音無「結婚しようぜ、遊佐」 (47)
世にも珍しきangelbeats!のSSです。
カップリングは音無×遊佐
長編だと思われます。
オリ設定入ってるので、苦手な方はバックブラウザ推奨
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401149449
すまん。回線悪くて投下できなかった。
まだ序盤すらできてないけど投下する
ゆりからSSSへの勧誘を受けて、はや一日が経過していた。
一日とは言っても、俺がこの世界に来たのは昨日の夜。今はまだ朝だから、正確には数時間程度しか立っていない。
しかし、突然のトンデモ事態に困惑していた俺にも、この数時間で心に余裕が戻り始めていた。
無論、腑に落ちない点はいくつもあるものの、ここで騒いでいたって仕方がない。
とりあえず、ゆりの言うとおり前世の記憶があるというのは少々助かった。
なんでも、ここに来る連中は記憶を失っている奴も多いらしい。
目が覚めたらどこかもわからない世界で、かつ自分のこともわからないなんて怖すぎるにも程がある。
とりあえずは、俺の遺体の脳が損傷されてないだけでよしとしておこう。
なんたって、今の俺にはちゃんと前世の、死ぬまでの記憶があるのだから。
俺は男子寮の一室でベッドから身を起こし、軽く伸びをする。
昨日いろんな事が起きたせいでかなり寝不足だったが、こういう時に部屋でじっとしていられる性分じゃないんだ、俺は。
布団から出てみると、部屋の隅にタンスが置かれていることに気がついた。木製のちょっとしたやつだ。
昨日は部屋の内装を一々気にする余裕もなかったしな…。
俺はそう結論づけ、タンスから替えのシャツを取り出して羽織った。
こういう準備の良さといい、できすぎた世界といい、死後の世界というのは本当に何でもありらしい。
特に俺が一番驚いたのは、死んでも時間さえ経てば蘇生してしまうという点だった。
それは、即死レベルの傷を負っても死ねないということで…
音無「うわっ!思い出しただけでゾクゾクするぜ…っ」
思わず両肩を抱いて身震いする俺。
実は昨日、目が覚めた校庭で出会った銀髪の少女から、俺は胸を一突きにされたのだった。
傷こそ完治しているものの、あれはあまりにリアルな感覚で…。
(死ねないっつ―のも、なかなかやなもんだな、実際…)
とりあえず俺は、備え付けの洗面台で顔を洗って歯を磨く。ついでに寝ぐせも直しておいた。
そろそろ部屋の外に出てみるか…、そう思った時だった。
日向「邪魔するぜ音無ーーっ!」
不意に、部屋のドアがガバッと開け放たれる。ノックもくそも、悪びれた様子すらもない。
俺は問答無用でやってきた好青年に上段蹴りを叩き込んだ。そのまま足裏で、ぐりぐりと壁に顔面を押さえつける。
音無「ノックもできねえのかお前は…」
日向「お…おひゃよーおとなす…」
日向と名乗る少年はずるずると壁を這い、やがて床に倒れ込んだ。
実はこの日向、俺が昨日会った二人目の亡霊で、ゆりと同じくSSSに所属しているらしい。
しつこく勧誘してきたかと思えば、頼んでもないのに勝手に世話を焼いてくるのだ。まぁありがたいんだけどさ。
日向「いやぁ、まさかお前に格闘術の心得があったとはな…。これはいよいよ放っておけねえなあ!俺たちの戦線に来いよ!あ、松下五段と戦わせてみるのも面白いかもしれねーなあ」
音無「だから言ってんだろ。俺はそんなのに参加する気はないって」
日向「なんでだよ~俺たち親友だろ~?」
…いつからだよ。
いつの間にか復活した日向は馴れ馴れしくも俺のベッドに腰掛け、ポケットからジュース缶を二本取り出した。
