私「2度と月に帰れなくなってしまったんだね」 (106)
オリジナルのSSです
よろしくお願いします
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──
私(バスの窓から雪原を眺めていると)
私(野生の兎に混じって、背の低い女の子が一緒に座り込んでいた)
私(頭にうさ耳をつけている)
私「……」ポカーン
友達「大きな口を開けてどうかしたのですか。もうすぐ博物館に着きますわよ」
私「あ、うん」
私(やがてバスは停まり、前から順番に降りていった)
私(毛利なんとかって宇宙飛行士にちなんだ建物らしい)
──博物館──
館長「館内には宇宙にまつわる色々な展示物がございます」
館長「星座の解説コーナーにスペースシャトルの見取り図……」
館長「右手にある月の石のブースは、館内きっての人気展示物です」
ザワザワ ツキノイシ! ミニイコウヨ!
私「月の石だって。私たちも見にいく?」
友達「あそこの説明書きにこうありますわ。『展示物はレプリカです』と」
私「そうなんだ。……で、どうする?」
友達「冗談はよしてください。偽物に価値なんてありませんわ」
ドンッ
お年寄「おい。横に広がるな。他の来館客もいるんだぞ」
私「あ、すみません」ヨロッ
友達「だ、大丈夫ですか? ……あちらの空いてる所に行きましょう」
──
私(スペースシャトルの見取り図ブースにはひとっこひとりいなかった)
私「月の石と比べると雲泥の差だねぇ」
友達「誰も理解もできないし、そもそも興味もありませんもの」
私「バッサリ言うね」アハハ…
友達「私は野暮用がありますので、あなたはここで少し休んでいてください」
私「ん。野暮用って?」
友達「簡単なことです。私の友人をどついたあの耄碌ジジイに、後ろから蹴り入れて来ますの」ニコ
私「えっ?」
友達「すぐ戻って来ますから。ここでお休みになっていてください」
タタタタ…
私「い、行っちゃった……」
私(前を向いて見取り図を眺めてみる)
私(難しいカタカナを使ったよくわからない用語が並んでいた)
私「……頭のいい人はこれを見てロケットを作れるんだよね。すごいなぁ」
???「それはちょっと違ううさよ」
私(ぽけーっと感心していると、いつの間にか私の真隣に女の子が立っていた)
私(彼女の頭にはうさぎのつけ耳があって──バスの窓から見たあの女の子だった)
???「見取り図だけではそこまでできないうさ。設計図とは違うから」
???「もっと言うならロケットとスペースシャトルも全然違うものうさ」
???「そんなことも知らないで、一体何しにここに来たんだか」ハァ
私「え、えっと」
???「邪魔だよ。本気で勉強しに来た私のような正当な客にもっとよく見せるうさ」
私「……あなたは?」
うさぎ「私はうさぎ」
私「うさぎ?」
私「うさ耳をつけていることは見ればわかるけど」
うさぎ「そうじゃなくて、私は本物のうさぎ」
うさぎ「と言っても丸っこい地球の兎じゃなくて、宇宙から来た月のうさぎなの」
私「……」ポカーン
私(返答に困っていると、月の石のブースの方から破砕音が聞こえてきた)
ガシャーン!
同級生A「きゃーっ! おじいさんが急に倒れて込んで来た!」
同級生B「頭から月の石の展示に突っ込みました! 血がたくさん出てますわ!」
友達「これはきっと貧血の症状ですわ! 誰か救急車を!」
──
私(館内は騒然となり、来館客は全員博物館の外に出された)
私「まさか本当にやるとは……」
友達「私は彼があなたにぶつかったのと同じ力で、背中を押してやっただけですよ」クスクス
私「……」
友達「? あたりを見渡して……何かお探しですか?」
私「うさ耳をつけた女の子を見なかったかな」
友達「まぁ驚きました。バニーガールが趣味だとは」
私「そういうんじゃないよ」
友達「なんなら宿泊先の旅館に呼びましょうか?」
私「だから違うって。携帯取り出さないで!」
私(この友人が監視カメラや他人の目を考慮していないはずがなく)
私(お爺さんの件はまぁ貧血による事故だろうということで処理された)
──旅館──
アハハ クスクス
私「2人揃ってスマホで何見てるの?」ヒョコ
同級生A「YouTubeだよ。推してる配信者の生放送があってさ〜」
同級生B「私たちリアタイ勢だから。修学旅行中であろうとも推し君の放送を見逃すわけにはいかないよね」
私「配信者?」
同級生A「そう。あなただって推してるストリーマーの1人ぐらいいるでしょう?」
私「いや……ネットはあんまりしないんだ。家だとドキュメンタリー番組ばかり見てるから」
同級生A「はぇ〜。お上品だこと」
同級生B「やっぱモノホンのお嬢様は違うなぁ」
私「そ、そう言う意味で言ったんじゃないよ」
同級生B「いいなぁ配信者。私も将来は配信者になりたいよ」
同級生A「わかる〜。ゲームとか雑談してるだけで簡単にお金稼げるんだもんね」
私「簡単なの?」
同級生A「うん。よく知らないけど、多分ね」
私「ふーん」
ガチャ
友達「大浴場。私たちの班の番ですよー」
同級生A「私たち遅れて入るよ。今いいところだから」
同級生B「うんうん。それに私たちがいたら、2人の親密な仲の邪魔になっちゃうでしょ?」クス
私「私たちは別にそう言うのじゃ……」
友達「お気遣いどうもありがとう。ばっちり仲を深めて参りますわ」
私「え、えぇっ!?」
アハハハハ…
──大浴場──
カポーン
友達「いいお湯ですこと」
