日向「モノクマ太極拳を極めたらスゴいことになった」(82)

 MorningTime マスカットタワー


モノクマ「太極拳の神髄とはすなわち森羅万象との相互理解にありけるのだ!
     世界の法則と心身の法則を合致させ、シンクロ率を高めさせることが大事なんだよー!」

日向「はぁ、はっ……ぅくっ……ハァハァ!」

終里「も もう、動けねぇ……」

メカ弐大「わ、ワシもじゃあ……」

日向「まだまだぁ!」

七海「……ねぇ、日向くんは何で平気なの?」

日向「いや、だってアバターのオレが腹を空かせたと思い込んだら
   オレの本体が腹を空かすじゃないか」

七海「えっ」

日向「それにしても太極拳ってスゴいな 慣らす度に“世界”を理解できるんだよ
   まぁこの“プログラム世界”だからかもしれないけど」

モノクマ「えっ」

ヒヨコンの人か

ソニア「ひ、日向さんが何を言ってるのか分かりませんわ!」

日向「え? こういう事だけど」

終里「うぉおおおお! 日向の手からハンバーガーが溢れてるぞぉおおお!」

モノミ「そ、そんな……なんで日向クンが教師役の権限を持っているんでちゅかー!」

日向「太極拳の力だ とどのつまり教師役の拳限だ!」

左右田「体罰教師が正当化されそうな権限だなオい!」

田中「次は覇王の糧を頼む」

日向「カボチャの種だったか? いいぞ、ほら」

田中「質も鮮度もいい……量も申し分ない 感謝するぞ!」

日向「これが太極拳の力だ!」

さすがカムクラ

日向マコトかと思った

たいきょくけんって すげー!

もう髪の色変わってるだろ

モノクマ「ちょ、ちょっと待てよ! そんな横暴をこのボク
     モノクマが許すと思うクマかー!」

日向「モノクマ? お前は江ノ島盾子だろ」

モノクマ「」

日向「超高校級の絶望と呼ばれる全人類の宿敵であり
   スパコンも霞む演算能力と先見の才で予測を立てる、生粋の天才にして歩く天災
   オレのような希望ヶ峰学園側の定義に拘られた希望を絶望に染め上げたが
   諦めない意志と絶え間ない希望として願われた超高校級の希望に敗北
   スリーサイズは上から――」

モノクマ「待て待て待てェー! ボクのネタバレもだけど何でスリーサイズまで知ってるんだよ!」

日向「何度も言わせるな これが太極拳の――」

モノクマ「スリーサイズを看破する拳法があってたまるかー!」

日向「世界を理解して意味を成すのが太極拳って言ったのはお前だろう!?」

モノクマ「世界の引き合いにスリーサイズを出すって、女の体をどんだけ過大評価してんのさこのドスケベ!」

日向「意外と可愛い反応するじゃないか超高校級の絶望
   予定外のことには弱いのか? それとも、今のこの状況も予定通りなのか?」

モノクマ「ぐっ、ぐぬぬぬ」

九頭龍「何がなにやら分かんねーけどよ……とりあえずこの場所から出られんだろ? ならさっさと出ようぜ」

日向「は? 何で?」

九頭龍「な、何でって……」

日向「そんな事よりもっと面白いことしようぜ! せっかく六階建て建物にいるんだ
   九頭龍とハウスの背比べをしよう」

日向「あ でもここはエレベーターだから違ったな
   じゃあ移動しようか」

日向ハジケすぎだろ

 MorningTime マスカットハウス1階


ソニア「え? 今、何が起こったのですか!?」

左右田「俺の記憶が確かなら、つい一秒前は俺たち全員
    タワーの中にいたはずですよねっ、そうですよねっ?」

日向「いまさら太極拳を使った瞬間移動ていどで驚くなよ――さてと九頭龍」

日向「お前、背が高くなりたいんだってな?」

九頭龍「そ、そのことを言うんじゃねえ! いくらお前でもド玉カチ割るぞオラァ!」

日向「高くしてやるよ」

日向「ただし、靴だけな」

九頭龍「ぁあ!? あ、あぁああっうぉおおおおお!?」

終里「すっげーな 靴底だけどんどん伸びてんぞ!
   何メートルもある竹馬みてーだ やるじゃねーかチビッコギャング
   オレに負けず劣らずのバランス感覚だぜ!」