日向「まぁ座れ。まぁ飲め」
音無「そこは俺のベッドだろーが。…飲み物はいただいとく」
並んでベッドに腰掛けるのは癪だったので、俺はベッドの向かいに椅子を持ってきて座った。
それから日向の持ってきたジュースを一本飲む。普通のフルーツジュースだった。
日向「じゃあどうすんだよ、お前。言っただろ?俺たちの戦線にこなきゃ、お前は消えちまう。せっかく出会ったのにすぐお別れなんて嫌だぜ俺は」
音無「戦線に入らなきゃ消えるわけじゃねーだろーが」
俺はさり気なく訂正する。
ゆりと日向の話では、ここで模範通りの行動をとると消えてしまうんだとか。
だからコイツらはSSSなんて組織を組んで、日々神に、天使に抗っているらしい。
制服の仕様が違うのも反乱の一端なんだとか。ちなみに俺も昨日妙な制服を押し付けられたのだが、あれは帰り道に捨てておいた。
だって着る機会なんてねーんだもんよ。
そんなわけで、お優しくもコイツは俺が消えないように朝っぱらから来てくれたわけだ。やっぱりあっちの気があるんだろうか…。
だが、生憎俺の意思は変わらない。戦線になんて興味はない。
せっかくやり残した事ができるチャンスをくれた神様に抗うつもりもなかった。もちろん、神様の存在なんて信じたわけじゃないんだけどな。
音無「とにかく俺は、本当に興味が無いんだよ、戦線なんて。でも俺だってタダで消えようなんて思っちゃいないさ」
日向の言葉を待たず、俺は続ける。
音無「ようは模範通りの行動をしなけりゃいいんだろ?じゃあ好き勝手やってもいいわけだ。案外いいとこだな、ここは」
日向「好きなことって、一体なにすんだよ?」
音無「あ、そうだ日向。お前どうせ授業には出ないんだろ?だったら付き合えよ」
日向「付き合うって…何に?」
~~~~~~
外に出てみると、やはりそれは本当に見たまま、俺たちが過ごしていた生前の景色と何も違わないように思えた。
空は青く晴れわたっていて、気候は温かい。人だってたくさんいるし、やはりかつての世界と何が違うかのか、全然区別がつかなかった。
日向「よくできてるよなー」
俺の思考を読んだように、日向がつぶやく。
日向「俺も始めてきた時はそう思ったもんだ。まぁそれは今でも変わんないんだけどさ」
音無「そうか。お前も…もう死んでるんだな」
当たり前のことをつぶやく俺。
でも、やっぱり目の前に死んだ人間がいるというのはどうしてもなれないものだ。
日向「まぁなぁ。ここにいるやつらなんて全員そうさ。あ、でもあいつらは別だぜ?」
日向がグラウンドを指しながら言った。
音無「ああ、NPCってやつか。ゆりから聞いた」
運動公園のように広いグラウンドには、競技場のようにレーン分けされた白線が引かれており、そこを何人もの意思なき生徒(NPC)達が走っている。
体操服を着ていることからわかるように、体育の授業中といったところだろう。
彼らは俺たち死後の亡霊とは違って、最初からここにいる住人たちらしい。まるで俺たちが退屈しないように準備されたもののように思えた。
音無「スカートめくったら逃げられるか蹴られるかするんだってな」
日向「そうそう。それやらされたのは俺だったんだぜ。ほら俺、古参だからさ。…ちなみに蹴られた」
音無「お前らしいな」
日向「うるせー!」
昨日のゆりと日向の会話の応酬を聞いた俺には、なんとなくその光景が目に浮かぶようだった。
きっとコイツはいままでも貧乏くじを引かされ続けてきたんだろう。もちろんこれからも。
短いけどここまでしかない。また夜更新するぞ!
