マルコ「………祭り」(65)
※捏造・崩壊?
※最新話とカブる点があるかもしれない
※元ネタは最後に。あと転載禁止でお願いします
――― 847年
エレン「……お前は確か、憲兵団に入って楽したいんだっけ?」
ジャン「オレは正直者だからな」
ジャン「それよりお前… マルコだったか?」
ジャン「憲兵団に入って、王にその身を捧げたいなんて… ちょっと模範解答過ぎたんじゃねぇの?」
マルコ「…そうかな」
マルコ「まぁ確かに教官にはキツいコト言われちゃったけど… でも僕は、幼い頃からずっとそう思ってるんだ」
マルコ「それはもう… ずっと、ずっとね」
ジャン「そ……っか、そうだよな」
ジャン「そういうヤツだって、いてもおかしくないよな」
コニー「つーか、ジャンだよな? お前が欲望に素直過ぎるだけだろ」
ジャン「っせーよ!!」
マルコ「……フフッ」
マルコ(……訓練兵団に入って、新しくできた仲間)
マルコ(既に人類はウォール・マリアを失い… そこからこの訓練所にやって来た者達も多い)
マルコ(住む土地を失った者は、元住んでいた所から開拓地へ移り…)
マルコ(巨人に住処を追われ開拓地へ移った大人達の大半は、前年のマリア奪還作戦でその命を奪われた……)
ジャン「……ん? マルコ、その肩の所…」
マルコ「あぁ、これは火傷の痕だよ」
マルコ「昔、ちょっとね。 前に比べれば大分目立たなくなったんだけど…」
ジャン「へぇ…」
――― 罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める
お前はそれを支配せねばならない
マルコ(同じ年頃の者達が集まれば、自然と男女の話や……)
マルコ(…故郷の家族の話になったりもする)
ジャン「…弟や妹がいると、そんなに賑やかなのかコニー?」
コニー「うるせぇなんてモンじゃねーよ」
コニー「おかげで母ちゃんなんて、朝から晩まで怒鳴りっぱなしだったから、尚更うるせぇの」
ジャン「……俺は一人っ子だから分かんねぇなぁ」
ジャン「なんとなく羨ましい気もするけどよ」
コニー「兄ちゃんや姉ちゃんだったら、また別なんだろうな」
ジャン「マルコは? 兄弟の話聞いたことねぇし、マルコも一人っ子だよな?」
マルコ「僕? 僕は姉が……」
コニー「エ!? マルコ姉ちゃんいたのか?」
マルコ「……うん、年の離れた姉がいたんだけどね」
ジャン「いた、って……」
マルコ「もう随分前に亡くなってるんだ」
コニー「……あ」
ジャン「わ、悪ィ… その、ゴメン…」
マルコ「あぁ、気にしないでよ」
マルコ「気を使われたらアレかなと思って、これまで話さないでいたんだけどさ」
マルコ「僕もまだその頃幼くて… 顔も覚えていないくらいなんだ」
マルコ「…もう10年も前のことだしね」
ジャン「そうだったのか……」
>>10年前→10年近く前
間違えた>>5 10年前→10年近く前
コニー「………ボロボロの服を着たジイサンだろ?」
サシャ「そんなに年寄りではなかったと思いましたがね」
サシャ「でも、とても痩せていて、カサカサした感じだったと思います」
コニー「そっか、オレは直接この目で見たワケじゃねーからな」
ジャン「盲目で去勢されてるって聞いたことはあるが……」
サシャ「キョセイ?」
ジャン「子供が作れねぇってこったよ」
マルコ「……何の話だい?」
コニー「印を持ったヤツの話」
マルコ「あぁ… それなら僕も前に聞いた事があるな。 『贖罪者』… というんだろう?」
マルコ「もちろん見たことはないけど… コニーやサシャは見た事が?」
コニー「オレはねーよ。 母ちゃんが妹連れて、少し離れた街まで行った帰りに見たって言ってただけだし」
サシャ「私は一度だけ… 昔、故郷の村に流れる川のほとりで」
マルコ「ふぅん… 印はあった?」
サシャ「そこまで近くに寄ってはいませんよ」
ジャン「それじゃ本物かどうか、分からねぇじゃねぇか」
サシャ「分かりますって!」
