千棘「妊娠したわ!」 (54)

ゴム屋おのでらです。
久々のニセコイssですが、よろしくお願いします。
今回はシリアスになるかもです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1436275570

私…桐崎千棘、いや一条千棘は大学卒業後無事に楽と結婚した。
一条家に嫁いだ私は、今とても充実した生活を送っている。愛するダーリンと一緒なのだから。
まあ嫁ぐといっても楽の奴は集英組を継いだわけではない。大学時代に一生懸命勉強した甲斐あってか、念願の公務員になれたのだ。

私と楽、舞子君に橘万里花、それから鶫にるりちゃんは同じ大学へと進学した。
小咲ちゃんは大学には行かず、実家の和菓子屋で働くことになったけど、大学生になってからもみんなと一緒に遊んだりはした。
ただ、同じ大学へ行かなかった分みんなと過ごした時間は少ない、そのことについて小咲ちゃん自身はちょっと寂しがってた。でも、楽や私達は相変わらず小咲ちゃんとは友達で、大学時代も今でも和菓子屋おのでらに通ったりしている。

楽しかった大学時代を終え、楽は社会人となり公務員として働いている。楽と私は大学卒業と同時に入籍した。
みんな祝ってくれた。もちろん小咲ちゃんも含めて。

そして入籍しておよそ一年が経った頃だった…。


千棘「ねえ、ダーリン。」

楽「ん?どうしたんだハニー…そんな神妙な顔してよ。」

千棘「私ね…その……出来ちゃったの!!」

楽「へ?」

千棘「だからーー、そのね、今日病院へ行ってきたの。そしたらね……出来てなの、赤ちゃん///」

楽「……………マジで!?」

千棘「……………うん//」

楽「うおぉぉぉぉーーーーーー、マジでかぁ!!!」

ダーリンは物凄く喜んでくれた。
家の中であることを忘れたのか、何回もバク転するくらいオーバーにはしゃいじゃってさ。


千棘「ちょっとダーリン、はしゃぎすぎよ!」

楽「これがはしゃがずにいられるかってッ!!?俺たちの子供だぞ、ヤベーよ、俺スゲー嬉しいよ!」

千棘「うん、私も……嬉しい//」



私達夫婦の念願である初の子供。
私も楽も、これまでの人生の中でこれほどまでの喜びを感じたことはおそらくなかっただろう。


千棘「というわけで、私、ママになりますーーー!!」

鶫「ううう……、おめでとうございます、お嬢〜〜〜〜!!」ウルウル

千棘「ちょっと、何あんたがそんなに泣いてるのよ!?」

鶫「だって、ずっとお側で見守っていたお嬢が人の母になると考えると……感慨深いですよ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」ウルウル

