小鍛治健夜、彼女を一言で表すならば日本最強が相応しい。
世界ランク2位まで上り詰め、リオデジャネイロ東風フリースタイルでは銀メダルを獲得。
史上最年少の8冠保持者であり、日本人史上初の9冠へリーチをかけたこともあった。
紛れもなく、日本最強の雀士。
けれども、そんな彼女ですら世界で1番にはなれなかった。
現在の彼女といえば、地元の小さなチームで隠居のような生活を送り、かつての栄光はどこへ消えたのか、世界ランク973位という有様だ。
日本最強の小鍛治健夜ですら超えられなかった世界の壁はどれほどに厚く、どれほどに高いのか。
日本の雀士達は、その現実に只々絶望を抱いた――。
だが、それは真実などではない。
日本最強は、当たり前のように世界に通用していたのだ。
日本最強は、当然のように世界の頂点に立つことが出来たのだ。
でも小鍛治健夜はあえてそれをしなかった。小鍛治健夜はわざとそれを成さなかった。
小鍛治健夜は――自ら手放したから。
健夜「こんなものが、この程度のものが――世界の頂点?
私の眼前に立ち並ぶ3人が、世界で最高峰の雀士?
……だったら、いいよ。こんなにも低い頂上なんて――登る意味も意義もない」
健夜「いくらだって、くれてあげる」
あまりにも歯ごたえのない、取るに足らない世界一を。
9冠にリーチがかかった時もそうだった。簡単に取れたのに、ただくだらない、と彼女は切り捨てただけ。
小鍛治健夜は強すぎた。
世界のトップレベルですら手応えもやりがいも感じ得ぬほどに強すぎた。
彼女が小学生の時、周りの脆弱さを嘆き、中学生に希望を託した。
誰か私に、まともに戦えることの満足を――。
彼女が中学生の時、周りの貧弱さを恨み、高校生に希望を託した。
誰か私に、まともに戦えることの至福を――。
彼女が高校生の時、周りの粗末さを憎み、プロに希望を託した。
誰か私に、まともに戦えることの喜びを――。
彼女がプロの時、周りの稚拙さを呪い、世界に希望を託した。
誰か私に、まともに戦えることの楽しみを――。
教えてよ……。
世界が、最後の希望だった。それなのに、望んだものはどこにもなかった。
健夜「――うあああああああああああああああああああああああぁ!」
リオデジャネイロの戦いが終わった後に響いた彼女の慟哭。
敗北の悲しみを吐き出しているのだろう。
祖国の期待を裏切ってしまったことを涙しているのだろう。
その光景を見たものは、こぞってそんな感慨を思い浮かべ、彼女を哀れんだ。
ただ1人として、彼女が流した涙の意味を知らぬまま。
健夜「もう他人に期待なんてしない。もう他人に渇望なんてしない」
健夜「もう――いいよ」
健夜「自分達がどれほど未熟で、どれほど弱い存在なのかも知らぬまま」
健夜「ミジンコ同士で競い合って満足してろ!」
この瞬間、プロ雀士小鍛治健夜の人生は終わったといっても過言ではない。
目指すべき場所もなく、歩むべき目標もなく。
ただ宙ぶらりんに、生まれた時から最強という十字架を抱えてしまった彼女の苦しみ。
それを理解出来るものなど居なかったし、その傷を癒してあげられるほどの強さを持った人間もまた居なかったのだから。
しえ
健夜「う、うっ……ひっぐ、うあぁ、ああ…………!」
……されど、誰より麻雀が強くとも、彼女はやはり人間なのだ。
他人の弱さにどれほど失望しても。
自分の強さにどれだけ絶望しても。
きっと全てに見切りをつけたつもりでも。
支援
ひょっとしたら。
もしかしたら。
何年か先、或いは何十年か後。
小鍛治健夜に匹敵する――否、小鍛治健夜を超える雀士が現れてくれるのではないか。
それが絶対にありえない希望であったとしても。
それが完全にありえない未来であったとしても。
そんな蜘蛛の糸のように拙い思いに縋らなくては生きていけないくらいに――。
小鍛治健夜は弱い人間だった。絶望を真に受けても自殺なんて出来ないくらいには、か弱い人間だった。
照「小鍛治プロはね、この世の麻雀を打っている人の中で1番可哀相な人なんだと思うんだ」
咲「小鍛治プロが、1番可哀相? どういうことなの、お姉ちゃん」
照「例えば私はインターハイ時代、最強だとか無敵だとかと言われていたけれど……。
運が悪ければ負けていた試合はあった。プロになってからはどれだけ頑張っても勝てなかったこともある。
どうしても超えられない壁を感じたこともあった。
だけどそれが目標になって、私の中の意地とプライドを燃え上がらせたんだ。
……小鍛治プロには、それが無かった。彼女は地球上で間違いなく1番強い。
そしてその強さは、2番目に強い人がどうやったところで及びもつかず決して届かない程に遠すぎて、大きすぎて、高すぎたんだ」
咲「……嶺上の花が咲く場所よりも、もっと高い場所に小鍛治プロは居るんだね」
照「それはとても悲しい話だと思う。嶺上の花は時に人が咲かせてあげられるけど。
小鍛治プロが居る頂まで登って、孤独を癒してあげられることの出来る人は――いない」
咲「そんなの、あんまりだよ。私は、今まで全力で競い合ってくれた人達が沢山いた。
今まで真剣に支えてくれた人達が沢山いた。みんながいてくれたから、もう一度麻雀が大好きになれたのに……」
照「それは、私も同じ。ねぇ咲……私達は過去に色々あって、袂が分かれていたこともあったけど。
あれから数年立った今はこうして日本代表の仲間として、姉妹として世界と戦えるまでになった」
咲「……うん」
照「正直言って、咲と復縁するのは不可能だと思ってた。絶対にありえない事だと思ってた。
だけど、心強い仲間達のお陰でその不可能は現実になったんだ――私は、その絆の力を信じてみたい」
