まどか「強くなりたい」(111)

まどか「ただなりたいってわけじゃ、駄目なのかな?」

QB「まどかは力そのものに憧れているのかい?」

まどか「そういうわけじゃ……そう、なのかな?
    わたし昔から得意な科目とかなくて、どんくさいし、
    だからマミさんみたいな素敵な人になれればそれだけで幸せなんだけど」

ほむら「(……)」ホムホム

翌日

マミ「鹿目さん、何か願い事は見つかった?」

まどか「う~ん、怒られるかもしれないんですけど……」

マミ「そんなことしないわ。良かったら聞かせて頂戴」

まどか「わたし、魔法少女になれたら、それだけで願い事は叶っちゃうんです」

マミ「えっ?」

まどか「こんなわたしでも、人の役に立てたら、それはとっても嬉しいなって」

ほむら「それには及ばないわ」

まどか「ほむらちゃん!?」ビクッ

マミ「暁美さん……」

ほむら「まどかの願いは『強くなりたい』、それでいいのね?」

まどか「う、うん」

ほむら「それなら契約せずとも叶える方法があるわ」

まどか「本当!?」

ほむら「まどかが本当に強くなりたいなら、放課後わたしの家にいらっしゃい」ファサッ

まどか「え、あ、うん……」

まどか「行っちゃった……」

マミ「暁美さん、何をするつもりなのかしら。
   鹿目さん? こう言うのもなんだけど、あの子について行くのは少し危険……」

まどか「マミさん、わたしほむらちゃんを信じてみます。
    わたし、強くなりたいんです」

マミ「そう。気をつけてね」

放課後 ほむホーム

ほむら「良く来てくれたわね」

まどか「おじゃましまーす」

まどか「それで、ほむらちゃんの強くなる方法っていうのはどんなのなのかな?」

ほむら「まどか」

まどか「」ビクッ

まどか「(なんか今、背中に冷たいものが……。
     『殺気』のような……)」

ほむら「本当に強くなりたいのなら、今のような甘い考えは捨てることね」

まどか「ほむらちゃん……?」

ほむら「真の強さは限界まで己の精神と肉体を鍛え上げることによってしか得られないのよ」

ほむら「というわけで、これからあなたに空手を教えるわ」

まどか「空手!?」

ほむら「まどか、強さというのは喧嘩が強いこととは違うわ。
    身も心も研ぎ澄まされた真に強い人間になるには武道が一番近道なの」

まどか「あの、わたしそういうのはちょっと……」マドマド

ほむら「だから!」バンッ

まどか「」ビクッ!!

ほむら「そんな甘ったれた態度だから、いつまで経っても強くなれないのよ」

まどか「ほ、ほむらちゃん? わたし用事思い出したから帰るね?
    あ、あれ!? 開かない!?」ガチャガチャ

ほむら「一度道場に入ったら、動けなくなるまで稽古してから帰るのが礼儀よ」

まどか「(マミさんの忠告聞いてればよかったー!!)」

ほむら「まずは心の修行が必要なようね」ブンッ

まどか「ほむらちゃん? 何で竹刀を持ってるのかな?」

ほむら「まどか、とりあえず座りなさい」

まどか「え? う、うん」

ほむら「ふざけてるの!?」バシィ!!

まどか「ええっ!?」ビクッ

ほむら「道場で座るときは基本正座よ。
    師範の許可が出て初めて安座ね」

まどか「はい……」

ほむら「まずは黙想をしてもらうわ」

まどか「黙想?」

ほむら「簡単よ。正座して、目を半開きにして腹式呼吸をするの。
    このとき心は空っぽにすることね」

まどか「目を半開きにして……」

ほむら「そうよ」

まどか「(何だ、結構楽だね)」

ほむら「少しでも心の乱れが表れるようだったら容赦なく竹刀で叩くわ」

まどか「(ええっ!!?)」

ほむら「40秒ほど続けなさい」

まどか「(何も考えない何も考えない……)」ソワソワ

ほむら「喝!」バシィ!!

まどか「ひんっ!!」

ほむら「次は基本の立ち方を教えるわ」

まどか「足が痺れたよう……」ジーン

ほむら「まずは三戦立ちね。足を内側に向けて、八の字を作るように肩幅に広げなさい」

まどか「こうかな?」

ほむら「甘いっ」バシッ

まどか「きゃあ!?」ドテッ

ほむら「全然安定していないわ」

まどか「いきなり足払いなんてひどいよほむらちゃん」

ほむら「身体が安定していない立ち方など意味がないわ。
    ちゃんと腰を決めて、押されてもよろけないようにしなさい」

まどか「はい……」

ほむら「まだ甘い!」ドンッ

まどか「ふへっ!」ドテッ

ほむら「なんとか様になってきたようね」

まどか「この立ち方だけでキツいよ……」

ほむら「ではまず、正拳突きを練習しましょう」

まどか「要するにパンチだね!」

ほむら「突きとパンチは厳密には違うのだけど……」

まどか「えーと、こんな感じかな?」

ほむら「まどか、その握り方では危ないわ」

まどか「え?」

ほむら「親指は外に出さないと、相手を突いたときに骨折してしまう恐れがあるわ。
    正拳は子指から握って、最後に親指を締めるの」

まどか「なるほど……」

ほむら「ではやってみましょう。掛け声は……『ウリャ、セイ』とかでいいわ」

まどか「よーし! うりゃ! せい!」ブンブン

ほむら「全然なってないわ」バシッ

まどか「うっ」

ほむら「まどかの突きは、手だけね」

まどか「どういうこと?」

ほむら「手だけの力で生まれる威力なんてたかが知れているわ。
    これは全ての技に共通する事だけど、基本的に破壊力は腰の回転で生み出すの」

まどか「腰の回転?」

ほむら「反対側の腕を引いて、腰の回転に合わせて打つのよ」

まどか「せいっ」ブンッ!!

まどか「うわっ! なんだか自分の身体が引っ張られるみたいだったよ」

ほむら「それよ。あくまで空手の基本は腰の回転にあるということを忘れないで」

まどか「うん!」

ほむら「返事は押忍、よ」

まどか「お、押忍!!」

ほむら「では、正拳中段突きで三十本行ってみましょう」

まどか「押忍! うりゃ! せい!」ブンッブンッ

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まどか「疲れたぁ~」ヘタッ

ほむら「そろそろ休憩にしましょうか」

まどか「本当!?」パァァ

ほむら「ええ、冷たい水は身体に毒だからぬるめのスポーツドリンクを用意したわ」

まどか「ありがとほむらちゃーん!」ダッ

ほむら「待ちなさい」

まどか「え?」

ほむら「今の稽古で、床に大分汗が滴っているでしょう?
    これでは滑って危ないから、雑巾がけをしてから休憩にしましょう」

まどか「押忍!」

ほむら「雑巾がけも足腰の鍛錬になるのよ」

まどか「ハァ、ハァ……。
    ほむらちゃん、腕立て三十回済ませたよ」

ほむら「では次の技に移るわ。
    今教えたのが中段突き。これと同じ要領で上段突きなどがあるわ。
    そして受けの技。上段受けや、外受け、内受け、払い。
    防御の技といっても、腰を使って身体全体で行うことには変わりがないわ。
    あとは裏拳とか、まあいろいろ。今日はあまり細かいところには触れないようにしましょう」

まどか「基本スタンスは皆同じなんだね!」

ほむら「あとはまあ、騎馬立ちをやっておきましょうか」

まどか「騎馬立ち……?」

ほむら「まどか、足を開きなさい」

まどか「ふえぇ!?」マドマド

ほむら「いいから」ガッ

まどか「あんっ」

ほむら「肩幅より足をちょっと広めにとって、足首は身体に対して垂直よ」

まどか「垂直!? 無理だよ!」ギギギ

ほむら「そのまま腿が床と平行になるまで腰を落とす。
    わたしが肩を押さえてあげましょう」

まどか「痛い痛い痛いよほむらちゃん!」ギギギギギ

ほむら「股関節の柔らかさはどんな運動においても重要なの」

まどか「で、この立ち方はどういう意味があるのかな?」

ほむら「空手では最も堅固な立ち方だと言われているわ。
    機動性は無に等しいけど、相手を迎え撃つにはいいでしょうね。
    ただ今は実戦のことを考えていてもしょうがないわ。身体を柔らかくする体操だとでも思って頂戴」

まどか「(男の人とかこの構え怖くないのかな……。
     色々とガラ空きだけど……)」

ほむら「さて、上半身の技は一通りやったことだし、足技にいきましょう」

まどか「やっぱ空手といったら蹴りだよね! ハイキック!」ビューン

ほむら「蹴り技の構えは自然体よ。
    肩幅に足を開いて、左足を少し前に出して」

まどか「こうかな?」

ほむら「駄目ね。身体が正面を向いてしまっているわ。
    それでは相手の攻撃を受けやすいし、奥の蹴りの威力も半減してしまう。
    基本的には正面に対して身体を少し斜めに向けるの」

まどか「へー」

ほむら「蹴り技の基本も同じよ。ただ注意すべきポイントは2つあるわ。
    まずは軸足ね。蹴っている時身体を支えている方の足、これがグラついていては致命的よ。
    もうひとつは中足。蹴るときは足の指をちゃんと返すこと」

まどか「バランスがとれないようほむらちゃん!」

ほむら「大事なのは重心の制御よ。自分の身体の重心が軸足の延長線上にあればグラつかないわ」

まどか「難しいなあ……」

まどか「ほむらちゃん! 足が上がらない!」
ほむら「こればかりは練習ね。まあ、股関節の柔らかさも必要だけど」

まどか「それだけ鍛える体操とかないのかな?」

ほむら「あるにはあるわ。まどか、女の子座りはできる?」

まどか「え? うん」ペタン

ほむら「これは逆正座と言うのだけど……。そのまま身体を後ろに倒して」

まどか「ええっ!? 出来ないよ!」

ほむら「はい、ぐいー」グイー

まどか「いたたたたたたた!!」

ほむら「普通女の子ならある程度柔らかいはずなんだけど、まどかは相当固いわね」

まどか「キツいよほむらちゃん」

ほむら「これで終わりではないわ」

まどか「まだあるの!?」ビクッ

ほむら「そのまま腰を上下に振ることによって柔らかさを鍛えるのよ」

まどか「……ほむらちゃん、嘘ついてない?」ジトー

ほむら「わたしは神前では淑女よ。まあ多少動きがいやらしいのは分かるけど……」

夕方

ほむら「今日の稽古はこれぐらいにしておくわ」

まどか「押忍……ありがとう……ございました……」バタッ

ほむら「いい稽古をしたわね。最後に雑巾がけだけしていきなさい」

まどか「はい……」ボロボロ

翌日

マミ「昨日は大丈夫だった?」

まどか「はい! ほむらちゃんに空手を教えてもらって!」キラキラ

マミ「空手!?」

まどか「わたし、ほむらちゃんの弟子になることに決めました!」

マミ「(暁美さんは武術を取り入れているのね……。
    参考にさせてもらうわ)」

さやか「おはよー、まどか、マミさん!」

マミ「あら、美樹さん」

さやか「なになに何の話~?」

まどか「わたし、ほむらちゃんに空手を教えてもらうんだ」

さやか「へー。あたしも空手やってたよ」

まどか「えっ! そうなんだ!」

さやか「もうやめちゃったけどね」

まどか「……」

放課後 ほむホーム

ほむら「で、美樹さやかもついてきたと」

さやか「いやー、空手と聞いてさやかちゃんの眠っていた熱い魂が蘇ったわけですよー!」ハハハ

まどか「ほむらちゃん。さやかちゃんも一緒じゃ駄目かな?」

ほむら「構わないわ。今日はちょうど組手をやろうと思っていたところだし」

さやか「組手!? まどか昨日始めたばかりでしょ!?」

ほむら「この子には資質があるわ。こんなに才能を持った子と会ったのは初めてよ」

まどか「(どこかで聞いた台詞だなあ……)」

ほむら「ではまどかと美樹さやかでやってみましょう。美樹さやか、初心者相手だからといって手加減は無用よ」

まどか「ふぇっ!?」ビクッ

さやか「え? ……マジで?」

ほむら「まどか。組手では今まで習った技を相手に自由に繰り出すの。基本的な構えは自然体がいいでしょうね。
    ルールとしては、顔面への手での攻撃、金的への攻撃は禁止。
    相手を掴んだり、噛みつくのももちろん駄目ね。あと危ないからひじ打ちも禁止にしましょう」

まどか「本当に殴ったり蹴ったりするの?」マドマド

ほむら「寸止めルールの道場もあるけど、うちはフルコンよ。では、お互いに、礼!」

さやか「オネガッシャース!!」

まどか「お願いします……」

ほむら「始め!」

まどか「(ひええ~!)」

さやか「(素人ならしょっぱなからハイキックかましても入るでしょ!)」ブンッ

まどか「(わっ! さやかちゃん本気でマジだよ……。とりあえず……)」グンッ

さやか「(間合いの内側に入ってきたっ!?)」

ほむら「(あんな蹴りを見せられては、思わず引いてしまうのが普通。
     そこをあえて相手の間合いに入るとは……やはりまどかの才能は尋常ではないわね)」

さやか「(才能があるってのは本当のようだね……。それならこれでどう!?)」

ほむら「(出足(この場合左足)での前蹴り! 威力こそないけれど、あのスピードは防げない!)」

まどか「あぐっ!!」バキッ

ほむら「(もろに食らったわね……)」

さやか「(そこからの、ミドルキック!)」ブンッ

まどか「(くっ……!)」ガッ

さやか「(防いだ!?)」

まどか「(ここはワンツーを打ちながら間合いを詰めて……)」シュッシュッ

さやか「(うわっ、まだ間合い詰めてくるのかよ……!
     こういうタイプ苦手なんだよね……)」

ほむら「(美樹さやかのように蹴りでの大技を得意とするタイプは、
     間合いを詰められることを嫌う……。しかしこのままではまどかにも決定打は打てない)」

さやか「(ここはひざ蹴りでけん制しつつ後ろに跳ぶ!)」ダッ

ほむら「(間合いを取られたまどかは空振りの体制に!)」

さやか「(今だっ!)」ダッ

まどか「」ブンッ

さやか「(えっ!?)」

ほむら「(身体の勢いをそのまま利用して胴回し!?)」

さやか「ぐはぁっ!!!!」バシッ

さやか「いやー、胴回し当てられたの初めてっすよ……」

まどか「さやかちゃん、大丈夫?」

さやか「いやー平気平気。マウスピースしてたから口の中も大丈夫」

ほむら「いくらまどかに才能があるとはいえ、美樹さやかは少し反省すべきね」

さやか「そうだよなー。初心者にKOされるなんてさやかちゃん悔しい!」

ほむら「美樹さやかは無理に自分の得意技を入れられる状況を作ろうとしすぎよ。
    もう少し臨機応変に技を出せるといいわね」

まどか「ほむらちゃん、わたしは?」

ほむら「当たったとはいえあそこでの胴回しはさすがに無茶よ……。
    まあ、技のコンビネーションはこれから教えていくわ」

まどか「押忍!」

数日後

マミ「ティロ・フィナーレ!!」ドンッ

まどか&さやか&ほむら「やったか!?」

シャルロッテ「……」ニュルーン

マミ「えっ」

まどか&さやか&ほむら「(ヤバイッ!?)」

シャルロッテ「あーん」

マミ「シェアアアアアアアアアッッッーーー!!!!!」

ほむら「あれは……横蹴り!? いや、少し違う!」

シャルロッテ「うっ」バキッ

さやか「でも魔女はまだ生きてる! 襲ってきた!」

マミ「たとえ髪の毛ほどの間合いでも当たらなければ意味はないわ」

まどか「魔女の攻撃を防がないで体捌きだけでかわしている!?」

マミ「ティロ・三角跳び!!!!」

シャルロッテ「ウグアアアアアアアア」

ほむら「巴マミ……あなた」

マミ「あなたが空手を使っていると聞いて、わたしもムエタイを魔法少女の戦闘に取り入れたの」

まどか「ムエタイ……? わたし、てっきりマミさんも空手をやってたのかと」

ほむら「そう思うのも無理ないわ。もともと空手とムエタイは同じ格闘技から分かれたのよ。
    琉球、そして日本へ伝わってきたのが空手となり、タイに伝わったのがムエタイらしいの」

さやか「だから技が似てるんだ!」

まどか「ていうか、魔女って拳法で倒せるんだね……」

更に数日後

恭介「僕の手は二度と動かない……。奇跡か、魔法でもない限り治らない!」

さやか「あるよ! 奇跡も、魔法も、あるんだよ!」

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まどか「あれ? 仁美ちゃん?」

仁美「とってもいいところですわよ~」ナゾノダンス

まどか「(あれは……魔女の口づけ! でもマミさんやほむらちゃんの携帯知らないし……。どうしよう!)」

工場

まどか「(あれって……、確か洗剤を混ぜ合わせると危ないんじゃ……)」

仁美「さあ、まどかさんも一緒に逝きましょう!」

まどか「駄目だよ仁美ちゃん!」

仁美「ふんっ!!」ボスッ

まどか「が……」ガクッ

仁美「あら、思ったより弱いですのね」

まどか「(腹パン……?
     そういえば、聞いたことがある……。仁美ちゃんは習い事の一環でボクシングもやってて……、
     界隈では『腹パンのワカメ』として恐れられているとか……)」

仁美「まあ、わたしの右アッパーをまともに受けて立った者はいませんわ」

まどか「(駄目だ……立てない……)」

さやか「まどか!」バンッ

まどか「(さやかちゃん……? まさか、契約して……)」

仁美「あら、さやかさん」

さやか「仁美、あたしと勝負しろ!」

まどか「って、さやかちゃん!? その格好……」

さやか「剣道三倍段ってね。そこらへんの格闘家には負けないよ」

仁美「面白い……」

さやか「(仁美は素手……定石なら間合いに入ってこさせないように正眼の構えか……?
     いや、仁美にそんな小細工は通用しない! ここは上段で構える!!)」スッ

まどか「さやかちゃん!? それじゃあ仁美ちゃんのアッパーをもろに食らっちゃうよ」

仁美「シェッシェッ!!」ブンブン

まどか「(ほら、やっぱりまともに攻撃を受けてる……。
     剣道は細かい防御がし辛い……このままだとジリ貧だよ!)」

さやか「(分かってるよまどか……!)」

仁美「シェッ!!」ブゥン

さやか「(今だ!)
    イエアアアアアアアアア!!!!!!」ブン!

まどか「(さやかちゃんが振り下ろした! でも……)」

仁美「甘いですわ!」ガッ

まどか「(防がれた……)」

仁美「シェッ!!」ブン

さやか「うぐっっ!!!!!」バキッ

まどか「(終わった……)」

さやか「まだだああああああああ!!」シュッ

まどか「(あの体勢から蹴り上げた!?)」

仁美「うぶっ!!!!」バキッ

まどか「KOだ!」

さやか「いやー、転向したわけじゃないんだけどね。
    魔法少女になったら剣がついてきたから、剣道もやってみようと思って……」

まどか「結局蹴ってたよね」

さやか「まだ剣道のほうは時間がかかりそうかな」

ほむら「契約してしまったのね美樹さやか」ファサッ

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「というか、志筑仁美を倒しても魔女を倒さなければ意味がないでしょう……」

さやか「あ。うっかりしてたわー」ハハハ

ほむら「まあわたしが倒しておいたから安心しなさい」

数日後

杏子「あのさあ、食物連鎖って知ってる? 学校で習ったよね?
   弱い人間を魔女が食う。その魔女を、あたしたちが食う」

さやか「黙れえええ!!!」ブンッ

杏子「……」ガシッ

まどか「QB、あれは……」

QB「杏子は少林寺拳法の使い手だ。基本的には素手だけど、棒術にも長けている。
  今のさやかでは勝てないだろう」

杏子「うぜぇ、チョーうぜぇ!」ヒュッ

さやか「うあああああああああ!」ガタッ

杏子「終わりだよ!」

まどか「ほ、ほむらちゃん!」

杏子「!?」

さやか「邪魔するんじゃないわよ!」シュッ

ほむら「ふんっ!!」ドガッ

さやか「あ……」バタッ

杏子「……あんた何者だ?」

ほむら「わたしは冷静な人の味方で、無駄な争いをする馬鹿の敵。
    あなたはどちらなのかしら、佐倉杏子」

杏子「……!!
   まるっきり手札が見えないとあっちゃね。今日はこの辺で引きあげさせてもらうよ」ダッ

あれからさやかちゃんと杏子ちゃんの戦いが続いて、
結局二人はお互いを強敵(とも)と認めました。
ほむらちゃんが言うには、ワルプルギスの夜という巨大な魔女が来るとのことなので、
五人一丸となってそれを倒すことになりました。

ほむら「……来るっ!」

ワルプルギス「キャハハハハ」

マミ「あの構えは……」

杏子「どうなってんだオイ……。
   あいつ、逆立ちしてるじゃねーか!」

さやか「まさか……!」

ほむら「カポエイラね」

まどか「カポエイラ?」

ほむら「もともとは手錠をつけたまま戦えるように、と編み出された格闘技らしいわ。
    逆立ちしながら戦うことで有名だけど、実際は普通に立って戦う時間のほうが長いわ。
    ただ、あいつはずっと逆立ちしているわね」

ワルプルギス「キャハハハハハ」

まどか「ほむらちゃん……。わたしが相手をするよ」

ほむら「まどか……。あなたは魔法少女ではないわ。危険よ」

まどか「大丈夫だよほむらちゃん。
    わたしには、契約してなくても、ほむらちゃんからもらった鋼の肉体があるんだから」

ほむら「まどか……。
    生きて帰ってくるのよ」

まどか「押忍っ!」

ワルプルギス「キャハハハハハハ」ブンブンブンブン

まどか「ぐっ!!」ガッ

まどか「(この蹴りの威力……まともにガードし続けていては、腕の骨が折れる!)」

ワルプルギス「キャハハハハハ」ブンブン

まどか「(回転している足は駄目だ……。
     蹴り技の肝は回転軸……。この場合の軸は、胴体!)」

ほむら「まどか! ローよ! ローであの回転を崩して!」

まどか「(分かってるよほむらちゃん!)」ブンッ

ワルプルギス「キャハ……」ドスッ

まどか「(効いてる……)」

さやか「でも駄目だ……。魔女が巨大すぎてあの程度じゃ」

杏子「そうでもないみたいだぞ」

さやか「?」

マミ「見て、鹿目さんのローキックの当てている位置を」

さやか「!! 毎回ピンポイントで同じところに打ってる!」

杏子「一回一回のダメージは小さくても、蓄積すれば大木も折れる」

マミ「ワルプルギスの胴体がパンパンに腫れているわ!」

ワルプルギス「ちょっと本気出す」

ほむら「ワルプルギスが……」

さやか「立ちあがった……?」

杏子「おい、どーすんだよアレ!
   ワルプルギスが立ちあがったら世界がひっくり返るんだろ!?」

マミ「ワルプルギスの構えは、猫足立……、
   あれは空手よ!」

まどか「(猫足立は機動力が高い……。間合いを取られたらいつ蹴りが飛んでくるか分からない)」

ワルプルギス「シュッシュッ」

ほむら「ワルプルギスはジャブでどんどん間合いをとっていく……。
    あのままでは!」

ワルプルギス「イエアアアアアアアア!!!」ダッ

さやか「あれは、左の廻し蹴り!? でもまどかはかわした!」

杏子「いや、ちげーぞあれは。
   出足の廻し蹴りの後に後ろ廻しが待っている……」

マミ「風車蹴り!」

ほむら「まどかああああああああああ!!!!!!」



シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ


まどか「なんとか防げたみたいだね」グッ

さやか「あれは!」

ほむら「空手の構えでも最も堅固な騎馬立ち、
    そして十文字受け!!」

まどか「もう、いいんだよ」

まどか「もう、だれも呪わなくていいの。
    あなたの蹴りは全部、わたしが受け止めてあげるから」

杏子「魔女の動きが止まったぞ!」

まどか「ハイパーまどか……」


ほむら
さやか
マミ
杏子
まどか  「かかと落とし!!!!!!!!」

ワルプルギス「……」

まどか「……」スッ

ワルプルギス「……」グラッ

さやか「KOだ!」

杏子「やったのか……?」

マミ「空が晴れていく……」

ほむら「やった。やったぁ!!」

ほむら「まどかー!」

まどか「勝ったよ、ほむらちゃん」

ほむら「まどか……」ダキッ

まどか「ありがとう、ほむらちゃん。
    ほむらちゃんがわたしに空手を教えてくれなかったら、
    わたしはこんなに強くなれなかったと思う。
    だから嬉しいよ。
    あなたはわたしの、最高の師範」

ほむら「まどか……」ウルッ

あれからQBが格闘技の可能性に目覚めたと言って、全ての魔法少女を元に戻してくれました。

わたしたちは変わらず格闘技を続け、日々稽古に励んでいます。

今度見滝原でジュニアK-1が開かれるそうで、皆それに向けて特訓中です。

まどか「押忍!」

おわり

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