ミカサ「…アニ、覚えてる?」(27)
847年・訓練所宿舎
ミカサ「ごめんなさい。はさみ、ないだろうか」
「はさみ?」
ミカサ「ええ…」
「えーっと…ごめんなさい、わからないや」
ミカサ「そう、ありがとう」
「そうだ、あなたも後で来てねっ」
ミカサ「どこへ?」
「ここから右手にある空き部屋!そこで、皆で自己紹介をするの」
ミカサ「そう…」
「じゃあ、また後でね!」
ミカサ「…また」
ミカサ「……」
ミカサ「…はさみ、どこだろう」
ミカサ「あの…」
「…なに」
ミカサ「はさみ、持ってたら貸していただきたいのだけれども」
「…なんで」
ミカサ「髪、切りたくて」
「髪?」
ミカサ「ええ。立体機動訓練の、邪魔になると思うので」
「…そこの、棚。引き出しに入ってたと思う」
ミカサ「ありがとう。借りても良いのかしら」
「備品だからいいんじゃないか。でもあんた、今から切るのかい」
ミカサ「明日、適正検査があるので」
「もう夜だし、暗いけど」
ミカサ「……」
「明日は纏めればいいんじゃない」
ミカサ「…いえ、今後のことを考えたら、切っておきたい。髪、纏めたこともないので」
「慣れないことは出来ない、か」
ミカサ「ええ…」
「…切ってやろうか」
ミカサ「え?」
「髪。明かりはあんたが持っていればいい」
ミカサ「良いの?」
「就寝時間まで暇だからね」
ミカサ「あなたは、集まりに行かないの?」
「人と馴れ合う為にここに来たんじゃない」
ミカサ「そう。でも、私の髪を切ろうとしてくれている」
「……」
ミカサ「ありがとう。あなたはきっと、優しい人だ」
「…とっとと終わらせるよ。そこ、座りな」
ミカサ「…あの」
「なんだい」
ミカサ「名前、聞くのを忘れていた」
「……」
ミカサ「ミカサ・アッカーマン」
アニ「アニ・レオンハート」
ミカサ「アニ、ありがとう」
アニ「あんたは、自己紹介とやらをしに行かなくていいのかい」
ミカサ「今は、髪を切る方が、大事」
アニ「…変わってるね」
ミカサ「あなたは、何をしていたの」
アニ「何も。部屋を物色してたくらいかな」
ミカサ「物色?」
アニ「どこに何があるか頭に入れておきたくて」
ミカサ「なるほど」
アニ「しかし本当に切るのかい」
ミカサ「? どうして?」
アニ「綺麗な黒髪じゃないか。勿体無い」
ミカサ「邪魔になるので」
アニ「…そう。どこまで切る?」
ミカサ「肩、くらいまで」
アニ「わかった。じっとしてて」
ミカサ「……」
アニ「……」
ミカサ「慣れてる」
アニ「…まぁ、切るのは初めてではないね」
ミカサ「誰かのを?」
アニ「…お父さん、とか」
ミカサ「お父さん…」
アニ「もういないけど」
ミカサ「え…」
アニ「マリアの南東出身なんでね」
ミカサ「そう…」
アニ「あんたは?」
ミカサ「シガンシナ区」
アニ「……」
ミカサ「気にしなくていい。両親は、元からいない」
アニ「……」
ミカサ「代わりに、家族がいる」
アニ「は?」
ミカサ「両親が死んで、家族になってくれた人達がいた」
アニ「…そう。良かったね」
ミカサ「うん…」
アニ「その…家族、は」
ミカサ「おじさんは行方不明、おばさんは…巨人に」
アニ「……」
ミカサ「今はエレンと2人」
アニ「エレン? あぁ、食堂で話してた」
ミカサ「そう。私の、家族」
アニ「前髪は?」
ミカサ「このままでいい」
アニ「じゃぁ仕上げ」
ミカサ「…ナイフ?」
アニ「髪を梳く。このままじゃおかしいだろ」
ミカサ「ありがとう」
アニ「……」
ミカサ「良い感じ」
アニ「結構切ったね」
ミカサ「床、掃除しなければ」
アニ「掃除道具は、そこ。流石に手伝わないよ」
ミカサ「わかった。ありがとう」
アニ「じゃ。少し外に出るから」
ミカサ「? どこへ」
アニ「ただの散歩」
ミカサ「暗いから、気をつけて」
アニ「……」
アニ「…エレン、だったね」
850年・某所地下
ミカサ「…アニ、覚えてる?」
ミカサ「あなたと初めて話した時のこと」
ミカサ「髪を、切ってもらった」
ミカサ「優しい人、だと思った」
ミカサ「初めて出来た、同性の友達、だと思った」
ミカサ「……」
ミカサ「ねぇ、アニ」
ミカサ「あなたは、何故」
ミカサ「何故、泣いているの」
オワリ。ねよ…
おつ
泣いた…
乙でした!
切ないな。乙。
乙
切ないけど好きだ
好き
乙
ほう、なかなかいい
乙
乙です!
原作らしさが感じられて良い
乙!
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