夏希「ハッピーバレンタイン」 (68)
・帰宅部活動記録のSS
・百合
──2月14日──
桜 「例え原作が2年連続でバレンタインネタをスルーしたとしても!」
牡丹「そのネタはここで回収する!」
クレア「原作がやってくれなかった分は私たちが補完するわ♪」
花梨「さすが先輩たちです!」ワーイ パチパチ!
夏希「だから原作批判みたいなのはやめましょうって」
夏希「ていうかですね」
夏希「窓の外を見てくださいよ! 帰宅部なら今日帰宅できるかどうかの心配をしろよ!」カッ!
TV 「関東甲信越では観測史上1位の記録的な大雪が・・・」
雪 「マダマダイクデー」ドサドサ!
クレア「心配しないで夏希さん、ちゃんと雪上ステルスブルドーザー装甲車を待機させているから。ただ家まで送るだけじゃなくて、通学路の雪も全て駆逐させるから明日の登校も安心よ♪」
夏希「それはありがたいですけど、雪以外のものまで駆逐しないでくださいよ……?」ハラハラ
牡丹「それで話を戻すと、本来はローマ時代に禁止されていた兵士の結婚をさせたっていうことで聖ウァレンティヌスが殉教した日なんだよな」
桜 「詳細は分かってないけど、日本で女性から男性にチョコを贈る風習が定着したのは製菓会社の宣伝の影響が大きいとされてるね」
クレア「商業主義にまみれたお菓子企業による陰謀だと思うと、何だかチョコも色あせて見えてしまいそうね」フゥ
夏希「同感なとこもありますけど、明らかに企業サイドの人に言われるとイラッとくるな」
夏希「でも急にバレンタインネタをやるとか言われてもチョコなんて用意して来てないんですけど……」
桜 「えええー!? 私だけに後でこっそり渡すように用意したりしてくれてないの!?」
夏希「なんで唐突にそんな自己中な発想が出てくんだよ!」
桜 「そんなぁ……」シュン
花梨「元気出してください桜先輩、私がチョコケーキとチョコクッキー焼いてきましたから」
桜 「おおっさすが花梨ちゃんだね、夏希ちゃんとは女子力が段違いなだけはある! どれどれー」ヒョイパク!
夏希「……」イラッ
牡丹「うん、美味い!」モグモグ
クレア「甘さも舌触りも絶妙で、花梨さんの愛を感じるわ~」ホワン
ワイワイ キャッキャッ
クレア「じゃあお返しに、私からのプレゼントも受け取って?」
夏希「あれ、これチョコじゃ無い……?」
花梨「何かの券ですか?」
クレア「ゴディ●とロ●ズの株券よ。いろいろ妨害があって買うの苦労したわ~」ハァ
夏希「チョコレートを買えよ!」
クレア「どちらも保有率51%超えてるから、待ってれば間接的にたくさんチョコレートが手に入るわよ?」
夏希「まさかのTOBかよ! 今すぐ返してきてください! 絶対大変な騒ぎになっちゃってるよ!」ガーン
牡丹「私からもプレゼントがあるんだ」
夏希「嫌な予感しかしない……ていうか、何ですかこの変な匂い?」
牡丹「これだ!」ドーン グッチャァァ
花梨「きゃああああ! 何かの臓物ですぅぅ?」ビクゥゥッ!
牡丹「何かをとは失礼な。正真正銘、ホッキョクグマの熊の胆だぞ? 倒したついでに採集したんだ」ドヤッ
夏希「チョコレートを持って来いよ!」ツーン ゲホゴホ!
牡丹「ちゃんと色はチョコレート色なのに……」ムゥゥ
夏希「いいから早く持って帰ってください!」
桜 「私はこの前外歩いてたら犬が”中”してるの見ちゃったんだけどそれがちょうどチョコレートを湯煎した時のみたいな……」
牡丹「空気清浄語(エアリフレッシュロゴス)!!」
夏希「チョコレートと話を絡めるなよ!!」ウゲロー
花梨「うぷっ……」
クレア「桜さん……デリカシーが無いのもいい加減にしてもらえる? 昨日お菓子作りでやったばかりの作業と今の話が結びついて花梨さんが気分悪くなってしまったじゃない!」キッ!
ドタバタ
──しばらくお待ちください──
夏希「ぜぇぜぇ……アンタたちはホントにロクなモノを持って来ないな!」
夏希「こういうスレではふつう女の子同士でチョコをやり取りしたりしてなんだか甘い雰囲気になったりとか、そういうのが期待されてるんじゃないんですか!」
桜 「まあまあ夏希ちゃん、そんなに興奮しないで」
桜 「ちゃんと別にチョコは用意してあるからさ♪」キャピ
夏希「あ……確かに、エアリフレッシュロゴスの効果が切れたらチョコの甘い香りが……」
花梨「部屋の奥にある布で隠されてる物体、もしかしてチョコですか?」
桜 「Yes! さー御開帳だよ!」バサッ
ドドォーン!
