陽介「いやいや! しかし、このメンバーで集まるのも久しぶりなような気がするぜ!」
千枝「そりゃ、私たちは大学生なわけだし、完二君達なんか受験生なわけだしね。かという私も、来るべき採用試験に向けて勉強中な身でありますが」
雪子「最近、本当にがんばってるよね。この前も直斗君たちに勉強付きあってもらってたし」
陽介「おいおい、受験生に時間取らせるなっつの」
直斗「僕は構いませんよ。勉強にしても時間にしても、ある程度のゆとりがありますから」
りせ「ぶ~っ! それイヤミにか聞こえないんだよ~!」
完二「まぁ、イヤミに聞こえてしまう時点でどうかとは思うが」
りせ「うぐっ! か、完二にしては正論ね……。そうそう! それよりも花村先輩、今日はどういった用事なんですか?」
雪子「いきなり『ジュネスのフードコートで集合』だなんて。急ぎの用事なのかな?」
期待
陽介「じゃあさっそく本題に入るか。実は、昨日、悠からいきなり電話が来たんだよ」
千枝「鳴上君から? てことは、もうすぐこっちに遊びに来るとか!」
陽介「だと、それもそれでうれしかったんだが、来るのは予定通り来年の正月だとよ」
りせ「ちぇ~、少し残念だな~」
雪子「けど、鳴上君から電話ってことは、この集合も鳴上君関係?」
陽介「そのとおり! で、いきなりなんだけどよ、みんなは『こみパ』って知ってるか?」
完二「こみ……パ? 新しい遊園地かなんかッスか?」
りせ「こみパって……もしかして『こみっくパーティー?』」
陽介「おっ! さすがりせちーはそっち界隈について詳しいようで」
りせ「とはいっても、名前とちょっとしたことを知ってるってぐらいだよ。それにそっち方向の人の集まりって、私達より二次元な女の子が好きだから」
雪子「こみっく……ぱーてぃー? 名前だけ見ると、漫画がうんぬんって感じだけど」
陽介「まぁ確かに、漫画うんぬんって感じではそうだな」
千枝「もったいぶらないで教えなさいよ」
直斗「こみっくパーティー……サブカルチャーの中心地である東京で一年を通して行われる、日本一大規模な同人誌即売会ですね」
完二「はぁ、随分と詳しい説明だな」
直斗「知識の一つとして覚えていただけです。ですが、僕も細部までは」
陽介「そう! 日本中の猛者達が、そこにしかない数々の宝を求めて集まるメッカ! それが『こみっくパーティー』! ひと月に一回のペースで開催されるそれは、今までに幾多もの同人誌をこの世に輩出してきた場所でもある!」
千枝「は、花村?」
雪子「花村君がいつもより断然燃えてる……!」
完二「同人誌って、なんすか?」
りせ「完二ってば、そんなことも知らないんだ~。だからこの前の試験でも追試受けちゃったりするんだよ」
完二「る、っるせぇ! しらねぇもんはしらねぇんだよ!」
直斗「簡単に説明するなら、趣味として描かれた漫画、ですかね。同好の人達が資金を出し合い同好雑誌『同人誌』を売買する場所。それが同人誌即売会です」
千枝「ようはあれでしょ? アニメのサブストーリーを妄想して漫画にしちゃったりしたのでしょ?」
雪子「へぇ。よくわかんないけど、さすが都会って感じだよね」
千枝「雪子、それって都会に対して偏ったイメージ持ってない?」
4メンバーはオタクは普通にきもがるだろ
陽介「っと、話が少し逸れ気味だぜ。で、これまたいきなりだけどよ。そんなこみっくパーティーに、お前ら興味がないか?」
千枝「はぁ? なによいきなり」
陽介「まぁまぁ! 単純に興味があるかどうかを聞いてみたいんだ」
雪子「私、実はちょっと興味あるかも」
千枝「ゆ、雪子!?」
雪子「私の場合は、そのこみっくパーティーに興味というより、同人誌に興味があるんだ」
陽介「さっすが! 見識がお広い天城屋若女将様はわかってらっしゃる!」
気付いたら落ちてたから残念無念と思ってたら即立っててワロタ
完二「漫画ねぇ。話を聞くに、そこでしか買えない漫画とかあるらしいし、それを一度は読んでみたいって聞かれれば、否定はしないが……」
りせ「りせはすっごく興味ありありなんだよ! あそこのコスプレイヤーのコスプレってレベル高いらしいし、私個人でもコスプレしてみたいの!」
直斗「興味がない、と言えばうそにはなりますが……」
千枝「わ、私は別にって感じかな~」
陽介「ふっふっふ! そんな君たちには、まずこれを読んでもらおうか!」
千枝「な、なんか今日の花村、ヘン」
陽介「変などではない! 俺は今、猛烈に燃えているんだ~!」
りせ「花村先輩のがっかりさがさらに暴走しちゃってる感じだよね~」
陽介「な、何気にとげがある一言を……まぁ、そんなことりより、まずはこの漫画を見てくれよ」
あんな日本一違法行為が堂々と行われる場所にメンバー行かせんなよ、只の楽しいイベントとか変な勘違いしてんな
千枝「漫画って……薄っ!? 冊子はでかいけど、いくらなんでも薄すぎやしない、これ」
りせ「これ、同人誌だね。48ページか、結構多めな感じの」
雪子「これで多い方なんだ……」
直斗「一般的な単行本と比べれば薄いですが、ページ的には雑誌の漫画の一話分といったところ。一見薄いように見えて、実は普通なんですよ」
完二「ああ、確かに雑誌の中の一話分ってちょうどこんな感じだ。一か月に一回これを出すってことは、月刊の漫画雑誌と同じ感覚っていうことか」
陽介「それで一般的に言われる同人誌ってやつだ。プロじゃないやつが出した割には、予想以上にしっかりしてるだろ?」
千枝「まぁ、そう言われればそうだし、表紙もプロが描いたのと変わんないね」
パラッ
雪子「……へぇ。絵も本当に雑誌にありそうなほどうまいね。まさに漫画って感じ」
完二「はぁ、これはすげぇや。純粋にうまいのなんのって」
直斗「起承転結もよく演出されていて、個人各々のタッチも出している。ちゃんと漫画として形になっています」
りせ「これでプロじゃなくて、アマチュアさんなんだからすごい話よね~。私も知り合いに見せてもらった時は驚いたもの」