日向「はははははは! じゃあな九頭龍、ストロベリーハウスの三階まで
   つまり六階まで背を伸ばしてくれ」

日向「あ、途中で降りるのはモチロンその姿勢を正すのも無駄だから 俺がそう設定した
   たどり着く過程で何度も天井に頭をぶつけるだろうけど、天井の硬度は死なない程度に下げておいたから
   安心して成長してくれ、九頭龍」

九頭龍「ぐぉっ、あいたっ、あぐっ、ぐがっ――ペ、ペコォオオオオオオァオ!」


 ――ゴンっ

日向「はははは! あー面白ぇー……」

田中「どういうことだ、九頭龍の空けた穴から覗ける奥行きは
   あきらかに三階の距離ではない」

狛枝「スゴいよ日向くん! 事件が起きていないにも関わらず
   ドッキリハウスの構造を解き明かしちゃうなんてさ!」

日向「まあな 極上の凶器が極道の凶器に化したのは残念だけど
   なぁモノクマ」

モノクマ「う、うるさい! ボクはもう帰る!」

日向「はははっ! ははははは!」

七海「日向くん……ダメだよ、やめて」

日向「あ?」

凶器のくだりでブルーラム噴いた

日向「何か言ったかよ」

七海「私はどうなってもいい だから、みんなに手は出さないで」

日向「私はどうなってもいい? はっ、自惚れんなよ
   お前みたいなただのデータ一匹が、アバターではあれど生身をもつ俺たち超高校級に匹敵する価値なんかあるのか?
   そんなボンクラ以下の魅力しかねえお前がどうなろうと全然つまんねぇわ」

日向「しかも今の言葉だって、プログラムされた出来合いのセリフなんだろ どうせ」

七海「……」

日向「さて邪魔者は黙ったし、次は弐大 お前だ」

メカ弐大「な、何をする気じゃああああ!」

日向「お前はクソを出す側の立場だったけど その体じゃあ超高校級のスカトリストである
   お前のアイデンティティがなくなるだろ だからオレはこう考えたんだ」

日向「クソを出す機械じゃないなら、クソを吸い込む機械になればいいんじゃね? ってな」

いったい何が始まるんです?

ベンキ弐大「ぬぉおぁおなんじゃこりゃああああああ!」

終里「に、弐大のオッサンが洋式便器になっちまった!
   日向てめぇえええ! せめて汲み取り式にしてやれぇえ!
   戦える体にしてやれよぉおおお!」

左右田「いやいや便器になった時点で戦うもクソもないからな!?」

日向「邪魔」

終里「ぎゃふん! ぐっ、セリフ一個で済まされち、まった……ガクッ」

ソニア「終里さん! 終里さん起きてください!」

便器になってもクソはあるような

ソニア「日向さん……アナタは非道です!
    いずれ仕事人がアナタの首に糸を通しにくるかもしれませぬよ!」

日向「ソニア」

ソニア「な、何ですか!」

日向「お前は以前 処女がどうのと口にしてたが、お前の国でいう処女と
   俺の国でいう処女が、果たして同義なのかな」」

ソニア「!?」

日向「今ここでバラしてもいいんだぞ? お前のノヴなんとか国における処女の解釈と
   それを放棄する条件を」

ソニア「お、おやめ下さい! そ、そんなことをされてしまったら
    国の存続が危うくなります!」

左右田「マジか! じゃあソニアさんはまだ未姦女かもしれないんだなヤッホォオオいッ!」

日向「今夜のオカズが出来た所で悪いけど、お前ソニニー(ソニアをオカズにしたオナニー)しすぎ
   あんな防音設備のない所でよく8発もできるな 尊敬するわ」

左右田「」

ソニア「気持ち悪いです! 天国に一番近い男になって下さい!」

左右田「死ねってことですか!?」

田中「貴様、その位にしておけ 俺の破壊神暗黒四天王の撒き餌になりたくなければな」

日向「なんだよ田中 そんな0と1で構成された紛い物の動物を飼って、飼育委員気取りか?
   デジモンテイマーのがまだ似合ってるわ」

田中「なんだと!? どういう意味だっ!」

日向「こういう意味だ」

 ニワトリ「コッケコー」 ドラゴン「がおー」 ライオン「がるるる」 蟻タン「」 ネオエクスデス「スーダン資料集の表紙オレに似てるよね」
 ウサギ「ぴょこぴょこ」 UMA「チュパカブラッ」 シーマン「なに見てんだよ」 金魚「ピチピチ」

