ー王都・下町ー
妹「・・・お兄ちゃん、朝。起きて、起きてー」ユサユサ
男「zzZ zzZ…」
妹「・・・お、お兄ちゃーん。起きてってばー・・・」ユッサユッサ
男「ぅーん・・・。zzZ zzZ」ゴロン
妹「・・・お、お兄ちゃん。朝だよー・・・! お、起きてー・・・!」ユッサユッサユッサ
男「zzZ zzZ」
妹「・・・ふぇ。お、お兄ちゃんが起きなくなっちゃった・・・」ウルッ
男「zzZ zz・・・ばあ!」ガバッ
妹「ひゃあっ!」ドキーン!
男「ははは、引っかかったな妹!」ワッハッハ
妹「・・・」
男「あー、面白かった。『ひゃあっ!』って言ってたな!」アハハ!
妹「・・・!」プルプル
男「ははは、いい反応だったぞ妹。 さて、それじゃあ朝飯に・・・。妹?」
妹「・・・お兄ちゃんのばか!」ガチャッ! バタバタバタ…!
男「・・・。・・・うーん、怒らせちまったか」ギシッ スタスタ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1385810306
ー男の家・台所ー
男「おーい、妹ー・・・?」
妹「・・・」ツーン ジャー… カチャカチャ
男「はあ・・・。悪かったって、妹。謝るから、機嫌直せよ」
妹「・・・もうしない?」
男「しないしない」
妹「・・・ほんと?」
男「ほんとほんと。俺が嘘吐いたことあるか?」
妹「・・・ない。お兄ちゃんは、正直者。・・・うん、許してあげる」ニコ
男「お、そうか。ありがとな」ヨシヨシ
妹「・・・えへへ///」
男「よーし、それじゃあお詫びに一つだけお願いを聞いてあげよう。何か欲しいものとかあるか?」
妹「・・・わあ、本当!? そしたらね、わたしね! わたし、久しぶりにお兄ちゃんのご飯が食べたい」
男「ん、そうか? よし、じゃあ折角の休日だし、夕飯には久し振りにご馳走を作ってやろう!」
妹「・・・うれしい!」
男「よーし妹、まずは朝ご飯だ。食べたら、中央区まで買い出しに行くぞ。ついでに、どこかに遊びに行こう」
妹「・・・わあ! うん! じゃあ、朝ご飯持ってくるね・・・!」トタトタ
男「ああ、それなら手伝うよ。朝ご飯は作ってもらったしな」
妹「・・・いいの。わたしが持ってくるから、お兄ちゃんは座っててくださいっ」
男「そうか? じゃあ頼むけど、気を付けてな」
妹「・・・だいじょーぶ。まかせて」トタトタ
男「・・・」
男「・・・良い子に育ってくれたもんだ」
トタトタ
妹「・・・? お兄ちゃん? 何か言った?」カチャカチャ
男「いや、何でもないよ。いい天気で良かったな、って思ってな」
妹「・・・うん。お洗濯物が、よく乾く」コト、コト
男「お、ありがとう。いやあ、料理も出来て、家事も出来る。妹は将来、いい奥さんになれるぞ」
妹「・・・わ、わたしは、お兄ちゃんのおくさんになりたいな///」テレテレ
男「ん、そうか? はは、ありがとな」ヨシヨシ
妹「・・・ほんとうだよ?」
男「ああ、分かってるよ。嬉しいぞー、俺は」
妹「・・・えへー///」ニヘラ
男「よし、それじゃあ食べようか。頂きます!」
妹「・・・はい、めしあがれ」
カチャカチャ モグモグ
妹「・・・お兄ちゃん、おいしい?」
男「ああ、美味いぞ。流石は妹だな」
妹「・・・わたしは、お兄ちゃんみたいにお仕事できないから、これくらいはしないと・・・」
男「気にしなくていいと、いつも言ってるだろう? お前はまだ10になったばかりだ。そんなお前を働かせたら、俺が周りの人達に怒られちまう」
妹「・・・でも・・・」
男「それに、こうやって毎朝起こしてもらったり、ご飯を作ってもらったり、家事をしてくれているから、俺は働けているんだ。お互い様だよ」
妹「・・・うん。わかった」
男「よし、いい子だ。ほら、さっさと食べて、中央区まで行こうぜ」
妹「・・・うん!」
ー数十分後ー
妹「・・・お兄ちゃん、準備できたよー」
男「お、そうか。それじゃあ、行くとするか」
妹「・・・うんっ」
ガチャッ
女「こんにちは、男」
バタン
男「よし妹。今日は裏手から行ってみようか。いつもと違った道も楽しいぞー」
妹「・・・? うん」
ドンドン!
女『こ、こら男! 開けて下さい! 折角人が訪ねてきたのに、何ですかこの仕打ちは!』ドンドン!
妹「・・・? お兄ちゃん、お客様・・・」
男「いいんだ妹。奴は客じゃない、招かれざる者だ。第一、俺はあいつが苦手だ。会いたくない」
妹「・・・悪い人なの?」
男「ああ・・・。頭がもの凄くな」
女『あ、開けて下さい! どうして無視するのですか!? そ、そんなことされると・・・』
妹「・・・?」
男「んの野郎、まさか・・・!」ダッ!
女『こ、興奮するじゃないですか・・・!///』ハアハア!
男「だあー! 何を言ってやがるてめえ!」ガチャッ!
女「ふああ! い、いきなり怒鳴らないでください、更に感じてしまいますっ///」ビクンビクン!
妹「・・・お兄ちゃん、この人だれ?」ポカン
男「妹は知らなくていい人だ。このどうしようもない馬鹿と関わるとろくな目に遭わないからな」
女「くうっ!/// な、何故です男。どうして今日はそんなに私を悦ばせてくださるのですか!?」ハアハア…!
男「こいつ・・・!」
妹「・・・お、お姉さん、風邪をひいてるの? 顔が真っ赤だよ?」
女「ううん、違うのです。私はね、君のお兄さんに怒られたり、罵られたりすると、とても気持ちよくなるのです・・・///」ウットリ
妹「・・・え、え??」オロオロ
男「女ぁ・・・」ゴゴゴ…
女「な、何です? こ、今度はぶってくれるのですか!?///」
男「それ以上おかしな事を言ったら、お前とは金輪際話さん」
女「!!」
男「妹が見ている。弁えてくれ」
女「ご、ごめんなさい・・・。久し振りにお会いできたので、つい・・・」
男「・・・はあ。話があるんだろ? 中に入れよ」
女「は、はい。お邪魔します・・・」ヨロヨロ
妹「・・・お兄ちゃん?」
男「ごめんな、妹。この人、俺とお話があるみたいだから、少しだけ待っててくれるか?」
妹「・・・わかった。お部屋にいるね」トタトタ
女「・・・き、気の利くいい子ですね」
男「年の割には、いい子過ぎる気もするんだがな。まあ、座れよ」
女「失礼します。・・・男の教育が良かったということですよ。悪いことではない筈です」
男「まあ、な・・・。で、話っていうのは?」
女「来月、火竜の月に一週間に渡って祭りがあるのは知っていますね?」
男「ああ。年に一度、国を挙げての大騒ぎだ。知らない筈がない」
女「その時に、隣国の襲撃があるかも知れません」
男「! そいつはまた、穏やかじゃないな」
女「はい。ですが、十中八九起こるかと」
男「根拠は?」
女「表沙汰にはなっていませんが、三日前の夜、王が襲撃されました」
男「なっ・・・」
女「襲撃者は隣国の者だったそうです」
男「おいおい。ただでさえ緊張状態にあるあの国かよ。大国じゃないか・・・」
女「・・・それから、これも表沙汰にはなっていませんが、王は病に伏しておられます」
男「・・・成る程。そこを狙われたと」
女「恐らくは。今はまだそこまで重い症状は出ておりませんが、王ももうお年です。お医者様も、あまり長くは保たぬだろう、と・・・」
男「そこで暗殺者を送り込んだが、失敗。そこで、王族が姿を見せる来月の祭りを狙って来ると踏んでいるわけか」
女「はい。それに、万が一にも王が誅された場合、次期王候補の王女殿下は、まだお若過ぎます。今王が殺害されるような事になれば、混乱は必至。この国は容易く攻め落とされるでしょう」
男「随分と弱気なもんだな? 王都近衛騎士団、序列第一位『戦女神』殿?」
女「勿論、我々騎士団も全力は尽くしますが・・・。弱気にもなりますよ・・・。今の騎士団には、あなたがいない。それなのに、戦の強さで名高いあの隣国と戦わなければいけないだなんて・・・」
男「何を言っている。今の騎士団は十分強いだろう」
女「それでも、です。・・・騎士団に、戻っては頂けませんか? 元・王都近衛騎士団、序列第零位『武神』殿」
男「・・・悪いが、それは出来ない」
女「何故ですっ!?」
男「何度も言っただろう。俺に、騎士なんて向いていなかった。それだけのことだ」
女「しかし、あなたがかつて挙げた戦果は・・・!」
男「あんなの、別に騎士でなくても、傭兵でもいいんだ。だからこそ、俺は今こうしているわけだしな」
女「金さえ貰えれば、何でもこなす何でも屋、ですか・・・」
男「そうだ。実際、騎士より楽だしな」
女「・・・まだ、あの日のことを許してはいないのですか?」
男「・・・そうじゃない。ただ、騎士でなければ救えないものがあるように、騎士であるから救えないものもあると気付いただけだ。後は、どちらを救いたいと思うかだ」
女「・・・私には、解りかねます。あの日のことも、正直な所、仕方が無かったんだと思います・・・」
男「俺はそうは思わなかった。それだけだ」
女「・・・では、やはり騎士団には戻って頂けないのですね?」
男「ああ、悪いな」
女「いえ。予想はしていましたから・・・」
男「・・・。悪い、今日は妹と出掛けるんだ。そろそろいいか?」
女「あ、はい。長々とすみませんでした」ガタッ
男「いや、こっちこそ、茶も出せずに悪かった」
女「いえ、そんな。それでは、失礼しますね」ガチャッ
男「ああ。また来いよ。今度はゆっくり出来る時にな」
女「はい、きっと。では・・・」バタン
男「・・・」
男「騎士、か・・・。自分でも驚くほど未練がないな」
男「・・・。妹ー! 待たせたなー! 出掛けるぞー!」
妹『・・・はーい』ガチャッ タン、タン、タン、タン
妹「・・・お話、終わったの?」
男「ああ、終わったよ。ごめんな、待たせて」
妹「・・・ううん、平気。それじゃあ、行こ? お兄ちゃん」
男「ああ、行こうか」ガチャッ
妹「・・・お兄ちゃん、手、つなごう?」スッ
男「ああ、ほれ」キュッ
妹「・・・えへへ。お兄ちゃんの手、暖かいね」ギュー
男「そうか?」
妹「・・・うん。なんかね、心がポカポカしてね、気持ちがいいの」エヘヘ
男「そっか。それは良かった」
妹「・・・よかったよかったっ」
期待
かつての手練れが転職して細々とやるってなんかいいよね
ー王都・中央区ー
イラッシャーイ! サアサ、ミテイッテオクレー!
ワイワイ ガヤガヤ
妹「・・・うわあ、人がいっぱいいるね」キョロキョロ
男「ああ、今日は休日だし、来月の祭りも近いからな」スタスタ
妹「・・・おまつり?」
男「ああ、妹も去年行っただろう? ほら、出店で綿飴を食べたの、覚えてないか?」
妹「・・・! おぼえてる、ふわふわで、甘くて、おいしいの・・・!」フンフン!
男「おっ、とと。あまり暴れるなよ、妹。肩車から落っこちちまうぞ?」
妹「・・・ご、ごめんなさい」
男「分かれば良し。・・・でまあ、あの祭りは毎年やっててな。それが来月なんだよ」
妹「・・・ことしも、わたあめあるかな?」ワクワク
男「ああ、あるさ。また買ってやるからな」
妹「・・・うん、楽しみ・・・!」
男「お。妹、右を見てみな」
妹「・・・右? あっ!」
ボォォオー! ワーワー!
妹「・・・お兄ちゃん、人が口から火を出してる!」
男「ああ、あの人は能力持ちなんだよ。すごいよな」
妹「・・・のーりょく?」
男「ああ、世の中には、ああやって火を操ったり、水を操ったり出来る人がいるんだよ」
妹「・・・お兄ちゃんは、どんなのーりょく?」
男「残念ながら、俺は能力を持ってないんだよ」
妹「・・・わたしも、ああいうことできるかな?」
男「おお、出来るかもな! もし、出来るなら、どんな能力が欲しい?」
妹「・・・お兄ちゃんと、ずっと一緒ののーりょくがいいな」
男「・・・そうか、ありがとな。さて、そろそろ買い物だな。妹、どんなものが食べたい?」
妹「・・・んー、とね。ふわふわのオムレツと、キャベツとニンジンのスープ。それから、パン・ド・VIPの甘いパンが食べたい」
男「了解。じゃあ、パンは出来立てのを食べたいから最後にするとして、野菜から買っていくか」
妹「・・・うんっ」
男「それから、今日はちょいと奮発して、チーズ入りのオムレツにしようか」
妹「・・・わあ、ほんとう!?」キラキラ
男「ああ。それじゃ、行くぞー!」タタッ
妹「きゃっ! ・・・あはは、はやいはやーい!」
男「よし、妹。上から野菜売りを探してくれ」
妹「・・・あっち。このまままっすぐっ」ピッ
男「よーし、行くぞ!」タタター…
妹「あはは!」ビューン
ー王城敷地内・騎士団兵舎ー
ザワザワ
騎士A「ういーす、お疲れー・・・。ああ、やっと食事だ・・・」ガタン
騎士B「おう、お疲れ。何だ、随分疲れてるな」ムシャムシャ
騎士A「まあなあ。何だか、今日の訓練はやたら厳しくてなあ。実戦かと思ったぜ」ハアー
騎士C「あら、そうだったの? あ、前失礼するわね」カタン
騎士B「でも、今日のお前の部隊の監督は、あの『戦女神』様だったんだろ? あの人優しいし、実力はトップだしで、皆あの人の訓練は受けたがるけどな。俺だって受けたかったぜ。羨ましい・・・」
騎士C「本当よ。それに、あの人に限らず、『称号持ち』の方々の訓練なんて、受けたくても受けられるものじゃないんだから」
騎士A「分かってるよ。俺だって、『称号持ち』が現れる可能性が一番高いっていう今の部隊に配属されたくて、死に物狂いで頑張ってきたんだから・・・」
騎士B「だよな。お前、絶対『称号持ち』の訓練を受けるんだ! なんて言って、今まで弱気なんて言わなかったのにな。でも、そんなお前がそこまで言うって事は、そんなに酷かったのか? 今日の訓練」
騎士A「ああ。・・・何て言うのかな。こう、憂さ晴らしの相手にされてる? ストレスの発散相手にされてる? って感じだったんだよなあ」
騎士C「ええ? あの『戦女神』様が部下を相手に憂さ晴らし? バカね、そんなことあるわけ無いじゃない」アハハ
騎士B「そうだぜ。『戦女神』様といえば、他国の王族が挙って嫁にと押し掛けるほどのお方だぞ? そんなことされる筈が無いだろう」ワハハ
騎士A「そうなんだよなあ。いや、待てよ? 会議が控えているというストレスか・・・? いや、でも・・・」
騎士B「まあ、考えすぎだって。飯食って、元気だせよ。な?」
騎士C「そうそう。・・・王様の襲撃事件もあったし、少しピリピリしていただけよきっと。いざという時のために、力を付けて、訓練も頑張らないとね」
騎士A「ああ、そうするよ」
騎士C「・・・それにしても今頃、『称号持ち』の皆さんは会議かあ」
騎士B「・・・直接王が狙われたからな。対策も練らないといけないだろうし。それに、来月の祭りでの隣国の動向も探らなくちゃだしな」
騎士A「出来れば、戦争なんて無いに越したことはないんだけどな・・・」
騎士C「そうね。でも、不謹慎だけど私、ほんの少し今回の件に感謝しているところもあるのよね」
騎士A「おいおい、滅多なこと言うものじゃないぞ?」
騎士B「そうだぞ? 俺達だったからよかったものの・・・」
騎士C「分かってるわよ。だから言ってるんじゃない。でも、私ね? ・・・今朝、三人も『称号持ち』の方々を見かけちゃったんだから・・・!」ヒソッ
騎士B「何!? それは本当か!?」ガタッ!
騎士A「誰!? え、誰!?」ガタッ!
騎士C「ちょ、声か大きいわよ!」シー!
騎士A「お、おお、すまん。それで、誰だ?」
騎士B「・・・!」コクコク!
騎士C「ふふ、まず、今朝の起床鐘を鳴らす時に、城門前で『戦女神』様でしょ?」
騎士A「ふむふむ」
騎士B「いきなり序列第一位をお見かけしたのか・・・」
騎士C「それだけじゃないわ。その後、朝の自主トレーニング中に、飛竜に乗って裏手の広場に舞い降りて来られた、序列第五位、『竜騎』様をお見かけしたの!」
騎士A「うわ、本当に!? 彼、普段は竜と一緒にあちこちを飛び回っているから、滅多にお見かけ出来ないのに!」
騎士B「じゃあ、今朝竜舎に繋がれていた大きな竜が・・・!」
騎士C「ええ、愛竜ね。そして最後の一人は・・・」
騎士B「一人は・・・?」
騎士A「・・・っ」ゴクリ
騎士C「『称号持ち』で一番の美形! まさに貴公子! 序列第八位、『水薫』様よ!」キラキラキラキラ…!
騎士A「うっし、それじゃあ午後の訓練に行きますか」ガタッ
騎士B「ああ、そうだな」ガタッ
騎士C「ち、ちょっと、何よその反応!」
騎士A「いや、確かに『水薫』様も凄いんだけど・・・」
騎士B「何か、変人じゃないか? あの人」
騎士C「ち、違うわよ、お茶目なだけよ!」
騎士A「そうかなあ・・・? しかも、割とよくお見かけするし」
騎士C「そ、それはそうだけど・・・!」
騎士B「・・・まあ、ともかく。今この城内に、恐らくは13人全ての『称号持ち』の方々が集まって、会議をしておられるのだろうな」
騎士A「はー、そう考えると凄いよなあー」
騎士C「そうよね。今頃、どんな事をお話しされているのかしら・・・」
騎士B「きっと、王国の未来を考えて、真剣なお話をされているのさ」
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
女「(全く。今日はついていませんね。男には騎士団の勧誘をフられるし、久し振りに訓練の監督をすれば言い寄ってくる輩は出てくるし、しかも問題児だらけの『称号持ち』で会議だなんて・・・。思わず訓練でストレス発散しちゃいました・・・)」ハァー
女「(でも頑張らないと。これが終わったらまた男の家に行けます。少し遅めに行けば、妹ちゃんも寝ているでしょうし、少しはイジメて貰えるかもしれませんしね///)」フフフ
(女もとい)序列第一位・戦女神「(よし! 切り替え!)・・・では、これより我々称号持ちによる緊急会議を執り行います!」ダン!
序列第二位・幻夢「はいはーい! 待ってましたー!」ピョンピョン
序列第三位・姫巫女「『幻夢』の坊や、少し落ち着いたらどうじゃ?」
序列第四位・死影「うふふ・・・。あまり騒がしいと、お姉さんが食べちゃいますよぉ・・・?」クスクス
幻夢「えー! それは嫌だなあ!」
死影「うふ、前からオイシそうだと思っていたのよぉ・・・?」ハアハア… ペロリ
姫巫女「こ、こら『死影』の! 恐ろしいからそういうことは言うでない!」
序列第五位・竜騎「ふん。・・・騒がしいぞ貴公等。会議が始められんではないか」
序列第六位・土蜘蛛「ケケッ。オイラは堅っ苦しい会議より、このぐらい騒がしい方がいいッスけどねっ」
竜騎「全く、お主も相変わらずであるな・・・」ハア
土蜘蛛「旦那、褒め言葉と受け取っとくッス」
序列第七位・樹王「あ、あのっ・・・! や、止めてくださいっ!」アセアセ
序列第八位・水薫「はっはっは。いいじゃないか! 久し振りに会ったんだ。どうだい? この後、二人きりで食事でも・・・」キラーン
序列第九位・獣牙「め、飯か!? 美味いもの出るのか!? アタシは行くぞ、行きたいぞ!」ガルル ガルル
水薫「うわ、ちょ、止めろ! 涎が飛んでる! ボ、ボクはお子様に興味は無いんだ! 食事がしたいなら、後で食堂にでも行ってくればいいだろう!?」
獣牙「えー、アタシだけ除け者かー!? ふん! そうする! おばちゃん達、いい人だからな! おいしいご飯、いっぱいくれるんだ! すいくんには分けてやらないからな!」
水薫「はっは! 結構だとも!」
樹王「ふふ、楽しみですね、『獣牙』ちゃん」ナデナデ
獣牙「おう! 楽しみ! じゅおーも来るか!?」
水薫「ふ、残念だけど、『樹王』君はこれからボクと・・・」
樹王「そうですね。ご一緒させて頂きますね」
獣牙「うん! いこー!」
水薫「なっ!? ・・・し、仕方がないな。それならボクも・・・」
獣牙「すいくんは、さっきアタシを仲間外れにしようとしたから呼んであげないもんね!」フン!
水薫「そ、そんな・・・!」ガーン
樹王「あ、あはは・・・」
序列第十位・月詠「・・・『水薫』さん、今日は運勢最悪ですから、諦めた方がいいですよ・・・」ボー…
序列第十一位・戦鬼「あれ。つく姉、今日は起きてるんだ」
月詠「・・・『戦鬼』くん。私はいつも寝ている訳じゃありませんよ?」 プクー
戦鬼「いや、そうは思えないんだけど・・・」
序列第十二位・焔姫「こら、弟。失礼なこと言わないの!」
戦鬼「いや、だけどよ姉ちゃん。基本つく姉って寝てるイメージじゃね? そこんとこどうよ?」
月詠「じー・・・」
焔姫「ぅえ!? え、ええと、それは、そのー・・・」
月詠「・・・言い淀んでる時点でそう思っているという事でしょう・・・?」ズーン
焔姫「うわあ! ご、ごめんなさい『月詠』さん!」アセアセ
序列第十三位・武御雷「チッ! うるせェなァ、テメエらは相変わらず。薙払ってやろうか?」
月詠「・・・話に混ざりたいなら、素直に言えばいいのに・・・」ボソッ
武御雷「ア? 舐めたこと抜かしてんじゃねェぞババア。消し炭になりてェか?」バチッ! バチバチィ!
月詠「・・・ば、ババア・・・?」ワナワナ…
焔姫「ち、ちょっと! 止めなさいよ『武御雷』!」
戦鬼「そうだぜ! ここは室内だぞ、オマエ頭おかしいのかYO!?」
武御雷「うるせェ! それはてめェにだけは言われたくねェよ!」バチイ!
幻夢「わあ! 何、ケンカケンカ!?」
死影「ふ、ふふ。楽しいわね・・・」
竜騎「貴公等、いい加減にしないか!」
土蜘蛛「旦那、ダメっスよ。話聞いてねっス」
姫巫女「全く、どうしていつもいつもこうなるのじゃ・・・」ハアー
月詠「・・・私に勝てる? 十三位」ユラリ
武御雷「ハッ! 舐めンなよババア! 歳が上だからって、序列までオレより上だとか勘違いしてンじゃねェぞ!? その気になりゃァ、いつだってテメエを引きずり下ろせるンだからなァ!」バチバチ!
樹王「だ、駄目ですよ『月詠』さん! 落ち着いてください!」
獣牙「タケミカヅチも落ち着けー! ケンカは良くないんだぞー!」
水薫「そうだ! 二人とも落ち着け! 君達が争ってどうすると言うんだ!」
戦鬼「水にい! 水にい! そういうことは近くで言ってくんね!? 真っ先に避難してね!?」
水薫「ば、馬鹿を言うな! 怖くて近寄れるか!」
戦鬼「情けねーYO!」アッチャー!
武御雷「だァ! うるせェっつってンだよテメエら! まとめて吹き飛ばしてやる!」バチイ!
月詠「・・・私は、まだ25だ! ババアじゃない・・・!」ゴゴゴゴ…!
戦姫「まだ気にしてたのー!?」
ギャーギャー!
???「ふっ・・・!」ヒュッ…
全員『?』
ドッゴオオォォォォォ……ン!
全員『・・・!』
パラパラパラパラ… ガシャン!
戦女神「・・・会議を、始めたいと思いますが?」ニコッ
約全員『ご、ごめんなさい・・・』
姫巫女「・・・我らが集まる度にこの流れ。いい加減どうにかならぬものかのう?」
竜騎「無理であろうな・・・」ハア…
月詠「・・・私は、ババアじゃない・・・!」
いい感じにカオスになってきた
これってなんかの二次創作?