陽介「まったく無名の人が、プロにも負けない漫画を輩出する場所、それがこみパなんだ! そのレベルの漫画がさがせば絶対あるんだぜ! すっげぇ話だろ! ――ちなみに、その漫画の作者は、他でもない悠だ」
「――えぇぇ!?」
>>6
4以外の連中は気持ち悪がらないとでも思ったのか
花千枝スレなら支援
千枝「あ、あの鳴上君!? あの鳴上君が描いたの!?」
雪子「鳴上君、トランペットとかもうまいけど、まさか絵までうまいなんて……」
完二「そういえば、大学に入った後にこっちに来た時、これから忙しくなるって……そういうことだったのか」
りせ「すっご~い! さっすが先輩って感じ!」
直斗「相変わらず、先輩は予想斜め上のことをしてくれますね。……まぁ、それがすごいのですが」
陽介「何を隠そう! ここ最近知名度が急上昇し、今ではこみパの壁サークルの一端を担っているサークル『PERSONA』の『ワイルド番長』が他でもない悠なわけだ! 俺もさすがに聞いた時は驚いたぜ」
千枝「そりゃあ驚くのも無理ないわよ。こんなことしてるとはまったく考えもつかなかったわけだしね」
雪子「でも……そっか。鳴上君も向こうで頑張ってるんだね」
うわきめえ
陽介「ここで最初に戻るわけだ。さっきも言った通り、そんな悠から先日電話があったんだ」
りせ「それでなんて?」
陽介「『みんなでこみパに来てみないか』ってさ」
直斗「なるほど、お誘いですか」
完二「まぁそうだと勘付いてはいましたけどね」
陽介「悠曰く、『俺が今、どんな世界で頑張っているかをみんなに見てほしい』らしい。こういうところがなんとも悠らしいよな」
りせ「行く行く! 私絶対に行く!」
完二「おいおい大丈夫なのか。俺達受験生だぜ? 俺も勉強はうんざりだけどよ。さすがにそれをほっぽると親にも悪いしよ」
りせ「少しぐらいならどうにかなるわよ! だったらいつもより倍、勉強を頑張ればいいのよ! そ・れ・に! 先輩がこみパの参加者ってことは、こみパに行けば他でもない先輩に会えるってことじゃないの!」
雪子「鳴上君も、自分の今の姿を見てほしいって言ってるわけだしね」
しえん
りせ「何より、私がこみパにも興味があるわけだし!」
陽介「りせちーはやる気まんまんだな。それじゃあ、他のみんなはどうだ?」
雪子「私、行ってみたい」
千枝「ゆ、雪子?」
雪子「興味が少しあるのも確かだし、何より鳴上君の同人誌、もっと読んでみたいから」
千枝「それは、私もそうだけどさ……でも、いまいち抵抗があってさ」
りせ「抵抗って?」
千枝「なんというか……オタクっぽいってやつ? 自分からそれに突っ込んでいくてのがねぇ」
雪子「以外だね。千枝って、オタクな感じはダメなの?」
千枝「ダメってわけじゃないんだけど。なんというかな~」
直斗「僕も、ぜひ行ってみたいところです」
千枝「な、直斗君まで……」
直斗「そういった文化に触れて見識を深めるのもいいでしょうし。興味がある。まぁ、それは半分建前で、一番の理由は他でもない先輩の存在なわけですけどね」
完二「お、俺も、行ってみようかな~と。先輩も、来てほしいらしいし」
陽介「そうかそうか! そりゃ悠も喜んでくれるぜ! で、里中はどうする?」
千枝「私は……わかったわよ! こうなれば敵地突撃よ!」
陽介「そう言ってくれると思ったぜ!」
直斗「それで、いつ行けばよろしいのでしょうか? こみパと言っても、ひと月に一回は開催されているので」
陽介「悠は、12月の冬こみに来てほしいって言ってたな。冬こみっていうのは、その言葉通り冬の12月、それも年末に開かれるこみパのことで、他のこみパより大規模なんだ。他にも春こみと夏こみがある」
りせ「年末……じゃあ、先輩のところで忘年会とかするのもいいかも!」
完二「おっ! そりゃいいな。どうせなら、新年会もしちまうってのはどうだ?」
直斗「年末は一層と騒がしくなりそうです」
陽介「悠の家に突撃するのもいいな!」
千枝「……そっかぁ。鳴上君を漫画、ねぇ」
雪子「どうしたの?」
千枝「へ? あっ、いや。なんでも……」
―――
――
―
【冬こみ前日】
陽介「きたぜきたぜ! ついにやってきた! 大都会、東京!!」
千枝「花村うるさい!」
雪子「新幹線、すっごく快適だったね」
完二「何より電車より早いのなんのって。静かで揺れもあまりないから、つい寝ちまいましたよ」
りせ「八十稲羽に行ってからは久しぶりだな~東京入りなんて。相変わらず騒がしいって感じ」
直斗「八十稲羽に慣れると、ここまで高層ビルが立ち並ぶ光景には圧迫感さえ覚えてしまいますね」
陽介「そうか? この車の騒々しさ! 人の多さ! コンクリートジャングル! まさに都会って感じがいいじゃねぇか」
雪子「花村君は都会に慣れてるからね」
千枝「そういうもんかねぇ。で、ここでいいの?」
陽介「ああ。この場所で悠と落ち合う予定だ。頃合い的にはすぐに来ると思うけど――」
「みんな、本当に久しぶり」
りせ「あっ! せんぱ~い!」
鳴上「長旅ごくろうさま。元気そうで何よりだ」
完二「うっす! おかげさまで。先輩も元気そうでなによりッス!」
ホモぉ展開はきますか
し
直斗「ええ。僕も、元気そうな先輩が見れてなによりです」
陽介「よーっす相棒!」
雪子「ほんとのほんとに久しぶり……鳴上君」
千枝「やっほ~! 君が元気そうで安心したよ~」
鳴上「まぁ、なんだ。もうすぐ昼時だし、昼食にしようか」
完二「再会したのはいいっすけど、確かに腹減りましたね」
千枝「あっ! はいはい! だったらみんなで焼き肉希望!」
陽介「うぉ! まったく予想通りのリクエスト!」
雪子「でもそれでいいんじゃないかな。そういうところだったらテーブル席もあるだろうし」
P4Gが神ゲーすぎて困る
直斗「積もる話は食べながら、といきましょうか」
りせ「さんせ~い! 先輩の最近の話とか食べながら聞いてみたーい!」
鳴上「焼き肉、か……それだったら、俺の家の近くにいいところがある。そこにしよう」
千枝「ほいきた! 話の友にはやっぱり肉は付きものですよ~!」
陽介「どちらかというと、里中の友って感じだけどな」