私「そうだね〜」ウットリ
友達「……あなたと同じ班になれて、私は幸せ者ですね」
私「へっ? ど、どうしたの急に」ドキッ
友達「思ったことをそのまま口に出しただけですわ。私は性格に難ありですから、人を選び人を選ぶのです」
私「そ、それ自分で言うんだ」
友達「理解者が隣にいてくれて嬉しい。これは性悪の私が話す、心の底からの本音ですわ」ニコ
私「……」
友達「どうかしまして?」
私「ううん。なんか熱くなってきたなぁって」パタパタ
友達「大変。のぼせてしまったのかしら。お風呂から上がったらまず水を飲んで……それからアイスを食べに行きましょう」
私「アイス? 1階に売店はあったけど、確かお土産しか置いてなかったはずだよ」
友達「近くにコンビニが建っていました。一緒に買いに出かけましょう」
私「えー? 先生にバレちゃわないかなぁ」
友達「平気ですよ。バレたところで、適当な理由を繕って誤魔化せば良いだけです」
私「……あなたは性格が悪いんじゃなくて、単に不良なんだと思うよ」
友達「あら。それは同じ意味ではなくて?」
アハハハ…
──夜道──
私(ホテルを抜け出し外の道に出た。北海道の夜は秋でも結構寒い)
私(温泉であったまった身体は道中で冷めていたのだけど、せっかく来たのでアイスは買うことにした)
──コンビニ──
うさぎ「いらっしゃいませうさ〜」
私「!?」
友達「これ2つお願いします」スッ
うさぎ「かしこまりました。2点で400円になりますうさ」
友達「う、うさ?」
私(レジの奥から店長らしき男が走ってやってくる)
タタタ… ベシッ
うさぎ「痛いうさ!」
店長「何度も言ってるだろ。せめて業務時間中は変な語尾をつけるなって!」
店長「すみませんお客様。このバイトは……そう、外国人でして」ペコペコ
友達「い、いえ」
うさぎ「語尾をつけるなと言われても、この語尾は外せないものうさで」
店長「お前それ次やったらクビだからな?」
うさぎ「はいうさ……あっ」
ビキビキビキ…
友達「あの、本当にお気になさらず。もう帰りますので。行こう」グイ
私(ドアの前で振り返ると、うさ耳の女の子は店長に鬼の形相で怒鳴られていた)
──翌日──
私「……ふぁーあ」
私(目を覚ますと起床時間の1時間も前だった。周りのみんなはまだ眠っている)
私(広縁で身体を伸ばしていると、窓から見える砂浜に女の子の人影があった)
私(頭には見覚えのある特徴的な2つの突起がついている)
──砂浜──
うさぎ「はぁ。またクビになった……」
私「おはよう」ザッ
うさぎ「きゃあっ!?」ビクッ
私「ごめん。驚かせるつもりはなかったんだけど……」
うさぎ「うさぎはストレスに弱いうさよ! あんた誰うさ!」
私「誰って、昨日博物館で会ったでしょ。コンビニでアイスも買ったし」
うさぎ「いちいち人間の顔なんて覚えてないうさよ」
私「そうなの?」
うさぎ「そうなの。逆に人間のあんたらはうさぎの顔の区別がつくかって話」
私「そういう話なのかな」
うさぎ「そういう話なの」
うさぎ「で、何の用うさか?」
私「私、東京から修学旅行で来た高校生なんだけど、集合時間までまだ時間があって」
うさぎ「東京なのに北海道が修学旅行先?」
私「都内の高校の全てが京都に行くわけじゃないよ」
うさぎ「ふーん。まぁいいや。要するに暇つぶしに私のところに来たってことね」
うさぎ「なら似たもの同士うさ。私もバイトをクビになって、散歩で気晴らししていたところうさから」
私(”うさぎ”は海を見つめる)
ザザーン…
私「……冷たそうな海。もしかして泳ぐつもり?」
うさぎ「まさか。波の音を聞きにきただけうさ」
私「波の音?」
うさぎ「……ねぇ。潮の満ち引きがどうやって起こるか、あんたはその仕組みを知ってる?」
私(カラーコンタクトだろうか。彼女の赤い瞳が私をじっと捉えた)
私「知らない」
うさぎ「月に引力があるからうさ。つまり、月が地球の海を引っ張っているわけうさね」
私「そうなんだ。博識だね」
うさぎ「……”本物”とは得てしてそういうものうさ。本物だけが他者を引きつける引力を持つものだから」
私「は、はぁ」
うさぎ「昨日行った博物館は、見取り図の説明書きは丁寧だったけど、そういう意味じゃ最悪」
うさぎ「月の石の偽物なんて飾って。月に対する冒涜も良いところうさよ」
私「……。あなたは月のことが好きなんだね」
うさぎ「もちろん。故郷だから。はぁ、早く月に帰りたい」
私「故郷? あそっか、宇宙から来た月のうさぎだから」
うさぎ「思い出した。あんた昨日のスペースシャトルの展示を見るのを邪魔してきた奴うさね」
私「邪魔するつもりはなかったんだけど」
うさぎ「月に帰るためには月まで行く乗り物が必要。私はスペースシャトルを作るための勉強をしていたうさよ」
私「そっか」
うさぎ「バイトをしていたのもそれが理由。スペースシャトルの開発には膨大なお金が必要だから」
うさぎ「なのにクビになって……地球は嫌なところうさ。私はいつになったら月に帰れるんだろう」
私「……よかったら、詳しく話を聞かせてよ」
うさぎ「え?」
私「月ってどんなところ? どうして月のうさぎのあなたが地球にいるの?」
うさぎ「……!」
私(うさぎは嬉しそうに身の上話を語った)
私(月の一般家庭で育ったこと。4人兄妹で自分は末っ子だということ)
私(ある日かくれんぼをしていたとき、脱出用ポットの緊急作動ボタンを誤って押してしまい)
私(地球に着陸してしまったのだということ……)
