身代わりで立てたからID違います

晴絵「いやー、参った参った」

晴絵「二人とも急にそんなこと言い出すんだもんな」

晴絵「もっと事前にさぁ、それっぽーい空気出しててくれたら、私だってちゃんと察してたのになぁ」

晴絵「そりぁ嬉しいけど、いきなり言われたらいくら私でも戸惑っちゃうよ」

晴絵「そう思うだろ玄？」

玄「そうですねー」ﾆｺﾆｺ

玄「でも仕方ないですよ」

玄「赤土先生かっこよかったですもん」

玄「小鍜冶さんとのタイトル戦」

晴絵「んっふふー、やっぱり玄もそう思う？」

玄「ですのだ」ﾄﾞﾔ

玄「っていうか、私は前からお二人から聞いてましたよ？」

玄「先生が好きだってこと」

晴絵「え、そうだったの？」

玄「ですのだ」ﾄﾞﾔ

晴絵「何だよー、それならそれとなく私にも匂わせてくれてもよかったろー？」ｸﾞｲｸﾞｲ

玄「お二人から口止めされてましたし、私もタイトル戦前の先生に負担を掛けたくなかったので」

晴絵「ああ、嬉しいなぁー。気遣いの出来る可愛い後輩とか最高だなぁ」

晴絵「いっそ玄が私と付き合わない？」

玄「……」ﾆｺﾆｺ

玄「……」ﾆｺﾆｺ

玄「……」ﾆｺﾆｺ

晴絵「……ごめんなさい」ﾍﾟｺﾘ

玄「ですのだ」ﾄﾞﾔ

晴絵「いやでも実際さぁ、どうすりゃいいか分かんないんだよねー」

晴絵「プロになってからはずっとあの人に追い付きたくて必死だったし」

晴絵「……望が私をそんな風に思ってくれてたなんて、考えもしなかった」

玄「先生……」

晴絵「家業全部憧に押し付けて、東京に出た私の世話全部してくれてたのにね」

玄「空気出しまくってるじゃないですか」

晴絵「いやだって、望だよ？　そりゃよく考えたら、本っ当に考え抜いたならその行動の真意を探れたかもしれないけどさぁ」

晴絵「ほら私、周り見えてなかったし」

玄「同じこと言ってるのに、さっきより言い訳臭さが酷い……」

晴絵「本当にね、こんな私の何がいいんだか……」ﾌｧｻ

玄「ですのだ」ﾄﾞﾔ

玄「でもじゃあ、望さんのことはそういう対象で見たことはないんですか？」

晴絵「うーん、ないなぁ」

玄「……一度も？」ｼﾞﾄｯ

晴絵「…………」

玄「……」ｼﾞｰ

晴絵「……ど、どこまで知ってる？」

玄「全部」

晴絵「………………一回だけ」ﾎﾞｿｯ

玄「ですのだ」ﾄﾞﾔ

晴絵「いや待ってよ。違うのよ」
玄「違くはないでしょ」

晴絵「そうだけどっ！　そうじゃなくってっ！」ﾀﾞﾝｯ

晴絵「その日はちょっと、調子悪く負けちゃって」

晴絵「珍しく、私にしては本当に珍しく帰ってからお酒飲んでて」

晴絵「そしたら望が」

玄「き、聞いてないですから言わないでいいですっ！」

玄「っていうか、望さん視点でもう聞いてますからっ！」

晴絵「…………マジで？」

玄「ですのだ」ﾄﾞﾔ

晴絵「……地獄だ」

玄「真面目な顔してしっかり遊んでますのだ」

晴絵「止めてよー玄ー。違うんだってばー」

晴絵「確かに色々あったけど深く考えないでいいって望も」

玄「全部」

晴絵「」ﾋﾞｸｯ

玄「聞いてますのだ」ﾄﾞﾔ

晴絵「…………」

玄「……」ﾆｺﾆｺ

晴絵「……健夜さんからも？」

玄「ですのだ」ﾄﾞﾔ

晴絵「……最悪だぁ」ｶﾞｸｯ

玄「最悪なのはこっちですのだ」

玄「どうして二人ともわざわざ奈良の私に愚痴言いに来るのか」ﾊﾃ?

玄「望さんはともかく、小鍜冶プロが来たときはビックリして腰抜かしましたのだ」

晴絵「あー、まぁ、玄のことはよく話してるからねー」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

晴絵「奈良に戻ったときはいつもここに泊まってるし」

晴絵「悪かったね」

玄「別に構いませんが」

玄「むしろ歓迎ですが」

玄「愚痴はともかく、尊敬する方たちの濡れ場とか最高ですが」ｷﾘｯ

晴絵「玄、最近鹿児島の巫女さんたちと仲良くしてるらしいじゃない？」

玄「はいっ！」

玄「揉みまくりの吸いまくりの舐めまくりですのだっ！」ﾄﾞﾔ

晴絵「…………」

玄「……？」ﾍｹ?