千棘「だからって、何も泣くことないじゃない。」

鶫「何をおっしゃいますか!? お嬢のお腹には今新たな命が宿っていると考えると……、自分のことのように嬉しいのですっ!!」

千棘「鶫ったら………ありがとう!」

ポーラ「私の方からも、おめでとうございますお嬢!」

るり「私からも、おめでとう。」

春「おめでとうございます!!」

千棘「みんな………、うん、ありがとうね!ー」


今日は凡矢理市内にあるとある喫茶店で私の妊娠の報告を兼ねた女子会だ。
メンバーはあの頃の、凡矢理高校時代のメンバー。しかし、その中に小咲ちゃんの姿がなかった。


千棘「あれ、そういえば小咲ちゃんは?」

春「あ、お姉ちゃんはちょっと遅れるって連絡がありました。今日はお店が忙しいみたいで。」

千棘「ふーん、そうなんだ。そういえば小咲ちゃんは実家の和菓子屋さん継いだけど、春ちゃんは継がなかったの?」

春「はい。私はどうしても働きたい会社があったので、そっちへ就職したんです。でも私もたまに実家に帰ってお店のお手伝いしてるんですよ!」

千棘「へーそんなんだ、偉いね春ちゃんは。ちなみに春ちゃんの会社ってどんなの?」

春「はい。ゴム製品を取り扱ってる会社ですよ。実は自社ビルも凡矢理高校の近くにあるんですよ!」

風「あ〜、そういえばそうだったね。」

カランコロンカラン…

店員「いらっしゃいませ。」

小咲「あの〜、この店で待ち合わせしてるんですけど。」

春「あ、お姉ちゃんコッチコッチ!!」

るり「あら、思ってたよりも早かったじゃないの、小咲。」

小咲「うん。お店もひと段落したんでお母さんに頼んで早めに抜けてきたんだ。あ、千棘ちゃん!そういえば千棘ちゃんのことで話があるんだよね?」

千棘「やっほーー小咲ちゃん。実はね……………私、妊娠したの!!」

小咲「え?」

千棘「私……ママになるの!」

小咲「……………………へっ!?」

るり「ちょっと小咲、あんた何放心状態になってるの?」

小咲「……っは、いやいやいやいや、放心状態になんてなってないよ!!ただいきなりのことだからつい驚いちゃってね……」

春「もう、お姉ちゃんったら。」

ポーラ「まあ、そこにいるブラックタイガーも自分のことのように喜んで泣きじゃくってたけどね。」

鶫「こらポーラ、余計なことを言うな///」

小咲「そ、そそ…そうなんだぁ〜〜。えっと………おめでとう千棘ちゃん。」

千棘「うん、ありがとうね!!」


小咲ちゃんは今でも私の親友だと思う。小咲ちゃんだけでなく他のみんなもそう。私の妊娠を自分のことのように喜んでくれた。
こうして私の妊娠を皆が祝ってくれて、私たちは喫茶店を後にした。

鶫「お嬢、ご自宅までお送りしますよ。」

千棘「え、そんなのいいわよ別に。そんなに遠くないんだし。」

鶫「何をおっしゃいますかお嬢!お嬢は今身ごもっておられるのですよ?お嬢の身体は今、お嬢だけのものではないのです。」

ポーラ「そうです。例えお腹の中の子が妊娠間もないと言えど、用心に越したことありません。私達がご自宅までお送りします。」

千棘「そう。そこまで言うのならお願いするわ。」

春「じゃ、私は一人暮らしなのでこっちへ……。」

るり「私達はこっちね、小咲」

小咲「………うん。」

千棘「それじゃみんな、今日はありがとね!」



テクテク

るり「ねえ小咲、少しおかしなことを聞いてもいいかしら?」

小咲「うん、何るりちゃん?」

るり「アンタ……本当に千棘ちゃんの妊娠を喜んでるの?」

小咲「えッ!?」

るり「だって、千棘ちゃんが妊娠の報告した時、あんた素直に喜んでなかったように見えたわよ。」

小咲「な、何言ってるのるりちゃん!? そんなこと言ったら千棘ちゃんに失礼でしょ。せっかく一条君と千棘ちゃんに赤ちゃんが出来たんだよ。おめでたいことだし、私もとっても嬉しいよ!」

るり「………そう。本当にそうならいいんだけど。でもアンタ、未だに一条君のことを……」

小咲「やめてよるりちゃん!一条君のことならもうとっくに諦めたって。一条君も千棘ちゃんも今は大切なお友達だよ。その二人に赤ちゃんが出来たんだし、こんなにおめでたいことないよ!」