ザザーン
うさぎ「ふぅ。久しぶりに自分の話をしたからつい饒舌になっちゃったよ」
私「ふふ。色々話してくれてありがとう」
うさぎ「……初めてうさ。話を中断せずに最後まで聞いてくれた人間は」
うさぎ「今まで出会ってきた人間は、みんな私を偽物だと決めつけてきたうさから」
うさぎ「あんた、良いやつだね」ニコ
私「……」
うさぎ「それか単なるおバカさんかのどっちかうさ」
私「褒められてるんだか、貶されてるんだか」
アハハハ…
私「……さてと。そろそろ戻らないと」
うさぎ「いい暇つぶしになった。楽しかったうさ」
私「ふふふ。こちらこそ」
私(去り際に、ふと頭をよぎったことがあった)
同級生B『私も将来は配信者になりたいよ』
同級生A『ゲームとか雑談してるだけで簡単にお金稼げるんだもんね』
うさぎ『私はいつになったら月に帰れるんだろう』
私「……あなたは」
うさぎ「?」
私「もしかしたらコンビニのレジ打ちよりも、配信者に向いているのかもしれないね」
ザザーン…
うさぎ「配信者?」
私「親しみやすい感じとか、お喋りだってすごく上手だし」
私「配信なら話を中断されることもない。あなたならきっと人気者になれるよ」
うさぎ「……」ポカーン
私(手を振ってうさぎと別れる。もちろん本音を言ったのだけど、特別深い意味はなかった)
私(去り際に見た彼女の瞳が、炎のようにより赤く冴えていたことをよく覚えている)
──
私「……」ボーッ
友達「あなたはバスから窓の外を眺めるのがお好きですね」
私「え。あぁ、うん。ぼーっとするのが好きだから」
友達「遠回しに構って欲しいとお伝えしたつもりなのですが」ツン
私「わっ。ふふ、ごめんごめん」
ブロロロロ…
私(窓から雪原が見える。うさぎの姿はどこにもない)
私(彼女は言っていた。『本物だけが他者を引きつける引力を持つ』と)
私(しかし、それは本当のことだろうか)
私(レプリカの月の石の周りにも、たくさんの人だかりができていたように見えたけれど)
私(視線を上げるとまだ青白い空に、うっすらと丸い月が浮かんでいる)
私(うさぎの姿はどこにもない)
──東京・自宅──
私「ただいまー」ガチャ
父親「おかえりなさい! マイ・スイート・エンジェル!!」バッ
私「テンションたか」
父親「高くもなるさ。最愛の娘が無事に帰ってきてくれたんだから!」
私「心配性がすぎるよお父さん」
父親「大丈夫だったか。街でへんな輩にナンパとかされなかったか?」
私「あはは、何言ってるのお父さん。私まだ高校生だよ? 子供をナンパする大人なんてこの地球に存在しないでしょ」
父親「あぁ……お前のそういうところがとてつもなく可愛くて、とてつもなく心配なんだよなぁ」
私「?」
父親「お前が修学旅行に行っている間、NHKで面白いドキュメンタリー番組をやってたんだ。よかったら一緒に録画を見ないか?」
私「ありがとう。後で観ようかな。今は別の予定があるから」
父親「帰ってきて早々どんな予定だい?」
私「先輩のところにお土産を届けに行くの。それじゃ」
──
先輩「はい。提示いただいた納期で構いません。楽曲のサンプルを添付しましたのでご確認ください」
先輩「それと1度対面でお話させて欲しいのですが、平日は学校がありまして……今月の土日のどこかでお時間いただけますでしょうか」
先輩「ありがとうございます、承知しました。当日はよろしくお願いいたします。失礼します」ピッ
トントン
先輩「?」
私「先輩。お久しぶりです」ガチャ
先輩「これは驚いた。しばらく見ないうちに君は空き巣に転向したんだね」
私「ご冗談を。先輩のお母さんに聞いたら入って良いって言われたんです」
先輩「ふふふ。おや、その包み袋は?」
私「お土産です。先輩甘いもの好きでしたよね。色々買ってきたのでどうぞ食べてください」ガサッ
先輩「ありがとう姫。これで作曲活動も捗るってものだよ」
私「……さっきの、仕事のお電話だったんですか?」
先輩「うん。Vtuberの中の人が私の作ったMADを気に入ってくれたようで……おっと、中の人なんて言っちゃいけないな」
私「うふふ。聞かなかったことにします」
先輩「助かるよ。これでおまんまを食っていく予定なんでね」クスクス
ギィ
私(先輩は椅子を半回転させて私に向き合った)
先輩「君は優しいね」
私「え?」
先輩「私は音楽部の後輩に嫌われているから、誰も私にお土産を届けに来ないだろう」
先輩「そのことを見越して、演劇部である君が、いの一番に駆けつけてきてくれたんだから」
私「……」
先輩「これは嫌味じゃないよ。本当に感謝しているんだ。君は心優しい性格の良い子だ」
私「みんな、先輩のことを誤解しているんだと思います」
先輩「どうかな。別にどちらでも良いことだけど。私も私のことが嫌いだから……」ペリペリ
モグモグモグ
先輩「んー懐かしい味。去年食べたぶりだ。名前はなんと言ったかな」
私「月寒あんぱんです」
──
私(その夜。お父さんと一緒にドキュメンタリー番組を見た)
私(特集されていたのは日本のとある高名な画家で、彼のプロフィールはまさに画家としての王道を往くものだった)
私(国立の芸術大学を出て、100年も前からある由緒正しい賞を受賞し、現在は大学の講師を務めながら芸術活動に勤しんでいる……)
私(番組の最後は、ネット上で活動するイラストレーターに対する彼の批評で締め括られていた)
画家『SNS上に蔓延る似非イラストレーターは、近年増加の一途をたどっています』
