真姫「にこちゃんと夜空に架かる虹を見るわ」 (103)
・にこまき
・未来設定、鬱展開、地の文、エロ表現あり注意
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にこちゃんが倒れた──その報を聞いたのは、彼女がようやくプロのアイドルとして歩み出そうとしていた矢先のことだった。
地方の公民館の、ほとんど手作りのようなささやかなステージ──それでも観客の入りは6-7割といったところ──の上でのパフォーマンス中、彼女は突然崩れ落ちるように舞台の上に倒れ、ソロライブは急遽中止。救急車が要請され、近くの総合病院へと搬送された。
芸能ニュースの移り変わりは激しい。直後こそかつて有名だった元スクールアイドルグループの一員の身に降りかかった悲劇としてメディアを賑わせたが、すぐに人々の記憶からも消え、にこちゃんのアイドルとしての足跡もかき消されていった。
彼女が高校を卒業した時、μ'sの名はラブライブ優勝グループとして世間に鳴り響いていた。いくつもの大手事務所からのオファーにあったように、その名前を存分に利用して売り込んでいけば、瞬く間にスターダムを駆け上がるのも夢物語ではないと思わせるほどに。
でも、にこちゃんはそれを良しとしなかった。
「私はプロのアイドル、矢澤にことしてゼロからスタートしたいの」
なんてことを口では言っていたが、要するに彼女はμ'sという存在を愛しすぎていたのだろう、私たちと同じように。かつて個人用ブログで勝手に宣言していたようには、通過点、踏み台としてμ'sの名を利用することができなかったのだ。
結局、レッスン費用は自前、宣伝はチラシと個人ブログのみ、ステージは路上パフォーマンスとネット配信という実に地道な形で、にこちゃんの地下アイドル活動はスタートした
その毎日が過酷だ──などと、彼女は一言も口にしたことがなかった。
たまに街角のチェーンのカフェで慌ただしく会うとき、彼女はとりつかれたように輝かしい未来や華やかな芸能生活への夢を語った。思えば、私が相槌や皮肉を差し挟む間も無いほどのあの勢いは、まるで自分に言い聞かせるために語っているようではなかったか。
やっとそれを悟ったのが彼女が倒れてからだというのだから笑える。
自費で製作した楽曲CDはそこそこ売れたというが、自らのステージをプロデュースするのにかかる経費はその比ではない。それを補うためにアルバイトをすれば、相対的にレッスンの量が減る。
なんだかんだ言っても知名度を後押ししてくれていた元μ'sという肩書も、次々と新しい人気スクールアイドルが誕生する中で徐々に効果を失っていく。おまけに、かつて彼女に声をかけてきた芸能事務所からの妨害、圧力もあったという話だった。
おそらくその全てが原因だったのだろう。
過度の身体活動とストレス、貧弱な食生活。
そして先天的な、1万人に1人以下という確率で彼女の体を蝕んでいた血管の疾患。
「脳梗塞……ですか?」
駆けつけた病院で、縋るように頼まれて同席した診察室。
彼女の母親が絞り出した言葉には信じられない、という響きが込められていた。
それはそうだろう。まだ二十代の娘が告げられる病名としては、あまりに違和感があり過ぎる。
しかし私にはすとんと胸に落ちるように、全てが理解できていた。
すなわち──芸術と音楽の女神は、にこちゃんを見放したのだ、と。
◇◇◇
マンションの自室の扉を開けて中に入ると、もう日は落ちたというのに電灯はつけられておらず、わずかに漏れる光と音を頼りに私はリビングに向かった。
靴は脱がない。この部屋は全ての段差が取り払われていて、そもそも靴を脱ぐ玄関というスペースが存在しない。
かつての彼女だったら「外国みたーい♪」とでもはしゃいだだろうか。
「……にこちゃん?またそんなの見てるの?」
自分の声に険が混じるのを、どうしても止めることが出来なかった。
リビングのテレビの画面で煌びやかな光をバックに舞い踊るのは、かつての私たち、μ'sだ。
ただの思い出だけでは嫌だと、夢を叶えるのだと高らかに歌い上げる様子には、待ち受ける将来への不安など微塵も感じられない。