コニー「母ちゃん達も一目で分かったって言ってたぞ」
コニー「それに、あんまり近付くとたたられちまうんだろ?」
ジャン「…ハッ! 馬鹿馬鹿しい」
マルコ「でもジャンだって、見た事はないんだろう?」
ジャン「そりゃまぁ… ねぇけどよ」
マルコ「一目で分かるって… 一体どんな姿をしてるんだい?」
サシャ「それはもう恐ろしくて、忌まわしくて…… その時持っていた食べ物を投げてやるのが精一杯でした」
ジャン「ハハ、サシャが食べ物くれてやるなんて、よっぽどおっかなかったんだな」
サシャ「ううぅ… だって、私もまだ小さくて…」
コニー「でもよー、何でそんなヤツ生かしておくんだ?」
コニー「もし普通に街中歩いてたら、とっ捕まって殺されちまうんじゃねーのか?」
コニー「皆近付いて、たたられるのがおっかねーってだけなんだろ」
ジャン「コニーは知らないのか?」
マルコ「…贖罪者というのは、一度神への生贄として捧げられたものなんだよ」
マルコ「だから普通の人間が手を触れる事は禁じられているんだ」
――― お前の流した血が、土の中からわたしに向かって叫んでいる
コニー「…ハァー、なんかこう… 毎日毎日訓練に追われてよ」
サシャ「娯楽というものが欲しいですよねぇ…」ハァ
ジャン「この訓練所ってのは、俗世から隔離されてるようなモンだからな」
ジャン「でも街に出りゃ、たまには祭りのひとつでもやってんじゃねぇの?」
コニー「門限に間に合うならオレだって行きてーよ!」
サシャ「私も行きたいですぅ…」
サシャ「私の故郷も人里離れた山奥でしたが… それでも年に1度はお祭りくらいありましたよ」
コニー「オレんトコもあったなぁ…」
コニー「…弟や妹は今でも行ってんのかな」
ジャン「トロスト区の祭りは結構盛大だったぜ?」
ジャン「祭りの夜は、一晩中明かりが絶えなかったしよ」
期待支援
ジャン「……だが、シーナの祭りにゃ敵わねぇだろうな」
サシャ「内地のお祭りですか」
コニー「そんなにスゲェのか?」
ジャン「あぁ、そりゃもう賑やかなんだってよ」
ジャン「何せ ひと月もの間、踊り騒ぎ続けるらしい」
サシャ「ハアァ… それは凄いですねぇ」
マルコ「……でも、その祭りは滅多にやらないんだよ」
コニー「エ、そうなのか?」
ジャン「確か10年か20年に一度じゃなかったか?」
マルコ「30年だよ、ジャン」
サシャ「何ですと!? 30年に1回!!」
コニー「次はいつなんだよ!?」
マルコ「さぁ… 前回からまだ10年は経っていないと思うけど……」
ジャン「そんじゃ次は20年以上先か… 俺達、もういい年のオッサンじゃねぇか」
サシャ「そもそも、それまで生きていられるのやら……」フゥ
コニー「大体何でそんなに間空けるんだ?」
マルコ「分からないけど… でも祭りの後、誰かが国のとがを負い、神への供物として捧げられるらしい」
ジャン「…それが印を持った者か」
マルコ「だからそれは 『あがないの祭り』 と呼ばれているんだ」
サシャ「…全ての人の罪を負っているから、あんなに恐ろしい姿なんでしょうねぇ」
マルコ「全ての罪、か…… 僕も会ってみたいものだな」
コニー「やめとけよ、たたられちまうぜ?」
ジャン「またコニーは… そんなの迷信だろ?」
マルコ「…フフッ」
――― 849年・秋
今、お前は呪われる者となった
お前が流した血を口を開けて飲み込んだ土よりもなお呪われる
土はもはやお前のために作物を生み出すことはない
お前は地上をさすらう者となる
ジャン「……何読んでんだ? マルコ」
マルコ「ここへ入る時に実家から持ってきた本さ」パタン
マルコ「もう何度も読んでるんだけどね。 たまに読み返したくなって」
ジャン「フーン… ま、いいけどよ」
ジャン「マルコ、今度の休みどうすんだ? 家に帰るのか?」
マルコ「どうしようかな…」
ジャン「3日連休の上、中間試験で上位だった俺達はさらに2日……」
ジャン「こんな長ェ休みは年末年始くらいだもんな」