鳴上「ひ、否定できんな……」
雪子「この前も肉ガムの上ハラミ味買いだめしてたしね……ぶふっ! あれを食べてる時の千枝の顔……!」
鳴上「あのガム、まだ生産してたのか……」
屑花村死ね
―――
――
―
ガララッ
鳴上「おじゃまするぞ。テーブル席空いてるか?」
あいか「お客様、運がいい。ちょうど空いてるところ」
千枝「ってあいかちゃん!? 八十稲羽で見ないって思ったら!」
あいか「おお、久しい顔が」
雪子「び、びっくりした……最近どうしてたの? どうしてこんなところに?」
あいか「武者修行。ここ、お父さんの知り合いのお店」
陽介「なんというか、相変わらず神出鬼没である意味安心したというか……」
――
―
あいか「団体様テーブル席にごあんない」
鳴上「ああ、ありがとう」
あいか「毎週土曜日恒例のスペシャル肉丼、おすすめ」
完二「こっちにもあの肉の山あるのか」
千枝「まじ! じゃあそれ一つ!」
鳴上「あと、焼き肉盛り合わせAコース、人数分で」
あいか「毎度」
タッタッタ
りせ「愛屋の先輩、相変わらず働き者ですよね~」
鳴上「なにせ武者修行で東京に来るぐらいだしな」
直斗「その向上心は称賛に値しますね」
あいか「飲み物、お待ち」
陽介「てか早っ!」
雪子「こういうところも相変わらずって感じだね、ふふっ」
――
―
ジュージュー
直斗「先輩、そのカルビはまだ生焼けでは?」
千枝「甘いね、直斗君! 焼き肉において牛肉はほぼレアがおいしいものなのよ!」
直斗「そうなんですか。こういった店で焼き肉、というのは経験がなかったものですから。勉強になります」
完二「勉強……?」
雪子「それにしても、本当に驚いたよ。例の同人誌の件」
鳴上「ああ。あれか」
りせ「しかもめっちゃくちゃうまいし! いつ頃から始めたんですか?」
鳴上「大学に入ってすぐだから……今は八カ月ってところかな」
千枝「一年もたたずにあれ!? だって、絵描きとかの経験ってなかったでしょ?」
鳴上「優秀な先生達に教えてもらったから。それにめいっぱい練習したのもある」
陽介「それでもあれはすげぇって! まぁ、悠って物事の上達が異様に早いからな」
直斗「飲み込みが早いですしね。ですが、それ相応に努力したのでしょう」
鳴上「そう言われると、なんだか照れるな。よかったか? 俺の漫画」
りせ「もうばっちぐー! です! 見せてもらったのはファンタジーものでしたけど、モンスターとかの描き込みが特に目を引きましたよ!」
鳴上「ありがとう」
番長×陽介の薄い本はよ
千枝「けど、まさか漫画を描き始めるなんて予想外だったなぁ。なにかきっかけとかあるの?」
鳴上「なんというか……まぁ、人の縁でな。漫画を描かないかって誘われたんだ」
直斗「ということは、その誘った人も?」
鳴上「ああ。今では二千部近くを売ってる人気同人漫画家になってる」
完二「二千部って、二千冊っすか!?」
鳴上「ああ。そのレベルになるともう大御所って感じらしい。同人歴は俺と同じはずなんだが、あいつはすごいよ」
陽介「はぁ~それはすげぇな。悠はどんな感じなんだ?」
鳴上「俺はまだまだだよ。まだ千部前後が限界だよ」
雪子「それでもすごいと思うんだけど」
鳴上「俺の今の力は人の教えでどうにかなってるレベルだから。だからまだ発展途上。まだこれからだよ」
りせ「先輩ったら相変わらず謙虚なんだから。そういえば、新しい同人誌はどんな感じですか?」
鳴上「三日前に完成して、今印刷しているところじゃないかな。明日には完成品が届くから、楽しみにしてて」
直斗「ええ、期待させてもらいますよ。先輩」
鳴上「うぐ……今更になってプレッシャーがかかってきたな」
陽介「そういや、これからの予定ってどうなってるんだ? 明日のスケジュールとか」
鳴上「そういえば詳しくは教えてなかったな。まず、今日みんなには俺のマンションの部屋に泊まってもらう」
りせ「先輩のお部屋ですか! これは夜、色々と楽しくなりそう~!」
直斗「男の人の一人暮らしの部屋……興味があります」
鳴上「お、お手柔らかに。そして、明日の予定だけど……会場は教えた通り東京の展示場。それで、みんなにお願いがあるのだが……」
完二「先輩の頼みでしたら、みんな喜んで引き受けますって」
鳴上「すまないな……みんなには、サークルの売り子をやってほしいんだ」
直斗「売り子……つまり、同人誌の販売のお手伝いをしてほしい、ということですね」
陽介「やっぱりな。サークル申請書を書くのに協力したのって、そういうわけだったか」
千枝「えと、つまり私たちが鳴上君の同人誌の販売員になるってこと?」
鳴上「ああ。一般入場も考えたんだけど、今回は冬こみ。規模が大きくて、正直、あの列に並ばせるのは忍びなくてな……サークルチケットだったら、早い段階でスムーズに入場できるし」
雪子「なるほどね」
鳴上「それにしても、みんなそれ相応に勉強してきてくれたんだな」
千枝「ああ、それが……花村の奴。妙に今回のことに必死でねぇ。無用な説明までしてくれたわけ」
陽介「なんせあのこみパだぜ! そりゃあ男としてテンションが上がるってもんよ! 八十稲羽に引っ越す前はこみパにあこがれはしたものの、参加できなかったからなぁ」
鳴上「それが誘いがいがあった。それにしても、すまないな。お願いしちゃって」
直斗「いえ、むしろありがたいです。冬こみとなると、参加者が二十万人を超えるらしいですしね」
千枝「えぇ!? ちょっ、なにそれ初耳!」
りせ「こみパってすごい大きいイベントなんだよ。何年か前に、あまりにもエスカレーターに人が乗りすぎてエスカレーターが逆走した事故もあったし」
完二「す、すげぇなそりゃ。そんなんだったら、もう何時間も並ぶ羽目になっちまう」
雪子「それを考えたら、鳴上君のお手伝いをするなんて苦じゃないよ」
鳴上「……ほんとうにありがとな」
陽介「よっしゃ! みんな! 気合い入れていくぜっ! あそこは戦場だ! 気を抜くんじゃないぞ!」
完二「う、うっす!」
クマはどこクマ~?