画面の中で生き生きと駆け回り、笑顔で歌う高校生の頃のにこちゃんと、その姿を車椅子の上から無言で食い入るよう見つめる今のにこちゃん。
私はその対比をこれ以上見ていられなくなって、彼女の傍らのリモコンを取り上げる。
プツッ。
画像と音が途切れるのと同時に、にこちゃんが振り向いた。
「……っっ!」
言葉にならない抗議の声をあげて、細い両腕で掴み掛かってくる。
その力が、悲しいほどに弱々しい。
決して強くないはずの私の細腕でも、たやすく押さえ込んでしまえるほどに。
「う……うう……」
「ごめんね、にこちゃん……」
私は、そのまま暴れるにこちゃんを抱きしめた。
「でも、もう私たちは昔の私たちじゃないの。分かってるでしょ……?」
もはや、私たちが眩いスポットライトや割れんばかりの喝采を浴びることはない。
夢見る季節は、願えば想いは叶うと信じていた時期は、既に過ぎ去ってしまったのだ。
「いい加減に過去は忘れて、前に進まなくちゃ。そうでしょ、にこちゃん……」
それでも、答えはない。
それは、にこちゃんのせいではない。
彼女はもう、喋ることができないのだ。
◇◇◇
全般性失語症と右不全片麻痺。
平たく言えば、言語障害と右半身不随。
診断書ならたった一行で片付く後遺症が、今の彼女の全てだ。
もはや彼女は歌うことも踊ることもできない。
それどころか、食事も入浴も排泄も、人が手を貸さなければ済ますことができない。
だからヘルパーが来られない日は、私がこうして一緒にお風呂に入り、身体を洗ってあげなくてはならないのだ。
泡立てたスポンジを彼女の白い肌に滑らせると、にこちゃんはくすぐったそうに身をよじる。
そのうなじが赤く染まり、言葉にできない感情を代弁している。
言語と手足の自由を失っても、恥ずかしいと感じるにこちゃんの情動は失われていない。
それは、不幸中の幸いと呼ぶべきなのだろうか?今の私には分からない。
介護する人間を閉口させるほど攻撃的になったかと思うと、精根尽き果てたように無気力な状態に陥り、全てに背を向ける。
その様子が自暴自棄になった末に辿りついた精神状態なのだとしたら、むしろ彼女の全てが失われてしまった方が良かったのでは……と思うことすらあった。
「じっとしてなさいよ、にこちゃん」
耳元でぼそりと囁くと、華奢すぎる身体がびくっと小さく震える。
言葉の意味は分からなくても、私がこれからすることは理解しているのだ。
脇腹やおへそから乳房にかけてマッサージするようにゆっくりとスポンジを滑らせる。
「……っ、うっ……」
スポンジの繊維がときおり敏感な部分を擦ると、先端の突起がみるみる膨らんでいくのが彼女の肩越しに観察できた。
病的といっていいほどの肌の白さと、紅茶色の突起がぷくりと硬く勃ち上がってくる色彩の対比が、私を興奮へと駆り立てる。
つぅーっ……
浅ましく息を荒げながら、突き出した舌の先端で肩から首筋まで舐め上げると、
「ひぃっ……」
かすれるような声を漏らし、彼女は背筋を震わせた。
後ろから太ももへと回した手のひらを、ゆっくりと付け根の方へ沿わせ……ついにはぷくりと膨らんだ秘部の周囲へと到達させる。
「嫌だったら、やめてって言えばいいのよ?」
そんな台詞には、もちろん何の意味も無い。
そしてにこちゃんの返事を待とうともせず、私はゆっくりと蹂躙を続ける。
彼女の身体の他のパーツと同じように、幼なげな造形をした下の唇を押し広げ、敏感な突起を指の腹で丹念にマッサージする。
「はうっ……あ、うっ……」
彼女は拒否の言葉を発しない。
後ろから抱きしめる腕に力は入れていないのだから、不自由な体でももがいて抜け出すことぐらいはできるはずだが、それもしない。
それが私を信頼してのことなのか、生殺与奪を握られているために仕方なく身体を委ねているのかは、ついぞ知る機会を与えられたことはなかった。
はっきりしているのは、小さな突起を優しく撫で続けている間に、にこちゃんの吐息は徐々に甘く切羽詰まったものになっていき、そのすぐ下の窪みに指を伸ばせば暖かいぬめりが溢れ出てきているのを感じ取れることだけだ。