マルコ「家に帰ってもいいんだけどね」
ジャン「何か考えてることあんのか?」
マルコ「まだ決めたわけじゃないんだけど……」
マルコ「家にはまた年末に帰るし、そもそも僕の家は近いから長期休暇でなくても帰れるからね」
マルコ「今回は一人で壁内を色々見て廻ろうかと思ってさ」
ジャン「へぇ、一人旅か。 それも面白そうだな」
マルコ「今は気候もいいし、卒業したらこんな機会があるかも分からないから…」
マルコ「…ジャンは?」
ジャン「俺は家帰らねぇと、ババァがうるせぇし」
マルコ「フフ、きっと心配なんだよ」
コニー「……お、家から手紙が届いてる!」
サシャ「ほほぅ、何と書いてあるんです?」
コニー「オレこないだ、休み5日も取れるって手紙送ったからなー。 その返事だろ」ガサガサ
コニー「………なんだこりゃ」
ジャン「どうしたってんだ?」
コニー「土産… どこそこの店のナニやら、あそこの名物やら色々買って来いとさ」
コニー「こんなの、土産揃えるだけで休み1日潰れちまうじゃねーか!」
サシャ「あれまぁ…」
マルコ「アハハ、大変だねコニー」
コニー「ン? それと……」
サシャ「??」
コニー「…また 『見た』 って」
なんか淡々としてて不思議な話だな
期待
面白くなりそう
支援
マルコ「………見た?」
サシャ「もしかして、印の…?」
コニー「ウン… 今度は弟がな」
ジャン「ドコでだ?」
コニー「詳しい場所は書いちゃねぇが、村からちょっと北へ上った川沿いだってよ」
サシャ「私が初めて見た時からもう何年も経っているのに、まだいたんですね」
マルコ「……コニーの村って、訓練所からどれくらいかかるんだい?」
コニー「大してかかんねーよ。 土産買って回る方が大変だ」
コニー「サシャはこれまで家に帰ったことねーんだろ? 今回は?」
サシャ「私は帰らず、山籠もりですかね」
ジャン「…修行か?」
サシャ「そんなワケないでしょう。 狩りと、山での食材集めですよ」
ジャン「ハハ、まぁそうだわな」
マルコ「………」
――― 休暇
ジャン「…やっぱり家には帰らず一人旅か? マルコ」
マルコ「うん、寝袋や他に必要な物は前々から揃えていたしね」
マルコ「火を熾せる道具も、当座の食料も一応は持ったよ」
ジャン「それじゃ、気を付けて行って来いよ」
ジャン「マルコなら心配いらねぇとは思うが……」
マルコ「ありがとう、ジャン」
マルコ「君も実家でゆっくりしてくるといいよ」
今日、わたしをこの土地から追放なさり
わたしが地上をさまよい、さすらう者となってしまえば
わたしに出会う者は誰であれ、わたしを殺すでしょう
聖書の文章かな。
マルコ(……僕はトロスト区とエルミハ区を結ぶ街道を越え、西へと馬を走らせる)
マルコ(しばらく進むと民家が見えてきたので、道行く婦人に尋ねてみる)
マルコ「…失礼、ここはなんという村ですか?」
「ここはラガコ村ですよ、お若い方」
マルコ(やはり…… コニーの言う通り、さして時間はかからなかった)
マルコ「この北には川が?」
「ええ、ございます。 …ですが」
「今は行かれぬ方がよろしいかもしれません」
マルコ「何故です?」
「贖罪を負った者がいるからです」
「…アレはこの数週間、北の川岸をうろついています」
「つい2日前にも姿を見かけたと、村の者が話しておりました」
「まだ近くにいるかもしれません。 …お若い方、贖罪者に近寄ってはいけませんよ」
「あれは忌むべき者… 近付けば呪いを受けます」
マルコ(……まさかそれを探しに来たのだとは言えず、丁重に礼を言い馬を北へ向ける)
マルコ(全ての人々の罪を負う者……)
マルコ(何故僕はこんなにも惹かれるのだろう)
マルコ(―― 過去の災いが、僕をそれへと向かわせる)
それ故に、お前を殺す者は誰であれ
七倍の復讐を受けるであろう
誰かがお前と出会っても
お前を撃つことがないよう
お前にその印をつけよう
マルコ行くなぁぁぁぁああ!
