勇者「暇でござる」 (19)
魔法使い「なら魔王を倒しにいこうず」
勇者「えーだるい」
魔法使い「なんなん!」
勇者「ごめんなさいー」
魔法使い「んじゃいこ」
勇者「はい」
魔法使い「まずは死の街だな」
勇者「はい」
魔法使い「はいしかゆわねぇのかよw」
勇者「ほっといて」
魔法使い「はい」
~死の町~
武器屋「今日は金の剣が安いよー」
勇者「だってさ」
魔法使い「うん」
武器屋「ちょっとそこのお兄さん」
勇者「俺?」
武器屋「あぁ、あんただよ」
勇者「何ですか?」
武器屋「金の剣かわね?w」
勇者「え?…何円?」
武器屋「1279円や」
勇者「魔法使い、どうする?」
魔法使い「どっちでも」
勇者「500円しかありませぬ((嘘」
武器屋「分かったよ!」
勇者「やったね!」
魔法使い「そーだね。」
勇者「うん」
魔法使い「んじゃ宿を探そう防具は皮のドレスでいいか」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376653101
勇者「で、魔王を倒すのはいいんだけどさ
魔王ってどこにいるのさ」
魔法使い「えーと、被害届けが出ているのは」
魔法使いが被害届が閉じられたクリアファイルを取り出し
閉じられた紙を武器屋の壁に勝手に張り付けていく。
武器屋「あの・・・、仕事の邪魔なんやけど」
魔法使い「今、勇者の仕事中だから
ツボ割られたくなかったら黙ってなさい」
勇者「どうせ閑古鳥の啼いているからいいじゃないか」
武器屋「・・・へい」
勇者が礼状(これを見せると家に置いてある、ツボや樽の中のものを
問答無用で接収できる)をみせると、武器屋のオヤジはすごすごと
店の奥に引き下がっていく。
金の剣とか置いてあるのに良いのだろうかと思わなくもないが
どうせ、勇者と魔法使い以外に客はいない。
それはさておき。
魔法使い「これなんて良いんじゃない?
魔王バラモス、懸賞金は一億八千万円」
勇者「へぇ、凄いな
一体何をしたんだ?」
勇者の言葉に魔法使いは紙に書かれた事項を読み上げていく。
魔法使い「えーと、テドン村を襲撃して住民の殺害・略奪
ネクロゴンド山脈奥地の不法占拠、魔物を扇動して
旅人や冒険者達の襲撃・金品の強奪」
勇者「一億八千万はいいなぁ」
それだけあれば、城は立てられるとは言わないまでも
豪華な装備品や土地付きのマイホーム、アッサラーム辺りで
豪遊したり、毎晩スゴロク場に入り浸ったりできる。
妄想する勇者を横目に、魔法使いの言葉は続く。
魔法使い「募集要項は、Lv30以上
4人パーティがのぞましく・・
ベホマ使いが二人以上を要する」
勇者「Lv30なんて、無理だって
はい、次」
レベルが足りなかったらレベリングして自分を鍛えるのが
アンタ仕事でしょうに、と思いながらも
魔法使いは深く考えない事にした、ファイルから次の紙を
取り出して魔王バラモスの隣に壁にわざわざ糊で貼り付ける。
店の奥から、嫌がらせかよ!と言う武器屋の声が聞こえた気がするが
きっと気のせいだろう。
勇者「大魔王ゾーマ
懸賞金は七億四千万円
すげぇな、魔王から大魔王って名前が変わるだけで
こんなに値段が跳ね上がるのか」
魔法使い「これは、随分大物のようね、
精霊ルビス様を塔の上に捕えて幽閉、世界全体を闇に閉ざして
人々を絶望させているとかって、ラダトーム城から届け出が・・」
勇者「キープで」
魔法使い「やる気!?」
どうせやる気無いだろうと踏んでいた魔法使いは、勇者の言葉に
驚きの声をあげる。
勇者「だって、ほら・・こいつ討伐Lv40だろ?
さっきのが30で2億程度だったら、こっちのがいーじゃん
七億だぞ!七億!」
確かにそれだけあれば、欲しい魔法書も武器も防具も・・・
いや、それどころか、大きい街に本拠地を立てて冒険者ギルドとかも
立てられるかもしれない。
魔法使い「まぁ、いいやんじゃキープ・・と」
貼りつけた紙の下の壁に、油性マジックでキープと書く。
勇者「他には?」
魔法使い「手頃な所狙いたいなら、これかな
大魔王エルギオス」
例によって魔法使いは取り出した紙を、武器屋の壁に糊付けする
全身深緑で頭には二対の角、背中には大きな翼があり、目が書かれているのが
特徴的だ。
・・・・・が。
勇者「・・・・・誰?」
魔法使い「誰って、だから、大魔王エルギオス」
勇者「聞いた事ないんだけど、どこのマイナー魔王なんだ?こいつ」
魔法使い「資料によると、元天使で人間の女にフラれたと勘違いして
天使を辞めて魔王になったとかなんとか」
勇者「しょっぱいなぁ、懸賞金は4000万円か
討伐レベルは25程度ってのは、手頃っちゃ手頃だけど」
魔法使い「なんか、最初から封印されているっぽいし、
一度封印を解かなきゃいけないみたいだから、懸賞金低いみたい」
勇者「あー・・はいはい、パスパス
もうちょっと、やり応えある奴居ないのかよ」
レベル1の勇者が何をと、魔法使いは思うものの
例によって油性マジックで「パス」と書いて
次の資料を壁に糊付けしていく。
そんなやり取りが暫く続き。
勇者「破壊神シドー、邪神官ハーゴン、ミルドラース、竜王、エスターク、デスピサロ、
デスタムーア、ラプソーン、オルゴデミーラ、ダークドレアムなんてのも居るぜ」
魔法使い「世も末ねー、随分と手配された魔王が居るもんだわ
あ、新しい手配書もあった、冥王ネルゲル?知らないなぁ」
武器屋の壁に手持ちの手配書を並べて張り付けてみたものの、
イマイチぱっとする物が無い。
勇者「大体なんなんだよ、この竜王っての
一国の王女の誘拐とかって、どれだけしょっぱいんだよ」
魔法使い「これも、ラダトーム王国の発行ねー
この国は二人も魔王を抱えているとは、可哀そうに」
勇者「竜王って、竜族の親玉だろ?
トカゲの親分が人間の姫様を掻っ攫って何をしようっていうんだよ
トカゲって人間に発情するのか?」
魔法使い「さぁ?非常食にでもするか、人間に卵を産ませる
秘術でもあるんじゃないの?
これも一応魔王だし」
一番最後に張り付けた竜王の手配書を眺めつつ、魔法使いは適当に
勇者に返答しつつ、一国の王女が卵を産んで、竜族の子供が孵化する所を想像して
やや気持ち悪くもなったりした。
・・・なん・・・だと・・・?
勇者「手頃な所で、このトカゲを倒そうと思う。
要求レベルは24程度で、必須資格はベギラマとベホイミ
これで、懸賞金は10億だぜ!10億!」
魔法使い「金あるわねー、ラダトーム王国
でもこれ、一人旅よ」
勇者「へ?一人旅?・・どゆこと?」
魔法使い「いや、だからそのままの通り、
ここに書いてあるじゃない
『このクエストは男性一名様に限ります』って」
魔法使いの言われるままに手配書を見てみると、たしかに
赤い太文字でそのような事が書いてある。
勇者「えー・・じゃぁ、魔物に殺されたら?」
魔法使い「そりゃ、城に強制送還じゃないの?」
勇者「俺、まだホイミすら使えないんだけど、魔物に殺されそうになったら」
魔法使い「薬草でも齧りなさいって事でしょ」
勇者「魔物に囲まれたらどうするんだよ!」
魔法使い「あ、それは大丈夫
一匹ずつ出てくるみたいだから。」
勇者「やってらんねー、一人旅やだー!
話し相手居ないのやだー!間が持たないし
何かあったら、棺桶引き摺って城に帰ってくれる人が居ないの
やだー!手頃なクエストじゃないとやだー!!」
子供のように床に転がって手足をじたばたする勇者。
魔法使い「だだっこか、アンタは
こんなんで良く勇者の資格に受かったものだと
・・・・・・ん?」
勇者「どした?魔法使い」
魔法使い「いや、手配書に
『魔王を倒した勇者には、我が国の姫との婚姻および、
ラダトーム王国の王位継承権ご進呈』って」
勇者「けーっ!竜の親分に惚れ込まれるような姫様って
どーせ、トロルかミステリードルみたいな大女に決まって・・。」
すっかり拗ねてしまった、勇者を横目に魔法使いはクリアファイルの中から
詳細に書かれた資料を探し出す。
魔法使い「ほぃ、これがローラ姫」
やがて探し出した資料にはラダトーム王ラルス16世の愛娘、ローラ姫の写真が一枚。
栗色の長髪にライトグリーンの瞳、そこらで見る村娘とは全く違う高貴なオーラが写真から
伝わってくる。
勇者「・・・・マジ?」
魔法使い「マジ」
勇者「・・・・盛ってない?」
魔法使い「すくなくとも、資料にあったのはその写真」
勇者「・・・・コラージュ?」
魔法使い「疑り深いわね」
勇者「これプラス・・成功報酬10億が俺のポケットマネー?」
魔法使い「独り占めする気か?アンタは」
勇者「けど、実質働くのは俺一人」
魔法使い「馬鹿ね、やりようはいくらでもあるじゃない
たまたま勇者近くで戦っていたら、流れ弾のメラミが勇者と戦っている
魔物に当たったりとか、意味も無く武器防具を拾ったから捨てようかなーとおもったら
偶然居合わせた勇者が拾ったとか
バブルスライムに驚いて投げつけたら
たまたま竜王の口に入って、偶然毒殺したりとか」
勇者「後半はかなり無茶苦茶言っているな、お前」
魔法使い「は?勇者だって、慈善事業じゃないのよ
実際命のやり取りしているのは私達なんだし、
汚いもへったくれも無いでしょーに」
勇者「わかったよ、取り分は7-3で7が俺な」
魔法使い「五分五分に決まっているでしょ?
ちゃんと半分は仕事してあげるわよ」
魔法使い「まぁ、とりあえずはそこで聞き耳立てている
武器屋のオヤジから始末しましょうか」
武器屋「ひぃ!?」
魔法使いが武器屋の奥をのぞきつつ、冷たい声で言うと
奥の部屋から縮こまった武器屋の声が聞こえる。
勇者「お・・おぃ!魔法使い
殺しはヤバいぞ、殺しは!」
魔法使い「だぁぁい、じょうぶよぉおおぉ
こんな死の町には他に誰も住んでいないし
このオヤジを消せば、他に目撃者はだれもいないから」
武器屋「命だけは!命だけはお助けを!」
魔法使い「人聞き悪いわねぇ、ちょっと永続ラリホー掛けるだけよ
殺しはしないわ」
怯える武器屋の店主に、完全に目がすわっている魔法使い、
勇者の旅に犠牲はつきものである。
◆◇◆◇◆◇ ラダトーム城(謁見の間) ◆◇◆◇◆◇
アレフガルド最大の国、ラダトーム
その謁見の間に現れた勇者を見て、ラダトーム国王ラルフ16世は
顔を輝かせた。
どうやら、随分参っていたようでもある。
勇者が謁見の間に入ると、兵士が部屋の扉を閉める
どうやら余程外に話を聞かれたく無いらしい。
勇者「あ、どもー勇者です
この度はご依頼ありがとうございます」
国王「おお 勇者よ!そなたが来るのをまっていたぞ。」
国王の話によると、昔の勇者が持ってきた光の玉というものを
使い、魔物を封じていたが最近になって出てきた新参の竜王という
輩がそれを奪い去ったとの事。
勇者「ふむふむ、依頼内容は・・竜王の討伐
それと、光の玉とやらの奪還と、とりあえず仕事の件につきましては
一度持ち帰って下調べした上で受けるかどうかの返答を・・・
・・・っておい、なんでお前は扉に鍵を掛けるんだ!」
一度帰ろうとする勇者を止めるかのように、兵士の一人が扉に鍵を掛ける。
部屋の中には兵士が3人+国王が一人、勇者を取り囲むように立っている。
勇者「何のつもりだ?」
狼狽する勇者に国王は打って変わって笑みを浮かべる。
国王「ところで、勇者殿は独り身ですかな?」
勇者「あ、ああ・・だからなんだと言うんだ」
国王「ワシには一人娘のローラいう年頃の娘がおりましてな、
そりゃぁ、亡き母に似て可愛い娘でしてな」
勇者「ローラ姫って、この写真のか?」
魔法使いから受け取った写真を取り出して国王に見せると
国王は嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
国王「おお!すでに写真までお持ちとは
娘も勇者どのも年頃、いかがですかな?」
勇者「いかがって・・まさか?」
国王「おぉっと、そんな話はローラを救出してからじゃったな
実はですな、勇者どのローラは憎き竜王の手によって
浚われて、沼池の洞窟に捕えられておりましてな」
国王「なに、竜王の城までの通り道ではありますし、
手間をおかけする事ではないですし、ちょっと助け出しては
いただけませんかな」
国王は手元の鍵(入り口の扉の鍵のようだ)を弄び、ニヤニヤしながら
勇者の様子を伺う。
国王「魔王退治に向かう勇者様には、激励の品として
いくつかの贈り物をさせていただきますが・・」
勇者「なるほど、ちょっと待ってくれ
おい!お前・・ちょっと来い!」
勇者は3人居る兵士の中で一番気弱そうな顔をした兵士を選び出し、
腕を引っ張って部屋の隅に連れて行く。
兵士A「なんですかな、勇者どの・・」
勇者「ローラ姫って、この写真の通りなんだよな?
この写真が実は昔のモノだとかは無いよな?な?」
兵士A「も、もちろんですとも
ローラ姫様はラダトームの至宝(至宝?)とも呼ばれるぐらいに
そりゃぁ、お美しい方ですとも」
勇者「ちなみに、どんな方なんだ」
兵士A「そりゃぁ、お美しい方です」
勇者「もう少し具体的に言うと?」
兵士A「お美しい方です」
問い詰める勇者に応える兵士の頬を伝う、一筋の冷や汗を
勇者は見逃さなかった。
勇者「・・・・・・・・じゃ、どんな性格の方なんだ?」
兵士A「う"」
言葉に詰まる兵士Aに勇者は金の剣を押しあてる。
勇者「吐け」
兵士A「ちょっと妄想癖・・・いや・・想像力・・いや
感受性が豊かな方で、お転婆・・・いえ
元気な方でして・・・・」
国王「兵士A!」
兵士A「ひゃい!!!」
国王の叱責に兵士Aが飛び上がる。
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