画家『私は彼らを芸術家だとは認めていません。彼らが人気を得るために使う手段は、決して美しいと言えるものではないからです』
画家『人気作品のタグを利用した二次創作。センティブ要素で閲覧数を稼ぐ漫画家。実写もろくに描けない作者によるブサイクなデフォルメエッセイ』
画家『どれも単純な画力に則った評価ではありません。そんな奴らがアコギな手段で人気を集め大金を稼いでいる』
画家『美術の本懐を著しく損なっていると言わざるを得ません』
画家『偽物の跋扈により、本物が肩身を狭くする今の世の中を、私は嘆き憂いているのです』
キンコンカンコーン
担任「悪いな。こんな時間に呼び出してしまって」
私「いいえ。私に何か用でしょうか?」
担任「簡単な確認だよ。修学旅行前に出してもらった進路調査表に変更の意志はないかってだけの」
私「なるほど。それならば変更の意思はありませんよ」
担任「そう。聞きたかったのはその一言だけ。ありがとう。わざわざ呼び出すほどのことでもなかったな」
私「うふふ、いえいえ」
担任「……舞台役者、声優、モデル。お前ならきっと、どの夢も叶えることは容易いだろう。親が女優なんだから」
私「?」
先生「あぁ、ごめん。なんだか嫌味な言い方になっちゃったな」
先生「苦学生だった自分の境遇を思い出して、お前にに嫉妬しているのかもしれない」
先生「貧乏人だから。”本物のお嬢様”を目の前にすると緊張で口が滑ってしまうんだよ」
私「……。失礼します」
ガララララ バタン
担任「……」
副担任「隣で聞いていましたよ。先生ったら相変わらずあの子のことが嫌いなんだから」ケラケラ
担任「嫌いは嫌いだけど……それ以上に現状のおかしさについて嫌気が差ているだけさ」
副担任「ん。おかしさって?」
担任「だってそうだろう。お嬢様の多いこの女子校の中でも、あいつの家が1番お金持ちなのに」
担任「俺みたいなのが彼女の進路を指導する立場にあるだなんて。こんなの矛盾しているよ」
私(教室に戻ると、いつもの2人組が肩を並べてスマホを見ている)
私「何見てるの?」
同級生A「YouTube。といっても今日は推し君の配信じゃないんだけど」
同級生B「面白い新人さんが現れたんだ。見てよ、可愛いよ」
私「新人さん?」
うさぎ『こんうさ〜』フリフリ
私「!?」
うさぎ『この間の初配信がバズった(?)らしくてものすごく大勢の人に見てもらえてるみたいうさ』
うさぎ『私はただ実話を話しただけなんだけど……キャラ設定が固まってて偉いってコメントをよくいただいているうさね』
うさぎ『これからも配信を頑張っていくうさ。スペースシャトルで月に帰るのが夢なので、応援よろしく!』
同級生A「あはは。おもしろーい。不思議ちゃんだよねぇ」
同級生B「なのに宇宙トークはガチなんだもんね。そのギャップも好感度上がるわぁ」
私「……」ポカーン
同級生A「どうかした?」
私「ううん。ちょっと驚いただけ」
同級生B「その割には……なんだか嬉しそうな顔をしてるけど」
私「えっ。そうかな。えへへへ……」
同級生A「こんな清楚な性格して、バニーガールが性癖なのかな?」コソ
同級生B「この子はこの子で不思議ちゃんだからね……」コソ
──帰り道──
友達「今週の土曜日は十五夜ですわね」
私「十五夜。へぇ、今年まだだったんだ」
友達「一緒にお月見しませんこと? 私の庭でお餅でも食べながら夜涼みと洒落込みましょう」
私「うん、いいよ」
友達「そうですか……うふふ」
私「? どうかしたの?」
友達「楽しみだなぁと。それに、あなたと初めに出会ったのも、去年の今頃だったなと思い出しまして」
私「あー。そういえば秋の出来事だったねぇ」
──回想・音楽室──
私『失礼します』ガチャ
先輩『おや。また君か』
私『えへへ。演劇用の小道具をお借りしたくて……』
先輩『もちろんだよ美しい嬢さん。君のためなら私は喜んで小道具貸出部に転部しようとも』
私『もう。先輩ったら』
アハハハ…
先輩『それで、今日は何をお貸しすればよろしいのかな?』
私『良ければタンバリンを1つ。竹取物語の演目で使いたいんです』
先輩『かぐや姫でタンバリン?』
私『はい。月に見立てるんですよ』
先輩『えぇ……まぁいいや。それなら音楽室Bの方にあったと思うよ。今別チームがそっちで活動している』
私『? 同じ部活なのに別々の部屋で活動を?』
先輩『色々あるのさ。派閥みたいなのがさ』
ガチャ
私『失礼します……わっ』
友達『……演奏中に入ってくるとは不躾な方ですね。どなたかしら?』
私『あ、演劇部の1年です。タンバリンをお借りしにきました』
友達『私も1年よ。タンバリンなら隅の段ボールに入っていたと思いますわ。勝手に取っていってください』
私『ありがとう。……ええと』
友達『? まだ何か?』
私『いえ、その……綺麗な曲ですね』
友達「え?」
私『こんなに美しいピアノを、私は初めて聞きました』
友達『!!』
私(彼女の青い瞳が、宝石のようにまたたいた)
友達『……お世辞なんて良いのに。クラシックなんて若い方に魅力がわかるものではありませんわ』
私『若いって、私たち同級生でしょ?』クスクス
友達『……』
私『それじゃあ借りします。明日にはお返しできると思うので』
友達『つまり……明日もここに来るってことですね』
私『? はい』
友達『そう。他に借りたいものがあったら、次からは部長を通さなくて良いですわ』
友達『直接私に聞きに来てください』
──
──自宅──