>>41
テレビの世界に帰ったんじゃね
りせ「それにそれに! りせ達には専用の『衣装』があるわけだしね!」
鳴上「衣装……もしかして、コスプレか?」
完二「そうっすよ。俺が三人の分作ったっす」
りせ「私と直斗と天城先輩の三人! 完成度すっごい高いから、期待しててね!」
雪子「ちょ、ちょっとはずかしいけどね……」
陽介「にしかし、残念だよなー。天城はコスプレするのに、里中がコスプレしないってのは」
千枝「い、いやよ! だって、いつもと違うアニメの服を来て、無数のカメラを向けられなければいけないんでしょ! は、はずかしいじゃない!」
りせ「でも雪子先輩は勇気出して参加してくれてるじゃないですかーっ」
千枝「そう、それが予想外だったのよねぇ。案外乗り気だったのが予想外過ぎて」
④
>>41
漫画書いてる
雪子「その……人生、なにごとも経験」
千枝「いやいや。勇気の使いどころ間違えてるって絶対」
prrrrrr……
鳴上「ん? ――はい、鳴上です。あれ? 千紗じゃないか。――わかった!」
ガチャッ
鳴上「――直斗!」
直斗「先輩? どうかなさいましたか?」
鳴上「すまない! ちょっとそこまで付きあってくれないか! 直斗にしか頼めない!」
直斗「……わかりました!」
④
千枝「あせってるようだけど……急ぎの用事?」
鳴上「いや、すぐに終わらせる! 陽介! これ、俺の家の鍵だから。食べ終わったら、家に先に行っておいてくれ」
陽介「お、おう。わかった」
鳴上「じゃあ、行くぞ」
直斗「はい」
陽介「悠!」
鳴上「なんだ?」
陽介「まっ、なんとなくだが……がんばってこい!」
鳴上「……ああっ」
タッタッタ
りせ「あせってたようだけど……大丈夫かな? 先輩」
陽介「あいつのことだから、多分結構大事かもしれねぇけど……大丈夫だろ。あいつだから」
雪子「それじゃっ! 明日に向けてがんばってこー!」
完二「……あれ? 天城先輩、顔赤くないっすか?」
陽介「え? ……まさか、また場酔いか!? なんでこんなタイミングで!?」
千枝「というか、ここって場酔いするような場所だっけ?」
ラビリスちゃんはいないのか
―――
――
―
【冬こみ当日】
陽介「この空気……まさに戦場よのぉ」
千枝「な~に道の真ん中でかっこつけてんのよ!」
完二「はぇ~、随分とでっけぇ建物ですねぇ。こりゃあ腰抜かすわ」
りせ「ここってニュースで取り上げられるたびに人でいっぱいなのよね~。ほら、今だってあんなに列が」
雪子「あれ? でも開場までまだすごい時間あるけど……もしかして、この列ってこみパの!?」
直斗「なにせ何十万人の規模の列ができるわけですから。おそらく、深夜からテントで泊まり込みで並ぶ人もいるでしょうね」
千枝「うっひゃあ。命かけてるなぁ。私には到底真似できない」
陽介「この列が同人誌じゃなくて期間限定の肉ビュッフェだったら?」
千枝「……それとこれとは別だもの」
④
完二「そういえば、直斗と先輩は遅れてくるんですよね?」
陽介「ああ。結局夜になっても帰ってこなかったし、悠の奴なにしてたんだろうな?」
雪子「徹夜してまでやりたいことだったってことでしょ? だったらねぎらってあげないとね」
千枝「鳴上君と直斗君用に栄養ドリンク買ってきて正解だったね。……それにしても、すごかったわねぇ。行きの電車」
完二「びっくりしたっすねぇ。電車の中にアニメ衣装を着た人がぞろぞろと……圧巻すよ」
りせ「まぁ、それに私たちも仲間入りするんですけどね! ねっ! 先輩!」
千枝「……へっ? わ、私?」
陽介「俺と天城とあのりせちーが、里中を放っておくと思ったか? 残念!」
雪子「じゃーん! 千枝のコスチュームでーす!」
千枝「え、えぇぇ!? い、いや、着ないから! 絶対に着ないから!」
りせ「えー! この期に及んでまだそういう~」
完二「作った本人としては、誠心誠意作ったので、着てほしいんですけど……」
千枝「こ、困るって! それを着て公衆の面前に出ちゃったら、大切な何かを失うような――」
雪子「大丈夫、初めてさんには優しくしてあげるから」
千枝「た、たんま~!」
④
陽介「サンドバッグ」
千枝「っ! ――な、なんのことかな~?」
陽介「今年の春に出来たジュネスのスポーツ用品店で、誰だったけかな~? サンドバッグを蹴ったら、その勢いでサンドバッグ壊しちゃった誰かさんは~?」
千枝「す、すごい脚力の人がいたものだね~」
陽介「誰かな~? それを俺に弁償してもらったどこぞやの女を捨てた肉食獣さんは~」
千枝「女捨ててないわい! けど、あの時はほんとすんませんっしたー!」
陽介「そうそう、里中は俺に大きな借りがあるわけだよ。……ここで交渉しよう。その弁償、なかったことにしてやるから、そのコスチュームを着てくれ!」
千枝「うぐっ!? そうなるとは思ってたけど、やっぱり!」
陽介「正直ほんとはお金返してほしいよ! 事故で壊したのならともかく、なんだ! 『シャドウ蹴り倒す勢いで蹴ったら、つい』って! おかげで俺の財布が蹴り倒されちまったよ!」
千枝「そ、それは悪いよ? ほら、いつかお金返すからさ」
陽介「いつ?」
千枝「うっ!? ……分かりました。着ます」
りせ「やっりぃ~!」
雪子「おめでとう。これで仲間だね」
陽介「それでこそ里中ってもんよ!」
完二「俺は単純に、製作者としてうれしい限りッス。……いや、ほんとッすよ!?」
千枝「さようなら……私の、純情」
④
――
―
千枝「えと……『ラの12のc』。ここね」
陽介「あれ? 同人誌の段ボールがないな。話によれば、そこらへんにあるはずなのに」
完二「多分、もうちょっとすれば届くんじゃないっすか?」
雪子「じゃあ、こっちは簡単に準備を始めちゃいましょっか」
完二「そうっすね。先輩、釣銭の箱はここに置いとくっすよ」
陽介「ほいほい。こっちに値札、と」
―――
――
―
タッタッタ
ガラガラガラ
鳴上「すまない! 遅れた」
直斗「ただいま参上しました」
陽介「よっす! おつかれさん」