オリジナルを書かせて貰っています。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
戦女神「・・・では、改めて臨時会議を執り行います。議題は、先日の王襲撃事件、それに伴う、隣国の動向についてです」
幻夢「し、質問があります『戦女神』様!」
戦女神「はい、何でしょう『幻夢』。それと、改まり過ぎです」
幻夢「う、うん。ごめんなさい。あのさ、王様を襲った奴って、逃げたんでしょ? 逃げられたのに、隣国の奴だ、って特定しちゃっていいの? ちゃんと確認取れてるの?」
竜騎「うむ、確かにな。我らと隣国は緊張状態にはあるが、だからといって無理に戦を起こす理由は無かろう。戦とは、人員、金、食料、全てに於いてとんでもない規模となるのだからな」
焔姫「・・・余程の理由がない限り、戦争を起こす必要は無い、ということですか?」
戦女神「その件に関しては、いくつかの判断材料と密偵からの報告で、ほぼ確実であろうという結論が出ております」
戦鬼「ああ、隣国内で戦争の準備は着々と進んでいるって。下手すりゃ、明日明後日にでも開戦出来そうなくらい準備は進んでいるらしいぞ」
姫巫女「それでは、間違いないであろうよ。現在、王は病床に伏しておられる。弱った王を討ち、王を討たれたという混乱に乗じて攻めれば、勝てる確率が増すと考えておるのであろうよ」
戦鬼「んー、でもさ。準備は出来てるとは言え、もう襲撃失敗してるんならダメじゃね? こうして、俺らに対策を練られてるし、計画が最初の段階で頓挫してね?」
樹王「『戦鬼』くん。それは少し違うんですよ」
獣牙「? 何が違うんだ? せんきの言うこと、正しいと思うぞ?」
水薫「全く、これだからお子様は・・・痛い! 噛むな! 悪かったから二の腕を噛むな! 地味に痛い!」
獣牙「次にバカにしたら喉笛を食いちぎってやる!」ガルル
水薫「へ、平然と身内に殺害予告を出すな!」
樹王「だ、駄目ですよ『獣牙』ちゃん! そんなもの食べたらお腹壊しちゃいますよ?」
戦鬼「・・・『樹王』の姉ちゃん、たまにえげつねえよな」
樹王「え、え?」キョトン
水薫「・・・」シクシクシクシク
土蜘蛛「・・・まあ、馬鹿はほっとくとしてッス。こういうことッスね? 王の襲撃があったってことは、その直後に起こすはずだった宣戦布告。つまり、こちらに攻め込む準備が出来ている。ならば、最初の襲撃が失敗したところで、正面からぶつかる準備が出来ていると」
死影「うふふ、そうなるわねぇ・・・?」
月詠「・・・ピンチ」
武御雷「はっ。攻めてくンなら返り討ちにしてやるだけだ。・・・なンならオレ一人で先にアイツら薙払ってやろォか?」
戦女神「落ち着きなさい『武御雷』。下手に動いてはいけません」
月詠「・・・まだ宣戦布告も出されていないのにこちらから戦を仕掛けたら、私達は『戦争の準備があるだけで無差別に攻撃する国』と思われてしまう」
幻夢「信用がた落ちだね!」
武御雷「チッ、つまらねェな・・・」
竜騎「・・・それでは、どうする? なるべく早く国民に通達し、有事の際に備えさせるべきではないのか?」
戦女神「はい、その件に関しては、既に諜報部と情報部が共同で事に当たっています」
戦鬼「あ、その件なら、あと三日あれば準備が出来るぜ」
焔姫「取り敢えず、全国民に発布出来るように、放送機材とかの準備を行っています。流石に全国となると規模が大きいので、多少お時間は頂きましたが、あと三日でなんとか終わらせてみせます」
姫巫女「ほう。お主等は手際が良いのう」
樹王「『戦鬼』くん、『焔姫』ちゃん、お願いしますね」
戦鬼「あいよ、任しとき」
焔姫「はい、必ず間に合わせます!」
竜騎「それで、発布のタイミングは如何する?」
土蜘蛛「それなら、やっぱり準備完了次第ッスよね? 下手に様子見なんてしてたら、最悪の場合間に合わなくなるッスよ」
月詠「・・・もうある程度の混乱は覚悟しないといけない」
死影「うふ、ふふふ・・・。混乱に荒れる王国・・・。悪くないわぁ・・・」フフフフフ……
獣牙「な、なんかシカゲがまた怖いぞ・・・」ガタガタ
水薫「し、『死影』君! 落ち着いて! 何か黒いオーラみたいの出てるから! 怖いから本当に!」
戦女神「・・・。恐らく、向こうは王族が民衆の前に姿を現来月の祭りに攻め込んで来ると思われます。それまでの期間は、二週間と五日。防衛の為には、祭りを中止しなければいけませんね」
戦鬼「だよな。戦争直前に祭りでヒャッハーとか、滅亡フラグだしな。てか、敵さんも用意周到にやってくれたもんだよな。ウチの諜報部ももっとしっかりしてくれればなあ」
焔姫「やっぱり、密偵は見抜かれてたのかな・・・」
水薫「密偵に気付いた上で、尚事を進める、か。王が弱っている今、向こうも本気という事だね」
月詠「・・・もうすぐにでも攻めてくるかも知れない」
土蜘蛛「もう既に、街にも密偵は入り込んでいるでしょうしねえ」
焔姫「国民の避難準備が整うまで戦端が開かれないといいんですけど・・・」
獣牙「やっぱり、早く教えた方がいいよなー・・・?」
姫巫女「・・・じゃが、こちらの意図など関せず、戦は起こるであろうな」
月詠「・・・それは、間違いない」
水薫「下手をすれば、もっと前に攻め込んでくる可能性もあるわけだしね」
幻夢「そ、そんなー・・・」
戦女神「・・・そうですね。最悪の場合を想定して、国民への発布は三日後とします。皆さんも、そのつもりで準備をお願いします」
全員『了解』
土蜘蛛「で、ッス。今戦になったとして、あの隣国に勝てるッスか? 向こうさん、ここ数年は結構軍備増強してたッスよ、確か」
竜騎「我等とて鍛えてはきたが、向こうは数もこちらより多い。その上、戦好きでも知られる王が率いる国だ。平和に慣れた我等の兵とは、士気が違うだろう」
月詠「・・・厳しい戦いになる、かも」
焔姫「そう、ですよね・・・」
樹王「・・・あ、あの、『戦女神』さん!」
戦女神「何ですか? 『樹王』」
樹王「その、彼の協力は得られないんでしょうか・・・?」
水薫「か、彼!?」ガーン
樹王「そ、そういう意味じゃありません!///」
獣牙「うるさいぞバカ。静かにしろ」
水薫「ち、ちょっと言い過ぎじゃないか『獣牙』!?」
焔姫「まあまあ二人とも、落ち着いて」
戦鬼「・・・で、『樹王』の姉ちゃん。彼って誰?」
樹王「は、はい。五年前、当時16歳という異例の若さで序列第零位になった人です。二年前に騎士団を辞めてしまわれたんですけど・・・」
武御雷「・・・序列第零位だ? 零位って確か・・・」
姫巫女「うむ。基本的には与えられない称号じゃな。王国の歴史でも、数えるほどしか存在しておらん」
焔姫「そ、そんな人がいたんですか・・・!?」
死影「ふふふ。私達が束になっても勝てるかしらねぇ・・・?」
戦鬼「そんなに強いのかYO!」ヒエェ!
竜騎「流石にそれは言い過ぎだとは思うが・・・」
水薫「序列第零位、『武神』か・・・。確かに彼は強かったが・・・」
土蜘蛛「何スか『水薫』。何か問題があるッスか?」
焔姫「も、もう亡くなられている、とか?」
獣牙「そ、そうなのか!?」
樹王「いえ。亡くなったりはしてないと思うんですけど・・・。突然辞めていなくなってしまったので、所在が分からないんですよ・・・」
幻夢「ダメかー・・・」
戦女神「あ、いえ。彼には今朝会ってきました」
樹王「ええ!?」ガタン!
姫巫女「何と、本当か?」
戦女神「ええ。彼とは騎士団に入隊する以前からの仲でしたから」
樹王「う、羨ましい・・・」
姫巫女「ん? 何か言ったかの?」
樹王「え? い、いえ、何も言ってませんよ!」アセアセ
死影「うふふ。可愛いわぁ、『樹王』ちゃん・・・」
樹王「や、やめてくださいよ『死影』さん!///」
竜騎「落ち着かんか貴公等。・・・それで、彼の協力は得られたのか?」
幻夢「『武神』さんかあ! 名前から格好いいよね! 強いんだろうなあ!」
焔姫「もし騎士団に復帰してくれたら、これほど心強いことは無いですね!」
戦女神「・・・いえ、騎士団には戻らないと」
戦鬼「ぬか喜びかYO!」チキショー!
土蜘蛛「な、何で戻ってくれないんッスか?」
竜騎「よもや、まだ二年前の事を気にしておるわけではあるまいな?」
戦女神「少し違いますが、大まかな理由はその通りです。騎士団に所属していては守れないものを守りたいのだとか・・・」
姫巫女「確かに、二年前のアレは気の毒じゃと思ったが・・・」
水薫「・・・彼は悔しかったんだろうね。絶対的な力を持ちながら、目の前の命が救えなかったんだから・・・」
土蜘蛛「何スか? 二年前、何があったんスか?」
焔姫「二年前の大きな事件と言えば・・・」
幻夢「うーん・・・、何かあったっけ?」
武御雷「・・・二年前の事件といやァ、西の外れにある村が、おかしな宗教組織に襲われて、村人が全員虐殺されたんじゃなかったか? 確か、何かの儀式に生け贄が必要だとか言って」
戦女神「はい、そうです」
獣牙「タケミカヅチ凄いな! 物知りだ!」
武御雷「るせェよガキ。常識だこれ位」
獣牙「そ、そうなのか・・・」ショボン
武御雷「・・・あー、つっても、二年も前だし、結構遠い街の話だから、知らなくてもしょうがねェよ。・・・気にすンなよ『獣牙』」
獣牙「! うん! ありがとうな、タケミカヅチ! やっぱりオマエはいい奴だ!」
姫巫女「(何故か、たまに『武御雷』は『獣牙』に甘いのう?)」ヒソヒソ
樹王「(ええ、たまにご飯あげたりしてますもんね・・・)」ヒソヒソ
焔姫「(も、もしかしたらもしかしたりするんですかね!?)」ボソボソ
武御雷「こそこそうるせェよテメエら! ・・・ンで、その事件がどうしたってンだ?」
戦女神「はい。その時に彼ら宗教組織の討伐に当たったのが、私と彼、『武神』の二人でした」
ー中央区・パン・ド・VIPー
カランカラン
男「こんにちはー」
妹「・・・こんにちはー」
主人「いらっしゃい! ・・・って、男に妹ちゃんじゃねえか! よく来たな!」
男「相変わらず元気そうだな、オヤッサン」
主人「おう、元気だともよ! まだ60になったばかりだぜ、弱ってなんかいられっか!」
妹「・・・おじさん、久しぶり」ペコ
主人「おう、妹ちゃんよ、よく来たな! 後で焼きたてのバターパン持ってきてやっからよ! 奥におばさんがいっから、お話ししててくんな!」ワシワシ
妹「・・・あうあうー。うん、行ってくる」テトテト
奥さん『あらー、妹ちゃん! いらっしゃい、よく来たわねー!』
妹『・・・おばさん、久しぶり』
奥さん『まあまあ、本当に久し振りだねえ! 少し見ない間に随分と大きくなってえ!』
妹『・・・おばさん、まだ一週間くらいしかたってないよ?』
奥さん『あらやだ。こりゃおばさん、一本取られたねえ!』アッハッハ!
男「おばさんも元気そうだな。安心したぜ」
主人「がはは! ハナっから心配なんぞしてねえだろうが!」
男「んなことねえよ。それより、夕飯に妹の好きなもんを作ってやることになってな。いつもの食パンを一斤と、バターパンを四つ。それから、チョコレートパンを四つに、夕飯の野菜スープに合いそうなパンを適当に、頼めるか?」
主人「お、今日は気前がいいな! よおし、任せておきな。すぐに焼きたてを揃えてやるよ!」
男「サンキュー。妹に、好きな物言えっつったら、すぐにここの名前出したからよ。妹をガッカリさせるようなパンはやめてくれよ?」ハハハ
主人「くう、妹ちゃんにそこまで言われてるんじゃあ、下手なものは出せねえな! 任せろ、今までで一番のパンにしてやるよ! オメエにも後で焼き損じでよけりゃあ恵んでやっからよ! そこで待ってな!」ノッシノッシ
男「おう。・・・さて、パンを買ったら買い物は終わり。どこに遊びに連れて行ってやろうか」
奥さん『ほら妹ちゃん! 良かったらおじさんと一緒にパンを焼いていくかい?』
妹『・・・うん、焼いてみる』
奥さん『よしよし、ちょっと待ってるんだよ。アンター、妹ちゃんも焼くって! アタシゃ配達に行くけど、怪我なんかしないように、ちゃんと見てあげるんだよ!』
主人『あいよー! 妹ちゃん、おじさんが教えてあげるから、そこに掛かってるエプロン着けて、こっちにおいで!』
妹『・・・はーい』
男「おいおい、そう来るか」
奥さん「ああ男。いらっしゃい」スタスタ
男「こんにちは、おばさん。いつも悪いな」
奥さん「いいんだよ、水臭いね。ところでアンタ、相変わらずふらふらしてるのかい? ダメだよ、妹ちゃんがいるんだ、しっかり働かないと」
男「分かってるよ。ちゃんとやってるさ。これでも結構評判なんだぜ? 俺の『何でも屋』」
奥さん「何でも屋なんて、金さえ貰えれば汚れ仕事だって引き受けそうな、いやらしい仕事に聞こえるよ?」
男「ちゃんと仕事は選んでるさ」
奥さん「ならいいけどね。・・・それより、妹ちゃんはまだ・・・?」
男「ああ。・・・まだ二年前より前の記憶は戻ってないと思う」
奥さん「まあ、あんな目に遭ったんだ、無理もないけどねえ」
男「・・・ああ」
奥さん「ああ、アンタを責めてる訳じゃないよ? アンタはむしろ良くやっているよ」
男「でも、あの時もっと早くに動いていれば、妹も、あの村の皆も、もっと助けられた筈だったんだ・・・」
奥さん「・・・男。いつまでも過ぎた過去を悔やむんじゃないよ」
男「分かってる。悔やむな、後悔はただ背負って前を見ろ、だろ?」
奥さん「分かってるじゃないか。その通りだよ」
男「そりゃ何度も言われてたら覚えるさ」
奥さん「後悔なんてして後ろや下を見てばかりだと、足下取られるだけさ。かと言って捨てられるものでもない。だったら、背中に背負って前を向いていた方が、重くたって随分マシってもんだよ。どんな後悔だって、アタシより重くなる筈無いからね!」
男「はは。そうだな」
奥さん「正直な子だねえ。それじゃあアタシは配達に行ってくるからね。もう少し待ってな」ガチャ カランカラン
男「行ってらっしゃい、と・・・」バタン
主人『おお、妹ちゃん上手だなあ!』
妹『・・・お兄ちゃんに、焼いてあげるの。いつもお仕事おつかれさま、って』
主人『妹ちゃんは本当にいい子だなあ・・・! こんないい子がいて、男は幸せ者だなあ!』
妹『・・・えへへ』
男「・・・確かにいい子だが、その分、記憶が戻った時が心配だな・・・。とても平静でいられるとは思えない」
ギュウゥ…
男「! ・・・俺も、吹っ切れたつもりでも引き摺ったままか。もう、二年も経つのにな・・・」
つづきはまだかね( `・ω・´)
ー二年前・西の村 入り口ー
戦女神「はあっ!」ズバン!
信者1「があっ!」ドサッ
戦女神「さあ、次は誰です!?」
信者2「ええい怯むな! 我らには魔神様がついておられる!」
信者3「そうだ! 例えここで命を落としたとしても、魔神様復活の暁にはきっと配下として転生できる!」
信者4「今ここで命を散らす事が、魔神様への信心の証明と心得ろ!」
オォォォォー!
武神(男)「くっ、数が多いな!」ズバッ!
戦女神「武神! ここは私の部隊が引き受けますから、貴方達は村人の救助を!」
武神「分かった、任せる! 武神隊、村人の救助行動に入るぞ! 続け!」タッ!
騎士達『はっ!』ドドドドド…!
戦女神「戦女神隊、この場の敵を掃討します! 続きなさい!」
騎士達『了解!』
ー西の村・内部ー
キャー! ウワアァァー! ボォン!
信者5「魔神様召喚の為に!」ズバン!
村人A「ぎゃあ!」ドサッ
村人B「う、うわ、うわああぁ!」ダダッ!
信者6「逃がすか! 大人しく生け贄となれ!」ギリギリギリ… ヒュンッ!
ドスッ!
村人B「ぐえっ!」ズザザー
信者7「よし、次に行くぞ。騎士団も来ている、手早く例の少女を捜せ!」
信者5「ああ、分かって・・・」
武神『いたぞ! 村人の救助を最優先、信者の掃討は後詰めの戦女神隊に任せろ!』
騎士達『了解!』
信者6「なっ、もう来たのか!」
信者7「くっ、流石に騎士団を相手にしては長くは保たなかったか!」
タタタタ…
信者8「おい、こっちだ! 例の少女と思しきガキを見つけた! 騎士団は放っておいて、こっちに来い!」
信者7「おお、そうか! ならば奴らなどこれで・・・さらばだ!」ボウン!
信者8「お前達に構っている暇は無いのでな!」ボウン!
モクモクモクモク…
武神「くっ! 煙幕か!」
騎士D「武神様! いかがしますか!?」
武神「悪いが先に行く! お前達は煙幕を抜けたら散会して、各個に救助行動に入れ!」ダッ!
騎士達『了解!』
武神「くそ、どこに行った・・・?」
ガシャアン!
武神「! あっちか!」タタタ…
ーとある家ー
信者8「見つけたぞ『御子』。魔神様召喚のため、共に来てもらおう」
村長「や、やめてくだされ! この子が何をしたというのじゃ!」
村人C「そ、そうだ! この子は普通の子だ! 御子なんか知るか!」
村人D「そうよ! この子はあんた達とは何の関係も無いわよ!」
信者7「黙れ、その子供は『魔神の御子』。彼女を我らが拠点へとお連れし、その血を捧げることで魔神様はご復活されるのだ!」
少女「ま、魔神なんて知らない! わたしは関係ない!」ガタガタ…
村長「案ずるな・・・! お前はワシらが守ってやるからの・・・!」
信者7「邪魔しても無駄だ。どの道、お前達の血も魔神様の生け贄として頂くからな」
信者6「大人しく死んで、転生を魔神様に祈れ」ドスッ
村長「ぐおお! ぐう・・・!」ボタボタ
少女「そ、村長さん!」
村人C「このお! うおぉぉ!!」ブン!
信者8「うお! ・・・ふん、そんなに早く死にたいのなら、そうするがいい!」ズバッ! ゴトッ
村人C「ぎゃあ! ぐあぁぁ、腕が・・・!」
少女「ひっ・・・!」ゾッ!
村人D「大丈夫、大丈夫よ・・・!」ギュウ…!
少女「もうやだ・・・! いやだよぉ、こんなの・・・!」ガタガタ ブルブル…
村人D「大丈夫、大丈夫だから!」ギュゥウ…!
信者7「チッ、しぶといな。とっとと死・・・がっ!」ゴン!!
村長「こ、この外道共めが! その子らには指一本触れさせんぞ・・・!」フー、フー…!
村人C「は、はは! 村長、だからって、よ・・・! 人の腕、ぶん投げるかよ普通・・・!」ヨロヨロ
少女「! 村長さん! おじさん! 血が・・・!」
村人C「なあに、これ位は何ともないさ」
村長「お前達は絶対に助けるからの・・・!」
信者7「・・・しぶといんだよ、大人しく生け贄になれえ!」ビュン!
ー西の村・路地ー
武神「くそ、さっきの音はどこから・・・」タタタ…
『・・・ぎゃあ!』
武神「! 近い! あいつら、まだ村人達を・・・!」ダッ…
ギャオォォォォオオォオォオォォォォ!!
武神「っ!? これは、地竜の咆哮!? 奴ら竜まで用意してたのか!?」
騎士E「ぶ、武神様! 敵が二頭の地竜を投入! 後方の戦女神隊が一頭を抑えていますが、もう一頭が避難している村人達の方に!」
武神「くそ、あいつでも二頭の地竜は厳しいか!」
騎士F「武神様、どうか地竜の対応を!」
武神「・・・分かった。なら、お前達は向こうの家にいる信者達から村人を救出しろ!」ダッ!
騎士達『はっ!』
ー西の村・入り口ー
戦女神「くっ! よくもまあ地竜を二頭も捕まえられたものですね!」ダンッ! ドオォォン!
地竜1『ギャオォォオォオ!』ブワッ!
騎士G「ぐああっ!」ガシャアン!
戦女神「! 大丈夫で・・・!?」
地竜2『ガァァァアァァア!』ブン!
戦女神「! (尾の振り回し!? しまった、空中じゃ回避も防御も・・・!)」
武神「うおぉぉお!」ザン!
地竜2『ガオォアアァァァ!』ズズゥ…ン!
武神「無事か戦女神!?」スタッ
戦女神「・・・ぶ、無事ですけど。よくあの堅い竜の尻尾をぶった切れますね」スタッ
武神「そんな話は後でいいだろ。今はとにかくあの竜を仕留めるのが先だ。行くぞ」
戦女神「はい。ではそちらはお任せしますよ? 一頭なら、私でも倒せるので」
武神「当然だ。知能の低い地竜の一頭くらいは倒してもらわないとな」
戦女神「そんな言い方・・・。ぞくぞくしますね///」
武神「はいはい。んじゃ行くぞ!」ダンッ!
戦女神「はい! ・・・では、戦女神隊、武神隊の数人は、避難中の村人達の護衛に入って下さい。残った者は、村の中で救助行動に入って下さい」タンッ!
騎士達『了解!』
地竜1『ギャオォォオォオ!』ブン! ゴォォオン!
武神「当たるか! 喰らえ!」ザン!
地竜1『ギャアァァオォ!』
地竜2『ガアァァァアァァ!』ビュン!
戦女神「いくら竜の攻撃でも、ちゃんと防御の体勢が取れれば・・・!」グッ!
ドオン!
地竜2『・・・ガ?』
戦女神「耐えきれます!」ドン!
地竜1『ギャオアァァ・・・。ギャアァアァァォォァオアァァ!』ダッダッダッダッ!
武神「・・・悪いが、お前等に構ってる暇はねえんだ!」ター…ン
地竜1『ギァ?』
武神「沈め・・・! 月影空破斬!」ヒュン…!
地竜1『!!!?』ズバン! ズズゥ…ン!
地竜2『ガアアァァオァァア!』
戦女神「仲間が倒されて怒るのも分かりますが、余所見はいけませんよ?」ググッ!
地竜2『ガアァァァアァァ!』ゴオッ!
戦女神「神威・・・」ガキン!
地竜2『ガッ!?』グラッ…
戦女神「天翔空破弾!」ブオッ! ドッゴオォォォン!
地竜2『ガアァァアァァアッ・・・!?』ドスゥ…ン!
武神「・・・これでここは終わりか?」
戦女神「はい。既にここにいた哨戒の信者達も一掃してあります。・・・それにしても、直径2メートルはある地竜の頸を一刀両断ですか・・・」
武神「長さ2メートルの大戦斧を振り回して逆鱗に叩き込んだお前も相当だろ。なんだよあの神威とかいう技。発動中は無敵かよ」
戦女神「神威は一瞬しか展開出来ませんよ。だから、大技の直前にしか使いません」
武神「そうかよ。・・・じゃあ、俺は村の中の逃げ遅れた人達や信者の残党がいないか見てくる」
戦女神「分かりました。では、私はここで負傷者の手当をしておきます」
武神「頼む」タタタ…
ー西の村・とある家の跡地ー
武神「何だこれは・・・」
ガラーン… ザッ
騎士E「ぶ、『武神』様・・・!」ヨロ…
武神「! どうした、何があった? 他には誰もいないのか?」
騎士E「そ、それが・・・」ヨロヨロ…
ー十数分前・とある家ー
信者7『しぶといんだよ、大人しく生け贄になれえ!』ビュン!
ズバッ! ゴトリ…
村人C『そ、村長!』
少女『ひっ、い、いやぁぁあぁぁ!!』ガタガタガタガタ
村人D『少女ちゃん! 落ち着いて!』ギュウ
信者6『次はお前達だ』チャキッ
村人C『くそお・・・!』ジリ…ジリ…
バアン!
騎士F『そこまでだ!』
騎士E『大人しく投降しろ!』
村人C『き、騎士様? た、助かった、のか・・・?』ドサッ
少女『お、おじさぁん! いやあぁぁあ!』
村人D『大丈夫よ少女ちゃん! 血を流しすぎて気を失っているだけ・・・!』
騎士E『(敵は三人、要救助者も三人。内一人はかなり危険な状態だ。だが、こちらは二人。・・・く、敵を倒してから助けるしかないか)』
村人D『騎士様! どうかこの子を・・・!』
騎士F『ええ、分かっています! 少しだけお待ち下さい!』スラッ
騎士E『投降しないのなら、貴様等を斬る!』スラッ
信者8『ふん、貴様等も共に魔神様の生け贄にしてやる!』チャッ
信者7『死ねえ!』ビュッ!
騎士E『くっ!』ギィン!
信者6『魔神様ご復活の為に!』ブン!
騎士F『魔神なんてものはいない! いい加減に目を覚ましたらどうだ!?』ギン!
信者8『何を言う! 魔神様は存在しておられる! その子供こそ魔神様の遺児!』
信者7『そうとも! 我らは魔神様を召喚し、そのお力をお借りすることで、この世界の支配者となる!』ギン!
騎士E『くだらない戯れ言を!』ギイン!
信者6『何をぉ!?』ギリギリ… ヒュンッ!
騎士F『なっ、ボウガン!? ぐおっ!』ドスッ! ドサッ
騎士E『!! くっそお!』ギン ズバッ!
信者7『ぎゃっ!』ドサ
騎士E「これで、残りはお前等だ! こっちも一人だが、これでも騎士だ! お前達が二人いた所で遅れは取らんぞ! 死にたくなければ投降しろ! 命まで奪おうとは言わない!」
信者8『ふん、死など恐れん! 死した後、魔神様さえご復活されれば、我らは再びの生を授けられるのだからな!』
騎士E『く、狂ってやがる・・・!』
信者6『魔神様を理解できぬ凡夫が! お前も仲間と同じところに行くがいい!』ギリギリ… ヒュンッ!
騎士E『! 喰らうか!』ダン!
ヒュウッ!
村人D『! 少女ちゃん、逃げ・・・!』ドスッ
ビシャッ! バタッ
少女『・・・え?』ポタ…ポタ…
騎士E『しまった!』
信者6『ふん、ざまあないな騎士様! お前のせいで、民が一人死んだぞ!』
信者8『次は貴様だ! 死ねえ!』ダッ!
騎士E『くそ、くそお!』ギュウ!
少女『・・・待て』ボソッ
信者8『!!?』ゾクッ! ズザザー…
信者6『な、何だ今の感覚は!?』
騎士E『(これは・・・殺気!? な、何という密度の殺気だ! 呼吸すらままならない程の、純粋な殺意がここに満ちている・・・!)』ガタガタ
少女『・・・お前達、ガ。コロした、の、カ?』ヨロ…ヨロ…
信者8『な、何だお前は・・・!』カタカタカタカタ…
少女『村長モ、オジサンモ、オネエチャン、も。 みン な コろシタ ナ? 』
信者6『ひ、ひい! く、来るな!』ギリギリ… ヒュンッ!
少女『・・・』ギロ
ボンッ! サラサラサラ…
騎士E『(!? 飛んでいった矢が、粉々に砕けた!?)』
少女『ソの矢デ、オネエチャン を ウッたな』スッ
信者6『あ、ぅああ・・・! く、来るな、触るなあ!』ガタガタ
少女『オまエモ 消エて シマエ』ピト
信者6『い、いやだいやだいやガッ・・・!?』ボンッ! サラサラサラ…
騎士E『(な、何だ!? 何が起こって・・・!?)』
信者8『・・・は、はは、アハハハハ! ヒァハハハハ! ほ、ほら見ろ! 魔神様のお力だ! 魔神様は本当にいるんだ!』
少女『・・・』ギロッ
信者8『はは、クハハハハ! 魔神の御子! やはりあなたは・・・!』
少女『・・・オマえモ モう イナクなレ』ピト
信者8『キュハハハハ! 魔神様! 私は今すぐ! あなたの元にっ・・・!』ボンッ! サラサラサラ
少女『・・・』
騎士E『な、何だ、お前は・・・?』ガタガタ…
少女『・・・ゃん』ボソッ
騎士E『・・・?』
少女『・・・村長さん、オジサン、お姉ちゃん・・・』ブツブツ…
騎士E『! そうだ、あの男性はまだ助かる筈・・・! 急がなければ!』ヨロ、ヨロ…
少女『ァあ・・・。ウゥ、ゥアァァぁァあァア!』ゴッ!
騎士E『なにっ!? ぐわあっ!』ドオン! ガンッ!
騎士E『・・・な、に・・・が・・・』ガクッ
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
武神「それで、今さっき気が付いたと」
騎士E「は、はい・・・」
武神「それで、お前は何ともないな?」
騎士E「は、はい。私も消されたのかと思いましたが、こうして無事です」
武神「・・・そうか、良かった」
騎士E「しかし、私は村人も、同胞さえ守れませんでした・・・」
武神「・・・すまなかった。俺がもっと早く動ければよかった」
騎士E「と、とんでもないです。私達の力が及ばなかった。それだけです・・・」
武神「・・・後で必ず、村人やアイツの亡骸を弔おう。だが、まず先に今回の件だ」
騎士E「・・・はい」
武神「それで、その少女がどこに行ったか分かるか?」
騎士E「い、いえ」
武神「一種の暴走状態に陥っているその子を、放置するわけにはいかない。一緒に探してくれ」
騎士E「はい!」
ボウン! ザアァァー
武神「! 家が灰に!?」
騎士E「あ、あれです! 恐らく、あそこにその少女が!」
武神「探す手間が省けた! お前は戦女神隊と合流、状況報告を頼む! あとの判断はアイツに任せろ!」
騎士E「り、了解! どうかお気を付けて!」
武神「ああ!」ダダッ!
ー西の村、中央広場ー
少女「だレも イナイ・・・」ヨロ…ヨロ…
少女「ワたシハ マタ ヒトりきリ・・・?」
少女「ウゥ・・・。ゥアァァァ!」ゴッ! ボウン! ザアァァ…
武神「見つけた! おい、待て!」
少女「・・・? オマえハ ダレだ?」
武神「王国近衛騎士団、序列第零位『武神』。お前を助けに来た」
少女「ワタシヲ タスケに?」
武神「そうだ」
少女「! グウッ!」ズキン!