夏希「な、な……」
夏希「何ぃぃぃぃぃ~!?」
花梨「こ、これは……チョコで出来たなっちゃん!?」ボーゼン
夏希「……」ブルブル
桜 「そう、本邦初公開”1/1スケール夏希ちゃんチョコレートフィギュア!” クレアちゃんに頼んで作ってもらったんだよ!」
夏希「……」ピキッ
クレア「夏希さんのスペックを髪の毛から爪先まで完璧に再現したわ♪ 内部を肉抜きすることで体重も全く同じに調整してあるの」フフン
夏希「……」ギリッ!
牡丹「これはすごい……チョコで出来ていることを除けば本物とうり二つじゃないか……」カンシン
夏希「何やってんだよアンタ達は! 勝手にこんなもん作るなー!」バタバタ
花梨「ま、待ってなっちゃん! チョコなっちゃんに罪は無いの! 壊そうとしないでー!」ハガイジメ!
チョコ夏希「ナンデヤネン」
牡丹「しかし……このチョコ夏希、どうするんだ? 何か本人に似すぎてて食べるのは気が引けるんだが……」
桜 「な、夏希ちゃんを……食べる?///」カァァァァ
花梨「桜先輩、なんで急に赤くなったんですか?」
クレア「花梨さんはそんなこと知らなくていいの」
夏希(この人案外ピュアな割に耳年増だな……)
さるよけしえん
桜 「こ、このままもうちょっととっておけないかな! せっかく良くできてるんだし!」
夏希「いや無理でしょチョコですし。放置してたらGの格好の餌になりますって」
クレア「まあ今日はもう遅いし、明日考えましょう? この寒さだから、暖房を切っておけばすぐにダメにはならないと思うわ」
花梨「はい、すぐ食べちゃうのもかわいそうだし、賛成です!」
牡丹「じゃあ今日は帰宅するか」
ハーイ ガラガラピシャン
チョコナッチャンマタアシタネー
──校門──
桜 「あっ私忘れ物しちゃった! ちょっと戻って取ってくるね!」
夏希「えええ? 寒いんですから早くしてくださいよ?」
桜 「いや時間かかるかもだから先帰ってていいよ~」アセアセ
花梨「折角雪上車で快適に帰宅できるのに……」
桜 「大丈夫、ちゃんと一人で帰れるから!それじゃあね!」ザクザクザク……
クレア「桜さん、本当にいいの!? 気を付けるのよ~!」
◇
◇
支援
──翌朝 1年生教室──
花梨「なっちゃん! 大変、大変なの!」
夏希「花梨ってばそんなに慌ててどうしたの?」
花梨「さっき部室に行ってみたら……チョコなっちゃんがいなくなってたの!」
夏希「へ? いなくなるって……?」キョトン
牡丹「それよりもっと大変な問題があるんだ夏希」スッ!
夏希「ひぇっ!? ぼ、牡丹センパイいきなり後ろに立たないで下さいよびっくりするから!」ビクッ
クレア「桜さんが昨日から家に帰っていないって連絡が来たのよ!」
夏希「……え?」
花梨「そ、そんな! まさかあの大雪の中で遭難しちゃったとか……」オロオロ
牡丹「さすがに吉祥寺で遭難は無いと思うが……」
クレア「ご家族は警察に捜索願を出すそうなんだけれど、昨日から続発してる事件の対応で警察も手が回らないみたいなの」
夏希「桜センパイ……一体何が……まさか、誘拐事件に巻き込まれたとか!?」
牡丹「特にそれを匂わせるような連絡などは来ていないようなんだが」フゥ…
花梨「あっ!」
夏希「どうしたの花梨?」
花梨「さっき部室に行ったとき、拾ったの……コレ」
ぼたクレ「こ……これは!」
夏希「桜センパイの……ヘアゴム!?」
──部室──
夏希「ヘアゴムが落ちてたのはこの辺りなの、花梨?」
花梨「うん……チョコなっちゃんが置いてあった近く……」
牡丹「一体どういうことなんだ? チョコ夏希を持ち出そうとしていた犯人が、偶然出くわした桜をついでにさらったとでもいうのか?」ウムム
クレア「でもチョコ夏希さんは実際の夏希さんと同じ、ピーキロも重さがあるのよ? それを運んでなおかつ桜さんもなんてことが可能なのかしら……」
夏希「アタシの体重のことはいいですから!」クワッ
花梨「そ、そんなことより、早く桜センパイを探さないと!」
ワーワーギャーギャー
ガララッ
「君達、大声で騒ぐなと言っただろう!」
牡丹「むっ……この登場の仕方は」
クレア「生徒会長の高円レイナ!?」
「違うわっ!」ドン
「私は風紀委員長の封鬼院アゲハ! もう忘れたのかよ! ガンガンオンラインのHPで最新話見直してこい!」
花梨「ああ、2年6組の……」
クレア「生徒会長とポジションが被ってるから間違えてしまったわ」
夏希「あの今ちょっと立て込んでるので、一話限りの登場が確定してるキャラの人は引っ込んでてもらえませんか」ジロ
牡丹「特にスイーツの名前とも関連してなそうな、1秒で思いついたような適当なネーミングだしな」