私(自宅に戻ると、リビングには誰もいなかった)
私(リモコンでテレビをつける。民放のクイズバラエティ番組がやっていた)
私(確か、お父さんがプロデューサーをしている番組だ)
ブチッ
私(間も無くテレビが消える。音がした方を振り向くと、お父さんがコンセントを握りしめていた)
父親「……」ハァハァ
私「お父さん。帰ってきてたんだ」
父親「お願いだから、こんな低俗な番組なんて見ないでくれ……」
私(お父さんは真っ青な顔で脂汗をかいている)
──十五夜の日──
私(土曜日。友達の家に招かれ、大きな庭にある白い椅子に腰掛けた)
私(夏用のものらしく、側には畳まれたパラソルが置かれている)
私(あいにく雲が多くて、満月はまだ顔を出していない)
友達「お汁粉を作ってきましたわ。どうぞ召し上がれ」
私「わぁ。ありがとう。いただくね」
モチモチ
友達「それにしても知りませんでした。あなたの好物が甘いものだったなんて」
私「? 甘いものは普通に好きだけど、どうして?」
友達「旅館の売店で目に入ったお菓子を片っ端からカゴに詰めていたじゃないですか」
私「あぁ……あれはお土産用だから」
友達「お土産? あんなにたくさん?」
私「うん。どれも美味しそうだったから全部買って渡してきちゃった」
友達「……」ジト
私「ど、どうしたの」
友達「いいえ。私には1つもくれなかったなぁと思いまして」ツン
私「えぇ……そりゃあだって同じ場所に旅行しに行ったわけだし」
友達「それで、あなたからお土産をもらったその幸運な人物とは誰ですの?」
私「お互いによく知ってる人だよ。音楽部の元部長さん」
私(友達の表情が曇る)
友達「……まだ彼女なんかとつるんでいましたの?」
私「ねぇ。先輩はみんなに思われてるような悪い人じゃないよ」
友達「善人悪人の話をしているのではありません。品を欠いていると申し上げているんです」
私「品?」
友達「彼女は流行のVtuberの声素材でMADを作って売名をしたような人物ですよ」
私「ネットには詳しくないんだけど……それって悪いことなの?」
友達「ですから良い悪いの話ではないのです。強いて言えば邪(よこしま)。彼女は邪道を往っています」
私(彼女の口調は、この間見たドキュメンタリー番組の画家とそっくりだった)
友達「彼女の行いは由緒ある音楽部の看板に泥を塗る行為です。実家から早く出たいのか、自分の力でお金を稼ぎたいのか知りませんけど」
友達「本物の音楽家が取っていい手法ではありません。加えて彼女はVtuberにこれっぽっちの興味もないのです。ジャンルは違えど、同じ作曲家を目指す者として心底軽蔑しますわ」
友達「目先の利益に囚われて……あの人は”何か大切なものを失っています”」
私「部長に対してそんなふうに言わなくても」
友達「彼女はもう部長じゃありません。今の音楽部部長は私です」
私「……」
友達「こほん。ごめんなさい」
私「いや……私の方こそごめん」
私「音楽に真剣に取り組む2人の、音楽に対するスタンスのぶつかり合いなんだから、私が口を出す話じゃないよね」
友達「……!」
私「? どうしたの?」
友達「……ふふふ。私はきっと、あなたのそういうところに惹かれたんでしょうね」
私「ひ、惹かれたって……」
友達「友達として、これからもお慕い続けますわ」ニコ
私「う、うん」ドキドキ
ビュオオオ
私(風で雲が動いて丸い月が顔を出した)
私(昔の人は満月を見て、兎が餅をついている姿が見えたという)
私(私の視力が悪いせいだろうか)
私(月のうさぎはどこにも見当たらない)
──数日後──
父親「次の連休なんだけど映画でも見に行かないか? おすすめのドキュメンタリー映画があって」
私「うん。良いよ」
父親「そうか! 今からママも誘ってくるよ」タタタ…
私「映画か……そういえば学生証ってどこにあったっけ」
私(制服の胸ポケットを探ってみる。次にカバンのサイドポケット。机の引き出し……)
私「おかしいなぁ。どこにもない。修学旅行に持って行ったところまでは覚えてるんだけど」
私「……あっ」
父親「おまたせ。お母さんは風邪気味だからパスだって。……どうかしたの?」
私「学生証、修学旅行の時に行った博物館で、人とぶつかった時に落としたかもしれない」
父親「え。そうなの?」
私「うん。他で無くすタイミングなかったと思うし。明日担任の先生に相談しないと」
父親「ふむ。……良い機会だ、北海道に旅行しに行こうか」
私「へ?」
父親「そうと決まれば新幹線と船の予約を取って。いや飛行機の方がいいか……」ポチポチ
私「え、いやでも、私この間行ってきたばっかりだよ?」
父親「別に良いじゃないか。楽しかったんだろ? それに娘がどんなところを旅行したのか、親としてもすごく気になるし」
私「全く。そっちが本音でしょ」
父親「バレたか」
アハハハ…
──
私(再び北海道にやってきた。季節は若干冬に近づいて羽織る上着も1枚増えた)
父親「北海道はでっかいどう!」バッ
私「うわぁ」
父親「これ昔からやってみたかったんだよぉ。……おや?」
プルルルル
父親「もしもし、ママ。どうしたの」
父親「どこって北海道だけど……え、だって風邪気味だからやめとくって」
父親「映画と旅行じゃ話が違う? 娘を独り占めするな? いや別にそんなつもりじゃ……」
私(電話は長引きそうだったので、私は1人博物館へと入って行った)
──博物館──
館長「ご来館ありがとうございます。館内には宇宙にまつわる色々な展示物が……」