武神「どうした!?」
少女「・・・タすケニ クルノなラ ナゼ もットハやク きてクレナかッタノ!?」
武神「・・・すまない」
少女「ミンな みんな イなくなった・・・」
武神「村人達の何人かは逃げられた。もしかしたら、その中にお前の家族がいるかも知れない」
少女「ワタシに カゾくは いナイ ソンちょウ と オジサンと オネえちゃンが カぞクだッタ」
武神「・・・」
少女「モう イやだ ・・・わタシが なニヲしタの・・・?」ポロポロ
武神「・・・お前は悪くない。悪いのは俺だ」
少女「エ・・・?」ポロポロ
武神「俺が、お前達を助けに行けば良かったんだ。竜が出ていようが、『戦女神』がいるなら持ちこたえられた筈だ。なのに俺は、お前じゃなく『戦女神』を助けに行ったんだ。俺が、あの時お前を助けていれば・・・」
少女「オマえガ オマエの おマエのセイでェッ・・・!」ゴッ!
武神「・・・言い訳はしない。だが、償いはする!」ダッ!
少女「オマえモ イナくなレエェェェエェェェエ!」ゴオォォッ!
武神「・・・御免!」ヒュッ…
少女「!? キえ・・・っ !」トンッ! ガクン
ガシッ
武神「・・・」
少女「・・・ナゼ ワタしたチヲ タスケて クレナカったノ・・・?」ツゥー…
武神「・・すまない。騎士団としての役目が、矜持がそうさせた・・・」
少女「ダカら ワタシハ ヒトりキりに ナった・・・」ポロ…ポロ…
武神「・・・すまない」
少女「かぞクが イなくナッた。・・・ミンな イナくナッた。 ワタシは、どうシタラいイの・・・?」ポロポロ
武神「・・・俺はお前の家族を守れなかった。・・・だから、俺がお前の家族になる」ギュウ…
少女「・・・ホンとウ?」
武神「・・・俺はお前に嘘は吐かない。俺は、お前の家族だ」
少女「・・・ウれ、しい・・・」ポロポロ
武神「今は眠れ。俺が傍にいるから・・・」
少女「ありが、とう・・・。おにい、ちゃん・・・」スゥ…
騎士E「『戦女神』様! こちらです!」ダダダダ…
戦女神「触れたものを灰に変える力。 『武神』、どうか無事で・・・」タタタタ…
戦女神「!」
ヒュオォォォー……
武神「・・・」
戦女神「・・・ぶ、『武神』?」
武神「・・・んだ!」ギリッ
戦女神「え?」
武神「・・・何が、武神だ・・・!」
武神「何が、序列第零位だ・・・!」
武神「何が騎士団の矜持だっ・・・!」
戦女神「・・・男・・・」
武神「・・・俺は、俺は・・・!」
武神「クソオォォォォォォ!!!」
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
戦女神「そして、この作戦の後、彼は騎士団を脱退。現在は、その少女と共に王都の下町で生活しています」
幻夢「そ、そんなことが・・・」
樹王「・・・!」ダバー
獣牙「うお! じ、じゅおー、大丈夫か?」
樹王「ぐすっ、え、ええ、大丈夫、ひくっ、ですっ・・・」ズビズビ
戦鬼「確かに重いっちゃ重かったが、そこまで泣くか?」
樹王「く、悔しいんです! 当時、私は別の任務で現場に行けませんでした。それが悔しくて・・・!」グスッ ヒック
水薫「『樹王』君・・・」
土蜘蛛「んー、でも、正直そんな事はざらにあるッスよね」
竜騎「うむ。故に我等も何度も説いたのだ。時には致し方ない事とてあるのだと」
姫巫女「だが、いくら言っても聞かなんだ」
死影「あれ以上止めようとしたら、果たして私達の内何人が、今ここにいられたかしらねぇ・・・?」
焔姫「そ、そんなにですか!?」
樹王「彼の意志は、とても固かったんです・・・」グスン
戦女神「彼女と交わした約束を、決して違えるわけにはいかないから、と」
月詠「・・・それで、今に至る」
武御雷「ハッ! 序列第零位だなンて言うからどンな野郎かと思えば、単なる甘ちゃンじゃねェか」
樹王「そ、そんな事無いです! 彼は、とても優しい人なんです・・・っ」
幻夢「・・・『樹王』さ、やっぱり『武神』さんが好きなの?」
水薫「なっ!? そ、そんな訳・・・」
樹王「・・・え、ええ、そうです。私は、彼のことを・・・。心から、想っています。・・・彼は、私を助けてくれたんです。暗い暗い、闇の中から・・・///」グスッ ニコリ
水薫「・・・!」ガーン!
戦女神「・・・!」ガーン!
姫巫女「・・・分かったから、早よう話を進めんか?」
死影「う、ふふ。若いわねぇ・・・」
月詠「・・・わ、私も、まだ若い・・・!」
戦鬼「おいおい、ぶり返さないでくれよ? つく姉」
焔姫「(い、『戦女神』さんと『樹王』さんが好きになる人って、どんな人なんだろう?)」
竜騎「私から言えば、『武御雷』の言う通り、『武神』は甘いな」
土蜘蛛「悪いことでは無いんでしょうけどねえ・・・」
戦女神「まあとにかく。そういうことで、彼は騎士団に戻る気は無いそうです」
樹王「そう、ですか・・・」
焔姫「それで、彼は今何をされてるんですか?」
戦女神「はい、下町で何でも屋を営んでいます」
姫巫女「何でも屋? 金さえ貰えればどんな仕事でもするという?」
戦鬼「なんかいかがわしく聞こえるな」
戦女神「ええ。でも、ちゃんと仕事は選んでいるみたいですし、普通に暮らしていますよ」
死影「と言うか、それなら武神を雇ってしまえばいいんじゃないかしらぁ・・・?」
獣牙「おお、それはいいと思うぞ! ぶしんと一緒に戦えば、一気に強くなる!」
武御雷「だかよ、騎士団が何でも屋を雇ったりしていいのかよ?」
水薫「・・・正直迎えたくはないが。客員騎士という立場にしてみてはどうだろうか、『戦女神』?」
戦女神「・・・そうですね。実を言うと、それも考えてはいました。また後で彼と会った際、伝えてみます」
姫巫女「まあ、最悪の場合は王にお頼み申し上げて、勅命状でも書いて頂けばよかろう」
幻夢「そうだねー! そうしたら断れないもんね!」
戦女神「はい。では、これにて今回の会議を終わりたいと思います。王の護衛は、我々で常に警戒すること。それから、三日後の国民への通達事項の確認とその準備。開かれるであろう隣国との戦端への準備。皆さん、くれぐれも抜かりなきようお願いします」
全員『了解』
戦女神「では。解散!」
ガタガタ ゾロゾロ
戦鬼「ん、あれ? あ、やっぱりつく姉寝てるよ・・・」
月詠「すぴー・・・すぴー・・・」zzZ zzZ
焔姫「今日は珍しく会議の間ずっと起きてたもんね。弟、『月詠』さんを部屋まで運ぶわよ」
戦鬼「あーいよ。よっ、と。んじゃあ、『戦女神』の姉ちゃんに、皆。お疲れー」ヒョイッ スタスタ
焔姫「お疲れ様でした! 失礼します!」トコトコ
姫巫女「では、妾も戻るとするかの。皆の者、またの」スタスタ
死影「うふふ。またねぇ・・・? くれぐれも暗殺者には気を付けるのよぉ・・・?」クスクス
幻夢「じゃあ僕もかーえろ! それじゃあ、また、三日後に!」スゥー…
竜騎「『幻夢』め、また幻を使って会議に出席しておったか。後で見つけて懲らしめてやらねば。では、失礼する」スタスタ
土蜘蛛「そッスね。アイツの気楽なところ、嫌いじゃないッスけど、切り替えはしっかりしないといけないッスよ。ということで、オイラも付いて行くッス。皆さん、それじゃあまたー」ヒラヒラ スタスタ
水薫「さて、それじゃあ僕も失礼するよ。『樹王』君、会いたくなったらいつでも連絡してくれて構わないからね? ボクはいつまでも待っているよ」キラーン スタスタ
獣牙「・・・アイツ、いつも気持ち悪いな!」
樹王「『獣牙』ちゃん、はっきり言い過ぎですよ!」
武御雷「・・・テメエも中々ひでェな」
樹王「え、そ、そうですか?」
獣牙「まあいいや! アタシ、お腹すいた! 食堂に行こー! タケミカヅチも!」
樹王「あ、ごめんなさい『獣牙』ちゃん。私は『戦女神』さんと少しお話があるので、先に行っていてくれますか?」
武御雷「てか、オレもかよ・・・」
獣牙「そうなのか! 分かった。じゃあ、アタシとタケミカヅチで行ってるな! 後で来るんだぞ!」スタスタ ガシッ ズルズル
武御雷「ちょ、待て『獣牙』! オレは行くとは言ってねェぞ! てか引きずンな! テメエで歩ける!」ズルズル
樹王「・・・さて、と」クル
樹王「『戦女神』さん、お話があります」
戦女神「はい、何でしょう、『樹王』」
樹王「彼の、『武神』様の居場所を教えてください」
戦女神「・・・やはり、その事ですか」
樹王「私だって、彼にもう一度会いたいです! 会わせてください!」
戦女神「そうですね。あなたも『武神』が好きなようですし、知りたいですよね・・・」
樹王「は、はい! 是非!」
戦女神「・・・分かりました。今夜『武神』の家に行こうと思っていたので、一緒に行きましょう。・・・そうですね、蛇の刻に正門前で落ち合いましょう」
樹王「! はい!」
乙
期待してるぞ
ー中央区・パン・ド・VIPー
男「あれからまだ二年なのか、もう二年なのか・・・」
主人『よし、妹ちゃん! パンが焼けたぞ! ほれ、男の所に持ってってあげな!』
妹『・・・うん、ありがとう、おじさん。行ってくる』テトテト
男「あいつに記憶が戻ったら、家族を守ってやれなかった俺を、恨むかな・・・」
ギイ テトテト
妹「・・・お兄ちゃん、パンが焼けたよ。食べてみて」
男「・・・おお。頂きます」スッ
ヒョイッ
男「? くれないのか?」
妹「・・・わすれてた。はいお兄ちゃん、あーん」
男「おいおい、自分で食べられるよ」
妹「・・・いいの。はい、あーん」
男「ったく。・・・あーん」パクッ モグモグ
妹「・・・どう、かな。おいしい?」
男「うん、美味いぞ! 妹はパンを焼くのも上手なんだな」ナデナデ
妹「・・・えへへ。わたしね? お兄ちゃんに食べてもらいたくて頑張ったんだよ。いつもお仕事おつかれさま、って。おいしくなあれ、っていっぱい気持ちを込めて作ったんだよ」
男「ああ、とても美味かったぞ」
妹「・・・元気、出た?」
男「え?」
妹「・・・お兄ちゃん、元気がないように見えたの」
男「!」
妹「・・・元気、出た?」
男「・・・ああ、最高に元気が出たぞ!」ヒョイッ グルグルー!
妹「・・・わあ! あははー!」グルグルー
主人「おいおい、一応食べ物を扱ってるんだ。あまり店の中で暴れてくれるなよ?」ノッシノッシ
男「ああ、悪い悪い。妹、一度降ろすぞ」ストン
妹「・・・お兄ちゃん、またやってね?」
男「おうよ」
主人「がはは! 良かったなあ妹ちゃん! そんじゃあ、これ、注文のパンな!」
男「いつも助かるよ。これ、勘定な」チャリン
主人「毎度! って、もう行くのか?」
男「ああ。これから妹と遊びにな」
妹「・・・行ってくるの」
主人「そいつぁ良かったなあ、妹ちゃん! そんじゃあ気を付けてな! またいつでも来いよ! 余りもんでよけりゃあ、パンを出してやっからよ!」
男「ああ、また来るよ。それじゃあな」ガチャッ カランカラン
妹「・・・おじさん、いってきます」フリフリ トコトコ
主人「おう、行ってらっしゃい!」
バタン カランカラン
主人「・・・娘、欲しかったなあ」
本日はこれにて、投下を終わりたいと思います。閲覧してくださった方、レスを付けてくださった方、本当に有り難う御座いました。特にレスを付けてくださった方、励みになっております。有り難う御座います。
現在オーストラリアに留学中の為、更新は不定期ですが、気が向いたときにでもご覧頂けたら嬉しいです。
前作、『男「んぁ? ここは・・・」犬娘「に、人間!?」』も宜しければご覧ください。
宣伝失礼しました。それでは、お休みなさい。
すごいなオーストラリアとか
おつ
ー中央区・中央通りー
ガヤガヤ ザワザワ
男「さて、妹。これから遊びに行こうと思うわけだが、どこに行きたい?」
妹「・・・お兄ちゃんと一緒ならどこでもいいよ? でも、肩車して欲しいな」
男「んー、そうか? んじゃまあ、適当にぶらぶらと行きますか」ヒョイッ
妹「・・・うん!」エヘヘ
ー数時間後ー
男「いやー、たまにはこんな休日もいいよなあ」スタスタ
妹「・・・お兄ちゃん、最近お休みなかったからね」
男「まあ、何でも屋なんて商売、休みが無いのは有り難いんだけどな」
妹「・・・お兄ちゃん」
男「んー?」
妹「・・・そういえばお兄ちゃんは、今朝のあの女の人とケッコンするの?」
男「!? ・・・な、何でだ?」
妹「・・・あの人、お兄ちゃんのことが好きなように見えたから」
男「ははは、無い無い。俺はそんな気無いし、向こうだってこんなどこにでもいそうな奴、気にもしてないよ」
妹「・・・そうかなあ?」
男「何で気になるんだ?」
妹「・・・だって・・・」
男「いいか、妹。俺は、お前の家族だ」
妹「・・・うん」
男「仮にな? 仮に、俺が誰かと結婚するような話になっても、まずお前に相談するし、お前を一人にはしないさ」
妹「・・・ほんとに?」
男「ああ。てか、妹も知ってるだろ? 俺はとんでもない寝坊助だ」
妹「・・・うん。お兄ちゃんは、おねぼうさん」
男「そうなんだよなあ。だから、そもそもそんな男を好きになるような女なんていないさ」
妹「・・・お兄ちゃんは、おねぼうさんだけど、かっこいいよ?」
男「ああ、ありがとな」
妹「・・・でも、おねぼうさんはいけないことです。お兄ちゃん、もっとしっかりしてくださいっ」ペシペシ
男「ああ、お前の言う通りだな」ハハハ
妹「・・・で、でも、お兄ちゃんがだめだめでも、わたしがずっと一緒にいてあげるから、ね・・・?///」テレテレ
男「お、そいつは助かるな。これからも頼むぞ、妹」
妹「・・・うんっ!」
ワーワー! キャー!
男「ん、向こうが何か騒がしいな。何をやっているか見えるか?」
ンダゴラァ! ソッチコソナンダコラ!
妹「・・・んー、とね。・・・噴水広場で、ケンカ、みたいだよ」
男「あー、そろそろ夕方だし、酒でも入ったか・・・?」
妹「・・・お兄ちゃん、止められる?」
男「妹は、どうしたい?」
妹「・・・わたしは、止めたいよ。痛いのも、誰かが痛くなるのも、嫌いだから・・・」
男「了解。んじゃ、さくっと止めますか。少し怖いかも知れないけど、我慢できるか?」
妹「・・・お兄ちゃんと一緒なら、だいじょうぶっ」グッ
男「んじゃ、そのまま乗っててくれ。・・・はいはーい、ちょいとごめんよー!」スタスタ
妹「・・・通りまーす」
ー中央区・噴水広場ー
酔っ払い1「おいゴラア! テメ、人にぶつかっといて、あいさつの一つも出来ねえのかァ!?/////」ヒック
酔っ払い2「何ほざいてんじゃボケえ! さぁきにぶつかって来たんはおまんじゃろうがあ!/////」ウイッ ヒック
野次馬1『お、おい。誰か止めろよ』
野次馬2『お、お前が行けよ!』
野次馬3『てか、騎士団に通報した方がよくね!?』
ガヤガヤ ザワザワ
男「はいはい、通るんでごめんよっと。・・・あー、お二人さん。いったん落ち着きな」
妹「・・・ケンカは、だめ」
ザワッ!?
野次馬4『ち、ちょっと誰よあの人!』
野次馬5『子連れで喧嘩の仲裁かよ!』
酔っ払い1「んだ小僧ぉ? テメエもオレにケンカ売ってんのかァ!?/////」アァン!?
酔っ払い2「ガキは引っ込んじょれや!/////」オォン!?
野次馬1『お、おいやべえって!』
野次馬6『騎士団はまだなの・・・?』
男「まあまあ。酒が入って頭に血が上るのも分かるが、少し落ち着けって。衆人環視のど真ん中で、恥ずかしいぞ? いい年したオッサンが騒いでると」
野次馬3『お、おい!』
野次馬2『あ、アイツ怪我するぞ!?』
酔っ払い1「おう小僧! オレをバカにした罰、受けてもらうぞゴラア!」ブン!
酔っ払い2「そうじゃガキィ! ワシの事をバカにしたんじゃ、あの世で後悔しりゃあ!」ゴッ!
野次馬4『きゃー!』
野次馬6『逝ったーー!』
男「ったく、これだから・・・!」ヒョイッ ヒョイッ
酔っ払い1「なっ・・・。がっ!」トンッ
男「酔っ払いは・・・」
酔っ払い2「避けっ・・・!? っ!」トンッ
ドサドサッ
男「・・・嫌いなんだよな」パン、パン
妹「・・・お兄ちゃん、お見事」パチパチ
男「仕事でたまにあるからな。酔っ払いの片付けは」
野次馬3『な、何だあいつ。子どもを肩車したまま一瞬で・・・』
野次馬5『め、滅茶苦茶強え!』
ウオオォォーー!! スゲー! カッコイー!
男「参ったな。少し目立っちまったか」ポリポリ
妹「・・・お兄ちゃんは、ヒーロー」パチパチ
男「あんまりこういうのは好きじゃないんだがな。さっさと退散するか」
妹「・・・うん。そろそろ、お夕飯の時間」
???『通してください! 騎士団の者です!』
???『通報を受けて来ました! 通してください!』
妹「・・・お兄ちゃん、今の声・・・」
男「・・・妹、早く帰って飯にしよう。今日はもう暗くなってきた」ソロソロ
???「あ、男! 何でここに!?」
???「ぶ、『武神』様!?」
男「・・・お前こそ、騎士団のお偉いさんが何でここにいるんだよ、女」
女(戦女神)「何でって。丁度あなたの家に向かおうとしていたところに通報が入ったので、ついでに片付けてから行こうと思ったんですよ」
妹「・・・朝のお姉さん、こんばんは」ペコリ
女「あ、はい。妹ちゃん、こんばんは」
樹王「『武神』様・・・///」ポー…
妹「・・・おとなりのお姉さんは、初めまして」ペコリ
樹王「・・・へっ!? あ、は、はい、初めまして! わ、私、えと、その・・・!」アタフタ
妹「・・・?」
男「女、お前の部下か?」
女「ええ。その、13人の一人です・・・」ボソッ
男「ああ、成る程な。初めまして、男だ」
妹「・・・妹です」
樹王「は、はい。わ、私は『樹王』といいます! よ、よろしくお願いしま・・・え? は、初めまして・・・?」ポカン
男「ん? 何か言ったか?」
樹王「・・・いえ、何でもないです。すいません・・・」ズーーン…
男「? んで、女。何で俺の家に来ようとしてたんだ?」
女「ええ、その。久し振りに食事でも一緒にどうかと思いまして」
男「あー、成る程な」
樹王「そ、そうですよね・・・。忘れてますよね、結構前の話ですし・・・。あの頃はまだ一騎士でしたし、記憶に残ってる訳無いですよね・・・」ドヨーン… ブツブツ…
男「あー、あっちで何か呟いてる彼女もか?」
女「え、ええ。・・・どうでしょうか?」
男「んー、悪いが、今日は妹に付き合う約束でな。悪いがまた今度に・・・」
妹「・・・お兄ちゃん、一緒でいいよ?」
男「いいのか?」
妹「・・・うん。皆で食べると、おいしいよ?」
女「い、妹ちゃん・・・! 有り難う・・・!」ジーン…!
樹王「私、少し自惚れてたのかな・・・? ううん、忘れられていてもいいじゃない・・・。私は覚えていた。そしてまた会えた・・・。それで充分な筈です・・・!」ブツブツ…
男「あの人、少し怖いんだが・・・。いつもああなのか?」
女「い、いえ。初めて見ました・・・」
男「まあいいか。ええと、おーい、『樹王』、だっけ? お前も来るんだろ? 行くぞ?」
樹王「頑張れ私・・・。まだやれ・・・は、はい!? な、何でしょう?」ア、アハハ
男「いやだから。飯食いに。来るだろ?」
樹王「は、はい。是非!」
男「んじゃ行くか。ってか、通報受けて来てるんだから、酔っ払いの処理はちゃんと・・・」
女「終わらせてあります」
男「早っ!」
妹「・・・いつの間にか、おじさん達がいない」
樹王「あらかじめ部下を何人か連れてきていたので、彼らに任せました」
男「いいのかよ、騎士様がそんなんで・・・」
女「元々、今の時間帯はプライベートタイムですし、問題ありません」
樹王「はい、平気です」
男「ならいいんだけどよ・・・。んじゃ、行くとしますか」
妹「・・・おいしいご飯が待ってます」ウキウキ
ー男の家ー
男「ただいまー」ガチャッ
妹「・・・ただいま」トテトテ
女「おじゃまします」
樹王「お、おじゃまします・・・!」ドキドキ
男「んじゃあ、今から飯作るから。舌に合わなくても文句は言うなよ?」
女「あなたの料理なら大丈夫ですよ」
樹王「た、楽しみにしてます!」
男「あー、変な期待はすんなよ? 妹、先に手を洗ってきな。俺はこれから料理するから」
妹「・・・行ってくる」トテトテ
男「・・・さて、『樹王』とやら」
樹王「は、はい『武神』様!」
男「悪いが、俺はもう『武神』なんて大それたものじゃない。普通に男と呼んでくれ。妹に知られたくない」
樹王「! わ、分かりました・・・。そ、その、男様・・・///」
男「いや、普通に男でいいよ」
樹王「い、いえ! そういう訳には!」ブンブン!
女「すいません、来る前に言い聞かせてはいたのですが・・・」
男「こいつ、『武神ファン』か・・・?」
女「ああ、そんなのもいましたねえ・・・。でも、彼女は違いますよ。もっと別の意志で来ています。決して迷惑にはならないと思いますよ?」
男「まあ、お前が連れてくるってことは、問題ない人物だ、ってことだろ。そこは信頼してるさ」
女「お、男。そこまで私を信頼して・・・!」ジーン!
男「まあ、な。ほら、先に座って待っていてくれ。もう始めるから」カチッカチッ ボウッ!
女「はいっ」スタスタ
樹王「・・・男様。えへへ、『称号』じゃない本当のお名前、教えて頂いちゃいました・・・///」
女「『樹王』? 行きますよ?」
樹王「男様・・・えっ? あ、はい、今行きます!」アタフタ
女「・・・『樹王』、あなたいつもとキャラが違いませんか?」
樹王「す、すいません・・・///」
トテトテ
妹「・・・お兄ちゃん、手、洗いおわった」
男「お、そうか。んじゃあ、向こうでお姉ちゃん達に遊んでもらってな」ジュワアァァーー!
妹「・・・わかった。カード取ってくる」
男「おう、お姉ちゃん達がもう無理って言うまで負かしてやれ」
妹「・・・がんばる」トテトテ
ー男の家・リビングー
女「(むう、最初の計画から大きくズレてしまいました・・・)」
樹王「(こ、ここが『武し』・・・男様の家)」キョロキョロ
女「(もっと遅く、妹ちゃんが寝ている時間くらいに来れば、イジメて貰えると思ったのですが・・・)」
樹王「(それにしても、『戦女神』さんと男様、さっきは凄く仲が良さそうでした・・・)」
女「(ああ、もうここ暫くずっとイジメてもらっていません・・・。次にイジメてもらえるのは、いつになるのでしょうか・・・)」ハァ…
樹王「(や、やっぱり、お二人はお付き合いされているのでしょうか・・・? だとしたら、記憶にすら残っていなかった私は・・・)」ハァ…
二人『はあ・・・』
樹王かわいい
妹「・・・お姉ちゃん達、カードやろ?」トテトテ
女「・・・え? あ、そうですね。やりましょうか」
樹王「懐かしいですね。昔はよくやったものです」
妹「・・・じゃあ、ばばぬきから」シャッシャッシャッシャッ
女「妹ちゃん、カード切るの上手ですね」
樹王「カードでよく遊ぶんですか?」
妹「・・・うん。学校のみんなと、休み時間によくやるの」ダン バララララララ…
樹王「う、上手いというか、もはやプロ並みの手際ですね・・・」
妹「・・・お兄ちゃんに、教わったの」シャッシャッシャッシャッ バララララララ ピタッ
女「お、お見事・・・」パチパチ
妹「・・・/// じ、じゃあ、配るね」サッサッサッサッ…
樹王「配るのも早い・・・」
女「これも男が?」
妹「・・・うん。お兄ちゃんは、何でも知ってる」サッサッサッサッ…
ジャーン
妹「・・・それじゃあ、ばばぬきを始めます」フンス
女「それじゃあ、妹ちゃんからどうぞ?」スッ
妹「・・・これ」サッ
女「どうですか?」
妹「・・・ざんねん、はずれ」
樹王「じゃあ、次は私が失礼しますね、妹ちゃん」
妹「・・・どうぞ」スッ
樹王「さあて、どれを取ろうかなー?」チラッ
妹「・・・」
樹王「これ・・・いや、こっちですかね? それともこっち?」スッ スッ チラッ
妹「・・・」
樹王「(ま、全く表情が読めない・・・!)」タラー…
妹「・・・? 取らないの?」
樹王「えっ!? あ、ああ、それじゃあ・・・これっ!」ピッ
ババ
樹王「・・・」ズーン…
女「(ババを引きましたか、『樹王』・・・)」
シャッシャッシャッシャッ
樹王「お、女さん、どうぞ!」サッ
女「(成る程、一度混ぜてババの位置を判り辛くするのですね。しかし・・・)では、このカード・・・」チラッ
樹王「・・・!」パアァァー!
戦女神「・・・の隣のこちらにします」スッ
樹王「・・・」ズーーン…
女「(・・・『樹王』、あなたはこのゲームには向いていませんよ・・・)」
女「それじゃあ妹ちゃん、どうぞ?」スッ
妹「・・・これ」サッ
樹王「早い!?」
妹「・・・ワンペアクリア」パラッ
樹王「や、やりますね妹ちゃん! しかし、次は私もワンペアクリアする筈です!」
妹「・・・どうぞ」スッ
樹王「(さっきの1ターンで、妹ちゃんの表情からカードの位置を割り当てるのは不可能と分かりました!)」ジー…
妹「・・・どうぞ?」
樹王「(なら、自分の勘を信じるまでです!)では、そこのカードを!」サッ!