鳴上「ごめんな。夜までに帰ってこれなくて」
りせ「先輩こそ、おつかれさまです。はい、二人の分」
直斗「栄養ドリンク……ありがとう。助かるよ」
鳴上「ここまで準備もしてくれて……ありがとな」
雪子「いいんだよ。私たちがしたくてしただけだから」
完二「時間も余ってますしね。まっ、今日はどうぞこき使ってやってくださいよ」
陽介「そういうわけだ! で、もしかしてそれが、あれか?」
鳴上「ああ。今日の新刊だ。全部で千冊ほど」
千枝「うっひゃあ。段ボールでもわかる多さだねこれは」
鳴上「今回の本は60ページあるしな」
直斗「それをあのクオリティで一カ月で描き切るんですから、本当に感服します」
陽介「そういえば、ずっと気になってたんだけどさ」
鳴上「どうした?」
陽介「なんでこんなに壁際に配置されたんだ? 随分と変な場所だと思ってよ」
鳴上「ああ、それは――」
「それはですね。人気のあるサークルの特等席みたいなものなんですよ」
鳴上「あっ。牧村さん。どうも」
南「どうも。今回もお疲れ様です」
④
陽介「おぉ! 誰だ! この大人なメガネ美人さんは!」
完二「知り合いっすか?」
鳴上「こみパスタッフの牧村南さんだ。何かとお世話になってる」
南「牧村南です。何か困ったこととか用事があったら遠慮なく声をかけてくださいね」
陽介「は、はい! そりゃあもう!」
りせ「先輩、分かりやすく鼻のばしてる~」
雪子「“花”村だけに……プスッ!」
千枝「ついに雪子の笑いの壺がおやじギャグレベルになってきたわね……」
南「今回は団体のサークルだったので不思議に思ったのですが……なるほど、お友達さんですか」
鳴上「ええ。話した、例の仲間たちです」
南「なるほど。ということは、遠方からわざわざ……いいお仲間を持ちましたね」
鳴上「ええ。俺にはもったいないぐらい」
南「あらあら。では、本題に移りまして。見本本の提出をお願いします」
鳴上「あ、はい。こちらになってます」
完二「ん? スタッフさんも本を買いに来たんですか?」
鳴上「いや、これはいわば検閲みたいなものだ」
南「よほど倫理上に問題があったり、何か法律に抵触しないか本の内容をチェックしているんですよ」
完二「ナルホドナー」
南「……はい、結構です♥ では、頑張って下さいね」
鳴上「どうも」
④
りせ「ふ~ん……」
鳴上「どうした? そんなに牧村さんを見つめて」
りせ「いや、今までにないタイプだと思って」
鳴上「なんのことだ?」
「おっ! 番長やないかい! 今日も儲かってまっか~?」
鳴上「はぁ……その質問は終わった後のだろ。由宇」
由宇「それもそうやな! いやはや、にしても今回は随分とぎょうさんな人引き連れたなぁ」
鳴上「ほら、この前言っていた友達だよ」
由宇「なるほどなるほど。ちゅうことは、ウチと同じで遠征組ちゅうこっちゃ」
④
雪子「この人も、鳴上君の知り合い?」
鳴上「同人仲間の――」
由宇「猪名川由宇や! まぁ、この番長の漫画の先生その一っていう感じでええ」
鳴上「はじめたころに色々教えてもらったんだよ」
由宇「まぁ、ウチがおるから今の番長がいると言っても過言ではないで!」
りせ「番長って、ああ! ペンネームの『ワイルド番町』からか」
由宇「にしても、なんやなんや~?」
鳴上「ど、どうした?」
由宇「ちょいとこっちにきい! あんたにはぎょうさん文句がある!」
鳴上「え? いや、ちょ――」
ザァァ……
千枝「……拉致されちゃった」
完二「なんというか、嵐みたいな人でしたね」
――
―
鳴上「つ、疲れた……」
雪子「お、お疲れ様?」
完二「大丈夫っすか? 本番前から疲労困憊で」
鳴上「多分な」
「へぇ。アンタも今日から壁サークルの仲間入りなんだ」
千枝「ま、また新参者が」
鳴上「詠美……これはまた疲れそうな人物が」
④
さるさん大丈夫?
詠美「何よ! せっかくこのこみパの女帝である詠美ちゃん様が、こんなひょっと出の新参サークルに顔を出してやってるってのに、その態度はないんじゃないの?」
鳴上「すまないな。俺は今死ぬほど疲れてる」
詠美「本番前からスタミナ切れじゃ、このさき思いやられるわね。これが今度の新刊?」
鳴上「ああ。見るか?」
詠美「へぇ、この詠美ちゃん様に見せちゃうんだ~! この辛口一流評論家で有名な詠美ちゃん様に?」
りせ「なにこの人! ちょっとむかついちゃうかも」
詠美「ふんふん……ふぅ~ん。前よりはマシだけど、まだまだね! このスーパー漫画家の詠美ちゃん様には爪すらひっかかってないわ!」
千枝「な、なによ~! わざわざ文句つけるために来たわけ!」
詠美「なによ! このあたしのありがた~い批評にケチつけないでよね」
鳴上「里中。実際に詠美はすごい。一日に五千部は売る人気作家なんだ」
雪子「え!? ご、五千!?」
完二「そりゃもう段ボールで壁が出来るレベルだろ!」
詠美「そういうこっと~! このこみパのスーパーウルトラキングである詠美ちゃん様の『CAT OR FISH』の人気は、こんな新参サークルには及ばないんだから!」
陽介「何っ!? あの『CAT OR FISH』か! ネットでも評判で、一日にウン十万の売上をたたきだすあそこか!?」
詠美「そういうこと~! それじゃっ、新参は新参らしく、悪あがきをしてなさい! じゃ~ね~」
鳴上「……詠美!」
詠美「何? ついに降参宣言をするのかしら?」
鳴上「女の人の場合、スーパーウルトラキングじゃなくて、クイーンだぞ」
詠美「ふみゅ!? ちょ、ちょっとしたジョークよ! じゃねっ!」
千枝「何よあの女の子! 年下らしいけど、可愛げがないわね!」
鳴上「あれでも優しい方だ」
雪子「あ、あれで? なんというか、さっきのメガネの人に負けず、北風みたいな子だったな」
りせ「……でも、あの子、そんなに悪い子じゃない気がするな」
千枝「そう?」
りせ「なんとなくだけどね。多分、さっきの言葉は、あの子なりに激励をしたんじゃないかな。素直じゃないんだよ」