アゲハ「な、何なんだよこの扱い……原作をdisるのはいいけど私をdisるのはやめろォ!」
支援
アゲハ「いいから聞けお前ら! 私が来たのは風紀委員長としてじゃない……エクソシストの家系の末裔として、この部屋から邪気の乱れを感じたからなんだよ!」
牡丹「ぷっ……またエクソシストとか言ってる……」
クレア「純日本人なのに……」クスクス
アゲハ「だぁぁぁぁ! 人の設定にケチつけるな! 足元を見ろ!」
夏希「足元?」
花梨「こ、これは……」
夏希「かすかに茶色いシミが……これは、足跡?」
クレア「そんな、まさか……」
牡丹「まるでチョコ夏希が自分の足で部屋を出ていったような……」
夏希「ま、まさか! そんなオカルトあり得ません! チョコのフィギュアが自分で歩き出すとか!」SOA!
アゲハ「じゃあこのヤホーニュースを見なさい」スマホビシ!
牡丹「なになに……?」
クレア「”吉祥寺で昨夜から、謎の茶色い不審人物?にバレンタインのチョコを強奪される事件が多発”?」
花梨「”被害者はまるで全身にチョコレートを塗りたくっていたかのように甘い匂いが立ち込めていたと証言”……」
牡丹「”一部では2~3メートルもの大きさの巨体だったとの目撃情報も”?」
アゲハ「これで分かった? この一連の事件の原因は、君達なの」
アゲハ「古来から、ヒトガタには魂が宿るとされる……いわゆる紙のヒトガタしかり、人形しかり」
アゲハ「ましてやそれを、実在の人間を忠実に再現するような精度で創ってしまい、それに人の強い念が注ぎ込まれたら……」
アゲハ「かりそめの命を得て動き出し、生きている人間を取り込んでしまうことだって起こるんだ」
◇
ピンクあざらし「最近ではiPS細胞どころかSTAP細胞というものまであるそうです」
◇
花梨「じゃ、じゃあ、桜センパイはチョコなっちゃんに取り込まれて……」
牡丹「街にさまよいだし、チョコ強奪事件を起こしているというのか!?」
夏希「人の情念って……なんでそんなことが」
アゲハ「詳しくはまだ分からないけれど……おそらくバレンタインが背景にある」
クレア「バレンタイン?」
アゲハ「日本のバレンタインは、聖なる祝日から地に堕ちた忌まわしい風習!」ドン
アゲハ「リア充がいちゃつき、百合っプルは友チョコの名目を隠れ蓑にキャッキャウフフとチョコをやり取りする……」
アゲハ「その陰で、義理チョコすらもらえない非モテ男子やチョコ交換に参加できないコミュ障喪女たちが、どれだけの涙を呑んでいることか!」
アゲハ「お前らはちょっとでも考えたことがあるのかーっ!」ゴゴゴゴゴ
牡丹「な、なんという闘気だ……」ゴクリ
夏希(この人バレンタインに嫌な思い出でもあるのかな)
アゲハ「ぜえぜえ……とにかく! この時期はそういった報われぬ情念や行き場の無い怨念が街にうずまいているんだ」
アゲハ「恐らく、そのチョコ人形はチョコレートという実体を介してそういう邪気を取り込んで膨張しつつある」
アゲハ「このまま放っておいたら大変なことになるぞ!」
クレア「大変なことって……具体的には?」
アゲハ「それはその……えっと……街を守る壁が壊されたりとか、星を滅ぼす魔女が誕生したりとか……そんな感じ?」
夏希「肝心なとこでイメージがあやふやだこの人!?」
クレア「桜さんを探すにはまずそのチョコ人形を発見すればいいのね……悪天候でヘリは飛ばせないけど、急行できる九重のスタッフを総動員するわ」
牡丹「人海戦術か……非常時だし止むを得ないな……私もつてを当たってみる」グッ
クレア「夏希さんと花梨さんは危険だから、ここで待機していて!」
花梨「えっ!? で、でも……!」
夏希「嫌です」
クレア「え?」
夏希「アタシだって、帰宅部の部員なんですよ?」
夏希「部長のピンチなら、自分ができることをしたいです」
牡丹「しかし万一襲われたら……」
夏希「お願いです、センパイたち!」
夏希「何もせずにここでただ待ってるだけなんて、耐えられないですよ……」グッ……
クレア「分かったわ……」コクリ
牡丹「でも十分に注意して行動するんだぞ!」
久しぶりの帰宅部支援
◇
◇
花梨「牡丹先輩とクレア先輩は行っちゃったけど、私たちはどうするの?」
夏希「このチョコの足跡を追ってみる」
夏希「外は雪で見つけるのは難しいと思うけど……匂いで追いかけられない?」
あざらし「任しといて♪」
アゲハ「仕方ないな……私もついていくか」
ガララッ タタタタッ……
──駅前──
あざらし「匂いはこの辺で途切れちゃったよ~」
夏希「はぁはぁ……特に怪しい影とかは無いね……」
夏希(桜センパイってば……一体どこに行っちゃったの? とにかく無事で……無事でいて!)