樹王「・・・」ズーーーン…
女「(この手札の多さで二回連続外すとは。今日の『樹王』はついていませんね)」
樹王「お、女さん。どうぞ・・・」スッ
女「・・・では、これを」サッ
樹王「ど、どうですか?」
女「ワンペアクリアです」パラッ
樹王「な、何故ですか!?」
女「何故と言われても・・・」スッ
妹「・・・もうワンペア」サッ パラッ
樹王「つ、次こそ・・・!」
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
樹王「・・・」シクシクシクシク…
女「・・・結局、その後全てのゲームにおいて連敗ですか・・・」
樹王「・・・私、自分でもこんなに弱いなんて知りませんでした・・・」シクシク…
妹「・・・お姉ちゃん、大丈夫?」サスサス
樹王「うう、有り難う御座います妹ちゃん・・・」グスッ
女「それにしても、妹ちゃんは本当に強いのですね」
妹「・・・わたし、学校でも一番強い」エヘン
樹王「ぐすっ・・・。そうなんですか? すごいんですね、妹ちゃん」ナデナデ
妹「・・・えへへ///」
男「ほいほい、飯が出来たぞ、っと。お、妹。何か誉められてるのか?」スタスタ
カチャカチャ コト、コト
妹「・・・カード、強いねって。誉められた」
男「そうかそうか。もう俺でもお前には勝てないもんなあ」コト、コト
女「あ、どうも。・・・成る程、流石の男もカードでは分が悪いというわけですか」クスクス
男「うるせ。お前もカードで俺に勝ったことないだろうが」
女「あら、そうでしたっけ?」
樹王「(やっぱりお二人、凄く親しそうです・・・)」
妹「・・・お姉ちゃん? ご飯来たよ?」
樹王「へ? あ、ああ有り難う御座います、男様!」
男「ああ、いいよ。ってか、男でいいっつーのに・・・」
樹王「い、いえ、そういう訳には!」
男「・・・まあいいけども。さて、それじゃあ頂きますか!」パンッ
妹「・・・いただきますっ」パン
全員『頂きます!』
女「ぁむ。・・・! 美味しいですね、このオムレツ」モグモグ
樹王「チーズが入っているんですね。とても美味しいです」ハムハム
妹「・・・お兄ちゃんのご飯は、世界一おいしいの」パクパク
男「お口に合ったなら何よりだ。今日は奮発した甲斐があったな」モグモグ
樹王「そ、その、いつも男様がお料理や家事をなされているんですか?」
男「いや、たまにだな。今日みたいに休みの日や、時間が出来たときにはやるが、基本的には妹任せになっちまってる」
妹「・・・わたしも、それなりにお家のことはできるから」パクパク
女「お仕事が忙しいのですか?」
男「まあな。何でも屋なんて職業、やっていけているだけ有り難いんだがな。こいつには寂しい思いもさせちまってる」ポンポン
妹「・・・あうあう」
女「そうですか・・・」
樹王「(・・・!)」ピコーン!
樹王「で、でしたら!」ガタッ!
男「うおっ! な、何だ?」
樹王「わ、私がこれから時々様子を見に来ても宜しいでしょうか!?」
女「!!?」
男「あ、ああ、俺は構わないし、助かるが・・・。仕事は?」
樹王「全て終わらせてから来ます!」
男「そ、そうか・・・。なら、妹はどうだ?」
妹「・・・お姉ちゃんが会いに来てくれるの? それは、うれしい」
女「ち、ちょ、『樹王』! 何を・・・!?」
樹王「い、いいですよね、女さん!」ズイッ
女「それは・・・!」
樹王「・・・!」ゴゴゴ…!
女「・・・はあ。・・・ちゃんと仕事を終わらせてからですよ?」
樹王「! はいっ!」パアァァー!
女「それから、こちらを訪ねる際は、私も同行します。いいですね?」
樹王「そ、それは・・・」
女「それが駄目ならば、この話は無しです」
樹王「わ、分かりました! こちらに来る前に必ずお伝えします」
妹「・・・お姉ちゃんたち、時々遊びに来てくれるって・・!」
男「ああ、良かったなあ・・・(まあ、妹に任せっきりになるよりはいい・・・か? 騎士団に借りを作るわけでもないし、いいか)」
女「(『樹王』、中々やりますね・・・! いきなり攻め込むとは・・・!)」
樹王「(や、やったあ! これでいつでも男様の家に来られます!)」ウキウキ
妹「・・・お姉ちゃん、嬉しそう」
樹王「ええ、嬉しいですよー? 妹ちゃん、これから毎日遊びに来ますからね?」ナデナデ
男「(なあ、あいつは一体どういう性格なんだ?)」ヒソヒソ
女「(私も今日初めて見るいちめんばかりで驚かされています・・・)」ボソボソ
樹王「どうされたんですかお二人とも! 折角のお食事が冷めちゃいますよ? 頂きましょう!」ハムハム モグモグ
男「(まさか、お前みたいな変態じゃ無かろうな?)」
女「(それは無いと思いますが・・・。というか、私は変態ではありません。ただ貴方に罵られたりイジメられたりしたいだけです)」
男「(それを世間一般では変態と言うんだ!)」
女「(・・・そんな私を見せるのは貴方の前だけなのに・・・。鈍感・・・)」ボソッ
男「(? 何か言ったか?)」
女「何でもないです」
男「?」
妹「・・・お兄ちゃん、お姉ちゃん。食べないの?」
男「あ、ああ、食べるよ。・・・ん、少しスープの味が薄いか?」
妹「・・・ううん、いつも通り。とてもおいしい」
男「そうか。なら良かった。ん、妹、口の横にオムライスのケチャップが・・・」
妹「・・・」ゴシゴシ
男「ああこら。逆だし、袖で拭うな。ったく、ほれ、ここだ」フキフキ
妹「んむんむ・・・ぷはっ。・・・ありがとうお兄ちゃん」
男「どういたしまして。ほれ、食っちまえ食っちまえ。まだパンもあるしな。スープもあるから」
妹「はーい」パクパク
男「お前等も、遠慮せずにどんどん食えよ? 結構余ってるから」
樹王「はい、頂きます!」
女「久し振りの男の料理ですからね。遠慮なんかしませんとも」
男「そりゃ頼もしいこって」
ー数十分後ー
全員『ご馳走様でした!』
樹王「男様、とっても美味しかったです・・・!」
男「そいつは良かった。作った甲斐があったよ」カチャカチャ
女「あ、片付けは私達が・・・」
男「いいよいいよ。お前達はあくまで客なんだ。くつろいでいてくれ」カチャカチャ
妹「・・・お兄ちゃん、わたしもお手伝いする」
男「いいって。お前も座ってな」スタスタ
妹「・・・わかった」
ジャーーー ガチャガチャ
女「ふう。お腹が一杯になると、眠くなりますね」
樹王「そうですねえ・・・。いい気持ちです・・・」
妹「・・・わたしも、ねむい」ファー…
樹王「妹ちゃん、こっちにおいで?」トントン
妹「・・・?」トテトテ
樹王「はいどうぞ。暫く寝ていていいですよ?」ポスン
妹「・・・お姉ちゃんのひざ、暖かいね・・・」ウトウト
樹王「気に入ってくれたなら良かったです」ニコ
妹「・・・」ウト…ウト…
樹王「・・・しずーかのー うみーにひーとーりー・・・」
樹王「ひろーったー かいがーら みーみに あてたー・・・」
妹「・・・お姉ちゃん、歌、上手・・・」ウツラウツラ
樹王「じーっとー みみをー すーませーばほらー・・・」ニコ… ナデ…ナデ…
女「・・・綺麗な歌ですね・・・」
樹王「きーこえーてくる きみーのメッセージ・・・」
樹王「いえーなかーったー おもいをー すなーに かーいてはー」
樹王「なみーが さらってー・・・ ゆーくー・・・」
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
妹「・・・」スースー
女「寝てしまいましたね」
樹王「ええ。とても可愛らしいですよね」ナデ...ナデ...
男「片付け終わったぞ・・・って、寝ちまったか妹」
女「ええ、ついさっき」
男「まあ、こいつはちゃんと歯磨きも出来るから問題ないか」スタスタ
樹王「妹ちゃん、良い子ですものね」ナデ...ナデ...
男「悪いな『樹王』。重くないか?」ヨイショ
樹王「(お、おおお男様が隣に!)い、いえいえ、そんな事無いですよ!///」ドキドキ
男「そうか? なら、暫く寝かせてやってくれると助かる」ナデナデ
樹王「は、はいっ///」
樹王「(こうして2人で並んでいると、ふ、夫婦みたいですかね///)」
≫90で樹王が歌っていた歌は、EGOISTさんで『planets』です
あれ
いもスレで妹ペロペロのはずが
ガッツリファンタジーだった
面白いからいいか
女「(『樹王』、私でもそのポジションはあまりとったことが無いのに・・・)」
男「あ、ていうか、お前ら明日も仕事だろ? もう羊の刻を回ったけど、いいのか?」
樹王「ええ、勿論大丈夫です」
女「そうですね、まだ平気です」
男「それじゃあ、まだいるだろ? なら、お茶でも淹れてくるよ」スタスタ
女「あ、お構いなく」
男「そう言うなよ。客をほったらかしにしておくわけにもいかないしな。女は紅茶でいいんだよな? 『樹王』は何が飲みたい? 紅茶かコーヒーか、あとはミルクくらいしかないんだけどな」
樹王「私も、紅茶をお願いしていいですか?(もう少し隣に居て欲しかったなあ・・・)」
男「了解。んじゃ、少し待っていてくれ」スタスタ
女「・・・」
樹王「・・・」ナデ…ナデ…
妹「zzZ zzZ」スー…スー…
女「・・・『樹王』?」ポツリ
樹王「はい、何ですか?」ナデ…ナデ…
女「わ、私と代わりませんか?」
樹王「嫌です」キッパリ
女「・・・」
樹王「・・・」ナデ…ナデ…
女「羨ましいです・・・」ズーーン…
樹王「私にとっては、女さん・・・『戦女神』さんこそ、羨ましいです」
女「え?」
樹王「『戦女神』さんは、私の知らない男様を知っています。昔からずっと一緒だったという経験が、絆があります」
女「・・・ええ、そうですね」
樹王「・・・私は、それがとても羨ましいです・・・」ナデ…ナデ…
女「しかし『樹王』。あなたも、前に男と会っていると言っていましたが?」
樹王「でも、男様は覚えていませんでした。まあ、たった一度会ったきりでしたし、その時の私はただの一騎士でしたから・・・」
女「・・・何があったのか、聞いても?」
樹王「はい。・・・男様が『称号持ち』に就任して間もなくですかね。私、彼に命を助けられたんです」
女「そうなんですか?」
樹王「ええ。当時の私は、一騎士としてとある部隊に所属していました」
女「第24小隊、でしたっけ?」
樹王「ええ。私は、自分の持っている力を使って、誰かを助けたかったんです。それで、騎士団の門を叩きました」
女「成る程・・・」
樹王「私、騎士団に入って、毎日がとても充実していました。訓練は厳しいけど、部隊の皆で励ましあって、一緒にご飯を食べたり、たまに喧嘩したり。学生時代に戻ったみたいで、楽しかったです。勿論、任務は真剣にやってましたしよ?」
妹「・・・ん、んん・・・」モゾ
樹王「!」
女「お、起こしちゃいましたか?」
妹「・・・zzZ」モゾ …スー スー
樹王「・・・まだ寝ているみたいです」
女「そうですか。・・・あの、続きを聞いても?」
樹王「ええ、勿論」ニコ
樹王「それである時、私達にとある任務が与えられました」
女「はい」
樹王「その任務は、当時あちこちで悪さを働いていた盗賊団の討伐でした」
女「ああ、そういえばそんな事もありましたね・・・」
樹
女「・・・それで?」
樹王「ええ。でも、いざ戦闘が始まると、敵の実力が予想以上に高く、しかも、当時は凄い大雨で。何人かは討ち取ったものの、私達は不利な状況に立たされました・・・」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
ー五年前・王国内湿地帯ー
ザァーーー……
バチャバチャ
騎士G(現・『樹王』)「た、隊長! これ以上の戦闘はむりです! 撤退して、体勢を立て直しましょう! 怪我人の手当もしなくては!」
小隊長「それは、出来ない・・・」
騎士G「何故ですか!?」
小隊長「奴ら、用意周到に事を進めていた。聞こえるか? この音が」
騎士G「え・・・?」スッ
ドドドドドド……!
騎士G「! まさか・・・」
小隊長「ああ、奴ら、川を決壊させて、流れを変えていた」
騎士G「そ、そんな・・・」
小隊長「もはやこれ以上は下がれん。奴らを正面突破するしかない」
騎士H「まあ、気にすんなよ。俺達ならやれるさ」
騎士I「ああ。任せておけよG。ただ、流石に今回はお前にも戦ってもらうけどな」
騎士J「あはは。ですね」
騎士G「皆・・・」
小隊長「ああ。頼むぞ、皆」
全員『はい・・・!』
バチャバチャバチャバチャ!!
全員『!!』
盗賊1『見えたぞ! 騎士団の奴らだ!』バチャバチャバチャバチャ
盗賊2『逃がすな! 全員ここで始末してしまえ!』バチャバチャバチャバチャ
盗賊団『うおぉぉぉーー!』バチャバチャバチャバチャ!!
小隊長「くっ、もう追っ手が来たか!」
騎士G「隊長!」
小隊長「・・・うむ。全員、迎え撃て!」
騎士G「はい!」スラッ
騎士H「了解!」ザッ
騎士I「迎え撃ちます!」チャキッ
騎士J「じ、Gさん! 無理をせず、お気を付けて!」スラッ
騎士G「あ、有り難う。・・・ふふ、J君もですよ?」
騎士I「お、良かったなJ。憧れのGさんに心配されてよ?」
騎士J「なっ! や、止めてくださいよIさん!///」
騎士H「ははっ。若いねえ、少年!」
騎士J「Hさんまで!」
騎士G「あ、あはは」
騎士J「ち、違いますからねGさん! 誤解しないでくださいよ!?」
小隊長「お前達、緊張感を持て緊張感を!」
騎士H「はい、すみません! ・・・怒られちまった」
騎士I「はは、緊張が解れていいさ」
小隊長「接敵までもう少しだぞ、構えろ!」
騎士J「は、はい!」ギュウ…!
騎士I「J、訓練を思い出していけよ。訓練通りにやれば大丈夫だ」
騎士J「わ、分かってます!」
騎士H「(この戦いが終わったら、Gに告白くらいしろよ?)」ヒソヒソ
騎士J「(そ、それフラグ! 死亡フラグですよ!)」ヒソヒソ!
騎士G「二人とも、来ましたよ!」チャッ!
小隊長「散開! 各個に応戦し、道を拓けえ!」バチャバチャ!
騎士G「い、行きます!」バチャ!
騎士H「くそ、無事に帰ったらあの娘と結婚してやる!」チャキッ!
騎士J「だからそれフラグですよ!?」ダッ!
騎士I「気を抜くなよお前等!」ジャキン!
バチャバチャバチャバチャ!! バッ!
盗賊1「くたばれ騎士!」ブン!
騎士J「そうはいかない!」ギィン!
盗賊2「おら、とっととおねんねしなあ!」ヒュン!
小隊長「くっ、貴様等如きに!」ギン!
盗賊4「さっさとお陀仏しろよぃ!」ブン! ブン! ブオン!
騎士G「きゃっ! ・・・くっ、・・・こ、このおっ!」キン! ギン! キン! キン! ギィン!
盗賊6「邪魔をするなら、力ずくで排除する・・・」ゴッ!
騎士I「やられるか!」ゴッ! ガギィ…ン!
盗賊7「[ピーーー]やあ!」ブン!
騎士H「お前が[ピーーー]やあ!」ギン!
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
樹王「そうして、私達は戦っていました」ナデ…ナデ…
女「相当激しい戦いだったみたいですね」
樹王「ええ。雨の降る湿地帯って、足元がぬかるむどころか、沈むんですよ。重い鎧を着ていたので、尚更に」
女「ええ、分かります」
樹王「私もただ闇雲に剣を振るだけでした」
樹王「・・・でも、追い詰められてしまったんです。 相手は湿地帯の事をよく知っていて、地の利を活かされたんです。全員疲弊していましたし、もう駄目かと思いました・・・」
女「もしかして・・・」
樹王「ええ、その時です。男様が、『武神』様が現れたのは」
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
盗賊7「おりゃあ!」ブン!
騎士H「はあっ、はあっ・・・! ぐっ! この、お!」ギン! ビュン!
ヒョイッ
盗賊7「危ねえ! くっ、そ。しぶとい・・・!」
騎士H「はあっ、はあっ・・・! お前こそ!」
盗賊2「いい加減くたばれや!」ギン! ギイン!
小隊長「そんなわけにいくか!」ブン! ビュッ!
騎士G「くっ、このままでは・・・!」
盗賊4「安心しろよぃ! どの道全員地獄行きだよぃ!」
騎士G「そんなこと、させません!」
騎士I「全員気を付けろ、後ろは川だ! 呑み込まれれば命は無いぞ!」ゴッ! バキッ!
盗賊6「がっ! やるな。・・・だが!」ブオッ! ドゴン!
騎士I「ぐぅっ・・・!」ズザザー!
ギン! ギイン! バキッ! ガキイン!
騎士J「ぐっ! うわあっ!」ギン! ガキイ…ン!
盗賊1「はっはあ! どしたい坊主!」
騎士J「くっ、そお!」
騎士G「J君!」
盗賊4「! 余所見とか、余裕見せすぎだろぃ!」ビュッ…!
騎士G「! しまっ・・・!」
ガキィ……ン!
盗賊4「なっ・・・! こいつ、どこから!?」
???「そこまでだ、お前等」
盗賊2「誰だテメエ!」チャキッ!
盗賊6「騎士団の増援か・・・!」バッ!
盗賊8「だが一人だ、変わらねえよ!」
士G「(だ・・・誰?)」
武神「・・・王国近衛騎士団、序列第零位『武神』! 援護する、今の内に撤退を!」チャキン
盗賊4「テメエ一人でオレらを止めるってのか!? 上等だゴラア!」バチャッ!
盗賊2「おい、先にその生意気なガキを始末しろ!」ザッ!
盗賊6「『称号持ち』はマズい! 全員でかかれ!」ダッ!
小隊長「くっ! 彼が危ない!」ジャキッ
騎士G「き、君!」
武神「・・・」チャキン
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
ザアァァァァァーーーーーーーー…… ザアァァァァァーーーーーーーー……
盗賊2「が、は・・・」
盗賊4「強え・・・」
武神「・・・盗賊団の討伐を確認。任務完了」スー…パチン
小隊長「つ、強い・・・」
騎士J「これが、『称号持ち』・・・」
武神「・・・全員無事ですか?」バチャバチャ
騎士H「お、おう」
小隊長「援護、感謝する」
武神「いえ。間に合って良かったです」
騎士G「あなたは・・・」
武神「・・・俺は、近衛騎士団、序列第零位『武神』。救援に来ました」
騎士J「あなたが、最年少で第零位に就いた・・・」
騎士H「『武神』っつったっけか。流石、強いんだなお前」
小隊長「援護、感謝する」
騎士I「助かった」
武神「いえ、ご無事で何よりです」
騎士G「あ、あの!」
武神「あ、はい。何でしょう」
騎士G「た、助けていただいて、有り難う御座いました!」
武神「いえ、間に合って良かったです」ニコ
騎士G「っ!!///」ドキーン!
騎士H「(あ、こりゃお前負けたな)」ヒソヒソ
騎士J「(だから! 別にそんな気は無いと・・・!)」ヒソヒソ
騎士I「(いい加減認めたらどうだ? もう遅いかも知れんがな)」
小隊長「(まあ、まだ若いんだ。いい出会いはまだあるさ)」
騎士J「(隊長まで!)」
武神「それじゃあ、奴等の逮捕と護送、お願いします」
騎士G「あ、あなたは?」
武神「元々別の任務の途中でしたので。では、失礼します」バチャッ!
小隊長「消えた・・・」
ザアァァァァーーー……
騎士G「・・・」
騎士G「『武神』、様・・・」ポツリ
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
樹王「それが、私と男様の出会いでした」ナデ…ナデ…
女「成る程・・・」
樹王「とても単純な理由でしたけど、だからこそ、男様にこんなに想いを寄せるようになりました」
女「まあ、分からなくもないですね。(しかし、男の記憶に残っていなかったのなら、私の方が俄然有利・・・!)」
樹王「私が『称号持ち』を目指すようになったのも、もう一度彼にあいたかったからです。まあ、私が『称号持ち』になった時、丁度男様が騎士団を退団する直前だったので、覚えて貰えませんでしたけど。・・・だから、また会えて、凄く嬉しいです・・・」ナデ…ナデ…
男「何が嬉しいって?」ヒョコッ
樹王「それは勿論あなたにぅひゃあっ!?」
女「男っ・・・!?」
妹「・・・。・・・?」パチ
男「おお、驚かせたか。ごめんな。一応お茶は入ったんだけどさ、お茶請けのお菓子はクッキーでいいか?」
樹王「もももも勿論大丈夫です! ええ、クッキー大好きですから!」アセアセ
男「? そうか。なら持ってくるから」
妹「・・・ふぁああー・・・ぁふ」シパシパ
女「あ、妹ちゃん。目が覚めましたか?」
妹「・・・ぅん。おはよう」コシコシ
樹王「あ、目を擦っちゃ駄目ですよ」
妹「・・・うん」ポケー
男「お、起きたか妹」スタスタ
妹「・・・うん」
男「歯を磨いて寝るか? それとも、ホットミルクでも飲むか?」
妹「・・・ぎゅうにゅう、飲む」
男「あいよ。待っとけよ」
樹王「(う、うやむやになって良かった・・・)」
ー数分後ー
男「んじゃあ、お待たせ。食後って言うには少し遅いけど、お茶にしますか」
ジャーン
女「このクッキー、手作りですか?」
樹王「ええと、どちらが・・・」
妹「・・・わたしと、お兄ちゃんと、2人で作ったの」サクサク
男「まあ、割と上手く出来たんだ。食べてくれよ」
女「ええ、頂きます」ヒョイッ パク
樹王「頂きます」パクッ サクサク
男「どうよ?」
女「ええ、美味しいです」
樹王「お二人とも、お料理が本当に得意なんですね」
妹「・・・お兄ちゃんが、教えてくれるの」
樹王「いいですねえ、妹ちゃん」ナデナデ
妹「・・・うん」サクサク
女「(こうしてみると、姉妹のようですね)」
女「(では、今の内に・・・。)男、少しいいですか?」
男「ん? ああ・・・」
ー数十分後ー
女「それでは、お邪魔しました」ガチャ
樹王「また来ますね、妹ちゃん、男様」
妹「・・・待ってる」
男「ああ、いつでも来てくれ」
女「それでは、また」
樹王「おやすみなさい」パタン
妹「・・・」
妹「・・・お姉ちゃんたち、優しかった」
男「ああ、良かったな。また来てくれるってよ」
妹「・・・たのしみ」
男「そうだな。・・・よし、それじゃあ今日はもう寝ようか」
妹「・・・うん。おやすみなさいお兄ちゃん。また、明日」トテトテ
男「ちゃんと歯あ磨けよー」
妹「・・・うーん」トテトテ…
男「(さて、と・・・)」スタスタ
ー男の部屋ー
ガチャッ パタン
男「(さっき、女が言っていた事・・・)」スタスタ
男「(俺を、傭兵として騎士団に雇いたい、か)」ギシッ ボフッ
男「(・・・あくまで傭兵として、か)」
男「(妹も一緒に城に来ていいと言ってはいたが・・・)」
チラッ
男「(妹に、刀を持つ俺を見られるかも知れないんだよな・・・)」
男「(もしかしたら、刀を振る俺を見て記憶が戻るかも知れないんだが・・・)」
男「・・・あー、くそっ! まだそれには早い気もするんだよな・・・」
男「大人びているとは言え、まだまだ子供だ。あの日の事を受け入れるには、幼すぎる・・・」
男「・・・どうするかねえ」
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
ー妹の部屋ー
カチャリ パタン
妹「(・・・今日は、楽しかったな)」スタスタ
妹「(・・・お兄ちゃんとお買い物に行ったり、お姉ちゃんたちと遊んだり・・・)」ギシッ モゾモゾ ポフン
妹「(・・・お姉ちゃんたち、また来てくれるって)」エヘヘ
妹「(・・・お姉ちゃんたち、お兄ちゃんのこと好きみたいだし。今度会ったら、お兄ちゃんのお話、聞いてみようかな?)」
妹「・・・」
妹「・・・お兄ちゃん、きし団でお仕事してたんだ・・・」
妹「・・・『武神』、って言ってたっけ・・・」
ズキン!
妹「! ぃたっ・・・!」ズキズキ…
妹「・・・? ・・・な、何だったんだろう・・・?」
妹「・・・疲れたのかな。早く、ねよう・・・」モゾモゾ
ー翌日ー
コンコン
妹「・・・お兄ちゃーん。朝だよー」ガチャ
男「・・・んん。・・・ん、ああ。・・・ふあぁぁー、とぉ。おはようさん、妹」ワシワシ
妹「あうあうー・・・」
男「毎朝あんがとさん。下に降りようか」ギシッ スタスタ
妹「・・・うん」トテトテ
ー男の家・台所ー
妹「・・・今日の朝ごはんは、たまごのサンドイッチと、サラダと、紅茶」コト、コト
男「おお。相変わらず美味そうだな」
妹「・・・えへへ。それじゃあ、食べよ?」
男「ああ。頂きます」
妹「・・・頂きます」
カチャカチャ
妹「・・・そういえばお兄ちゃん」
男「んー?」モグモグ
妹「・・・ポストに、お仕事のお手紙が入ってたよ?」カサカサ
男「おー、そうか。流石に二日連続で休みとはならなかったか。どれどれ、今日の依頼は、っと」カサ ズズー…
妹「・・・」ハムハム
男「・・・隣の爺さんの畑仕事の手伝いに、猫の捜索。酒場の手伝いに、妹を連れて城に登城、女をイジメる・・・て待てコラ。何だこの最後の依頼は」
妹「・・・お城に行くの?」
男「いや、行かなくていいだろう。何かのいたずらだきっと」
妹「・・・でも、お手紙の後ろ・・・」
男「ん?」カサ
ー男へ
いたずらじゃないですからね? 王と、王女殿下の直々のご命令です。来ないとどうなるか分かりませんよ?
女
男「あんにゃろう・・・! 明らかに私欲が混ざってるだろうが!」クシャッ
妹「・・・わたしも、お城に行けるの?」ワクワク
男「(くそ、昨日の今日でいきなりかよ! 何を考えてやがるあいつは!)」
妹「・・・? お兄ちゃん?」
男「え? あ、ああ、そうだな。・・・取り敢えず、他の依頼を終わらせてから行ってみるか。妹、城に行く用意だけしておいてくれ」
妹「・・・りょーかい」
男「・・・どうすっかなあ・・・」パク
ー夕刻・王城前ー
男「・・・結局、来ちまったか・・・」
妹「・・・お城、大きいね」
男「そうだな。・・・行くか」スタスタ
妹「・・・うん」トテトテ
門番1「! 何者だ!」
門番2「ここから先は王城だぞ!」
男「『戦女神』に、男が来たと伝えてくれ。それで分かるはずだ」
門番1「! あなたが男さんでしたか。失礼いたしました、どうぞ中へ」
ギギイーーー…
門番2「私が『戦女神』様の元へご案内致します」
男「ああ、頼む」スタスタ
妹「・・・お願いします」トテトテ
ー王城・戦女神の部屋ー
コンコン
戦女神『はい』
門番2「『戦女神』様! 男様と妹様をお連れいたしました!」
戦女神『ああ、分かりました。入ってください』
門番2「はっ! ・・・では、どうぞ」ガチャリ
男「・・・邪魔するぞ」
妹「・・・こんにちは、お姉ちゃん」
戦女神「よく来てくれました2人とも。・・・ああ、あなたは元の仕事に戻ってください」
門番2「はっ! 失礼します!」バタン!