咲「お姉ちゃん……」
照「きっと、私1人じゃ小鍛治プロには勝てない。だけど、みんなでなら――。
みんなでなら、小鍛治プロにも勝てるって思ってる、信じてる。咲……戦おう、小鍛治プロと」
咲「――やろうよ、お姉ちゃん! 小鍛治プロを絶対の孤独の中から救い出すことも! みんなとなら、出来るよ!」
照「ああ!」
それはとある姉妹が世界団体決勝戦の前夜、人知れず語り合った夢。
偉大な雀士、小鍛治健夜に勝ちたい。孤独に苛まれる彼女の為にも。
頂上を目指す自分達の為にも、決して避けてはならない道と信じて――彼女たちは、誓った。
夢はいつだって、儚いものだと知りつつも。
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――それから後日。
灼「はるちゃんはるちゃん! ニュース見た!? 穏乃達が世界麻雀プロ団体戦で優勝したんだよ! 世界一だよ!」
晴絵「本当か!? ついにやったんだな、穏乃……全く、今度から私が穏乃を先生って呼ばないといけないかもね」
灼「もう、何言ってるのはるちゃん!」
あはは――そう心の底から楽しげに笑いあうのは赤土晴絵と鷺森灼。
ほんの少しだけ老けたように思える晴絵に対し、大人びた艶を出すのは灼。あどけない顔つきの小柄な少女は、もういなかった。
灼「……あの10年前のインターハイから、穏乃は随分と手の届かない場所に行っちゃった」
晴絵「そっか、あれから10年……そりゃ、私もおばさんになるわけだ」
灼「そんなことないよ! はるちゃんはまだ全然若いよ! 今でも高こ――大学生でも通じるもん!」
晴絵「いや、絶対に大学生でもキツイと思うぞー」
灼「むむむ……」
晴絵「……灼は、美人さんになったよなぁ」
灼「っ!? ほ、ほんと!?」
晴絵「ホントホント。昔は可愛かったけど、今は綺麗って言葉がよく似合ってるよ」
灼「~~~っ」
そんな晴絵の言葉に、頬をぽっと染めて悶絶するように体を揺らす灼。
10年たっても、彼女の思いは風化するどころか更に燃え上がっているらしい。
美人になってもそういうところは変わらないなぁ、なんて晴絵は苦笑いを浮かべつつ。
晴絵(……おめでとう、穏乃。もう、私じゃお前達に手も足も出ないかもなぁ……。
お前達なら、私が出来なかったことを、やってくれるさ……小鍛治健夜を倒すって夢を)
未だかつてない、本気の日本最強に二度も挑んだ唯一の雀士、赤土晴絵。
彼女はそう心中で呟きながら、濁りない真っ青な空をそっと見上げた。
4○
最近の麻雀は9個もタイトルあるのか
――長野
久「それを切るのは、ちょっと違うかな。対面の河をちゃんと見て?」
清澄部員1「……筒子が明らかに少ない……あっ、そっか。かなり危険牌なんですね、これ」
清澄部員2「久先生ー! アドバイスなんてずるいよー!」
久「ふふふ、私のアドバイスがあっても勝ってみせるのが清澄流よ」
部員2「むー!」
部員3「センセー! センセー! お客さん、お客さんが来ましたよー!」
部員4「それもとんでもない有名人でーす!」
ドタバタと慌てて麻雀部の部室に飛び込んできた少女達がそう告げる。
物珍しいものをみたような、緊張と興奮覚めやらぬ、といった様子で。
ふむ
久「お客?」
「――失礼します」
きゃああぁ! 黄色い声援どころかか悲鳴に近い歓喜を上げる部員達。
その来客者は、清澄麻雀部にとって有名人は愚かもっと特別な意味を持った人間だったので、仕方なしともいえるかもしれないが。
久「……咲!?」
咲「お久しぶりです、部長」
ペコッと、相も変わらず腰の低い後輩に思わず久は吹き出した。
久「相変わらずね、咲。もう部長じゃなくて、今は先生よ」
咲「あっ、そ、そうでしたね――久さん」
部員1「きゃあああああああぁ! 宮永咲だー!」
部員2「日本最強姉妹の妹! プロ麻雀最強の嶺上使い!」
部員3「そしてこの清澄高校一番の出世頭にして――神!」
部員4「マイゴッド! サインください!」
咲「か、神って……」
久「ふふふ、全員貴方のことを英雄視してるのよ。サインくらい書いてあげてね。
まあそれは後でいいとして、場所を変えましょ? ここだと騒がし過ぎるわ」
支援
④
咲「わぁ、この屋上も凄く懐かしく感じますね」
久「咲達が卒業してから7年も立ってるもの、当然よ」
久「――本当に、久しぶりね。世界団体戦優勝おめでとう、テレビで応援してたわ」
咲「ありがとうございます。私はあんまりチームの役に立てなかったですけど」
たはは、と照れた表情で苦々しく笑う咲。
姿形は大人びても中身はインターハイから相変わらずの自慢の後輩。
久「変わってないのね……なんだか嬉しいやら、情けないやら」
咲「そ、そんなことないですよぉ! これでもしっかりしてきたってお姉ちゃんや和ちゃんに言われてるんですから!」
久(あの2人も変わらないのねぇ)
しえ
支援ぞ
久「それはそうと、今日はどうしたの? こんな突然に。いや、いつだって貴方達が来てくれるのは大歓迎なんだけどね?」
咲「……久さん。団体戦とはいえ、私達は世界の頂点に立ちました」
久「ええ。紛れもなく、貴方達が世界最強の雀士よ」
真剣な、声色だった。
反対の方向を向いて青空を眺める咲の姿が、久はどこか気になった。
こんなにも近くにいるのに、とても遠くへいるような、そんな感覚に囚われる。
咲「――でも、頂点は他に居る。本当の頂点は、日本に居るんです」
久「っ!」
咲が何を言いたいのか。その言葉だけで久は理解した。
伊達にあの個性豊かな清澄メンバーをまとめてきたわけじゃない。
