オルオ「もっと俺は愛されてもいいはずだ」
ペトラ「なによ、いきなり」
オルオ「いや、ふとそう思ってな」
ペトラ「ふーん」
オルオ「おい、もっと興味を持て。枝毛を探すな」
ペトラ「あ…結構毛先痛んでるなぁ。ちょっと短くしようかな」
オルオ「ペトラ、聞け」
ペトラ「うるさいなあ」
オルオ「お前は俺にもっと愛情表現をしてもいいと思うぞ」
ペトラ「じゃあ、そういうセカイ…見てみる?」
オルオ「は?」
ペトラ「愛されオルオのセカイ」
…
………
…………
………
…
ペトラ「オルオ?」
ペトラ「ねぇ、ぼーっとしてるけど、どうかした?」
ペトラ「………って、オルオ?!血が出てるよ…!舌噛んだの!?大丈夫!?」
ペトラ「この中に!この中に医療の心得がある人はいらっしゃいませんかー!!!」
エレン「ペトラさん、落ち着いてください!」
ペトラ「落ち着けないよ!オルオの口からこんなに血が出てるのに!」
グンタ「…今から街に馬を走らせて軟膏を買ってくる」
エルド「いや、待て。軟膏はもちろんだが…オルオが舌を噛むのはもう癖みたいなもんだ」
エルド「ここはオルオの口内炎を少しでも早く治し、更には再発を防ぐため、城の庭に何か栄養価の高い果実を植えるというのはどうだろうか」
リヴァイ「名案だ」
グンタ「冴えてるな、エルド」
ペトラ「素敵!」
エレン「それならミキプルーンはどうですか?」
ペトラ「それいいね!プルーンは鉄分も豊富だし、舌噛んで流血しても安心だね」
リヴァイ「お前は俺の右腕だ、貧血で倒れられでもしたら困るからな」
グンタ「そうだぞ、オルオ。お前が怪我をすることでどれだけの人が心配で夜も眠れなくなると思っている」
エルド「それじゃあ今すぐ街に苗木を買いに行こう」
エレン「ミキプルーン」
エルド「あぁ、ミキプルーンをな」
グンタ「そして、それをオルオの記念樹と名付けて兵団のシンボルにしよう」
リヴァイ「この背中のマークも、もう自由の翼じゃなくてプルーンでもいいくらいだな」
エルド「お、兵長も言いますね」
リヴァイ「バカ言え、俺は普段からこのくらいの冗談は言う」
グンタ「ははは」
エレン「あれ、オルオさん…ずっと黙ってますけど、そんなに舌噛んだのが痛かったですか?」
ペトラ「もう、エレン!痛いに決まってるでしょう?…本当オルオったらほっとけないんだから」
ペトラ「………そういうところが母性本能くすぐられていいんだけどね」
エルド「お、ペトラも言うねえ」
ペトラ「だって本当のことだもん」
グンタ「ペトラは本当にオルオが好きだな」
ペトラ「ふふふ」
エレン「…あぁ、オルオさん!スカーフに血が垂れてしまってますよ」
リヴァイ「なんだと…城についたらまずそれを洗う。オルオ、その間は俺の予備のスカーフを使え」
グンタ「血か…染みになったら大変だ」
リヴァイ「血を落とすには大根おろしを使うのが良いと聞いたことがある」
エレン「俺、おろしてきます!」
ペトラ「ずるい!私もオルオのために大根おろしたい!」
グンタ「それじゃ、俺がスカーフを洗うか」
リヴァイ「…それは俺の仕事だ」
グンタ「兵長にそう言われたら、譲らないわけにはいかないじゃないですか」
リヴァイ「すまんな」
エルド「おいおい、オルオ。お前も罪な男だな」
*
ペトラ「ねぇ、オルオ……それもしかして兵長の真似?」
ペトラ「全然、似てない」
ペトラ「オルオはオルオらしくしなよ…私、いつものオルオらしいほうが好きだよ?」
グンタ「今日もやってるな、夫婦仲が良くて羨ましい」
ペトラ「や、やだ!夫婦だなんて…そんな、まだ…」
エルド「まだ?」
ペトラ「もう、エルドの意地悪!」
エレン「ミキプルーンまだ実りませんね…」
グンタ「エレン、焦りすぎだ。次の次の壁外調査から帰ってくるくらいにならないと実は出来ないと思うぞ」
エレン「でも、早くオルオさんにこれ食べて欲しくて…」
エルド「昨日も舌噛んでたからな、オルオは」
リヴァイ「仕方ない、俺が何か果物を買って来てやろう。オルオ、何がいい」
*
リヴァイ「明日は壁外調査だ、気を引き締めろ………おい、オルオ。スカーフが歪んでるぞ」
リヴァイ「……よし、これで良い。今回の壁外調査もオルオ、お前に期待しているぞ」
ペトラ「オルオのサポートしっかりするからね!補佐はまかせて!」
エルド「具合悪くなったら言えよ?」
グンタ「お前の立体機動整備しておいたからな」
*
エルド「お前ら…二人とも初陣でションベン漏らして泣いてたくせに…立派になったもんだな」
ペトラ「ぎゃああああ」
ペトラ「言うなよ!私はともかく…オルオの威厳とか無くなったらさぁ!!!どうするんだよエルド!!」
エレン「すげぇ!!空中で撒き散らしたってことですか!?」
ペトラ「エルドおおぉ!!」
*
エレン「グンタさん…!?」
エルド「女型だ…!」
ペトラ「……よくも!!かかって来い!!最低でも刺し違えてやるから!!」
エルド「ここは、俺たちがやる…お前はエレンを護衛しながら先に行ってくれ」
ペトラ「大丈夫、心配しないで。グンタは…もういないけど、二人でも戦えるよ」
エレン「オレも戦います!」
エルド「…俺達の腕を疑ってるのか?」
ペトラ「そうなのオルオ、エレン?私達のことがそんなに、信じられないの?」
エルド「早くしろ、オルオ!エレン!時間がない!」
エレン「ペトラさん、エルドさん…!」
ペトラ「行って!オルオ、エレン!早く」
ペトラ「生きて!」
…
………
……………
………
…
オルオ「なんだよ、なんだよ…これは」
オルオ「なんなんだ、このセカイは」
オルオ「みんな俺に甘すぎるだろ!!!」
オルオ「こんなのは違う…違う…」
オルオ「こんなのは、愛、じゃねぇ」
ペトラ「オルオ、落ち着いて」
オルオ「………ペトラ!」
ペトラ「どうだった?愛されオルオ、なセカイは」
オルオ「ふざけるな…お前たちはどうなった?死んだのか?俺とエレンを逃がして」
ペトラ「うん、そうだよ…でも後悔はしてない」
エルド「兵団にはお前が必要だ。だから守った」
グンタ「そうだ、オルオ。お前が責任を感じる必要はない」
オルオ「…俺は守られるほど、弱くない」
ペトラ「それでも、みんなオルオのことが大好きだから………オルオに生きていて欲しかったんだよ」
オルオ「そんなこと、俺は望まなかった」
グンタ「………オルオ」
オルオ「こんなの、間違っている」
オルオ「俺は、強い。守られずとも戦える」
エルド「オルオ…」
オルオ「…こんなのは違う……俺は、やり直したい」
ペトラ「…本気で言ってるの?」
オルオ「あぁ」
ペトラ「他のセカイでは私…オルオに優しくないかもよ?」
オルオ「構わない」
ペトラ「オルオのこと、気持ち悪いっていっぱい言うかもよ?」
オルオ「別にそれでいい。慣れてる」
ペトラ「そっか…うん、わかった」
ペトラ「じゃあ、やり直そう」
オルオ「ペトラ?」
ペトラ「オルオが…後悔しないですむように」
グンタ「そうだな、そうしよう」
エルド「このまま、オルオにはこのセカイで生きていて欲しかったが…お前が望まないのなら、やり直そう」
オルオ「やり直…せるのか?」
ペトラ「うん、やり直せる」
ペトラ「じゃあ、もう一度、聞くね」
ペトラ「本当に、やり直すの?」
オルオ「………あぁ」
ペトラ「そっか…いってらっしゃい、オルオ」
エルド「それだけじゃねぇだろ?ペトラ」
ペトラ「ん…そうだね」
グンタ「ほら、仕切り直せ」
ペトラ「うん」
ペトラ「オルオ、だけじゃない」
ペトラ「みんなでやり直そう、次のセカイで」
ペトラ「どんなセカイでも、どんなことを言っても、言われても、みんな本当はオルオのこと愛してるよ」
ペトラ「これだけは、どのセカイも共通。忘れないで」
オルオ「…わかった」
ペトラ「じゃあ」
ペトラ「いってらっしゃい、オルオ」
***
オルオ「…………ハッ…」
オルオ「…………」
オルオ「……」
オルオ「………夢か?」
オルオ「…………ぼんやりとしか覚えてないが…良い夢で、最悪な夢だった気がする」
オルオ「……つか、今何時だ?」
ガチャッ
ペトラ「オルオ!早く起きて!もう朝食出来てる!」
オルオ「!…ペトラ」
ペトラ「なに!いいから起きて!」
オルオ「………」
ペトラ「…なによ、人の顔じっと見たりして」
オルオ「おい、ペトラ。ちょっと俺の頬を…」
ペトラ「殴る?」
オルオ「違う、つねってみてく………いだい、ちょ、いだだだだだ」
ペトラ「ほら、気が済んだ?とっとと着替えて食堂来てよね。もう食べ始めちゃうから」
オルオ「ペトラ」
ペトラ「何度もなに?」
オルオ「お前なんだかんだ俺のこと大好きだよな?」
ペトラ「はあ?」
オルオ「照れるなって」
ペトラ「………エレーン!オルオの分の朝食食べていいよ!育ち盛りだもんね!」
エレン「ほんとですかー?」
オルオ「おい、ふざけるな」
ペトラ「ふざけてんのはオルオでしょ。それとも寝ぼけてるの?」
オルオ「………いや、もう起きた」
ペトラ「それでよろしい!ほら、早く食堂行かないとほんとにエレンに全部食べられちゃうよ」
オルオ「ふん、言われなくてもすぐ行く」
ペトラ「あと」
ペトラ「おかえり?」
オルオ「!」
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