冷酷なヒーローと道徳怪人 (16)
2X14年、春。
桜が舞い、人々の目を引く季節。
そして同時に怪獣。
人に害をなすとされる生き物が活発に動き始める季節。
鳥怪獣「キェェェェエエエエエエ!!」バサバサ
キャーーー!カイジュウダーーー!ニゲローー!
人々は怪獣のあまりのでかさに驚き、悲鳴を上げるしかない。
だが何故だがその巨体は一瞬にしてその場所に現れるため人々は気づかないで殺される。
それでも戦う人類がこの世に入る。
それはヒーローと呼ばれる類の人類。
この時代、ヒーローなんて一人二人じゃない。
世界中の皆が能力に目覚めているのだから。が、それでも能力には強弱、それ以前に精神的な強弱
が存在する。
だからヒーローなんてやる物は少ない。あんな巨大な奴に勝てるわけがないのだから。
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それでもヒーローになると決めたんだ…!
決意を胸に怪獣と戦った少年は怪獣の目の前でくしゃみをしたら
怪獣は一瞬にして数キロ先まで吹っ飛んで爆発した。
少年「……あ」
この日初めてヒーローと呼ばれる人類が誕生した。
2X24年、春。
毎年変わらず咲き誇る桜は毎年皆の目を引くように風になびいて花びらを散らし舞っている。
初めて怪獣が現れてから数年の時がたち、人も黙っているわけがなかった。
各国が勢力を上げて防衛軍を作った。
防衛軍には能力偏差値(毎年一回行われる各々の能力値を測るテストで決められた数値)が高い物が
選ばれ入っている。もちろん、入るかは個人の自由だ。
防衛軍に入る物は必然的にヒーローとされる。
五月五日。朝九時。
プシューと音を立て皆が集まる会議室のドアが開く。
男「…おはようござー」
教官「男さん、毎回言うのも何ですがね会議は八時半からです!」
男「あ~…あ~……寝起きの三十分ごろごろしてたわ~」フワァー
教官「っ!いいからすわってください!」
男「へ~へ~」
そういわれると目にもとまっらぬ速さで自分の席に着く。
その動きをとらえられたものはいない。
彼の能力は人体の限界を超える能力。
簡単に言えば音速でも光速でも移動でき、空も飛べ、一時間は息を止められるし、
十トンのトラックだって片手で持てる。無理をすれば地球だって壊せるのではないだろうか。
そして誰もが知るのはクシャミ一つで怪獣を倒せること。
故に彼は『はくしょんヒーロー』と呼ばれている。ヒーローにはあだ名みたいなものがある。
組織ではちゃんときめられていてもやはり民衆は自分たちが言い始めた方を気に入って言っている。
男「んで~怪獣でた?」
教官「そう何日も連続ででてたまりますか!」
男「ソダヨネ」
女「教官!そんな奴放って作戦会議のつづきしましょ」
教官「…はあ、それもそうだな」
男「あからさまに呆れられると俺も傷つくんですがね~」
教官「え~では、次回の怪獣が現れた時の━━」
教官が作戦会議を続行しようとして言葉を発した瞬間
「ピリリリリリリリリ」
非常ベルが鳴り言葉が途切れる。
非常ベルと同時に光るランプの色は四色ある。
一つは赤。
怪獣が現れた時、または怪獣の反応が現れた時に光る。
怪獣の反応とは怪獣がそこに発生する少し前に発せられる特殊な磁場を防衛軍が感知したという事。
一つは青。
不審者が防衛軍基地内に侵入した時。
一つは緑。
地震が起きた時。
最後の一つは光らない。基地全体が閉鎖隔離空間となり、電球が全部消える。暗黒の空間。
これは仲間のヒーローが暴走、または裏切った時のみなる。
暴走。
能力の暴走。
すなわち、怪人へとなる瞬間。
怪人は能力を制御できなくなり、能力に自身が呑み込まれて自我が消え