支援
マルコ(……川のほとり)
マルコ(ただやみくもに馬を走らせても、見つかる訳ないか……)
マルコ(もうこんな時間… 昼をとうに過ぎ、夕方に近い)
マルコ(あまりお腹は空いてないけれど、馬を少し休ませてあげないと)
マルコ(…幸い川沿いだし、水も飲ませてやれる)
マルコ(あの岩場に腰かけて、昼食… 少し早目の夕食にしよう)
マルコ(……今夜はどこで眠ろうか)
マルコ(――視線?)
「ヒッ」
マルコ「!?」
マルコ(……痩せ細り髪は乱れ、盲目の)
「…ヒ、ヒッ」
「ヒッ」
マルコ(その姿は恐ろしく、忌まわしく……)
マルコ(額…… 贖罪の印を負った者…)
マルコ「……空腹、なのか? …これを食べるか?」
バッ! …ガツガツ
ゴホ… ゲホゲホ
マルコ「あぁ、水も飲んだ方がいい」スッ
グイッ ゴクゴク
マルコ「……その目、少しは見えているんだな」
マルコ「おや? 腕を怪我しているじゃないか。 …舐めては駄目だよ、薬を付けてやろう」ヌルリ
「!! ゲーッ! ググッ」バッ!
「フーッ、フーッ!」ブルブル
マルコ「僕が怖いのか? ……人々から恐れられているのは君の方なのに」
マルコ(……ボロボロの衣に、水気や脂気のない肌)
マルコ(だがサシャが言っていたように、さほど年を取ってはいないようだ)
マルコ「…君は贖罪者なのだろう?」
「」ブルブルブル
マルコ「まぁいいさ…」
マルコ(昼に食べなかった分も含め、食糧は余裕がある)
マルコ(それより今夜の寝床…… ここへ来るまでに通った所に、良さそうな場所があったな)
マルコ(川からそう離れていないし、薪も拾えそうだった。 …馬を連れ移動しよう)
マルコ「……何故ついてくる? もう僕が怖くないのか」クルリ
「………お、ま え…」
「お… 前、ほほ ほう、び をとら す」
マルコ「……何だって?」
パチパチパチ……
マルコ「……僕に褒美を与えると言ったね?」
マルコ「一体何を? 君が僕に与えることができるのは、その垢にまみれた衣くらいじゃないか」
「ほう び…… か、金や め めい、よ… なな なんでも、だ」
「……たた、たび びと… どこ どこ、いく?」
マルコ「どこでもない。 目的はもうない」
マルコ「だが、そうだな… ウォール・シーナへ」
マルコ「エルミハ区を越え、内地にでも行ってみようか。 …あの場所を見に」
「な、内地… ウォ ウォール・シーナ……」ブツブツ
マルコ(……僕は何を期待していたのだろう)
マルコ(全ての罪を負う者など、この世にいない)
マルコ(今、僕の前にいるのはただの気狂いで…)
マルコ(過去の災いは、変わらず僕を縛り続ける……)
マルコ(…こうして火を見つめていると思い出す)
マルコ(あれはもう10年も前…… 僕には姉がいた)
マルコ「姉さん………」
-------------
マルコ「!!」ガバッ
マルコ(いつの間にか眠っていたのか…… ひどい寝汗だ)
マルコ(男が、いない…?)ビクッ!