男「・・・んで、何の用だ? 『戦女神』?」
戦女神「私をその名で呼ぶということは、今日呼ばれた理由を理解しているという事でしょう?」
男「やっぱりか・・・。だが、昨日の今日でこれはないだろう?」
妹「・・・?」
戦女神「まあ、言いたいこともあるでしょうが、まずは座ってください。お茶でも淹れますよ」ガタッ スタスタ
男「はあ・・・。妹、そっちのソファに座ろう」
妹「・・・うん」
ボフン
妹「・・・わ。ふかふか」
男「流石、騎士団のトップ様はいい部屋を使ってるな」
戦女神「それ、貴方が言うと嫌みに聞こえますよ?」クス
コポコポコポコポ…
戦女神「どうぞ。熱いので気を付けて下さいね?」カチャ カチャ ボフッ
男「ありがとよ」
妹「・・・いただきます」
ズズ… ホゥ…
戦女神「・・・さて。単刀直入に言います。男と妹ちゃんは、これからしばらくの間、この王城で生活していただきます」
男「・・・」
妹「・・・どうして?」
戦女神「実は、私達は男を雇うことにしたんです」
妹「・・・きし団のお仕事に、何でも屋さんが必要なの?」
戦女神「はい。実は、今度大きなお仕事があるのですが、人手が足りないんです」
男「それで、何でも屋の俺を雇って、仕事をより効率的に進めよう、ってわけだ」
妹「・・・お兄ちゃん、きし団に戻るの?」
男「!?」
戦女神「っ・・・! 何故、そんな事を?」
妹「・・・昨日、じゅおうのお姉ちゃんと、お姉ちゃんが言ってたよ? お兄ちゃん、とても強いきしだったって」
戦女神「い、妹ちゃん、あの時起きていたんですか!?」
妹「・・・少しだけ」
男「(・・・女?)」ギロ
戦女神「(ふ、不可抗力です!)ええ、とですね。あの話は・・・!」アセアセ
男「・・・妹、確かに俺は騎士だった」
妹「・・・うん」
男「でも、俺はもう騎士団には戻らない」
妹「・・・どうして?」
男「騎士団に入るとな? ほぼ毎日ここにいないといけないんだ。そうすると、お前と一緒にいる時間が無くなっちまうんだ」
妹「・・・わたしは、一緒に住めないの?」
男「そんな事言ったら、今働いている騎士達の家族だって、ここに住みたいに決まってるだろ? 俺達だけ特別扱いは出来ないんだよ」
戦女神「そ、そうなんです。今回は短い期間ということで特別なんです」
妹「・・・じゃあ、きし団に戻らない方がいいね」
男「ああ。そういうこった」
戦女神「そ、そういう訳で。暫くの間、よろしくお願いしますね?」
男「・・・拒否権は?」
戦女神「無いです。手紙にも書きましたが、王と王女殿下直々のご命令ですので」
妹「・・・お兄ちゃん、王様と王女様と知り合いなの?」
男「まあ、少しだけな」
妹「・・・お兄ちゃんすごいね・・・!」
戦女神「後で妹ちゃんも王様達に会いに行きますからね?」
妹「・・・! ・・・がんばる」
戦女神「あはは」
男「・・・ったく」
戦女神「取り敢えず、貴方達の部屋は用意してあるので、そこを使って頂きます。それから・・・」
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
ー数十分後ー
コンコン
戦女神「はい」
メイド長『失礼致します。『戦女神』様、お客様のお召し物の準備が出来ました』
戦女神「分かりました、今行きます」
妹「・・・お着替え?」
戦女神「はい。これから王様の前に行くので、ちゃんとした服を着ないといけないんですよ」
妹「・・・ドレスとか?」
戦女神「はい。今回は、妹ちゃん用に作ったドレスを用意したんですよ?」
妹「・・・! ・・・うれしい!」
戦女神「それじゃあ、先に着替えてきてくれますか? 着替え終わったら、また会いましょう」
妹「・・・わかった。お兄ちゃん、行ってくるね」
男「おう。楽しみにしてるぞ」
妹「・・・うんっ」トテトテ ガチャ
メイド長「! こんにちは妹様。これは可愛らしいお嬢様ですね」ニコ
妹「・・・メイドさんも、可愛いね」
メイド長「ふえっ!? あ、有り難う御座います妹様/// そ、それでは参りましょう。『戦女神』様、男様、また後程参りますので、今暫くお待ち下さいませ」ペコリ
戦女神「はい。よろしくお願いしますね」
メイド長「かしこまりました」ペコリ
妹「・・・行ってくる」トテトテ
ギイ… バタン!
戦女神「・・・さて」
男「妹が着替えに行ったところで、本題か」
戦女神「はい。まず、貴方はこれから王国の客員騎士として騎士団に籍を置いていただきます」
男「俺は今更騎士団には・・・」
戦女神「ええ、分かっています。あくまでも籍だけを置いて貰うだけです。いざとなれば、貴方は貴方の判断で動いてください」
男「随分と親切だな。そんな勝手、他の騎士からしたら面白くないだろ」
戦女神「確かにそうでしょうが、貴方の実力を見れば、自然と文句も消える筈です」
男「だといいがな」
戦女神「大丈夫ですよ。それから、待遇としては私達『称号持ち』と同等になりますので、いざという時は部隊指揮も可能です」
男「至れり尽くせりだな」
戦女神「有能な指揮官が部隊を動かすのは当然ですからね。一応、今朝の時点で全騎士に伝えてあります」
男「・・・俺が『武神』だっていうことは?」
戦女神「まあ、中には貴方の事を覚えている騎士も居るでしょうから、もう『武神』が来るとは伝えてあります」
男「お前・・・!」
戦女神「で、でも、その名で呼ぶことは禁止しておきましたので、問題は無いかと!」
男「・・・そうか。助かる」
戦女神「いえ、この位は」
男「最後に。妹の事なんだが」
戦女神「何でしょう?」
男「あいつがもし俺の過去を聞いてきても、『武神』だとか、二年前の事件に関することは話さないで欲しい」
戦女神「・・・分かりました。気を付けます」
男「ああ、頼む。・・・悪いな、注文ばかりで」
戦女神「いえ。半ば無理矢理騎士団に戻したようなものですから、これくらいは」
男「そう言ってくれると助かるよ」
戦女神「いえ、そんな・・・」
男「・・・」カチャ ズズー…
戦女神「・・・」
戦女神「あの、男・・・?」
男「ん? どうした?」
女「あ、あのですね。ひ、久し振りにふ、2人きり、ですねっ///」
男「あ、ああ、そうだな。何だよいきなり」
女「そ、その。何となく・・・」
男「・・・まあ確かに。結構会ってなかったしな」
女「お、男は、私と会えなくて寂しかったですか?」
男「・・・は?」
女「わ、私は、その・・・。寂しかったんですよ? 貴方に会えなくて・・・」
男「そ、そうか。それはその、悪かった・・・?」
女「たまには、貴方の方から会いに来てくれてもいいのに・・・」
男「あ、ああ。今度からそうするよ・・・」
女「・・・」
男「・・・」
男「(な、何だこの空気・・・! もの凄く居心地が悪い!)」
女「あ、男。その、お願いがあります!」
男「お、おお。何だよ」
女「そ、その、私・・・!///」モジモジ
男「お、おう(こ、これって、まさか・・・)」
女「私、私・・・!」
女「い、イジメて欲しいんです!///」
男「やっぱりかお前え!」
女「い、いいじゃないですか! 本当は昨日イジメて貰おうと思っていたのに、『樹王』がついて行くとか言うから! ずっと我慢してたんですよ!?」
男「知るかお前の欲求不満なんて!」
女「お願いします! 妹ちゃんが帰ってくるまででいいですから!」ジリジリ!
男「ええい寄るな! 第一、昔から言ってるだろ! 俺にそんな趣味は無い!」
女「趣味は無いかも知れませんが、才能があります!」
男「そんな才能知るかあ!」
女「い、イジメてくれないと言うのなら・・・!」
男「な、何だよ?」
女「・・・私があなたをイジメますよ!?」
男「どんな脅しだよ・・・」
女「お願いします! 少しでいいんです!」ギュウ!
男「だあ、近い! 近いんだよ!」
女「お願いしますー!」ギュウゥゥ…!
男「(くそ、こんな密着されたら・・・!)」
コンコン
男・女「「!!」」
メイド長『男様、『戦女神』様、お待たせいたしました。妹様のお召し替えが終了いたしましたので、お連れいたしました』
男「あ、ああ! 入ってくれ!」
女「・・・!」ガーーン!
メイド長『では、失礼致します。・・・どうぞ、妹様』
ガチャ トテトテ
妹「・・・お兄ちゃん、どう、かな・・・?」
男「おお、中々いいと思うぞ! 似合ってる」
妹「! ・・・えへへ、ありがと///」テレテレ
メイド長「それでは、私はこれで失礼致します。? 『戦女神』様?」
戦女神「・・・何でもないです。ご苦労様、下がってください」ズーーン…
メイド長「? はい、失礼致します」バタン
妹「・・・? ・・・お姉ちゃん、どうしたの?」
男「気にするな、何でもない」
妹「・・・?」
おつ
戦女神「で、では改めて。男は元々正装して来ていますしね。謁見の間へと向かいましょう」
男「謁見の間? 病床に伏せっておられるんじゃ・・・」
戦女神「玉座に座り、客人をもてなすくらいなら出来ますよ。ほぼ毎日他国から使者が訪れるのですから」
男「病とはいえ、寝ていられないってことか」
戦女神「まあ、それでも最近は執務の時間を大分削られていますけどね」
妹「・・・王様、病気なの?」
男「ああ。だけど、内緒だぞ? 大事なことだからな」
妹「・・・うん。誰にも言わない」
男「いい子だ」ナデナデ
妹「・・・お兄ちゃん、髪が・・・」
男「っとお! すまんすまん」
戦女神「全くあなたは・・・」
男「く、癖でついな」
妹「・・・また後でなでて?」
男「お、おう」
戦女神「さあ、それじゃあ行きますよ。ついてきてください」ガチャ スタスタ
男「ほれ、行くぞ妹」スタスタ
妹「・・・がんばる」トテトテ
ー王城・謁見の間ー
戦女神「客人お2人をお連れしました。開扉を」
扉番1「はっ」
扉番2「どうぞ!」
ギイィィィー…
戦女神「ありがとう。・・・さ、お二方とも、こちらへ」スタスタ
男「はい」スタスタ
妹「・・・」ドキドキ トテトテ
ザッ
戦女神「王よ。男様と妹様、両名をお連れ致しました」
王「おぉ、そなたらが・・・。話は聞いておる。此度の戦に於いて、力を貸してくれるらしいの・・・」
戦女神「王。その話は・・・」
王「そうであったの。すまんすまん・・・。ああ、少々だらしない格好ですまんの。見苦しいとは思うが、儂も病の身。許せ・・・」
男「いえ、病の御身なれど謁見してくださった事、身に余る幸せに御座います」ザッ
妹「・・・ございます」スッ
王「ああ、よいよい。そんなに改まるな・・・。形式張った世辞などいらぬわ・・・」
男「・・・分かりました」
王「それから、騎士よ、あ奴を呼べ・・・。時間は伝えておいた筈なんじゃが、中々来なんだ」
騎士H「はっ!」チラッ ニカッ ガチャガチャ
男「(あいつ、どこかで・・・? 気のせいか?)」
王「妹といったかの、お主・・・」
妹「・・・はい、王様」
王「もうすぐ儂の娘が来る・・・。すまんが、暫く娘の相手をしてくれぬか・・・?」
妹「・・・相手?」
王「おう・・・。あ奴の遊び相手になって欲しいのじゃ・・・」
妹「・・・わかりました」
王「すまんの、助かる・・・」
ガチャン! ギイィィィー…
騎士H「国王様! 王女殿下をお連れ致しました!」
王女「父上、お呼びでしょうか・・・」ツカツカ
王「・・・何故猫を被っておる」
王女「なっ・・・! き、客人の前でそのような事を仰らないでくださいませ!///」
戦女神「王女。その客人の前で御座います。どうか、お抑えください」
王女「っ! そ、そうですわね。・・・んっんん! ・・・ようこそおいでくださいました、男さん、妹ちゃん。王女です」
男「男です。お目にかかる事が出来、光栄です」ペコリ
妹「・・・こうえいです」ペコリ
王女「ふふ、そんなに改まらなくて結構ですよ?」
王「王女よ、妹を連れ、城の案内をしてこい・・・。これからここで暮らすのじゃ。右も左も分からぬのでは、不便であろう・・・」
王女「はい、父上。・・・ですが、男さんは?」
王「男は後で『戦女神』に案内させればよいし、儂と話もある・・・。気にせずに行ってこんか・・・」
王女「・・・分かりました。それじゃあ妹ちゃん、行きましょう?」
妹「・・・はい。それじゃあ王様、お兄ちゃん、お姉ちゃん、またね」フリフリ トテトテ
男「こら妹! またねじゃないだろ!」
妹「・・・! 王様、失礼します」ペコリ
王「うむ・・・」
王女「妹ちゃん、こっちですよ? では男さん、また後で・・・」ペコリ
男「はい、後程」ペコリ
ギイィィィー… バタン
王「では、改めて聞かせて貰おう・・・。男よ、今の我等で隣国に勝てると思うか?」
男「私が騎士団を抜け、二年が経ちました。今の戦力、騎士達の練度を知りませんので、何とも言えませんが・・・」
王「よい、申せ・・・」
男「正直なところ、勝つことは難しいと考えます」
戦女神「そんな・・・!」
王「むぅ・・・」
男「隣国は、そもそも戦によって成り立った国です。平和的に政治を、興国を成してきた我等とは戦に対する意識が違います」
王「成る程・・・。あちらの国では、王族自らが前線で指揮を執るという・・・」
戦女神「・・・確かに、聞けば隣国の皇女は、既に前線に出撃、他国との戦で戦果を挙げているとか」
男「そういった環境で鍛え上げられた隣国の衛士達は、皆屈強。無論、我等の騎士達とて相応の訓練を積んではいますが、苦戦は必至かと」
王「ふむ・・・」
男「そういえば、此度は何故このようなことに?」
戦女神「何故、とは?」
男「・・・。王が病に伏しておられるとはいえ、少し動きが急すぎると思います」
戦女神「・・・」
男「今まで緊張状態にあったとはいえ、互いに上手くやってきたのです。今更その均衡を崩す理由は無いかと。向こうも、既に十二分に領土も持っていますし」
王「単に、好機とみただけではないのか・・・?」
男「しかし、いきなり戦端を開く理由には少し弱いです。まだ、互いに使者を出したりするだけで十分な段階の筈です」
戦女神「成る程・・・。確かにそうですが、それに関してはひとまず、密偵からの情報を待ってください」
男「・・・了解」
王「取り敢えず、お主の意見は分かった。今日は一度下がるが良い・・・」
男「かしこまりました」
戦女神「それでは、男の案内は私が」
王「うむ、頼むぞ・・・。儂も、少し休ませて貰おう・・・」
男「どうか、お大事になさってください」
王「うむ・・・。下がれ」
男・戦女神『はっ!』
乙。
スレタイにいい意味で裏切られた。
面白い。
>>131
ほんとそれ
面白い
ー王城・通路ー
男「・・・」スタスタ
女「考え事、ですか?」スタスタ
男「ああ。前にお前に話を聞いた時から思っていたんだが、やっぱり何かがおかしい」
女「そうでしょうか?」
男「ああ。王が病に伏しておられるという情報を手に入れたところで、いきなり戦争に持ち込む必要は無いだろう」
女「王を討ち、国が動揺している隙に攻め込むものだと考えていましたが・・・」
男「それなら、襲撃が失敗した時点で諦める筈だ。こちらに事が露見して、尚戦の準備を進めているという事は、多少の無理を押してでもこちらに攻め入りたい理由があるということだ」
女「成る程・・・」
男「ただ、その『理由』が分からないんだよな・・・」
女「その件も今はまだ、密偵に任せるしかありません。私達は、あらゆる可能性を考慮して対処を考えます。他にも何か気付いた事があったら教えてくださいね?」
男「ああ、分かった」
女「今の貴方も、『称号持ち』同士の会議に出席出来ますから、何かあれば私に言ってください。すぐに皆を召集しますから」
男「最悪の場合はそうする」
女「はい」
樹王「お待ちしております」
男「・・・」スタスタ
女「・・・」スタスタ
樹王「・・・」スタスタ
男・女『ぶふぉっ!?』
樹王「え? な、何ですか? どうかしましたか?」オロオロ
男「お、驚いた! いつの間に!」
女「じ、『樹王』、仕事は?」
樹王「終わらせてありますよ。もうすぐお夕飯ですし、『獣牙』ちゃんと一緒に食堂に行こうと思ってたらお二人が見えたので、ご一緒にいかがかと思いまして」
男「何で気配を消してくるんだ・・・」
女「すごく驚きました・・・」
樹王「す、すいません。男様の正装姿がか、かか、格好良くて、その、緊張しちゃって・・・///」
男「そ、そうか。ありがとう」
女「・・・。・・・まあ、それなら夕飯を食べに行きましょうか」
男「あ、その前に妹を回収しないと」
樹王「妹ちゃんなら、訓練中に王女様と庭を歩いているのを見かけましたよ」
男「庭か・・・」
女「でも、流石にもういないのでは?」
樹王「そうですね。言っておいてなんですが、私が見たのは、結構前なので・・・」
女「それでは、一度王女の部屋へ行ってみましょう。もしかしたら、お部屋で遊んでいるのかもしれませんし」
男「そうだな」
樹王「私も行きますね」
ー城内・王女の部屋ー
王女『い、妹ちゃん! 強すぎませんか!?』
妹『・・・わたし、学校で一番強い』エヘン
王女『そんなレベルじゃないような・・・』
男「・・・またカードでもやってるのか?」
樹王「ほ、ほら、妹ちゃんが特別強いんですよ! 私が弱い訳じゃないです!」
女「わ、分かりましたから。行きますよ」
コンコン
王女『は、はい! どなたですか?』
戦女神「王女、私です。そろそろお夕飯の時間ですので、妹ちゃんを呼びに来ました」
王女『あ、そうですか。それなら私もご一緒していいですか?』
戦女神「勿論です。ただ、今から手配すると暫く掛かりますので、少々お待ちいただくことになりますが」
ガチャリ
王女「何を言うのですか。あなた達と同じ場所で構いませんよ」
妹「・・・みんなで、ご飯」トテトテ
ザッ
樹王「し、しかし王女様・・・」
戦女神「我等が行くのは、大衆向けの一般食堂で御座います」
樹王「恐れながら、王女様のお眼鏡に叶うかが分かりません・・・」
王女「何を言うのですか。あなた達が普段から食べているものなのでしょう? ならば、不味いことなどありません。自信を持って案内してください」
戦女神「・・・かしこまりました。ただ、今の時間は大変混み合うため、少々大変な目に遭われますが宜しいでしょうか?」
王女「無論です。さ、行きましょう? 混むというのなら、尚更急がなければ!」
妹「・・・行こー」
男「こら、妹。また・・・」
王女「ああ、いいのです男さん。私が許しました」
男「王女殿下・・・。しかし、それでは他の者達に示しがつかないのでは・・・」
王女「いいのです。妹ちゃんは、わたくしのお友達ですから」
妹「・・・ともだち」コクン
男「王女殿下が、そう仰るのであれば・・・」
王女「あなた達も、一々膝を着いてわたくしを出迎えなくても宜しいですからね?」
戦女神「いえ、そこは最低限のケジメで御座います」
樹王「貴女様は、時期国王。このくらいは当然で御座います」
王女「・・・それはそれで寂しいです・・・」
戦女神「申し訳ありません」
王女「・・・まあいいです。それでは、お夕飯を食べに行きましょうか」
男・戦女神・樹王『はっ!』
妹「・・・おー」
ー城下町・食堂ー
ガヤガヤ! ザワザワ!
おっさん1「おーい、おばちゃん! 俺の頼んだA定食まだー!?」
おっさん2「こっちのC定食もねー!」
おばちゃん「はいはい分かってるよ! 今作ってるからね! もうちょっと待っときな!」ジャアァァー!
長女「番号札56番でお待ちの人ー! A定食お待たせしましたー!」パタパタ
おっさん3「お、ありがとうよ長女ちゃん!」
長女「どうもー! ・・・ええと。B定食二つとC定食1つ追加でー! 忙しくなってきたけど、頼むよ母さん、弟たち!」
おばちゃん「あいよ! ほら、アンタ達ももっと頑張んな!」ジャッジャッ ジャアァァー!
長男「おう母ちゃん! 任せろ!」トントントントントン!
次男「ああ姉ちゃん、やってやるさ! あ、そろそろC定食出るぞー!」ガチャガチャ! ジャーー!
長女「はいはーい!」バタバタ!
ワイワイ! ガヤガヤ!
王女「成る程、ここが食堂ですか」キョロキョロ
戦女神「王女殿下。多少変装はしているとはいえ、皆は貴女様のお顔を知っております」
樹王「どうか、皆に気付かれませんようお気を付けください」
王女「ええ、分かっています」
妹「・・・すごい人」
男「ああ、ぶつからないように気を付けろよ?」
戦女神「王女殿下も、足元にお気を付けを」
王女「『戦女神』、あなたは心配しすぎですっ」
樹王「あ、あはは・・・」
長女「! いらっしゃいませー! お客様は何名様でお越しでしょうか! ・・・って、女ちゃん!」
戦女神「どうも、長女。五人ですが、入れますか?」
長女「もちろん! さ、こっちへどうぞー!」スタスタ
男「何だ女。知り合いか?」スタスタ
戦女神「ええ。幼なじみですね」スタスタ
男「ああ、成る程な」
長女「はい、ここの席でいいかな?」
戦女神「ええ、ありがとう」
長女「いえいえ! それじゃあ、注文が決まったら呼んでね!」
おっさん4「長女ちゃーん! こっち、注文お願いねー!」
長女「はいはーい! それじゃ、女ちゃん、女ちゃんのお友達の皆さん、また後で!」バタバタ!
妹「・・・いそがしそうだね」
樹王「丁度お夕飯時ですしねえ」
王女「お腹も空きましたし、メニューを決めましょうか」
妹「・・・うんっ」
男「(・・・そういえば女)」ヒソヒソ
戦女神「(はい、何です?)」
男「(今更なんだが、王女を城外に連れ出して良かったのか?)」
戦女神「(ええ、大丈夫ですよ。王も許可していますし、護衛には私達三人。充分に安全です)」
男「(まあ、確かにな・・・)」
王女「? 何をお話ししているのですか? メニュー、決めないのですか?」
男「ああ、いえ。ちょっとした事を。私は・・・これにします」
戦女神「私は、これで」
妹「・・・やきとり丼」
樹王「私も決まりました」
王女「もうですか? す、少し待ってください、私は・・・」ウーン…
樹王「王女様、ごゆっくりで大丈夫ですよ」
王女「ええと、ええと・・・。わ、私はこのカツカレーなるものにします!」
戦女神「かしこまりました。それでは・・・。長女ー! 注文お願いしまーす!」
長女『はい、ではビールがジョッキで4つ、A定食が1つにB定食が2つ、海鮮ちらし丼が1つ、枝豆が一皿にフライドポテトが一皿! 以上でよろしいですか!? ・・・有り難う御座います! こちらの番号札をお持ちになり、少々お待ち下さいませ! ・・・はーい女ちゃーん! 今行くよー!』バタバタ
長女「お待たせ! 何にする!?」
戦女神「・・・いい加減他の従業員を雇ったらどうですか?」
長女「あはは! いいのいいの! あたし達は家族水入らず経営だからね! 非効率だし、やたら大変だけど楽しいよ!」
王女「素敵ですね」
長女「ありがと! ・・・ってあれ? あなた、どこかで・・・」
王女「! き、気のせいじゃないですか?」
樹王「て、店員さん! 注文お願いします!」
長女「え? ああ、そうだったね! ごめんごめん。それじゃあ、注文どうぞー!」
妹「・・・やきとり丼」
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
ワイワイ! ガヤガヤ!
長女「お待たせしましたー! 番号札60番から64番のお客様ー! お料理が出来ましたー!」
戦女神「私達ですね。それでは、受け取ってきます」ガタッ
男「ああ、俺も行くよ」ガタン
樹王「私もお手伝いしますね」ガタッ
妹「・・・おねがいします」
王女「頼みますね」
戦女神「はい」スタスタ
長女「あ、来たね! お待たせ、気を付けて持って行ってね!」
戦女神「ええ、ありがとう。・・・おばさん、長男君、次男君、いただきますね!」
おばちゃん「あいよ! 女ちゃん、いつもありがとね!」ジュワアァァーー!!
戦女神「いえ、こちらこそ」
長男「女さん、隣の人は彼氏さんですかい!?」グツグツグツグツ…
樹王「!?」
男「お、俺か?」
戦女神「い、いえ、同僚ですよ」
樹王「・・・」ホッ…
戦女神「その安心の溜息は何ですか・・・?」ジトー
樹王「い、いえいえ、何でもないですよ?」
次男「あ、女さん! 今度俺とデートしてくださいよ!」トントントントントン!
戦女神「気持ちだけ受け取っておきますね」
次男「ちぇっ、まぁたフられちまった」
長女「ほらほら、次のお客様もいるんだから、話は後!」
次男「あいよ! それじゃあ女さん、ごゆっくり!」
おばちゃん「ほらアンタら、次の注文入ってるよ!」ジャアァァー!
兄弟『おう!』バタバタ!
男「それじゃあ、行こうぜ」
樹王「はい」
戦女神「そうですね」
スタスタ
妹「・・・いっせーの、3」ピッ
王女「あっ!」ピッ
妹「・・・わたしの勝ち」ブイ
王女「うぅ、妹ちゃん本当に強いのですね・・・」
男「王女殿下、妹、お待たせしました」ガタ
戦女神「お料理をお持ちしました」ガタガタ
樹王「さ、食べましょう」ガタン
王女「い、妹ちゃん。帰ったらまたやりましょうね?」
妹「・・・うん、やろう」
男「さて。そんじゃまあ・・・」パン
全員『頂きます!』
おつぅ
乙
皆取りに行ってる時に王女と妹が誘拐されないかハラハラした
ー1時間半後ー
戦女神「さて、食事も終わりましたし、会計をして帰りましょうか」
男「そうだな。あまり遅くなってもいけないし」
妹「・・・おいしかった」
樹王「あ、妹ちゃん、お口の周りにソースが・・・」フキフキ
妹「んむんむ・・・」
王女「はー、お腹が一杯です。カレーとはこんなに美味しいものだったのですね」
男「ええ、カレーを好まない者はそういないでしょう」
王女「はい、とても気に入りました!」
樹王「それは良かったです」
戦女神「今度は、城の料理人に言って作らせましょう」
王女「はい!」
男「んじゃあ、会計してくるわ」ガタッ
戦女神「ああ、このくらい私が・・・」
男「いや、いいよ。今日はどっちかって言うと私的な食事だし、飯代くらいは俺が出すよ」
王女「騎士団名義で領収書を切ればいいのでは?」
男「いえ、わざわざそのような事をしなくても大丈夫ですよ。それでは、行ってきます」
戦女神「では、私達は先に表に出ていましょうか」ガタッ
樹王「そうですね」ガタッ
妹「・・・ごちそうさまでした」ガタガタ
王女「また来たいものですね」カタン
長女「ありがとうございましたー! あ、女ちゃん、皆、また来てよー!」
戦女神「ええ、また。ご馳走様です」ギイ
妹「・・・ばいばい」ヒラヒラ
長女「ばいばーい」ヒラヒラ
バタン
男「さて、そんじゃまあ帰りますか」ノビー…
王女「はい、帰りましょう」
妹「・・・お兄ちゃん、おんぶして・・・?」ウトウト
戦女神「お腹が一杯になったら、眠くなっちゃいましたか?」
樹王「それなら妹ちゃん、私がしてあげましょうか?」
妹「・・・ううん、お兄ちゃんがいい」
男「しょうがねえな・・・。王女殿下、失礼してもよろしいでしょうか?」
王女「もちろんです。私とも遊んでくれましたし、今日は疲れているのでしょう。男さん、おんぶしてあげてくれますか?」
男「はい。ほら、妹。おいで」ザッ
妹「・・・うん」トテトテ ギュッ
男「よっ、と。城に着くまで少し寝てな」
妹「・・・」スー スー
樹王「あはは、もう寝ちゃってますね」
男「まあ、仕方ないか。さ、行こうぜ」スタスタ
戦女神「はい」スタスタ
王女「こうやって夜中に街を歩いていると、不良みたいですねっ」ワクワク スタスタ
樹王「ふふ、そうですね」スタスタ
???「・・・」シュンッ!