鳴上「……多分な」
クイクイッ
鳴上「ん? あっ、彩じゃないか」
彩「……おはよう、ございます」
陽介「うっひょ! 今度は黒髪の美人さんではありませんか!」
彩「!」ビクッ
千枝「こら! この子も怖がってるでしょうが!」
陽介「す、すまねぇ。ちょっとテンションも上がっててつい」
完二「この子も同人誌仲間ってとこっすか?」
彩「あ、その……はい」
鳴上「長谷部彩さんだ。一緒に原稿を書いたりしてる」
彩「えと…………はい」
直斗「多分、同年代かな?」
彩「はい……白鐘、直斗さん、ですよね?」
直斗「僕のことを知ってるの?」
彩「一回、テレビで見た……から」
直斗「なるほど、あの時のか」
彩「一回、あなたがモチーフの、探偵もの、描いたことがあります……かっこ、よかった、から」
直斗「ほ、本当に? ははは、これはうれしい限りです」
彩「そちらの方は…………もしかして、久慈川りせさん?」
りせ「へっ!? あ、あの……よくわかったわね。変装して髪型変えて、メガネもかけてるのに」
彩「……あなたの、ライブDVD。……あなたの踊り、よく動いて、キャラ動作の参考に……何回もDVDを見てた」
りせ「へぇ、そういう参考の仕方もあるのか~」
彩「……あっ! も、もちろんっ、その……あなたのファン、です。今でも。……踊りもいいし、歌もうまいから……」コクコクッ
りせ「ほんとに! ありがと~! りせ、すっごく嬉しいな!」
鳴上「そういえば、この前は一緒にライブのDVD見たりしたな」
りせ「そうなの? もう、そんなことだったら、呼んでくれたら目の前で実演してあげたのに~!」
彩「あ、あの……! 白鐘さん……りせ、さん。あと、みなさんも……これ」
完二「お? これって……」
彩「その…………私、の。同人誌……」
陽介「くれるのか?」
彩「はい…………鳴上さん、の、お友達でしたら、喜んで」
千枝「ほんとに? ありがと!」
彩「あ、その…………その……できれば、後で……感想を聞かせてもらえれば……その」
りせ「もちろん♪」
直斗「じっくり読ませてもらうよ」
彩「あっ…………では……」
タッタッタ
さるきそうこわい
④
完二「ちょっと物静かな感じでしたね」
陽介「そんなところがまた魅力だよな~!」
千枝「こんにゃろ~! どうして花村はすぐに女の子にスケベな視線送っちゃうかな!」
陽介「や、やめろ! 里中がアイアンクローなんてらしくねぇぞおい!」
千枝「顔面蹴られるよりはましで、しょ!」
陽介「割れる割れる割れる~!?」
雪子「……」ブツブツ
りせ「どうしたんですか? 天城先輩」
雪子「いや……気のせいか。妙に女の子ばっかり知り合いだったような……」
りせ「あ~……なんというか、先輩も相変わらずってところですかね」
鳴上「何か言ったか?」
りせ「いえ、何も♪」
完二「……ん? ありゃ? なぁ直斗」
直斗「どうしました?」
完二「そこにあった釣銭の箱、しらねぇか?」
りせ「いや、さっきまでそこにあったはずだけど……」
陽介「釣銭の箱? こっちにもそんなのねぇぞ?」
千枝「……え? もしかしてこれって……」
雪子「盗まれちゃった!?」
鳴上「……あり得るな。実は、秋ごろのこみパから、サークルの釣銭や売上を窃盗する事件が連続で発生している。しまった、目を離し過ぎたか!」
完二「それすっごくやばいじゃないっすか! 早く探さないと!」
りせ「ちょっと完二! 盗まれた場合は盗んだ人を探さないと!」
直斗「いえ、その前に本当に盗まれたのか確認を――」
「まつんですの~!」
「ま、待つバカがいるかよ!」
ダダダダダ!
鳴上「ん? あれは……すばる?」
すばる「あっ! 鳴上さん! そこの警備員の人、偽物ですの~! 泥棒さんですの~!」
陽介「マジか!」
雪子「あっ! あれ、あのカバンからはみ出してるの、ウチの釣銭の箱じゃない?」
千枝「犯人自ら出てくれるなんて、手っ取り早いわね! 鳴上君!」
鳴上「ああ! 捕まえる!」
ダッ!
泥棒「げっ!? お前は、確か爆弾魔の!?」
鳴上「お縄につけ」
すばる「悪は滅ぼすだけですの~!」
千枝「私と鳴上君が出てきちゃ、もうおしまいね!」
泥棒「く、くっそっ! こうなったら……そこの女! 覚悟!」
ダッ!
千枝「女だからって、あなどらないでよね! てりゃっ!」
泥棒「はっ!」
千枝「えっ!? あっさり流された!?」
すばる「ぱぎゅ!? あ、あれは……」
鳴上「どうした?」
すばる「間違いないですの! あれは大影流合気術の『流水』の型! 逃げに特化した型ですの!」
泥棒「その名を知っているということは、やはりお前も……だが、語る時間はねぇ!」
千枝「あ! こら待てぇ~!!」
鳴上「あの進路だったら、入り口前で必ず合流できる。すばるは逆方向から挟み撃ちだ!」
すばる「はいですの~!」
ダダダダ!
陽介「……な、なんというか。展開がいきなり過ぎて頭がパンクしそうだぜ」
雪子「千枝も、なんというか、燃えてたね」
直斗「不謹慎ですが、千枝先輩も体を動かしたかったのでしょう」
りせ「まぁ、先輩達な必ず泥棒捕まえてくれるよね!」
完二「それもそうっすね」
陽介「泥棒被害にあったにしてはゆったりし過ぎな気もするが、まぁ……大丈夫か」
雪子「こういう非常事態に慣れちゃったしね」
しえ
――
―
陽介「で、本当に捕まえちゃうからすごいんだなこれが」
千枝「ぶいぶい!」
すばる「私たち三人のお手柄ですの~☆」
鳴上「悪は栄えることなし」
すばる「闇もまた生きることなし!」
千枝「私たちが戦う限り!」
鳴上・すばる・千枝「はっはっは!」
陽介「随分と仲がいいなお前ら!」
――
―
すばる「サークル『新住所確定』の御影すばるですの~☆」
鳴上「俺とユニットを組んでいるんだ」
陽介「へぇ~。こりゃまた可愛い女の子だな」
すばる「そ、そう言われると、少し恥ずかしいですの」
千枝「この子すごいんだよー! 下手すると私より強いかも」
すばる「そんなことないですの! 里中さんも、独学とは思えないしなやかな蹴り技でしたの! 何より実戦慣れしてましたの!」