咲が何を言いたいのかくらい、少しの言葉でわかってしまう。
し
/ :/ ...:/:′::/ :.:.:.....:./.:/:!:.:.:.i:..!:.:.....:{:.:.:.:.:.:ハ /
. /.〃/:...../:′'.::|:: i .::.:.:.:| :i:_{__|:.|:.:.:.i :|:.:.../  ̄`ヽ/ ふ
'://:′::/斗:十 |::.::.::.:.:.:.: :}}ハ ::ハ:{:≧ト|:::/ な な な ぅ
{//::{: /|i:八::{=从:{ i::::: :N孑弐{ミト∨:::|::′ る. る .る (
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. |.::| : \《 { ::::::: } ヽ\{ { ::::::::: リ | :::ヽ! ど ど ど む
. | ::!::|ハト.乂__ノ ー ' | :::< |
八::| :|::::i /i, , , /i/ , }:::}i::人 __ ノ\
(__):::l:::::. i.:/::::::::厂「{:::::::{ ` ー― ´
/ :{ | :V:入 { ̄`ソ }/}::::}/::::::l.|:::::::|
{ ::|人::∨::::>... ` . ィ升|:::/::::::::八::::::{
世界優勝したチームに咲、照、穏乃がいるってことか
この作風はまたあいつか
和は居るとして
ころたん、小蒔ちゃん、冷やしさんあたりも居そう
京太郎ェ…
久「……戦うのね。小鍛治健夜と」
咲「戦います。小鍛治健夜と」
小さく肩を震わせたのは、久の方だった。
感動に胸を掴まれているわけではない。
嬉しさに胸を膨らませているわけではない。
――久を震わせているのはただ、純粋な恐怖だった。
久「……咲。もしも私がお願いしたら、貴方は、貴方達は――小鍛治プロと戦うのを止めてくれる?」
咲「……」
ゆっくりと、咲は顔を横に振る。明確な拒絶。確かな意思。
それを眺めて久は思う。ああなるほど、確かに少しは、変わっている。とても、心が強くなったな――と。
すこやんかなり歳イッてそうだな
支援
咲「決めたんです。私は麻雀が好きだから――上を目指すって。
そして上を目指して歩き続けました。世界の強敵たちと闘いぬいて、そして」
勝ち抜いて来ました、と咲は言った。
咲「だからこそ、今がその時なんだと思いました。小鍛治プロと、本気の彼女と戦うのは、今なんだって」
久「……赤土晴絵が、そう言って小鍛治プロに二度目の勝負を挑んでどうなったか……知っているでしょう」
久の瞳から零れたのは数滴の涙。
同時に痛んだのは咲の心。こんなにも心配をかけてしまって、どうにも申し訳ないという気持ちが溢れてくる。
咲「……知っています」
久「なら――!」
咲「知っているからこそ、戦います」
久「…………止められないのね、私には」
このすこやんは何歳になっても姿が変わらないタイプ
支援
アラフィフか……
アカン咲さん壊されちゃう
久「ここに来たのは、原点を思い出す為?」
咲「はい。私が何のために麻雀を打っているのか、打って来たのか。それを、しっかり認識するために」
久「……それは、済んだ?」
咲「――はい。久さん……いえ、部長。あの時、あの全国大会で」
ニコっと、久の前に振り向き満面の笑みを咲かせる一輪の花。
咲「私を、インターハイに連れて行ってくれて、ありがとうございました」
再び、久の目から零れた涙。
けれどその涙の意味は、咲を、愛しい後輩を失うかも知れないという恐怖から流れたものなどではなく。
久「……もう、馬鹿ね。連れて行って貰ったのは、私の方よ」
嬉しさから流れるものだった。
しえ
――奈良
穏乃「憧ー! 久しぶり!」
憧「し、しず!? 久しぶりじゃない! いつ日本に帰って来てたの!?」
巫女装束に身を包んだ新子憧は、未だにジャージ姿で。
元気いっぱいに駆けて胸に飛び込んできた高鴨穏乃を受け止めた。
穏乃「ついさっきだよ! あー、やっぱり日本はいいなぁ。外国って、地方はともかく中央なんて山が全然ないんだよ。日本はどこを見ても山だらけで癒されるなぁ」
憧「あははっ。山ってあんた、世界に何しに言ってたのよ」
穏乃「そりゃ、麻雀だよ!」
笑いあう2人の姿は、ずっと昔からく変わらない。
この年齢でも裸ジャージ……ゴクリ
④
憧「優勝おめでとう、しず。まぁあのメンバーならやれるだろうなぁとは思ってたけどさ。
淡に咲に和に照さんにあんた、衣さんに透華さん、姉帯さんにセーラにやえさんでしょ。
若い人ばっかだけど、文句なしに日本最強メンバーじゃない」
穏乃「それでも世界は厳しかったんだけどね。結構危なかったよ」
憧「そう? わりと簡単に勝ってた気がするけど」
穏乃「全然だよー! けど、本当に優勝出来て良かったなぁ」
憧「全く、私も本当に自慢よ、あんたたちのことは」
インターハイで闘ったライバル達が世界の頂点に立つ。
それがどれほど嬉しいことで、誇り高いことなのか。憧は自分のことのように彼女たちの優勝が嬉しかった。
小走先輩日本代表なのかw
憧「これからはどうするの? しばらくは日本に居るんでしょ?」
穏乃「うん。世界戦はもう今年はないし、来年までは日本で麻雀をやるよ」
憧「そっかー。なら今週は阿知賀のみんなで集まろうよ! 世界のしずの麻雀を久しぶりに堪能したいしさ。晴絵だって、しずとなら麻雀も――」
穏乃「…………」
憧「……しず? どうしたの?」