ー城下町・王城へと続く道ー
王女「静かないい夜ですねー」トコトコ
戦女神「ええ、本当に」スタスタ
樹王「月も綺麗ですよ」スタスタ
男「・・・」スタスタ ピタ…
戦女神「城に戻ったらお風呂にしましょう。男、風呂場の場所が変わっているので、後で案内・・・。男?」
男「・・・王女殿下。申し訳ありませんが、妹を任せてもよろしいでしょうか?」ソッ
王女「え? ええ、勿論構いませんが」ヒョイ
樹王「男様、一体・・・。っ!」
戦女神「これは・・・」
ザザザザッ!
フード達「・・・」
男「襲撃だ! 樹王、お前は王女殿下の護衛を。女、俺とお前で突っ込むぞ」バッ!
樹王「はい!」
戦女神「全く、目立つからと武器を置いてくればこれです!」ザッ!
王女「皆さん、お気を付けて!」
妹「zzZ…zzZ…」
男「(1,2・・・5人か。)・・・おい、お前等何者だ? 隣国の奴等か?」
フード達『・・・』
戦女神「・・・話す言葉は無いようですね。では!」ドンッ!
男「倒させてもらうぜ!」ダッ!
フード達『・・・』ババッ!
樹王「王女様、こちらへ!」ザッ!
王女「はい!」タタッ!
フード1「・・・」ビュッ!
フード2「・・・」バッ!
男「ふっ、はっ! 中々やるじゃねえか!」バッバッ!
フード3「・・・」ブオン!
男「うおっ、とお!」タンッ!
男「これでどうだ!」バキィッ!
フード3「・・・」ヨロ… ザザッ!
男「固え! 何だこいつ、鉄仮面でも付けてるのか!?」
戦女神「くっ、動きが早い!」ザッ! バッ!
フード4「・・・」ヒュン!
フード5「・・・」ビッ!
戦女神「(? この人達、どこか違和感が・・・)」ババッ!
フード4「・・・」ゴッ!
戦女神「! あまり私を舐めないでくださいよ?」ヒュッ…! ガシイッ!
フード4「・・・」
戦女神「あなたは先に、寝てなさい!」ゴッガアァァン!
王女「うわ、頭を掴んで地面に叩きつけましたよ!?」
樹王「流石の怪力ですね。・・・! 『戦女神』さん、もう一人が!」
フード5「・・・」ヒュッ!
戦女神「はっ!」バシィッ!
フード5「・・・」グググ…!
戦女神「・・・あなたのこの剣、頂きますね?」
フード5「・・・」ググ…!
戦女神「はっ!」バシィッ!
ヒュンヒュンヒュンヒュンッ パシッ!
王女「わ、わ、敵の手を思い切り蹴り上げて剣を奪いました!」キラキラ!
樹王「王女様、劇ではありませんので、前に出ちゃ駄目ですよ!?」
戦女神「男っ!」ブン!
男「人に刃物を投げるか普通!? ・・・だが有り難い!」パシイッ!
フード1「・・・」ビュッ!
フード2「・・・」ブン!
フード3「・・・」ブオン!
男「っ・・・!」ギン! キンッ、ギイン!
フード達『・・・』ババッ!
男「よっし。一国の王女を狙ったんだ。その罪、しっかり償ってもらうぞ!」ダンッ!
フード1「・・・」ヒュン!
フード2「・・・」ビュッ!
男「当たるか! 喰らえ!」ズバン!
フード1,2『・・・』バラバラ
男「!? こいつら・・・!」
戦女神「何かおかしいと思ったら、人形でしたか!」ドゴオッ!
フード5「・・・」バカン!
男「てことは・・・」ズバッ!
フード3「・・・」ドサッ
男「やはりこっちもか」ポイッ サクッ
戦女神「襲撃者は皆木偶人形?」スタスタ
王女「うわあ、二人とも、本当にお強いんですねっ」タタタ…
樹王「・・・お二人とも、お疲れ様でした」
男「ああ。そっちに被害が行かなくて良かった。王女殿下、妹の事、有り難う御座いました。ここからはまた私が」
王女「いえ。それにしても、この騒ぎでずっと寝てたって事は、余程疲れているんですかね、妹ちゃん」スッ
戦女神「かも知れませんね。襲撃の報告もしなくてはいけませんし、早く城に戻りましょう」
樹王「それなら、私がここで簡単な調査と現場保存しておきますね」
戦女神「では、お願いします。一通り済んだら、貴女も戻ってきてくださいね」
樹王「はい」
男「また後で俺も見に来るから」
王女「『樹王』、よろしく頼みますね」
樹王「はい、お任せを」
スタスタ…
ー少し離れた場所・岩場ー
???「・・・ふぅん。武器を持っていなくても、この程度じゃやっぱり駄目か・・・」
???2「どう? まだやれそう?」
???「駄目。もう借りてた人形のストックも無くなっちゃったし、今日は引き上げだ」
???2「なら、あの娘を人質にすれば?」
???「だめだめ。歴とした『称号持ち』だし、上の指示無しに迂闊に動けないよ」
???2「そう。つまらないわねえ・・・」
???「まあまあ。例の確認も出来たし、いいとしようよ」
???2「それもそうね」
???「もうすぐ、僕らのシナリオ通りに戦争が起きる。そしたら、きっと楽しい祭りになるよ!」
???2「ええ、本当に楽しみよ・・・」クスクス
ー王城・王女の部屋前ー
王女「それでは、私は妹ちゃんとここで寝ますね」
男「はっ。どうぞ宜しくお願い致します」
妹「・・・おやすみ、お兄ちゃん、お姉ちゃん・・・」コシコシ
戦女神「はい、お休みなさい。また明日」
男「それでは王女殿下、お休みなさいませ。妹、ちゃんと風呂に入って、歯を磨いてから寝るんだぞ?」
妹「・・・うん、だいじょうぶ」
王女「では皆、また明日。妹ちゃん、行きますよ」バタン
男「・・・さてと。俺達も戻るとするか」
戦女神「そうですね。一応各『称号持ち』に報告の鳩も飛ばしておきましたし、今日はもう休むとしましょう」スタスタ
男「あ、そういえば風呂場が変わったとか言ってなかったか?」スタスタ
戦女神「ええ、少し前に軽い改装をしたんですよ。案内しますね」
男「助かる」
ー王城・大浴場(男湯)ー
戦女神「ここが男湯です。ゆっくりしてくださいね」
男「ああ、有り難うな」
戦女神「いえ。それでは、私も失礼しますね。お休みなさい、男」
男「ああ。お休み、女」
パタン
男「さて、とっとと入っちまうか」ゴソゴソ
カチャリ
男「おお、少し広くなったな」ペタペタ
キュッ ザー…
男「あー、気持ちいいな・・・」
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
ー王城・通路ー
戦女神「(さて、どうしたものでしょうか・・・)」スタスタ
戦女神「(やはりここは一度戻って男の貴重な入浴シーンを抑えるべきでしょうか・・・?)」スタスタ…
戦女神「(いえ、しかし男に気配を気取られずに覗くことはまず不可能でしょう・・・)」
戦女神「(確実に私は興奮してしまいします。そうなれば、男に気取られることは確実・・・)」
戦女神「(覗かれた事に怒って、罵倒したりしてくれるのなら二度美味しい事になりますが・・・)」
戦女神「(最悪、口をきいてくれなくなる可能性も・・・)」
戦女神「(うーーん・・・)」スタスタ
ギャーギャー! ヤメテクダサイー!
戦女神「? 今の声は・・・」タタッ
ー王城・玄関ホールー
樹王「ち、ちょ、放してください!」グイィー…!
獣牙「がるる・・・!」ガブー…!
樹王「じ、『獣牙』ちゃん、私が悪かったですから! だから私の服を噛まないでください! 破れちゃいますー!」
獣牙「がうー!」ガチガチガチガチ!
樹王「何で噛み千切ろうとするんですか!?」
戦女神「・・・こんな所で何をしているのですか貴女達は・・・」
樹王「あ、『戦女神』さん! 助けてくださいぃー!」グスン
獣牙「がるる! がうがー!」ガブガブガブガブ!
樹王「やめてー!」
戦女神「何があったのですか・・・」
樹王「じ、実は・・・」
カクカクシカジカ
戦女神「・・・成る程。『獣牙』と夕飯を食べに行く約束をしていたのに、私達と食べに行ってしまったと・・・」
樹王「はいぃー・・・」シクシク
戦女神「それで、『獣牙』は律儀に貴女を待っていて空腹だったのに、貴女は既に食べ終えていたと」
樹王「はい・・・」シクシク
獣牙「がう! がるるー!」シクシク ガブガブ!
戦女神「・・・それは確実に『樹王』が悪いでしょう・・・」
樹王「分かってます! だから何度も謝っているんですけど、全然許してくれないんですー!」
戦女神「全く・・・。『獣牙』、その辺にしておきなさい」
獣牙「がうっ! うがー!」ガチガチガチガチ!
樹王「ちょ、何で加速するんですか!?」
戦女神「『獣牙』、貴女の気持ちも分かります。お腹が空いて、一緒に食べに行くのを楽しみにしていたのに、忘れられてしまった怒り、悲しみ・・・」
獣牙「!」ガブガブガブガブ!
戦女神「その気持ちをぶつけたくなるのも勿論分かります。でも、そんな事をしても、お腹は一杯になりません」
獣牙「!!?」ガブガブガブ… ピタッ
樹王「ああ、私の服がぼろぼろに・・・」シクシク
戦女神「いいですか? 『樹王』も十分に反省しています」
獣牙「・・・」
戦女神「ですから、安心なさい。これから『樹王』が、貴女が満足するまでご飯を食べさせてくれるそうですよ」ニコ
樹王「!?」
獣牙「・・・ほ、んと、か?」
樹王「い、今からですか? 満足するまで?」
戦女神「(それくらいしてあげるべきですよ。『獣牙』は、人の言葉を失うくらい怒っていたんですから)」ヒソヒソ
獣牙「じ、じゅおー・・・?」カチ…カチ…カチ、カチ…カチカチカチカチ…!
樹王「分かりました! 分かりましたからその歯を止めてください!」
戦女神「さ、『獣牙』。『樹王』もこう言っている事ですし、好きなだけ食べてきなさい」ニコ
獣牙「わかった! よし、行くぞじゅおー! アタシはお腹がぺこぺこだぞ!」ガシッ! ズダダダダー!
樹王「きゃあぁぁー!」ビューーン…
戦女神「・・・」
戦女神「しょうもない・・・」ハァ…
ー翌朝 王城・裏庭ー
男「ふっ、はっ!」ブン! ヒュッ!
ザッ
竜騎「このような明朝に、誰かと思えば。戻ってきたか、男」
男「! 『竜騎』のおっさんか」
竜騎「うむ。二年振りだな、『武神』?」ニカッ
男「やめろよ、もうそんなんじゃないさ」
竜騎「ははは! そういえばそうだったか」
男「ったく・・・。ところで、おっさんはどうしてこんな早くにここに?」
竜騎「なに、我が愛竜と、朝日を愛でながら食事を取ろうと思ってな。どうだ、貴様も?」
男「・・・そうだな。二年振りだ、ご相伴に預かるとしようか」
竜騎「上々。では行こうか」
変態女が出てきて日常始まると思ったら、面白いファンタジーssだった
ー王城・竜舎ー
グルル… グオォー… スピー…
竜騎「うむ、ここだここだ」ガチャン キィ…
男「二年前に比べて、少し竜が増えたか?」
竜騎「ああ。元々ここにいた竜たちが仔を成してな。それから、少しずつだが数も増えてきているのだ」スタスタ
男「へえ・・・。ん、あそこは・・・」スタスタ
竜騎「ああ、卵が温めてあるのだ。昨日も二頭孵ってな。もしかすれば、今日も何頭か孵るやも知れぬ」
男「そうなのか。・・・そういや、おっさんの竜は、もう何歳になるんだ?」
竜騎「我が相棒は今年で21になる」
男「へえ。そういえば、卵の時から一緒だったって言ってたっけか」
竜騎「うむ。竜としては、まだまだ赤子も同然ではあるが、充分に頼りになるぞ」
男「ああ、それは分かって・・・わぷっ!」
仔竜「きゅー!」ガシッ
男「な、何だいきなり! 前が見えないぞ・・・!」グイィー…
仔竜「きゅぅぅー・・・」グググ…
竜騎「む? 昨日生まれた仔竜か」
男「何で仔竜が顔にひっついてくるんだよ・・・!」グイィー…
仔竜「きゅいぃぃ・・・!」グググ…
竜騎「さてな。懐かれたのではないのか?」
仔竜「きゅう! きゅいー!」ヨジヨジ ポテッ
男「・・・。俺の頭の上はお前の巣じゃないぞ?」
竜騎「わはは! 懐いておるのだ。そのまま気が済むまで乗せておいてやれ」
男「ったく。後でちゃんと降りてくれるんだろうな?」
仔竜「きゅい?」
竜騎「ほら、そんな事を言っている間に着いたぞ。 ここだ」カタン ギィィ
竜「・・・?」ノソノソ
竜騎「朝であるぞ、相棒。朝餉を共にしようではないか」
男「邪魔するぞー。へえ。竜舎の最上階だけあって、眺めがいいな」
仔竜「きゅうっ」
竜騎「で、あろうよ」ハハハ
竜「・・・ぐるぉ」
竜騎「おお、待たせたな。では、早速頂こうか」ドサッ ゴソゴソ ポイッ
竜「ぐるる・・・」バクン! モシャモシャ
男「鹿の肉か? まさか、俺にも生肉を食わせるんじゃないよな?」ドサッ
竜騎「ははは! まさかよ。ほら、お前にはこれをやろう」スッ
男「サンキュー。・・・サンドウィッチか。美味そうだ」バクッ モグモグ…
竜騎「何故か、明朝のキッチンに『樹王』が居てな。膨大な量の食器を片付けていたのだ。そこに声を掛けたら、分けて貰った」
男「『樹王』が? 何でまたこんな早くに」
竜騎「さあな」ムシャムシャ
仔竜「きゅー! きゅくー!」ペシペシ!
男「あたっ、たっ! 何だよ、お前も腹が減ったのか?」
仔竜「くぅー・・・」キュルルー
男「ったく。・・・なあ、こいつにサンドウィッチを食わせても平気か?」
竜騎「うむ、何の問題もないぞ。相棒は、鹿の生肉が好物なだけであって、全ての竜がそうだという訳ではない」
竜「ぐる・・・?」ムシャムシャ
男「そうか。んじゃあ、ほれっ」ポーン
仔竜「くぁー・・・あむっ」パクン モキュモキュ
竜騎「ははは、まるで親子だな」
男「親子ねえ・・・。子持ちになるにしても、まさか竜の仔とは」
竜騎「ふふ、貴公も騎竜訓練をしておくか?」
男「いや、遠慮しておくよ」モグモグ
竜騎「そうか?」
男「ああ。俺は自分で刀を振っている方が性に合うんでね」
竜騎「そうか」
ムシャムシャ
竜騎「男。まだ二年前の事を気にしていると聞いたが?」
男「・・・まあ、な。完全には吹っ切れていないさ」
竜騎「だが、お前は再び戦場に戻る。いつまでも引きずるなよ? 実戦ではそれが命取りだ」
男「分かってるさ。妹を残したまま死ぬわけにもいかないしな。上手くやるさ」
竜騎「妹、か・・・。ふっ。確かに、彼女がいる以上、貴公なら大丈夫であろうな」
男「ああ、大丈夫さ。・・・約束、したからな」
ー二時間後 王城・小会議室ー
コンコン
戦女神「はい」
戦鬼『おはよーーっす』
焔姫『こら、弟! 言葉遣いに気を付けなさいとあれ程言っているのに!』
戦鬼『ちょ、姉ちゃん・・・! 膝で顔は駄目だって・・・!』
戦女神「ああ、いいから。二人とも、入ってきてください」
ガチャリ
焔姫「失礼します! ほら、弟。あんたも挨拶!」グイッ
戦鬼「ひ、ひふれいひまふ(し、しつれいします)」ボロッ
戦女神「・・・。・・・朝早くに呼び出してすみません。明日の件について、経過を聞いておきたくて」
焔姫「はいっ。放送機材の設置は、殆ど終わっています。この調子なら、遅くても夕方には終わります」
戦鬼「っつつ・・・。そうしたら、
準備が終わり次第、すぐに発布できるぜ」
戦女神「そうですか・・・。ちなみに、お二人はどう思いますか? 明日まで待たず、設置完了後すぐに発布するべきか、否か」
焔姫「えっ!? えぇと、その・・・!」オロオロ
戦鬼「落ち着けよ姉ちゃん。単に、一意見として耳に入れておきたいだけだろ」
戦女神「はい。最終的な決定ではないので、気を張らず、素直な意見を聞かせてください」
戦鬼「まあ、俺としちゃあ、早め早めに通知しておくに越したことはないんじゃないか、と思うぜ」
焔姫「え、ええ。私も同意見です。ただでさえいつ攻め込まれるか分からないような状態ですから、すぐにでも通知した方がいいかと・・・」
戦女神「成る程・・・」
戦鬼「『戦女神』の姉ちゃんはどう思ってるんさ、そこんところ?」
焔姫「弟・・・? まだ膝が足りないかしら?」ジロリ
戦鬼「『戦女神』様は如何お考えでしょうか!」
焔姫「馬鹿にしてるの? あんた」
戦鬼「どうしろって言うんだYO!!」チキショー!
戦女神「ほら、いいから落ち着きなさい」
焔姫「すいません、『戦女神』様、この馬鹿が・・・」
戦鬼「・・・悪いの俺だけか?」
戦女神「それはもういいですから。・・・そうですね、私も貴方達と同じ意見です」
戦鬼「なら、広報委員に通達しておくか? すぐに発表出来るように準備をしておけって」
戦女神「・・・そう、ですね。正式な決定を下した訳ではないので、どうなるかは分かりませんが、準備だけは進めておいてください」
戦鬼・焔姫『了解!』
コンコン
土蜘蛛『失礼するッスよー』ガチャリ
戦女神「『土蜘蛛』。ノックの後は返事を待つのがマナーですよ? 相手が女性なら特に」
土蜘蛛「こいつは気付きませんで。次から気を付けるッスよ」スタスタ
焔姫「『土蜘蛛』さん。おはようございます」
戦鬼「土にぃ、うーっす」
土蜘蛛「お、『焔姫』に『戦鬼』の姉弟も来てたッスか。朝からお仕事ご苦労様ッスね、二人とも」
焔姫「いえいえ、そんな」
戦女神「それで、『土蜘蛛』。何か用があるのでは?」
土蜘蛛「ああ、そうッス。今日の訓練、オイラと『樹王』が兵達を監督するはずだったんスけど、その『樹王』が起きてこないんッスよ」
焔姫「『樹王』さんが?」
戦鬼「珍しいな、『樹王』の姉ちゃんが寝坊なんて」
戦女神「あー・・・」
土蜘蛛「何か、部屋の扉にはわざわざ『起こさないでください』とか張り紙してあるし。これ、サボりッスかねえ?」
焔姫「ええ!?」
戦鬼「こりゃ、戦争が起きるわけだな」
戦女神「・・・あー。『樹王』は後で私が様子を見に行きます。訓練には、代行役を派遣しますから、貴方は予定通りに訓練の監督をしてあげてください」
土蜘蛛「了解ッス。流石に、全訓練をオイラ一人はキツいッスからねえ。代行役、宜しく頼むッス」
戦鬼「因みに、誰を派遣するッスか?」
焔姫「弟、口調が移ってる移ってる!」
戦鬼「うお! マジッス・・・か・・・」
土蜘蛛「ケケケ、面白いッスね『戦鬼』」
戦鬼「うおお! 何か知らんが無性に悔しいッス!」ジタバタ
戦女神「あはは・・・。ええと、代行は、例の男に行って貰おうと思っています」
土蜘蛛「男、っていうと・・・」
焔姫「ぶ、『武神』さんですか・・・!?」
戦鬼「(また口調が出そうだから暫く黙っとこう)」
戦女神「ええ。ただ、あまりその名は口にしないであげてください」
焔姫「? 分かりました」
土蜘蛛「いやあ、嬉しいッスねえ。かの『武神』殿に、こんなに早くお目に掛かれるとは」
焔姫「『土蜘蛛』さん、後で私も訓練の様子を見に行ってもいいですか?」
戦鬼「(あ、俺も俺も)」ピョンピョン
土蜘蛛「オイラは構わないッスけど。二人は仕事があるんじゃないッスか?」
焔姫「ちゃんと自分のすべき事はやります。一度見てみたいんです、序列第零位の実力を。出来るなら、手合わせもお願いしたいですし!」
戦鬼「も、もしかしたら、何か、学べることがあるかも・・・知れないし、な」
戦女神「そうですね・・・。ちゃんと仕事を終えるなり、きちんと都合を付けておくならいいでしょう」
焔姫「やった! それじゃあ、早速準備して来ますね! 行くよ、弟!」
戦鬼「あいよ、姉ちゃん。それじゃあ、失礼します、っと!」
焔姫「失礼します!」
タタッ ガチャッ パタン
戦女神「全く・・・。あの子達は、戦争直前だというのに、緊張感が足りないように思えます」
土蜘蛛「まあまあ。まだ若いあの子らが戦争に必死に取り組むなんて、国としては良くない事ッスよ」
戦女神「そうですけど・・・」
土蜘蛛「ま、そんな事言ったら、騎士として軍に身を置いているって言うのも、どうかとは思うッスけどねえ。・・・まあ、オイラ達オトナが、守ってあげればいいッスよ」
戦女神「・・・ええ、そうですね」
土蜘蛛「それに皆、やるときはやるッスからね」
戦女神「ええ。そこは信頼していますよ」
土蜘蛛「(まあ、オイラもやる時はやらないとだめッスよねえ・・・?)」ボソッ
戦女神「? 何か言いましたか、『土蜘蛛』?」
土蜘蛛「いいえ、何も言ってないッスよ。そんじゃあ、オイラも訓練の準備してくるッス。失礼するッスね」スタスタ ガチャッ
戦女神「ええ。わざわざ有り難う御座いました」
バタン
戦女神「ふう。さて、それじゃあ私は男を探して、『樹王』のケアをしに行かないと」ガタッ
戦女神「・・・本当に、戦争が起きるなんて、嘘みたいですね」
仔竜かわいいっすよww
ー王城・男の部屋ー
戦女神「男ー。おはようございまーす」コンコン
ガチャッ
男「おう、おはようさん。どうした?」
仔竜「きゅー」フリフリ
戦女神「・・・貴方こそ、どうしたんですか?」
男「あー。気にしないでおいてくれ」
戦女神「え、ええ。分かりました・・・」
仔竜「くぁぁー・・・」ウトウト
男「んで? 何の用だ女」
戦女神「あ、そうでした。実は、今日の訓練の監督役が『樹王』だったのですが、急遽予定が悪くなりまして。貴方に監督役を代わっていただきたいのです」
男「おぉう、マジか」
戦女神「何か用事がありましたか?」
男「いや、そういう訳じゃないんだが。どこの馬の骨とも分からない俺でいいのか?」
戦女神「ええ、勿論。反抗的な騎士がいたらのめしてもいいですし」ニコ
男「・・・。あー、でも一応、俺の事は通達してあるんだっけか」
戦女神「ええ、既に」
男「まあ、ならいいか。引き受けるよ」
戦女神「助かります。では、一時間後に演習場で」
男「了解。あ、妹はどうしてる?」
戦女神「恐らくは王女と共に就寝中かと。まあ、そろそろ朝ご飯ですし、すぐに起きてくると思いますよ」
男「そうか。・・・あまり、演習場には近付けないでくれな」
戦女神「はいはい、分かっていますよ。過保護な親は気苦労が多くて大変ですねえ」ヤレヤレ
男「うっせ。過保護で悪かったな」
仔竜「zzZ…zzZ…」スピー…キュクー…
戦女神「え。ある意味、貴方らしくていいと思いますよ」
男「そうかよ。それじゃあ、準備するから。また後でな」
戦女神「ええ。それでは、宜しくお願いします」
パタン
戦女神「さて、次は『樹王』を起こしに行かないと」スタスタ
戦女神「『獣牙』がどれだけ食べたのかは分かりませんが、真面目な『樹王』が訓練を休むということは、相当だったのでしょうか・・・。想像するだに恐ろしいですね・・・」
ー王城・『樹王』の部屋ー
コンコン
戦女神「『樹王』ー。大丈夫ですかー?」
シーーン…
戦女神「・・・。『樹王』ー。生きてますかー?」コンコン
シーーン……
戦女神「・・・本当に生きてるんですかね?」ガチャ…
戦女神「! 鍵が開いている? ・・・不用心な。入りますよー」キイ スタスタ
樹王「うーん・・・。うーーん・・・」
戦女神「『樹王』? そろそろ起きなさい『樹王』。今日は貴方が騎士達の訓練監督でしょう」スタスタ ユサユサ
樹王「うぅ・・・。『獣牙』ちゃん、もう・・・。ゆるしてぇ・・・」ウーン…ウーン……
戦女神「まさか夢に見るほどのダメージとは・・・。『樹王』! 起きなさい!」ユッサユッサ
樹王「だめえ・・・。それは、まだ生だから・・・!」
戦女神「何を言ってるんですか・・・。『樹王』! いい加減に起きなさい!!」ユッサユッサ
樹王「ん・・・んん・・・。あれ、『戦女神』、さん・・・?」シパシパ
戦女神「やっと起きましたか。ほら、もう朝ですよ。『称号持ち』たる貴方が、皆の模範とならなくてどうするのですか」
樹王「うぅ、ごめんなさい・・・」
戦女神「全く・・・。昨日はどの位まで『獣牙』の相手をしていたのですか?」
樹王「それが、昨日の酉の刻から、今朝の辰の刻まで・・・」
戦女神「・・・七時間、ひたすら食べ続けていたのですか?」
樹王「はい・・・。満足して眠っちゃった『獣牙』ちゃんを部屋に運んで、その後は食堂に残った洗い物を済ませて、さっきやっと部屋に戻って来られたんです・・・」
戦女神「それは・・・。ご苦労様でした」
樹王「うぅ・・・。こんな日に限って訓練監督だなんて・・・」シクシク
戦女神「ああ、それは大丈夫ですよ。貴方はもう少し休んでいなさい」
樹王「え? でも、『土蜘蛛』さん一人では・・・」
戦女神「貴方の代わりに、男に訓練監督をして貰うことになりました。今頃、演習場に向かっている頃でしょうかね」
樹王「! お、男様が訓練監督を!?」
戦女神「ええ。貴方の代わりに、と」
樹王「わ、私も行きます! 行かせてください!」ガバッ!
戦女神「貴方は休んでいなさい」
樹王「で、でも・・・! あれ?」フラッ
戦女神「ほら、体調だっていいとは言えないのですから。ゆっくり寝ていなさい」
樹王「・・・。そんなあ・・・」グスッ ポフン
戦女神「今日は、休みなさい」
樹王「・・・『戦女神』さん、起こしに来たんじゃないんですか?」
戦女神「いえ。単純に様子を見に来ただけですよ。やっぱり、貴方は今日は休んだ方がいいですね」
樹王「でも・・・」
戦女神「明日、下手をすれば今日にでも全土に例の情報を発布します。そうなれば、戦端はすぐにでも開かれるでしょう。それに備えておいてください」
樹王「分かり、ました・・・」
戦女神「それでは、私はこれで失礼しますね。おやすみなさい」スタスタ
樹王「おやすみなさい・・・」
ガチャッ パタン
戦女神「さて、取り敢えずはこんなものですかね」フウ…
戦女神「・・・書類仕事を軽く終わらせたら、私も男の様子を見に行きましょうかね」スタスタ
ー王城・裏地演習場ー
土蜘蛛「えー、それじゃあ今から今日の訓練を始めるッスよー。今日は、オイラとこちらの男さんが皆を監督するッス」
男「あー、男だ。よろしく」
騎士達『よろしくお願いします!』
土蜘蛛「んじゃあ、取り敢えず部隊を二つに分けるッス。その後、両部隊は方陣隊形からの前進、敵の遠距離攻撃に対応しつつ、竜翼の陣に展開、接敵と同時に集団模擬戦に入って欲しいッス。それぞれの部隊長は、オイラと男さんが務めるッスよ」
騎士達『はっ!』
土蜘蛛「そんじゃあ、部隊構成を始めるッス!」
騎士達『はっ!』ザッザッザッザッ!!