田中「」

日向「結局は思い込みの世界なんだよここは 過去のお前がハムスターを飼っていると記憶してるから具現してるだけ
   お前のハムスターは現実にはもう存在しないのかもな
   まぁどうでもいいけど、拾ってきたからにはしっかり世話してくれよ田中」

ニワトリ・ドラゴン・ライオン・蟻タン・ネオエクスデス・ウサギ・UMA・クソミ・シーマン・金魚「まあ頼むわ」

田中「く、来るなぁああああああ!」

日向「はははっ! ははっ、は……なんか、もう飽きたな」

狛枝「まだボクがいるよ!」

日向「いや、お前はいいや……」

狛枝「(´・ω・`)」

七海「……日向くん」

日向「まだいたのかよ」

七海「ずっといる……しかないから」

日向「ははっ、そうだったな」

七海「私は確かに、プログラムされたことしか出来ないかもしれない
   でも、だからこそ私はプログラムに沿った決まり事は必ず遵守する
   感情的にならず機械的に、日向くんのそばにずっといれるんだよ」

日向「……バーロー そのセリフがもう」


             ――感情そのものじゃねえか

おしまい

なんぞこれ

ネオエクスデスワロタ

最後の最後でら抜き言葉とはやってしまいましたなあ

前半SSおしまい! 後半戦いくよ!
 松田「メイクアップの技術が超高校級になった」 音無「後編だよ!」

【あらすじ】

 大好きな松田くんが私とイチャイチャしたがってたからイチャイチャしながら治療してね!
 愛する松田くんが自分から「ハグしてハグして」って言うから沢山ハグしたの!
 ハグに満足した松田くんがオレはお前にアイラヴユーだから帰れっていうから帰ってね!
 そんでかっこいい松田くんの似顔絵を書いてたら、窓からキリギリッて顔した人が部屋に上がり込んできたのでした! はわわ! はわわわ!
 めちゃくちゃピンチだよね! うーん大体こんな感じ!



松田「起訴も辞さない」

霧切「久しぶりね」

音無「だ、誰!?」

霧切「……どうせ聞いても忘れるんでしょう? それとも忘れないように書きこんでくれる?
   そのノートに」

音無(私の知り合いなの……? でも記憶ノートのどこにもそんな記述はない
   少なくとも、松田くんに繋がる情報をこの人はもってないんだ――なら)

音無(よかったぁ、私には関係ないんだ)

霧切「書き込まない所を見ると、アナタは私の事を覚えるつもりが無い
   私がこんな方法で部屋に上がり込んだ理由も、私がここに来た理由も
   一切の興味を示すつもりもない、そう解釈するわ」

音無「そ、そうです 私には関係ない
   松田くん以外のことなんて――」

霧切「そうはいかないわ ……これ、アナタのノートよね」

音無(ベッドの下に置いてた、沢山の記憶ノートのうちの一冊だ……!)

音無「返してっ! 私の、松田くんとの記憶っ!」

霧切「駄目よ えいっ」

音無「ふにゃあ!?」

霧切「見た目は同じでも、動きまで私と同じになれるわけじゃないのね そして声も
   良い推理材料になったわ」

見つけたと思ったら終わってたと思ったら続いてた

霧切「そしてアナタはこう言ったわね『松田くん以外のことは――』と
   なら、アナタのノートを持つ私 松田くんの記憶に関連付いてしまった私を
   アナタはもう『関係ない』で済ます事は出来ないはずよ」

霧切「それを握られてしまっては尚更、ね」

音無「ヒ、ヒドいよ!」

霧切「理解できたなら記憶して――いえ、そのついでに
   アナタには自分の“今の姿”を認知してもらうわ」

キリギリッ

音無(え? 私の、今のす、がた……)

音無(……)

音無(この人と……一緒だ)