「……お 前は わ、わた 私をつつ 連れに き きた、のか?」ヒソヒソ
マルコ「何を… 言ってる……?」
「つ 連れ、に…… か かか 帰れ、る… な 内地」
「わ わ、たし は… 王、だ」
「こ、この… じじ 人、類のお 王 だ……」
マルコ「…夢でも見たのか?」
「ま 待って… ず、ずっとま 待って いた、ぞ」
マルコ「王ならいる。 古く貴い血筋を持ち、皆に敬われる王が」
「そ そいつはに、にせものだ!!」
「わ 私が ほ、ほんものだ! あ あいつらに 謀られたのだ!!」
「な、内地 へつれて行け! ほ 褒美を 好きなだけやるぞ」
マルコ「何を馬鹿な……」
マルコ(…夜明けが近い)
マルコ(この川を上流へと遡れば、エルミハ区の壁へと突き当たる)
マルコ(壁沿いを少し行けば、門へ辿り着くだろう)
男「……よぅ、お若いの!」
男「訓練兵かい? 良い馬だ。 …しかし奇妙な供を連れているものだな」
マルコ「…供じゃない。 僕の後をついてきているだけさ」
男「だが馬にも乗らず歩き、時折振り返ってはアレが追ってきているのを確かめているようじゃあないか」
男「アレが何者なのか知っているのかね?」
マルコ「人類の王なのだそうだよ」
男「ハハ、あの額の印を見た上でそう言うのかね」
男「若いの、悪いことは言わん。 馬に乗り早く去れ」
男「…とらわれぬうちに、さっさと行くがいい」
マルコ(何故、僕は歩いているのだろう…)
マルコ(……この狂人とともに)
「まだ、か…? な 内地へは まだ、かかるのか?」
マルコ「…まだだ。 この川に沿って上っても、あと2日はかかるだろう」
「早く、ゆきたい… 皆が… 民が待っている」
マルコ「誰も待ってなどいない」
「私がゆけば、皆がわたしの な 名をたたえ 花、を 投げる」
マルコ「投げられるのは石だろう」
「お、前… お前は、無礼者だ!」
「しょ 処刑、だ! 首を刎ねてやるのだ!!」
不思議な雰囲気に心持ってかれる
期待
マルコ「……今、玉座にいる王は偽物だと言ったね」
「言っ、た! あれは偽の、王だ!」
マルコ「だが…… 君もまた、偽物だったのではないか?」
「…な、なぜだ! なぜ、そのようなことばかり言う!」
「私は良い王であったのに!」
マルコ「……例えば」
マルコ「例えば誰も… 自分が悪魔でないことを、証明などできないからさ」
マルコ「……今夜はあそこで眠ろう」
----------------
「お前は若く、生気に満ちあふれている……」
「……私も昔はそうであった」
「…なぜ、お前は私に話しかける」
「長い…… 長い長い間、誰も私に話をする者はいなかった…」
「石を投げこそすれ、決して話しかけようとはしなかった」
「……私の印を見れば、皆逃げた」
「誰ひとり、近付きもしなかった… だが」
「お前は違う…… なぜだ?」
「私が追放されてからは誰も……」
マルコ「………」
「人肌だ… 心臓の鼓動、血の流れ……」
「私にふれてくれ… つめたくしないでくれ」
「私を連れて行ってくれ……」
予想がつかない
続き期待
他の誰でもない、マルコだからこそしっくりくる雰囲気だ
面白いな
元ネタとやらも気になる
マルコ「……このまま歩けば、今日中にはエルミハ区へ入れるだろう」
「………」
マルコ「どうした?」
「空気… か 風がへんだ」
マルコ「そういえば… 雲の流れが速い。 遠くに黒い雲が見える」
「…嵐、が くるぞ」
マルコ「川の傍はまずいな… おや? あそこ……」
マルコ「崖の上に小屋らしき物が見える。 …こちら側からなら登れそうだ」
「いかん… 雨がひどければ、崖ごとくずれる。 こっちだ」
「…少し離れた岩山に ほら穴がある。 そこへかくれよう」
マルコ「急ごう… 馬には乗れるか?」
「もちろん、だ」
……ザアアァァァーーーー
マルコ「……降り出したと思ったら、あっという間に嵐になった」
マルコ「この岩穴… 中は深く広く、馬も入れるし雨もここまでは届かない」
マルコ「以前から知っていたのか?」
「しばらく前 は、ここにいた」
マルコ「何にせよ助かった。 …君のおかげだ」
「み 道案内がなくては 帰れない」
マルコ「もう、今日は動けないな……」
マルコ「…まぁいい、まだ時間はある」
崖フラグを回避するし頼りになるお方だ…
本当に面白い
「―――昔」
マルコ(……岩穴の奥に転がっていた薪で熾した火に顔を照らしながら、男が語り出す)
「わ 私が王位についたのは、まだ10代の半ばであった…」
「今の、お前と同じくらいの年頃だろう」
「貴族や有力者… その者達の言うように、施政を行い……」
「…壁の外には無関心を貫き、民からは税を取り立てた」
「私はごく普通の男と同じように… 美しい女に心惹かれ、時には奪ったりもした」
「酒… 酒もだ。 浴びるように飲んだ……」
「……私は王であった」
「私は―――」
-------------
『マルコ早く… 早く隠れて! …絶対に出てきてはダメ!』
『私も隠れ…… アァッ!!』
…バタァァーーン!!
