エレン「化け物、か……」(8)
エレン「……あの時、俺が仲間を信じた所為でみんな死んだ」
エレン「選択さえ誤らなければ、自分さえ信じて戦っていれば……きっと……」
エレン「………」
エレン「……きっと、何だ。自分を信じて戦ってれば、きっと助かったってのか?」
エレン「いい加減……いつまで悲劇のヒーロー面してんだよ。あの時、本当に信じたのは仲間じゃなくて自分だっただろ」
エレン「化け物扱いされるのが嫌で、新たな心の拠り所が欲しくて先輩達を利用しただけ」
エレン「……俺は……我が身可愛さに、巨人よりも人との信頼を優先したんだ……」
エレン「………笑っちまうよな。あの死に急ぎ野郎が、実はこんな軟弱者だったんだ」
エレン「はは……きっと、馬鹿な奴らに囲まれて3年も暮らした所為だな」
エレン「俺はまだまだ尻の青い餓鬼で、何も分かっちゃいなかったんだ」
エレン「母さんは巨人に喰われて、復讐の為に兵士になったけど、実は俺も巨人だった」
エレン「化け物扱いされて、仲間外れにされて、どこかに心の拠り所を求めて、やっと手に入れた信頼も巨人によって壊された」
エレン「……自分が何者なのかさえ分かってれば、少なくともこんな結果にはなってなかった筈だ」
エレン「……おい、クソ親父。俺は巨人なのか、人間なのか……それともどちらでもない化け物なのか……いい加減教えろよ」
ガチャ
ギィィィ
エレン「……」
リヴァイ「何だ、まだお前だけか?」
エレン「はい」
リヴァイ「ケッ……随分と呑気な奴らだな」
エレン「……リヴァイ兵長」
リヴァイ「あ?」
エレン「兵長は、俺を恨んでますか?」
リヴァイ「……どういう意味だ」
エレン「俺が不甲斐ないばかりに、先輩達を死なせてしまって……兵長にも負傷を負わせてしまいました」
エレン「本当に、ごめんなさい」
リヴァイ「……」
リヴァイ「お前、まだ引きずってんのか」
エレン「……」
リヴァイ「言っただろ、結果は誰にも分からないと」
リヴァイ「どんな選択をしても、結果はみんな同じだったかもしれない。例え、自分を信じて戦っていたとしてもだ」
エレン「……」
リヴァイ「だから、過ぎた事をいつまでも引きずってたって仕方ねぇだろ」
エレン「………本当は、違うんですよ」
リヴァイ「……違う?」
エレン「俺……本当は仲間じゃなくて自分を信じたんです」
リヴァイ「……」
エレン「仲間を信じるのは正しい事なんだって、そう思いたかった自分を信じただけなんです」
リヴァイ「……確かに、回りくどい言い草にはなったが何が違う?」
エレン「言葉の真意です。俺は、新しい信頼が欲しかった。訓練兵の時のような、新しい心の拠り所が」
リヴァイ「……!」
エレン「あの時、心の奥底で先輩達を信じれば信頼してもらえると思ったんです」
エレン「化け物扱いされず、罵倒雑言も浴びせられない、そんな絆が出来ると信じて」
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