音無「わ、私って【双子のお姉ちゃん】だったんだ!」

霧切「それは違うわ 私を勝手に妹にしないで」

音無「じゃあ私が妹? もう! 窓から入ってくる不出来なお姉ちゃんをもった覚えはないよ?」

霧切「だから違う ちょっと、それはノートに書かないで」

そういや双子の妹だったな

音無「違うんだ……」

霧切「私はね アナタが私の姿をしてる理由と、その原因を調査しているの」

音無「うーん でもさ、私の姿を霧切さんがマネしてる可能性もあるんじゃないの」

霧切「生徒手帳に所持者本人の顔写真を映すことが出来るわ
   私のはコレ」

音無「本当だ! 似ても似つかないね!」

霧切「話を進めるわ」

霧切「アナタの才能――アナタ自身は覚えていないでしょうけど
   人体に直接的な改竄を行える類のモノではないわ」

霧切「つまり、アナタの姿を変えた超高校級の才能の持ち主は
   アナタ以外の人物である可能性が高い」

音無「えぇえええ!? じゃあ私の体は、知らぬ間にどこぞのマニアックにいじくり回されてたの!?」

霧切「多分ね」

音無「でも、ノートにそんな記憶は書かれてないよ!
   松田くんは私の体と顔が大好き(多分)なんだから、松田くんの大好きな(きっと)私の体と顔の危機とあらば
   私だって黙っていませんからね!」

霧切「私の顔で滅多なことを言わないで それに、アナタの行動を縛りノートへの記入を封じた上で
   “犯人”はアナタの姿を改竄した可能性だってある」

音無(可能性可能性って面倒くさいです
   松田くん以外の未知なんか私には関係ないのに、松田くんという既知さえあれば私はそれでいいのに
   でも口には出しません! ノートを返してもらうまでは!」

霧切「出てるわよ」

霧切「今のところ、ここで手に入る情報はあらかた出尽くしたかしら――次は」

霧切(松田夜助の所ね……ん?)

 ――チギレタツバサヌギステテェエエオモウママニィイイ

音無「粋なJ-POPだね!」

霧切「そのヤケクソに返答するクセやめなさい こんな時間に着信なんて――えっ」

霧切(な、苗木くん!?)

霧切「も、もしもし……」


……
………

夜 希望ヶ峰学園 南地区  
  寄宿舎 苗木誠の部屋


苗木「き、霧切さん? よかった、なかなか繋がらないからさ」

苗木「え? ボクから連絡をいれるなんて生意気? ゴ、ゴメン……次回は霧切さんからの連絡を待つよ
   ――え? 次もボクから連絡をいれてもいいの? う、うん、分かった」

苗木「その……用件なんだけど、明日ってヒマかな?」

苗木「えっと、よければさ 一緒にショッピングセンターに、なんて
   だ、駄目かな? え? うん……2人で、だけど」

苗木「うん、うん じゃあ明日の朝、寄宿舎の前に行くから」

苗木「うん、また明日 おやすみ……霧切さん」

※苗木くんはデートのつもりなんて欠片もありません

というパターンの予感

苗木「……」

苗木「……りょ、了承されてしまった」

苗木「駄目で元々なんて、ボクにしては後ろ向きな考えだった気もするけど……やっぱり嬉しいな」

苗木「嬉しすぎて、イヤでも前向きになるよ」

苗木「へへっ」

苗木「誘ったのはボクの方だし、明日は霧切さんに楽しんでもらおう よーし――」



……
………

夜 希望ヶ峰学園 南地区
   寄宿舎 音無の部屋


霧切「……」

霧切「……」

霧切「……」

音無「あのー……」

霧切「……」

音無「ぼ、茫然自失してる す、隙アリ! ノート返せ!」

霧切「えいっ」

音無「ふにゃあ゛! またこのパターンですかい……」

わざわざ隙ありと宣言するとか
避けてくれって言ってるようなもんだろ音無ちゃん可愛い

霧切「ど、どうしましょう 苗木くんのお誘いだからホイホイ頷いてしまったけれど
   こ、こ、これってデート、よね? いいえ! 待ちなさい霧切響子
   デートの定義を“好き合った2人による遊び”と限定すれば、これは決してデートなんかじゃないわ そうデートじゃないの
   でも……な、苗木くんはどう思っているのかしら」

霧切「苗木くんのようなあからさまに経験不足の草食系は
   デートというものは“男女が遊ぶ”だけで成立するモノ そう定義しているかもしれない
   はたまた“手を繋いだ瞬間以降から”と早合点している可能性だってある
   ま、まさかの“肉体関係”みたいな誤認をしている可能性も――」