『……キャアァァァァーッ!!!』
マルコ「!!」ガバッ!
マルコ「朝…… か? どれだけ眠っていたんだ僕は…」
マルコ(いない……)
マルコ(だが荷物は… もちろん馬もここにいる)
マルコ(……どこへ行った?)
マルコ(何故… 僕は探す?)
マルコ(こうして馬に跨り、濡れた足場を駆けてまで……)
マルコ(このまま帰れば、仲間が… ジャンやコニー、サシャ… 他の皆もいるというのに……)
マルコ(執着… とでも言えばいいのか)
マルコ(………いた!!)
マルコ「――王よ!」
「!?」
マルコ「どこへゆくのだ、王よ!」
「……私は王ではない」
「内地… シーナへは戻らぬ。 …追放された者が帰る訳にはゆかぬ」
マルコ「………」
「何故ついてくる!? 私の何の用がある!!」
「……皆、私のことなど忘れている!」
「今、この身は印を押され、子孫も残せず目もよく見えない」
「何故、私を揺り起こす!?」
「…頭がはっきりしてくると、絶望が見えてくるだけだ!」
「……そうだ、祭りがあった」
「大いなる祭りだ」
「30年に一度のその年… それはあがないの年で、私には贖罪を負う王の役割が与えられるのだと聞かされた」
「狂乱のひと月……」
「その祭りが終わった日、中央憲兵が私を捕らえ、貴族や司祭どもがやってきた…」
「……そうだ、レイス家のあの男も」
「そして私に印を押し、去勢し… 目を打って、贖罪者として追放したのだ!!」
「何故、追ってくる!? …用などないはずだぞ!」
「よくも… よくも私の正気をさましたな!!」
マルコ「……帰りたくはないのか?」
マルコ「一緒に連れ帰ってやろう」
マルコ「この馬の背に乗せ手綱を引き、内地の扉のうちにも入れてやろう」
「追放された王が帰っても、死が待つのみだ! ついてなど行かぬ!!」
マルコ「……正気にさめて、その姿を見てもまだ命が惜しいか?」
「!!」
「わ、私を殺しに来たのか!?」
「…私を殺せば、七倍の復讐を受けるぞ!!」
マルコ「昨日の雨で、足元が滑る… よそ見をしていては、川に落ちてしまうよ」
「追うな! もう私を放って……… なぜ!?」ズルルッ
「うぁ… す、滑ッ!」グッ!
…ザパァーンッ!!