花梨「あ……待って、なっちゃん」
夏希「?」
花梨「こんなとこにこんな大きな建物なんてあったっけ?」
夏希「ん? そういえば……雪被っててよく分かんないけど……」
(ピクリ)
夏希(あれ、何か今動いたような気が)
ズモモモモ……
ズシィィンン……パラパラパラ……
花梨「ひぃぃ!」ビクゥッ!
夏希「た、建物が動き出した……!?」
アゲハ「違う、これは建物じゃない!」
アゲハ「雪が振るい落されて、中から茶色い巨大な物体が……これは……」
チョコ巨人「GUMOOOOOOOO~!!!」
脳内再生余裕
花梨「はわわわわわわ……」ガクガク
夏希「ア、アゲハさん! これ確かその、邪気とかでできてるんですよね? 早く祓ってくださいよ!」
アゲハ「分かったわ……これが本来の私の使命……任せておきなさい」スック
夏希(この人……1話きりの使い捨てキャラのくせに案外頼りになる?)
アゲハ「でも準備があるから……少し注意を引いて時間を稼いでもらえる?」
夏希「うぇぇ!? ど、どれぐらいですか?」
アゲハ「各種道具の手配や祭壇の組み立て、祝詞を唱える時間も合わせると……2時間半ぐらい?」
夏希「やっぱり頼りにならなかった! 無理だろその間に確実にやられるだろ!!」ガガーン
チョコ巨人「GUOOOO!」ブゥン!
花梨「な、なっちゃん! 気を付けて!」
夏希「!」
夏希(チョコでできた巨大な拳が迫ってきた……もうダメかも……)
夏希(ごめんなさいセンパイたち、気を付けるって言ったのに……)ギュウウ
ガシイッ!
「危ないところだったな!(鼻声)」
アゲハ「なっ……飛び込んできた人影が、巨大な拳を受け止めた……だと!?」
花梨「あ、あなたは……!」
玄武「また会ったな(鼻声)」
花梨「なんかアニメとか好きそうな……」
夏希「とにかく残念な人!?」
残念「違うよ萩調流四天王の玄武だよ! って名前表示ぃぃー!!(鼻声)」
チョコ巨人「NUUUN!」ゴォッ!
夏希「危ない! もう一方の拳が!」
ズドォォォン! パラパラパラ……
玄武「おっと、残念なのはお前の方だったな(鼻声)」
玄武「お前が攻撃したのは、ただの土塊で創られた残像……木偶同士気が合うんじゃないか?(鼻声)」ドヤァ
夏希(なんかかっこいい事言ってるっぽいけど滑舌が悪くてよく聞き取れない)
花梨「どうして助けに来てくれたんですか、残念さん!」
玄武「玄武だよ! 牡丹ちゃ……じゃない、萩月流の継承者が珍しく必死に頼んで来たもんだから……今日だけは萩調流も遺恨を忘れて協力することになったって訳だ(鼻声)」
夏希「牡丹センパイ……そこまでして……」ジーン
玄武「このまま押し返して……玄武残岩拳で動きを止める! それから取り込まれた人間を救出してしまえば、後はチョコの塊程度、煮るなり食うなりどうにでもなるさ(鼻声)」フン
チョコ巨人「……」ドロッ
玄武「なっ……(鼻声)」
玄武(押さえ込んでるチョコの拳が……溶けて液体に……!?)
ドロォォォッ……
ゴォォォォッ!