ー四時間後ー
土蜘蛛「よーーっし。そんじゃあ皆、一度昼休憩に入るッスよ! 各自昼食を取るッス! 二時間後、また総合演習をして今日は終わるッス! しっかり食べておくッスよー!」
騎士達『はっ!』
土蜘蛛「では、解散ッス!」
ザワザワ ガヤガヤ
ツカレタナー マダゴゴモアルワヨー
男「・・・ふう」ドカッ
土蜘蛛「男さん、お疲れ様ッス。飲み物、どうぞ」スッ
男「ああ、ありがとう。いただくよ」ゴクゴク…
土蜘蛛「今日はどうでしたか?」
男「ああ。騎士達の練度は決して低くはないな。それでも多少は厳しいだろうが、何とか王都の防衛くらいは・・・」
土蜘蛛「ああ、違うッスよ。騎士達の話じゃなくて、男さんの話ッス」
男「俺?」
土蜘蛛「ええ。男さん、騎士団の演習に参加するのは二年振りッスよね、確か。どうッスか?」
男「求められてる答えの幅が広すぎて、何ともな・・・」
土蜘蛛「いやあ、さっきの総合演習、見事な指揮だったッスよ」
男「世辞はいらないさ。二年も部隊指揮から離れていたら、腕は落ちる。結局、負けてるしな」
土蜘蛛「ま、オイラは現役ッスからね」
男「色々と参考になったよ。ありがとな」
土蜘蛛「いえいえ、こちらこそ」
???『あ、いた! おーーい!』タッタッタ…!
土蜘蛛「ん? あれは・・・」
男「男の子と、女の子、か・・・?」
タッタッタタッタッタ… ザザッ
焔姫「はあっ、はあっ・・・! お、お疲れ様です、『土蜘蛛』さん!」
戦鬼「チーッス! お疲れー」
土蜘蛛「はいはい、お疲れ様ッスね二人とも。『焔姫』は特に」
戦鬼「姉ちゃん、体力ねえからなあ・・・」
焔姫「う、うるさいなあ・・・!」
土蜘蛛「まあまあ、二人とも。丁度良かったッス。こちら、例の男さんッスよ。・・・男さん、この二人は・・・」
焔姫「は、初めまして! 王国近衛騎士団、『称号持ち』の一人で、序列は第十二位、『焔姫』といいます!」
戦鬼「同じく、序列第十一位、『戦鬼』。よろしくな!」
男「ああ。男だ、よろしく」
戦鬼「兄ちゃん、『武神』なんだろ?」
男「昔はな」
土蜘蛛「二人とも、あまりその名で呼ばれたくないらしいッスよ。普通に男さんと呼んであげて欲しいッス」
男「いや、まあ妹の前でなければ構わないんだがな・・・」
焔姫「そうなんですか?」
戦鬼「よく分からんが、取り敢えず男って名で呼べばいいんだろ」
男「ああ、それでいい」
土蜘蛛「で、二人とも。何の用ッスか?」
焔姫「忘れたんですか? 『土蜘蛛』さん。演習を見に行くって言ったじゃないですか。手合わせもして欲しいって」
戦鬼「そうそう。もう機材の設置も殆ど終わったし、後は他の奴らで充分に済ませられる作業しかないからさ」
土蜘蛛「あー、そんな事も言ってたッスねえ・・・」
男「おい、手合わせってまさか・・・」
焔姫「は、はい。出来れば、男さんにお願いしたいと・・・」
戦鬼「駄目か?」
男「あー・・・。構わないが、二年も現場から離れていたんだ。満足してもらえるような手合わせは期待しないでくれよ?」
焔姫「じゃあ・・・」
男「少しだけでよけりゃあ、相手をさせて貰うよ」
戦鬼「マジか。駄目で元々、言ってみるもんだな」
焔姫「そ、それじゃあ宜しくお願いしますね!」
土蜘蛛「良かったッスねえ、二人とも」
男「あー、でも先に飯を食ってきていいか? 流石に腹が減った」
戦鬼「あ、そういや昼休憩中だもんな。それなら食堂にでも・・・」
焔姫「それには及ばないわ、弟!」
戦鬼「は?」
焔姫「こんな事もあろうかと、私がお弁当を作ってきたのよ!」ジャーーン!
土蜘蛛「お、美味そうッスね」
戦鬼「あー、何か包みを持ってると思ったらそれか」
焔姫「手合わせして頂けるお礼という訳じゃ無いですけど、よかったらどうぞ!」
男「おお、有り難いな。頂くよ」ヒョイパク
焔姫「ど、どうでしょう?」
男「! おお、中々美味いぞ」パクパク
焔姫「そうですか! 良かったー・・・!」
土蜘蛛「あ、オイラも頂くッスね!」ヒョイパク
焔姫「どうぞどうぞ! 沢山食べてくださいね!」
とてつもなく久しぶりにきたな
ここ最近忙しくて・・・。
見てくださった方がいて嬉しいです。
ここ最近忙しかったもので・・・。
見てくださった方がいて嬉しいです
連投失礼しました
乙!!!
期待
ー数十分後ー
男「さぁて、っと。んじゃあ飯も食ったし、そろそろ始めっか」
焔姫「はい! 宜しくお願いします!」
戦鬼「んじゃあ、最初は姉ちゃんから行くか
?」
焔姫「そうさせて貰うわ」
土蜘蛛「あら? お二人さん、二人掛かりじゃなくていいんッスか?」
戦鬼「いやいや。折角の手合わせだからよ。ちゃんと一対一でやりたいんだよ」
焔姫「ええ。全く相手にならないかも知れなくても、私自身の実力を確認しておきたいんです」グッグッ
土蜘蛛「・・・全く相手にならない、とか言ってる割には勝つ気満々ッスね」
焔姫「そりゃあ、負けるよりは勝った方がいいに決まっていますからね!」
男「お手柔らかに頼む。てか、武器は?」スラッ
戦鬼「ああ、姉ちゃんは全身凶器だから。武器は持たねえよ」
焔姫「弟? ・・・妹にしてあげようか?」ニコ
戦鬼「ひい! お、俺の息子は関係ないだろ!?」
土蜘蛛「まあまあ二人とも。・・・男さん、『焔姫』は能力持ちッスから。武器じゃなくて能力で戦うんッスよ」
男「成る程ね」
焔姫「はい! ですので、遠慮なさらずに掛かってきてください」
土蜘蛛「それじゃあ、審判はオイラがするッスよ。危ないと思ったり、勝負が着いたと判断したら、すぐに止めるッス」
男「了解」
焔姫「お願いします!」
土蜘蛛「では、模擬戦第一試合・・・」
焔姫「・・・っ」ググッ…
男「・・・」チャキ…
土蜘蛛「・・・開始ッス!」
焔姫「男さん、行きます!」ダッ!
男「掛かって来い!」グッ!
ー王女の部屋ー
妹「・・・たいくつ」ポツーン
ーー王女『妹ちゃん。すいませんが、私はこれから大事なお仕事があるので、暫く席を外します。いい子で待っていてくださいね』
妹「・・・お兄ちゃんもお仕事だし・・・」
妹「・・・暇、です」ボー…
コンコン
妹「? ・・・どうぞー」
メイド長「失礼致します、妹様」ガチャリ
妹「・・・メイドさんだ」
メイド長「はい。王女様がお仕事ですので、妹様が退屈なのではと思い、参りました」
妹「・・・うん。少し、退屈だった」
メイド長「では、私とお散歩でもしましょうか?」
妹「・・・うん、行く」
メイド長「それでは、参りましょう! 今日はお城の見学ツアーです!」
妹「・・・おー」パチパチ
ー王城・会議室ー
王「では、予定を早めると・・・?」
戦女神「はい。今日の夕方、巳の刻に発表致します」
王女「確かに、遅いよりは早く発表した方がいいでしょうね」
王「・・・分かった。では、巳の刻にワシが全国民に向けて発布しよう・・・」
戦女神「宜しくお願いします」
王女「・・・それに、もう仮定の話ではなくなりましたからね」チラッ
王「うむ・・・。何故、今になってというのが本心ではあるがな・・・」クシャッ
戦女神「・・・隣国からの、宣戦布告の書状、ですか」
王「うむ。本日より五日後、我が国へ攻め入ると書かれておったわ・・・」
戦女神「五日の猶予をくれたのは、向こうの情けでしょうか」
王女「かも、しれませんね」
王「ともかく、これで戦争は避けられぬものとなった・・・。『戦女神』よ、一層気を引き締めておいてくれ・・・」
戦女神「はっ。全騎士に徹底させます」
王「うむ。頼むぞ・・・。王女、お前もじゃぞ・・・」
王女「分かっています」
王「うむ・・・」
王「・・・皇帝よ。何故、今更我らとの戦を望むのだ・・・?」
ー演習場ー
ボウッ! ゴォ…ン! ドォン! ドドォン!
ヒューーー… スタッ!
男「(焔の姫、か。確かに、焔を纏って戦う様は、その名がピッタリだな)」スッ
焔姫「くっ・・・! あれだけ攻撃しても、碌なダメージを与えられないなんて・・・!」
男「いやいや、結構ギリギリだったぞ。あんなに連続で焔をばらまかれたら、避けるので精一杯だったさ」
焔姫「うぅー・・・! ま、まだですっ! 私だって、焔を扱えるっていうだけで『称号持ち』になった訳じゃないんですからね!」ゴウッ!
男「お?」
焔姫「はあぁぁ・・・! はっ!」ボボウッ!
男「双剣か・・・」
焔姫「焔の姫が繰り出すは、燃え盛る双の剣!」クルクルクルクル… パシッ!
男「そっちが本領ってか?」
焔姫「いえいえ。あくまで武器の一つですよ!」
男「全身凶器、ってのもあながち間違ってないのかもな」
焔姫「うっ・・・! そ、そんな事無いですよ!」
男「まあ、俺としても無手の女の子と戦うのは気が引けてたんだ。剣を使ってくれるのは、ある意味ありがたい!」チャキッ!
焔姫「(そんな、まだ力を抑えて戦っていたの!?)」
男「さて、それじゃあ準備体操は終わりにして、本格的に行こうか」
焔姫「(じゅん・・・!? ・・・私、自信無くしそう・・・)」ズーン…
男「ほら、ぼうっとしてると斬っちまうぞ!」ダンッ!
焔姫「もうー! やってやりますよ! えぇーーい!」ダッ!
ー王城・屋上ー
メイド長「えー、こちらが屋上、屋上で御座いまーす!」
妹「・・・わ、いいけしき」
メイド長「ええ。ここからの景色はとても素晴らしいですよ。東を見れば市街が、西を見れば広大な庭が。北を見れば遠目に海が見えますし、南を見れば騎士達の訓練を一望出来ます」
妹「・・・すごいねー。・・・あれ? あそこ、爆発してるよ?」
メイド長「爆発!?」
妹「・・・うん。南? の方」
メイド長「演習場で? 確か、今は昼休憩のはず・・・」
妹「・・・あ、また」
メイド長「今ここに再びの爆発!?」
妹「・・・ほら、あそこ」
メイド長「・・・あ、本当ですね」
妹「・・・きしの人たちは、爆発するの?」
メイド長「いやいや! そんな事はありませんよ!?」
妹「・・・じゃあ、何だろうね? じこ、かな・・・」
メイド長「いや、待ってください。あの炎、もとい焔はもしかしたら・・・」
妹「・・・あ、お兄ちゃん」
メイド長「おにっ!?」
妹「・・・うん。たぶんだけど、あれは、お兄ちゃん」
メイド長「わ、私には全然分かりません・・・」ジー…
妹「・・・私は、お兄ちゃんの妹だから」フンス
メイド長「そ、そうですか・・・。(ここから演習場までは数キロあります。それなのに個人まで識別できるなんて・・・。妹様、貴女は、一体・・・)」
妹「・・・あ、クロワッサンみたいな雲・・・」
ー演習場ー
焔姫「はあっ、はあっ・・・!」ボボボ…
男「ふう・・・。流石は『称号持ち』。充分強いな」チャキッ
焔姫「あ、ありがとう・・・ござい、ます・・・!」ハア、ハア…
焔姫「(う、嘘でしょ・・・!? 確かに、勝てるとは思っていなかったけど、それにしたってここまで実力に差があるなんて・・・!)」
焔姫「(何度も寸止めや峰打ちで止めて貰ってる・・・。実戦なら、とっくに私の首は落ちてる・・・!)」
焔姫「(遠距離から攻撃しても弾かれるか避けられるだけだし、近接なんて足下にも及ばない・・・)」
焔姫「(これが、元・王国近衛騎士団序列第零位、『武神』・・・)」ゴクリ…
男「ん? そろそろ止めるか?」
焔姫「・・・いえ! まだまだ!」ダダッ!
男「いい返事だ!」チャキ!
戦鬼「・・・姉ちゃん、相手になってねえじゃん・・・」
土蜘蛛「それだけ、男さんが強いって事ッスよ。『焔姫』の嬢ちゃんだって、弱くはないッス。実際、何度か惜しい場面もあったし」
戦鬼「それは分かってるけどさ・・・。能力持ちでもない男さんが、どうしてあそこまで強くなれたのかな、って」
土蜘蛛「さあ、それはオイラにも分からないッスけど・・・あ、また『焔姫』の嬢ちゃんが仕掛けたッスね」
戦鬼「姉ちゃん、どうする・・・?」
焔姫「ええい! 行けっ、焔矢三連!」ボウッ! ヒュヒュヒュンッ!
男「頭、心臓、肺の三カ所を狙って来るとは、中々いい根性だな!」ブン! ボボボンッ!
焔姫「掛かった・・・!」ニヤッ!
カッ!
男「なっ、爆はっ・・・!」
ドオォォォ…ン!
焔姫「・・・」パラパラ…
焔姫「・・・矢の形状に膨大な焔を圧縮。纏めて、相手に投げつける・・・」
焔姫「当たればそれで良し、当たらなくても、もし打ち落とされれば、膨大な焔の固まりは解れて、一気に大量の酸素を得た焔は・・・」
焔姫「爆発します!」ドヤッ!
戦鬼「・・・何か姉ちゃんノリノリで解説してるけどさ・・・」
土蜘蛛「これは訓練で使っていい技じゃないッスよねえ・・・」
戦鬼「ってか、これもう後に控えてる俺の事忘れてるだろ。もう時間一杯じゃね?」
土蜘蛛「あ、そうッスね。もう終わりッス」
戦鬼「・・・まあ、姉ちゃんの粘り勝ち、か?」
土蜘蛛「そんな上手く行くッスかねえ?」
>>199
有り難う御座います。ご期待に添えるよう頑張りますー
更新頑張って下さい。楽しみに
待ってます
焔姫「・・・はっ! い、いけない、やり過ぎちゃった!?」
男「ああ、全くだ。訓練で、しかも手合わせって事忘れてたろ、お前」ザッ!
焔姫「ひゃあっ!? ・・・あ、あの爆発の中で、何で生きて・・・!?」
男「本当に[ピーーー]気だったのか!?」
焔姫「い、いえ! こ、言葉の綾ですよ!」
男「・・・ったく。あんな恐ろしい技持ってるなんてな。流石は『称号持ち』か」
焔姫「す、すいませんっ! ついカッとなっちゃって」ペコペコ
男「おいおい・・・。そんなしょうもない理由で殺されたんじゃ、たまったもんじゃないぜ」
焔姫「うぅ・・・。面目ないですー・・・」
焔姫「・・・はっ! い、いけない、やり過ぎちゃった!?」
男「ああ、全くだ。訓練で、しかも手合わせって事忘れてたろ、お前」ザッ!
焔姫「ひゃあっ!? ・・・あ、あの爆発の中で、何で生きて・・・!?」
男「本当に殺す気だったのか!?」
焔姫「い、いえ! こ、言葉の綾ですよ!」
男「・・・ったく。あんな恐ろしい技持ってるなんてな。流石は『称号持ち』か」
焔姫「す、すいませんっ! ついカッとなっちゃって」ペコペコ
男「おいおい・・・。そんなしょうもない理由で殺されたんじゃ、たまったもんじゃないぜ」
焔姫「うぅ・・・。面目ないですー・・・
戦鬼「・・・土にぃ、今の見えた?」
土蜘蛛「まあ、何とか辛うじてッスけどね」
戦鬼「男さん、一瞬で消えたんだけど、何してた?」
土蜘蛛「単純に言えば、跳んでたッス」
戦鬼「跳んでた?」
土蜘蛛「ええ。爆発の瞬間、一気に真上に飛び上がって、後は爆風に乗って滞空、鎮静後着地ってとこッスかね」
戦鬼「・・・それ、言うのは滅茶苦茶簡単だけど、実行は不可能じゃね? 小等部の子供達の妄想かよ」
土蜘蛛「でも、実際に男さんはやってのけたッスよ。妄想のような事でもやってのけるから、序列第零位なんて肩書きを誇っていたんじゃないッスかねえ」
戦鬼「・・・俺、男さんって人型の魔物か何かなんじゃないか、って思うわ・・・」
土蜘蛛「確かに。・・・さて、と。おーーい、2人ともーー!! もう時間ッスよー!!」
焔姫「え? あ、もう終わり?」
男「みたいだな。そんじゃあ・・・」フッ…
焔姫「え?」
ヒュオッ…!
男「これで、一本だ」チャキン!
焔姫「!!? (い、一瞬で、こんな・・・!)」
男「・・・実戦ならこのまま首を落として俺の勝ち、だな」
焔姫「ま、参りました・・・」ヘナヘナ
男「よし、訓練終わりだ」スー… パチン
土蜘蛛「いやあ、流石ッスねえ」
戦鬼「完敗だな、姉ちゃん」
焔姫「ここまで実力に差があるなんて、思ってなかったわ・・・」
男「いや、お前も中々強いぞ。今日みたいな戦いが出来るなら、これから先も大抵の奴らなら問題なく対応できるはずだ」
焔姫「あ、有り難う御座います」
ガヤガヤ ザワザワ
ワイワイ ガヤガヤ
土蜘蛛「昼休憩に行っていた騎士達も戻ってきたッスね」
戦鬼「ちぇー。俺はお預けかぁ・・・」
男「まあ、また機会があれば相手になるさ」
戦鬼「え、マジで? あざーっす!」
焔姫「お、男さん! 私もまたお願いします!」
男「ああ、分かった。次の機会にな」
焔姫「はいっ!」
土蜘蛛「よかったッスねえ、二人とも。さて、んじゃあ午後の訓練を再開するッスよ」
戦鬼「んじゃあ、俺達は邪魔にならないように戻るとするわ」
焔姫「ええ、そうね。それじゃあ、お二人とも、失礼します」
土蜘蛛「あらら? 別に残ってても構わないッスよ? 訓練の手伝いをしてくれると尚良しッス」
焔姫「え、と・・・。どうしよっか、弟?」
戦鬼「んー・・・。参加はしたいんだけど、一応放送機材のチェックも行かないといけないんだよなあ・・・」
焔姫「そうよねえ。・・・でも、それって一人いれば充分だと思わない?」
戦鬼「・・・」
焔姫「・・・」
二人『じゃーんけーん!』
男「っ・・・」ガクッ
土蜘蛛「男さん、大丈夫ッスか?」
男「あ、ああ・・・。じゃんけんで仕事に行くかを決めるのかこの二人・・・」
二人『ぽんっ! あいこでしょっ! しょっ!』
男「・・・いつもこんな感じか?」
土蜘蛛「そうッスね」
焔姫「やった、勝った!」
戦鬼「うがあー! 負けたあぁぁ!」
土蜘蛛「お、終わったッスか」
焔姫「ほら弟! さっさと行ってきなさい!」
戦鬼「はあ、仕方ねえか・・・」
男「まあ、とっとと仕事終わらせて戻ってくれば間に合うさ」
戦鬼「それもそうか! んじゃ行ってくるわ!」ダダッ!
焔姫「それじゃあ、私はお二人のお手伝いしますね!」
土蜘蛛「よろしく頼むッスよ」
騎士H「『土蜘蛛』さん! 総員揃いました!」
土蜘蛛「了解ッス。・・・それじゃあ、午後の訓練を始めるッスよ! 午後からは序列第十二位、『焔姫』が加わってくれるッス。気合い入れて行くッスよ、皆!」
騎士達『はっ!』
>>212 どうもです。励みになります、頑張ります
なにこれ面白い
零位つぇぇぇぇぇぇ
おつ
更新待ち遠しいなー
楽しみに待ってます!
面白い!
めちゃくちゃ期待してます。
ー数時間後・巳の刻 王の間ー
戦女神「王よ。お時間です」
王「うむ・・・。拡声器をここへ・・・」
騎士H「はっ!」ガチャガチャ スッ
王「では・・・」
戦女神「宜しくお願い致します」
王『・・・全国民に告げるー』
ー王城・男の部屋ー
男「始まったか」
妹「・・・王様の、声?」ナデナデ
仔竜「きゅー・・・?」ウトウト
王『急な話ではあるが、決して慌てず、落ち着いて聞いて欲しい・・・』
ーパン・ド・VIPー
主人「おいおい。何か外で準備していたのは、これだったのか?」
奥さん「まさか、王様から直々のお言葉だなんてねえ・・・」
主人「一体何だってんだ?」
王『本日より五日後、正午より・・・』
ー城下町・食堂ー
長女「これって・・・」
長男「何だってんだいきなり!?」
次男「王様直々のお言葉なんて、いつ振りだ!?」
おばちゃん「静かにしな! 聞こえないだろう!」ドスドス
兄弟『お、おう!』
長女「母さん・・・」
おばちゃん「・・・ちょいとまずいかもねえ・・・」
王『我が国と、隣国との間で・・・』
ー王城・王の間ー
王「・・・戦争が起こる。本日、正式な宣戦布告の書状も届いた・・・」
戦女神「・・・」
王「よって、翌日より、全国民は騎士団の指示に従い、南の友好国に避難してもらう。この国、特に城下町含む首都近郊は、恐らく一番戦火の激しい場所となるだろう・・・」
王女「・・・っ」ギュウ…
王「突然で申し訳ない。だが、これは紛れもない事実である。決して慌てず、冷静な行動を心掛けてくれ・・・。・・・本当に済まない。以上だ・・・」ガチャリ
戦女神「王よ・・・」
王「言うな。ワシの信用が失墜しようが、国民に恨まれようが、罵られようが、そんなものはは構わん。・・・国民の事を第一に考えて行動しろ・・・」
戦女神「・・・はっ」
王女「父上・・・」
王「王女、お前もじゃ。王族として、国民を導く立場の者としての行動を心掛けろ・・・」
王女「・・・はい。必ず」
ー城下町・空き家ー
???「あはは、始まったね!」
???「そうね。私達の待ち望んだ祭りの始まりだわ」
. . .
???「楽しみだなあ! 昨日今日とアイツから送られてきた情報を見たら、今回は間違いないみたいだしね!」
???「あら、本当? なら、今回は無駄足にならなくて済みそうね」
???「うん! 五日後かあ・・・! わくわくするなあ!」
???「ふふ、そうね。やっと、私達の望みが叶うんだわ・・・」ウットリ
???「きっと皆大喜びだよ!」
???「ええ。だって・・・」
???「「やっと五年前の続きが出来るんだから」」
ー城下町・空き家ー
???「あはは、始まったね!」
???「そうね。私達の待ち望んだ祭りの始まりだわ」
. . .
???「楽しみだなあ! 昨日今日とアイツから送られて きた情報を見たら、今回は間違いないみたいだし ね!」
???「あら、本当? なら、今回は無駄足にならなくて 済みそうね」
???「うん! 五日後かあ・・・! わくわくするな あ!」
???「ふふ、そうね。やっと、私達の望みが叶うんだ わ・・・」ウットリ
???「きっと皆大喜びだよ!」
???「ええ。だって・・・」
???「「やっと二年前の続きが出来るんだから」」
ー王城・男の部屋ー
妹「・・・せんそう?」
男「ああ。五日後に、隣国が攻めてくるんだ」
妹「・・・何で?」
男「それが分からないんだ。多分、国王が病気だから、それを狙ったんだとは思うが・・・」
仔竜「きゅー」ヨジヨジ
男「・・・」ガシッ ヒョイ
仔竜「くぅー・・・?」プラーン
妹「・・・お兄ちゃんも、せんそうするの?」
男「ああ・・・。お前や、皆を守らなくちゃいけないからな」
妹「・・・お兄ちゃんが私たちを助けてくれるなら、お兄ちゃんがピンチの時は、私が助けてあげるね?」
男「え?」
妹「・・・私も、お兄ちゃんを守ってあげる」
男「・・・ああ、頼むぞ?」ワシワシ
妹「あうあうー・・・」
コンコン
男「ん? 開いてるぞー。入ってきてくれ」
ガチャリ
戦女神「失礼しますね。男、今後の事でこれから会議があります。来てくれますか?」
男「ああ、勿論だ。妹、少し出てくるから、待っててくれ」
妹「・・・分かった。リューと遊んでる」オイデー
仔竜「くぅ?」パタパタ
男「頼む。それじゃあ女、行くか」
戦女神「はい。妹ちゃん、また後で」
妹「・・・またねー」バイバイ
ガチャ バタン
ー王城・会議室ー
バタン
戦女神「すいません、お待たせしました」
姫巫女「気にするでない。・・・おお、何じゃ男。久し振りじゃのう?」ニカッ
男「ああ、『姫巫女』か。相っ変わらず見た目も何も変わらないのな。今年で何歳になったよ?」
姫巫女「ふ、妾の齢が知りたければそれ相応の覚悟を持って訊ねろ。さもなくばその喉笛を喰い千切ってしまうぞ? ・・・忘れたわけではあるまいな?」クフフ…
男「はいはい、悪かったよ」
焔姫「(・・・え、何今の遣り取り?)」
戦鬼「(わ、分からねえ・・・。『姫巫女』の姉ちゃんって、歳とらねえの・・・!?)」
水薫「やあ、男クン。久し振りだねえ。元気だったかい?」
男「おお、『水薫』か。お前も相変わらずチャラチャラしてんのな」
水薫「はっ! モテないからって、ボクの事を僻んでいるのかい!?」キラーン
男「あー、はいはい。そうですねー」
水薫「くっ、君も相変わらずのあしらい方だね・・・!」
竜騎「今朝振りだな、男よ」
男「ああ。あの仔竜、未だに俺の部屋にいるんだが、竜舎に帰さなくていいのか?」
竜騎「構わんぞ。無理に戻して暴れられても困るからな。暫くはお前と共に居た方が、色々と都合もいいだろうさ」
男「そうか。なら、暫くは面倒見ておくわ」
竜騎「頼む」
死影「う、ふふ・・・。二年振りねえ、『武神』・・・?」
男「そうだな、『死影』。何か、二年前より更に暗くなってねえか?」
死影「さあ・・、・。どうかしらねえ・・・?」クスクスクス…
月詠「・・・『武神』、お帰り」ウツラウツラ
男「ただいま、とは言わねえよ。戻るつもりはないからな」
月詠「・・・そう。・・・ふふ、二年振りだというのに、全くそんな気がしないわね・・・」コックリ… コックリ…
男「確かにな。無理してないで寝たらどうだ?」
月詠「・・・お言葉に、甘える・・・」バタンスー…
樹王「お、男様、お疲れ様です!」
男「あ、『樹王』。お前、体調が悪かったって聞いたけど、大丈夫か?」
樹王「ええ、今では何ともないですっ。ご心配お掛けしました・・・」
男「いやいや。平気なら良かった。体調管理はしっかりな」
樹王「は、はいっ///」
幻夢「ねえねえ! 男さんってどの位強いの!? ここにいる『称号持ち』全員を相手に勝てる!?」ワクテカ
男「お前は?」
幻夢「僕はね! 王国近衛騎士団、序列第二位『幻夢』! 僕も強いよー!」ピョンピョン
男「へえ、二位か。それじゃあ、確かに強いんだろうな」
幻夢「えへへー。もしかしたら、男さんも殺せちゃうかもね!」ニコッ
男「かもな。二年もブランクあるし、相手にもならないかも知れないな」
戦女神「こら『幻夢』。あまりそういう事は言うものではありませんよ」
幻夢「はーい。・・・えへへ、怒られちゃったっ」
男「(何だこいつは・・・。見た目通りの子供ではないとは思うが・・・。『称号持ち』の二位になるくらいだしな。相当のやり手か)」
獣牙「ぶしん!」ヒョイッ
男「うお、っとぉ。な、何だいきなり肩車なんて」
獣牙「アタシはじゅーが! よろしくな」ニカッ
男「じゅーが? ・・・ああ、『獣牙』か。よろしくな」
獣牙「ぶしん! 力持ちだな!」
男「お前が軽いからな。てか、早く降りてくれ」
獣牙「えー・・・。じゃあ、また後で遊んで!」ピョンッ! スタッ
男「あいよ」
樹王「(『獣牙』ちゃん、いいなー・・・)」
戦女神「予想を遙かに越える馴染み方ですね」
戦鬼「まあ、元々男さんがいるって前情報あったしな」
焔姫「私達は既にお会いしてましたし」
土蜘蛛「オイラもッスね」
戦女神「まあ、変な問題が起こらないのは良い事ですが・・・。!」
戦鬼「あっ!」
姫巫女「・・・まあ、我らの集まりで問題が起こらない訳がなかったのう・・・」ハァ…
バチバチィッ! ダダッ!