るり「そう。おかしなことを聞いて悪かったわ。」

小咲「本当だよ、突然何を聞くかと思ったら……。それに一条君のことは、一条君と千棘ちゃんが結婚するってわかった時にはもう。」

るり「そうだったわね。二人の結婚式の時、アンタ泣いてたわよね。」

小咲「もう、恥ずかしいから言うのやめてよ////」

るり「まあ、泣いてたのはアンタ一人じゃなかったけど。」

小咲「あれ、そういえば今日橘さんいなかったよね。」

るり「ああ、橘さんも誘ったんだけど今日は用事があるからって。」

小咲「ふ〜ん、そうなんだね。」

一方その頃……、

楽「ってなわけで、俺、父親になりますっ!!」

集「そうか、やったな楽!」

竜「くうぅぅぅぅぅ〜〜〜〜、おめでとうございます坊ちゃん!!」シクシク

楽「おいおい、何大泣きしてんだよ竜!?」

竜「これが泣かずにいられやすかぁっ〜〜〜。坊ちゃんもついに、本当の男になるんすねぇーーーーーー!!あっしは、自分のことのように嬉しいっすよ!!」シクシク

楽「たく、大袈裟だな。」

竜「おい野郎どもッ、今すぐもち米と小豆買って来い!!今晩は赤飯パーティーじゃ!!!!」

集「あはは、相変わらず賑やかだよな。楽の周りはッ!」

楽「ああ、本当にそうだな。」



俺は今、実家である集英組の屋敷を訪れている。
理由はただ一つ、千棘の妊娠を報告しにだ。つまり俺は父親となるわけだ。竜をはじめとした組の者は大袈裟にも涙を流しながら妊娠のことを祝ってくれた。自分のことのように俺が父親となることを祝ってくれたんだ。
そして今ここには俺の幼き頃からの友人である舞子集の姿もある。集には事前に連絡していて、俺が今日実家を訪れるとのことで連絡しておいたのだ。