私「すみません。学生証の落とし物ありませんでした?」
館長「え? もしかして……この前修学旅行で来てくれた学校の生徒さん?」
私「はい」
館長「そうか。学生証なら落とし物ボックスに置いてあるよ。少し待っていてね」
ガサゴソ
館長「もう数日したら学校に電話しようと思っていたところだったんだ。忙しくて手が回らなくて。悪かったね」スッ
私「いえ。ありがとうございます」
私(横目で月の石ブースを見ると、透明のケースの代わりにテープが石の四方を囲っている)
館長「あれね。まだケースが届かなくて、不恰好だけどああいう形で展示しているんだ」
私「ごめんなさい……」
館長「? 何が?」
私「いえ……でもテープだけだと、盗難とかが少し心配ですね」
館長「館内には監視カメラもあるから。それに正直言って、盗られたところで大した損害にはならないし」
私「レプリカなんでしたっけ」
館長「うん。あの石が本物だった頃に同じ事故が起きていたら、今のような飾り方はできなかっただろうね」
私「本物だった頃?」
館長「そうだよ。この博物館は当初、本物の月の石を飾っていたんだ」
私「へぇ……」
館長「かなり昔の話だけど。でもその本物を飾っていた時代のお陰で、今でもこの博物館は賑わいを見せているわけだ」
私「本物の月の石はどうしたんですか」
館長「もちろん、売ったんだよ」
私「どうして?」
館長「どうしてってそりゃあ、お金が欲しかったから。あはは、それ以外に何があるんだい?」
──旅館──
父親「おー、ここがお前の泊まった旅館か〜」
私「お父さん。恥ずかしいからあんまり騒がないでよ」
父親「ひっく。いいところじゃないか〜」グビ
私「手に持ってるそれ……ビールなんて頼んだの? お父さんお酒弱いのに」
父親「ちょっとぐらい平気平気!」
私「もう。水買ってくるから、もうそれ以上飲まないでね」
私(ドアを開けて廊下に出る。1階に自動販売機があったはずなので、コンビニまで行く必要なないだろう)
──1階──
ガコンッ
私「3本ぐらいあれば大丈夫かな」
私「……ん。あれは」
──ラウンジ──
うさぎ「収益化も通ったしメンバーシップ数も順調。あとは各種カードを作って……」カタカタ
私「久しぶり」ヌッ
うさぎ「きゃあっ!?」ビクッ
私「ごめん。驚かせるつもりはなかったんだけど」
うさぎ「嘘つけ! 今回ばかりは確信犯うさ!」
私「えへへ。バレたか」
うさぎ「ってそんなことより、どうしてあんたがここに!?」
私「忘れ物を取りに来たんだ」
うさぎ「わ、忘れ物1つで東京-北海道間を移動するなんて……察してはいたけどやっぱとんでもない金持ちうさ」
私「あなたこそどうしてこの旅館に?」
うさぎ「それは、ここが私の配信拠点だからうさ!」
私「配信拠点……そうだ、あなた配信者になったんだよね」
私「クラスメイトにも大好評だったよ。私もちょっとだけ配信を見せてもらったんだ」
うさぎ「な、なんだか照れるうさね」テレテレ
私「拠点ってことは、ここに住んでるってこと?」
うさぎ「そんな感じ。旅館の310号室を借り続けているうさ。昔の文豪がよく使った手だね」
私「よく知らないけど、それこそすごくお金がかかるんじゃないの?」
うさぎ「まぁかかるけど……あの海岸は私が落ちてきたところだし、そこを望める場所に住みたかったから」
私「ふーん?」
うさぎ「それに、綺麗な部屋にいるとやる気も上がるしね」
私「とにかく配信は順調ってことだね」
うさぎ「順調も順調。スパチャって知ってるうさ? あれって頭おかしいぐらい儲かるうさ」
うさぎ「一瞬でコンビニで丸1日働いた時と同じ金額が舞い込んでくるんだから」
私「へぇ。今ってそんなのがあるんだ」
うさぎ「聞いてほしいうさ。あれから色んなことがあって……」
私(うさぎは近況について様々なこと話してくれた)
私(機材への投資のこと、毎日配信する精神的な疲労のこと)
私(同業間のギスギスした話。トレンドに乗っかることの重要性)
私(そして何より、配信が楽しいということ──)
うさぎ「今までもお喋りは好きだったけど……身の上話になると必ずツッコミを入れられてきたうさ」
うさぎ「だけど配信なら私の話を最後まで黙って聞いてくれる。私の話に興味を持ってくれる」
うさぎ「それが何よりも楽しいし嬉しいんだ」ニコ
私「うふふ。そっか」
うさぎ「……あんたのお陰うさね」
私「え?」
うさぎ「砂浜で会ったあの時、あんたが配信者を勧めてくれてから、私の人生は180度変わったから」
私「……」ポカーン
私(私は驚いてしまった)
私(彼女がまるで、”何もかも全て終わった”みたいな話し方をするものだから)
うさぎ「本当は100万ぐらいポンと渡してやりたいところなんだけど、金持ちのあんたにはそんなのお小遣い程度にしかならないうさよね」クスクス
私「……それは、冗談でも言ったらダメなことだと思うよ」
うさぎ「?」
私「だってそのお金は、あなたが月に帰れることを願ってファンの人から募ったお金なんだから」
私「私に渡したり贅沢するためのお金じゃないでしょう?」
私(うさぎは虚をつかれた感じで赤い目を丸くして──それから何も言わなかった)
私(手に持った天然水が滴る。お父さんのことを思い出し、私は急いで部屋に戻った)
──部屋──
私(部屋の電気はついてない)
私(月明かりだけが窓から降り注ぐ部屋の中、お父さんはベッドの隅に腰掛けている)