音無「それで、お前らの戦線ってのは何人くらい集まってるんだ?」
校庭を歩きながらなんとなく尋ねると、日向が難しい顔をする。
日向「難しいな、言われてみれば全員を数えたことなんてなかったかもな。でもいっぱいいるぜ」
音無「そんな曖昧な…信用できるのか?」
日向「まぁこの世界にいる俺たちみたいな、NPC以外の人間は大概SSSに所属してる。じゃなきゃ消えちまうし、情報も得られないからな」
日向「だからさ、お前も入れよ」
音無「やなこった。興味ねーって言ってるだろ」
そう言った直後だった。
「貴様か」
不意に背後からドスの利いた声が飛んでくる。男の声だ。
俺と日向が振り返ると、そこには日向と同じように周囲とは違う制服を着た一人の男子生徒が立っていた。
その手にハルバードを携え、肩にかけて立っている。
日向「うわぁ…アホの野田だ。そういえば昨日戦線で音無の話になったんだよな…」
音無「もしかしてアイツ、俺にご立腹なのか…?」
日向「どうもそうらしいな。あいつ、ゆりっぺのファンでさ…、昨日お前がゆりっぺを怒らせたからそれが原因なんじゃ…」
音無「そんなことでか!?やっぱろくなのいねえなお前らの戦線はっ!」
口論を続けている間にも、野田はじりじりと俺たちへの距離を詰めてくる。
表情は怒りにあふれており、殺意や敵意といったものが全身から滲み出ているようだった。
野田「ゆりっぺを侮辱し、入隊を断ったという輩は!!」
言いながら、巨大な斧槍の先を俺の前に突き出してくる。
我先にサッと飛び退く日向。やはりこの世界では命の扱いは軽いらしい。
音無「ゆりを侮辱したかはしらねーけど、入隊を断ったのは事実だ。でもお前には関係ない」
野田「なんだと?死にてーらしいな」
音無「なんでそうなるんだよ…」
日向「なに挑発してんだよ音無!テキトーに謝って逃げようぜ!そいつはアホだから大丈夫だって!」
脇からヤジを飛ばす日向に、矛先を引っ込め構えるようにする野田。俺も反射的に後ろに跳んで距離を取る。
音無「死ねない世界の冗談ってやつか?センスねえよバーカ!」
野田「いい度胸だ!新入り!」
野田がサッと大地を踏んで飛んでくるのに合わせて、俺も設置されていた鉄製のゴミ箱を取る。
網目のように張り巡らされた鉄がカゴの形をなしたようなゴミ箱だった。中にはジュースの空き缶が少々入っている。
音無「新入りじゃねえ!入ってねーっつってんだろ!」
俺はゴミ箱の上下を両手で持ち、体の前に構えて槍を受け止めた。
野田が突き出したハルバードの矛先は網目に食い込んで、俺の身体には遠く届かない。
野田「クソッ!」
俺は槍を引き抜かれる前に、ゴミ箱を斧槍ごと右に投げ飛ばした。ゴミ箱は3メートル先の地面をバウンドしながら転がっていく。
もちろん深く食い込んだデカいハルバードも一緒だ。しかしあんなのを振り回せる人間とは恐れ入る。
野田「ちっ…!」
音無「へへっ。出直して来い単純バカが!」
つい俺は自分でもわかるようなムカつく笑顔を浮かべて野田を挑発してしまう。
今になって思うけど、俺コイツのこと知らないよな。野田ってう名前は聞いたけどさ。
初対面で喧嘩になるなんて一体いつ以来だろうか。そんなことを考えていた時だった。
ドコッ、と。顔面に鈍く重い衝撃。
音無「ごばっ…!!」
急に真っ暗になった視界が次に捉えたのは、青く澄んだ空だった。
遅れて、自分が殴られたということに気がついたときには、俺はアスファルトの上を無様に転がっていた。
(痛ったああああああああああああああッ!?)
不意打ちしやがったあの野郎!!
あまりの衝撃に頭を軽く痛め、よろよろとしながら起き上がると、ヤツはもうこっちに背を向けて歩き出していた。
そのまま野田は捨て台詞のように言う。
野田「次ゆりっぺを侮辱したら、また舞うことになるぞ」
俺はグッと奥歯を噛み締め、ちょうど地面を転がっていた小石に手を伸ばす。
そして、暗示するように自分に言い聞かせる。
先に手を出したのは向こうだ。喧嘩にルールなんて存在しない。
俺は拾い上げた小石を右手でぐっと握りしめ、大ぶりのスイングで野田の後頭部めがけて振りぬいた。
ブゥゥンという音がしたから、結構な速度が出ていたんじゃないかと思う。
現実の世界なら躊躇すべきレベルの反則攻撃だが、ここはわけが違う。
傷はすぐに癒えるし、死んだって生き返る。アイツだって眉間に正拳突きしてきたしな。