鳴上「まぁ、確かに慣れてはいるな。相手はともかく」
すばる「それにしても、今日はお友達さんがいっぱいで大賑わいですの~。この人たちが話に出てきた人達ですの?」
鳴上「ああ。みんなかげがえのない仲間だ」
すばる「仲間がいっぱいで楽しそうですの~」
鳴上「今日はすばるは隣の配置なんだ」
雪子「ということは、すばるちゃんも結構な売れっ子ってことかな?」
すばる「残念ながら違うんですの~」
陽介「てか、南さんの言っていた『壁際は特等席』ってどういうことなんだ?」
すばる「人気のサークルだと、長蛇の列ができて、どうしても周りの通行まで邪魔になってしまうことがありますの」
鳴上「だから、それを少しでも解消するために、人気のあるサークルは建物の壁際に寄せるんだ。そうすれば他のサークルとある程度距離を離せることができるし、行列をすぐに会場の外に出せる」
完二「なるほどッス。けど、違うって今度はなんなんスか?」
すばる「いくら壁際でも、超人気サークルが隣り合わせになってしまうと、壁際でも行列がかぶっちゃうことがありますの。
だからそのサークル同士の距離を離すために、あえて人気がすくないサークルを挟んで、列を離すことがありますの。これをクッション配置って呼ぶらしいですの。猪名川さんが教えて下さいましたの」
直斗「開催者の方も、色々と苦労しているのですね」
りせ「え、えっと……なんかごめんね?」
すばる「ご心配はいりませんの。すばるの同人誌も最近徐々に売れ始めたですの! いつか、この壁に堂々と胸を張って立つようにがんばりますですの!」
千枝「そっか」
すばる「そうですの! みなさん、ぜひすばるの同人誌を読んでほしいですの! みなさまへのあいさつですの~」
鳴上「最近、すばるの実力はめきめき上がってるんだ。ぜひみんなに読んでほしい」
すばる「これですの~!」
千枝「おっ! この表紙ってもしかして『超新星ディネイザーA3』!」
すばる「里中さんもファンですの?」
千枝「モチのろん! この特撮のスタントマンがカンフーアクション映画でも有名な人でね!」
すばる「そうだったんですの! このネイザーの蹴り技の数々がかっこよくて!」
千枝「そうそう! あのカットできれいにあの脚を見せるのはなかなかレベルが高くて――」
陽介「な、なんか妙に意気投合したらしいな」
鳴上「同じ趣向の人達が、仲間を求めて集まるこの光景。まさにこれぞ同人。よきかなよきかな」
――
―
『ただいまより、コミックパーティーを開催します』
鳴上「よし、じゃんじゃん売ってこう!」
すばる「ですの~☆」
陽介「って、おいおい! すっげぇ人だなこりゃ」
完二「うっひゃあ~、あっという間に人で埋め尽くされちまった」
千枝「こ、これは予想以上だね」
雪子「ふぁ、ファイト!」
直斗「さっそく列ができ始めてますね。こちらも動きましょう」
――
―
雪子「はい、こちら三百円となります。はい、丁度お預かりしますね。ありがとうございましたっ」ニコッ
陽介「おお。さすがは若女将。客の対応も手慣れてるなぁ」
りせ「はいっ! 700円のお返しです! ありがとうございました~!」
完二「こっちもこっちでなかなかっすね」
鳴上「直斗! 同人誌の追加頼む!」
直斗「はい!」
鳴上「仕事が早いな。さすがだ」
千枝「はい! こちらサークル『PERSONA』となっております! 列を崩さず――ってごらぁ! 横入りは禁止でしょうが!」
陽介「里中も里中であいつらしいな、うん」
鳴上「けど、ああいった仕事ってかなり大事なんだな、これが」
千枝「あっ! 今財布をすろうとしたでしょ! 正直に吐かないと脚が飛んでくるわよ!」
鳴上「……少し心配になってきた」
陽介「いいんじゃねぇの? あいつらしいし」
――
―
鳴上「完売だ!」
雪子「お、お疲れ様……」
陽介「す、すっげぇ人の数だったぜ」
完二「しかも、冬のくせに暑いのなんのって……人って、あんだけ集まると暖房以上になるんすね」
直斗「いくら捌いても人が途切れませんでしたし、なかなかスタミナを使いました」
りせ「さすがに私でも肩が凝っちゃうんだよ」
里中「な、なんでこんなにトラブルが多いのよ……スリだけで三回暴れたわよ」
鳴上「一番働いたのは里中だったな……」
「ふっふっふ……さすがクマね! これだけ短時間で千部を売り切るとは!」
陽介「……ん? ちょっとまて! その声ってまさか……「
「だがクマも負けてないクマよ! とぅっ!」
シュタッ!
ズルッ
ドンガラガッシャーン!!
雪子「こ、この声と、その締りの無さは!」
クマ「い、いててクマ……」
「く、クマっ!?」
鳴上「ついに来てしまったか……」
クマ「よいしょっと。皆の衆! ウルトラお久しぶりクマ!」
陽介「えっ!? お、お前、なんでこんなとこに!? いや、だってお前半年前に『テレビの世界で一仕事してくるクマ~。来年まで戻ってこれないだろうからよろしクマ~』って言ってたじゃねえか!」
雪子「確か、ちょっとテレビの世界の遠くまで行ってくるから、連絡も出来ないし会えないって……ええ!?」
クマ「うん。ちょっと一仕事してきたクマよ。テレビの世界の遠くって行っても、正確には世界の遠くって感じクマ」
完二「お、お前! 随分と心配させやがって! 今回の件も結局誘えずに――あれ? そういえば、なんでこんなところにクマ公がいるんだ?」
クマ「えへへ~……実はクマね、何を隠そう! このこみパにサークルとして参加してるんだクマー!」
「……はぁぁ!!?」
やっぱりさるった
ほししてくれるひとは…いねぇか
ふむ
ひい
してやっから書き溜めとけ
ぬるぽ
がっ
>>1はコミケ参加してんの?
お店で買う派
けと一度だけなら参加してみたい、一度だけ
地方住みか
今日来ればよい
>>107
死にに逝けと…
代わりにこみっくパーティーやってるよ
ほしゅだよ
ほさ
陽介「はぁ!? お前、サークルってことは……うっそーん!?
