺もちゃんと考えないと)
楽(偽物の恋人らしく高校生で終わらせるか、本物の恋人になって続けるか――)
…………
………
……
…
鶫かわいい
――卒業式――
鶫「ら、楽! 約束はちゃんと覚えているか?」
楽「当たり前だ。忘れるわけねえだろ」
鶫「そ、そうか」
鶫「……私は、今でもお前のことが好きだ。きっとこれから先もずっと」
鶫「私はこの2年ほど本当に幸せだった。凄く楽しかった。もう一生分の幸せはもらえたと思う。だからお前は今までのことなんて気にせず遠慮なく――」
楽「って、ちょっと待て! なんで別れの言葉風なんだよ!」
鶫「えっ? だ、だってそうだろう」
楽「ったくお前のそういうところは変わらなかったな。いいから俺に喋らせろ」
鶫「あ、ああ」
楽「……お前とした返事は卒業式にするって約束。あれは本当に失敗したと思ってる」
鶫「え?」
楽「今日まで待つのはすげー辛かったし、もっと速く言わせてくれって何度も思った」
鶫「お、お前と少しでも長くいたかったんだ。私の身勝手で迷惑をかけてすまない」シュン
楽「ああ、めちゃくちゃ迷惑だった。何度恨んだかしれねえ」
鶫「うぅ……」
楽「鶫。俺はお前ともっと速く、本物の恋人になりたかった」
鶫「…………え?」
楽「鶫、俺と偽物じゃない、本物の恋人になってくれ」
鶫「え、で、でも私にいいところなど……」
楽「いっぱいある。この2年間お前のこと見てきて、お前のこと好きになったんだ」
鶫「え、あ、その」
楽「だから答えてくれ。……鶫誠士郎さん、俺と本物の恋人になってくれますか?」
鶫「――!」ウルウル
鶫「……は、」ポロポロ
鶫「はい!」
改めて終わり
html化は依頼どおりしちゃってください。
鶫マジカワイイ
これから先如何に女っぽい格好してデートとかしても名前のせいでホモやオカマと思われてしまうんだな
クロードは罪
乙乙
鶫とかマリーとか小野寺妹とかめちゃくちゃ好きなのにどう考えても報われなさそうだからなぁ…
乙
鶫マジ天使
で、まだ書けるであろう?
さあ!卒業までのニセコイをかくんだ、さあ!!
続きを書くんだ、作業に戻るんだ
やっべぇ鶫まじ可愛くてニヤニヤが止まらないw
…で、続きはまだかな?
このSSまとめへのコメント
めっちゃ良かった
面白い、というか鶫かわいい
鶫かわいいー!
最高だー
すごくよかったッス、(泣)この続きをお願いします。鶫かわいいです、本当に素晴らしかった。
ポーラを出して欲しかった(´・ω・а)