マルコ「そこにあった蔓を掴んだのか…」
「う、うぅ…ッ こ、この蔓は長く持たん! ガハッ… お前のロープを投げて… 馬で引いてくれ」
マルコ「昨日の嵐で川が濁流と化しているな」
「頼む! ゴホッ… 私は泳げないのだ…!」
マルコ「僕は何故追ってきたのだろう。 一度、神に捧げられた生贄を……」
マルコ「……それはきっと、ぼくもまた贖罪を負う者だからだ」
「早く…! ゴボッ、早く引っ張ってくれ!」
マルコ「………祭り」
マルコ「覚えているか、王よ…… あの祭りを」
マルコ「あれはもう10年も前… 僕はまだ、たった6歳だった」
マルコ「30年に一度きりの祭りだと、父が僕と姉を連れ内地へ行った」
マルコ「それは祭りの最後… 阿鼻叫喚に満ちた3日間……」
マルコ「花火に火事… 強姦、殺人… 内地が狂ったかのように踊り騒ぎ」
マルコ「そして祭りの混乱に乗じてやって来たお前…」
マルコ「……決して忘れられない」
マルコ「父は僕と姉を宿に送り届け、喧噪の中にまた姿を消した…」
マルコ「そこに行かなければ、酔い潰れた遠縁の者の身が危うかったらしい…… だが」
マルコ「父が去り、2階へと上がった僕と姉は階下で争う音を聞いた」
マルコ「姉は僕をベッドの下へと隠し… まさに自分がもうひとつのベッドの下へ隠れようとした時、お前がやってきた」
マルコ「……決して忘れられない」
マルコ「お前はベッドの下に隠れる僕の前で、姉を犯し… その剣で殺した」
マルコ「僕は…… ずっと、その様を見ていた」
マルコ「身動きひとつできず、姉が犯され… 殺され、冷たくなっていく様を見ていた」
マルコ「姉もまだ16だった… 大輪の薔薇ではないけれど、野に咲く花のように素朴で優しい美しい人だった……」
マルコ「そしてお前は家臣の、憲兵がやって来る、との言葉で去って行った」
マルコ「……宿に火を放ち」
マルコ「父が帰って来なければ、僕もそこで焼け死んでいただろう」
マルコ「お前は何が望みだったんだ? …たわむれに僕達を祭りの生贄として選んだのか?」
マルコ「疼く… もうその火傷の痕すら消えかけているというのに、今もなお思い出すと苦しいんだ…」
マルコ「もうずっと… ずっとそのことばかり考えて、まるで苦しい恋でもしているようだ」
「た… ゴボッ 助けて、くれッ! 昨日、嵐から救ってやったではないか!」
マルコ「……お前は僕を助けるべきじゃなかった」
マルコ「これでようやく、僕の苦しい恋も終わる……」
マルコ(……川を遡り壁沿いに馬を走らせれば、エルミハ区の門が見えてくる)
マルコ(区内… ということもあるだろうが、まだ内地だとはあまり感じられない)
マルコ(僕は馬を引き周りに目を向けながら、おのぼりさんよろしくキョロキョロと辺りを物珍しそうに見ながら歩いていく)
マルコ(もちろん馬で走れる所では、馬に乗る)
マルコ(途中、小さな子供らが僕を見て目を輝かせていた)
マルコ(……そしてエルミハ区を越え、本当の内地に入る)
マルコ(これまで、その手前までは何度か来ていたが… それ以上先に入ることができなかった)
マルコ(だがもう… 場所すら覚えていない)
マルコ(僕は幼く、既にあの宿は焼けてしまっているのだから……)
マルコ(僕はうっすらと微笑み、馬を返す)
マルコ(訓練所へ… 皆の元へ戻ろう……)
なんてこった。
---------------
マルコ「…お帰り、ジャン」
ジャン「マルコ! 俺より早かったんだな!!」
マルコ「僕は一人旅だったし身軽だからね… ジャンは良い休日を過ごせたかい?」
ジャン「ウン、まぁな……」
マルコ「どうしたの? 何かあった?」
ジャン「イヤ、俺さ… 地元でココ入ったの俺だけだったし… これまで帰る度に向こうの友達と話が合わなくて、なんとなく疎外感感じてたんだけど…」
ジャン「今回は、俺のために友達が何人も集まってくれて、来年の卒業祝いしてくれたんだ…」
ジャン「……憲兵団の入団祝いも兼ねてって」
ジャン「俺、まだ気が早ェって、笑って言ったんだけど… でも、何か嬉しくてよ……」ヘヘ
マルコ「ジャンは一見ぶっきらぼうに見えるけど、本当は相手の事をよく考えるし… それにとても優しいからね」フフ
ジャン「何だよマルコまで… 俺を褒めても、何も出ねぇぞ?」
ジャン「…ところでマルコは? どんな休日だったんだ?」
マルコ「僕? 僕は………」
サシャ「…いた! マルコォォォーーーッ!!」ダダダダ
サシャ「……と、ジャン!」
ジャン「何だよ、俺はついでか?」
サシャ「イエイエ、そういうワケではないですが… ホラ、これ!!」ガサガサ
サシャ「おすそ分けです! 山で採ってきたキノコを乾燥させました!」
ジャン「色気のねぇ土産だなぁ……」
マルコ「アハハ、嬉しいよサシャ」
サシャ「いつもお世話になってるお礼です! 何に入れてもいい味が出ると思いますよ」ニコニコ
ジャン「ならお前が作れよ。 そんで、作ったヤツ食わしてくれ」
サシャ「ジャンにもですか?」
ジャン「何だよ、俺に食わすのはイヤなのか!?」
サシャ「だって、いつも私をバカにしてるじゃないですか!」
ジャン「そりゃ、お前がいつまでたっても馬鹿だからだろ」
コニー「……アレ? 今、オレの話してた?」スタスタ
サシャ「コニィィー!」ダダッ!