楽の父「いやしかし、おでてえなぁ〜。俺も死ぬ前に孫の顔を見れそうで何よりだぁ〜〜」

楽「親父、何不謹慎なこと言ってんだよ。これからも長生きしてその孫の成長ってやつを見届けてくれよ。」

楽の父「おう、そうだな。」

竜「さあ坊ちゃん、赤飯の用意が出来やしたぜッ!!遠慮せずに召し上がってくだせえッ!」

楽「もう出来たのかよ!?」

集「せっかくだから俺もご馳走になろうかな。あっ、楽、ちゃんと奥さんには遅れるって連絡しといたら?」

楽「おう、そうだな。」

千棘「あれ、楽からだ。」

鶫「一条楽…いえ、旦那様からですか?一体どのような内容で?」

千棘「うん。今夜は遅くなるなら夜ご飯はいらないってさ。」

鶫「なんだと、一条楽めっ!!身ごもつお嬢を一人にして一体何処で何をしているのだっ!!」

千棘「落ち着きなさいって鶫。ダーリンは今集英組にいるのよ。」

ポーラ「え、集英組にですか。しかし彼は組を継ぐことなく公務員の道を進んだと聞きますが。」

千棘「ダーリンは実家に今回の妊娠の報告へ行ったのよ!」

鶫「なるほど、そういうわけですか?」

千棘「あ、なんだかんだでもう着いたわ。それじゃ二人とも、ここまででいいわよ。わざわざありがとね。」

鶫「いえいえ、お嬢のためとあらばいつでも。」

ポーラ「何かありましたらすぐに駆けつけますので!」

鶫「それではお嬢、失礼いたします。」

千棘「うん、お疲れさま。」

再び集英組にて……、

竜「さあ坊ちゃん、遠慮せずにどんどん召し上がってくだせえッ!!おい野郎ども、米が足んねえぞ、もっと用意しろやぁーーーーーー!!!」

楽「って、こんなに食えるかぁーーーーーーッ!!!」

集「文字通り赤飯パーティーだね。テーブルの上に赤飯しかないよ。」

楽の父「おい、どうせなら赤飯以外にももっとレパートリーってものを考えねえと。」

羽「そんなこともあろうかと、私餃子作ったよ。」

楽「おう、ありがとよ姉ちゃん。こういう時羽姉ちゃんいてくれると助かるぜ。」

羽「そんな、餃子しか作れないけどね。さ、遠慮せずに食べて。」

楽「いっただきます〜。」パクッ



羽「それにしても、この間結婚したと思った楽ちゃんがもうお父さんになるんだね。嬉しいような悲しいような…」

集「羽姉ちゃん、おめでたい席でしんみりしないの。」

楽「ああ、それにいい加減楽ちゃんってのやめろよな。」

羽「ああ、ごめんごめん。改めておめでとう!」

楽「ああ、ありがとう。」

ピンポーン

集「あれ楽、誰か来たみたいだよ?」

楽「一体誰だろうな?」

竜「ぼっちゃん、あっしが出ますんで坊ちゃん達はどうぞくつろいでくだせえ。」

楽「おう、悪りぃな。」

竜「へ〜い、どちらさんで………………って、何しに来たんじゃてめぇらッ!!!?」

ザワザワ

楽「な、竜の怒鳴り声!?」

集「何かあったのか!?」

羽「もしかして敵対してる組織が来たとか?」

楽の父「ったく、めでてえ席なのに騒がしいったらありゃしねえ」

楽「本当だよ。だからウチは……」

集「まあまあ楽、とりあえず行ってみようぜ。」

竜「おい、これは戦争の合図と受け取っていいんかいのぉ〜?」

楽「なんの騒ぎだよ………って、警察ッ!!?」


右助「これはこれは社会のクズが揃いも揃っておめでたいことだな〜。」

竜「ああんッ!?こちとら坊ちゃんのめでてえ席だってのに、てめえらよくも邪魔してくれたな………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



楽「おいバカ、やめろ!!」

橘の父「おう右助。今回は戦争しに来よるんじゃなか。しぇっかくんめでたい席だ。目的ば忘れるな。」

右助「す、すいません。」

楽「橘の親父さんッ!!?」

万里花「そうですわよ右助、今回は楽様のお祝いに来たのですから、手荒な真似はよしてくださいな。」

楽「橘まで!?」

万里花「お久しぶりですわ、楽様!」

橘の父「おう一条のせがれ、元気にしよったか?」

楽「あ…はい。おかげさまで。それであの、本日はどういったご用件で。」

楽の父「おう、来やがったか!?」

楽「親父…、まさか親父が呼んだのか!?」


こうして、今一条家の敷地内の構図はとても奇妙なものになってしまった。
ヤクザの屋敷内に警察が立ち入るなんてガサ入れくらいしか思いたある節がないが、ウチはそういう薬物には手を出していないと聞く。
どうやら親父が呼んだらしい。俺が父親となるめでたい席だということもあり、長年の付き合いでありライバルでもあり、ヤクザと警察いう垣根を越えた仲でもある警視総監の橘の親父さんをこの席に招いたみたいだ。久々に盃を交わしたいとのことだが、一体何考えんだよ!?
よりにもよって妊娠の報告というおめでたい席で。
こうして集英組敷地内には今、ヤクザと警察という本来敵対する二大勢力が揃ったわけだ。なんとも奇妙な光景だ。

が、意外にも俺が心配しているようなことは起こらなかった。
酒の席ということもあってなのか、みんな乱暴に暴れまわることなく気持ちよく呑んでいる印象を受けた。ヤクザとか警察とか身分の柵は皆忘れ、めでたい雰囲気の中で皆談笑しているではないか。これには俺も驚いた。
橘の親父さんのおかげなのか、警察側の人間も俺のことを祝してくれたのだ。



右助「よう一条のガキ、いやもうガキじゃねえか。今回はおめでとうよ!立派な親父になるんだぞ!」

本田「この度はおめでとうございます。一条様。」

楽「ど、どうも…。ありがとうございます。」

なんか不思議な気分だな。
確かに俺はヤクザの息子であって、ヤクザではない。今は公務員として働いているからな。
でもま、こうして祝福してもらえるのはとても嬉しいことだよな。
ただ気になることがあるが……

万里花「あら楽様、こんなところにいないであちらで皆様と料理を召し上がりませんこと?この催し事の主役は楽様なのですから?」

楽「橘……おう、そうだよな。」

橘万里花……。
俺はこの子と幼い頃知り合い、互いの親同士が勝手に結婚の約束をしてしまったようで、橘の方はそれをずっと覚えていたようだが、ウチの方は親父がそのことをすっかり忘れてたみたいで、俺としては大変な目にあったというか。まあそれも今となっては思い出かな。

ただ、その当時俺は小野寺のことが好きだった。そして千棘とニセの恋人を演じなければならなかった。
結果として俺は千棘と結ばれることを選び、結婚まで至り、こうして子供まで出来たのだ。もちろん今俺が愛しているのは千棘だ、だから千棘と結婚したことも後悔はしてないしむしろ正しい判断だと思う。子供まで出来たのだからこれ以上の喜びばない。

