両津「ここが山口県周南市か」 (209)
部長「両津、異動命令が出た今すぐ山口にいけ」
両津「ええっ!?どうしてわしなんですか?」
部長「わしも詳しいことはわからん、上からの命令だ」
両津「山口のどこらへんなんですか?」
部長「周南市のとある集落だ」
両津「そんな田舎に行くんですか…これじゃ駐在じゃないですか」
部長「うむ、どうやらその集落は人間関係で難があるようでな…」
両津「はぁ…とにかく行ってきますよ」
部長「うむ、頼んだぞ」
両津「ったくなんでわしがこんなド田舎に…」
中川「先輩は過去にも何度か行ってましたね」
両津「左遷じゃねえのかこれ」
中川「それにしても山ばかりですね」
両津「こんなとこに住んでどうやって生活してるんだ」
中川「生活機能の維持できない集落は日本に2900ありますからね」
両津「そんなにか?」
中川「先輩が行く集落もそのひとつですよ」
両津「やれやれ…当分不便な生活を強いられそうだ」
中川「先輩着きましたよ」
両津「おうサンキュー」
中川「見事なまでになにもありませんね」
両津「民家がちらほらとあるだけか」
中川「じゃあ先輩がんばってください」
両津「待て中川」
中川「はい?」
両津「お前も一緒に住め、田舎の暮らしを満喫するいいチャンスだ」
中川「嫌ですよっ」
両津「いいから、田舎の人情にふれあえるぞ」
中川「わ、わかりましたよ…じゃあちょっとだけ」
両津「じゃあ住民にあいさつに行くか」
中川「そうですね」
両津「まずはこの家からだ」
中川「貞森さんですか」
両津「おう、誰かいるか」
貞森「はい、誰でしょう?」
両津「この辺りの勤務になった両津だよろしくな」
貞森「おお、おまわりさんかね、それはそれは」
両津「じいさん一人暮らしか?」
貞森「妻と二人暮らしだ、おーい喜代子」
喜代子「はい?」
貞森「駐在さんがあいさつに来てくれたぞ」
喜代子「ああ、はじめまして」
両津「よろしくなばあさん」
喜代子「こちらこそよろしくおねがいします」
両津「うむ、じゃあわしはこれで」
中川「それでは」
中川「人のよさそうな老夫婦でしたね」
両津「そうだな、田舎ならではのメンタリティーだ」
中川「次はあの家ですね」
両津「うむ…ん?なんだあれは?」
中川「どうしました?」
両津「あの家なにか書いてあるぞ」
中川「本当だ…えっと…なんて書いてあるんでしょう…」
田 煙 つ
舎 り け
者 喜 び
か ぶ し
つ て
を
中川「どういう意味でしょう?」
両津「知らん、本人に聞いてみるか」
中川「そうですね保見さんですか…」
両津「おーい、いるかぁ」
保見「はい?」
両津「おう、わしはこの辺りの配属になった両津だ」
保見「お巡りさんですか!」
両津「う、うむ…」
保見「よかった…本当によかった…ボロ…ボロ…」
両津「な、なんだ?どうした一体?」
中川「なにかあったんですか!?」
保見「聞いてください…ここの住民はひどいんです」
両津「なにがどうひどいんだ?」
保見「ここは鬼の住処です!」
両津「落ち着け!さっさと内容を言え」
保見「私は親父が倒れてその介護をするためここにもどりました」
両津「うむ」
保見「そしてその親父も亡くなりました、それからです…住民の態度が急変したのは」
両津「ほう…」
保見「――と、言うようなことがありました」
両津「要約すると村八分ってことだな」
保見「そうですね…」
両津「なんだくだらん」
保見「ええっ!」
両津「お前がいじめられようが知ったことじゃない」
保見「そんな…」
両津「じゃあわしはもう行くぞじゃあな」
中川「先輩もうちょっと親身になってあげたほうが…」
両津「知るか、男だったらもっとしっかり生きろ」
中川「まぁ…それもそうですね」
貞森「若い駐在さんが来たのう」
山本「キキキッ…使い勝手がありそうじゃ」
石村「たっぷりコキ使ってやるか…言うことを聞かなかったら…」
喜代子「いじめて村八分かえ?」
石村「ああ、今時の若造は根性がねぇ…どうせすぐ泣きいれるべ」
山本「キキキッ…!」
石村「カカカッ!コココッ!」
―次の日―
両津「パトロールにでもいくか」
中川「そうですね」
喜代子「おはよう両津さん」
両津「おう、おはよう婆さん」
喜代子「今日は暑いねぇ」
両津「そうだな、婆さんも草むしり大変そうだな」
喜代子「ええ…まぁ…ぜぇぜぇ…」
両津「じゃあな」
喜代子(えっ!?行っちゃうの?)
喜代子(このクソ公僕が…年寄りを見捨てやがって…!)
中川「先輩!」
両津「ん?なんだ?」
中川「お婆さん大変そうですよ」
喜代子(お、ナイス若い方!)
両津「ん?そうか?」
喜代子「いやいや、いいってそんなに気を使わんでも」
両津「そうか、大丈夫だってよ中川行くぞ」
中川「そうですか?では…」
喜代子(ファーーック!なんだよコイツ!全然使えねえ!)
喜代子(仕方が無い、奥の手を使うか…)
喜代子「痛ててて…痛てて!」
両津「どうした婆さん?」
喜代子「いや、腰を痛めてて」
両津「大丈夫か?ちょっと休んでろ」
喜代子「でも草むしりが…」
中川「先輩…」
両津「…わかったよ、わしがやっとくから」
喜代子「そうかい…すまないねえ」
両津「なに、いいってことよ」
喜代子(計画通り!)
両津「うぉぉぉおおお!」
ぶちぶちぶちぶちぶちぃぃぃっ!
中川「はぁ…はぁ…」
両津「ぐぉぉおおおお!」
ぶちぶちぶちぶちっ!!!
中川「さすが先輩だ…凄まじい勢いで草が駆られてく」
石村「喜代子さん、なんだいありゃ」
喜代子「いや、あのお巡りに草むしりをやらせてるんだけどね…」
山本「なんだありゃあ…まるで人間芝刈り機じゃねえか…」
山本「これじゃあ芝刈り機いらねえじゃねえか」
喜代子「保見のヤロウみたく芝刈り機買うこともないだろうねぇ」
石村「あれを燃やすのはケッサクだったな、はははっ!」
山本「しかしあのお巡りには通用しねえみてえだ」
喜代子「思ったより体力がありそうだね」
山本「なに心配いらねえ、俺たちの嫌がらせはこれだけじゃねえさ」
石村「そうだな…ククク…」
喜代子「ケケッ!その通りよ」
両津「ふう、おわったぞ」
中川「おつかれさまです」
両津「コーラ買ってくる」
中川「お店まで遠いですよ」
両津「そうだな、でも行ってくる」
中川「わかりました」
両津「ちょっとの間待っててくれ、リアルでコーラ買ってくる」
中川「そうですか、じゃあその間待ってますね」
両津「うむ、待っててくれ、落ちないように見ててくれ」
中川「わかりました」
両津「帰ったぞ」
中川「早かったですね」
両津「ん?なんだその犬は?」
犬「わん!」
中川「保見さんが飼ってるオリーブです」
両津「ほう」
保見「うちの死んだ親父に似てて、引き取ったんですよ」
両津「そうか」
保見「でも他の住民の目が常に見張ってて満足に散歩もさせてやれなくて…」
両津「じゃあわしが行ってきてやる」
保見「いいんですか?」
両津「かまわん」
保見「すいません、ではお願いします」
両津「まかせろ」
中川「先輩、本当に行くんですか?」
両津「うむ、本当に行ってくる」
中川「どのくらいでもどってくるんですか?」
両津「3~40分ってとこだな、それまでまっててくれ」
中川「わかりました」
両津「ただいま」
保見「お巡りさん、お疲れ様です」
両津「大分暗くなってきたな、わしらも帰るか」
中川「そうですね」
保見「ありがとうございました」
両津「なに、いいってことよ」
両津「しかしのどかだな」
中川「そうですね」
両津「こうやって住人とのんびり暮らすのも悪くないかもな」
中川「そうですか」
両津「ここが山口県周南市か」
中川「なんですかそれ?」
両津「なんでもない、もう寝るぞ」
中川「はい…」
両津「Zzzzz…」
中川(でもやっぱり保見さんの言ってたことが気になるな…ここの人たちはなにかありそうだ…)
それから数日…両さんは住人からコキ使われていた
老人A「両さん、屋根が壊れちまって」
両津「おう、わしにまかせろ」
老人B「両さん、テレビの写りが悪いんだが」
両津「しょうがないな、わしが格安のテレビを調達してやるよ」
老人C「両さんインターネッツが欲しいんだが」
両津「わかった、わしが接続してセットアップしてやる」
―数週間後
両津「くそっあいつら日に日にわがままが増してくるぞ!」
中川「こういう集落にはよくあるらしいですよ」
両津「ちっ、まったく!もうやってられん!」
石村「両さん…」
両津「なんだっ!?」
石村「あ、いや…いまさらだが両さんの歓迎会をしようと思ってな」
両津「なんだと?」
石村「両さんには普段世話になってるからな、わしらからの少なからずの礼じゃ」
両津「なっ…なんとっ!」
石村「それじゃあ山本さん宅でまっとるよ」
両津「や、やはり田舎は人情がある…いいもんだなぁ」じ~ん
中川(先輩ちょろすぎますよ…)
老人A「まぁ飲んでくれ」
両津「お、サンキュー」
貞森「両さんがきてくれたおかげでいろいろ助かるよ」
両津「ところで保見はどうした?」
石村「ああ、あいつはいいんだ」
老人B「あんな奴呼ぶ必要ねえ」
両津「そ、そうか…」
中川「痛っ!」
両津「中川どうした!?」
中川「喜代子さんが…いきなり刺してきて…」
両津「なんだと?おいどういうことだ!」
喜代子「いや、この人大会社の社長さんだべ?」
両津「そうだが」
喜代子「だからここにコンビニを作ってくれって頼んだだ、けどやだ言うから」
両津「それで刺すことないだろ!」
喜代子「いや、ちょっととがったものでつついただけだべ」
老人A老人B「そうだそうだ、大騒ぎしすぎだ!」
両津「血が出てるだろ!コラ!」
中川「先輩、僕なら大丈夫ですから…」
喜代子「ほれ、兄ちゃんはそういってるだから」
両津(なんだコイツら…田舎ってこんななのか?)
保見「そうですか、中川さんも刺されましたか」
両津「お前も刺されたのか?」
保見「はい…あいつらはキチガイです」
両津「わしもだんだんそう思えてきた」
保見「両津さん、一緒にあいつらに復讐しませんか?」
両津「なんだと?」
保見「もう私は我慢の限界です…」
両津「待て、そんなことしてなんになる」
保見「ですが…」
両津「ふん、あんなのかかわらなければいいだけだ、無視だ無視」
保見「あいつらはそれで終わりませんよ…」
―それから数日、住民の両さんへのいやがらせが続いた
両津「わしの自転車がクソまみれだ!」
中川「僕のフェラーリもですよ…」
両津「わしの制服が…」
中川「先輩、深夜のカラオケがうるさくて寝れません…」
両津「くそっ…田舎ものの嫌がらせはしつこいな…」
―数日後―
両津「もう我慢の限界だ!」
中川「そうですね…」
両津「中川!あいつらを徹底的にとっちめるぞ!」
中川「わかりました!やりましょう!」
両津の中川の逆襲がはじまる
両津「まずは道路をすべて閉鎖して兵糧攻めだ」
中川「なるほど」
両津「あとやつらの家を竜巻で破壊する」
中川「いいですね」
両津「無論、畑もすべて壊す」
中川「いっそのこと水源も絶ちましょう」
両津「そうだな、さっそく実行だ」
中川「はい」
石村「なんだ…水が出ねえ」
貞森「電気もガスも止まっちまっただ!?」
喜代子「一体なにがあっただ!?」
ゴゴゴゴゴ…
老人A「なんだありゃあ!た、竜巻だぁー!」
石村「げえっ!」
貞森「逃げろー!」
バキバキバキバキッ!
老人B「家が…破壊されていくだ…」
山本「オラの家が…畑も…」
石村「一体どういうことだ…これじゃあ生活できねえ」
貞森「とにかく食い物を調達してこねえと」
老人C「おい、大変だ!道が倒木で封鎖されてる!」
喜代子「なんじゃってー!?」
老人D「どうすればいいだ…」
両津「みなさんどうしましたか?」
山本「両さん…どうしたもこうしたも…」
貞森「家が…道路が…畑が全部なくなっちまっただ…水も出ねえ」
両津「安心してください、そんなこともあろうかと…あちらをごらんください」
喜代子「あ、ああ…」
山本「コンビニだー!」
山本「ありがてえ!さすが両さんだ!」
喜代子「助かった」
老人A「水だ、水をくれ」
貞森「おい!一人でそんなに買い占めるな!」
喜代子「お茶と…食料…」
老人C「おい、食料は平等にわけろ!」
喜代子「うるさいわ!早いもの勝ちだ!」
両津(ククク…かっぺ共が醜い争いをしてやがる)
ピッ ピッ…
中川「546万5200円です」
喜代子「はぁあああ!?」
中川「546万5200円です」
喜代子「バカ言うじゃねえ!そんな高いわけあるかー!」
両津「いやいや、この値段は至極当然」
喜代子「なっ…なにを…」
両津「こんな僻地にコンビニを立てたんだ、このくらい取らなきゃ採算が合わない」
喜代子「だからって…」
両津「それに今は緊急時、多少の上乗せは仕方が無い」
山本「横暴だ…」
山本「こんな暴利をむさぼるなんて横暴だ!」
両津「嫌なら買わなければいい」
山本「くっ…」
喜代子「水一本2万…じゃあこれひとつ」
中川「はい、ありがとうございます」
山本「おい!なに買ってんだ!」
喜代子「しょうがねえだ…今飲まなきゃ死んじまう…」
老人A「それもそうか…」
山本(こんなやり方がゆるされるのか…)
喜代子「心配いらねえ、3日もすれば救助が来るべ」
山本「そうだな」
しかし一週間経っても救助はこなかった
喜代子「み、水…水をください」
両津「婆さん金あんの?ないなら帰りな邪魔だ」
喜代子「う、うう…」
両津「おい保見、水浴びでもするか」
保見「いいですね」
両津「全長25メートル、ミネラルウォータープールだ」
保見「これは豪勢ですねえ!」
両津「いやっほーー」
喜代子(鬼だ…こいつら鬼だ…)
貞森「もうダメだ…わしらの負けだ」
老人A「負けってなんだ?」
貞森「これはあいつらの復讐だ…」
老人A「わしらが悪かったのかのぅ…」
貞森「わしらは…集団で若者をいじめてきた」
老人A「これがその報いだと?」
貞森「そうだ…反省してあやまって許しを請うしかねえ」
山本「………」
喜代子「なんでもええ…オラまだ生きてぇ、そのためならなんだってする」
貞森「んだなス…全員で誠心誠意あやまるだ」
老人ら「すいませんでした!」
両津「ようやく反省したみたいだな」
中川「そうみたいですね」
老人A「わしらが悪かっただ…だから後生だ…許してくだせえ」
両津「どうする中川?」
中川「僕刺されたの生まれてはじめてですから…」
喜代子「ひいっ!すいませんでした!すいませんでした!」
中川「保見さんはどうですか?」
保見「まだだ…まだこんなもんじゃ俺の怒りはおさまらない…」
老人ら「ええっー!?」
両津「だ、そうだ、お前らもっと苦しんどけ」
2週間後…
中川「先輩、さすがに隠蔽するのが難しくなってきました」
両津「そうか、さすがに中川の権力をフルに使っても限界か」
中川「保見さんすいません」
保見「いえ…いいんです、あいつらをここまで苦しめらてて満足しました」
両津「じゃあそろそろ許してやるか」
中川「そうですね、あと壊した住宅も復旧しましょう」
両津「わしらは東京にもどる、達者でな」
保見「はい、ありがとうございました両津さん、中川さん」
中川「それじゃあお元気で」
保見「はい」
老人ら「おつかれさまでした」
両津「おう、それじゃあな」
両さんたちは帰った、その後、保見へのいじめはなくなった
…かに見られたが一ヵ月後
保見「ちくしょう!あいつらまた調子に乗りやがって!
ダメだ…あいつらは性根の底から腐ってやがる…
田舎老害は死ななきゃなおらねえ!
まとめてぶっ殺してやる!」
2013年7月21日
貞森、喜代子、山本を鈍器で殴り殺す
河村宅、石村宅に放火し二人を殺害
両津「中川、ニュース見たか!?」
中川「はい、保見さんがついにやっちゃいましたね」
両津「田舎のじじい共はしょうがねえな」
中川「他に娯楽がないですからね…」
両津「年をとると老害化しちまうもんだな」
部長「老害がなんだって?」
両津「あ、部長!」
部長「お前は年を取らなくても存在そのものが害だろう」
両津「ぐっ…またイヤミを…やっぱり年は取るもんじゃないな」
両津「ここが山口県周南市か」 おわり
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