穏乃「……ううん、なんでもない! 嬉しいって思ってさ、阿知賀のみんなと集まれるのが!」
憧「そっか!」
穏乃「……うん!」
あ
憧「なら私、みんなに連絡してくるね!」
そう言いながら颯爽と神社に戻った憧を、穏乃は眺めていた。
ずっと、ずっと、憧が再び戻ってくるまで、眺め続けていた。
穏乃「……赤土先生」
言えなかったなぁ、けど、言わないとなぁと穏乃は頭を掻く。
偉大な恩師、赤土晴絵を二度破り――その体をボロボロにした宿敵、小鍛治健夜と麻雀を打つ。
穏乃「……みんなが集まった時に、ちゃんと、言おう」
小鍛治健夜と戦うと、そして勝つと。
勝って、無事に戻ってくると、誓う為にも。
――東京
菫「うん、この企画はいいな。よし、次の会議にはこれを押してみよう」
社員1「ありがとうございます、部長!」
社員2「ああ、部長! 何やら部長と会いたいと来た2人が居るのですが……」
菫「困ったな、後にしてくれと伝えてくれ。今は時間が――」
社員3「それが、あの麻雀日本代表の2人なんですよ!」
菫「……何? まさか――!」
照「……やっぱりアポなしは無理があったかな」
淡「そりゃそうだよー。こんな超大企業だよ、ここ」
さるよけー
菫「やっぱりお前たちか!」
照「菫!」
淡「わーい! 久っしぶりスミレー!」
菫「全く、相変わらずだなお前たちは」
仕方がない奴らだ、と菫は言う。
言葉とは裏腹に、明らかな親しみの情愛を込めて。
照「いきなり押しかけてごめん、忙しかったよね」
淡「だけど私達も時間があんまりなくてさー」
菫「何、忙しいは忙しいが、少しくらいの時間なら作ってやるさ。何よりも、お前たちが会いに来てくれたんだからな」
照「ありがとう。菫はやっぱり優しいね」
淡「部長は社会人になっても部長なんだからね」
菫「ほっとけ。人の性分はそうそう変わらないんだ」
菫「ああ、それと遅れてたな。優勝おめでとう。かつてのチームメイトとして誉高いぞ」
淡「とーぜんだよ! しずにテルーにサッキーに私がいたんだよ? 世界なんて相手にもならなかったもん!」
菫「淡が振り込んだせいで一時は最下位になってたじゃないか、日本チーム」
淡「うぐっ……そ、その後倍にして返したもん!」
照「ふふっ……」
このどんな場違いでも無理やり小走先輩をねじ込む感覚は……リー棒の人か
支援
菫「……懐かしいな。あのインターハイがも10年も前のことか」
照「今じゃ、あの時の虎姫も麻雀を仕事にして続けているのは私と淡だけで、ちょっと寂しいよ」
淡「亦野先輩は世界でバスプロとして世界を駆け回ってるし、たかみ先輩はお茶の農園を経営してるし」
菫「みんな自分の道を見つけたんだ。それに麻雀を止めたわけでもない。
私や尭深や亦野も社会人麻雀チームで打っているよ。仕事が忙しくてなかなか専念出来ないけどな」
照「そうだね……みんな、どんな道を歩いていても麻雀のことは忘れてない」
淡「それだけで、なんか嬉しくなるよね」
菫「そうだ、今日は仕事を早めに終わらせるから、今晩久しぶりに麻雀を打とう。
シャープシュータースミレの鷹の目は未だに健在だということを見せてやる」
照「いいね、それ」
淡「うん!」
淡「きっと、いい思い出になるよ!」
しえん
――再び奈良 松実旅館
玄「世界のーおもちはーどうだったのー、しずちゃん……むにゃむにゃ」
宥「ひさしぶりにー、みんなと集まれて、あったかーい……むにゅ」
憧「しずー、いい加減に私と結婚しろー……ぐふふ」
灼「羽目を外しすぎだよ、3人とも……」
そこはまさしく女性たちの極楽浄土、あるいは地獄絵図とも言う。
床に散らばった一升瓶の数はかぎりなく、テーブルの上はおつまみや麻雀牌が散乱していた。
完全に酔っ払いと化した3人をせっせと灼は仕方ないなぁと苦笑しつつも介抱していたが――。
灼「……あれ? はるちゃんと穏乃がいない……?」
松実旅館の中央に位置する池の前に、2人は居た。
方や神妙な趣で、方や嬉しいのか悲しいのかわからないといったような様子だった。
晴絵「そっか……ついに、小鍛治健夜と打つんだな……」
穏乃「……はい」
晴絵「……お前たちは、すでに私よりも遙かに強い」
穏乃「そんなこと、ないですよ。赤土先生は、いつだって私の偉大な目標ですから」
晴絵「お世辞だとしても、そういってくれると嬉しいな……」
――その言葉を最後に、しばしの静寂が訪れた。
再び晴絵が口を開いたのは、ぽちゃんと池の鯉が跳ねた後。
晴絵「正直、私はお前たちに小鍛治健夜を倒して欲しいと思っている」
穏乃「……」
晴絵「お前たちなら出来る、お前たちならあの人を倒して――絶対の孤独から救いだせるって、信じてる」
穏乃「……」
晴絵「けど同時に、戦って欲しくないとも思っている自分がいるんだ。教え子を死地に向かわすな。
私と同じ絶望を味あわせてどうする、輝く未来がある子たちを潰してどうする――って」
穏乃「……先生」
穏乃「……私の中にも、いくつもの違う意見をいう自分がいるんです。
小鍛治健夜を、麻雀のトップを目指しているからこそ倒せ、そして救い出せって叫ぶ私。
先生をボロボロにした小鍛治健夜に私が勝てるわけがない、止めておけって叫ぶ私。
先生をボロボロにした小鍛治健夜を許すな、叩きのめして謝らせろって叫ぶ私。いろんな私が、いろんなことを、私に問いかけてくる」
晴絵「それは当然のことだ。人間なんだ、ブレたっていいんだよ」
穏乃「怖いけど、それを望んでいる。恐ろしいけど、武者震いがする。
日本最強――いえ、人類最強の雀士と戦えるのが、怖くって、楽しみなんです」
晴絵「そうか。強いなぁ、穏乃は」
穏乃「……戦います。そして、勝ちます。どうか祈っていてください先生。私達の――勝利を」
