苗木「セレスさんって実は記憶があったんじゃないかな」霧切「え?」 (96)

苗木「今更なんだけどさ」

霧切「それはないわ、私達全員記憶が消されていたはずよ」

苗木「本当にそうなのかな?少し引っ掛かるんだよね」

霧切「何が引っかかるの?」

苗木「何故僕達に彼女はセレスティア・ルーデンベルクって偽名を名乗ったんだろう?」

霧切「痛い子だったからでしょう?」

苗木「そうだね、それは否定しないよ…フランス貴族の父とドイツ人音楽家の母を持ってると言い張ってたし」

苗木「でも電子手帳に本名が書かれていたってことはこの学園に入学する時は偽名じゃなくて本名で入学したんだよね?それは何故なのかな?」

霧切「少し調べればすぐ分かることだからでしょう?」

苗木「それは僕達も同じだよ、少し調べればセレスさんの本名はわかったはずだ」

苗木「でも僕達には偽名を名乗った、何故そうしたのか…」

苗木「もしかしたらセレスさんには記憶が残っていて、かつ僕達が記憶喪失になっていたのを知っていたからじゃないかなって」

苗木「それと山田君が最後にセレスさんのことをやすひろと呼んでいたのも関係あると思う」

苗木「山田君がセレスさんの本名を知っていたってことは、セレスさんが自分から本名をバラしたってことだよね?」

苗木「恐らく初めて入学したときに全員に本名を伝えていたんだよ、僕や霧切さんにもね…今は忘れてるけど」

苗木「それもおかしいんだよ、その時に本名を名乗っていたなら何故記憶喪失になった僕達に会った時には名乗らなかったのかな?」

苗木「やっぱりセレスさんは記憶を持っていたからとしか思えない」

霧切「ちょっと待って、仮にセレスさんが記憶を持っていたとしても何故外の世界に出ようとしていたのかしら?」

霧切「外の世界は絶望で包まれていることを知っていたのでしょう?」

霧切「それに私達と一生学園で暮らすことに彼女も同意していたはずよ、だから彼女がそんな行動に出るとは思えないわ」

苗木「嘘をついてたんじゃないかな、セレスさんは嘘の達人だしね」

苗木「たとえ外の世界が絶望に包まれてても出たがってたのは、多分この学園の中での生活が退屈で嫌になっていたんだと思う…」

苗木「セレスさんは超高校級のギャンブラーだから…」

霧切「どういうこと?詳しく説明して」

苗木「つまり、こういうことだよ…」

セレス「…はぁ」

セレス(学園をシェルター化して皆と生活して一年経ちましたが…毎日が退屈ですわ)

セレス(一生この学園で暮らすだぁ?ふざけんな!私には西洋の城に住んで、世界中のイケメンを集め、ヴァンパイアの格好をさせて、はべらせて暮らすって夢があるんだよぉ!…と言いたい所ですが)

セレス(他の皆が学園長の質問に同意して、私だけが同意しないのは良くないと思い、仕方なく同意しましたが)

セレス(このまま死ぬまでこの学園に引きこもるなんて私には耐えられませんわ…)

セレス(ここから抜け出して外の世界に出たい…たとえ外の世界が絶望に包まれていたとしても)

セレス(確かにこの学園内に入れば一生安泰でしょう…この一年間でそれはよくわかりました、ここなら安心で安全で安定した何の不自由もない生活を送れます)

セレス(ですが、それでは面白くないのです…何か刺激がないと)

セレス(私には毎日博打してるスリル満点の不安定な生活の方が合ってますし…いつ何が起こってもおかしくない人生の方が面白いですわ)

セレス(やはりあの時に断って、私だけ外の世界に出れば良かった…)

セレス「…はぁ、今更後悔して愚痴っても仕方がありませんね……こんな話をしても無意味です」

セレス(ここまできて私だけこの学園から脱出したいなんて言えませんし…これからも毎日この学園で退屈な人生を過ごすんですから…)

セレス「…ん?何か様子が変ですわね…」

セレス「何故一階のシャッターが降りているんでしょう…?」

セレス「これでは一階より上に上がれないですわ」

セレス「どうなっているんですの…?」

セレス「他の人達は何をしているのでしょうか…?この異変には気づいていますよね…?」

セレス「…他の人達が見当たりません」

セレス「皆さんはどちらに向かわれたのでしょうか…?」

セレス(…はっ!?まさか、裏でこっそり皆でこの学園から脱出する計画を立てていたとか…?)

セレス(そして私が眠っている間に皆はこっそりこの学園から抜け出したとか!?しかも私だけをこの学園に残して一階に閉じ込めて…!?)

セレス「もしそうだったら絶対に許さねえぞビチクソ共がぁ!」

セレス(あら、皆さんここにいらしたのですか?)

セレス「全員揃って体育館に集まって何をしているのでしょうか?」

葉隠「あっ?おめーも新入生か?」

セレス「は?」

セレス(新入生?何言ってんだこのボンバヘッは?ふざけてんのか?)

葉隠「俺の名前は葉隠康比呂だべ、よろしくだべ!」

葉隠「おめーの名前は何だべ?」

セレス「あらあら、私の名前をお忘れですか?」

葉隠「忘れるも何も初対面だから知らないべ」

セレス(何が初対面だぁ!?んなわけねえだろうが!二年間この学園で共に生活してきただろが!人の名前を忘れるなんて失礼だろ!舐めてんのか!?)

セレス(…いや、他の人の様子も変ですわね)

セレス(まるで本当にお互い初対面のような、ぎこちない会話をしていますわね…)

セレス(演技かと思っていましたが、葉隠君も本当に私のことを覚えていないように見えますし…)

セレス(…もしや、他の皆は記憶喪失になっているのでしょうか?)

セレス(非現実的ですが、それしか考えられませんわ…)

セレス(一階より上を閉鎖、全員が記憶喪失……何故こんなことになっているんでしょうか?)

セレス(これは何かのゲームが始まりそうな予感がしますわ…)

葉隠「あの、名前を聞かせてもらってもいいべ?」

セレス「ああ、私の名前は安広多恵……」

セレス(いや、もし本当に覚えていないなら偽名を名乗ってもバレませんよね?念のために本当に記憶を失っているか試してみますか…)

セレス「私の名前はセレスティア・ルーデンベルクですわ」

葉隠「そうか、セレスっち、よろしくだべ!」

セレス(信じ込んでいますわ…これはマジで記憶喪失になってますわね)

セレス(偽名を名乗るのは少し痛々しいですが、まあいいでしょう…誰も気付いていませんし)

セレス(安広多恵子って名前は平凡すぎて嫌いだったので、これからは私の名前はセレスティア・ルーデンベルクということにしましょう)

セレス「…江ノ島さん?」

江ノ島「ん?そうよ、私の名前は江ノ島盾子。よろしくねー!」

セレス「顔にそばかすがありますが…?」

江ノ島「ああ、雑誌と比較して印象違うって言いたいんでしょう?あれは画像編集ソフトで弄られてるだけだからー」

セレス(嘘つけ!お前は戦刃むくろだろうが!)

セレス(変装したつもりか知らねえが全然似てねえし!それに江ノ島盾子はそんなド貧乳じゃねえよ!)

セレス(そう言えば、本物の江ノ島盾子が見当たりませんね…どこにいるのでしょうか?)

モノクマ『マイクテストマイクテスト、大丈夫?聞こえてるよね?』

モノクマ『えー、新入生の皆さん!今から入学式を執り行いたいと思います!』ピョコーン

セレス(あれは何ですの?ぬいぐるみ?)

モノクマ「ぬいぐるみじゃないよ、僕はモノクマだよ!お前らのこの学園の学園長なのだ!よろしくね!」

セレス(あれが学園長…?学園長にぬいぐるみを操る趣味は無かった気がしますが……別のアニメではぬいぐるみ操作してたりしますけど)

セレス(それは置いておいて、学園長はあんなふざけた喋り方はしなかったと思いますわ…)

セレス(となると、あれを操っているのは恐らく……江ノ島盾子ですわね)

セレス(それにあの顔…どこかで見覚えがありますわ)

セレス(確か人類史上最大最悪の絶望的事件でしたわね…)

セレス(世界中で皆が同じマスクをつけてて不気味でしたわ)

セレス「全く、迷惑な話ですわ…)

セレス(そのせいで私達はこの学園に最後の希望として隔離されたのですから…)

セレス(江ノ島盾子もその仲間だったということですの?)

セレス(何食わぬ顔でこの学園の中に紛れていたんですわね)

セレス(誰か殺した生徒だけがここから出られる…?)

セレス(面白いルールですわね、私はそういう刺激的なゲームをずっと待っていましたの!)

セレス(久々に血湧き肉踊りますわ…)

セレス(ですが、本当にただ単に誰かを殺しただけで学園から出してもらえるのでしょうか?)

セレス(それ以外にルールはないんですの?)

セレス(情報が少ないですし、まずは様子見しますか…)

セレス(動機と言ってましたが、このDVDは何なんですの?)

セレス(とりあえず再生してみますか…)

セレス(…ああ、まあ外の世界は絶望に染まっているのでこうなってもおかしくありませんわね)

セレス(…っと、他の人は外の世界の状況を知らないので思いっきり動揺していますわね)

セレス(私もポーカーフェイスしながら、少し動揺しているような素振りを見せましょう)

セレス(舞園さんが激しく動揺していますわ、外に出るために誰かを殺しそうな目をしていますわね…)

セレス(舞園さんには一人目の殺人鬼として実験体になってもらいましょう)

セレス(あらあら、舞園さんが殺人鬼になるかと思いきや誰かに返り討ちにされてしまったようですわね)

セレス(まあ、それよりも新たに追加されたルールの方が重要ですわ)

セレス(殺人が起こった後のダンガン裁判と、ダンガン裁判後について)

セレス(クロを見つけなければ全員殺される?冗談じゃありませんわ!)

セレス(おや、戦刃さんが殺されてしまいましたわ)

セレス(お二人は確か双子だったはずですが容赦ないんですのね)

セレス(まあいいですわ…今はそれよりクロを暴いて、クロには死んでもらいましょう)

セレス(桑田君がクロだったのですね)

セレス(それにしてもあのお仕置きは惨いですわ)

セレス(もし誰かを殺しても、裁判で失敗したら桑田君のようにキツいお仕置きをされる…)

セレス(恐ろしいですわ…ですが、逆に面白いですわ)

セレス(こういう駆け引きは嫌いじゃありませんの…ワクワクしてきましたわ)

セレス(さて、私も殺す対象を決めておきますか…)

セレス(ターゲットは葉隠君にしましょう、以前私の苗字を聞いて)

セレス(俺が安広っちと結婚したら名前がやすひろやすひろになるべ、とかふざけたこと抜かした時にはブチ切れそうになりましたわ)

セレス(その後も、他の人にネタにされたりでイライラしっぱなしでしたわ)

セレス(私の名前を侮辱した罪は死を持って償っていただきましょう)

セレス(殺人が起きたら、シャッターが開いて上の階にいけるようになるんですわね)

セレス(まあ私は見慣れていますが、他の人達は初見でしょうし、私も合わせましょう)

セレス(新たな動機?どうせまた下らないものでしょう)

セレス(こ、これは……!?非常にまずいですわ…)

セレス(これが世間に流れてしまったら私が物理的にも精神的にも殺されてしまいますわ…)

セレス(早速葉隠を殺す準備を……)

セレス(いや、落ち着くのです…これが黒幕の狙いですわ、動揺させて殺人を誘引する…)

セレス(最終的には殺人を犯してここから出るつもりですが、今はまだその時ではありません……今は時期が悪いですわ)

セレス(私が長年ギャンブルで培ってきた勘がそう言っていますわ、ですから今はまだ抑えておきましょう…)

セレス(ふふふ、次は誰が殺して誰が殺されるのか…楽しみですわね)

セレス(殺害されたのは不二咲さんでしたか…)

セレス(まあ彼が死んでも別のどうってことないですわ、むしろ死んでくれて良かったといいますか)

セレス(以前から男の癖に弱々しいオーラを出して、女のフリをしていて気色が悪いと思っていました)

セレス(舞園さんもそうでしたが、ああいう媚びてる感じ満載の奴らは全員死ねばいいんですわ)

セレス(さて、犯人探しといきましょうか)

セレス(犯人は大和田君でしたか)

セレス(まあ彼も死んで当然でしょう)

セレス(短気ですぐ暴力に走るカルシウム不足の男は目障りですし)

セレス(それに暴走族は近所迷惑上等の連中ばかりですから)

セレス(バカは死ななきゃ直らないと言いますし、死んでバカを直して下さいね)

セレス(三階も解放されたようですわね…)

セレス(さて、次の殺人は誰が……いけませんわ)

セレス(そろそろ人数少なくなってきましたし、早めに殺さないとクロだとバレる可能性が上がりますわ)

セレス(ですが、今はまだ……)

セレス(新たな動機?またですか、今度は一体何を…)

セレス(100億円……っ!?)

セレス(さて、今すぐ葉隠君を殺しましょう)

セレス(いや、ちょっと待ってください…別に私が直接殺さなくても私がクロになって、もしバレなかったら葉隠君は自動的に死にますわね)

セレス(でしたらわざわざ殺さなくても、身近で簡単に騙せるような奴を殺した方が良い気がしますわ…)

セレス(山田君に死んでもらいましょう、ですが死んでもらう前に私がクロだとバレないようにするための工作を手伝ってもらいましょう)

セレス(我ながら完璧な計画ですわ)

セレス(これで私をクロだと気づく者は一人もいません)

セレス(妙に頭が冴えていますわね…やはり大金が絡んでいるからでしょうか)

セレス(学園に篭っていたせいで多少ブランクがありますが、私が負けることは決してありませんわ)

セレス(何故なら私は超高校級のギャンブラーですから…)

セレス(裁判が開始しましたわね)

セレス(葉隠君には囮になってもらいましょう…)

セレス(私は山田君に記憶が戻って最後にクロである私の苗字だけを言い残し死亡する、絶妙な加減で山田君を叩き潰しましたから)

セレス(死亡した山田君の最後の一言で、葉隠君にクロ疑惑がかかるのも全ては計算のうちですわ…抜かりはありません)

セレス(良い流れですわ、このまま私は裁判で勝って…そして、この学園から脱出して100億円で夢を叶えますわ)

セレス(ジャスティスロボに設計ミスゥ…!?おいぃ!腰が曲がらないってどういうことだ山田ァ!?ブチ殺すぞ!)

セレス(ああ、私が既に殺していたんですわね…しかし、抜けがある仕事をされると困りますわ)

セレス(山田の設計図の字が下手糞過ぎぃ!もっと丁寧に書きやがれ!葉隠との字の違いでクロじゃないとすぐバレちまったじゃねえか!)

セレス(こうなっては仕方ありませんわ、霧切さんがクロだと思わせる方向でいきましょう)

セレス(山田君が生きてて石丸君の死体を運んでいたことに気づくなんて意外と鋭いですわね、しかし甘いですわ…モノクマの死体発見アナウンスのタイミングも完璧に合わせておきましたから、それで)

セレス(メガネについていた血が拭き取られてたぁ!?おいぃ!何やってんだ山田はァ!?使えなすぎる!)

セレス(霧切さんが男のパンツの中に手を突っ込むような下品な女だと思いませんでしたわ…隠していた手紙が見つかるなんて想定外でした)

セレス(ハンマーを洗ったことに気付くとはやりますわね苗木君…ですが、これまでの情報だけでは私がクロだとは特定することは不可能ですわ)

セレス(おっと、『彼ら』と言ってしまうとは私としたことが飛んだ凡ミスをやらかしてしまいましたわ……私が撮った写真についても私の本名についても論破されてしまいました、ここまでですわね…)

セレス(はぁ…これから私はお仕置きされるのですか)

セレス(勝ちを確信していた勝負で敗れて処刑されるなど屈辱の極みですわ)

セレス(ですが、最後に楽しい駆け引きが出来て良かったです…)

セレス(そうですわ、死ぬ前に意味深な台詞を残しておきましょう)

セレス「あれは果たして希望なのでしょうか…?」

セレス(正直あのアルターエゴで今の外の世界をどうにか出来るとは思えません)

霧切「…?」

セレス「私にはそうは思えませんでしたわ…だからこそ」

セレス(…少しネタバレをしようかと思いましたけど、やめましたわ)

セレス(敗者は潔く去るのみです)

セレス「…いえ、蛇足でしたわね…」

セレス(自分の目で真実を確かめて、絶望に負けないように頑張って下さいませ)

セレス「それではごきげんよう、また来世でお会いしましょう」

苗木「…これが真実だよ」

霧切「……」

苗木「霧切さん、どうしたの?」

霧切「今のは全て苗木君のつまらない妄想でしょう?それに所々で不審な点が見られたのだけど」

苗木「それは違うよ!」

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