私(テレビの画面が割れている。投げつけたと思われるビールの空き瓶が床の上を転がっていた)
父親「……俺の番組がやっていたよ。当然だ。全国区なんだから」
父親「テレビの心配ならいらない。こんな旧型の24インチ、何台だって弁償できるさ」
父親「善良な視聴者から巻き上げた汚い金でな」
私「……」
父親「なぁ我が娘よ。クイズ・バラエティがどうやって莫大な収益を得ているか知っているか?」
私(お父さんは酔うと、必ずと言っていいほどこの話をする)
父親「問題の中にステマを混ぜるんだよ。今年放映された誰々主演のラノベ実写化映画は何かと出題して」
父親「正解と称して堂々とその題名を画面いっぱいに映し出す。視聴者は解答を考える分だけ頭を使うから、記憶に残りやすいんだ」
父親「普通のCMなんかよりも何倍も効果がある。だから出版社や映画配給会社もその分金を弾むのさ」
父親「観光名所や人気ファミレス店の名前当てクイズを出したりもする。あれは相当儲かるぞ、関係各所からいくらでも搾り取れる」
父親「クイズ全問正解の景品に有名店のスイーツを出して、有名店から広告料をせしめるのもよく使う手だ」
私「……」
父親「他の局がどうやってるかは知らない。でも少なくとも、俺の担当しているあれはそういう類の番組なんだ」
父親「視聴者の皆を口コミの中継機としか思っていない、人間の屑のやる番組だよ。昔の俺が今の俺を見たら迷わず顔面をぶん殴るだろうな」
父親「……でも、俺が何よりも許せないのは」
父親「”俺は何も失っていない”と言う部分なんだよ」
父親「俺はドキュメンタリー番組を作るためにテレビ局に入社した」
父親「でも思うようにはいかず、挫折し、夢の道は断たれた……」
父親「にもかかわらず、俺は何も失っていない。むしろ得たものだらけだ」
父親「巨万の富を得た。社会的地位を得た。女優と結婚できた。何よりお前という最高の娘がいる」
父親「俺は何も失っていない。俺は本物になれなかったのに。偽物のテレビマンなのに」
父親「なんでだ……どうして……」
私(お父さんは俯き、嗚咽混じりの泣き声を上げる)
私(私は隣のベッドに入り込んで、そのまま就寝した)
──翌日──
父親「昨日は強盗にでも入られたのか? 空き瓶が散乱しテレビまで割れているぞ。それに頭も痛い」
私「全部自分でやったんでしょ。はいお水」
父親「そうか、俺はまた酔って……ありがとう。いただくよ」
ゴクゴク
父親「テレビの件について旅館の人と話してくるから、適当に時間を潰していてくれ」
私「うん。わかった」
──310室──
私(うさぎに別れを告げるため、借りていると言っていた310室の前までやってきた)
私(ノックしようとドアに近づくと、配信中なのだろうか、うさぎの声が聞こえる)
私(私はその場で耳を澄ませた)
うさぎ「わぁ〜。赤スパありがとううさ〜。このお金は大事に使わせてもらううさよ!」
うさぎ「でもまだまだスペースシャトル建造には費用が足りないうさっ」
うさぎ「これからも私のことを応援してくれると嬉しいうさ〜♪」
──東京・先輩の家──
先輩「こちらこそお世話になりました。また一緒にお仕事させてください。それでは」ピッ
トントン ガチャ
私「こんにちは」
先輩「やぁ姫。今日は何のご用で?」
私「旅行に行ってきたんです。お土産をどうぞ」
先輩「……目の錯覚だろうか。月寒あんぱんに見えるんだけど」
私「月寒あんぱんですから」
先輩「???」
──
先輩「あははっ。君の天然ギャグはいつも笑えるねぇ」ケラケラ
私「天然なのはどちらかというとお父さんの方です」
先輩「その左手に持ってるお菓子も私にくれるのかい?」
私「あ、すみません。これは友達用のです。これから彼女の家に行くので」
先輩「友達? あぁ……」
私「お土産を先に先輩に渡したこと黙っていてくださいね。あの子きっと不機嫌になるから」
先輩「心配しなくても、私が彼女と口を利くことはないよ。仲が悪いって知っているだろう?」
私「仲が悪いっていうか……音楽性の違いがあるということは承知しています」
先輩「そんなバンドの解散理由みたいな。でも、言い得て妙かもね」クス
ギィ
先輩「……彼女はクラシックで私はチップチューン。水と油だ。最初から相容れないんだよ」
私「音楽のことは私にはわかりません。だけど部活外でも避け合っている現状は、単純に悲しいなと思っています」
先輩「私は別に彼女を避けてないけれど……でも、あの子が私に不快感を覚えるのも無理はないと思うよ」
先輩「音楽って枠組みで部活動を1つしか作らない学校側の問題とも言える。水と油を一緒の水槽に入れたようなものだ。分離するに決まっている」
私「……先輩は冷静ですね」
先輩「良くも悪くも現実主義なのさ。私は来年の春からもう社会人なのだから」
私「……」
先輩「それに……あの子は決して打ち込みという音楽ジャンルそのものを見下しているわけでない。彼女はそんな馬鹿な子じゃない」
先輩「私が行っているセルフプロュースのやり口が汚いと言っているだけだ。潔癖なんだよ。彼女は」
ペリペリペリ
先輩「現部長の進路は、確か音大への進学だったね。顧問が話していたのを小耳に挟んだことがある」
私(あんぱんの包みを真っ直ぐ縦に切り裂く)
先輩「賢い選択だ。もしも学生の身分から卒業し、このままの状態で社会に出たならば」
先輩「彼女は間違いなく飢え死にするだろう」
モグモグ…
私(咀嚼するたび、耳に光るイヤリングが小さく動く)
私(先輩は一口がじったあんぱんを、破ったビニールの上にぞんざいに置いた)