晴絵「ああ。私に出来ることなんて、精々――それくらいしかないさ」
灼「……」
し
え
ん
全員死亡フラグたってるじゃないですかーやだー
灼「はるちゃん」
晴絵「聞き耳は良くないぞ、灼」
灼「穏乃を止めなくて、いいの?」
晴絵「……止められないよ。穏乃はもう決心してるから」
灼「……っ! 勝てっこないよ! いくら日本チームが全員で小鍛治プロにかかったって! 勝てるわけない! はるちゃんですら! はるちゃんですら――!」
灼「あいつと戦ったせいでボロボロになって! もう余命は数年だってお医者さんに言われたんじゃない!」
晴絵「――」
ダムが決壊したかのような灼の涙を、晴絵は静かに拭う。
小鍛治健夜との二度の戦いは、赤土晴絵の体を完膚なきまでに壊してしまっていた。
余命わずかなんて、医者に言われなくてもわかっていた。自分の体のことは、自分が一番良く知っているのだから。
!?
(物理)
ここのすこやんは化物だな
に、人間じゃないっ……
灼「いいよ……本当の最強なんて……あんな化け物を相手にしなくても、穏乃達は普通の人間の中で、ちゃんと最強なんだよ……。
嫌だよぉ! 穏乃達がはるちゃんみたいにボロボロになったりしたら……! 私は、私は……!」
晴絵「灼……」
灼「うっ、ううぅ……私は、出来れば止めたいよ。やめさせたいよ……」
ぎゅっと、震える灼を晴絵は優しく抱きとめた。
細く華奢になってしまった晴絵の体。それでも温もりは暖かく灼に伝わった。
灼「それでも……止めても、無理なら私ははるちゃんと一緒に穏乃達の無事を祈るしかない」
晴絵「一緒に祈ろう。穏乃達が無事に帰ってくるようにって」
灼「……ねぇはるちゃん。はるちゃんは、もう一度、戦いに言ったりしないよね? そんなこと、しないよね」
晴絵「しないよ。後の余命は阿知賀でゆっくり過ごすって決めてる。さすがに、もうコリゴリだよ」
灼「絶対だよ! 約束だよ!」
晴絵「……ああ、約束だ」
晴絵「――約束、するとも」
すこやん「流石に風評被害が酷いんだよ……」
こーこちゃん何しとるんやろうな
全然健やかじゃないんだよ
衣「皆の者、愛しき人に挨拶は済んだか?」
透華「引き返すなら、今のうちでしてよ」
セーラ「止めるのも勇気や。止めて引き返したりしても、誰も責めたりせえへんで」
照「正直言って、勝てる見込みはゼロに等しい」
豊音「たとえ彼女に勝てた所で、得られるものなんてただの自己満足だよー」
淡「けど、その自己満足こそが、重要なのよね」
和「人類最強。それを世界が知らなくても、日本リーグが認めなくても」
咲「私達は知っている。知っているからこそ、小鍛治さんを倒したい。超えてみたい」
穏乃「そして――最強という孤独に囚われている雀士の仲間を、救いたい」
やえ「心配しなさんな、私は小3の頃からマメすらできない」
全員が、全員の顔を見合わせて頷いた。
準備は整っている。覚悟などとっくの昔に済ませてある。
ならば――。
「さぁ、行こうか!」
そんな、整い揃った日本チームの声が木霊する。
目指すは眼前、小鍛治健夜が待ち構えるドーム会場。
さすがに今回ばかりは小走先輩がいることに違和感があり過ぎるwwwwwww
小走先輩が見事にフラグブレイクしてくれっから(震え声)
小走先輩よりセーラのが違和感あるだろ
咲「――っ!」
ドーム会場に、一歩足を踏み入れただけで感じた重圧。
押しつぶされてしまいそうなほどの濃厚な殺気に似た何か。
健夜「―――まさか世界優勝メンバーが全員、来るなんて思わなかったよ」
照「小鍛治、プロ……」
中央に設置された自動卓に座っていたのは、小鍛治健夜その人だった。
健夜「いいんだね――私の麻雀は、人を壊す麻雀。それを解って、貴方達はここに来たんだね」
穏乃「はい!」
健夜「……馬鹿だよ、みんな。どうしようもなくて、救いようがない。だけど、本当に救いようのない存在は――」
少しは、楽しめるかも知れない――そんなありえない期待の為だけに、日本麻雀界の宝を壊そうとする、小鍛治健夜という化け物なんだ。
その呟きは、誰にも聞こえなかった。
仮に年齢制限のない大会だったとしたら
○○年代は奇跡が起きてたとか言われるレベルのメンツ
セーラ「一番手は、俺と――」
衣「衣と」
豊音「私がいくよー」
健夜「そう、貴方達が――最初の相手」
照「ルールはプロ公式。東南戦を繰り返し。ただし小鍛治プロの勝ちは、私達の全員の持ち点を無くすこと。飛んだ人から抜けていって、最後の1人になるまで打ち続ける」
健夜「そっちの勝ちは誰か1人でも私の点棒を無くすことだね――ハンデで、最初の持ち点は0点でもいいよ?」
セーラ「はっ! お断りや」
衣「同意しよう。そんなルールでは」
豊音「小鍛治プロが、楽しめないよー」
健夜「……そっか。じゃ、始めようか――」
ごくり、と固唾を飲んだ誰かの喉がなる。背に奔るは緊張と死ぬかも知れないという恐怖、そして人類最強を相手にするという武者震い。
健夜「……サイコロ回れー」
全自動卓という、イカサマのしようがない公平の機械が親を決める。
サイコロがとまり、数字が示す親は、小鍛治健夜。
穏乃「いきなり、小鍛治プロが親っ!」
咲「頑張って、衣ちゃん、セーラさん、姉帯さん!」
照「では闘牌、開し――」
健夜「ツモ。天和国士無双――16000オール」
し
え
ん
これはクソゲーですねぇ・・・
セーラ「ごはっ!?」
衣「がっ!?」
豊音「うぐっ……!」
びしゃり、と雀卓を染めたのは赤い赤い真っ赤な鮮血だった。
セーラ(は、ははっ。天和は予想してたんやけど――!)