顔を俯かせて小さな手をぎゅっと握り、ぷるぷると四肢に力を入れては脱力することを繰り返す様子が、何とも言えない淫靡な可愛らしさを醸し出していた。
「にこちゃん……好き……好き、好き、好き……」
自分がどうしようも無く勝手な行為に及んでいることを理性では承知しながら、私の唇は勝手に言葉を溢れ出させる。
指の動きはピッチを上げ、かき混ぜるような運動に変わっていく。彼女の秘所から上がるぴちゃぴちゃという粘つく水音が大きくなる。
ぐり、と思わず力が入った指先が少しだけ強めに肉の突起を押し込んだとき、
「あ、ひぃ……っっ!」
にこちゃんは一際強く背筋を反り返らせ、しばらくぶるぶると痙攣するように全身を硬直させた後、ぐったりと弛緩した。
荒い息をつく彼女の頬に頬を寄せる。
「好きよ、にこちゃん……あなたがどんな姿になっても、どんな重荷を背負っていても、ずっとずっと大好き……」
それでもやっぱり、にこちゃんは答えてはくれない。
あんたなんて大嫌いよ、という返事でいいのに、それだけで構わないのに、何も答えてはくれない。
渦を巻いていたどす黒い熱情が引いていくのと入れ替わりに、私の心は重く冷えていく。
彼女の火照った体をシャワーで洗い流しながら、私は彼女の家族がこんな様子を見たら何と言うだろうと考えていた。
◇◇◇
半年前、久しぶりに訪れた矢澤家で出迎えた彼女の母親は愕然とするほどやつれており、私は学業や仕事の多忙さを理由にして頻繁に訪れなかったことを後悔した。
結局、私は怖かったのだろう。だからにこちゃんから逃げていたのだ。
記憶の中の姿が……かつてあの音ノ木坂で、泣き、笑い、熱くアイドルへの情熱を語ったあの生き生きとした姿がかき消されてしまうような気がして。
リハビリテーション病院を退院しても、にこちゃんの後遺症が良くなったわけではない。
介護保険が適用されても、訪問ケアを受けられるのは週に3日、それも数時間で、それ以外は家族が彼女の面倒を見なくてはならない。
もうすぐ大学受験の妹と思春期に入った弟を抱え、家計をやりくりするだけの収入を確保し、日に日に悪化するにこちゃんの癇癪に対処する……
そんな無茶が土台、成立するはずはなかった。
「にこちゃんは私が引き取ります」
そう告げた時に彼女の母親の顔によぎった安堵の表情を非難する資格は、私にはない。
その時私の頭にあったのも、にこちゃんとその家族を助けたいという善意ではなく、それどころかにこちゃんと一緒に居たいという私欲ですらなく、ただ、これで医局から逃げ出すきっかけができたという安堵の気持ちだったのだから。
私は高校生になるまで、両親に決められた道を進む以外の生き方を知らなかった。
反抗期らしい反抗期すらなかったその時期が、考えてみれば、もっとも幸せだったのかもしれない。
私は親の庇護という安心を、親は私をコントロール下に置くという安心を得て、蜜月の関係を築いていたのだ。
ある日突然その関係が壊れたのは、もちろんμ'sが原因だった。
穂乃果たちμ'sの面々の登場は、私の平穏な人生にとっては安全な内海から嵐に巻き込まれ、突然大洋に投げ出されたようなものだったのだ。
私は初めて外の世界を知り、自分のやりたいことをやるという自由の味を知ってしまった。
両親、特に父は困惑し私を引き戻そうとしたし、それで元の鞘に収まればある意味解決だったのだろう。
あるいは力の限り抗って、新たな妥協点という関係を作り直すこともできたのかもしれない。
でも、私はどこまでも中途半端だった。
海未たちの口添えでスクールアイドルの活動を続ける許可を得る代償に、将来は病院の跡取りとして生きることを約束させられる。
その事実が枷となってずっと私の心にのしかかっていた。
医大を卒業した私は、父が当然のごとく用意していた自分の病院のポストを蹴り、大学病院の医局へと入局した。
高校生の時にできなかった、自分の道を自分で選ぶという決意だけとってみれば、ある意味進歩とも言えたかもしれない。
だが、結果は散々だった。
過酷な当直勤務と有り余る雑用、患者に冷淡な、自分の手術成績にしか興味がない医師たち。