サシャ「もう、ジャンには今後一切、何ひとつご馳走してあげませんからね!」ツーン
ジャン「や、違ッ… サシャが時々作ってくれるメシは確かに美味いぞ?」
サシャ「人を芋女か、飯炊き女だと思ってるクセにィィーー!」
コニー「あーあ、怒らせた」
…ワイワイ ギャーギャー
マルコ「………」ニコニコ
マルコ(……訓練兵団に入って良かった)
マルコ(皆がいてくれて良かったと、ずっと思っていた…)
マルコ(僕が皆と過ごした間……)
マルコ(…僕は、次第にあの夢を見なくなっていった)
マルコ(それは決して忘れる訳ではなかったけれど……)
マルコ(……だが過去の災いから逃れ、僕は自由になった)
マルコ(僕の罪を彼に返し彼に負わせ… 今、僕は自由だ)
マルコ(贖罪から解き放たれた今… 僕は素直に姉を愛し、その死を悼むことができる)
――― 第104期訓練兵団解散式・夜
「…いいよな、お前らは10番以内に入れてよ」
ジャン「ハァ? …何のために10番内を目指したと思ってんだ」
ジャン「なぁ、マルコ?」
マルコ「ウン、そうなんだけど……」
ジャン「何だよ、歯切れ悪ィな」
エレン「…マルコは分かってんだよ、お前と違ってさ」
エレン「次の希望が見えてんだ、きっと。 …そんでそれは、憲兵団じゃないんだろ?」
ジャン「ハアァ!? 本気か、マルコ!!」
コニー「あんなに王の傍で働きたいって言ってたお前が!?」
マルコ「ハハ、確かに僕は幼い頃からずっとそう思って… それを目指して頑張ってはきたけど…」
マルコ「僕もこの3年間で色々あったし… エレンの言う通り、外の世界を目指すのも悪くはない、と思うんだ……」
マルコ「エレンの夢は、とても素敵なものだとも……」
マルコ「……だって、僕らは自由なんだから」
ジャン「マジかよ………」
マルコ(……僕は忘れない)
マルコ(巨人の存在に怯えながらも、この世界は残酷で美しく……)
マルコ(…そして僕はきっと、幾たびも思い出す)
マルコ(まるで恋人を思い出すかのように、彼を思い出すだろう――)
ジャン「―――オイ」
ジャン「お前………」
ジャン「マルコ、か――?」
終
元ネタ
『偽王』(萩尾望都)、あと>>21の言った通り
創世記・カインとアベルの物語から、カイン追放のくだり
マルコの王へのこだわりが何なのか、的なものを書いてみたかった
読んでくれた人アリガトウ。雑でゴメンな
不思議な話だな
謎を探る旅にワクワク読めた
マルコがあんな死に方をしたのは…という想像力も書き立てられるラストも良かったよ
面白かった乙でした!
終わってた、乙!
すごく面白かったよ。ほぼ人間だけで会話してるのも良かった。
良作だと思うよ
ゴメンageちゃった
乙。元ネタも読んでみる
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