衣(よもや、上がられた時のダメージがこれほどとは……!)
豊音(内臓、何個か、潰れちゃった、かなー……)
健夜「やめるなら、今のうちだよ」
つまらなそうに、最強は告げる。
ゴミでも見るかのような虚ろな瞳を覗かせて。
セーラ「冗談、続行……やっ!」
衣「今ので、気合が乗ったというもの!」
豊音「まだまだ、負けないよー!」
健夜「……2本場」
親のダブル役満なら96000だから32000オールなのでは?
これゴリラ呼ばないと無理ゲーだろ
スレタイって美穂子だよね?中山美穂子…あれ?
健夜「ツモ。天和四喜和、16000千オール。全員、飛び」
女の子が内臓つぶしあいながら競い合うゲームの国際大会なんてしたらアカンわ・・・
だれか首相を呼んできて
すみません、点数のこと勘違いしてました。
>>82の所からやり直させてください。
天和スーシーホーってことは四暗刻もくっつくから144000の48000オールやろ……
これはまさかすこやんチョンボ負けで美少女達は救われるー!?
健夜「……サイコロ回れー」
全自動卓という、イカサマのしようがない公平の機械が親を決める。
サイコロがとまり、数字が示す親は、小鍛治健夜。
穏乃「いきなり、小鍛治プロが親っ!」
咲「頑張って、衣ちゃん、セーラさん、姉帯さん!」
照「では闘牌、開し――」
健夜「ツモ。天和――16000オール」
大四喜ってダブルじゃないん?
今年度の咲ルールじゃダブル役満廃止だから別にこのままでも……
なんだろう何故か衣達が車田飛びをしているイメージがある
セーラ「ごはっ!?」
衣「がっ!?」
豊音「うぐっ……!」
びしゃり、と雀卓を染めたのは赤い赤い真っ赤な鮮血だった。
セーラ(は、ははっ。天和は予想してたんやけど――!)
衣(よもや、上がられた時のダメージがこれほどとは……!)
豊音(内臓、何個か、潰れちゃった、かなー……)
健夜「やめるなら、今のうちだよ」
つまらなそうに、人類最強雀士はそう告げた。
ゴミでも見るかのような虚ろな瞳を覗かせて。
セーラ「冗談、続行……やっ!」
衣「今ので、気合が乗ったというもの!」
豊音「まだまだ、負けないよー!」
健夜「……2本場」
咲の高校生大会に天和、地和系の能力者がいなくて良かったとつくづく思う
2本場・・・?
一体いつから…今のが一発目だと錯覚していた?
このすこやん重ね合わせで二回上がったな
健夜「ツモ。天和九蓮宝燈、32000オール。全員、飛び」
地獄という場所を現実に例えるならば、どこが相応しいだろうか。
紛争まっただ中の戦地か?
飢餓が蔓延する街か?
人間が家畜のように使い潰される国家か?
それとも――。
咲「衣ちゃん! 衣ちゃああああああああああん!」
衣「――――」
穏乃「くそっ! くそぉ!」
人類最強と麻雀が行われる、この場所か。
アラフィフが20代半ばのロリを傷付ける。
これは許されない。
淡「次は! 次は私が行く!」
透華「そして、私と――!」
照「私だ!」
健夜「――――やっぱり、未だに世界のトップは、この程度なのか」
果たして、真に絶望を感じているのは誰なのか。
闘牌は終わらない。最強を求める少女達の命尽きるまで。
(人が傷つかない分)置物の方がマシだったな…
あれ?つまり最終卓咲とシズとやえさん?