2期はよ
玄武「ぎゃぁぁぁぁぁ~~!!」ドザザザザザ
花梨「ざ、残念さーんっっ!!」
夏希「残念な人が、溶けたチョコ雪崩の下敷きに!?」
玄武「う……動けな……甘っ! 甘すぎて死ぬぅ!」ジタバタ
アゲハ「命には別条なさそうだが……」ハァ
「ふん、玄武がやられたか……」
「所詮、奴は四天王の中でも最弱……われら萩調流四天王の面汚しよ」
夏希「何、このどっかの少年バトル漫画からそのまんまコピペしてきたような会話は?」
残忍の白虎「俺の技はそいつとは一味違うぜ……”影人形(シャドール)”」ズズズズズ
残酷の青龍「やれやれ、さすがにここまでデカイと手加減できねぇな……唸れ水龍、吹雪け氷龍!」ドドドドド
チョコ巨人「GUWAAAAA!」
花梨「ああっ! いつの間にか駆けつけてくれた牡丹センパイの友達の四天王さんたちが何かすごい技を使ってチョコ巨人を足止めしてくれてます!」
夏希「折角の見せ場なのに説明が雑だなぁ……ってそれより! 今のうちに桜センパイを救出しないと!」
夏希「桜センパイ! 桜センパーイ! その中にいるんですか!?」
──チョコ巨人内部──
サクラセンパイ!
桜 「ん……うう……」
桜 (夏希ちゃんの声が聞こえる……)
桜 (私、どうしたんだっけ……)
桜 (確か、忘れ物を取りに戻るって言って部室に……)
◇
◇
なんでバレンタインネタやらなかったんだろうって思ったけど分かった
百合度増し増しになって編集に止められたんだきっと
──前日 夏希たちと別れた後──
ガララッ!
桜 「えへへへ……我慢できなくて戻ってきちゃった」
桜 「ただいま、チョコ夏希ちゃん」
桜 「あ、もしかして何で戻ってきたのか不思議に思ってるぅ~?」テレテレ
桜 「だって、他のみんなが居たらこんな風に頬ずりしたりできないんだもん///」スリスリ
桜 「ああ……こんなに近くで見ても夏希ちゃんそっくり……可愛い……」ポーッ
桜 「夏希ちゃん……好き……」
桜 「”アタシもですよ、センパイ♪” ななななな、なーんちゃって! ///」キャーキャー
桜 「それにしても……ホントにそっくりだなぁ……」
桜 「まるで生きてるみたい……」
桜 (何だか……チョコの甘い香りで……頭がくらくらして……)ボーッ
桜 (体が……勝手に……)
◇
◇
サクラセンパーイ! ソノナカニイルンデスカー!
桜 「そ、そうだ! その後私チョコ夏希ちゃんに取り込まれちゃって……早くここから出ないと!」ジタバタ
桜 「って、チョコに固められちゃって動けないぃぃ~」グギギ
どうしたんですか、桜センパイ?
桜 「へっ!? 目の前にチョコ夏希ちゃんが……」
どこに行くんですか?
桜 「どこって……本当の夏希ちゃんたちのとこに帰るんだよ!」ジタバタ!
あんな冷たくて鈍感でツッコミがキツくてドSな子の所に?
桜 「うっ……そこは否定できないけど……」アセ
このアタシなら、桜センパイの全てを受け止めてあげられますよ……?
寒い外になんか行かないで、アタシとあったかくて甘々な時間を過ごしましょうよ……♪
ギュウッ……
桜 (ふわぁ……チョコ夏希ちゃんに包まれちゃった……ホントにあったかい……甘い香りで、また頭がぼーっとなって……)
──外──
青龍「くそっ、何てパワーだ……これじゃ押さえておくのが精一杯だぜ……」ゴォォォ
白虎「ヤバいぜ、日が沈み出した! 俺の影が隠れてシャドールが消えちまう!」シュォォォ……
ゴゴゴゴゴ……バタン!
花梨「あ! クレアセンパイの雪上車」
クレア「ごめんなさい、朱雀さんを迎えに行ってたら遅れてしまったわ」
ダダダダーッ シュタッ!
牡丹「桜はアレの中にいるのか!?」
夏希「牡丹センパイも! はい、たぶん……でも、返事が無くて……」
牡丹「桜の位置が分からないとうかつに攻撃できないな……」クッ
チョコ巨人「UOOOOO~!」ギシッギシッ
花梨「巨人が動き出しそうですよ!」ハラハラ
朱雀「ここはあたしに任せて」ザッ
朱雀「中の子に被害が及ばないように威力を調節した炎で、チョコ巨人の表面だけを溶かす!」
牡丹「頼むぞ朱雀! 今はお前だけが頼りなんだ!」テヲギュッ
朱雀「なっ!? べべべべっ別にアンタの為に頑張るんじゃないんだからね! あんな化け物にウロチョロされたら萩調流の名折れだから協力するだけなんだから///」
夏希「ツンデレはいいですから早く何とかしてください!」ヒッシ
クレア「桜さんに火傷なんかさせたら夏希さんに責任取ってお嫁に貰ってもらうわよ!」
夏希「なんでアタシぃぃ!?」ギョッ
朱雀「もう分かったよ、全く……」コォォォォ…
朱雀「いろいろっ、注文厳しいな、あんたら、はっ!」ハァッ!
