絹恵「憩ちゃん変わったな」憩「かもな」 (34)

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憩「絹ちゃんはケガ多いなぁ」絹「えへへ…」
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続きやで 地の文多めでごめんなさい

高1、秋


憩「はぁ~…」


サッカー部A「おーいこっち!」

同B「シュート打てー!」

同C「ちょっと遅いよー!」


憩「みんな楽しそうやなぁ…」

麻雀部の活動を終えての帰り道。
学校の校舎からは少し離れた場所にある、
サッカー部の専用グラウンドからは威勢のいい声が聞こえてくる。

憩「…ここにおったかも、しれんのになぁ」

グラウンドの端でホイッスルを吹く生徒にも目が留まる。
あぁ、マネージャー…やんなぁ。

絹ちゃんが怪我をしなければ、二人でこのグラウンドにいたかもしれない。
私がテーピングをちゃんとやっていれば、怪我はなかったかもしれない。

たらればなんて意味がないけど、そう思わずにはいられない。

夏の大会が終わってから、なぜかよく絹ちゃんのことを考える。
大会のときに、会えるかな、でも会いたくない、と
複雑な気持ちを抱えていたけど、結局会えなかった。

憩「って、…やっぱ会いたいんかなぁ」

3月の卒業式以来、一度も連絡を取っていない。
でも、麻雀という競技を続けていればいつか会うはず。

憩「まぁ…そのときでいいか」

独り言を呟いて、家路に着いた。
後ろからはまだまだ元気な声が響いていた。

高1、近畿秋季大会個人戦


憩「そのときってえらい早いな…」

モニターに映し出された個人戦の対局予定表。

憩「まさか一発目とはなぁ」

初戦の対戦相手には、「姫松・愛宕絹恵」とはっきり書いてある。
間違いでもなんでもなく、絹ちゃんや。

どんな顔をして会えばいいのかわからない。
会いたかったのに会いたくないのはそういうこと。

対局室


緊張しながら対局室へ向かうと、そこにはすでに席に着いた絹ちゃんがいた。
半年と少し振りの絹ちゃん、…ちょっとおっぱいでかくなった?

憩「…ひ、久しぶりやな」

声が上擦ってないか心配…。

絹恵「あ、うん…憩ちゃんすごいな」

憩「え?」

絹恵「麻雀わからへんわーって言うてた人が全国2位って…すごいやん?」

憩「あー…まあ、相性よかったんかな」

絹恵「憩ちゃんと麻雀が?」

憩「ん、たぶん」

絹恵「そっかー…めっちゃ複雑」

思ったより普通に話せる、そう思ったのに。
絹ちゃんはうつむいてしまう。

卒業式の日、別々の道に進んで、会えなくなって
せっかくまた会えたっていうのに、笑顔は見られなかった。

憩「…ごめん」

絹恵「謝ることちゃうって、別に」

憩「うん…ほな今日はよろしく」

絹恵「うん、よろしくな」

差し出され手を握った。握手を交わして健闘を誓い合う。
久しぶりの絹ちゃんの手は、マメで少し、硬かった。

対局中、もっと話したいことがあったはずなのにと思っていた。
元気?とか、調子はどう?とか、…また仲良くしようって。

そんなこと言えるかわからないけど、言いたかった。

だけど、

憩「…お疲れさんです」ペコッ

モブA「お、おつかれ…さま…です」

モブB「うぅ、もう麻雀やめる…」

絹恵「………」

3人を同時に飛ばしてしまった。
こう言っちゃ悪いけど、何の手ごたえもなかった。

私は何でこんなに強くなってしまったのか。
絹ちゃんに対する罪悪感?それとも、寂しさか、あてつけか。
……全部かな。

ごめん、なんて謝られたらもっと落ち込むってわかってるから何も言わない。

同時に、また仲良くしよう、なんてことも
全く言える雰囲気ではないし、話しかけることすら躊躇してしまう。

だから、私たちはまた離れてしまう。
「そのとき」は来たのに、何もないまま、過ぎ去っていく。
親友に戻ることは、やっぱり無理みたい。

高2、全国春季大会


個人戦で全国までやってきた私は、
会場内の観戦フロアの隅にあるソファに座っていた。

まだ団体戦の最中で、今日はAブロックの準決勝が行われている。

赤い髪したチャンピオンがいつもの調子で黙々と打っている。
TVの中の、そんな姿をソファにもたれかかって見ていた。

憩「ふわぁ~…この人に対策も何も意味ないのになぁ」

ちゃんと確認しろ、と監督に言われたからにはしないといけないけど
したところで何かが変わるとは思えない。
そもそも、私は牌譜の見方すら怪しいっていうレベルなのに。

洋榎「おー憩ちゃん、お久しぶり」

そんな私にかけられた声は、聞き覚えがあった。

憩「えーっと…」

でも、名前が出てこない。南大阪じゃ一番の有名人なのに。
去年のインハイも、秋季大会も対局をしたはずなのに。

憩「あ、絹ちゃんのお姉さん」

結局名前は出てこない。

洋榎「そうそう、絹のお姉ちゃんや。憩ちゃんこんなとこでなにやってんの?」

憩「あー、この化け物の対策で」

洋榎「ほぉなるほど。って憩ちゃんも立派な化け物やで?」

憩「えーそんなことないですぅー」

洋榎「いやいやほんまやって!やばいで、憩ちゃん」

憩「ま、自覚はないんですけどねー」

洋榎「…ところで絹とは連絡とってへんの?」

憩「あぁー…はい」

洋榎「何があったか絹は全然言わへんのやけど…大丈夫?」

憩「いろいろあって、怪我とか、あったし。だから、えっと、大丈夫です」

自分で何を言ってるかよくわからないし、
絹ちゃんのお姉さんも首をかしげているけど、

洋榎「そうか、大丈夫か。よかった」

そう言って笑ってくれる。優しい人だと思った。
絹ちゃんが憧れるのもわかる、たったこれだけでよくわかった。

洋榎「ほな、個人戦頑張りや」

憩「いやいや、姫松さんの準決勝が先ですよー」

洋榎「おぉ、そやった。絹のこと、応援したってや」

憩「…はい」

洋榎「ほなまたな~」

手を振りながら、絹ちゃんのお姉さん…あぁ、洋榎さんか。
洋榎さんは帰っていった。

絹ちゃんの応援か…まあ、それもええか。

絹ちゃんは1回戦も2回戦も正直アカンかった。
それも仕方がないと思う、秋季大会の個人戦、あれもアカンかったから。

レギュラーにふさわしくないというわけでもないけど、
活躍を期待されているとは言いがたい。

だから、私が応援しなきゃ。

Bブロック、準決勝当日


でも、そんな、私ごときの応援で何かが変わるわけもない。

画面の中の絹ちゃんは突っ伏したまま微動だにしない。
対局も終わって、対戦相手はもう誰もいないのに。

マイナス30000点は絹ちゃんの肩にどかっと乗っかっているはず。

サッカーをしているときの絹ちゃんはよく笑ってた。
怪我しても「やってしもた」って少しは笑ってたのに。
PK戦で負けたときは泣いてたけど、感情が前面に出てた。

なのに、今の絹ちゃんは…私の……私の好きだった絹ちゃんとは少し違うみたい。
秋の大会でも違和感があった。でも、その正体は、覇気のなさだと気付いた。

そう気付いたとき、足は対局室へ向かっていた。
しかも、走り出している。
そんなことを本人に言ってどうなる?と思いながら、それでも走っていた。

憩「はぁはぁ…おー間に合ったぁ」

絹恵「…憩ちゃん」

走って対局室の前に着くと、そこにはちょうど出てきた絹ちゃんがいた。

憩「おつかれ」

絹恵「あ、うん…」

どちらから話し出すかしばらく沈黙が続く。
その間にも次の試合に出場する選手たちが対局室へ入っていった。
姫松の人は、絹ちゃんに「おつかれさん」とだけ声をかけた。

対局開始を告げるアナウンスがあって、うちはようやく口を開いた。

憩「絹ちゃん、全然アカンな」

絹恵「うわ…ひどいなぁ」

憩「なぁ、うちらってまだ友達かな?」

絹恵「わからへん…」

憩「うーん…まあ、そういうことにして1つ言いたい」

絹恵「なに?」

憩「アカンかっても笑顔でいるとか、思いっきり泣くとか、
  その方が絹ちゃんっぽいって思った」

絹恵「…は?」

憩「私の友達は、その方がらしいってこと」

絹恵「…ようそんなん言えるな」

憩「え?」」

絹恵「親友でいようって言ったら、わからへんって言うたの誰なん?」

憩「あ、それは、」

絹恵「私、めっちゃ寂しかったのに!」

憩「それは、…絹ちゃんが姫松に行きたいの隠してたからやん」

絹恵「…そやけど!でも、ずっと仲良しやったのに!」

憩「うちは隠し事されてたんが寂しかった…から」

絹恵「ごめん…結局私のせいやな」

憩「ううん、違う。うちがテーピングを…」

絹恵「…もうそれはええ、聞きたくない」

憩「ごめん…」

二人して謝って、また沈黙。
何しに来たんだがもうよくわからない。

絹恵「……みんな心配してるやろうし、戻るわ」

憩「あ、うん…ごめん」

絹恵「ええって、別に」

憩「あ、…えっとやっぱ言わせて!絹ちゃん、正直に言うで!
  絹ちゃんには覇気がないんや。なんか元気じゃない!だから、麻雀もアカンねん!」

言いすぎかと思ったけど、口に出してしまったものは仕方がない。
うじうじと言おうか迷うのはもう面倒くさい。

次いつ会えるのかもわからないのだから。

絹恵「…なにそれ、全国2位にもなるとそうやって簡単にひどいことも言えるんやな」

憩「なんと思われてもええ、でも、絹ちゃんは昔みたいに笑顔でいて欲しいんや」

絹恵「憩ちゃんてそんなおせっかいっていうか、余計なお世話する人やっけ?」

憩「わからへん、でも、今の絹ちゃん放っておけんへん」

絹恵「ちゃうねん、サッカーやってた頃とはちゃうんや!」

憩「え?」

絹恵「昔みたいに、って昔と今は違う、全然違う!同じでおれるわけないやん!」

憩「それはそうかもやけど…でも、」

絹恵「麻雀始めてたった3ヶ月で全国2位になった人には絶対理解できひん」

絹恵「うちがどんだけの努力してここまで来たか、今だって精一杯やってもやっても
   それでもあんなことになってしまうんや!」

絹恵「そんなんで笑えるわけないやん!大げさに泣いたり、できるわけないやん!
   私みたいなもんには笑う資格も泣く資格もないんや!」

憩「絹ちゃん…でも、絹ちゃんは」

絹恵「憩ちゃんこそ、変わったんちゃう?私の知ってる憩ちゃんは
   そんなこと言う人じゃなかった」

憩「ははは・・・かも、な」

絹ちゃんの言うとおりやと思った。結局どっちも変わってしまった。
同じでいられるわけはない。
なのに、私は一方的に押し付けようとしてしまった。

絹恵「…やっぱ、もう友達ではいられへん」

憩「うん…」

絹恵「バイバイ、憩ちゃん」

憩「…ん、さよなら」


もう2度と話すことはないだろと思えた。
さよなら、絹ちゃん。

ごめん。やっぱり、あの日の怪我ですべて変わってしまった。
私たちは、もうあの日には戻れない。




カン

ここまで書いて仲直りはもう難しいと思ったのでおしまい
代行と支援ありがとうございました

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