殺人、破壊衝動が強まり怪獣と同じように人を、街を襲うようになる。
その怪人を始末するのも防衛軍の仕事。
今回光ったのは赤。
そして同時にアナウンスがながれてくる。
『ただ今、中央都市部に怪獣が出現しました!ヒーローネーム「紅姫」「黒龍炎」の2人に出撃養成です』
女「あ、私か」
チャラ男「俺もか~…今日デートの約束なんだけど」
女「だったらササっと終わらる、いくわよ!」
チャラ男「うぃ~~!」
二人のヒーローネームが呼ばれ、本人たちは部屋を飛び出して目的の
怪獣の場所へとヒーローの力を使って駆けつけた。
男「いいね~」
教官「何が「いいね~」だ」
男「俺も戦いたい…殺したい…」ニヤァ
教官「お前本当に怪人じゃないよな?」
男「ちぇ~さって、会議も終わりかな~?」
教官「確かに、私もモニター室で指揮しないといけないしな」
男「んじゃ俺はトレーニングルームいるんで、何かあったらよんでちょ~」フリフリフリ
教官「あ、お前!」
プシュー、プシュー
都市部、怪獣と交戦中の2人。
女「やっと着いた…はぁ」ゼェーゼェー
チャラ男「ま、サクッとやっちゃいますか~」
女「賛成」ノ
チャラ男・女「「変身」」
二人の手首には「ヒーローチェーン」と呼ばれる見た目は普通の鎖が三重に巻き付いている。
「ヒーローチェーン」とは普段その巨大すぎる力がキャパオーバーしないようにするための
ヒーローベルトの様な物。
チャラ男「ひっさびさの本気だから…あんまり派手にやらないようにね」
チェーンを外したチャラ男の身体から黒い煙がもくもくと湧いて出る。
女「そっちこそ、そこら中煤だらけにしないでよ」
同じく外した女の身体からは特に何も出ない。
ただ変わったと言えば少し肌の色に赤みがかかったような気がする。
よく見れば首筋の血管が透けて見える気がする。
都心の中の都心。
ビルが並び人が闊歩する中心に怪獣が現れた。
その怪獣は全長五十メートル、幅十メートルの巨体の翼の生えたトカゲ目の生物。
見た目は神話にでてくる「ドラゴン」のようだった。
紅姫「いくわよ」
黒龍炎「あら、チェーン一本でいいの?」
紅姫「汗かくのよ、二本目からは」
黒龍炎「シャワー浴びればいいのに…てかその能力絶対一本でも汗かくでしょ」
紅姫「鳴れた」
黒龍炎「マジパネッス」
紅姫「ま、危なくなったら外すわよ」
黒龍炎「そっすね!…煙舞」
両手を大きく広げ体を一回転させる。
すると遠心力と風圧で先程よりも濃い煙が噴出し、身体を覆うように周りを漂い始める。
黒龍炎「食らえぇ!煙の鞭!」
周りを無秩序に漂っていた煙が突如秩序を取り、一本の長い煙を作り出す。
黒龍炎「俺の煙は少しばかり熱いぜ!」
こちらにに気づいた怪獣の頭上には一面を覆うほど太い煙の収束体が迫っていた。
が、怪獣は口から光を放つと煙を一掃してみせた。
空中を煤が舞う。
紅姫「煤…」
黒龍炎「っ!まだ━」
紅姫「さがりな…」
チャラ男の肩を掴み後ろに引かせると、生身で怪獣の懐へと走って行く。
怪獣の肌は大きく強固な鱗により守られている。
そのうち一枚の鱗に掌をぴったりとつけて女は大きく息を吸って力を入れる。
女の立っている部分がクレーター場にへこむ。
すると怪獣の鱗に触れている部分から直線状、怪獣の背後部分から鮮血が舞う。
紅姫「ブラッティ~~~~ボム!」
手を放し勢いよく後ろに跳ぶ。
女が地上に足をつけた瞬間、怪獣の身体がボコボコと不快な音を立てながら膨らんでいく。
黒龍炎「うぇ…グロ」
紅姫「まだまだ……」
怪獣に背中を向けゆっくり眺めているチャラ男の方へと歩いていく。
紅姫「口でも塞いだら?吐くなら」
紅姫「…フィニッシュ」
「パチン」と指を鳴らす。
ボシャァアアッ!と大量の水が入った風船が破裂した重い音とボチャビチャッと水滴が地面に