何よりも、病棟の人間関係に私は馴染めなかった。
ただでさえ新人の女医は女性が多い職場の反発を買いやすい。
愛嬌があったり要領のいいタイプならともかく、私のような性格では全てが上手くいくはずがなかった。
にこちゃんに再び会いに行ったのは、そんな毎日に疲れ果てた時。
彼女の面倒を見ることを口実に医局を休職して、実家の病院に戻る。
その見返りに自宅のマンションをバリアフリーに改造する費用を得て、今の生活は成り立っていた。
◇◇◇
「西木野先生、ちょっと矢澤さんのことで気になることが……」
翌日、外来の合間に私に声をかけてきたのはにこちゃんを担当する言語療法士だった。
高校の時の放送部員のクラスメートとどこか似た雰囲気を持った彼女は、この病院の中で「真姫先生」や「若先生」ではなく、私を名字で呼ぶ数少ない一人だ。
何しろこの病院で「西木野」と言えば、通常それは理事長である父のことなのだから。
「もちろん構わないわ。何?」
「ピクトグラムの訓練のことなんですが……」
言語障害の患者とのコミニュケーションや訓練には、指さすだけで言葉が伝えられる文字盤が使われる。
ただにこちゃんの場合は症状が重篤で、通常のひらがなの文字盤も理解できないため、ピクトグラムという絵文字盤が必要だった。
「夜と……虹?」
「この前、行きたい場所や見たいものは?っていう質問をしたんです。そうしたらこの二つを指さして……」
彼女が見せるのは、絵文字盤の黒い背景に星がまばらに描かれた夜空のアイコンと、青空を背景にした虹のアイコン。
「こんなに熱心な反応が見られたのは久しぶりだったのでもっと色々と引き出そうとしてみたんですが、何を聞いても他のどんな質問をしてもこの二つを指さすばかりで。最後には怒り出してしまって……」
頬に手を当てて困った様子の彼女。
献身的で有能なリハビリ治療士である彼女だが、にこちゃんの癇癪や気まぐれには苦戦を強いられることも多いのだった。
とはいえ、この所無気力な反応が多くリハビリの効果が上がっていなかった中で、にこちゃんが明確な意志を示したという事実は注目に値する。
「報告ありがとう、私も話してみるわ」
頭を下げる彼女の肩を叩き、私は療法室へと向かった。
◇◇◇
何日か後の夜。
「夜空に架かる虹、ねぇ……」
インターネットの検索結果を眺めて、私は溜息をついた。
にこちゃんが見たいものというのは、どうやら”夜に見える虹”らしいというのが、ピクトグラムを相手に1時間以上も二人で格闘して得られた結論だった。
私も知らなかったのだが、虹と言うのは必ずしも雨粒がプリズムの役割をして太陽光を反射してみられるものだけでなく、月虹(ムーンボウ)という月光によって起こる現象もあるらしい。
らしいのだが、相当珍しい現象であり、いくらにこちゃんが見たがっても狙って見ることは難しい。
一時の気まぐれならいいのだが、あれからピクトグラムを見るたびににこちゃんは夜空と虹のアイコンを指さし、他の話題に誘導しようとすると怒り出すという反応を繰り返していた。
おかげでリハビリは頓挫。他のプログラムを試すこともできていなかった。
「どうすればいいのよ……」
私がため息を吐きだした時、寝室の方からにこちゃんの唸り声と壁を蹴りつける音が聞こえてきた。
恐らくトイレか何かで自分で車椅子に移乗しようとして、上手く行かずに苛立ちをぶつけているのだろう。
私は再度ため息をついて、寝室へと向かった。
◇◇◇
「夜空に架かる虹?」
病院の近くのファミレスに呼び出してそんな質問を投げかけた私に、希は小首を傾げてみせた。
「聞いたことないなぁ……それ、にこっちが言ったの?」
「うん、まあ……そんなところ」
思わず言葉を濁す私。
実際には、ピクトグラムを前に際限なく同じやり取りを繰り返して得た推測だ。
希に限らず、私以外のμ'sのメンバーはみんな、にこちゃんの実際の病状を知らない。
せいぜい、まだ本調子ではないけれど、復帰を目指して頑張っている──ぐらいの認識のはずだ。
彼女が倒れたと聞いた時は全員が駆けつけたが、その時期のにこちゃんは意識不明で面会謝絶。