のどっち忘れんなよ
なんか二番手でもう最強に近そうなメンバーが来たんだが
それから、どれほどの時が立ったのだろう。
数十時間か、数時間か、数十分か、数分か――それとも僅か数秒か。
いずれにせよ、きっとそれは少ない時間だったに違いない。
そんな、僅かな時間で――。
衣「――――」
透華「――――」
セーラ「――――」
豊音「――――」
淡「――――」
和「――――」
やえ「――――」
咲「あれ?和ちゃんいたの?」
やえの存在感に嫉妬した
ほぼ名前しか出てない人がいるんですがそれは
最後で笑ってしまった
咲「はぁ、はぁ……」
穏乃「ごほっ、ごほっ……」
照「く、そぉ……!」
栄光の日本チーム、残り僅か――3名。
健夜「さすが、宮永姉妹と高鴨穏乃……正直、今まで戦った中で五指の指に入るくらいには、強いよ。貴方達。手応えは、まるでないに等しいとしてもね」
あれ、この展開ってむしろスタジオアラタのような気が……
健夜「天和が来ないのは、高鴨さんの能力なのかな? 凄いね、初めてだよ。数局の間、天和が来なかったのは」
穏乃「……っ……ぁ……」
健夜「だけど、もう限界だね。所詮は山の地鳴りなんて、天に届くことはない」
咲「ぐぅっ……!」
健夜「嶺上に咲く花は確かに強く気高いよ……だけど、花なんて容易く摘み取れる」
照
健夜「天和が来ないのは、高鴨さんの能力なのかな? 凄いね、初めてだよ。数局の間、天和が来なかったのは」
穏乃「……っ……ぁ……」
健夜「だけど、もう限界だね。所詮は山の地鳴りなんて、天に届くことはない」
咲「ぐぅっ……!」
健夜「嶺上に咲く花は確かに強く気高いよ……だけど、花なんて容易く摘み取れる」
照「……」
健夜「小さく世界を照らしたところで、もっと大きな闇の広がりが見えるだけ」
健夜「やっぱり、今の雀士は弱すぎる」
すこやんかっちょいい
>>109
ここから生き残ってる照凄いなぁ(棒)
穏乃「……」
咲「穏乃、ちゃん……? 穏乃ちゃん!?」
照(穏乃、限界か!? 小鍛治プロの天和を防ぐのは、それほどに消耗するのか……!)
健夜「点棒の前に、命の方が咲に付きそうだね、高鴨さん」
穏乃「――負け、ない……」
今にも消えそうな程に虚ろだった穏乃の瞳が小さく、輝いた。
血を流しすぎて目が霞む。神経の使いすぎで脳が焼き切れそうだ。
内臓は五臓六腑がろくに機能していない。指先が震えてまともに牌が掴めない。
それでも、負けられない。
穏乃「赤土先生と、約束、したんだ――!」
健夜「――っ、赤土、晴絵……」
あわあわは宇宙だから1番強いのか
この場で初めて、小鍛治健夜が同様した。
だからどうしたという話でもあるが、確かに、ほんの僅かでも同様したのだ。
穏乃(もう、二度と麻雀が打てなくなってもいい)
穏乃(もう、二度と光を感じられなくなってもいい)
穏乃(自分の為にも、先生の為にも――そして、小鍛治健夜の為にも!)
穏乃「――私達は、勝つんだ!」
ぽろっと、穏乃の指先からこぼれ落ちる麻雀牌。
穏乃(――――ぁ)
動けたのは、気持ちだけ。穏乃の体はもうとっくに、壊れていた――。
晴絵「よく、頑張ったな穏乃」
こぼれ落ちる麻雀牌を寸前で掴みとり、穏乃を支えた人物がいた。
それは、穏乃がとてもよく知っている人だった。
穏乃「せ、ん……せい」
晴絵「メンツ交代。穏乃に変わり代打、私」
咲「赤土さん!?」
照「ば、馬鹿な!? 貴方の体は、もう――!」
健夜「……あかど、はるえ……」
確かにこれはスタジオアラタっぽいww
書きすぎだろww
おい、やめろよ
失速したらどーすんだ
――奈良
灼「……やっぱり、行っちゃったんだね。
嘘つき。嘘つきなんて、最低だよ……はるちゃん。
だけど――それが、私の愛する、はるちゃんなんだ……」
晴絵の書き置きを涙で濡らしながら、灼は、そんなことを虚空に告げた。
――東京
晴絵「やっぱりね、諦められないんだ」
健夜「……」
麻雀ってなんだっけ
晴絵「私がインターハイに置いてきた、あの気持ち。
小鍛治健夜に勝ちたいと願い、それでも勝てなかったこの絶望」
健夜「……二回だよ。二回も、貴方は私に負けたんだよ」
晴絵「たった、二回さ」
健夜「いい加減にしてよ!」
激怒。もはやそう言うしかない感情の高まりが、小鍛治健夜の真鍮に爆発した。
何にこれほど怒っているのか、本人にすらわからないくらいに怒りが溢れかえっている。
健夜「私に何度立ち向かえば気が済むの!? 私に何度倒されれば貴方の気がすむの!? そんなに、そんなに私に殺されたいの!? 貴方は!?」
晴絵「――やっぱ、アンタってさ。結構、優しいんだよね」
健夜「!?」
健夜「私が優しい!? 冗談は止めてよ! こんなに無垢な少女達を血祭りにあげてる私のどこが優しいっていうの!?」
晴絵「9冠の時さ、なんでアンタは取るのを止めたの?」
健夜「それは……あんなくだらないもの、取ったってどうしようもないからだよ!」
晴絵「ならリオデジャネイロも?」
健夜「そうだよ! 弱すぎて、話にならなくて、取る価値もなくて――!」
晴絵「違うな。あんたは怖かったんだよ。人を、“完全に”ぶっ壊すのが、怖かったんだ」
健夜「――!」
血祭りでなんか笑ってしまった
もう3時か
晴絵「正直、小鍛治健夜の麻雀は、小鍛治健夜の全力は、人を容易く殺せる」
晴絵「でも、アンタは今まで麻雀で人を殺したことがない。二度も立ち向かった私が生きてるのが何よりの証拠」
晴絵「そりゃ、雑魚相手に全力を出す必要もない。半分程度で十分倒せるんだから」
晴絵「だけど、9冠の時も、リオの時も――そして今この時も――!」
衣「ぐ、ぐぅ」
透華「し、試合は……」
セーラ「どうなった、んや?」
豊音「いたいよー」
淡「きゅうきゅうしゃ、ぷりーず……」
和「さきさん? さきさん……」
やえ「――――」
晴絵「誰1人として! 本当の意味で壊したことはなかった!」
すみません、>>1ですがさるくらいました
一時間くらいかけないので携帯で保守させて貰います
携帯に移して投稿や!