落ちる音、そして内臓が地面に落ちる音が響き渡る。
女「いっちょ完了」
火照っていた身体の色を徐々に元に戻していく。
防衛軍基地、モニター室。
モニター員「敵の反応……完全ロスト!怪獣の退治完了です」
教官「ふぅ…雑魚でよかったな」
モニター員「でも黒龍炎さんの攻撃が聞きませんでしたよ」
教官「あいつは馬鹿だ、きにすんな」
モニター員「そ、そうですか」
帰宅後
女「しゃわーーー」
チャラ男「俺もシャワー」
男「おかえり~、チャラ男今五時だよ」
チャラ男「シャワーはホテルで入る!んじゃデートいってくる!」スタコラサッサ
男「ってら~」フリフリ
女「……まだ三時半よ」
男「馬鹿だよね~」
女「はぁ…まったく何考えてるのよ」
男「特に何も…さって、俺は訓練してくる~」
女「あ、そうだ」
男「ん?」
女「シャワー浴びる前に渡しと模擬戦しない?」
男「俺が勝ったら?」
女「万に一つもないだろうけど…そうね、一日いうこと聞いてあげるわ」
男「んじゃ、お前勝ったらガリガリ君一本奢ってやる」
女「やった……まって!それ私の条件と違い過ぎない!?」
男「はいはい、んじゃ訓練室いってるぞ~」
女「あ、ちょおま!…もぉ!」
訓練室━━
男「おっす~ジャージ似合ってるね~」
女「あら、ストレッチ?偉いわね」
男「怪我はしたくないからね~」
女「模擬戦前にそれ言う?」
男「大丈夫、俺は怪我しないから」
女「っ!馬鹿にして」
男「さて…俺は準備良いけど?」
女「私もいいわよ…」
手首のチェーンを一本解き、床へと投げ捨てる。
女「貴方も取ったら?ヒーローさん」
彼女の周りの空気が一瞬にして暖かく変わる。
男「俺はいつでも全開、ヒーローチェーンなんてつけたことないよ」
女「…へぇ」
余っているチェーンへと手を掛ける。
チェーンを解くとじゃらじゃらと音を立て床へと落ちる。
足元に落ちているチェーンを足で遠くへ飛ばす。
部屋の空気が真夏の気温へと変化した。
男「あっついね~…大丈夫?」
紅姫「この部屋はマグマと隕石、たとえ地球が爆発しても耐えられるって言ってたわ…」
部屋には窓、空調管理などの設備は何もなく、四方八方真っ白の壁に
扉がつけられた、扉の鍵をかけ開かないように壊されればそれで完全密室の出来上がり
と言うほど何もない部屋。
ちなみに訓練室は二階。上下左右の部屋は特に何もない。この部屋から一部屋分は壁として設計されている。
男「そりゃ…俺の方が危なそうだ」
紅姫「正解」パチンッ
指を鳴らすと女の身体から燃えるドロドロしたジェル状の液体、溶岩があふれて床にたれる。
男「…へぇ、君の本気始めてみたかも」
紅姫「まだ臨戦状態にしかはいってないわよ」
腕を振り上げると身体から出ていた溶岩が男の顔目がけ飛び散る。
溶岩をギリギリでよけると目の前には女の手があった。
紅姫「チェックメイト」
男「まだチェックの状態だよ…そして俺が、チェックメイト宣言する方だ!」
溶岩が汗のようにたれる顔を掴み、壁に叩き付けるように投げつける。
紅姫「くっ!」
火山が噴火したような爆音が上がる。が、壁にはヒビ一つはいらない。
男「まだまだ…準備運動もしてないよ」
紅姫「っ!…溶岩地帯(フィールド)!!」
足元全体が溶岩地帯へと変化する。
男「俺は限界を常に超えてるんだし…無意味じゃないかな」
紅姫「っ!チーと野郎!」
男「お褒めの言葉だね」
男「…すぅー……はぁ」
男「ゲンコツいっとく?」
紅姫「…参りました…」
男「よろしい」
・
・
・
チェーンを腕に巻き戻すと床に落ちていた溶岩が蒸気を上げて姿と消した。
追い付いた
乙
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