クマ「嘘じゃないクマよ? じゃじゃーん! なんと! 名刺もあるという親切設計クマ!」
千枝「えっとぉ……サークル『velvet room』、『球磨川久万』ぁ?」
りせ「な、なんというか……せっかくの再会シーンなのに、唖然して言葉が出ないというか」
直斗「君の行動には時々、いや、よく度肝を抜かされますね」
クマ「そ、そんなに褒めないでクマ」
陽介「ほめてねーよ! もう少し反省しろ! てか、もしかして悠、これを――」
鳴上「ああ、知っていた……」
クマ「さぷらーいずしてみたいから、センセイにはトップシークレットを頼んだクマ!」
陽介「俺の半年分の心配を今すぐ返してくれ……」
ほし感謝
――
―
完二「しっかし、先輩はともかく、クマ公まで漫画描いてるたぁ思いもしなかったぜ」
陽介「しかも軽く読んでみたけど、普通にうめぇし……」
直斗「先輩とは打って変わって、ポップな感じの絵柄ですね。内容もコメディですし、タッチと合わさって中々です」
クマ「実はですね~、原作と原画が違うわけですね~。話を考えてるのはクマで、絵を描いてるのはマーガレットさんっていうべっぴんさんだがや」
雪子「うん。なんというか、すごくクマ君っぽいお話だね」
千枝「そうそう。この主人公のハチャメチャさ加減がクマ君そっくり」
クマ「いやはや、やはり親と子供は似てしまうものですなぁ」
雪子「……なんか、そのしてやった顔ちょっとむかってきたかも」
クマ「ゆきちゃん辛辣ぅ!」
りせ「ふんふん……よし! お昼も食べたし、私たちはそろそろ移動の時間ね!」
千枝「へ? 移動って……あっ!?」
雪子「ふふふ、ついに私たちの戦衣装お披露目の時よ」
千枝「うぇぇん! せっかく忘れかけてたのにぃ~!」
陽介「まぁ、何事も初体験ってのはあるさ。……里中の雄姿は忘れずに写真として記憶に刻み込むから安心しろ!」
千枝「撮るな! ぜったい撮るなぁ~!」
鳴上「やっぱり里中の分も完備か……」
完二「そこらへんはぬかりないってことっす!」
クマ「よよよっ! その手に持っているものは、もしかしてのもし、コスチュームクマ? 四人のコスチュームですとぉ!? そ、それは永久保存ものクマ!」
千枝「やっぱりやだよぉ! なんでこんなに人がいるところでぇ~!」
直斗「……先輩、諦めてください」
千枝「直人君までぇ!」
完二「けど以外っすね」
鳴上「何がだ?」
完二「い、いや、直斗の奴の性格上、こういうことはむしろ里中先輩より嫌がるはずなんすけど……文化祭の時もそうでしたし」
陽介「そういやそうだな。そこらへん、直斗はどうなんだ?」
直斗「へ? ぼ、僕ですか!? ま、まぁその、僕もその、探究心がうずいたといいますか、ちょっとしたいたずら心といいますか……」
完二「……直斗の奴はどの衣装なんだろうなぁ?」
――
―
♪恋する名探偵
直斗(ラブリーン)「愛に疑問を感じたら! 魔法の力で速効解決!」カチッ
『素行調査は弊社にお任せ♪』
直斗「魔女探偵ラブリーン☆」カチッ
『きらっと登場☆』
クマ「ひゅ~☆ ラブリーン素敵~!!」
「ふふぉ!? あ、あれは紛れもないラブリーン! しかも完成度高須ではないですか!!」
「服の材質から出来、そして何よりプレイヤーの振りもばっちりでござるぅ!」
「写真所望! 視線をきぼんぬ!」
直斗「はいはい☆」カチッ
『ハチの巣にされたいか!』
「視線にハチの巣でござるっ!」
りせ(ToHeartメイドロボ服)「人間みかけによらないわよねぇ」
雪子(ToHeart制服)「す、すごい様になってる……負けてられないよ、千枝!」
千枝(Toheart2DT笹森花梨トレジャー服)「な、なんでこんなに肌色が多いのぉ? しかもスースーするし……」
雪子「冬だからじゃないかな?」
千枝「そんなのんきなこと言ってないでぇ!」
「むむっ! これはこれは」
千枝「ひぃっ!?」
「ほほぉ、これはまたレベルが高い三人がおりますのぉ」
「Toheart制服の出来はシンプルながらも忠実に出来あがっていて、製作者のレベルの高さがうかがいしれますな!」
「メイドロボ服も、あのイヤーカバーという小道具にも、職人の技術が感じられます!」
「あの服は、確かDTのトレジャー服ではありませぬか! 露出度が高いながらも精巧な技術が要求される難易度高氏なあの服をあそこまで……」
「この職人技は、必見ものですぞ!」
「なにより、あのメイドロボ服を着ている子の顔をみたまへ!」
「なっ! あ、あれは……りせちー! あの伝説のアイドル、りせちーそっくりではないか!」
「三次元アイドルであるりせちーがメイドロボの服を着ている、というシチュエーション!! これぞコスプレの革命! レボリューションですぞ!」
「し、失礼! 目線をくださらぬか!?」
りせ「はいはーい☆」
「ふ、ふぉぉっ!? このプロポーション! この姿勢! このちょっとしたポーズ! まさにりせちー!!」
「挙句には声まで精巧にまねていらっしゃる! あ、あなたが神か!?」
りせ「違うよ? 私は、今はご主人様に尽くすメイドロボりせちーなの♥」
「ぶほぉぉ!」
「あ、あのりせちーがこういったセリフを!! これはレジェンド! 伝説が生まれましたぞぉ!」
千枝「うっひゃあ、さすがプロって感じ……私には死んでも真似できないわよ。雪子は――あれ?」
「お、おぉぉ!? その制服でその黒髪! まさに草壁さんではありませんか!! もう不遇とは言わせぬぞぉ!」
雪子「何かご希望のポーズはありますか?」
「で、では! その美しき髪を存分に乱してくださらぬか!?」
雪子「ええ、では……」ファサァッ
「ベストショット!! 最強のベストショットでずぞぉぉ!」
千枝「う、うそ? 雪子までノリノリ!?」
「し、失礼」
千枝「ふぁぁっ!?」
「視線をプリーズでござる! で、できればポージングも!」
千枝「へぇぇ!? え、えぇっと……」
「巻きで! 巻きで! 時間がないのでござるぅ!」
千枝「ちょ、ちょいとまってまって!」
玲子「はいはい! そんなにせかさないの」
「む? おぉ! これは『一喝』の玲子嬢ではありませぬか!」
玲子「この子多分初心者なんだよ。だから、ゆっくりアングル説明してやってくれないかい?」
「そうでござったのか?」
千枝「え、ええと……はい、これが初めてで」
「それは失礼したでござる。では、もっとこう腕を――」
千枝「こ、こう?」
――
―
「ありがとうございました、でござる」
千枝「あ、ありがとうございました。……ふぅ」
玲子「お疲れ様。ポージングを決めるのって思ったより難しかったりするよね」
千枝「ええ。特にあそこまで細かい指定をされると……」
玲子「どう? やっぱり緊張してる?」
千枝「ええ。相変わらず」
玲子「けど、実はちょっと楽しくなってきたんじゃない?」
千枝「え……?」
玲子「あなた、ポージングを決めるときの顔、きりっとしてて気合い入ってたわよ。体を動かしたりするの好きなのね」
千枝「え、ええ。まぁ……そう、ですね。ちょっといい感じかも!」
玲子「それはよかった。それじゃあ、ここで。がんばってね、新人さん☆」
千枝「あっ! えと……ありがとうございました!」
またさるか
ほ
す
やばし、ほしを
ふ
ら
期待
はい
うー
こみぱのキャラが思い出せない
花梨のトレジャー服ってどんなんだっけ
下乳のやつか
こみぱのキャラみてきた
大体思い出したわ
御影「ですの!」
大志とか番長とかガリデブオタとか男キャラが濃すぎてメインの女キャラの印象が薄かった思い出
保守
本当に臆面も自重も知らないんだなこの類いのオタクて、死ねばいいのに
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