武御雷「相手してくれよ・・・! 『武神』とやらよォ!」ダンッ!
焔姫「ち、ちょっと止めなさいよ『武御雷』!」
武御雷「ハッ! 黙ってろよ!」ヒュッ…
男「・・・」
土蜘蛛「男さん、来てるッスよ!?」
武御雷「遅ェ!」ブンッ!
男「頭を狙って横薙に一閃。悪くはないが、敵意が明確すぎて、狙いが筒抜けだぞ」ヒョイッ
武御雷「なっ!? (・・・後ろからの攻撃を振り向きもせずに!?)」
男「好戦的なのはいいが、相手を選べるようになると尚良しだ」クルッ ブオッ…!
ドンッ!
武御雷「ガッ!?」ビュンッ! ドゴオォ…ン!
パラパラ…
戦女神「ああ、会議室の壁にへこみが・・・」
戦鬼「そこかよ」
獣牙「た、タケミカズチ! 大丈夫か!?」
武御雷「ゲホッ・・・! ・・・クソッ! マジかよアイツ・・・! 何でただの掌底でここまで・・・!」ヨロッ
男「お前は強いけど、自分の力を過信しすぎだ。もうちょい色んな事を学べよ。今のだって、特に大した事はしてないぞ。ただの技術だ。お前にだって出来る」
武御雷「!! ・・・確かに強ェな。・・・でも、次は必ずテメエを倒してやる!」
男「いいぜ、いつでも来な」
戦鬼「てかさ。あれも避けるって、男さん無敵過ぎね?」
焔姫「私、よくあんな人を相手に戦おうなんて思ったなあ・・・」
獣牙「あいつの強さずるいな! 何かずるしてるぞきっと!」
竜騎「確かに、そう言われても仕方がないくらいだな」
姫巫女「全く、『武御雷』の戦いたがりにも困ったものじゃのう・・・」
樹王「『称号持ち』になった直後は、会う人会う人にこんな感じでしたものね・・・」
死影「・・・それより、さっさと会議を始めないのぉ・・・?」
土蜘蛛「そうッスね。そろそろ遊びも終わりにした方が良いッス」
戦女神「そうですね。・・・では、これより戦前緊急会議を執り行います。総員、着席」
全員『了解』ザッ!
戦女神「ではまず、首都の防衛、特に城下町近辺の防衛体制についてですが・・・」
>>221-224
レス有り難うございます。とても励みになります。
今後とも宜しくお願い致しますねー。
>>221-224
前作最近読んだやつでびっくりした
面白かったから今回も最高の期待を背負わせてやろぅ
これ続き気になる
はよ
王国近衛騎士団に黒いのいるね
速報復活しましたよ、また更新楽しみにしてます。
速報復活しました、また更新楽しみにしてます。
男強すぎワロタ
続き期待
ほす
はよ!はよ!
どうも、1です。久し振りに来てみたら復活していて、安心しました。
もう暫くしたら続きを投稿させて頂こうと考えております。
もう暫くお待ちくださいませ。
復帰してからレスをしてくださった皆様、有り難う御座います。皆様のレスを励みに頑張ります。
おう、あくしろよ
ー1時間後・会議室ー
戦女神「では、これで本日の会議を終わりたいと思います。何か意見や質問等はありますか?」
幻夢「ない!」
竜騎「うむ。我々『称号持ち』を、二人一組で街の主要地区に配備。さらに細かい地点に騎士幾つかのグループに分けて配置。基本的な防衛戦術だが、故に強固で、崩れにくい」
樹王「相手の攻撃がそこまで強くない所から強い所に、手の空いた人員を派遣できますしね」
獣牙「???」ポカン
水薫「はっはっは! お子さまにはまだ難しい話しだった右手が喰い千切られるーー!!」
獣牙「また・・・! またバカにしたな!?」ガシガジガジ!
武御雷「落ち着けよバカ共が」バチン!
獣牙「ひゃっ!」ビクッ! ドテッ
水薫「た、助かった・・・」ズキズキ
獣牙「何するんだタケミカズチ! ビリッとしたぞー!」
武御雷「テメエが落ち着かねェからだろうが・・・。まだちゃんと会議が終わった訳じゃねェンだ。席着いとけ」
戦鬼「珍しいな、『武御雷』が正論を言うなんて・・・」
武御雷「・・・ンだと? テメエみたいな変人に言われると腹が立つンだがなァ? 薙払うぞ?」
焔姫「二人とも止めなさいよ! また『戦女神』さんに怒られるわよ!?」
樹王「そうですよ。喧嘩なんて止めてください二人とも」
武御雷「喧嘩っつーか・・・。ソイツが喧嘩売ってきたンだろォが・・・」
戦鬼「お? お? 俺の所為かコノヤロー」クネクネ
武御雷「・・・」イラァッ
姫巫女「ほれほれ、いい加減にせんか。『戦女神』、とっとと終わらせてしまえ」
戦女神「そうですね。・・・それでは、これにて会議を終わります」
全員『はっ』
戦女神「・・・いよいよ、戦端が開かれます。それも、たった五日後。相手は、常勝の強国」
全員『・・・』
戦女神「攻めてくる理由も分からずない為、談合や交渉はほぼ不可能。戦うしかありません」
戦女神「私達は、王国近衛騎士団として、国を、王を、民を守らなくてはいけません」
全員『然り』
戦女神「己の役目を果たし、守るべきものを守ってください。・・・各員の奮闘を期待します」
全員『はっ!』
戦女神「では、解散。・・・皆、死なないように」
全員『了解!』ザッ!
幻夢「それじゃあ、僕は先に行くね! あでゅー!」スゥ…
竜騎「あ奴、またもや・・・!」
死影「ふ、ふふふ・・・。あの子、懲りないわよねえ・・・? お仕置きが、必要かしらぁ・・・?」
姫巫女「止めろ止めろ。お主が言うと仕置きどころで済みそうに無いわ」
土蜘蛛「・・・」
戦女神「あの、男・・・」
樹王「? 『土蜘蛛』さん? どうかしましたか?」
土蜘蛛「え? いいえ? どうもしないッスよ」キョトン
水薫「ハハハ。もうすぐ戦争なんだ。緊張の一つや二つくらい、当然だよ。隠さなくてもいいさっ」ガタガタガタガタ……!
獣牙「すいくんカッコ悪いなー」
戦女神「あの、おと・・・」
水薫「うっ、うるさい! 武者震いというやつさ!」
男「その割には、随分と震え方が面白いが?」ニヤニヤ
土蜘蛛「本当に武者震いッスかねえ?」
月詠「何だかんだ、『水薫』は恐がり・・・」
水薫「う、うるさいな君たちは!」
戦鬼「まあ、やる時はやってくれるもんな、水にぃは」
焔姫「そうね。頼りにしてますからね、『水薫』さん?」
水薫「ま、任せておきたまえ! では、ボクも失礼するよ!」ガチャリ
戦鬼「あ、待てよ水にぃ! 俺も行くぜ!」
焔姫「あ、じゃあ私も! 皆さん、失礼します!」
バタン
戦女神「男、少し話し・・・」
竜騎「それでは、俺も失礼するとしようか・・・」ガタ
死影「私も行くわぁ・・・」スッ
樹王「あ、私も! 男様、失礼します!」ペコリ
男「ああ、またな」
樹王「はい、また! ・・・あ、『竜騎』さん! この戦況予測なんですけど、この場合・・・」
バタン
戦女神「男、話し・・・」
獣牙「タケミカヅチ!!」ジー…!
武御雷「・・・ンだよその目は・・・」
獣牙「・・・」ジー…!
武御雷「・・・分かった、分かったよ。食堂に連れてけっつうンだろォが・・・」ハァ…
獣牙「よし行こうすぐ行こう早く行こう!」
武御雷「だァ! ちょっと待て!」
獣牙「? どうした、タケミカヅチ?」
武御雷「行ってもいいが、もうすぐ戦争なんだ。飯の後は、俺の訓練に付き合ってもらうぞ」
獣牙「うん! もちろんだ! 私も訓練したいからな!」
武御雷「それならいい。行くか」
獣牙「うん! みんな、またなー!」ガチャリ
バタン!
戦女神「お、おと・・・」
姫巫女「では、妾も戻るとしよう・・・。男、お主も来るか?」
戦女神「・・・」ズーーン……
男「いや、妹を待たせてるしな。すぐに帰るよ」
姫巫女「くっく。相変わらずつれない奴・・・」クスクス
男「そいつは悪かったな」
姫巫女「なに、それでこそお主よ。では、今度こそ戻るとしようか」ザザザー…
土蜘蛛「『姫巫女』さんの足下に水溜まり? 何スかそれ?」
男「転移術だよ。あの水に実体は無いから、塗れる心配はないし、気にしなくてもいいぞ」
姫巫女「その通りじゃ。ではまたの」
ズズズ… ザブン
土蜘蛛「いやあ、珍しいもの見たッス」
男「あいつ、元々の出自が東方らしくてな。珍しい術やら武器やら知識やら、沢山持ってるんだよな」
土蜘蛛「へえ。・・・あ、もしかして男さんの持ってる、変わった形の剣も?」
男「ああ、東方で作られた、『崩月』っていう剣だ。東方では『剣』じゃなくて『刀』っていうらしいがな」
土蜘蛛「へえー・・・」
男「興味があったら、今度本人に直接訊いてみると良いぞ」
土蜘蛛「そうッスね。そうするッス。・・・んじゃ、オイラも失礼するッスよ。そろそろ『戦女神』さんもじれてるみたいッスし」
戦女神「なっ・・・!?///」
土蜘蛛「後はどうぞ若いお二人でー・・・」ガチャッ
バタン
男「ったく、何言ってるんだか・・・。なあ、女?」
戦女神「そ、そそそうですね! 全く、『土蜘蛛』ったら!」アセアセ
男「んじゃあ、俺も戻るとするか。またな、女」
戦女神「あ、男!」ガタッ
男「ん? どうした?」
戦女神「あ、あの・・・」
男「?」
戦女神「今夜、亥の刻に中庭の噴水前に来てくれますか?」
男「亥の刻? 随分と遅い時間だな」
戦女神「駄目、でしょうか?」
男「いや、いいぜ。何か大事な事なんだろ?」
戦女神「はい、そうですね」
男「じゃあ、亥の刻に中庭の噴水前、了解だ」
戦女神「はい、有り難う御座います」
男「じゃあ戻るわ。また後でな」
戦女神「はい、また後で」
ガチャ バタン…
戦女神「・・・誘った後でドキドキしてくるとは・・・!」
おう、
あくしろよとかいわないから頑張ってくれ
はよ
期待age
1ヶ月経過まだ焦る時間じゃない
はよ!
ー亥の刻・噴水前ー
ザーーーー…
戦女神「・・・」スゥー…… ハァー…
スタスタ
男「よう、女。待たせたか?」スタスタ
戦女神「男・・・。いえ、私もさっき来たところです」
男「そうか? なら良かったが。隣、いいか?」
戦女神「ええ、勿論」
男「・・・」
戦女神「・・・」
ザーーーー……
男「・・・で、話って何だ? 今日の会議で言えなかったことでもあったのか?」
戦女神「え、ええ。まあ、その・・・」
男「?」
戦女神「・・・。・・・もう、戦争が始まりますね」
男「ああ。・・・未だに不明瞭な事が多いが、向こうが攻め込むと言っているし、な」
戦女神「・・・相手は、あの隣国。その武力の高さを以てして勢力を伸ばしてきた強国です」
男「ああ」
戦女神「私達は、勝てるでしょうか・・・」
男「おいおい。珍しく弱気か? しっかりしてくれよ、『戦女神』殿?」
戦女神「私は・・・。・・・私だって、弱気になることくらい、ありますよ・・・」
男「? そう、か・・・」
戦女神「そうですよ・・・」
男「・・・」
戦女神「・・・」
ザーーーー…
戦女神「・・・」スッ…
トン…
男「お、おい女?」
戦女神「・・・もう少しだけ、肩を貸してください」キュッ…
男「別に構わないが・・・」
戦女神「私、怖いんです。今回の戦いが」
男「そりゃあ、誰だって戦いなんて怖いものだろ」
戦女神「そういう事ではなくて・・・」
男「?」
戦女神「・・・今までに無い規模の大きな戦い。沢山の人を巻き込んでの戦いです」
男「・・・そうだな」
戦女神「騎士団を纏める身として、情けないことですが・・・」
男「・・・」
戦女神「・・・私は、この戦いが怖いです」
男「だから、それは皆同じ・・・」
戦女神「違う、違うんです。・・・勿論、貴方の言わんとしていることも分かります。私が感じているこの恐怖も、それと同じ部分もあります」
男「・・・」
戦女神「・・・今回の戦、多くの騎士達が命を懸けて戦います。勿論、私達『称号持ち』も」
男「ああ、そうだな」
戦女神「・・・私が感じている恐怖は、それなんです・・・」
男「どういう事だ?」
戦女神「この戦い、多くの者が命を落とすことになるでしょう」
男「・・・」
戦女神「勿論、「生きる為に」戦う。それは当たり前です。だけど、現実はそんなに優しくはない」
男「・・・ああ」
戦女神「私・・・。私は結局、それが怖いんです・・・」
戦女神「今までに何度も戦いを経験してきました。その中で死んでいった仲間も、沢山います・・・」
男「・・・ああ」
戦女神「でも、何度経験したって、仲間が死んでいくのに慣れる筈がありません・・・。今回の戦いは、今まで以上に多くの仲間が死んでしまいます・・・!」ギュウ…!
戦女神「どんなに強い騎士でも、死なないとは限らない・・・」フルフル…
男「お、おい。どうしたんだよ一体」
戦女神「・・・私は、『貴方』を失うのが怖いんですっ・・・!」ギュウ!
男「!?」
戦女神「私は、貴方をっ・・・!」
ザーーーー…
戦女神「貴方を、愛していますっ・・・!」
ザーーーー…
戦女神「・・・すいません、突然こんな事・・・」
男「い、いや、その・・・」
戦女神「・・・こんな事、会議中には言えませんし、ましてや、騎士団を率いる身としては、尚更です・・・」
男「・・・だから、こんな時間に呼び出した、って訳か」
戦女神「・・・はい」
戦女神「・・・私は、王国近衛騎士団・序列第一位『戦女神』。だけど、それ以前に一人の人間なんです。こうやって、誰かを好きになってはいけませんか?」
男「・・・いや、そんな事はないだろ」
戦女神「・・・男は、どうですか?」
男「・・・」
戦女神「男は、私のことを、そういう風には見てくれませんか・・・?」
男「・・・今は、答えられない」
戦女神「え・・・」
男「別に、お前が嫌いな訳じゃない。だけど、今は大きな戦の前だ」
戦女神「・・・ええ」
男「俺は、妹を守る。今度こそ、あいつが悲しまなくて済むように。俺は、あいつの家族として、この戦いを生きて帰る。まずは、それからだ」
戦女神「・・・」
男「だから、戦いが終わって、全てが落ち着いた時・・・」
戦女神「・・・?」
男「・・・」スゥー…… ハァー……
男「・・・その時、お前に伝えようと思う。俺の気持ちを。想いを」
戦女神「!」
男「だ、だから、今は目先の事に集中しろ。ちゃんと生きて、帰ってくる。全ては、その後だ」
戦女神「・・・はい。そうですね」ニコ…
ザーーーー…
戦女神「ねえ、男。約束してください」
男「約束?」
戦女神「はい、約束です。『必ず、生きて帰ってくる』、って」スッ
男「・・・分かった」スッ
キュッ
戦女神「・・・ふふ。指切りなんて、懐かしいですね」クスッ
男「・・・ああ。そうだな」
ザーーーー…
戦女神「ねえ、男・・・」
男「・・・ん?」
戦女神「・・・死なないでください。絶対に」
>>264-268
レスを付けてくださり、有り難う御座います。1の大きな原動力となっております。これからも目を通して頂けると幸いです。
さて、皆様長らくお待たせいたしました。ここ一月、帰国やらバイトを決めたりやら勉強やらで忙しく、ろくに手を着けられませんでした。
投稿が遅くなりましたこと、心よりお詫び申し上げます。
僕は作品を書く際、プロットやストーリーをろくに考えず、その時その時で書きたいと思ったことを書き、投稿しています。その為、ストーリーが急展開になったり、ご都合設定が出ることも多々ございます。
皆様には解りづらくなったり、読み辛い点も多くあるでしょうが、その点どうか御了承下さいませ。
では、今回の投稿はこれで一息とさせて頂きます。中々話が進みませんが、お許しを。
次の投稿で、両国間の戦争に入れたら、と考えております。
また次回の投稿でお会い出来る事を心より祈っております。
それでは、これにて。
乙
おつ
早目に戻ってきてね。
ほ
乙です
ほ
めちゃめちゃ読みやすいわ
応援してる、がんばって!
生存報告だけでも!
お待たせしています、1です。
すいません、中々この後の展開が纏まらず、暫く更新が遅れます。
御迷惑をお掛けいたしますが、もう少々お待ち下さいませ。
ほ
期待しています
がんばって!
期待??
ミスったぁ
??じゃない
ー数時間前 隣国・王宮ー
???「それじゃ、皇帝さん。改めて、戦前の確認をしていくよー?」
皇帝「ああ。構わぬ」
???「はいはーい。えっとね、じゃあまず、開戦理由。これは、考えてくれた?」
皇帝「ふん。こちらの遠征軍の召集にも応じず、自国の軍備増強を行っている隣の王国が、いつこちらに攻め入るやも分からぬ故、先制攻撃を仕掛ける、では不十分か?」
???「おぉー! 流石皇帝さん! 凄いねえー」パチパチ
衛兵1「貴様・・・! 先程から帝に対して不敬であろう!」
衛兵2「そうだ! 身の程を弁えよ!」
???「えー? とか言われてもなあ・・・」
皇帝「止めろ、貴様等。構わぬ、放っておけ」
衛兵2「し、しかし!」
皇帝「・・・構わぬと言った」ギロリ
衛兵1「! し、失礼致しました」
ー数時間前 隣国・王宮ー
???「それじゃ、皇帝さん。改めて、戦前の確認をしていくよー?」
皇帝「ああ。構わぬ」
???「はいはーい。えっとね、じゃあまず、開戦理由。これは、考えてくれた?」
皇帝「ふん。こちらの遠征軍の召集にも応じず、自国の軍備増強を行っている隣の王国が、いつこちらに攻め入るやも分からぬ故、先制攻撃を仕掛ける、では不十分か?」
???「おぉー! 流石皇帝さん! 凄いねえー」パチパチ
衛兵1「貴様・・・! 先程から帝に対して不敬であろう!」
衛兵2「そうだ! 身の程を弁えよ!」
???「えー? とか言われてもなあ・・・」
皇帝「止めろ、貴様等。構わぬ、放っておけ」
衛兵2「し、しかし!」
皇帝「・・・構わぬと言ったが?」ギロリ
衛兵1「! し、失礼致しました」
???「アハッ! 流石、瞬く間に幾つもの国を征服していった王様は、度量も何も違うねえ」
皇帝「とはいえ、我も聖人君子ではないぞ? 口の効き方には気を付けることを勧めておこう」
???「はーい。怖い怖い」
皇帝「ふん。喰えん奴だ・・・」
???「まあまあ。で、開戦は五日後。もうすぐだね! 攻め方なんだけど、これは・・・」
皇帝「待て。その前に一つ訊く」
???「? なぁに?」
皇帝「貴様の目的は何だ?」
???「目的?」
皇帝「我が自ら述べた開戦理由。あれは、表向きのものであろう? 貴様には、何か、別の目的があるのではないか?」
???「・・・」
皇帝「突如王宮に現れ、あの国の情報をこちらに提供。さらには、我等に戦の準備までさせた」
???「あー・・・」
皇帝「半信半疑ではあったが、貴様のもたらした情報は全て真実であったし、我等にも益がある故、協力はしているが・・・」
皇帝「何か、隠した目的があるな? 貴様が今回の戦を引き起こすのには、相応の理由があるのだろう? ・・・『幻夢』」
幻夢「んー・・・」ポリポリ
皇帝「このような事をするあたり、貴様だけでなく、仲間も何人もいるのであろうが。そんな危険を冒してまでのモノが、あの国にはあると?」
幻夢「・・・まあ、ねえ。そりゃ、目的はあるよ?」
皇帝「・・・」
幻夢「あれ? 話、訊かないの?」
皇帝「興味が無いと言えば嘘になるがな。だが、貴様等が何か目的を持っているかも知れぬ、という疑問に答えが得られただけで充分だ。我等も、ここまで来た以上、協力はする。が、おかしな動きを取れば、即座に斬り捨てるがな」
幻夢「さっすがー。カッコいいね!」
皇帝「それに、貴様等がこちらを利用するように、我等も貴様等を利用させて貰うだけだからな」
幻夢「うん、それでいいよ。少なくとも、あの国を攻めることは、僕らの互いの益になることだしね!」
皇帝「・・・本当に喰えぬガキだな」
幻夢「あはは。ガキって言ったって、この身体に意味はないけどね」
皇帝「・・・何?」
幻夢「所詮は“夢、幻の如くなり”、ってね。誰も僕の正体は知らないし、判らない。僕ですらね」
皇帝「・・・」
幻夢「アハッ! まあまあ、そんな事はどうでもいいよ。それじゃ、作戦の確認しよっか。そろそろ、皇女様も来るよねー」
ガチャァ…ン
衛兵1「皇女様、お着きで御座います!」
皇帝「通せ」
衛兵2「はっ!」ギギイィィ…
ザッザッザッザッ
皇帝「来たか」
皇女「お呼びでしょうか、父上」
皇帝「ああ。五日後に開かれる戦端の確認だ。当日は、お前に第一軍を引き連れ、攻め込んで貰いたい」
皇女「はっ。了解であります」
幻夢「あ、これが当日の敵国の展開予測ね? ちゃんと目を通しておいてねー」ピラピラ
皇女「了解した。有り難く受け取ろう」パシッ
皇帝「それから、各小隊長全員にも同じ物を渡しておけ。奴等も当日はそれぞれの部隊を率いる。その時に敵の配置を知っているのといないのとでは、大きく違うからな」
皇女「無論です、父上。では、私が知らせておきます」
幻夢「はーい。じゃあ、これ御願いね!」
皇女「了解。父上、『幻夢』、まだ話はありますか?」
幻夢「んー、あるっていえばあるけど、別に今すぐ、って程の事はないよ。強いて言うなら、当日に向けて訓練をしっかりしておいて、ってことくらいかな」
皇女「言われるまでもない。では、これにて御免」ザッザッザッザッ
バタァン!
幻夢「・・・皇女様、今年で幾つだっけ?」
皇帝「24だが?」
幻夢「・・・余計なお世話かもだけど、もっとこう、女らしさ? とか無いのかな・・・」
皇帝「仕方あるまい。あれに女らしさを教えられるであろう母親は、既に他界している。ひたすらに武だけを学んできた皇女に、婿に来てくれる者もおらぬし、あ奴も、自分より弱い男などとは結ばれるつもりはないと言い出す始末でなあ」
幻夢「・・・え、跡取りは?」
皇帝「我の跡は皇女に継がせるにしても、その後となると、なあ・・・」
幻夢「今現在最強と名高い帝国の弱点が跡取り問題って・・・」
皇帝「まあ、最悪はどこぞの国から強制的に婿を貰うよりあるまいよ」
幻夢「あらら・・・」
ー王宮・庭園前通路ー
幻夢「・・・」スタスタ
幻夢「・・・そろそろ出て来たら?」
ボゥ…
???「あら、流石ねぇ。よく私が居るって分かったわねぇ」
幻夢「そりゃ分かるよ。・・・汗臭いもん、あんた」
???「あ、アタシが汗臭いですってぇ!?」
幻夢「うん、凄く。また筋トレしてたんじゃない?」
???「そりゃするわよ! 暇だったんですもの!」ムキッ!
幻夢「せめて汗を流してから来てよ・・・」
???「分かったわよぅ。 それじゃ、アタシ、これから湯浴みに行ってくるわぁ。あ、アンタも一緒に来る?」wink
幻夢「何が楽しくておっさんと風呂に入らないといけないのかな?」
???「失礼な子ねぇ・・・! アタシはおっさんじゃないわぁ! マリー、っていう歴とした名前があるのよ、マリーっていうね!」
幻夢「見た目40代で坊主で胸毛やらすね毛やらがぼうぼうで筋骨隆々でマリーとかキャラ濃すぎない? 頭大丈夫?」
マリー「こ、この子ったら・・・!」
幻夢「まあまあ、いいから、早く行ってきてよ。そろそろ、僕も戻らないといけないんだから」
マリー「あら、またいつもみたいに幻に行かせればいいじゃない?」
幻夢「ずっとやってるとバレるしね。何回かは本体を晒しておかないと」
マリー「アンタの力も、便利なだけじゃないのねえ」
幻夢「まあ、所詮は人の力だもんね、異能なんて言ってもさ」
マリー「ええ。本当に、詰まらない力よぉ」
幻夢「だからこそ、僕らは人を越えた、新しい『ヒト』になる為に・・・」
幻夢「魔神の力を手に入れるんだもんね」
282-292どうも、レス有り難う御座います。大変お待たせを致しました。
前回の投稿で、戦争突入みたいなこと言っておいて、入れませんでした。すいません・・・。
無駄にキャラ増やしすぎたり、変な伏線張ったりで、収拾付かないような気もしてきた所です・・・。
今回は、戦争前にひとまず相手国の紹介、といったところで。次は、やっと戦争に入る、と、いいなぁ・・・。
またお待たせすることと思いますが、適当な短編などを不定期ながらぶち込んでいこうと思いますので、そちらで御容赦の程を頂けたらと・・・。もし、何か、お題等が頂けましたら、出来る限り御希望に沿う形で短編? 日常談を挟みたいと思います。
では、今回はこれにて。お待たせした期間に比べ、少ない内容で申し訳御座いません。
今後とも、暇なときにでも眺めていただけたら幸いです。
では、失礼しますー
期待してる。
おつ
おつん
このSSまとめへのコメント
これは、面白い
早く読みたいです
更新マジで楽しみです
面白いなこれ
更新待ってます
更新キタ━(゚∀゚)━!
あーーーーーーうううううううつつつつつつうっっっっっぅききぉいぁいいいいいみみみi
なんか魔弾の王と戦姫って小説に似てる
続き期待してます。これからも更新頑張って下さい
>元・王都近衛騎士団、序列第零位『武神』殿
これ見て読むのやめた。
ネーミングセンスはアレだけど面白い話だと思う。
あとはちょっと登場人物削っても良い気がする。