ほ
jほお
ほ
深夜ってどんくらいの間隔だっけ
寝る
朝まで残しといてくれ
ほ
寝るわ
>>1すまん頑張って
ほ
ほ
ほ
ほ
健夜「違う! 違う違う違う! 私は――私は!」
晴絵「辛かったろ。いたたまれなかったろ。全力を出して試合が出来たら、まだ麻雀を楽しめたのかもしれない」
晴絵「自分の技量を高め続けるって慰めも出来たのかもしれない」
晴絵「だけどあんたは全力すら出すことが出来なかった。全力を出したら対戦相手が死んでしまうから」
晴絵「本当は、小鍛治健夜はこの世で一番強くて――」
晴絵「きっと、とっても優しいんだ」
健夜「……私、生まれてきちゃ、駄目だったんだよ」
健夜「私と麻雀を打って、楽しいと思う人なんて1人もいない」
健夜「こんな化け物は、麻雀なんか打つべきじゃなかったんだ」
健夜「たとえ小鍛治健夜に出来ることが麻雀しかなかっとしても、麻雀を好きになっちゃ、駄目だった……」
晴絵「そんなこと、ないよ」
晴絵「そりゃ、ぶっちゃけアンタと打つのは楽しいよりは怖いことの方が多い。今だってそうだ、恐怖に震えてる」
晴絵「だけどさ――強くて、強くて、強くて強くてどうしようもないアンタと麻雀を打てることが楽しいって思ってる私は、ちゃんといる」
おかえり!
健夜「…………いいの、全力を出して」
晴絵「だせよ。あんたの全力、ちゃんと受け止めてやる――その上で」
晴絵「あんたに、勝つよ」
咲「私も、付き合います!」
照「麻雀が好き。麻雀を愛してる。だから、私達は強さを求める。だから、私達は貴方に勝ちたい!」
健夜「…………ありがとう」
健夜「なら、受け止めて――これが、これが」
健夜「これが! 私の全力だああああああああああぁ!」
それは、世界そのものが砕け散るかのような力の開放だった。
それは、あたかも宇宙そのものがはじけ飛ぶかのような力の開放だった。
ドーム会場の天板は吹き飛び、外装は塵芥と化す。
晴絵「うおおおおおおおおおおおおおおぉ!」
その中を、晴絵は突き進んだ。
ボロボロの体を引きずって、さらにボロボロになっても立ち向かった。
手にした麻雀牌を、卓上へ叩きつける為だけに――命を燃やして歩み征く!
晴絵「レジェンド――ツモォォォォォ!」
――それから、少し後。
ピーポーピーポー
『ザザッ、こちら65号車。現場に到着しました。重傷者11名を収容、なお全員に命に別状はない模様――』
――路地裏
晴絵「…………勝った、か。やったー……あはは、は……あー、しんどい……こりゃ、もう、死ぬ、かな……」
灼「――勝ったん、だね。はるちゃん」
晴絵「……よく、この場所がわかったな――灼」
灼「愛の力」
晴絵「……そっか。なあ灼、私、もう死ぬんだ」
灼「……」
晴絵「……お前は、他の奴を好きになれ。死人に嫁ぐなんて、勿体無いぞ」
灼「やだ。はるちゃんが死ぬなら、私も死ぬ。言っとくけど、それを躊躇しないくらい、はるちゃんのことずっと昔から大好きだから」
晴絵「はぁ――ばーか」
灼「うん、馬鹿」
晴絵「……なら、いいや。灼――ずっと言いたいことがあったんだ」
灼「なに、はるちゃん」
晴絵「――ずっと昔から、ずっと待っててくれてありがとう。愛してる、灼」
灼「……今すぐ死んでもいいくらいに、嬉しい」
晴絵「この世界中の誰よりも、私は――鷺森灼を――愛……して……る……」
灼「私もだよはるちゃん」
灼「この世界中の誰よりも、私は赤土晴絵を愛してるから」
翌日、東京の路地裏で2人の遺体が発見された。
1人の死因は不明。もう1人の死因は喉を鋭い刃物のようなもので掻っ切った自殺と断定されている。
だが不思議なことに、その2人の遺体に苦痛の表情はなく、とても幸せそうな、とても幸福そうな顔をしていて。
まるで、恋人と一緒にいるかのような安らかな顔で、寄り添い合っていた――。
美穂子「……」ペラ
もこ「……」ペラ
灼「どうだった? ついに描いちゃった、描いちゃった/// 私とハルちゃんのラブストーリー///」
灼「今は漫画の中だけだけど、いつか本当にハルちゃんとこんな恋愛がしたいな///」
美穂子「――感動しました、これほど素晴らしい物語は未だかつてないでしょう」
美穂子「ああ、私も上埜さんとこんな恋愛を……///」
もこ「……私も……憩と……こんなこと……した、い///」
憩「なぁ、人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて、おこがましいとは思わへんか……」ポロポロ
玄「諦めたーらー終わーりー!」ブワァ
池田「気持ちをーリセットしてー!」ブワァ
憩「こーわーい……」ポロポロ
カン!
さるさんバイバイしね
長い間ありがとうございました
おつ
乙が少ないってことはつまんなかったのか
時間が時間だからしゃーない
乙
乙
乙が少ないのは平日のこの時間だからしょうがないね
おつ
乙 面白かったよ、こんな時間じゃ無かったら2倍は乙があったと思う。
後で読む保守
なかなか凄まじかった
乙乙
スタジオアラタは今日も平常運転だな
乙すばら!
レジェンドツモで吹いたわwww小鍛冶健夜もイチコロだぜwww
今までで一番面白かったわw
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