”萩調流 奥義 焔より生まれ出ずる不死鳥の舞!” ゴォォォッ!
ドロドロドロ……
夏希「あっ! 表面が溶けたおかげで桜センパイが見えた! 良かった、やっぱりちゃんと中に居たんですね!」
花梨「でも、気を失っちゃってるみたい……!」
クレア「しかも、内側の脈動するチョコの塊から出た枝みたいなのが、桜さんに絡みついているわ」
牡丹「とにかく、桜の場所が分かればこっちのものだな! 私が桜を引っ張り出したら、四天王は総攻撃を」
アゲハ「待つんだ君達、それはダメだ」
夏希「?」
花梨「まだ居たんですね~、アゲハさん」
クレア「セリフが無かったから存在を忘れてたわ」
アゲハ「……」
アゲハ(こいつらやっぱり嫌いだー!)ウワァァァン
牡丹「つまり、あの内部で心臓みたいに動いてる塊は巨人の核(コア)で」
朱雀「それを破壊しない限り、いくら攻撃しても再生するってのか……」
クレア「うなじを削いでもダメだなんて、何て斬新な設定なの……!」
夏希「え、それ斬新ですか?」
アゲハ「問題はそれだけじゃない……コアは道明寺さんを精神的に浸食して同化しつつある……今無理矢理に引き剥がしたりしたら、脳機能に重い後遺症を残すことになる可能性が高い……!」
全員「!!」
アゲハ「そう、言ってみれば機械式の箒で飛ぶ魔女のアニメの2期最終話みたいな状況だ」
夏希「説明が読む人に全く優しくない! 見てないと意味が分かんないじゃないですか! それに設定がパクリだって間接的に認めたようなもんですよねぇ!?」
◇
あざらし「AMT(あざらしマジ天使)!」
◇
支援
牡丹「くっ……じゃあ一体、どうすればいいっていうんだ!」ギリッ
巨人「GISHAAAAA!」ゴバーッ!
白虎「ぎゃあああ! チョコの雪崩れがぁぁぁ!」ドロドロドロ
青龍「くそっ、白虎がやられた! こっちももう限界だぞ……!」ギシ…ギシ…
アゲハ(もう時間が無い……できれば本人に確認したかったけど、ここは賭けに出るしかない……)
アゲハ「私に一つ考えがある」スック
夏希「いい手を思いついたんですか!?」パァァ
アゲハ「君……道明寺さんのためなら何でもする覚悟はある?」ジッ
夏希「……?」
◇
◇
牡丹「みんな手はずは分かったな? クレアと花梨は下がっているんだ」
花梨「分かりました!」
クレア「信じてるわ、牡丹さん、夏希さん」ギュッ…
牡丹「夏希、準備はいいか?」
夏希「……はい!」グッ
牡丹「青龍! 私の合図で離脱しろ!」
青龍「チッ……今日だけはお前に従ってやるよ……!」グググ
牡丹「3・2・1……今だ!」
青龍「上手くやりやがれよっ!」ダンッ!
チョコ巨人「GAAAAAAAAAA~~!!!」ズシィィィン……!
あげ
”萩月流古武術 奥義”
牡丹「真・水平斬り……二連!」
ギュォォォォォ……ザザンッ!!
チョコ巨人「GU……A?」
グラァ……ズシィィィン!
青龍「さすが牡丹ちゃんだぜ……見事に巨人の両脚を切り落としやがった」
朱雀「それだけじゃない! 水平にわずかに角度を付けることで、巨体を倒さずに胴体より上を前に滑り落とした!」
牡丹「行け、夏希! 奴が再生する前に!」
夏希(この高さなら届く……届かせてみせる……桜センパイっ……!)
ダダダダダッ ダンッ!
チュッ ガチンッ
──少し前──
桜 (体が重くて、だるくて……でもあったかくて……)
桜 (そうだ、部室での続き、思い出した……)
◇
◇
桜 (何だか……チョコの甘い香りで……頭がくらくらして……)
桜 (体が……唇が、勝手に……)
チュッ…
チョコ夏希「……」スッ
桜 「……え? ちゅーしたら、チョコ夏希ちゃんの目が開いた……?」
センパイ、アタシを起こしてくれてありがとう
このまま一緒に、甘い甘い時間を過ごしましょう♪
カチャーン……(ヘアゴムの落ちた音)
◇
◇
あざらしえん
桜 (このままチョコの夏希ちゃんと一緒になったら、幸せなのかな……)
桜 (だって現実の夏希ちゃんってば、いつもドライだし、ツッコんでばっかりだし……)
◇
「やってもいいことをやれよ!」
「約1名は今すぐ帰れ!」
「アンタら本当にアホだな!」
「ちょっといい話かよ!」
◇
桜 (くすっ……本当に夏希ちゃんってば……)ツゥッ…
桜 (あれ、何で私、泣いてるの……?)