しかし、今でもたまに思う。
橘は小さな時から俺のことを一途に思い続けていたのだ。彼女の青春期、中学や高校や大学時代も、俺は千棘と付き合っていたがそれでも橘は俺を思い続けていた。だが、橘の恋は実ることはなかった。

橘の人生を、せっかくの楽しい二度と戻らない若い学生自体を棒に振ってしまったのではないかと、未だに思ってしまう。
こんなことを思うなんて俺は未だに男らしくないし、優柔不断なのかもしれない。今は愛する妻とそのお腹にはまだ見ぬ子供までいるのに。

俺が言うのも変だが、橘は今でもとても美人で、相手ならいくらでも作れそうなのに、でも彼女は相変わらず俺を一途に想い続けていたのだ。
そんな彼女の貴重な時間を、俺は奪ってしまったのかもしれない。俺だけではないが、俺の周りの人間も、橘が俺を思い続けていたのをわかっていた。でも俺は、千棘を選んだのだ。
幼少の頃から大学時代までだから、実に十数年間にも及ぶだろうか。楽しい青春期、学生時代を橘は俺のために使ったのに、でも俺と結ばれることは叶わなかった。
二度と戻らない青春期を、俺のせいで無駄にさせたのか。だって橘は俺のために花嫁修業したり、ファミレスで結婚資金貯めるバイトまでしたり、それ以前に幼少の頃から大学時代まで俺を好きでいてくれて、貴重な時間のほとんどを俺のために使ったというのに………




万里花「そんなこと思ってはいけませんわ、楽様!」

楽「えッ!?」

万里花「そんなこと思っては、きりさきさん…いや、千棘さんに失礼ではありませんか。」

楽「え、俺もしかして…声に出してたか?」

万里花「いえ。でも楽様が何をお考えなのかは顔を見ればわかりますわ!」

楽「橘……」

万里花「確かに私は幼い頃から楽様だけを思い続けてきましたわ。小学生の時も、中学生の時も、楽様と同じクラスになった高校や大学でも、実に十数年間にもなりますわ。」

楽「…………」

万里花「確かに私の青春期は楽様をモノにするために使ってきました。結果として楽様は千棘さんとご結婚なされて、私の願いは叶いませんでした。それでも私、後悔はしてませんし、この青春期を無駄とも思っていませんよ。」