意識を取り戻してリハビリを始めてからは、にこちゃんの家族がかつての友人に彼女を会わせたがらなかった。
プライドの高いにこちゃんが今の姿を見られるのを喜ぶはずがない──というのがその理由だ。
最初は私ももっともだと思っていたのだが、こうして久しぶりに希に対面してみると、果たしてその判断が正しかったのかどうか、自信が揺らいでくるのを感じていた。
にこちゃんが倒れたときは、みんなにとってもちょうどそれぞれの道に進みつつある微妙な時期だった。
そのせいもあるのだろう。
これだけ音信不通なのはおかしいと思っているかもしれないが、それぞれの距離が遠のいたせいか、遠慮しているのか。
こうして彼女の話題が出ることすら本当に久しぶりのことだった。
かつての──μ'sだったころの私たちなら、何もお互い連絡などしなくても勝手ににこちゃんの元に押し寄せて集まり、いらないお節介を焼いていっただろう。
今彼女たちがこの場にいないのは、私たちが大人になって遠慮という常識を身に着けたからか。
絆までもバラバラになってしまったせいだとは思いたくなかった。
「確か、南の方の島だと見えるって聞いたことあるなぁ。空気が綺麗で、スコールがざぁーって降って、真ん丸なお月さんが夜空を照らすと……」
さすがに希は博識だった。
μ'sの中では絵里の次に海外歴が長く、今は在宅の翻訳業をやっているだけのことはある。
ただ、私が聞きたいのはインターネットでも分かるような知識ではないのだ。
「仮に南国の島に行けば夜に虹が見えるとして、何でにこちゃんがそんなものを見たがるのよ」
そうだ。
ただ珍しいから、綺麗だからという理由で今の彼女があれほどに強い興味を示し続けるわけがない。
そこには何か理由があるはずなのだ。
「希なら、分かるんじゃないかと思ったんだけど……」
「スピリチュアルパワーのこと?」
当てが外れた恰好の私に、希が苦笑する。
片側に垂らした髪を三つ編みにし、ざっくりしたニットの上からストールを羽織った格好の彼女は、かつての高校の制服を着ていた時と同じ大人びた目で私を見つめる。
以前と違うのは、かつてはミステリアスな深みをたたえていたその瞳が、今はどこか諦めたような暗さを感じさせる点だった。
「残念だけど、何でもお見通しの神秘のパワーは品切れなの。ごめんね」
「というか……初めからそんなものは無かったの。真姫ちゃんだって、本当は分かってたでしょ?」
「そんなの分からないわ。だって、実際に希は何度も私たちに道を教えてくれた。進むべき方向を指し示してくれたじゃない」
「錯覚よ」
言い募る私の言葉を、さらりと希は否定する。
「タロットのカードは何も予言なんかしてない。アレはただの記号よ」
「もし私に不思議な力があるように見えたのなら、それは……私がμ'sのみんなの事が大好きだったから。ずっとみんなを見ていて、みんながどうしたいのか、どうすれば一番幸せになれるのか……いつもそればかり考えていたから」
「私たちがバラバラになってしまった今では、もう神通力は使えないの。マジカル少女希ちゃんは閉店休業、……なんよ♪」
とってつけたようなエセ関西弁の語尾が、かえって昔よりも距離を感じさせた。
「にこっちが何を考えているのか、本当に分かってあげられるのは真姫ちゃんだけじゃないかな。だって、一番一緒にいるんでしょう?」
「それはそうだけど……」
問題は、私に人の気持ちをおもんぱかるだけの資質があるのかということなのだ。
こんな私がにこちゃんのそばにいるのは、本当に正しい事なのだろうか?
「ところで、私も一つ聞いていい?」
真剣な表情になった希が身を乗り出す。
「もしかしてにこっちの病気って、私が思っているよりも重いの?」
──やっぱり、まだあるんじゃない。神通力……
私は苦々しい思いで、どう返答すべきか考えていた。
ええぞ
過去作あったら教えてほしい
>>92
おー過去作聞かれたの初めてだから嬉しい
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