桜 (そうか、私……)
桜 (会いたいんだ)
桜 (ドライでも女子力無くても面倒くさがりでもドSでも)
桜 (本当の夏希ちゃんに会いたい……!)
桜 (もしまた会えたら、今度こそちゃんと)
◇
◇
チュッ ガチンッ!
桜 「って痛ったぁぁぁぁ!?」
夏希「っつぅぅぅぅ……」ナミダメ
牡丹「や、やったのか!?」
花梨「ちゃんとなっちゃんと桜先輩の唇がくっつきましたよ!」
クレア「勢い良すぎて歯がぶつかったみたいだけど……コアから桜さんが解放されて、意識も戻ったわ!」
牡丹「キスでヒトガタに命が吹き込まれたとしたなら、キスでその呪いも解除できる……まさかアゲハの推測が本当だとは」
アゲハ「別に、大して難しい推理じゃないよ」
アゲハ「それこそ、童話の時代からの使い回しネタでしょ?」
アゲハ「キスで眠り姫は目覚める、なんて」クス
支援
桜 「いいいいいいきなり何すんの!? 夏希ちゃん!///」ズキズキ
夏希「うるさいですね……あつつつ……さっさと出てきてくださいよ」グイッ ズルッ
桜 「ちょ、ちょっと、もう少し優しく引っ張ってよ~!」ギャーギャー
やっぱり行っちゃうんですね……センパイ……
なつさく「!」
桜 「チョコ夏希ちゃん……」
夏希「ごめんね」グイ
桜 「あう……(夏希ちゃんに肩抱かれた!?)///」
夏希「桜センパイが行方不明になって、アタシ初めて分かったんだ」
夏希「いつも突拍子もないことばっかり言って、今回みたいにとんでもない騒ぎばっかり起こして」
夏希「でもセンパイが居てくれないと、アタシは寂しくて……辛くて……とても耐えられないんだって」
夏希「だからごめん」
夏希「あなたに桜センパイは渡せない」
分かってたよ……だってアタシはアナタだもん
夏希「……」
ありがとう
ほんのちょっとの間だったけど、幸せだったよ
桜 「チョコ夏希ちゃん……」
さよなら、アタシのセンパイ
今度生まれ変われたら……人を幸せにする何かになりたいな
”バレンタインデーのチョコレートみたいに”
ズズゥゥン ドロォ……
クレア「チョコ巨人が……」
牡丹「崩れていく……」
花梨「何だか、かわいそうです……」グスッ
桜 「さよなら、チョコ夏希ちゃん……」
──2km手前の狙撃地点──
ハギシラベ13「出番無しか……」
◇
あざらし「あざらしの後ろに立たないでね」
◇
(玄武さんと白虎さんは無事救出されて)
(大量のチョコレートは、崩れて雪の中に埋もれていった)
(九重財閥の隠蔽工作と情報操作で、バレンタインデーの事件も大雪の報道の中に紛れて忘れられていった)
(本物の夏希ちゃんとのファーストキスは、想像してたのと全然違って)
(甘くもないし冷たかったし歯がぶつかって痛かったし)
(でも確かに実感を伴って私の中に残ってる)
桜 「だけどそれにしたってあんまりだと思うんだよね! 事前の同意無しだし! ファーストキスだったのに~!」シクシク
夏希「だってしょうがないじゃないですか、他に手段が無かったんですから」ハァ
桜 「バレンタインのチョコもくれなかったし!」シクシク
夏希「うっ……それは……」アセ
桜 「とにかく! やり直しと埋め合わせを要求します!」
夏希(この人自分のせいでこんな騒ぎになったって自覚ゼロだな!)
桜 「ヤダヤダちゃんとやり直ししてくんなきゃヤダー!」ジタバタ
桜 「夏希ちゃんのくせに生意気だぞー!」ゴロゴロ
夏希「あーもーうっとうしい!」
──数日後 部室──
牡丹「……で、そのやり直しと埋め合わせの結果」
クレア「今の事態に至っていると……?」
ンー チュッチュッ…
桜 「ちゅぱっ……夏希ちゃんの口の中で溶かしたチョコ、おいひぃ♪」
夏希「もぉセンパイってば……さっきから自分が食べてばっかりじゃないですか……アタシにも食べさせてくださいよ」
桜 「りょーかい♪ もむもむ……んちゅっ……♪」
夏希「うむっ……ちゅるっ……♪」
桜 「あ、ちょっと唇の端に垂れちゃった……もったいない」ペロッ
夏希「あんっ! ちょ、ちょっと、くすぐったいですよぉ♪」
イチャイチャ キャッキャッ
花梨「なっちゃんを膝に座らせて口移しでチョコ食べさせ合ってる……すごい光景ですぅぅ///」プシュゥゥゥ
クレア「どれだけ人前でイチャイチャすれば気が済むの二人とも!? ///」
牡丹「桜はともかく、夏希まで……いくら衝撃的な事件があったからって吹っ切れ過ぎだろう!」ドン
桜 「ちゅぱ……んっ……だって」
夏希「ねー♪」クス
桜 「ねー♪」ニコ
クレア「……」イラッ ピポピポ
牡丹 「……」ギリッ コォォォ…!