音無「あのー」

霧切「にゃn……何よ」

音無「デート“なのか”どうかは、さして重要じゃないような気がするんですけど」

霧切「言葉足らずね……何が言いたいの?」

音無「要は霧切ちゃんが、その方との時間を
   デートに“したい”かどうかが大事だと思うんですよ」

霧切「き、霧切ちゃん――?」

音無「だってカレカノ位の関係じゃない限り、相手が自分の事を好きかどうかを確かめるのは激ムズじゃないですか!」

音無「でも、自分が相手の事を好きかどうかなら簡単です!」

音無「その人を思い出すだけでドキンドキンになって、キュンキュンして彼の枕をフガフガしたくなればソレはもう恋なんです!」

音無「そうですとも! その人と霧切ちゃんが“好き合ってる”という前提を確かめられないなら
   霧切ちゃんがその人を“好きでいる”という前提から固めればいいんです!
   “霧切ちゃんのデート定義”でいえば、半分はデート成立ですよ! どうですか! だからノート返して!」

霧切「どさくさに紛れて本音漏れてるわよ」

霧切「……フフ、自分の姿をした人にオマエの気持ちを確かめろ
   なんて言われると、まるで自分自身に渇を入れられた気分になるわね」

霧切「私はいつもこう 察しづらい人の気持ちを後回しにしてばかり……
   そこに自分の気持ちすら巻き添えにしちゃ、世話ないのにね」

霧切「……明日の“半分デート” とても楽しみだわ」

音無「そうですね! じゃあノート返してよ!」

霧切「それは駄目」

音無「何で!? いまの完全に渡す流れじゃん!」

霧切「明日のデートの前半、アナタには協力してもらうわ
   偵察任務よ」

音無「偵察って何の!?」

霧切「デート相手――苗木くんの 私の代役としては、おあつらえ向きの見た目なんだし」

音無「代役って……デート相手のことなんて私は興味ないし! さっき話した半分デートですらないじゃん!」

霧切「モチロン、後半は私とアナタが入れ替わるわ
   時間的にも“半分”ってことでいいじゃない」

音無「な、何のために……?」

霧切「苗木くんと2人きりで話すのは初めてなの だから、まずはアナタ達2人の会話を盗聴して
   より好意的な印象を苗木くんに与えるための対応を学ぶためによ」

音無「で、でも私はここにずっといなきゃって松田くんと約束して――」

霧切「私が代わりにココにいれば文句はないはずよ 同じ姿をしているんだしね」

音無「でも、私とアナタの声は全然違うってさっき言ってたじゃん! そのナエギくんにもすぐバレるって!」

霧切「風邪でごまかしときなさい」


 ――松田くん……明日、涼子はちょっと悪い子になっちゃうみたいです

 ――次の日

 朝 希望ヶ峰学園 南地区
  寄宿舎前


音無「奇宿舎前に着きました どーぞー」

――『感度良好よ、どう? 超小型ワイヤレスイヤホンの使い心地は』

音無「耳の中に吸い込まれそうで怖かです どーぞー」

――『常に状況をノートに記入するのを忘れずにね』

音無「あたぼうよ! 今朝もビックリしたからね! 
   起きたら霧切ちゃんが隣でスヤスヤしてた時は何事かと思ったからね!」

音無「片思いをこじらせて女の子に逃げた私が、深夜のスラム街で見つけた美少女を捕まえて
   部屋に連れ込んだのかと誤認したくらいだよ!」

――『世界観ごと忘れてどうするのよ』

苗木「霧切さーん!」

――『来たみたいね いい? 苗木くんには、なるべく私の言動をマネて応対すること
    出過ぎた言動がみられた場合は指示を出すから、すぐさま正しなさい』

――『それと極力、私に返事はしなくていいわ 事情を知らない苗木くんからすれば、アナタが独り言を言ってるようにしか見えないから
    はい、以上を念頭に置いて苗木くんに返事』

音無「マコトくぅーんっ! おっはよー!」

――『』

苗木「き、霧切さん!? い、今……ボクのことを下の名前で……」

音無「えぇ、駄目かしらかな?」

――『なぁにが「駄目かしらかな」よ! ふざけるのも大概に――』

苗木「そんな事ないよ! その、嬉しいよ……」

――『良くやったわ その調子で頑張りなさい』

音無「よかった フフ」

音無(ノートを取り返しついでに、松田くん相手に撃ちたかった言弾を
   このマコトくんとやらに試し撃ちしてみよっと 参考になるかは微妙そうだけど)

音無(気が向いたらこの初々しい男女どもを、くっつける手伝いでもしてやりますか
   キャー! なんか余裕のあるレディぽいよ今の私!)

音無(松田くん! 待っててくださいね! あなたの涼子はいま以上の魅力を引っさげて
   いずれあなたの前に立ち塞がりますから!)


 朝 希望ヶ峰学園 東地区
 神経科学研究所


松田「コミックポンポンおもしれー……ん、新連載か」

松田「タイトルは『立ち塞ガール』……? どんなコンセプトだよ」

松田「内容はともかく、男に立ち塞がるインモラルな女が実際にいたらパスだな」

 昼 希望ヶ峰学園 南地区
  寄宿舎前


苗木「じゃあ行こっか 霧切さん」

音無「うん!」

苗木「そういえば、今日はやけに声が通ってるね霧切さん 抑揚も高い気がするよ
   まるで別人みたいだ」

音無「んえ!?」

――『別人みたいも何も別人だものね……上手く切り返しなさいよ?』

音無「別人に見えるのも無理ないわ 特別な人には特別な接し方をしたがるのが、女の子ってものなんだから」

苗木「と、とと、特別な人!?」

音無「うん! だから、ちょっぴりの多面性を見せる怪しげな女の子にも、寛容に接してあげて欲しいな」

――『誰が怪しげよ誰が』

音無(ここで彼より2、3歩先に出て、クルッと振り返る
   両手を自分の胸元に添えて肩幅を意識して狭めながら、足をわずかに内股に構えるのも忘れずに
   彼の目をチラリと見ては目を離して、意を決したようにジッと見つめる この際、眉を八の字に頬を赤らめる練習をしてればなおグッドです!
   そのまま締めの一言!)

音無「響子からのお・ね・が・い――ね?」

苗木「き、き、きりぎぎりぎきりさん!?」

音無(うっし完璧! 苗木くんが顔真っ赤で目を回してるよ!)

――『ちょっと今なにしたの!? 寛容云々とおねがい云々の合間に何をしたのか答えなさい!』

あー
これは苗木クン寝取られますわ(迫真)

音無「マコトくん、私の魅力的なポージングとパフォーマンスに
   フラフラしてるキミに肩を貸すから、早く行こ」

苗木「う、うん ありがとう、でも何で説明口調?」

音無(説明しなきゃいけない相手がいるんです)

――『わ、私だって苗木くんに肩を貸したことないのにぃ……ううう!
   あとでパフォーマンスとやらを教えなさい』

音無「はいはい、行こ行こレッツゴー!」

 昼 希望ヶ峰学園 南地区
  ショッピングセンター 服屋


音無「わー! いろんな服が有るわねー」

音無(松田くんは上背があって細身だから、体のラインが出るのが似合いそう!)

苗木「アクセサリーも充実してるね あ――」

音無「おやおやー、マコトくんは女性の下着にご執心なのかしらん?」

――『(ガタッ)』

苗木「違うよ誤解だよ! その、たまたま目についた先がパンツだっただけで――」

音無「まぁまぁ、使用済み(?)のパンツを集めるのは超高校級男子の嗜みらしいから、照れる事ないわよー」

苗木「超に限らずそんな男子高校生、全世界を探しきってもいないよ!
   ……もう、今日の霧切さんは何だかイジワルだ」

――『ちょっと! 私の印象を悪くしないでよ! 早くフォローして!
   ついでに好きな下着も聞いときなさい』

音無(そのついでのせいで悪印象が倍化されても知らないよ 言うけどさ)

音無「ゴメンナサイ……勝手に誠くんの心情を邪推しちゃったりなんかしたりして……不愉快、だったよね」

苗木「う、ううん! 謝らないでよ!」

苗木「イジワルとは思ったけどさ 楽しそうにからかってくる霧切さんが見れて、嬉しかったのも確かなんだ」

苗木「だから、むしろ……ありがとう? なのかな、ボクとしては」

音無「……」

音無(えー……めっちゃ純粋で良い子なんですけどぉマコトくぅん……)

音無(マジで聞くの!? この流れで好きな下着を聞くの!?
   激流に犬掻きで挑むが如き愚行だよ!? えーい! もーどーにでもなれっ)

音無「私からもありがとう こんなに優しくて
   でも男らしいマコトくんが見れて、私も嬉しいダカラスキナ・パン・ツオ・シエテ」

苗木「え?」

音無「イヤ、ダカラ……スキャナーパンツァーオシエッティーナ」

苗木「ご、ごめん霧切さん 上手く聞き取れないから
   もうちょっと日本語っぽく言ってもらいたいんだけど」

音無「好きなパンツ教えて」

苗木「」

音無「好きなパンツ教えて」

苗木「分かったから連呼しないで!」

音無「あっゴメンなさいマコトくん 好きなパンツだなんて漠然とした聞き方じゃ答えにくいよね!」

音無「【パンツを名指しした方が気が楽かしら】かな!
   あれがガーターベルトっていってね あれはTバックで、あれが――」

苗木「さらに気が重いよ! 女性下着の名前を復唱するさいの気の重さに勝る重さなんて、思いつかない位に重いよ!」

音無「うぅ、グスン……うぇえん」

苗木「き、霧切さん!? 泣いてるの!?」

音無「グスッ、だってぇえ、マコトくんがぁ、好きなパンツを教えてくれないんだもん……
   私はマコトくんのパンツを知りたいだけなのにぃいわぁああああん
   マコパン教えてよぉおお」

苗木「ひとまず落ち着いて霧切さん! もはやセリフがタダの痴女だから!
   ボクの好みで良かったら教えるから、ね?」

音無「お願いします!」

苗木「」

 昼 希望ヶ峰学園 南地区
  ショッピングセンター ファミレス


苗木「うぅ……もうお婿に行けない……」

音無「たかだか下着の好みが知られただけで大げさだよ!
   あ、きたわねオムライス! いただきまーす!」

苗木「……」

音無「ん? どしたの? あっ、分かった! オムライスを食べたいんでしょ?
   それとも、私の口をつけた物だからこそ食べたいとか?」

――『そうなの苗木くん!?』

苗木「ち、違うよ!」

――『(´・ω・`)』

苗木「……今の霧切さんと、教室で見てきた霧切さんとのギャップに驚きっぱなしでさ
   ちょっと物思いに更けてた、のかな」

これはひどい

キリギリサン!

音無「へー、教室での私ってどんなだったの?」

苗木「えっ」

音無「さ、最近忘れっぽくてさテヘペロ このノートもその予防線みたいなモノなのよ」

苗木「そ、そうなんだ ……教室での霧切さんは
   ――不思議な人かな」

音無「どこらへんが?」

苗木「うーんと、物静かなんだけどさ、クラスが湧くと
   みんなから顔を逸らしながら机に突っ伏して笑ってる所とこかさ」

音無「へぇ、私って変な子なん(キィーン)ギャー!」

苗木「だ、大丈夫? 耳を押さえてるけど――」

音無「だ、大丈夫大丈夫 えへへ」

――『フン』

ぼっち切さん

さるった?

支援

一旦鯖落ちてた

マジか

てす

なんか鯖不安定だな

苗木「だからいつも、無理して表情を固めてるのかな
   って心配だったんだ」

――『その抑圧した感情はすべて、私の自室で暮らす苗木くん抱き枕に
   まるごと還元されてるから安心して苗木くん!』

苗木「だから、今日は来てよかった 霧切さんもこうやって笑えるんだって安心できたよ」

苗木「みんなの前で笑うのが恥ずかしいならさ
   ボクはいつでも相手になりたいから、霧切さんが笑いたい時はいつでも呼んで欲しいんだ」

――『あれ、携帯どこに置いたかしら』

音無「ありがとうマコトくん! だからちょっとトイレに行ってくるね!」

昼 希望ヶ峰学園 南地区
  ショッピングセンター ファミレス 女子トイレ


音無「なにしてんの!? マコトくんの目の前に食事して両手を塞いでるアナタがいるのに
   アナタの携帯からマコトくんに着信きて、その声の主がアナタだったら一発でバレるよ!?」

――『ゴメンなさい……その、つい嬉しくて……』

音無「まぁ私も、好きな人に『いつでも呼んで』なんて言われたら
   舞い上がっちゃうと思うし、仕方ないけどさ」

――『そうでしょ!? 仕方ないでしょ!? えっと、アドレス帳の開き方は――』

音無「おい」

――『面目ない……』

この霧切さんは駄目切さん

駄目切さんぽんこつ可愛い

 昼 希望ヶ峰学園 南地区
  ショッピングセンター ファミレス


音無「ただいまー」

苗木「うん、おかえり」

音無「さっきはありがとね! 私(ホンモノ)も喜んでたよ! いつでも電話するってさ!」

苗木「う、うん? ――ボクも食べ終わったから、次に行こうか」

音無「うん!」

――『エスコートする苗木くんの声をおかずに食べるオニギリが美味しいわ……アレ? なんで涙が』

音無(ツラいならもう交代すればいいのに)

オニギリさん

オニギリさんペロペロ

 昼 希望ヶ峰学園 南地区
  ショッピングセンター ゲームセンター


音無「ここがゲームセンターなんだ! 私はじめて来る!」

苗木「初めてってスゴいね ということは、ゲームの経験もあまりないの?」

音無「どうだろ 手続き記憶に残ってれば何とかなるのかな
   あっ! なんかアレ面白そう!」

苗木「『カップル適性テスト ななみんマシーン』……?
    ドーム状の一室みたいだけど、き……霧切さんとボクがカップルだなんて
   うぅ……照れちゃうな……」

音無「いいからいきましょう! テストなんだし、学生気分でゴー!」

苗木「う、うん!」

  昼 希望ヶ峰学園 南地区
  ゲームセンター ななみんマシーン内部


ななみん「どうもー、私の名前はななみん……と思うよ?」

音無「わぁ、空中に人の映像が浮かんでるよ!」

ななみん「むー、人じゃなくてななみんだよ」

苗木「か、会話まで出来るんだ  不二咲さんの言ってた人工知能みたいだ」

音無「それでココはどんなゲームなの? 相性をどうやって調べるの?」

ななみん「今ココで出来るのは登録だけなんだ その登録はもう済んだから
     二人はココを出て 普通にゲームセンターを楽しめば良いだけ」

ななみん「このゲームセンター中に張り巡らせてあるセンサーとカメラで
     君たちの脈拍から呼吸や脳波と機微に至る、あらゆるデータを収集して
     君たちの相性を私が割り出してるからさ」

苗木「帰りがけにもう一度寄ればイイって事なのかな」

ななみん「うん ……ふぁあ、じゃあオヤスミなさい」

音無「寝ながら計算できるんだ!」

七海ってちーちゃん制作なんだっけ

支援

 昼 希望ヶ峰学園 南地区
  ゲームセンター


音無「ホッケーをするわよ!」

苗木「き、霧切さん! マレット無しで円盤を滑らせるのは反則だよ!」

音無「レースゲームもしたい!」

苗木「ノート片手に運転するのは交通法違反だよ霧切さん! 安全運転しようよ!」

音無「コンビニキャッチャーをするよ!」

苗木「アンテナのストラップが欲しいの? 霧切さん
   ってやめて! アンテナが取れなかった腹いせにボクのアンテナ握らないで!」

>ボクのアンテナ握らないで!

意味深

――『……ねぇ』

音無「んえ?」

――『そろそろ、交代しましょう いったん寄宿舎に帰ってきなさい』』

音無「うん! 分かった! あ、マコトくん
   ちょっと忘れ物しちゃったから道を戻るね!
   絶対ここを動かないでね! 絶対だよ!」

苗木「え、霧切さん? 霧切さーん!」

苗木「……マコトくん、かぁ……」

苗木「キョ、キョウコさん……? うぅ、独り言でも恥ずかしい……」

 夕方 希望ヶ峰学園 南地区
  寄宿舎 音無の部屋


音無「はぁふぅ……よっと、ただいまー!」

霧切「あんなテンションを維持してなお、そんな元気が有り余ってるのね
   ……私には難しいわ」

音無「松田くんのためだからね!」

霧切「そう……」

霧切「……実のところ、怖くなったのよ私は
   あのまま苗木くんとアナタの親密度が高まって、私と苗木くんの接点が希薄になっていくのが
   だから今、アナタを呼び戻したの」

霧切「苗木くんがアナタにした独白も、私じゃなくて実はアナタに向けられたモノだったのかもしれない
   屈託のないアナタの態度が、苗木くんの言葉を引き出したかもしれない」

霧切「……そう考えれば考えるほど、いたたまれなくなったわ」

音無「霧切ちゃん……」

霧切「これから私が苗木くんの所に向かった所で、アナタに及ばない言動しか
   私はとれない“かも”しれない だから、スゴく怖い
   でもね――」

霧切「私が、アナタ以上に苗木くんを楽しませる事だって出来る“かも”しれない」

霧切「それに、苗木くんが言ってくれたから いつでも呼んでくれって」

霧切「探偵が可能性の精査をせずに答えを出すのは愚の骨頂だけど
   私は自分の可能性と苗木くんの言葉を信じてみたい きっと、私にとっては最初で最後になる
   掛け値も打算もいらない気持ちの分配なんだから」

音無「ゴメン 長くて最初のほう忘れちゃったからもう一回言って?」

霧切「えいっ」

音無「にゃああ!? また背負い投げられた……」

霧切「覚えてるじゃない」

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