カコンという小気味のいい音がした時には、野田はカエルのように地面に這いつくばって気を失っていた。
それでも、きっと後30分もすれば目を覚ますのだろう。
~~~~~
俺と日向は、一番手前のA棟の校舎へ足を踏み入れた。
ちなみに校舎にA棟だのB棟だのという名前がつくのは、この学校が馬鹿みたいに広いからだ。
これもゆりや日向から聞いた話なのだが、ここは総生徒数2000人強のマンモス校なんだとか。
グラウンドもさることながら、敷地面積もべらぼうに広く、植物園や地下などもあるという話だった。
日向「にしてもお前、見た目よりずっと外道なんだな」
音無「俺は仕返ししただけだ。また襲ってくんじゃねーだろ―な、アイツ」
日向「可能性は大いにあるな。アイツはアホで脳筋だから…寝首掻かれないように気をつけろよ?音無くん」
そう言って、日向はヘラヘラと楽しそうに笑う。
音無「……」
日向「それより音無、俺をどこに連れ込む気なんだ?」
音無「変な言い方すんな、気持ち悪い。でもまぁよくぞ聞いてくれたとでも言っておこうか」
俺は勿体つけるように咳払いし、
音無「まず、俺たち亡霊は規則正しく学園生活を送ると消えてしまうんだよな?」
日向「亡霊って…やな言い方すんなぁ。まぁそうだな、前にそうやって消えた奴がいる」
音無「実証済みってわけか。まぁそれだと俺も少々の悪さをしなきゃなんないってわけか…全く、心が痛むぜ」
日向「それが今朝親友の顔面を蹴り飛ばして後ろを向いた人間に石をぶつけた奴のセリフかよ!?しかも楽しそうだなお前!?」
音無「よくしゃべるな…、お前」
日向「呆れたみたいに言うなッ!つっこみ甲斐のある奴が多すぎんだよ!!」
ハァハァと息をつく日向を見捨て、俺は先へ歩を進めていく。
授業中というだけはあって、廊下には一人として生徒がいなかった。
代わりに、途中で横切って行く教室ではそれぞれ授業が行われている。
誰も彼もが作り物だということを、此処に来て二日目の俺はまだ不思議に思うのだった。
日向「それで?」
いつの間にか追い付いてきた日向がそう問いかけてきたので、俺はそろそろ本題を話してやることにした。
音無「まず、俺たちは…」
いいかけて、俺は廊下の掲示板に歩み寄って案内板を覗きこんだ。
音無「なぁ、家庭科室ってどこにあるかわかるか?」
日向「家庭科室?ああ、それなら各棟にそれぞれあるけど…A棟なら、ほらここ。2階の奥。1年12組の隣だな」
音無「じゃあその家庭科室を占拠するぞ、日向」
日向「はぁっ!?」
なんだよ、そんなに驚いて。お前ら昨日銃撃戦やってたじゃん。
音無「ああ、そっか。お前らってNPCには危害を加えたりしないんだっけ?」
一人納得する俺に、まぁなと日向。
俺もコイツらのやってることは少ししか知らないのだが、案外マトモなとこもあるんだなと変に感心してしまった。
もっとも、初対面の少女がスナイパーライフルを構えていたのだから、俺がこいつらに多少の警戒心を払うのは当然と言えるのだが。
音無「まぁ俺も生徒に危害を加えようなんて思っちゃいねえさ」
音無「ちょっと、やりたいことがあってな…」
音無「これは俺より先に病気で死んじまった妹の夢なんだけど。言ってたんだ、パティシエになりたいって」
音無「俺も妹を喜ばそうと思って、家でこっそり練習したりしてな。まぁ下手だったけど…。それで、代わりにってわけじゃないんだけど、どうせ自由にできるんならやってみようかと
思ってさ」
日向「パティシエをか?」
音無「んー…、とりあえず飽きるまで作ってみて、それからまた考えるよ。授業サボってるんだし、それなら消えたりしないだろ?」
日向「多分…」
音無「じゃあ行こうぜ」
日向「あ、ああ…」
投下分はここまでです。
勘のいい方は気づいたと思いますが、これは死後の世界で喫茶店を切り盛りする話です。
http://i.imgur.com/BDsKxCF.jpg
これを見て思いついただけです。なので、好き嫌い別れると思いますが暇だったら覗いてってください。
遊佐は嬉しいんだけどさ
この音無全然音無っぽくなくね
記憶があったとしてもこんなキャラではない気がする
>>38
元不良設定なので、やんちゃさ加減を残したつもりです。
このSSまとめへのコメント
ABとか久しぶり!
期待するしかない!!
続きお願いします。
続き読みたいです!!今更とか言わず再投下してほしい☆