花梨「クレア先輩! スナイパーに連絡しないでください! 牡丹先輩も奥義の気を溜めないで!」アセアセ
(だって、あの子の想いを忘れたくないから)
(きっと街を白く染めた雪も、すぐに溶けて消えていってしまうんだろうけれど)
(アタシたちはこの気持ちを大事にするって決めたんだ)
(由来とか慣習とかは関係ない)
(バレンタインデーのチョコレートは、みんなを幸せにするために贈られるんだから)
夏希「ハッピーバレンタイン、桜センパイ♪」
桜 「ハッピーバレンタイン、夏希ちゃん♪」
イッマーシッカーデッキナイー♪
ガララ!
クレア「ちょっと待ってもらえるかしら、二人とも」
夏希「なっ……クレアセンパイにエンディングを阻止された!?」ギョッ
クレア「二人とも……大事なことを忘れてない?」
桜 「大事なこと?」キョトン
クレア「チョコレートというのは、雪山での携帯食として利用されるぐらい、非常に高カロリーな食べ物なのよ」
クレア「あなたたち、毎日毎日そんなにチョコを食べさせ合って……そろそろ影響が出始めてないかしら」
牡丹「なるほど! お菓子を食べるネタが来れば次にくるのは鉄板の……」
なつさく「あ、あ……」サァァ
クレア「夏希さん! あなたはアイドルの卵のくせにレッスンをサボってお菓子をやけ食いしてるのと同じぐらい!」ドン
クレア「桜さん! あなたは毎日毎日カップラーメンを常食にしてるのと同じぐらい!」ドドン!
クレア「とんでもないカロリー過多に陥り始めているわよ!」ドドドンッ!!
◇
あざらし「アザラシのススメ」
◇
夏希「って、何なんですか今の例え!? アタシじゃない人の話でしたよねぇ!?」
桜 「私の方はもっと分かりにくかったんだけど! そりゃー中の人にはこれからももっと活躍してほしいけどさぁ!」
牡丹「そんなことより、二人のために体重計を持ってきてやったぞ」ズシン…
桜 「わわ私は別に、全然太ってなんかないよ? それより夏希ちゃんの太もも、前よりむっちりしてきたんじゃない? せっかくだから乗ってみたら?(震え声)」アセアセ
夏希「そ、そういう桜センパイこそ、ほっぺが大分ふっくらしてきたんじゃないですか!? アタシはいいですからお先にどうぞー(棒)!」
花梨「……」ズモモモモ
花梨「二人とも……まさか毎日体重チェックしてないんですか?」
夏希(ま、毎日……)
桜 (体重を測る、だと……?)
花梨「女子として自覚が無さすぎです! す ぐ に 体重計に乗ってください!」
夏希(花梨が花梨先生モードになっちゃってる!?)ビクッ
牡丹「さあ」ズイ
クレア「さあさあ」ズズイ
花梨「さあさあさあ!」ズズズイッ!
なつさく「ひ……ひっ……」
なつさく「ひぃぃぃぃぃ~っっ!!??」
■ 次回! ダイエット回ッ!!
◇
あざらし「あざらしの向こう側へ!」
◇
・終わりです
・しえんさんくす
・以下アニメ2スレより公式情報転載
【原作情報】
・「ガンガンONLINE」で第2木曜日、最新話を更新
・原作コミックス 既刊4巻 価格:各\500
・コミックアンソロジー極 帰宅部 (読み切り版収録) 価格:\600
【CD】
・乙女新党「2学期デビュー大作戦!!」
(初回限定盤)(DVD付)価格:\1,600(税込)
(通常版)価格:\1,200(定価)
・帰宅部@音楽室♪ アニメ「帰宅部活動記録」キャラソン&サントラ集
(初回限定盤)(DVD付)価格:\3,300(税込)
(通常版)価格:\2,700(定価)
【BD/DVD】
・帰宅部活動記録BD 価格:\6,090/DVD 価格:\5,040 全4巻発売中 各巻3話収録
*グラフィグ2種類あり
・一般店特典
・ヨドバシ特典
いつもおつおつ
おつ
乙
乙
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません