アニ「ライナー抜かしたい」(268)
ベルトルト「…泣かせたい?」
アニ「抜かしたい」
ベルトルト「…………成績?」
アニ「身長」
ベルトルト「」
アニ「……」ムス
ベルトルト(なんか知らないけど怒ってる…)
ベルトルト(…休日の朝っぱらから呼び出されて何事かと思ったら、薮から棒に何なんだ)
アニ「ベルトルト、私を肩車する気は 「遠慮させてもらおうかな
」
アニ「…ちっ」
ベルトルト(大変魅力的なお誘いな気がしなくもなくもないけど、それは僕の精神衛生上、非常によろしくない。ほら、僕紳士だから…)
アニ「まあ冗談だけどさ」
ベルトルト「……」ホッ
ベルトルト「なんだって突然そんな話?」
アニ「私、気付いたんだ。ライナーが未だに私を子供扱いするのは、私に身長が足りないからじゃないかって」
ベルトルト「何その理屈」
アニ「もし違っても、身長さえあれば、少なくとも手軽に頭ポンポンされたり、中腰で目線合わせて、心なしか子供向けな言動で話してきたりしなくなるはずだしね」
ベルトルト「ああ…そういう…」
アニ「すごく屈辱的だよ。あんたにはわからないと思うけど」
ベルトルト(それ、肩車じゃ根本的解決にならないんじゃ…まあ冗談らしいし、言わないけど)
アニ「背を伸ばす秘訣ならあんたが一番知ってると思って。何食べたらそんなに大きくなれるの?」
ベルトルト「…残念ながら、開拓地にいた頃から今までずっとアニと同じものを食べてるよ」
アニ「……だよね。そうだ、この世界は残酷なんだ」ハア
ベルトルト「ここでそれ言う?」
ベルトルト「……」
ベルトルト「…僕は、アニはそのままの方が、その、かわ… 「あんたの意見は聞いてない」キッパリ
ベルトルト「」
アニ「……」ムス
ベルトルト「……」ハア
ベルトルト「ライナーのアニに対する妹扱いは、もう自然に染み付いちゃってることだし、仕方ないんじゃないかな」
ベルトルト「だって二人、開拓地にいた頃は周りに兄妹で通してただろ?覚えてる?」
アニ「……忘れられるわけないでしょ。黒歴史だよ」
アニ「全く血縁のない男に、突然お兄ちゃんと呼ぶことを余儀なくされる恥辱ときたら…」ギリ
アニ「何が『名字が違うのは片親が違うから』だよ。そんな細かい設定いらないっつーの。しかも髪の色が似てるせいで、当時一緒にいた人たち誰も疑わないし…」ブツブツ
ベルトルト「(根に持ってるな…)だから、身長とか関係ないんじゃない?」
アニ「いいや、少なからず関係してるね。あんただけ子供扱いされてないの見るとそう思うよ」
ベルトルト「そこは譲らないんだね」
アニ「…はあ…大体、兄妹設定とか何年前の話だよってね。いい加減に妹扱い脱却したい…」
ベルトルト「本人にやめてって言ってみたら?」
アニ「…やめてもらえる気がしないよ。『俺を煙たがる年頃になったのかー。お兄ちゃん悲しいぞ』とか言われそうだし」
ベルトルト「…言いそうだね。一言一句違わずに脳内再生できるよ」アハハ
アニ「……」ムス
ベルトルト「じゃあさ、アニは、具体的にライナーからどう見られたいの?」
アニ「? どうって…」
ベルトルト「たとえば、友達として見られたいとか」
アニ「……え?」
ベルトルト「え?」
==
・兵舎廊下
アニ「……(考えたこともなかったな、あいつにどう見られたいなんて)」スタスタ
アニ(…なんか、考え始めるとモヤモヤする)
ライナー「ようアニ、おはよう」
アニ「!(…噂をすれば。今は会いたくなかったのに)」
ライナー「おいおい、無視するなよ。反抗期か?」
アニ「」イラッ
アニ「……………おはよ」ボソ
ライナー「よし、よくできました」ポンポン
アニ(無視しても応えてもこれだもん…)ハア
ライナー「そうだ、お前、ベルトルト見てないか?朝食が済んだあたりから姿を見ないんだが…」
アニ「さっきまでは兵舎裏にいたよ。まだいるんじゃないかな」
ライナー「ん?なんだ、二人で会ってたのか?俺には言えない話か?」
アニ「…別に大した話じゃないよ(あんたに話しても本末転倒だし)」
ライナー「? あ、ひょっとして告白でもされたか?…あいつも隅におけない奴だなあ」ニヤ
アニ「…っ!はあ?そんなわけないでしょ!なんでそうなるの!」ムカ
ライナー(んっ?なんで怒ってるんだ?)
アニ「……変な勘違いされても困るしね。仕方ないから教えてあげるよ」グイ
ライナー「お、おう」
アニ「私が、ベルトルトに、どうしたらあんたをぎゃふんと言わせられるかって相談してたの!それだけ!」
ライナー「…なんだそりゃ?俺何かしたか?」
アニ「自分で考えな。ちなみに私は真剣だから。じゃあね」フイ
ライナー「……」
ライナー「アニ!」
アニ「……何?」クル
ライナー「ぎゃふん」ボソ
アニ「」
アニ「…っ!」カチン
ライナー「ほら、言ってやったぞ。だからもうそんな怖い顔するなよ。じゃあな」
アニ「~~~っ!!!」ムッカァ
==
女子寮廊下
アニ(腹立つ!本っ…当にムカつく!)イライラ
『ひょっとして告白でもされたか?』
アニ(なんであんなこと言うわけ!?馬鹿でしょあいつ!!)
アニ「……」
アニ(…もしもあの時、嘘でも"そうだよ"って言ってたら、何て返ってきたんだろ。嫉妬でもしてくれたのかな…)
アニ(……いいや、するわけない!また子供の成長を見守る親みたいなことをしみじみと言われるだけだ!)ムカムカ
アニ(絶対に、いつか見返してやる!私はもう子供じゃないんだって、わからせてやる!)
ガチャ
アニ「!」
クリスタ「じゃあ行って来るねー!」
ミーナ「行ってらっしゃーい。お土産よろしくねー」
クリスタ「…あれ?わっ、ごめんねアニ!扉ぶつからなかった!?」アワワ
アニ「いや、…こっちこそ考えごとしてたから気付かなかったよ。ごめん」アセ
ユミル「おいおい気をつけろよ」
サシャ「大丈夫ですか?二人とも」
アニ「……(あれ?)」
クリスタ「うん、大丈夫みたい」
アニ「クリスタ、あんたなんか背が伸びてない…?」
クリスタ「え?ああ、今日は私服に合わせてヒールの高い靴履いてるからね、ほら」
アニ「……!」
ユミル「…せっかくクリスタと休日デートだと思ってたのになあ。なんでお前までついて来るんだよ」ハア
サシャ「いいじゃないですかー。私も買い物あるんですもん。そのかわり、お昼においしいお店紹介しますから!」
ユミル「…ったく」
クリスタ「もう、ユミル!一緒でもいいでしょ?みんなでお出かけした方が楽しいんだから」
アニ(ヒールの高い靴…)
アニ「……クリスタ」
クリスタ「? 何?」
アニ「それだ」
クリスタ「…はい?」
アニちゃんライナーに追いつくには40cmくらいのヒールが必要だぞ
アニ「ライナー脱がしたい」かと思った
==
・市街地
靴屋
ガヤガヤ
アニ「わ、広い…」キョロ
クリスタ「ここら辺じゃ一番大きいお店じゃないかな。この靴もここで買ったんだよ。…ほら見て、これなんかどう?カワイイでしょ?」スッ
アニ「…ああ、うん」
クリスタ「あ、ヒールの高いのが欲しいんだっけ?じゃあこれとかどうかな?こっちと比べてどっちが好み?」キラキラ
アニ「いや、あの…」タジ
ユミル「ああー、アニの奴、早速気後れしてるぞ」
サシャ「こういう時、やたら張り切りますもんね、クリスタ。光り輝いてますね」
クリスタ「色違いもあるよ。こっちを合わせると全体的に落ち着いた印象になるの。両方持ってて、その日の服に合わせて使い分けるっていうのも…」
ユミル「クリスタ。少しアニにも喋る隙を与えてやれ。こいつ言いたいことありそうだろ」
クリスタ「あっ、ごめんね。そうだよね。私ってばつい…」アセ
アニ「いや、いいんだけどさ」
クリスタ「何か要望があれば言って?」
アニ「えっと……」
クリスタ「どんなのがいいの?」
アニ「ああ、あの、その…」
クリスタ「?」
アニ「ここにはさ、ライナーの背を抜けそうなくらい高い靴って、ないの?」
クリスタ「」
サシャ「」
ユミル「…ぶはっ」
ユミル「あっはははははは!!!!何だそれ!!腹痛い!!これは傑作だわ!!」ヒーヒー
アニ「えっ…」
クリスタ「ユミル笑いすぎ!」
ユミル「だって…!なんでライナー?その背であいつ抜こうとか無理だろ!そんな靴履いて、大道芸人にでもなる気かよ!祭りで出し物やるのか!?」アハハハ
サシャ「そんなに笑ったら失礼ですよ!」
ユミル「だってよお、私やサシャくらいあっても見上げる相手だぜ!?これはっ、笑うだろ!あははは!!」
アニ「……」
アニ(どうやら私は…とんでもなく恥ずかしいことを言ってしまったらしい…)カア
ユミル「お前の目の高さから、視線を何度上げたらあいつと目が合うんだ?なんてったっけこれ、サイン?コサイン?あっははは!!」
サシャ「ぎゃああー、座学の話はやめて下さい。頭が痛いです」ウンザリ
クリスタ「もう!やめなさいユミル!」
ユミル「ひー、はいはい…」クックックッ
アニ「」
アニ(…帰りたい)
==
ガヤガヤ
アニ(結局、クリスタにオススメされた靴を買ってしまった…)ガサ
アニ(……かわいい)
アニ(こんなかわいい靴に合わせられる服なんか持ってないよ…宝の持ち腐れってこのことだ)
ユミル「いやあ、笑わせてもらったわ。アニって意外とおもしろい奴だな」プッ
アニ「うっ」ビク
サシャ「まあまあ、もういいじゃないですか。それ以上笑ったらアニが居づらくなっちゃいますよ」
クリスタ「そうだよユミル」
クリスタ「…そ、それにしてもアニ、本当にどうして、急にライナーが出てきたの?」
アニ「え…」
アニ「…いや、ただ単に、あいつがいつも私を子供扱いするのが悔しいから、見返してやりたくて(あれ、これ言っちゃっていいんだっけ?)」
サシャ「で、身長を抜かそうって発想に辿り着いたんですね、天才ですか」
アニ「(はい、私がバカです)……だって、身長のせいじゃないかと思ったから」ゴニョゴニョ
ユミル「そんなに嫌がるほどガキ扱いされるのか?『あー、よちよち(裏声)』ってされるのか?」
アニ「…あながち外れてない、かも」
ユミル「……まじかよ」
クリスタ「意外だね。二人はあまり一緒にいるように見えないのに。仲いいんだね」
アニ「」ギク
アニ「な、仲良くは…ないよ(やば…)」
ユミル「こいつ、普段あんまり人とつるんでないし、そうなると誰とでも話すライナーが必然的によく話す男子ってことになって、その扱いが目につくってことじゃねえの?」
アニ「そ、そう。そういうこと」アセ
クリスタ「でもアニ、ミーナとはよく一緒にいるよね?」
アニ「あれはあいつがついて来るから」
アニ「……」
アニ「…あのさ、クリスタは私より背が小さいでしょ。ライナーに中腰で目線合わされたり、頭ポンポンされたりしない?」
クリスタ「? 私はされないよ、そういうの。普通に話してくれる」
アニ「…そう、なんだ」
クリスタ「うん」
アニ「……」
アニ(やっぱり…)ムス
アニ(なんとなくわかってたけど。…クリスタの方が年下なのに…)
アニ(あいつの中じゃ、いつまでも私は妹なんだな…)
アニ「……」シュン
クリスタ「……」
クリスタ「…ねえアニ、ライナーに子供扱いされて、悔しいってさっき言ったよね?」
アニ「うん」
クリスタ「じゃあさ、見た目を大人っぽく変えてみない?」
アニ「…は?」
クリスタ「女の子らしい服着て、どうだ!私も一人前の女の子なんだぞ!って、ライナーを見返してやろうよ!」グッ
アニ「クリスタ…」
ユミル「……」
サシャ「……」
ユミル(ああー…ご愁傷様だな、アニ)
サシャ(前回はミカサが犠牲になってましたが、今日の着せ替え人形はアニですか…)
クリスタ「アニったら、普段から洋服に頓着してないでしょ」
アニ「まあ…よくわからないし、面倒だしね」
クリスタ「年頃の女の子がそんなんじゃだめ!きっとそれだよ?子供扱いされる原因!」
アニ「そう…なの?知らなかった」
ユミル「真に受けるのかよ…」
クリスタ「なんなら私が見立ててあげる!せっかくかわいい靴も買ったことだし、服見に行こう!」
アニ「え、でも、」アセ
クリスタ「でもじゃない!乗りかかった舟だもん、妥協なんてさせないよ!ライナーに女の子として見られたいんでしょ?」ズイ
アニ「………わかった」タジ
クリスタ「そうこなくちゃ!」ニコ
アニ(うわー輝いてる…。これが女神か)
アニ(…ていうか、あれ?私、ライナーに女の子として見られたいんだっけ?)
今日はここまでです
レスありがとうございます
>>1です。再開します
アニ「……」
クリスタ「ユミルとサシャはどうする?」
サシャ「い、一旦別行動しましょう!私たちは私たちで買い物がありますし…」アセアセ
ユミル「そうしようぜ。昼飯時にまたこの辺で落ち合えばいいだろ」
クリスタ「わかった。じゃあアニ借りてくね」グイ
アニ「ちょっと、引っ張らないでよ…」
ユミル「おう、行って来な」フリフリ
サシャ「ではクリスタ、またー」フリフリ
ユミル「……」
サシャ「……」
ユミル「やれやれ」
サシャ「ですね」
==
クリスタ「はいこれ、試着して」
アニ「え、ああ…」
クリスタ「次はこれね」
アニ「え!?こ、こんなヒラヒラした服似合わな…」
クリスタ「いいから!文句は着てから言う!」
アニ「……はい」
クリスタ「あ、今履いてるスカートの上着にこれ合わせてみて」
アニ「ちょっ、ちょっと待ってよまだ…」
クリスタ「その次でいいから、これも――」
==
数時間後
『毎度ありがとうございましたー』
クリスタ「…どうする?まだ次のお店見る?」ゴッソリ
アニ「いや、もういいもういい!もう何件も回ったし、こんなに買ったし、充分」アセ
アニ「それにほら、もうそろそろ昼だから、ユミルたちと合流しないと…」
クリスタ「あ、もうそんな時間?あっという間だったね…。じゃあもう行こっか」
アニ「……」ホッ
アニ(なんか、すごく疲れた…)
クリスタ「今日買った服着たら、かなりアニの印象変わるよー」ニッコリ
アニ「(女神スマイル眩し…)そ、そうかな……」
クリスタ「そうだよ!試着の段階で見違えたもん」
アニ「そ、そっか…」
アニ「なんかごめんね、何から何まで。ありがとうと言うべきか…」
クリスタ「いいよいいよ。私も楽しかったし」
クリスタ「早く、ライナーに女の子として見てもらえるといいね」ニコ
アニ「いや、だから私は…!」
アニ「……」
アニ「…そのことなんだけどさ、クリスタ」
クリスタ「え?」
アニ「私、わからないんだ」ポツリ
クリスタ「何が?」
アニ「本当は私、あいつにどう思われたいのか、わからない」
クリスタ「? …女の子として見てほしいんじゃないの?」
アニ「いや、子供扱いとか、妹扱いをやめてほしいとは思うけど、…ならどう扱ってほしいのかって言われると…そんなの考えたこともなくて、」
アニ「……いざ考えると、なんか頭の中に靄がかかったみたいになる」
クリスタ「……」
クリスタ「アニはさ、」
クリスタ「ライナーのこと、好き?」
アニ「!? なっ、何を急にっ…!」カアッ
アニ「そんなことっ…私あいつのことムカつくと思ってるんだよ?それなのに…っ!」アセアセ
クリスタ「じゃあ、嫌いなの?」
アニ「え……」
アニ「……」
アニ「…嫌い、では、ない…と思う、けど」
アニ「…何だろう、わからない」モヤ
クリスタ「それって多分ね、アニが、自分がライナーのことをどう思ってるか掴みかねてるから、ライナーからどう思われたいかもわからないんだと思う」
アニ「…そうなの、かな」
アニ「なんかもう頭が限界…。サシャじゃないけど。…私には難しい」
クリスタ「……ねえ、アニ。考えるのが難しいなら、答えを教えてもらえばいいんじゃない?」
アニ「? 誰に?」
クリスタ「ライナー本人にだよ」
アニ「…どうやって?」
クリスタ「気持ちを確かめたいんだから、単純に一緒に過ごしてみたらいいよね。自ずと見えてくるんじゃないかな」
アニ(気持ちを、確かめる……私から、あいつへの…)
クリスタ「あ、そうだ!お祭りに誘ってみたら?一緒に行こうって」
アニ「…お祭り?」
==
昼・飲食店
ガヤガヤ
サシャ「ええ。今度、この辺りでお祭りがあるんですよ」ムグムグ
ユミル「あーこら、食べながら喋るな」
サシャ「…むぐ」ゴクン
サシャ「ほら、今から既に準備で街全体が賑やかでしょう?気付いてませんでしたか?」
ワイワイ ガヤガヤ
アニ「言われてみれば…。知らなかった(だからユミルもさっき祭りがどうのって…)」
クリスタ「お祭り当日は、教官たちも駐屯兵団と一緒にお祭りの警備にあたるから、私たちは自主訓練になるんだって」
ユミル「まあ、暗黙の休暇だな。祭りに行って教官にバッタリ会っても、お咎めなしらしいぜ」
クリスタ「教官たちなりに、私たちに息抜きの機会をくれてるんだよね、きっと」
ユミル「おめでたい考え方だなあ、本当…」ナデナデ
クリスタ「ユミルくすぐったい」ワシャワシャ
サシャ「楽しみですねえ、お祭り!」ワクワク
クリスタ「だからさ、アニ。そのお祭りにライナーと二人で行って来たら?」
ユミル「お、なんだ?勝負服でデートに誘う話になってんのか」
アニ「デ…ッ!」カア
ユミル「へーえ」ニヤ
アニ「な、何?」
ユミル「いーや何でも」
アニ「……」
アニ「……(ここまで話しておいて今更だけど、…あまり公の場で一緒にいるのを目撃されるのは避けたいんだけどな…)」
クリスタ「あれ?サシャ、指どうしたの?」
サシャ「え?あ、切れてますね。気付かなかったです。紙袋でやっちゃったんですかね?」
アニ(バレなきゃいいかな。たとえば大きい通りを歩かないとか、少し距離を空けて歩くとか…)
クリスタ「えっとたしか…」ゴソゴソ
クリスタ「あった、絆創膏。これ使って」
サシャ「おお…さすがの女子力ですね、クリスタ。ありがとうございます」
アニ(変装する、…とか)
アニ(……変装)
『今日買った服着たら、かなりアニの印象変わるよー』
『試着の段階で見違えたもん』
アニ「……!」ガサ
アニ(…案外、いけるかなこれ)
ここまで
ライナーが真顔でぎゃふんって言ってるのが想像して吹いたw
==
夕方・兵舎
クリスタ「ねえ、二人は今度のお祭り行くの?」
ライナー「祭り?」
クリスタ「うん。次の休暇の日にあるでしょ」
ベルトルト「…ああ。ほら、この前コニーとマルコが話してた」
ライナー「ああー…、なんか言ってたな」
ユミル「で?行く予定はあるのか?」
ライナー「ふむ…どうする?他に特に予定もないし、行ってみるか?」
ベルトルト「そうだね、行こうか」
クリスタ「そっか、よかった。もしよかったら私たちと一緒に行かない?」
クリスタ「ベルトルト!」
ライナー「」
ベルトルト「え?僕?」
ユミル「変な勘違いするなよ?財布と荷物持ちだ」
ベルトルト「え、でも…、なんで僕だけ?ライナーは?」
ユミル「呼んでねえよ。お前だけだ」
ベルトルト「」
ライナー「」
クリスタ「ね?行こうよ!」
ベルトルト「……え、でも…」
ベルトルト「ど、どうしようライナー…僕どうしたらいい…?」アワアワ
ユミル「…はあ、行くか行かないかくらい自分で決めろよ優柔不断が」
ベルトルト「!?」
クリスタ「ユミル!」
ユミル「ベルトルさん、考えてもみな。男二人で寂しく行くより、荷物持ちでも女に囲まれてる方が楽しいと思わないか?」コソ
ベルトルト「え、そんな…」
ライナー「……いや、お前もうそいつらと一緒に行って来たらいいんじゃないか(棒)」ズーン
ベルトルト「え」
ライナー「楽しんで来いよ(棒)」
ユミル「…だとよニヤ
クリスタ「本当!?よかった!当日楽しみにしてるね!」キラキラ
ベルトルト「」
クリスタ「……」チラ
アニ「」
クリスタ『そのお祭りにライナーと二人で行って来たら?』
アニ『…いや、でも、多分無理だよ。ライナーは、お祭りに行くとしてもベルトルトと行くとか言いそう』
クリスタ『ああそっか…ありえるね。それじゃあ二人っきりにはなれないし…』
クリスタ『……』
クリスタ『わかった、私に任せて!ベルトルトは私がなんとかしてあげる』
アニ『?』
クリスタ(約束通りなんとかしたよ。あとは頑張ってね、アニ!)グッ
アニ(本当に行動しちゃったよあの子…!)タジ
ユミル「…ったく、お前はどこまで"いいこと"すれば気が済むんだよ」
クリスタ「え?何のこと?ユミル」ニッコリ
クリスタ「私はただ、あまり話したことのないベルトルトと、お祭りを通じて仲良くなりたいなーって思っただけだよ?」
ユミル「……」ハア
ユミル「小さな親切、大きなお世話って知ってるか?肩入れもほどほどにしとけよ」
クリスタ「そういうユミルだって、一緒にベルトルトを誘ってくれたくせに」
ユミル「財布と荷物持ちだっつったろ。他意はねえよ」
クリスタ「どうだか」クス
ユミル「お前、アニとそんなに仲良かったか?今日一日で仲良くなったのか?」
クリスタ「アニに限らず、この世界に幸せな人が一人でも増えてくれることを私は祈ってるんです!」ニッコリ
ユミル「…女神め」ハハ
ユミル「それより、あいつ連行しなくてよかったのか?」
クリスタ「?」
ユミル「…わかってねえのか、やれやれ、私がやるしかないのかね」
ライナー「……なあベルトルト、俺クリスタに嫌われるようなこと何かしたんだろうか」ズーン
ベルトルト「さ、さあ…。僕もどうして自分だけが誘われたのかわからなくて、…正直戸惑ってる」
アニ(…ここまでお膳立てされたら、もうやるしかないんだろうな…)
アニ(でも、あいつと最後にした会話が、朝の宣戦布告なんだよね…話し掛けにくいなあ)
ユミル「あのさベルトルさん、悪いがもう少しいいか?」
ベルトルト「え?何…」
ユミル「いいからこっち来い!」グイ
ベルトルト「ええ!?ちょっ、引っ張らないでよユミル…!」アワアワ
ライナー「」
ユミル「……」ジロ
アニ「!」ビク
ユミル(ほら、ライナー一人にしてやったぞ、やれよ)アイコンタクト
アニ(…何これ、大体言いたいことがわかるんだけど)
アニ「……」グッ
ライナー「」ズーン
アニ「あ、あのさ、ライナー」
ライナー「ん?アニか。珍しいな…」
アニ(…よし)
アニ「…私と、今度のお祭り行ってよ。二人で」
ここまで
乙です。
アニ可愛い。
>>72
ありがとうございます!
続きです
アニ「さっきのクリスタたちとの話、聞こえてたの。一緒に行く人がいないんでしょ?……だったら私と行って」
ライナー「…本当に珍しいこともあるもんだ。急にどうした?」
アニ「…わ、私も一人だし。あんたも一人でかわいそうだから…一緒に行ってあげようと思って」
ライナー(…なんだろうな、この情けをかけられている感じは…)
アニ「?」
ライナー「いや、何でもない」
ライナー「…そうだよな…。お前は、普段から誰とも親しくならないように心掛けてるから、友達とかつくれないんだよな。寂しいよな」
アニ「あ、ああ…(なんだいきなり)」
アニ(…ちなみに今日思いっきりショッピング行っちゃったけど。相談とかしちゃったけど)」
ライナー「それなのに、そんな身で俺なんかのことまで気遣ってくれるのか…お前は優しい子だな」ヨシヨシ
アニ(また、これ…)シュン
ライナー「だが、どうしたものか…。あまり人目につく場所でお前と行動するのも…」コソ
アニ「それは大丈夫。…多分なんとかなる」
ライナー「? 何する気だ?」
アニ「ま、まだ内緒。当日のお楽しみ」
ライナー「ほう…」
ライナー「じゃあ楽しみにさせてもらうとするか」ニカ
アニ「…うん(ライナーと二人で、お祭り…)」
アニ(……デート…)ドキ
アニ(…はっ!違う違う、そんなことで喜んでるんじゃない!)
アニ(私は、いつもとは違う自分を見せて、あいつを見返せることを楽しみにしてるだけなんだ!)
アニ(…見てなライナー。私にそんな風に接せるのも今のうちだよ)ジロ
ライナー「…?(…何故俺は睨まれてるんだ?)」
短いけど一旦切ります
楽しみに待ってる
>>79
ありがとう、お待たせしました
続きです。
==
アニ『ライナー!』
ライナー『おう、どうした?アニ』
アニ『あの…、あのね、』
アニ『私、今日で十五歳になったよ』
―おめでとうって、言って
ライナー『おお、そうか、今日はお前の誕生日だったな。おめでとう』
アニ『…ありがと』
―だから私、もう立派に一人前の大人になったんだよ。"―――"って、思って
パチ
アニ「……朝か」
アニ「変な夢…」ゴロ
アニ(最後、何て言ったの…)
祭り当日
午前・女子寮
アニ「わ…」
アニ(あれから昨日までずっと訓練だったから着る機会がなかったけど、)
アニ(この前買った服、あらためて着てみると本当に普段の感じと全然違うな…)
アニ(…うわあ…スカート、落ち着かない…。変じゃないかな)クルリ
アニ「……」
アニ「髪、下ろしてみようかな…」パサ
アニ(おお…さらに別人だ)
カチャ
アニ「!」
クリスタ「あれ?…え!?アニ!?」
アニ「クリスタ…」
クリスタ「わああ…着てくれたんだ、嬉しいな。一瞬誰かと思っちゃった。すごくかわいいよ!」
アニ「今日おろそうと思ってたんだ、ありがとう」
アニ「変装も兼ねてるから、その反応されるとよかったって思うよ」
クリスタ「変装?」
アニ「ああ」
アニ「…あんたもさ、今日のこと、内緒にしてもらえないかな。私とライナーが一緒にいるって、出来るだけ人に知られたくないんだ」
クリスタ「…それって、恥ずかしいから、とか?冷やかしなんかしないのに…」
アニ「うん、そう。恥ずかしいから。誰にも言わないで。ユミルやサシャにもそう言っておいてほしい」
クリスタ「…わかった」
クリスタ「もう行くの?お祭り」
アニ「いや、…あいつ馬鹿正直に自主訓練するらしいから、夕方から行くことになった」
クリスタ「そっか。成績上位組と真面目な男子はみんなやるみたいだもんね。ベルトルトもお祭りは夕方から行こうって言ってたし」
クリスタ「女子も、ミカサはエレンとアルミンが一緒だから、サシャはコニーに誘われたからって混ざるみたいだよ」
クリスタ「ユミルはめんどくさいからいいって言ってたけど」
アニ「あんたも行くの?」
クリスタ「うん、そのつもり。特に予定もないし。だから着替えとか取りに来たの」ゴソゴソ
クリスタ「アニも行く?」
アニ「私は…いいや」
クリスタ「やっぱり。せっかくその服に着替えちゃったんだしね」クス
アニ「ただの衣装合わせだけどね。まだ昼間だし」
クリスタ「あ、そうだ!」ゴソゴソ
アニ「?」
クリスタ「あったあった。アニ、目閉じて」
アニ「え?うん…」
クリスタ「……」スッ
アニ「……?」
クリスタ「はい、もう開けていいよ」
アニ「……」パチ
アニ「あ…」
クリスタ「ほら見て。前髪上げておでこ出したら、もっと別人になったよ。変装完璧!かわいい!」
アニ「何?このかわいい髪留め」
クリスタ「この前一緒にお買い物に行った時に買ったの。アニにあげるね」
アニ「え…いいの?」
クリスタ「私からの些細な応援のしるし」
クリスタ「今日は頑張って」
アニ「クリスタ…」
アニ「ありがとう」
クリスタ「じゃあ、私行くね」フリフリ
アニ「うん」コク
パタン
アニ(…ピンクのスカート)
アニ(…お花の髪飾り)
アニ(今日の、私は……)
アニ「」
アニ「いやいやいやいやいや。」
今日はここまで
勢いでやった。すいませんでした。
メルトダウンしそうです
==
数時間後
夕方・兵舎
ミーナ「えー!?アニ行っちゃったの!?」ガーン
クリスタ「姿が見えないし、多分そうなんじゃないかな」
ミーナ「せっかく一緒にお祭り行こうと思ってたのにー…」シュン
ユミル「なんで今日まで誘わなかったんだよ」
ミーナ「最近忙しくて」テヘ
マルコ「それじゃあしょうがないね」
クリスタ「まあ、そうじゃなくても、前々から先約がいたみたいだし、仕方ないよ」
ミーナ「先約?…誰?」
クリスタ「……さあ、私もわからない」
ユミル「……」ハア
ミーナ「? ふうん…」
ミーナ」…あれ?もしかして私、一緒に行く人誰もいない!?」
ミーナ」アニー!私に一人で行けっていうのー!?寂しいよーう!」
ジャン「ったく、うるせーな
マルコ「まあまあ、そう言うなよ。ミーナ、僕らでよければ一緒に行くかい?」
ミーナ「え、いいの!?わあい、さすがマルコ!神様!」パアッ
マルコ「そんな大袈裟な」ハハ
アルミン「ねえ、僕たちも行こう!」グイグイ
ミカサ「うん。ほらエレンも」クイ
エレン「張り切ってるなあお前ら。そんなに祭りに行くのが楽しみだったのか?」
アルミン「ああそうさ、僕は今日という日をすごく楽しみにしてたんだ!」キラキラ
エレン「珍しいなアルミン」
エレン「…まあ俺も楽しみだけどな。祭りなんて滅多に行く機会ないしな」
ミカサ「私も…楽しみ」フッ
アルミン「早く行こう!」
エレン「ああ」
ワイワイ
ユミル「……よっし、クリスタ、ベルトルさん、私たちも行くか」
ベルトルト「うん」
クリスタ「あれ?サシャは?」
ベルトルト「サシャならさっき、コニーを引っ張って一目散に出て行ったよ。なんでも、二人でやってた勝負の罰ゲームで、お祭りでのコニーの全額奢りが決まったとかで」
クリスタ「……コニー…ご愁傷様」
ユミル「あいつなら、全屋台制覇とか目指しかねないぞ。ま、罰ゲームなら自業自得か」
ユミル「でもそうか、じゃあサシャは一緒に来ないんだな」
クリスタ「うん、じゃあ三人で行こ」
==
アニ(人目を避けるために裏門で待ち合わせ…だったよね)コソ
アニ(高いヒール、結構怖いな…やっぱり今日までに少しでも慣れておくべきだった…)ヨロ
アニ「……」
アニ(今日の格好見たらあいつ、なんて言うかな)
アニ(馬子にも衣装とか言い出したら…蹴ってやる)グッ
アニ(もう来てたんだ)
アニ「ライナー!」
ライナー「おうアニ、来た……か」
アニ「ごめん、待った?」チラ
ライナー「…… 」ジッ
アニ「…ちょっと?あんまりじろじろ見ないでよ」
ライナー「…ああ、いや、すまん」アセ
アニ(…ん?)
ライナー「今日はまた随分とめかし込んでるな。誰かと思ったぞ」
アニ「ん…一応変装も兼ねてるつもりだから、頑張ってみた」
アニ「どう、かな。変じゃない?」
ライナー「あ、ああ。その…い、いいんじゃないか?なかなか」フイ
アニ(…あれ、この反応は…?)
ライナー「…ほら、ぐずぐずしてないで行くぞ」
アニ「え、ちょっと待ってよ」アセ
今日はここまで
ライナー裏山
続きはよ
==
・市街地
ワイワイ ガヤガヤ
ライナー「おお、賑わってるな」
アニ「…うん
ライナー「どっか行きたい場所あるか?」
アニ「? 特にないけど」
ライナー「」
ライナー「……お前、祭りに来たかったんじゃなかったのか?」
アニ「…だから、あんたが一人でかわいそうだと思ったからだって」
ライナー「…そういえばそうだったな」
ライナー「……」
アニ「……」
ガヤガヤ
ライナー「(なんか気まずいな…)じゃあどうする?とりあえず、適当にぶらぶらするか?」
アニ「うん。それでいいよ」
待ってました
==
ガヤガヤ
ライナー「……」
アニ「……」
ライナー「アニ、何か食うか?買ってやるぞ?」
アニ「…っ、いや、まだいいかな」
ライナー「…?そうか」スタスタ
アニ「……」
アニ(歩くの、速いよ…)ヨタ
アニ(いや、歩幅の違いか。それに私は慣れない靴だし)
アニ(…全然女の子扱いなんかしてくれないな。最初の反応は、気のせいだったのかも…)ムス
アニ「……」
アニ「…少しくらい、こっちのスピード合わせてくれたっていいのに」ボソ
アニ(足、痛い)ズキズキ
「お兄ちゃん待ってー!」
「早く来いよ!」 ダダッ
「わっ」コケッ ドテッ
ライナー「おい、大丈夫か?ボウズ」
「うう…お兄ちゃんが…」グス
ライナー「ああほら泣くな。男だろう?」ポンポン
「ぐす…うん」
アニ「……」
アニ(…なんか、本当に昔から変わらないよね。こいつらしいっていうか何ていうか…)クス
アニ(こういうところが…)
アニ(…はっ)
アニ(何考えてるんだろ私)
「もう何やってんだよー。ついて来ないと思ったら…」
「お兄ちゃん…」ウルッ
ライナー「こら。こいつは、お前を追っかけて躓いたんだぞ。兄貴なら、ちゃんと弟見ててやれ。こんな人混みではぐれたらどうするんだ」
「……はい…ごめんなさい」シュン
ライナー「こいつはまだ小さいんだから、はぐれないようにきちんと手を繋いでおくんだ」
「わかった…。ほら行くぞ」グイ
「うん!」
タタッ
ライナー「かわいいもんだな。6、7歳くらいか?」ハハ
アニ「あんた子供好きなの?」
ライナー「変な言い方するなよ。ほっとけないだろ、あんなに小さいのに。はぐれたら大変だ」
アニ「…そうだね」
ライナー「お前も俺と手繋ぐか?迷子になるかもしれないしな」ニカ
アニ「……っ」ムカッ
ライナー「ほら、手」スッ
アニ「…!」
アニ「やめてよ!」パシッ
ライナー「!」
アニ「……」
ライナー「……」ハア
ライナー「はいはい、悪かったよ。失礼したな」フイ
アニ(……そうじゃない)
アニ(そんな風に、接してほしいんじゃないんだよ)
ワイワイ
ライナー「……」
アニ「……」
「あら、そこのカップルさん。寄っていかないかい?」
ライナー「え?」
「ほら、あんたたちだよ。そこの男前のお兄さんと可愛らしいお嬢さん」
ライナー「……?」キョロ
アニ「……」チラ
ライナー「…もしかして、俺たちに言ってる、んですか?」
「そうだよ。おひとつどうだい?」ニコニコ
アニ(…可愛らしいお嬢さん…)
アニ(っていうか、かっ、カップルって…)カア
ライナー「ああ、はは…どうする?」チラ
アニ「……そう、だね。せっかくだし、もらわない?」
ライナー「そうするか。じゃあ二つもらおうかな」チャリン
「毎度。はい、これね」スッ
ライナー「どうも。ほらよ」ズイ
アニ「ん…」
ライナー「落とさないように、気を付けて食べろよ」
アニ「…落とさないよ。子供じゃないんだから」ムス
ライナー「…いちいち突っ掛かるなあ」ハア
「あらあ、カップルかと思ったら兄妹だったのかい。仲がいいんだねえ。間違えちゃってごめんねえ」
アニ「…!」ドクン
「あんまり怒らないであげるんだよ。お兄ちゃんにとって妹ってのはいつまでも子供みたいなもんなんだから。ねえ?」
ライナー「はは……、何というか…まあ…」
アニ「……っ」グッ
アニ(何、その反応)
アニ(違いますって、兄妹じゃありませんって、否定してよ…)
アニ「…あんたさ、いつまでもいつまでも、私の何のつもりなの…!」
ライナー「? 何か言ったか?」
アニ「私は…っ!あんたの妹でも子供でもないのに…!」
ダッ
ライナー「あっ!?おいアニ!」アセ
「あらあら、あんたたち兄妹じゃなかったのかい?色々失礼なこと言ってごめんねえ」
ライナー「あ、いや、そんな…」アセアセ
ライナー「…っ」キョロ
ワイワイ ガヤガヤ
ライナー(くそっ、あっさり見失った…!)
アニかわいすぎぃ!
アニ可愛い…!
続き待ってます!
==
タタタッ
アニ「はあ、はあ…」
アニ(もう嫌だ…!どうやったって、何も変わらないんだ…)ハア ハア
アニ(あいつにとっては…、いつまでも私は妹でしかない…)
アニ(私は…私は…っ!)
アニ(女としてなんて、見てもらえないんだ…!)
アニ「はあっ、……あっ!?」カクンッ
ドサッ
アニ「…痛うっ……!」
アニ「(…靴が)…折れた…うそ……」パコッ
アニ「どうしよう…」
ガヤガヤ
アニ(とりあえず、一旦どこか小路に入って人混みを避けよう…)ヒョコ
==
・路地裏
アニ「この台なら、座っていいかな」ヨロ
アニ「……痛っ」ズキズキ
アニ(足、挫いてる。転んだ時に膝も擦りむいちゃったし…。それに、靴擦れもひどい…しばらくは歩きたくないな…)シュウウゥ
アニ(ケガは少し経てば治るけど…靴は…)ポッキリ
アニ「はあ…らしくないことなんてするもんじゃないね…」
アニ(走ったせいでヒールは折れて、転んで服も汚れて、髪も……!)
アニ「……あれ?」
アニ「髪留めが、ない…?」キョロ
アニ(もしかして、どこかで落とした…?さっき転んだ時?)
『私からのささやかな応援のしるし』
アニ「……はあ…本当にダメだなあ、私」ジワ
アニ(やっぱり、女の子らしくなんて私には無理だったんだ…)ギュウ
==
アニ「……(だんだん暗くなってきた…)」
アニ「ライナー…もう帰っちゃったかな」
アニ「…帰ったに決まってるよね」
アニ(昔のこと思い出すな…)
アニ(夜に一人で外にいた時のこと…)
==
数年前
夜・開拓地
アニ『…はあ』
アニ(……居ずらくて、外出てきちゃった…)
アニ(ライナーとベルトルト。あの二人、元から友達なんだもんな。私の居場所ないよ…)ポツン
『…お嬢ちゃん』
アニ『!』
『君、一人?お父さんやお母さんはいないの?』ニヤニヤ
アニ『(何こいつ…いつからここに?)…あんた誰?』キッ
『いないのかな?じゃあ、今からおじさんといいことしようか。ね?』グイ
アニ『っ!?なに、すっ…!離し…』ズズズ
『おじさんもね、家族みんなと離ればなれになっちゃって寂しいんだ…だから、ほら』グイグイ
アニ『…いやっ!やめっ…』
ライナー『やめろ!!!』
ライナー『うあああああっ!!』ブンッ
『うわっ!?なんだこのガキ!こんな狭い所で棒っきれなんぞ振り回し……いてっ!』バシッ
ライナー『このっ!!このっ…!!!』ガッ ガッ
『がっ、ゔっ』
ライナー『…はあっ、はあ、…この野郎!』キッ
ライナー『こいつに手出したらただじゃ済まさねえぞ!…俺の妹に!』
『ってて、くそぉ…!』 ダッ
アニ『……』
アニ(…いもう、と?)
ライナー『アニ!』バッ
ライナー『大丈夫か!?何もされてないか!?ケガは!?』
アニ『!』
アニ『だ、大丈夫…腕掴まれただけ』
ライナー『そうか、よかった…』ホッ
ライナー『何も言わずに出て行ったもんだから、心配したぞ』
アニ『……ごめん』
アニ『…それよりライナー、…妹って?』
ライナー『ああ、そのことか』
ライナー『…今後、お前は俺の妹で周りに通せ』
アニ『…え?』
ライナー『ここの治安は悪い。女一人で行動したら危ないのはわかっただろ。またいつさっきみたいなことがあるか』
アニ『それはわかるけど…どうして妹?』
ライナー『…なあ、アニ。俺たち、今どういう関係なんだろうな』
アニ『えっ』ギク
ライナー『わかんないよな。友達と呼ぶにはまだ距離があるし、仲間だ同志だ言うのは周りに不審がられるから避けたい。そうなると、俺たちは何だ?』
アニ『…わからない』
ライナー『お前が俺たちに遠慮してるのは、そのせいだろ?』
アニ『……(バレてる)』コク
ライナー『仕方ねえよ。俺だってまだわかんねえんだから』
ライナー『だからまず、暫定的に距離を設定する。俺とお前を兄妹と決めて、そこから互いのことを知っていこう』
ライナー『家族ってのは、男と女で一緒にいても周りから不自然に思われないようにだ。それに、常に一緒にいられれば、俺たちがお前を守ってやれるだろ?』
アニ『……っ』ドキ
ライナー『俺のことは、本当の家族と思って遠慮せずに接してきてくれて構わないからな。ベルトルトも、ちょっと人見知りしてるだけで、お前と話したそうにしてたぞ。同じように遠慮なく話し掛けてやれ』
アニ『それは…そうする』
ライナー『あとは…名字の違いとか指摘されたら、片親が違うとでも言っとけばいいか』
アニ『……』
ライナー『…よし、決定だな』
==
アニ「そっか…だから兄妹になったんだっけ。思い出した」
アニ「今考えると、確かにその設定のおかげで距離が縮んで、二人と今くらい親しくなれた気がする…」
アニ(あの時は確かにそれに救われたけどさ、)
アニ(…あいつをお兄ちゃんって呼ぶのは、当時からすごく嫌だったなあ)
嫌だった理由には、さっき気付いてしまった。
初めて、気付いた。
『具体的にライナーからどう見られたいの?』
『アニはさ、ライナーのこと、好き?』
考えるとモヤモヤした。
私は、もしかしたら自分の中で、そのことを認めたくなかったのかもしれない。
私は…あいつに助けてもらったあの時からきっと、
あいつのことが、好きだったんだって。
無自覚にも、私を、兄妹という、恋愛対象にならない相手だなんて、思ってほしくなかったのかもしれない、なんて。
アニ「……さよなら、私の初恋」ボソッ
アニ(気付いた時にはもう終わってるなんて、最悪)
アニ(あの様子じゃ、絶対振り向いてなんかもらえないもんね…)ジワ
アニ「こんなことなら、いっそ、……気付かなきゃよかったのに…」ポロポロ
「お嬢さん」
アニ「!!」ビクッ
ライナー「…やっと見つけた」ムスッ
アニ「ライナー…」
レスありがとう
続きです
ライナー「…アニ、お前泣いてるのか?」
アニ「別に…何でもない」ゴシ
アニ「今までずっと、探してくれてたの?」
ライナー「? ああ、そうだが」
アニ「…私を?」
ライナー「他に誰を探すんだよ」ハア
アニ「まあ、そうなんだけどさ」
ライナー「それよりその驚きよう、やっぱりトラウマなのか?昔のこと」
アニ「…普段は平気なんだよ。ただ、さっきちょっと思い出してたせいで、びっくりしただけ」
ライナー「そうか」
アニ「……あんたさ」
ライナー「ん?」
アニ「バカでしょ。私があの後、帰ったとか考えなかったの?」
ライナー「」カチン
ライナー「…せっかく探してやったのに、随分な言いようだな」
アニ(本当、なんでこんな言い方しかできないんだろう…かわいくない)
ライナー「……」ハア
ライナー「大体お前、その靴慣れてねえんだろ。ずっと歩き方おかしかったもんな」
アニ「…余計なお世話だよ」
ライナー「足、見せろ」スッ
アニ「ちょっと…」
ライナー「ケガしてるだろ」
アニ「…っ」
アニ「い、いいよ。すぐ治すから…」
ライナー「止めろ。誰かに見られたらどうする」
ライナー「便所とか風呂とか、確実に一人になれる場所ならともかく、ここじゃいつ誰に見つかるかわからんだろう。だから今はこれで我慢しろ」ペタ
アニ「絆創膏?なんでそんなの持ってるの?」
ライナー「ああ、普段から持ち歩いてるんだ。ん?これ靴擦れか?うっわ痛そうだな…なんでこんなになるまで我慢したんだよ」ペタ
アニ「……」
アニ(…あれ?)
アニ(何だっけ、こういうの…。確かクリスタかサシャが何か言ってたような…)
『あった、絆創膏。これ使って』
『おお…さすがの女子力ですね、クリスタ』
アニ「…女子力?」
ライナー「あ?なんだって?」
アニ「…なんでもない」フイ
ライナー「いつも気が付くとコニーやらエレンやらが擦り傷作ってるからな。持ってると便利なんだよ」ペタ
アニ(女子力でこいつに負けるとか…なんか複雑)
ライナー「よし。今できる手当てはこんなもんだろ」
ライナー「あ、そうだ。これ、お前のだろ」スッ
アニ「あ…!その髪留め、どこにあったの?」
ライナー「道に落ちてたぞ。偶然拾った」
パチ
アニ「…下手くそな付け方」
ライナー「悪いな。あいにく女物のアクセサリーの付け方なんて知らなくてな。文句があるなら自分で直せ」
アニ「……」
アニ「いや、このままでいい」
ライナー「いいのか?俺が付けといて何だが不格好だぞ?」
アニ「うん。…せっかくあんたが付けてくれたんだし」フッ
ライナー「……っ」ドキ
ライナー「…ったく。泣いたり笑ったり、忙しい奴だな」ガシガシ
アニ「……!」ハッ
アニ「別に。笑ってない」アセ
ライナー「」
ライナー「………ああ、そうかよ」ヤレヤレ
ライナー「で?さっきお前は何だって逃亡したんだ?」
アニ「えっ」ギク
アニ「…あ、あの、心配かけたことについては謝る。けど、それはもう忘れて」アセアセ
アニ(…さっき考えてたことなんて、言えるわけない…)
ライナー「……」
ライナー「言いたいことがあるなら、全部吐き出せよ。俺にくらい本音話していいんだぞ」
ライナー「それとも、何か不満があるってんなら聞いてやるから」
アニ「……」
ライナー「……」ハア
ライナー「屋台のおばさんに妹って言われてからだよな。俺と兄妹に見られたのがそんなにショックだったのか?」
アニ「……!」
アニ(…もう、言うしかないのかな)
乙
くそぅいいところで
>>152-153
待っててくれてありがとう
待たせてごめんなさい
今月中には終わらせたかったのに無理っぽいな…
続き投下します
アニ「……」
ライナー「……」
アニ「私はあんたの妹じゃない」
ライナー「ああ」
アニ「そう通してたこともあったけど、もう終わったでしょ」
ライナー「そうだな」
アニ「でもあんたは、今でも私を子供扱いする」
ライナー「…そうか?」
アニ「そうなの」
ライナー「そうなのか」
アニ「うん」
ライナー「そんなつもりはなかった」
アニ「……」
アニ「私はもう子供じゃない」
ライナー「確かに子供って歳ではないな」
アニ「だから…子供扱い、もうやめて」
アニ「…ください」ポツリ
ライナー「……」
ライナー「…なるほど。すまんな」
アニ「うん」
アニ(…思ったより、素直に聞いてくれたな)
アニ「ベルトルトにはね、ライナーに子供扱いをやめてもらったところでどう思われたいの?って聞かれたんだ」
ライナー「ほう。それで?」
アニ「…答えられなかった」
アニ「自分でもわからなくて」
ライナー「……」
アニ「だから、偶然一緒にいたクリスタに相談したの」
アニ「私があんたにどう思われたいのかも、私自身があんたをどう思ってるのかも全部わからないって」
アニ「そうしたら、あんたと一緒に過ごして自分の気持ちを確かめたら、って言われたんだ」
ライナー「…なるほど、それでクリスタにここまで色々世話を焼かれたのか」
アニ「? なんでそれを…」
ライナー「さっきクリスタとばったり出くわしてな。話してくれたよ。お前に服を見立ててくれたことも、」
ライナー「……お前と俺に、二人で祭りに行くように促したってことも」
アニ「……」
ライナー「そうした理由までは教えてくれなくて、疑問だったんだが、お前にそういう理由があったからか」
アニ「…聞いたんだ」
ライナー「ああ」
ライナー「『今日のアニ、すごく可愛いでしょ。ちゃんと女の子として見てあげてね』ってよ」
アニ「!!」ドキ
アニ「……」
ライナー「……」
アニ(…だから、"お嬢さん"なんて…。というか)
アニ「それをわかってるのに、私にここまで言わせたの?」
ライナー「だって、クリスタの見解とお前の意見が同じとは限らないだろ?現にお前が話してくれるまでは確信が持てなかった」
アニ「……」
ライナー「答えは出たのか?」
アニ「…出た、かもしれない」
ライナー「それで、クリスタが言った通り、…お前は俺に女の子扱いを望んでる、ってことでいいのか?」
アニ「……そう、みたい」
ライナー「…みたい?なんだかさっきからあやふやだな」
アニ「わかんないんだよ。私もまだ、気持ちの整理が出来てないんだから」ギュウ
ライナー「そうか」
アニ「うん」
ライナー「……」
アニ「……」
アニ(結局、ほとんど話しちゃったな。…好きとだけは絶対言わないけど)
アニ「まあ無理だよね。あんたが私を女の子扱いとか、普通に考えておかしいっていうか、変な感じっていうか…」
ライナー「……」
アニ「さっきのお嬢さんって言い方だって、鳥肌ものだったし」
ライナー「……」
アニ(…ねえ)
アニ(何か言ってよ)
ライナー「……」
ライナー「そうだな」
アニ「…っ!」
アニ(やっぱり、何をしても変わらないんだ…)グッ
ライナー「お前がもう少し、女としての自覚を持ってくれなきゃ、難しいな」
アニ「…は?」
アニ「どういう意味?」ジロ
ライナー「…………男の前で、スカートで膝抱えて座る奴があるか」ボソ
アニ「!!」カアッ
バッ
アニ「……見た?」
ライナー「……………見てない」フイ
アニ「その間は何?」
ライナー「……」
アニ「……」
アニ「…今なら怒らないから、本当のこと言って」
ライナー「……」
アニ「……見てたの?」
ライナー「…致し方ないだろう。条件反射だ」
アニ「…っ!」
アニ「変態!バカ!!」
ライナー「なっ!俺のせいかよっ!?しかも結局怒るんじゃねえか!」
アニ(……なっ何これ、すごく恥ずかしい…)カアア
ライナー「はあ…そう言うけどな、…男が女として見るって、そういうことだからな!?」
アニ「…!」
ライナー「頼むから、そんな可愛い格好するなら、もう少し女らしい振る舞いをしてくれ」
アニ「わかったからもう言わないで!」
アニ「……」ハア
アニ(…あれ?こいつ今可愛いとか言った…?)
ライナー「…とりあえずだな」アセ
ライナー「いつまでもここにいてもしょうがない。移動するぞ」
アニ「? 帰るの?」
ライナー「いや、少し付き合え。靴買ってやる」
アニ「あっ…」
ライナー「裸足じゃ帰れないだろ。それに…」
ライナー「お前には、そんなかかとの高い靴なんか似合わない。そんなもの履くな」
ライナー「動きやすくて、お前らしい、お前に一番似合う靴を選べ。…俺はそっちの方が好きだ」
アニ「…えっ」ドキ
ライナー「よし、行くか。靴屋までは抱えてってやるから」ガシ
アニ「えっ、ちょっと…」アセ
ライナー「よいしょ」
フワリ
アニ「っ!(待ってこれって…)」ドキッ
アニ「ライナー!あんたこれっ、何のつもり!?」
ライナー「あ?女扱いしろって言ったのはお前だろ?だからこうやって…」
アニ「嫌だよこんなの!恥ずかしい!下ろして!」ジタバタ
ライナー「ちょっ、暴れんな落ちる…!」アセ
アニ「……」ゼエゼエ
アニ「おんぶでいい」
ライナー「…めんどくさいなお前」ハア
ここまで
ちなみに>>167-168はお姫様だっこ。わかりにくくてすみません
レスありがとう
再開します
アニ「女の子に向かってめんどくさいとか言わないでよ」
ライナー「はいはい、めんどくさいな…」ハア
アニ「……」ジロ
ライナー「…悪い」
アニ「ほら早くしゃがんで」
ライナー「わかったよ」ヨイショ
ライナー「…ちなみに言わせてもらうと、おんぶはさっきの抱き方より密着度が高いから、個人的にはさっきの方がおすすめなんだがな」
アニ「嫌だよあんなの。恥ずかしい(…顔見られるしね)」ヨイショ
ライナー「…っしょっと」グンッ
ライナー「ほら、俺の背中にお前の… 「うるさいっ!」
アニ「変なこと考えてないで歩きな!」バシッ
ライナー「いって」
ライナー「……」
ライナー(…こいつ、頑張って俺の背中から限界まで身体離してやがるな)
ザッザッ
アニ(あ…)
アニ(私今、こいつと同じ高さだ)
アニ「…高い」
ライナー「お?」
アニ「あんた、いつもこんな高さで景色見てるんだね」
ライナー「ああ。お前からしたら高いか」
アニ「怖くないの?高所恐怖症とか」
ライナー「俺にはない発想だな。地に足ついて安定してるのに怖いわけがあるか。朝起きたら急にこんな身長になってたとかならまだしも」
アニ「そっか。…ベルトルトは怖いかな」
ライナー「いや、多分あいつも同じこと言うと思うぞ」
アニ「……そっか」
ライナー「おう」
ライナー「アニ、お前高い所苦手だったか?普段から訓練でビュンビュン飛び回ってるのに」
アニ「ううん、別に」
アニ「……」
ライナー「……」
ザッザッ
アニ「……」ギュウ
ライナー(ん?なんか抱き着いてきやがった)
アニ「高いね」
ライナー「ん?ああ」
アニ「私ね、この靴を買いに行った時、あんたの身長抜けるくらい高い靴が欲しいって言ったの」
ライナー「はっ!?いや無理だろ!」
アニ「うん。ユミルに大笑いされた」
ライナー「いやそれは笑うだろ。俺でも笑う自信あるぞ」ハハ
アニ「そこまでしてでも、あんたを抜かしたかったから」
ライナー「なんでそこまで」ハア
アニ「あんたを見返したくて」
ライナー「お前、そればっかりだな」
アニ「うん。最近はそればっかり考えてた」
アニ「……」
アニ「今、あんたの身長抜けてるかな」
ライナー「……」
ライナー「…いや、まだだろ。もうちょっと上に上がらねえとな」ニヤ
アニ「……」イラ
アニ「じゃあもっと上で支えてよ」ヨジ
ライナー「あ!?おい、だからあんまり動くなっての!危ない」アセ
ライナー「……まったく」ハア
アニ「ごめん」
ザッザッ
アニ「…私も、もっと身長欲しかったな」ポソ
アニ「サシャとかミカサくらい」
ライナー「なかなか難しい話だな」
アニ「背が高くてスタイルもよくて、うらやましい」
ライナー「…お前はそのままでいいと思うぞ?」
アニ「…本当?」
ライナー「ああ」
ライナー「俺は、お前はそのままで充分」
ヒュルルル…
ライナー「かわいいと思っ…」
ドオーン!! パーン!
ライナー「!?」
アニ「…え?聞こえなかった。何て言ったの?」
ライナー「……っ」
ライナー「……いや、なんでもない。忘れてくれ」
ライナー「…しかし」
ライナー「何だあれ。一瞬空が明るくなったぞ」
ドン! ドドン!!
「あ、始まったよ!花火!」
「早く丘の上行こうぜ!」ダダッ
ワイワイ ガヤガヤ
ライナー「……」
ライナー「…ハナビ?」
ライナー「っていうのか?」
アニ「火薬を打ち上げてるの?…すごくきれい」
ライナー「案外、演習で使う煙弾と似た技術かもな。おもしろい物もあるもんだ」
アニ「なるほどね」
ドドン! パン!
アニ「……」
アニ「ねえ、もっと高い所に行かない?」
ライナー「」
ライナー「……それは、俺にお前を背負って丘登れって言ってるのか?」
アニ「平気でしょ?普段みたいに身体鍛えてると思ってさ」
ライナー「こんな大荷物背負って坂を登った経験はないぞ」
アニ「大丈夫だって。あんた体力あるから」
ライナー「……」ハア
ライナー「…疲れたら下ろすからな」
アニ「わかってる。それでいいよ」
ここまで
レスありがとう
>>1です
==
丘の上
ガヤガヤ
ライナー「うっわ、人だらけだな」
アニ「みんなここで見たがるんだね」
ライナー(…つーか)
イチャイチャ
アニ(ここ、カップルばっかで…)
ベタベタ
ライ・アニ(………なんか、気まずい)
ライナー「……」
ドン! ドドン!
アニ「……」
ライナー「まあ、あれだ。もう少し人のいない所に移動するか」アセアセ
アニ「う、うん。いいよ。ここじゃ落ち着かないし」アセ
==
ザッザッザッ
ライナー「林の方に入って来ちまったが、まだ見えるか?花火」
アニ「うん、見えるよ」
ドォン!
アニ「きれい…」
ライナー「…そうだな」
アニ「ねえ、ライナー。肩車してよ」
ライナー「」
ライナー「またお前はそういう…」
アニ「いいでしょ?もっと高くに登れば、花火に手が届くかもしれない」
ヒュルルル…
パーン!!
ライナー(…とんだロマンチスト、いや、子供っぽいだけか。スカートの女を肩車する男の気持ちも少しは考えてほしいもんだ)ハア
ライナー(まあ、今それを指摘するのは野暮なんだろうな。俺が辛抱すれば済む話か。頑張れ俺)
ライナー「…一旦下ろすぞ。立てるか?」
アニ「立てるよ。ケガはもう治ってるから」
ライナー「!?」
ライナー「はあ!?誰かに見られたら困るから止めろって言ったろ!」
アニ「だって痛かったから」
ライナー「じゃあお前、普通に歩けたんじゃないか」
アニ「私が歩けないのは、靴が壊れたからだよ」
ライナー「……はあ」ヤレヤレ
ライナー「いいか?しっかり掴まっとけよ。立つぞ」グンッ
アニ「…うん。わっ」グラッ
ライナー「っと、危ねえな。ちゃんとお前はお前でバランス取ってくれないと困るぞ」
アニ「…っ、わかってる…」
ドン! パン!パパン!!
アニ「うわあ…」
ライナー「おう。眺めはどうだ?」
アニ「高い…すごく高いよ!」パア
ライナー「ははっ。どうだ?届きそうか?」
アニ「…ううん、無理みたい」
アニ「……でも、私たちが巨人だったら届くかも」ボソ
ライナー「そら届くだろうな。じゃあ残念ながら無理だ」
アニ「わかってるよ、冗談」
アニ「ベルトルトなら一人で届くのかな」
ライナー「案外、あいつの方が高いかもしれないぞ?」
アニ「そうかもね」
アニ「やっとあんたを抜かせたね、嬉しいよ」
ライナー「お前、まだそんなこと言ってるのか」ハハ
ライナー「よかったな」
アニ「…うん」
パン! ドォン!!
アニ「…ライナー、この高さで見てもきれいだよ、花火」
アニ「ずっと見ていられる…」
ライナー「アニ、花火好きか?」
アニ「うん」
ライナー「……」
ライナー「終わるまで見て行くか?」
アニ「いいの?靴屋さん閉まるんじゃ…」
ライナー「そうなったらそうなったで仕方ないだろう。寮まで送ってやる。靴は後日あらためてになるが」
アニ「あ、どっちにしても靴は買ってくれるんだ」
ライナー「約束だからな」
ライナー「ただ、今度はもっと動きやすい服装でな」
アニ「うん…クリスタが着回し用にって何着も選んでくれたから、そこから選ぶ。…かわいい服」
ライナー「おう。じゃあ楽しみにするかな」ニッ
アニ「…あのさ、これって…でっ、デート?」
ライナー「んあ?そう思いたきゃ好きにしろ」
アニ(…デート)ドキドキ
ライナー「なんか嬉しそうだな。そんなに楽しみか?」ニヤ
アニ「……」
アニ「さあね、どうだろう」クス
アニ(…あんたが"かわいい"って言ってくれるなら、楽しみかも)
終わりです
ここまでありがとうございました
このあとクリスタ視点で他のメンツの話書こうかと思ってたけどどうしようかな
祭り当日
夕方・市街地
ガヤガヤ
クリスタ「わあ…賑わってるねー」
ベルトルト「本当、すごい人だ」
ユミル「クリスタ、はぐれんなよ」
クリスタ「わかってる。でも、もしはぐれても、ユミルとベルトルトなら人混みでもどこにいるかわかるよね、きっと」
ユミル「まあ、私はともかく、ベルトルさんは頭一つ分くらい飛び抜けてるもんな。いい目印か」
ベルトルト「…それ、あんまり嬉しくないよ」
ユミル「はは」
ユミル「……ふう」
ベルトルト「? ユミル、どうかした?」
ユミル「いや…」
ユミル「着慣れない服はいけないな。動きずらいことこの上ない」
ベルトルト「そういえば、今日は普段の服と違った感じだね」
ユミル「クリスタプロデュースだ。着せ替え人形にされたんだよ」
ユミル「なに、似合ってないのは私が一番わかってる。笑ってくれて構わないぜ」ムス
ベルトルト「そうかなあ…そんなことないと思うけど。僕は、すごくかわいいと思ったよ?」
ユミル「」
ユミル「……っ」ボフッ
ユミル「はあ!?あ、あんた目おかしいんじゃねえの!?」カアッ
ベルトルト「え!?少なくとも僕は…」
ユミル「いや、おかしいな!間違いなくおかしい!おかしいわ!」バシバシ
ベルトルト「痛っ!叩かないでよユミル…」
クリスタ「……」
クリスタ(…あれえー?)
クリスタ(ユミル、顔真っ赤…)
==
一時間後
ユミル「よし、次はあっち行こうぜ」グイ
ベルトルト「あ、あんまり引っ張らないでくれるかな、歩きずらいよ…」
ユミル「もっと速く歩けないのかあんたは」
ベルトルト「いや、だって…さっきからユミルはくっつきすぎなんだよ…」アセ
ユミル「いいだろ別に。嫌か?」ニヤ
ベルトルト「そ、そういうことじゃなくて…」
クリスタ(ユミル、わかりやすいなあ…普段かわいいとか言われ慣れてないから)クスクス
クリスタ(もしかして私、お邪魔…?)
ユミル「クリスタ、こっちだぞ」
クリスタ「う、うん。今行く」クス
クリスタ「……」キョロ
クリスタ(あれ、)
クリスタ(ライナーだ。こんな人混みでも、知ってる人がいるとすぐわかるんだなあ…。アニも一緒かな)
ガヤガヤ
クリスタ(ん…よく見えない…。人の流れが邪魔で…)
クリスタ(よし、二人の方、行ってみよう。いざとなったら本当にベルトルトを目印に探せばいいし)
クリスタ「すみません、ちょっと通して下さい」グイグイ
クリスタ「ライナー!」
ライナー「! クリスタ!?」
ライナー「そ、そうか、お前たちも来てるんだったな」
クリスタ「うん。あれ?」
ライナー「?」
クリスタ「アニは?一緒に来たんでしょ?」
ライナー「!」ギク
ライナー「……な、何でそれを…」
クリスタ「だって、アニにライナーとお祭り行くように言ったの、私だもん」
ライナー「あ?そうなのか?」
ライナー「…あいつから誘われるなんて、珍しいこともあるもんだと思ってたが、そういうことか」ハハ
クリスタ「うん。今日アニが着てる服も私が見立てたんだよ」
ライナー「……そうか…。どうりで、あんな…」カア
クリスタ(わあ、いい反応…)クス
クリスタ「ところで、アニは?」
ライナー「ああ、いや、さっきはぐれちまってな、今探してるんだ。見てないか?」
クリスタ「ええ!?大変!私も探す!」
ライナー「いや、見てないならいいんだ。お前もユミルたちと来てるんだろう?巻き込めねえよ」
ライナー「…それに、あいつは俺が見つけてやらなきゃ意味がない気がするからな」
クリスタ「……そっか、そうだね」
クリスタ「じゃあ私は、二人がちゃんと合流できることを祈ってるね」
ライナー「(女神…)お、おう。祈っててくれ」
クリスタ「そうだ、ライナー」
ライナー「何だ?」
クリスタ「今日のアニ、すごくかわいいでしょ?ちゃんと女の子として見てあげてね」ニコ
ライナー「!」
クリスタ「アニね、今日ライナーとお祭り行くためにすごく頑張ってお洒落したんだよ」
ライナー「……そ、そうなのか」 カア
クリスタ「そうなの!」
ライナー「…っ、じゃ、じゃあ、俺行くな」タッ
クリスタ「うん、じゃあね」
クリスタ(無事、会えるといいな…)
ワイワイ ガヤガヤ
クリスタ「………あれ?」
クリスタ「ユミル?ベルトルト?」キョロ
クリスタ「……」
ガヤガヤ
クリスタ「私も、はぐれちゃった」
クリスタ「……」キョロキョロ
クリスタ「うーん…(ベルトルトを見付ければはぐれないと思ってた何分か前の自分を殴りたい…)」
クリスタ(私から見たらみんな大きいから、人より高いベルトルトも見えないよ…)ピョンピョン
クリスタ「んー…どうしよう。ユミル、心配してるかなあ」
==
数分後
ガヤガヤ
クリスタ「はあ…見つかる気がしない…」
クリスタ「どんどん人に流されちゃってるし…」
クリスタ(…もしかして、二人に会えないまま暗くなっちゃうんじゃ…)ゾッ
「クリスタ?」
クリスタ「!」
アルミン「やっぱりクリスタだ。君も来てたんだね。どうしたの?キョロキョロして」
クリスタ「…アルミン!」
クリスタ「……はあぁ…」ヘナ
アルミン「どうしたの?大丈夫?」
クリスタ「ごめん、なんでもない」
クリスタ(…なんか、この人混みの中で、知ってる顔見付けただけで安心した…)ホッ
アルミン「ひょっとして、一人?ユミルとかは一緒じゃないの?」
クリスタ「ん…ユミルとベルトルトと来てたんだけど、はぐれちゃって…」
アルミン「…この人混みじゃ無理もないよね」
クリスタ「さっきから探してるんだけど見付からないし、人混みには流されちゃうし…」
アルミン「僕でよかったら、一緒に探そうか?」
クリスタ「え?…いいの?」
アルミン「うん。どうせ特に予定もないし、クリスタ一人で放っておけないしね」
クリスタ「…ありがとう」
アルミン「気にしないで」ニコ
アルミン「……それじゃあ、あのっ…」
クリスタ「?」
アルミン「手、繋いでいいかな?」
クリスタ「えっ!?」ドキ
アルミン「い、いや、変な意味じゃなくて…!クリスタが人に流されちゃうといけないから…」アワアワ
クリスタ「あっ…そ、そうだよね!私たちがはぐれちゃったら元も子もないもんねっ」アセアセ
アルミン「……」
クリスタ「……」チラ
クリスタ「お、お願いします」スッ
アルミン「…うん」ギュ
また後で来ます
ライアニとベルユミとアルクリとか俺得すぎてどうしたらいいの
レスありがとう
>>222
結婚しよ
続きです
ザッザッ
クリスタ「アルミン、一人で来たの?」
アルミン「ううん、エレンとミカサと、三人で」
クリスタ「あれ?じゃあアルミンも迷子?」
アルミン「まさか」
アルミン「今頃エレンとミカサは、仲良くデートでもしてるんじゃないかな」
クリスタ「?」
アルミン「用事があるとか適当言って、別れたんだ」
クリスタ「どうしてそんなこと…」
アルミン「最近、エレンがミカサを女の子として意識し始めたみたいだから、今日はお祭りで二人っきりにしてあげようと思って」
クリスタ「え、あの二人、そういう仲になってたの?」
アルミン「うん。クリスタのお陰でね」
クリスタ「私?」
アルミン「ミカサから聞いたよ。この間、ミカサに服を選んであげたんでしょ?」
クリスタ「あ、うん」
アルミン「で、そのかわいい服着たミカサを見て、あの鈍感なエレンがミカサを見る目が変わったんだ」
アルミン「だから、クリスタにはいつかお礼を言いたいと思ってたんだ」
クリスタ「どうしてアルミンがお礼を言うの?」クスクス
アルミン「昔からあのもどかしい距離感を見てきたからね。二人の進展には感慨深いものがあるんだよ」
アルミン「少し寂しい気もするけどね。でもそれ以上に嬉しいんだ。だからありがとう」
クリスタ「そっか…。少しでも力になれたなら私も嬉しい。どういたしまして」ニコ
アルミン(かわいい…)
ザッザッ
クリスタ「二人と別れてから今まで何をしてたの?」
アルミン「屋台とか芸とか見たり、適当にぶらぶらしてたよ。後で合流するって言って来たからそれまでは帰れないからね」
クリスタ「いつ合流するの?」
アルミン「えっとね、今日のお祭り、夜になると花火が上がるんだって。だから、それが始まる頃にって言ってある」
クリスタ「へえ、花火」
アルミン「実はね、このお祭りの花火を、あそこの…」スッ
クリスタ「?」
アルミン「見える?あの丘の上で見たカップルは幸せになれるって言われてるんだって」
クリスタ「へえ…その話は誰が?」
アルミン「フランツ。ハンナと見るんだって」
クリスタ「そっか。そういうの詳しそうだもんね」
アルミン「うん。僕が二人と別行動しようと思った一番の理由はそれなんだ。エレンとミカサに、二人っきりで花火を見せてあげたくて」
アルミン「だから、花火が終わってから『混雑してたせいで二人を見付けられなかった』とかなんとか言って合流するって寸法なんだ」
アルミン「確証も信憑性も身も蓋も無いお笑い話のために、何やってるんだろうね、僕」ハハ
クリスタ「そんなことないよ。すごく素敵なお話だし、それに、」
クリスタ「自分が一人になってでも、二人にそんな舞台を用意してあげるなんて、アルミンは優しいんだね」
アルミン「はは、どうだろう。エレンたちにとってはありがた迷惑かもしれないのに…」
クリスタ「そんなことないよ!少なくともミカサの気持ちははっきりしてるんだから」
アルミン「そうかな。…だといいな」
クリスタ「そうだよ」
アルミン「…ありがとう。少し気が楽になったよ」ニコ
アルミン「ねえ、クリスタは見たことある?花火」
クリスタ「うん、小さい時にね。火薬を打ち上げるんだよね」
アルミン「そう!」ガバッ
クリスタ「!?」
アルミン「僕、花火って初めて見るんだ!本の挿絵では見たことがあるんだけど、この目で本物を見るのは今日が初めてなんだ!」
クリスタ「へ、へえ…」タジ
アルミン「夜空に咲く大輪の花…楽しみだなあ…きっと、僕の想像以上にきれいなんだろうなあ」キラキラ
アルミン「でもそっか、クリスタは見たことあるのか…いいなあ…、僕も見たいなあ」
アルミン「きれいだった?いや、やっぱり言わなくていいや。この目で見るまでの楽しみにしておこう。ああ…、暗くなってきたし、もうすぐかなあ、早く見た………」ハッ
アルミン「ごっ、ごめん!なんか一人ではしゃいじゃって…」アワアワ
クリスタ「ううん、気にしないで。…ちょっとびっくりしたけど」
クリスタ「でも、いつもは大人しい優等生のアルミンが、そこまではしゃぐなんて少し意外かも」
アルミン「うう…お恥ずかしい…」
クリスタ「アルミンは知的好奇心が旺盛なんだね。…なんかちょっとかわいい クス」
アルミン「か、かわいいって…僕、男なのに…」シュン
クリスタ「あっ、ご、ごめんね!そういう意味じゃなくて」アセ
アルミン「いや、いいんだ…。気にしないで」
クリスタ「なんか…本当にごめんね」
クリスタ(…それにしても、)
クリスタ(…一緒に花火を見たら幸せになれる、かあ。ミカサ、エレンと幸せになれるといいね)
クリスタ(…せっかくだから、アニとライナーも見てくれたらいいな。もっと早く知ってたらライナーに教えてあげられたのに…)
クリスタ「……あ、」
アルミン「ん?」
クリスタ「…ねえアルミン、その花火の話って、両想いじゃなくても効き目はあるのかな?」
アルミン「…うーん、実は僕も、もしエレンの気持ちが僕の勘違いだった場合は、その可能性に賭けることになるんだよね」
アルミン「でもこれって実際は、何か不思議な力がはたらくとかじゃなくて、"二人っきりで花火なんて見たらロマンチックな気分になっちゃうよね"くらいの意味合いだと思うから、その辺はあんまり関係ない気がする」
アルミン「あんな眺めのいい場所ならカップルでごった返すだろうし、そうなると否が応でもそういう雰囲気になるだろうしね」
クリスタ「そっか…、なるほど」
アルミン「誰か、一緒に見たい人がいるの?」
クリスタ「あ、ううん。私じゃなくて」
クリスタ「…ユミルが、今日ベルトルトと一緒にいてすごく楽しいみたいで、もしユミルにそういう気持ちがあるなら、二人に見せたいなって」
アルミン「ふうん、あの二人が…。そうなんだ」
クリスタ「ただの私の余計なお節介だけどね」
アルミン「……」
アルミン「なら、ユミルとベルトルトにも、あの丘で花火を見るように仕向けてみる?」
クリスタ「え?」
ここまで
アルミンお喋りだなあ
ありがとう
凄く自分得です
>>237
お粗末さまです
続きです
クリスタ「そんなことできるの?」
アルミン「できると思うよ。たとえばだけど…」
アルミン「単純に、僕がユミルとベルトルトに接触して『クリスタとあの丘の上で会ったよ』って伝えるとか」
アルミン「きっと二人もはぐれた君を探してるはずだよね。だから僕がそう伝えるだけで、そんな二人を丘に誘導するのは簡単だ」
クリスタ「…そっか」
アルミン「で、君は、僕がエレンとミカサにしようとしてるように、花火が終わってから涼しい顔して二人に合流すればいい」
アルミン「丘の上に行った理由を聞かれたら…適当に"高い所から二人を探そうと思った"とか言っておけばはぐらかせるだろうし」
クリスタ「…それ、いいね!それでいこう!」パア
アルミン「うん」
アルミン「…でもこの方法には難点があってね、」
クリスタ「?」
アルミン「クリスタが二人に見付かっちゃうとその場で合流するはこびになるから、僕らが先にあの二人を見つけなくちゃならないんだ」
アルミン「…あの背の高い二人をね。これが相当困難を窮めると思うんだ」
アルミン「……ほら、見晴らしが違うから」ガクッ
クリスタ「…そうだね」ガクッ
クリスタ(本当、今日ほど自分の身長を恨んだ日はないよ…)
クリスタ「じゃあどうすれば…」
アルミン「だからこうしよう」
クリスタ「?」
==
・丘の上
ガヤガヤ
クリスタ「木の上に隠れるの?」
アルミン「うん。…この木がいいかな」ガサ
アルミン「木の上なら、クリスタが人混みにのまれてしまって僕が見失うってこともないし、あの二人にも見付からないからね」ヨジッ
アルミン「掴まって」サッ
クリスタ「うん…よいしょ」グイ
アルミン「それにほら、ここなら丘に登る道に面してるから、誰が通ったかも見えるよ」
クリスタ「本当だ」
アルミン「ユミルとベルトルトを連れてきて、うまく撒けたら戻ってくるね」
クリスタ「…わかった」
アルミン「じゃあ、ここから動かないでね」
クリスタ「…ここじゃ動くに動けないよ」ガサ
アルミン「はは、だよね。…落ちないように気をつけて、しっかり掴まってて」ガサ
クリスタ「うん」
アルミン「よっ、と」スタッ
クリスタ「ごめんなさい、お願いね、アルミン」
アルミン「うん、じゃあ行ってきます」タタッ
クリスタ「行ってらっしゃい」
クリスタ「……」
クリスタ「大丈夫かな…」
==
十数分後
クリスタ「……」
クリスタ「あっ」ガサ
クリスタ(…あれ、ミカサとエレン、だよね?暗くてよく見えないけど、きっとそう)
クリスタ(アルミンの言った通り、なんかいい雰囲気…。ミカサったらすごく嬉しそう。…かわいい)
クリスタ(よかったね、ミカサ)ニコ
ワイワイ ガヤガヤ
クリスタ「だんだん人が増えてきた…。しかもカップルばっかり。デートスポットなんだから当たり前か…」
クリスタ「もう大分暗くなったし、そろそろ花火が始まるのかな…?」
クリスタ「……」
==
クリスタ「アルミン、まだかなあ…」ソワ
ヒュルルル…
ドオーン!! パーン!
クリスタ「!」
クリスタ(始まっちゃった…!)
ザワザワ
ドン! ドドン!!
クリスタ「……」
クリスタ「きれい…」
クリスタ(これは、噂なんてなくてもユミルたちに見せたいな…。できれば、アニとライナーにも見てほしかった…)
クリスタ「……」
ドドン! パン!
クリスタ(それに私も…)
クリスタ「アルミンと、見たかったな…」ボソ
クリスタ「…というか、アルミンが初めて花火を見るところ、見たかった」
クリスタ(さっきみたいに目をキラキラさせて、まるで子供みたいに喜ぶのかな…)
クリスタ(それで…)
「クリスタ!」
クリスタ「!」
アルミン「ごめん、返事して!思ったより暗くて見失った」
クリスタ「ここだよ、アルミン!」ガサッ
アルミン「あっ、ここか…」
クリスタ「アルミン、手を…っ!」サッ
アルミン「うん…っ!」グイ
アルミン「…ふう。ありがとう、引っ張り上げてくれて…」
クリスタ「ううん」
アルミン「ごめん、木に何かしら目印でも付けておくべきだったね」
クリスタ「…それでアルミン、ユミルとベルトルトは?」
アルミン「大丈夫、ちゃんと来てくれた。あっちの方に行ったよ」
クリスタ「そっか」ホッ
アルミン「二人も花火初めてなんだって。興味持ったみたいで、釘付けになってたよ」
クリスタ「そうなんだ、見せてよかった」
アルミン「ただ、クリスタのことすごく心配してたから、後でちゃんと謝ってあげてね。僕が唆したのに丸投げするようで申し訳ないけど」
クリスタ「…ううん、でもそうだよね。そうする」シュン
アルミン「特にユミルなんか今にも泣きそうな顔してたんだから」
クリスタ(想像つかないな…)
ヒュルルル…
パーン!
アルミン「ふう、これでやっと落ち着いて花火が見られるよ」
クリスタ「ごめんね、私のわがままに付き合ってもらっちゃって。…アルミン、花火楽しみにしてたのに…」
アルミン「いいよ。最終的に協力するって決めたのは僕なんだから」
パン! パパン!!
アルミン「…きれいだね。花火って、こんなにきれいな物だったんだね」
クリスタ「……うん」チラ
アルミン「生まれて初めて、こんなきれいな物を見られて、僕は今すごく幸せだ!」キラキラ
クリスタ「……」
クリスタ「私も」
アルミン「え?」
クリスタ「そんなに喜ぶアルミンが見られて、嬉しい」クス
アルミン「え!?何それ!?」ドキッ
クリスタ「今日はありがとう。楽しかった」
アルミン「う、うん。僕も…」ドキドキ
クリスタ「ユミルには悪いけど、花火はアルミンと見られてよかったな」
アルミン「そ、そうかな、ありがとう(な、何だろう…。これがさっき言った『いい雰囲気になっちゃうよね』ってやつなのかな…)」カアッ
クリスタ「もしこのままミカサとエレンが付き合っちゃったりして、寂しくなったら、私に言ってね」ニコ
アルミン「え!?」
クリスタ「私じゃ、隣にいることしかできないかもしれないけど」
アルミン「クリスタ…(それって…と、隣に…いてくれるってことなのかな…)」
アルミン「…そう言ってくれるだけで嬉しいよ」
アルミン「ありがとう、クリスタ」
その後、花火は全て夜空に打ち上がり、お祭りは終わりを告げた。
アルミンと別れた私は、人混みを掻き分けてやっとの思いでユミルとベルトルトと合流。
ユミルからは慈愛を帯びた怒声と軽いビンタ、そしてハグをもらった。
そんな私たちの様子をベルトルトは、少し離れた所から微笑みながら眺めていた。
心配かけてごめんなさい、二人とも。
探してくれてありがとう。
アルミンがどんな顔をしてミカサたちと落ち合ったのかは、私にはわからないけれど。
==
夜・女子寮
ハンナ「そっか。クリスタはアルミンと花火を見たんだね」
クリスタ「…うん。後になって、例の花火の噂を思い出しちゃって…」
クリスタ「今になって考えると…なんか私、すごく恥ずかしいこと言った気がする…。これからどんな顔してアルミンに会ったらいいかわからないよ」ポフ
ハンナ「くす」
ミーナ「なになに?何の話?」ヒョコ
ハンナ「クリスタがアルミンと花火を見たんだって。ミーナは知ってる?丘の上で花火を見た男女は幸せになるって噂」
ミーナ「え?そんなのあるの?」
ハンナ「うん、フランツから聞いたの」
ミーナ「……」
ミーナ「…へえー、そんなのあるんだあ……知らなかったな…」ソワッ
クリスタ「ん?その反応は何?ミーナ」
ミーナ「…実は、あの時私も丘の上で花火見てたんだよね」
ミーナ「……マルコと。二人で」ボソ
クリスタ「え?二人ってそういう仲なの?」
ミーナ「ち、違うよ!お祭りにはマルコとジャンと三人で行ったの!」アワアワ
ミーナ「…だけどジャンは途中で帰っちゃったんだ。飽きたとかなんとか言って。だから結果的に二人きりになっちゃったっていうか…」
ミーナ「まさかそんな噂があったなんてねえ。で、でもマルコとだったら悪くないかなっ。優しいし真面目だし、」
ミーナ「困ったなあ。もしかして私たち、結ばれちゃう?」テレテレ
クリスタ(ミーナ…満更でもなさそうだね)クス
ユミル「ほーお、そんな噂があったのかあ」ゴンッ
クリスタ「」ギク
ユミル「クリスタ、お前謀ったろ。アルミンの入れ知恵か?」
クリスタ「ユ、ユミル…」
ユミル「ったく。さんざん人に心配掛けといてそんなこと考えてたのかお前は!!」グリグリ
クリスタ「うう…痛いよユミル…ごめんなさい…」グリグリ
クリスタ「(ユミル顔赤い…)私はよかれと思って…」
ユミル「良かねえんだよ!お前はいい加減『小さな親切、大きなお世話』ってのを弁えろ!」
クリスタ「はいぃ…」
サシャ「仲いいですねえ二人とも」
ミカサ「本当に」クス
ミーナ「お、サシャにミカサ」
サシャ「花火の話ですか?いいですね、ロマンティックで!」
ユミル「お前の口からそんな言葉が出るとは驚きだな」
クリスタ「サシャ、知ってたの?」
サシャ「はい。って言っても、ミカサからさっき聞いたんですけどね」
ミカサ「私は、アルミンから」
サシャ「でもそれじゃあ、私はコニーと幸せになっちゃうってことになっちゃいますね」
クリスタ「もしかして、サシャたちもあそこにいたの?」
サシャ「ええ。コニーが『もっと高い所行こうぜ!』って言い出して、夕方くらいからずっといました」
ユミル「…バカと煙は高い所に登りたがるっていうもんな」
サシャ「でも充分幸せでしたよ?何せ今日はコニーの全額奢りだったんですからね!コニーも泣いて喜んでました!」
ユミル「……さすがに同情するわ」
ミーナ「それにしてもすごいね、ばったり会わなかっただけでみんな同じ所にいたんだね!」
ミーナ「ねえ、アニは?誰かとお祭り行ったんでしょ?丘の上で花火見たりしなかったの?」
アニ「…見てない(………見たわ)」
アニ「祭りも、行ったには行ったけど、すぐ帰って来たから(そんな噂あったんだ…。すごく恥ずかしい)」
ミーナ「えー、なーんだ。つまんないー」ムス
クリスタ(アニ…花火見なかったんだ)
アニ「クリスタ、ちょっと」
クリスタ「?」
==
コソッ
クリスタ「えっ?本当は見てたの?」
アニ「こっ声が大きいよ」ボソ
クリスタ「っ、ごめん」コソ
クリスタ「…でもよかった。アニたちにも見てほしいなって思ってたから。そっか」
アニ「……」カア
アニ「…でもごめん。選んでもらった靴、ヒールが折れちゃったんだ」
クリスタ「え?ケガとかしなかった?大丈夫?」
アニ「あ、それは、何ともなかったけど…」
クリスタ「けど?」
アニ「……今度ライナーが、新しい靴買いに連れて行ってくれるって」ポソポソ
クリスタ「そうなの?…そっか、デートの約束したんだ、よかったね。頑張って」
アニ「……っ」カア
アニ「その…色々ありがとう」
クリスタ「!」
アニ「それだけだから。じゃあ」フイ
クリスタ「あっ…」
クリスタ「……」ニコ
==
サシャ「あれ?クリスタ、どこに行ってたんですか?」
クリスタ「ん、何でもないよ」
ミーナ「聞いてよ!ミカサがね、今日お祭りでエレンに告白されたって…―」
『…この世界に幸せな人が一人でも増えてくれることを、私は祈ってるんです!』
クリスタ(なんか、こういうのっていいな…)クス
完結です。
ここまでありがとうございました
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