晴絵「…………」

玄「……やっぱり霞さんのが一番ですのだ」ﾄﾞﾔ

晴絵「続けないでよ！」

晴絵「あーあー、私もそのくらい自由に発言出来たらなぁ」

玄「流石に私もプロポーズの返事くらい真面目に考えますよ？」

晴絵「えー、でも判断は胸でするんでしょ？」

玄「ですのだ」ﾄﾞﾔ

晴絵「……ブレないなぁ」

晴絵「私は二人には世話になりっぱなしだったからなぁ」

晴絵「どっちか選べと言われてもなぁ……はぁ」

玄「……ならむしろ単純に、身体の相性とか気持ち良さで考えてみては？」

晴絵「それなら健夜さんだな」

玄「ほう」ｷﾗｯ

晴絵「浮いた噂は少なかったけど、やっぱり社会人は違うね」

晴絵「恥ずかしそうにするわりに上手いのなんの」

玄「ふんふむ」

晴絵「気緩んだ時に聞いたんだけど、あの元カノの女子アナに色々教えてもらったんだってね」

玄「ややっ。そんなこと、話しちゃうものなんですか」

晴絵「ヤった直後って口軽くなる人多いみたいよ？」

玄「なるほどなるほどー」ｳﾑｳﾑ

玄「ところでぐ、具体的には？」ｳｽﾞｳｽﾞ

晴絵「えー？　聞いちゃうー？　気になるー？　知りたいの玄ちゃんー？」ｸﾞｲｸﾞｲ

晴絵「いやー、子供には聞かせらんないなぁー、残念っ」ﾍﾟｼｯ

玄「ところで明日灼ちゃんに会う予定なんですが」

晴絵「あれはプロになってから初めてあの人と対局した日だったな」

玄「ですのだ」ﾄﾞﾔ

晴絵「──だからさぁ、単純にキスするだけのことでも、あの二人は違いがありすぎるんだよねぇ」ｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞ

玄「ほうほう、やっぱりそちらも小鍜冶プロの方に分がおありで？」

晴絵「うーんっ、微妙！」ﾋﾟｼｯ

晴絵「そりゃしてて気持ち良いのは健夜さんだけどさぁ」

晴絵「望の方はアレよ。やっぱり恥ずかしがってくれたほうが萌えることもあるじゃない？」

玄「分かります分かります。あ、どうぞどうぞ」ﾄｸﾄｸ

晴絵「あ、ありがとー」ｸﾞﾋﾞ

晴絵「……あー、飲んだ飲んだ」

晴絵「っていうか私大丈夫かな。無茶苦茶話しちゃった気するんだけど」

玄「大丈夫ですのだ」ﾎｸﾎｸ

玄「私はそんな簡単にお客様の秘密を話したりしませんのだ」

玄「早速さっきの内容をお姉ちゃんと小蒔さんに試すだけですのだ」ｳｽﾞｳｽﾞ

晴絵「んー。まぁ、それならいっかぁ」ｹﾗｹﾗ

玄「ですのだ」ﾄﾞﾔ

晴絵「…………はぁ」

玄「……先生？」

晴絵「……いや、やっぱり、どう伝えるべきかな、ってさ……」

玄「……決めたんですか……？」

晴絵「……うん。いや、最初決めてたよ」

晴絵「ただ、申し訳なくてさ」

晴絵「せっかく私を好きになってくれたのに、断らなきゃいけないなんてさ」

玄「……でも」

晴絵「分かってる。何も言わないでいる現状こそ、彼女たちに失礼になってることくらい」

晴絵「でもやっぱり、踏ん切りが付かなかったんだよ……」

玄「…………」

晴絵「明日、二人と話してくるよ」

晴絵「電話になるけど、多分、婚約の報告も出来ると思う」

玄「──はい、お待ちしてます」

玄「頑張ってください、赤土先生」

晴絵「──おう！」ﾋﾞｼｯ

晴絵「──そういう、ことなんだ」

健夜「──あ」

望「──」ｶﾀｶﾀ

晴絵「望、ごめんなさい。私は」

望「な、何言ってるのよ。は、晴絵ったら、あはは……」

望「そんな、あ、あなたが考えてくれたことに、文句なんてあるわけないじゃない？」ｶﾀｶﾀ

望「そんな、あ、謝らないでよ。逆に恥ずかしくなっちゃうわ」

望「そんな──っ」ｼﾞﾜｯ

晴絵「──っ」ｽﾞｷｯ

健夜「…………」

望「……荷物、纏めておくわ」ｺﾞｼｺﾞｼ

望「明日の朝には出てると思うから、心配しないで」

晴絵「望、そんな──ぁ」

健夜「……晴絵さん」ｽｯ

望「……っ。今日まで、楽しかったわ」

望「ありがとう、晴絵」

晴絵「望……」

望「さようなら」

望「二人で、お幸せにね？」ﾆｺｯ

晴絵「……」

健夜「……気にしないで晴絵さん。彼女ならきっと、大丈夫だよ」

晴絵「健夜さん、私は」

健夜「いいの。分かってるから」ｸｽｯ

健夜「でもこれだけは言わせてください」

晴絵「……」

健夜「私を選んでくれて、ありがとうございます」

健夜「これからも、末永くよろしくお願いします」ﾆｺｯ

晴絵「──はい」ｷﾞｭｯ

健夜「あ──んっ」ｽｯ

ﾁｭｯ