楽「橘………」

万里花「だってそうではありませんか。結果としては報われませんでしたが、その青春期、大好きな楽様のために使えたのですから。」

橘「………………」

万里花「だから、貴重な学生時代を無駄にしただなんて思ってもません。それに、今楽様が考えていることを千棘さんが知ったら悲しむと思いますよ。」

楽「………そうだな。そうだよな。ごめんな、橘。」

万里花「ですから、謝らないでください。いくら楽様でもこれ以上は怒りますよ!」

楽「そうだな、ありがとよ、橘。」

万里花「……………いえいえ、楽様が幸せでしたら、それで満足ですから。」

集「おい楽、何やってんだよ〜〜。主役がいつまでも席を外すもんじゃないだろーー!」

楽「おう、今行くよ。」

テクテク……


「」

万里花「さてと、盗み聞きとは趣味が悪いことですわね。」

羽「そんな、たまたま通りかかったら聞こえちゃってね。」

万里花「まあいいですわ。それで、あなたの方はどうなのですか?」

羽「私も同じ。もう楽ちゃんに未練はないよ。」

万里花「そうですか。それは良かったですわ。」

羽「…………………」

羽「そうだ。餃子を作りすぎちゃってね、悪いんだけど運ぶの手伝ってくれるかな?」

万里花「はあ…まあいいですわ。これでもファミレスでお料理を運ぶのは得意でしたし、お手伝いしますわ。」

羽「うん、ありがとうね……」

一方その頃……

千棘「は〜あ、楽の奴がいないと暇ね。こんなことなら鶫達を入れてもよかったかも。どうせ楽は今夜は遅くなるみたいだし。」

ピンポーン

千棘「あれ、誰だろう?」

小咲「こんにちわ〜。」

千棘「あれ、小咲ちゃん! どうしたの突然!?」

小咲「えっとね、ちょっとお話ししたいことがあってね。突然押しかけてごめんね。あの、上がってもいいかな?」

千棘「うん、いいわよ。丁度私も今一人で退屈してたんだ〜。さあ、上がって上がって!」

小咲「ありがとう。それじゃお邪魔します。」

小咲「あれ、そういえば今一条くんは?」

千棘「ああ、ダーリンなら今実家の方にいるわ。」

小咲「実家って、集英組のこと?」

千棘「そう。妊娠したことの報告らしいんだけど、帰ってくるのが夜になりそうって連絡があってね。」

小咲「ふーーん、そうなんだ。」

千棘「それで小咲ちゃん、お話しって?」

小咲「うん。話というかね……、その、妊娠したお祝いにウチから和菓子のプレゼントを持ってきたの。」

千棘「うわぁ〜〜美味しそう。わざわざ持ってきてくれたの。ありがとう!!」

小咲「本当なら一条くんも一緒だと良かったんだけどね。」

千棘「それは仕方がないわよ。そうだ、せっかくだし2人で食べようよ。」

小咲「そうだね。それじゃ私お茶用意するよ。」

千棘「そんな、小咲ちゃんはお客さんなんだし座ってて。お茶なら私が用意するから。」

小咲「そんな、千棘ちゃんは今妊娠中なのに。」

千棘「だから〜、みんなして大袈裟なんだよ。妊娠がわかったのって本当につい最近なんだよ。お腹だって全然大きくなってないし、お茶くらい平気だよ。」

小咲「そう。じゃお言葉に甘えて。」

千棘「はい、お茶が入ったよ。」

小咲「ありがとう。ほら千棘ちゃん、これは千棘ちゃんと一条くんのために持ってきたものだから、先に食べてよ。このピンク色のやつがおすすめだよ。」

千棘「わぁ〜美味しそう。頂きます……」パクッ

その頃……


万里花「皆さん、餃子のおかわりいかがですかぁ〜?」

羽「作りすぎちゃったから、どんどん食べてねぇ〜。ほら、万里花ちゃんも食べて!」

万里花「ええ、そう仰るのでしたらお言葉に甘えて。」

楽「なんだかんだで羽姉ちゃんの作る餃子ってうまいからな〜。」

楽の父「よし、そんじゃ……」

橘の父「うむ……」



一同「いっただきまぁ〜〜〜〜すッ!!!」




パクッ


羽「………………」



アナウンサー『続いてのニュースです。先日、凡矢理市内にあるヤクザ組織"集英組"の敷地内において、集英組組員とその関係者と見られる遺体、そして警視総監と警察関係者と見られる遺体、合わせて100名にも及ぶ遺体が発見されるという大変奇妙な事件が起きました。司法解剖の結果、死体のいずれもが毒によるものだということです。』

司会者『これはとんでもない大事件ではありませんか?』

コメンテーター『そうですね。まずヤクザの敷地内にヤクザと警察が100名以上いるのが不思議ですよね。しかも銃などで争った形跡がないのも不可解です。』

司会者『それに、全員が毒殺されたってことですけど、こんなことかんがえられませんよね。』

コメンテーター『ええ、普通に考えられませんよ。まずヤクザの屋敷にヤクザと警察官が争いもせず一緒に居合わせている不思議な状況で、その場にいた全員に毒を盛るって、あり得ないことですね。』

司会者『しかもヤクザといい警察官といい、薬物に関しては素人じゃないし、そうした人達に毒を盛るって犯人は一体何者なのでしょうか?』

コメンテーター『おそらくは集英組か警察組織に関係するだれかであり、計画的な犯行だも思われますね。』

アナウンサー『続いてのニュースです。凡矢理市内にあるマンションの一室で、女性が倒れているのが発見されました。マンションの管理人が通報し、解剖の結果毒殺と判明し…………』




凡矢理市内で起こった二つのニュース、
しかしこれ以降、小野寺小咲と奏倉羽の両名を見たものは誰一人としていないという。



END

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom