小鷹「朝起きたら裸の理科が隣で寝ていた」(235)
小鷹「なにがどうしてこうなった…」
立ちよった
続きはPCから書きます
小鷹「……」
小鷹「……いや、まじで記憶にないぞ」
小鷹「どうしてこうなった…」
小鷹「……」
小鷹「そしてここはどこだ……」
理科「……んむ」
理科「せんぱぁい……」
小鷹「!?」
小鷹「とりあえず覚えているところから…」
小鷹「ええと確か理科が嬉しそうに変な機械を持ってきて…」
小鷹「これは欲望を叶える道具を発明しましたー云々って…」
小鷹「これで先輩がロボになってあんなことこんなことーって……」
小鷹「ブルドーザー鬼畜攻め×ATM総受け萌えーって……」
小鷹「いやそれはどうでもいい」
小鷹「とにかく理科がそれを部室に持ってきて…」
小鷹「たまたま俺しかいなくて実験台になって」
小鷹「その結果がこれ……か?」
小鷹「……おいおいちょっと待て」
小鷹「じゃあ、これは俺の欲望ということか」
小鷹「……」
小鷹「いやいや、なんでこいつなんだよ!」
小鷹「俺そんな溜まってないぞ!」
小鷹「いやいや……」
小鷹「……」
ぺらり
小鷹「……」
小鷹「乳首までくっきり見える…」
小鷹「マジかよ……」
理科「……ん」
小鷹「!?」
小鷹(ヤバイ、起きたか!?)
理科「……あっ」
理科「おはようございます、先輩?」
小鷹「!!!!????」
小鷹(や、やべえ!)
小鷹(い、色っぽい!)
小鷹「チラッ」
理科「?」
小鷹「うわあああっ!」
理科「先輩!?」
小鷹(わ、Yシャツ一丁はヤバい!)
小鷹(男の夢すぎるだろ!)
小鷹(なんなんだよ、これ!)
理科「あの、どうかしたんですか…?」
理科「そんな急いで隅っこのほうに」
小鷹「ど、どうしたもなにも…」
小鷹(落ち着け、落ち着け俺のゲイボルグッ!)
理科「顔、真っ赤ですよ?」
小鷹「うわあああっ!」
小鷹(だから見えてる!)
小鷹(乳首見えてる!)
小鷹(乳首どころじゃなくあんなところやこんなところまで見えてる!)
理科「……先輩?」
小鷹(やべえ!)
小鷹(鎖骨エロい!)
小鷹(いや、今の問題はそうじゃねえ!)
理科「……あの」
理科「……私、なにか嫌われるようなことしちゃいましたか?」
小鷹「えっ?」
理科「私なりに頑張ってるんですけど…」
理科「私じゃ至らないところ、いっぱいあるんですよね」
小鷹「いや、ちょっちょっちょっ」
小鷹「泣くのだけは……」
理科「……ひぐっ」
小鷹「わかった!わかったから!」
小鷹「とにかく俺が悪かったから!」
小鷹「とにかく泣き止め、な?」
理科「……」
理科「…本当悪いと思ってます?」
小鷹「ああ!思ってる!」
理科「そう思ってます?」
小鷹「思ってる!」
理科「じゃあ、お願い聞いてください」
小鷹「わかった、なんでも聞く!」
理科「ほんとですか?」
小鷹「無茶なことじゃなければ聞くから」
理科「じゃあ、ぎゅっとしてください」
小鷹「ええっ!?」
理科「駄目ですか?」
小鷹「駄目というか……」
小鷹「……」
理科「……」
小鷹「……こうでいいのか」
ぎゅっ
理科「きゃっ」
理科「……」
小鷹「こ、これでいいのか、理科?」
理科「……駄目です」
理科「先輩、その…」
理科「……」
理科「もっと強く…」
小鷹「えっ、と」
理科「もっと強く、理科をぎゅっとしてください」
小鷹「ええっ!?」
理科「だめですか…」
理科「…ひぐっ」
小鷹「わかったよ!」
理科「……えへへ」
ギュッ
理科「……んっ」
理科「ふふふっ」
理科「せんぱい、あったかい……」
小鷹(!!!!????)
小鷹(ちょっ、やべえ!?)
小鷹(ま、まて、おちつけ俺)
小鷹(相手はこいつだぞ!?)
理科「せんぱい」
理科「理科、嬉しいです」
小鷹「俺は、その、なんだ」
小鷹「状況が掴めない…」
理科「えっ?」
小鷹「ええと、俺とお前は隣人部の先輩後輩で」
小鷹「こんなことをする関係とは違うはずなんだけど…」
理科「……」
理科「……?」
小鷹「……違うのか?」
理科「あの…」
理科「その、なんでしたっけ」
理科「隣人部、ですか?」
小鷹「おう」
理科「それがよくわかんないんですけど…」
小鷹「はぁ!?」
理科「理科と先輩は…」
理科「その恋人で…」
理科「一緒に暮らしてて」
理科「あの、その」
理科「卒業したら結婚しよう、って」
小鷹「……」
小鷹「……」
ガララララ
小鷹「……すぅ」
小鷹「なんじゃそりゃあああああああああああ!!!!!!!!」
理科「ちょっと、先輩!」
理科「朝だから窓を開けて大声を出すのは…」
小鷹「……お、おう」
小鷹「すまない」
小鷹「思わずやっちまった」
理科「先輩、ええと、熱でもあるんですか…」
理科「理科が風邪うつしちゃったとか…」
理科「ええと、でも、理科は風邪なんて引いてないし…」
小鷹「いや、おう、もう大丈夫だ」
小鷹「なんというか」
小鷹「ひとまずこの状況は掴めた」
理科「ほんとに…」
小鷹「本当に」
小鷹「な?」
理科「……ひぐっ」
小鷹「ちょ、なぜ泣く!」
理科「だって……先輩になにかあったら……」
理科「理科は…」
小鷹「……はぁ」
小鷹「大丈夫だから、な」
理科「……」
小鷹「泣かれるのは…」
小鷹「いや、まあ泣かれる以外にも今困ってることはいっぱいあるけど」
小鷹「なんだ、その」
小鷹「お前に泣かれるのだけはなんというか本当困る」
理科「……」
理科「…えへへ」
理科「先輩は、ほんとやさしいです」
小鷹「……おう」
理科「あ、そうだ」
理科「朝ごはん、作ってきますね」
小鷹「えっ」
理科「いつも作ってもらってばっかりじゃ先輩も大変ですから」
理科「それに私が毎日頑張れてるのも、先輩のご飯のおかげですし」
理科「たまには恩返ししないと」
小鷹「お、おう」
小鷹「ええと、じゃあ、頼む」
理科「はいっ!」
理科「理科にお任せあれ!」
理科「えへへ、じゃあ急いで作ってきますね」
タタタタ
小鷹「……待て」
小鷹「俺が作る役で、あいつが働く役なのか?」
小鷹「主夫かよ、俺!」
小鷹「……」
小鷹「……確か理科が作ってきたのは」
小鷹「欲望を叶える機械、だったよな」
小鷹「……」
小鷹「いやいや、まさか!」
小鷹「俺、別に、あいつのこと、そんな…」
小鷹「……」
小鷹「……ただ確かなのは」
小鷹「絶対に働きたくないでござる…」
小鷹「いやいや、待て、俺」
小鷹「そんなことが問題じゃない!」
小鷹「一番……かどうかはわからないが」
小鷹「問題は、隣人部だ!」
小鷹「理科は隣人部なんて知らないって…」
小鷹「……」
小鷹「……やっぱりおかしい」
小鷹「とにかく、今は少しでもなにか情報を引き出さないと」
小鷹「……」
小鷹「……」
小鷹「その、なんだ」
小鷹「服はどこだ」
小鷹「……」
ガラララ
小鷹(……全裸で)
小鷹(陽を浴びるの超気持ちいいな!)
……
………
…………
理科「あの、先輩」
理科「その、どうですか?」
理科「先輩ほど、うまくできたわけじゃないですけど…」
小鷹「いやいやいや」
小鷹「おう」
小鷹「……その、旨いぞ?」
理科「えっ」
理科「……あ、あはは」
理科「ふふっ、うれしい」
小鷹(いや、まあ)
小鷹(普通に旨い…)
小鷹(お前、もうちょっと、こう、ベタに塩と砂糖間違えるとかしろよ!)
小鷹(普通に旨かったらネタにならないだろ!)
理科「♪」
小鷹(しかしこんなに嬉しそうな顔をする理科を見るのも…)
小鷹(ユニヴァアアアアスとかやってる理科の顔なら覚えてるんだが)
小鷹(……こんな顔できるんだな、こいつ)
理科「…あ、先輩」
理科「ほっぺにごはん、ついてますよ?」
小鷹「?」
小鷹「お、おう」
理科「もう、子どもみたいなんだから」
理科「ほら、先輩?」
理科「……ちゅっ」
小鷹「!?」
小鷹(ちょっ!口で取るかよ!)
小鷹(この子ったら大胆!)
理科「えへへ」
小鷹「……」
小鷹「……あの」
小鷹「ちょっと聞きたいことがあるんだ」
小鷹(少なくともこいつの話だと)
小鷹(この世界だと隣人部はなかったことになってる)
小鷹(だとしたら、あいつらもみんな…)
小鷹「なあ、理科」
小鷹「星奈って知ってるか?」
理科「……」
理科「……アイルトン?」
小鷹「……」
理科「……」
小鷹「…まあ」
小鷹「そんな気がしてたさ」
……
………
…………
小鷹「とりあえず」
小鷹「小鳩とだけはなんとか連絡が取れたか」
小鷹(まあ、実の妹まで忘れ去られてたら辛いとこだった)
小鷹(さすがに血の繋がりは消せないってか)
小鷹「やれやれ」
小鷹「我が眷属よー、か」
小鷹「あいつだけは変わってなくて、安心したぜ」
小鷹「……」
小鷹(どうしたもんかね……)
理科「あっ、先輩ー」
理科「どうしたんですか?急に小鳩さんに電話なんて」
小鷹「ああ、ちょっと用事があってな」
理科「ふぅん」
小鷹「理科、今日は休みなのか?」
理科「?」
理科「そうですけど」
小鷹「…そうか」
小鷹「……」
理科「……」
小鷹(……会話が続かねえ!)
小鷹(なんだよ!これ!どうすりゃいいんだよ!)
理科「♪」
小鷹「なんだよ、ニヤニヤして」
理科「えへへ」
理科「ニヤニヤなんてしてませんよー」
小鷹「なんだよ気持ち悪い」
理科「だって、理科」
理科「今日一日先輩といられるって思うだけで嬉しいんですもん」
小鷹「……そりゃよかった」
理科「♪」
小鷹「……DVDでも借りにいくか?」
……
………
…………
パパパー
♪日本の蒸気機関車の歴史は1872年…
理科「フンスー」
小鷹「……」
小鷹「……面白いのか、これ?」
理科「超興奮します!」
小鷹「はぁ…」
小鷹(こういうところは相変わらずなんだな…)
理科「えへへへへ」
小鷹「よだれ、たれてるぞ」
理科「おおっと」
小鷹「まあ、お前らしいっちゃお前らしいんだけどさ」
小鷹「俺だからいいけど、こんなの他の奴に見られると」
小鷹「気味悪がられるぞ」
理科「もう、やだなぁ、先輩」
理科「こんなとこ、先輩以外に見せないですよ」
理科「私のこと知ってるのは先輩だけなんですから」
小鷹「……」
小鷹「……そうか、そういうことですかい」
理科「えへへ」
理科「わかればいいんですよ」
理科「♪」
小鷹「……」
小鷹(なんというか)
小鷹(やれやれだぜ)
小鷹「お前と付き合う奴は面白いやつなんだろうな」
理科「なんですか、もう」
理科「お昼から嫌味か自虐ですか?」
小鷹「いやいや、本心だよ」
理科「もう!」
小鷹「……」
小鷹「なあ、俺ら」
小鷹「なんだ、その」
小鷹「こうして何ヶ月目だっけ?」
理科「こうしてって?」
小鷹「この生活をはじめて」
理科「ええと……」
理科「2年?」
小鷹「結構長いな!」
理科「えへへ」
理科「先輩と理科は巷でも有名な高校生夫婦なんですよー」
小鷹「マジかよ…」
小鷹「どういう欲求の溜まり方をすればこうなるんだ、俺…」
小鷹「その、馴れ初めは?」
理科「馴れ初めですか?」
理科「なんでそんなこと聞くんですか?」
理科「今日の先輩、やっぱりおかしいです」
小鷹「えっ」
小鷹「いや、その」
小鷹「こういうこと、お前の口から聞きたいなって……」
理科「……うーむ」
小鷹「いや、そんなに疑わなくても…」
小鷹「その、なんだ」
小鷹「ほ、ほら、もうすぐ、記念日だろ!」
小鷹「付き合いはじめた日!」
理科「先輩」
理科「先週、3年目に入ったばかりですよ?」
小鷹「……あ、ええと」
小鷹「あれだ!」
小鷹「お、俺たちは毎日が記念日なんだよ!」
理科「……」
小鷹「……」
理科「なるほど!」
理科「えへへ、毎日が記念日かあ」
理科「ならしょうがないですねー」
小鷹(……助かった)
小鷹(こ、こいつが単純なタイプで助かった!)
理科「先輩が理科と付き合ったのはですね」
理科「先輩が理科を見つけてくれたからなんですよー」
小鷹「?」
小鷹「なんじゃそりゃ」
理科「えへへへー」
小鷹「こら抱きつくな」
理科「ぶー」
小鷹「わけがわからん」
小鷹「あの、もうちょっと詳しくだな…」
理科「もう先輩はロマンチックじゃないなあ」
理科「そんな鈍感なふりしてると女の子は傷ついちゃうんですよ?」
小鷹「……」
小鷹(欲望を叶える機械、ねぇ)
小鷹「なぁ、理科」
小鷹「お前、今、なんというか」
小鷹「幸せだったりするのか?」
理科「え?」
理科「超、幸せですよ?」
小鷹「……あぁ、なるほど」
理科「先輩は?」
小鷹「悪い気分じゃないな」
理科「ええっ、先輩も素直じゃないなあ」
小鷹「偽らざる本心だって」
理科「えへへへ」
小鷹(やれやれ)
小鷹(なんつーか、大体読めてきたぞ…)
小鷹(だとすると…)
小鷹(めんどくせぇ…)
理科「♪」
小鷹「……よく見ると」
小鷹「可愛いよな、お前」
理科「えっ」
理科「ちょっとなんですか、急に可愛いなんて」
理科「えへへ、私は先輩の可愛い理科ですよ」
理科「♪」
小鷹「……」
理科「……って」
理科「よく見るとってなんですか!先輩!」
理科「ワイワーイガヤガーヤ」
小鷹(なんとなく話が分かってきた)
小鷹(可能性はひとつじゃなく二つだということだな)
小鷹(これが本当に俺が望んだものだということ)
小鷹(もうひとつは、これが俺の望んだものじゃなく)
小鷹(あの時、俺の隣にいた理科の望んだものに俺が巻き込まれたということ)
小鷹(どちらにせよ夢から覚める方法を探さなきゃいけないが)
小鷹(もし前者じゃなく後者なら話が厄介かもな……)
小鷹(……)
理科「……あの」
理科「先輩?」
理科「やっぱりなにかあったんですか?」
小鷹「いやいや、なにもないって」
理科「……ならいいんです」
理科「あのね、先輩」
理科「理科は先輩がいないと駄目なんですよ?」
理科「どうか遠くにいかないでくださいね、先輩」
ギュッ
理科「……」
小鷹「……」
小鷹(…まあ)
小鷹(前者だとしても)
小鷹(それはそれで厄介だよな)
ちょいと席をはずれまーす
……
………
…………
チュンチュンチュン
小鷹「……」
小鷹「二日目か…」
小鷹「おう」
小鷹「ヤっちまったな」
理科「……むにゃむにゃ」
理科「せんぱぁい」
小鷹「……」
小鷹「正直」
小鷹「最高でした」
小鷹(しかしまあ)
小鷹(これが夢か幻かなにかまではわかんないけど)
小鷹(生生しすぎるだろ…)
小鷹(アレとか…)
理科「…ん」
小鷹「そして」
小鷹「流されやすすぎるだろ!俺!」
小鷹「夢の中とはいえ、あんまりこんなことしちゃ駄目だとは思ってたけど…」
小鷹「すまない小鳩」
小鷹「俺も男だった…」
理科「……先輩?」
小鷹「!?」
理科「おはようございます…」
小鷹「おお、おう!」
小鷹「き、昨日は、その…」
小鷹「お楽しみでしたね!」
理科「……」
理科「えへへ」
理科「先輩、激しかったです…」
小鷹「……」
小鷹(こりゃ目覚めたあと神に懺悔だな)
小鷹(手短にマリアにでも頼むか)
理科「いたた…」
小鷹「身体、大丈夫か?」
理科「大丈夫ですよ」
理科「理科、苛められるの大好きですから」
理科「特に先輩になら」
小鷹「いつもなら笑ってすませるそれも、今は冗談に聞こえないな…」
理科「あら、冗談じゃないですよ?」
理科「なんなら今からでも理科のことを苛めても…」
小鷹「うおーい!」
小鷹「今日は俺が朝ごはん作るから!」
小鷹「ゆ、ゆっくりしていってね!」
スタタタタ
理科「……」
理科「……ふふふ」
理科「残念」
小鷹「やばい」
小鷹「このままだと確実に流される…」
小鷹「主に女体の神秘に…」
小鷹(だけど)
小鷹(元に戻る方法が見つからないことには…)
小鷹「とりあえず」
小鷹「飯作るか」
……
………
…………
理科「♪」
小鷹「嬉しそうだな、理科」
理科「うん、先輩」
理科「理科、凄く嬉しいですよ?」
小鷹「急いで作ったからありあわせになっちゃったけど…」
理科「もう先輩、それは野暮ですよ?」
小鷹「オーケー」
小鷹「コーヒーと紅茶とココア、どれがいい?」
理科「あ、コーヒーお願いします」
小鷹「了解」
理科「♪」
小鷹(……流される理由は女体の神秘だけじゃないよな)
小鷹「今日仕事か?」
理科「あ、はい」
理科「今日は先輩と一緒にいられなくて」
理科「理科、さびしいです」
小鷹「毎日朝から晩まで一緒だと飽きちゃうだろ?」
理科「嫌だなあ」
理科「飽きたりなんかしませんよ」
理科「じゃあ今日は仕事してるときも理科は先輩のことばっかり考えます」
小鷹「それじゃ仕事にならないだろ」
理科「えへへ、それもそうですね」
理科「じゃあ、いまぎゅっとしてくれたら今日は先輩なしで頑張りますよ」
小鷹「なんじゃそりゃ」
理科「ほら、急いでぎゅっとしてくれないと理科遅刻しちゃいますよー」
理科「理科が遅刻しちゃうと先輩も困るでしょう?」
小鷹「そりゃ困る」
理科「だったら、ほら」
小鷹「…そんなこれみよがしに手をひろげなくても」
小鷹「ほら」
ぎゅっ
理科「……ん」
理科「えへへ、あったかい」
小鷹「……」
理科「じゃあ、行ってきます」
小鷹「おう」
理科「先輩、浮気しちゃ駄目ですよ」
小鷹「もし浮気したら」
理科「理科、泣いちゃいます」
小鷹「確かにお前が泣かれるのは勘弁だな」
理科「さっすが先輩は話がわかるー」
小鷹「はいはい」
小鷹「ほら電車、間に合わなくなるぞ」
理科「むー」
理科「じゃあまた帰ってきたら」
理科「理科のことぎゅっとしてくださいね」
小鷹「はは、考えとくよ」
バタン
小鷹「いってらっしゃい」
小鷹「……ってか」
小鷹「実際、嫌な奴だな、俺も」
小鷹「流されてるのか、流されてないのか」
小鷹「流されてる振りをしてるのか、流されてない振りをしてるのか…」
小鷹「……」
小鷹「ってそんなこと考えてる場合じゃない!」
小鷹「とにかく、元に戻る方法を考えないと」
小鷹「とりあえず小鳩に当たるか…」
すまん、限界なのでちょっとだけ寝る!
オハヨー牛乳
…
……
………
小鷹「よう、小鳩」
小鳩「……」
シュバッ
小鳩「久しぶりだな、我が眷属よ」
小鷹「なんだそのカッコいいポーズは」
小鳩「ふっ、我がカリスマの前に怖気づいたか」
小鷹「いや、そういうわけじゃなく」
小鳩「プルプル」
小鷹「あの、つま先しんどいなら」
小鷹「無理してそんなポーズしなくていいんだぞ」
小鳩「うぃ……」
小鳩「なんじゃ、あんちゃん」
小鳩「急に呼び出して」
小鷹「ちょっと聞きたいことがあってな」
小鷹「あ、そうだ」
小鷹「ご飯ちゃんと食べてるか?」
小鷹「風呂と洗濯と掃除は毎日やってるか?」
小鷹「ゴミ出しはちゃんとやってるか?」
小鷹「俺は心配で心配で…」
小鳩「う……」
小鳩「うるちゃいうるちゃい!」
小鳩「久しぶりに会って言うことがこれかい!」
小鷹「お、おう!」
小鷹「そんなことはいいんだった!」
小鷹「この前電話でした話、覚えてるか?」
小鳩「夜空だとかマリアだとか真田幸村とかなんとかか?」
小鷹「ああ、真田はいらない」
小鳩「なんじゃ、またその話か」
小鳩「だからうち知らん」
小鷹「本当になにも覚えてないのか」
小鳩「覚えてないというか」
小鳩「うーん…」
小鳩「はっ!」
小鳩「あんちゃんももしかして目覚めたのか?」
小鷹「何にだ?」
小鳩「この世を滅ぼす我が血族の力に…」
小鷹「ああ、それは残念だったな」
小鳩「はう」
小鳩「だって変じゃ」
小鳩「あんちゃん、急に変なこといいよる」
小鷹「いや、本当に覚えてないならいいんだ」
小鳩「むー」
小鷹「じゃあ理科についてちょっと聞かせてくれないか?」
小鳩「理科について?」
小鷹「ああ」
小鷹「その、なんだ、あいつについてのことを…」
小鳩「ぶー」
プクプクプク
小鷹「こら」
小鷹「みっともないからクリームソーダぷくぷくするのやめなさい」
小鳩「わしもよくわからん…」
小鷹「は?」
小鳩「なんかいつのまにかあんちゃんと付き合ってて…」
小鳩「いつのまにかあんちゃんとってった…」
小鷹「いつのまにか?」
小鷹「どういうことがあったのか覚えてないのか」
小鳩「そんなん知らんわ」
小鳩「自分の胸に聞けばええねん」
小鷹(いや、聞いてもわからないから困ってるんだが)
小鷹「あの、お前は理科のこと嫌いなのか?」
小鳩「嫌いじゃない…」
小鳩「ええ人やとおもっちょる…」
小鷹「あのなぁ」
小鷹「じゃあそんなつっけんどんな態度をとらなくても」
小鳩「わしにもわからんの」
小鳩「綺麗な人やし」
小鳩「うちにもやさしくしてくれる」
小鷹「じゃあ問題ないじゃないか」
小鳩「でもあの人を見るたび、なんかちくちくすんのじゃ」
小鳩「あんまり知らない人なのに、なんかよく知っとる気がしよる」
小鷹「なんじゃそりゃ」
小鳩「乙女ごころは複雑なんじゃ」
小鷹「乙女ね…」
小鳩「なんじゃその目」
小鷹「いや、別に」
小鳩「ふん」
小鷹「悪かった悪かった」
小鷹「イチゴケーキも食わせてやるから」
小鳩「!」
小鳩「うぇへっへ」
モグモグ
小鷹「あのなあ、お前もそろそろ年頃になるんだから」
小鷹「ケーキひとつでご機嫌になったりするなよ…」
小鳩「♪」
小鷹「まあ、機嫌が戻るならなによりだけど」
小鷹(しかしまあ…)
小鷹(手がかりがつかめたのか、なんなのか…)
小鷹(この世界だと)
小鷹(俺と理科は前触れもなく、急に恋人になったということか)
小鷹(いや、まあ、恋愛なんて得てしてそういうもんだと思うけど…)
小鷹(……)
小鷹(…自分で言うのもなんだけど)
小鷹(そもそも俺が小鳩を一人置いて家を出てったりするのか?)
小鷹(……うーむ
小鷹(考えてもわからん…)
小鳩「?」
小鳩「どうしたあんちゃん?」
小鷹「あ、いや」
小鷹「今日の夕飯どうしよう、って」
……
………
…………
小鷹「今夜も」
小鷹「お楽しみでしたね!」
理科「えへへ」
小鷹「猿か俺は…」
小鷹「ボノボか…」
理科「先輩今日も激しかったです…」
小鷹「い、言うな…
理科「あのね、先輩」
理科「今日は理科、嬉しかったです」
小鷹「お前やっぱりドMか…」
小鷹「知ってたけど」
理科「あ、そうじゃなくて」
理科「そっちも嬉しいですけど!」
小鷹「嬉しいって」
小鷹「小鳩が夕飯に来たことか?」
理科「そっちです」
小鷹「ああ」
理科「……彼女とその、仲良くなれなくて」
理科「もしかしたら嫌われてるのかなって」
小鷹「いや、そんなことはないと思うぞ」
小鷹「単に人見知りするタイプなだけだよ」
理科「それならいいんですけど」
理科「とにかく、小鳩さんともっと仲良くなれたらいいのにと思ってたから」
小鷹「お前も人並みにそういうの気にするんだな」
理科「理科は先輩のこと、妹さんを含めてなにもかも全部好きになりたいんです」
理科「理科は貪欲なんですよ」
小鷹「なんじゃそりゃ」
理科「先輩は男冥利に尽きるってことですよ!」
小鷹「こらっ、抱きつくな!」
小鷹(勃つ!また勃つ!)
理科「なんか彼女を見てると懐かしい気持ちになるんです」
小鷹「?」
理科「よくわかんないですけど」
理科「なんかずっと前に会ってたような…」
小鷹「気のせいじゃないか?」
小鷹「俺の妹とお前に面識なんてないだろ?」
理科「そうなんですけど…」
理科「うーん」
小鷹「会ったことがあるような気がする、ねえ」
小鷹(…これが何かの鍵になる、のか?)
小鷹「まあ」
小鷹「俺もお前らが仲良くなってくれればそれにこしたことがないし」
小鷹「また今日みたいに一緒に飯でも食いに行こうぜ」
理科「お金出してるのは理科ですけどね」
小鷹「う、そこを突かれると…」
理科「ふふ、でも嬉しいです」
小鷹「俺もお前が嬉しそうにしてくれると嬉しい」
理科「えへへ」
理科「そんなこといわれると、理科もっと嬉しくなっちゃいますよ」
理科「じゃあ、先輩」
理科「おやすみなさい」
小鷹「ああ、おやすみ」
小鷹「……」
小鷹(少しでも進展したのか)
小鷹(それとも謎が深まったのか)
小鷹(よくわからないが、隣人部の記憶は完全に消えたわけじゃないのか?)
小鷹(だがここからどうすれば…)
小鷹「……」
小鷹「……おし、寝よう」
…
……
………
小鷹「…三ヶ月か」
小鷹「手がかりが何一つ掴めねえ!」
小鷹「どうすりゃいいんだよ、これ!」
プシュー
小鷹「あ、鍋沸騰した」
パカッ
小鷹「ふむっ」
小鷹「味も見てみよう」
小鷹「おお、我ながらよくできてるぞ!」
小鷹「トルコ風トマトと鶏の煮物とか冒険だったが」
小鷹「ものは試しだな、ははは」
小鷹「……だめだ」
小鷹「流されまくってる、馴染みまくってる…」
小鷹「どうすりゃ元の世界に戻れるんだ…」
小鷹(誰に聞いても、どこを探しても理科と小鳩以外の部員が見つからない…)
小鷹(存在すら消されたんじゃないかってくらいに…)
小鷹「学校の名簿を見てきてもいないとは…」
小鷹「見事に痕跡が消されてやがる」
小鷹(本当に俺がそんなことを望むなんてことは…)
小鷹(だとしたら、やっぱりこの世界は理科の…)
トゥルルルルル
小鷹「……電話か」
小鷹「もしもし、はい」
小鷹「え?」
小鷹「理科が倒れた?」
…
……
………
小鷹「理科!」
理科「……あ、せんぱぁい」
ぎゅっ
小鷹「大丈夫か?」
理科「ふふ、痛いですよ?」
理科「そんなに強くされると、理科嬉しいです」
小鷹「ごめん、俺が甘えてたばっかりに無理させすぎた」
理科「そんなことないですよ」
理科「理科のほうが先輩に甘えてます」
理科「ありがとうございます」
小鷹「……このタイミングでありがとうはないだろ」
小鷹「とにかく意識があってよかった…」
小鷹「お前がいなくなったら、俺は…」
理科「もう、先輩だめですよ」
理科「そんなこといっちゃ、駄目です」
小鷹「あ、ああ」
小鷹「すまない」
理科「えへへ」
小鷹「……なんだよ、ニヤニヤして」
理科「いいお知らせがあるんですよ」
小鷹「いや、俺がお前が倒れたって悪い知らせを聞いて」
理科「うーん、それは悪い知らせかもしれないですけど」
理科「その、今から大事なお話をするので」
理科「理科の話を聞いてくださいね」
小鷹「大事な話?」
理科「ええ」
理科「驚かないでくださいね」
小鷹「わ、わかった」
理科「その……なんというか」
小鷹「ゴクリ」
理科「あのね、先輩」
理科「できちゃいました」
小鷹「……」
理科「……」
小鷹「……」
ガララッ
小鷹「……な」
小鷹「なんじゃそりゃあああああああああ!」
理科「ああっ、だから窓を全開にして叫ばないでください!」
小鷹「できたってアレか…」
小鷹「その、おしべとめしべががっつんこか?」
理科「やだ先輩卑猥…」
理科「でも理科、卑猥なこと大好きです…」
小鷹「いや、下ネタとかはどうでもよくて」
小鷹(に、妊娠するって……)
小鷹(欲望が叶うったって、腹ボテイベントってどんな欲望だよ……)
小鷹「我々の業界ではご褒美です」
理科「え?今なにか言いましたか?」
小鷹「いや、気にしないでくれ」
理科「はぁ」
理科「いま理科のお腹の中にいるんです」
理科「先輩と理科の子どもが」
小鷹「そ、そうか」
小鷹(そりゃまあ、直撃するほどヤってたのは間違いないが…)
小鷹(だって、そんなもん、誰が直撃すると思うよ!)
理科「ほら先輩」
理科「理科のお腹、触ってください」
小鷹「お、おう」
理科「えへへ、どうですか」
小鷹「……不思議な気分だな」
理科「理科はね、凄く嬉しいです」
小鷹(……まあ、俺も正直なところ)
小鷹(ちょっと嬉しいんだけどさ)
理科「男の子だと思います?」
理科「それとも女の子だと思います?」
小鷹「さあ?双子という可能性もあるぞ」
理科「おお」
理科「それは考えてませんでした」
理科「さすが先輩です」
小鷹「まあ、でも双子だったらお前の身体に負担がかかるからな」
小鷹「お前が無事なら、なんだっていいさ」
理科「ふふっ」
理科「……先輩の子ども、か」
理科「結婚式、だいぶ先になりそうですね」
小鷹「まあ、その身体だとな」
理科「待たせちゃってごめんなさい、先輩」
小鷹「謝ることじゃないさ」
理科「えへへ」
理科「♪」
小鷹「小鳩の奴にもいいお姉さんになってもらわないとな」
理科「ふふふ、小鳩さんはいい妹さんだから」
理科「いいお姉さんになれますよ」
小鷹「俺たちの子どもに変なこと吹き込まなきゃいいけどな」
理科「……」
小鷹「なんだよ俺の顔見て」
理科「先輩、いま俺たちの子どもって」
理科「えへへへ」
小鷹「う…」
理科「顔、真っ赤ですよー」
小鷹「う、うるさいな!」
理科「……なんか幸せすぎて、夢みたいです」
小鷹「……」
理科「夢じゃないのが信じられないくらいで」
小鷹「……ああ、俺も夢のような気分だよ」
小鷹「ほら、お前一人の身体じゃなくなったんだから」
小鷹「あんまり遅くまで起きるなよ」
理科「はい」
理科「あ、そうだ」
理科「先輩はその、理科に先輩と呼ばれるのがいいですか?」
理科「それとも理科にパパと呼ばれるのが、どっちがいいですか?」
小鷹「……そうだな」
小鷹「いまはまだ、先輩で頼む」
まだ暫く続きますよ
ほす
ほほ
夕方には戻る
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そして二度と帰ってこなかった
そして二度と帰ってこなかった