先輩「Vtuberに会って来たよ。見るに堪えない醜いデブだった」
先輩「彼に焼肉をご馳走になったんだ。なんとかって店のなんとかっていう純正ブランド牛」
先輩「皮肉だね。偽物ばかりの会合で、あの牛の死体だけが本物だったのだから」
──放課後・教室──
同級生A「昨日のうさぎちゃんのゲーム実況見た? 同接15万人だって!」
同級生B「へぇ、そうなんだ……私もう、あの子追ってないんだよなぁ」
同級生A「え、どうして?」
同級生B「出始めの頃はよかったけど……最近ちょっと調子に乗りすぎじゃない?」
同級生A「売れてきたからと言ってアンチに転身しちゃうのは良くないなぁ。そういうのネットの用語で嫌儲って言うんだよ」
同級生B「そうじゃなくて……だってさ、この間の配信見た?」
同級生B「コンビニで働く人のことめっちゃ馬鹿にしてたじゃん。私もコンビニバイトだから正直ムカついたって言うか……」
同級生A「気にしすぎだよ。配信を盛り上げるために口が滑ることぐらいあるって」
同級生B「でもほら、例えば推し君は絶対にああいう失言をしないでしょ。常に思慮深くて視聴者に対しても敬意を払った発言をしてる」
同級生A「あんたそんなところを見てたんだね。私は単に登録者数多くてイケボだから推してるだけだけど……」
同級生B「彼みたいな人を本物の配信者っていうんじゃないのかな」
同級生A「意識高すぎ。本物も偽物もないって。楽しく見れて話題を共有できれば、細かい部分なんてなんでも良いじゃん」
ガラララ
友達「あれ。あなたたち2人だけ?」
同級生B「うん。あなたの愛しの彼女は担任にプリント届けに行ったよ」
友達「あらそう。情報ありがとうですわ」
ガラララ… バタン
同級生B「つ、ついにツッコミすら入れなくなった……」
同級生A「このツイート見て。うさぎちゃん、企業配信者になるんだって」
──職員室──
私「先生。これプリントです」
担任「そうか。今日はお前が日直だったな。ありがとう」
私「はい。それでは失礼します」
スタスタ
担任「……なぁ。この後少し時間あるか?」
私「え?」
担任「今日は良い天気だ。一緒に中庭で散歩でもどうだろう」
──中庭──
私(コの字の校舎に囲まれた中庭の芝生を先生と一緒に歩いた)
私(私は先生に避けられていると思っていたので、この誘いは意外そのものだった)
担任「勉強はどう。授業にはついていけてる?」
私「ええ、まぁ一応」
担任「そうか……いらない心配だったな。お父さんは確か東大出身だったし」
私「親は関係ないと思いますが」
担任「あぁごめん。どうも人のステータスを家庭と結びつけてしまう癖がある。俺の頭が悪い証拠だな」
私「それで、今日は何の御用で?」
担任「俺、来年この学校を辞めるんだ」
私「へぇ……。それは何というか、大変ですね」
担任「今『そんなことを打ち明けられるほど私たち仲良かったっけ』って思っただろ」
私「包み隠さずに言えば、その通りです」
担任「あはは。でもあまり仲良くなかった生徒とこそ、この機会に話しておくべきだって。副担任のやつが言うんだよ」
私「なるほど。それなら確かに私が1番の適任でしょう」
担任「おぉ。結構なこと言うじゃないか」
私「目の前で『本物のお嬢様』なんて皮肉られたんですから、このぐらいは言わせてください」
担任「え? ……あぁ、この間の進路調査票の確認の時の」
私(足を止め、光沢の薄い黒い瞳で先生は私のことを見つめた)
担任「なぁ……本物って何だと思う?」
私「本物?」
担任「例えば、これが壺の話だったら事は単純だ」
担任「真作を本物と呼んで贋作を偽物と呼ぶことに、多くの人は依存ないだろう」
担任「だけど……職業や属性についてはそう簡単にはいかない」
担任「そこに至るまでの手段の潔さを重要視する人も中にはいるからだ」
担任「裏口入学した学生は本物だろうか。枕で芸能界入りしたモデルは本物だろうか」
担任「本物と呼ぶ人もいれば、偽物と呼ぶ人もいるだろう」
私「……」
担任「それらの意見はどちらも正しく、また間違っているとも言える」
私「先生は何が言いたいのでしょう」
担任「別に。単なる雑談さ。散歩なんてそういうものだろう?」
私(先生は再び歩みを進めた)
スタスタ
担任「お前は本物のお嬢様だ。容姿端麗、品行方正、文句のつけようのない模範生徒なのだし」
担任「しかし同時に、お前は偽物のお嬢様でもある。成金マスゴミの汚い金で育ったお前が真のお嬢様のはずがない」
私「……」
担任「真偽とは時に矛盾するものだよ。お前は”皮肉”と捉えたが、その実、俺の言葉はどちらとでも受け取れるのだから」
私「先生は本当、私のことが大嫌いなんですね」
担任「曖昧な基準の中、人は嫌いな人間を偽物と呼ぶのさ」
タタタ
友達「探しましたわよ」ハァハァ
私「あれ。奇遇だね」
友達「奇遇じゃありません。教室で職員室に行った聞き、職員室で副担任から中庭に向かったという情報を得て、ここまでやってきたのですわ!」ズイ
私「そ、そうなんだ。ありがとうね」
友達「今日は部活がないので一緒に帰ろうと思ったのですが……お取込み中でしたか?」
担任「いいや。話は今終わったところだよ」
友達「なるほど。それではごきげんよう先生。さ、行きましょう」
私「うん」
タタタ…
私(振り返ると、先生が大きく手を振っている)
担任「ごきげんよう。また明日」
──
私(本物とは何だろう。偽物とは何だろう)
私(画家は言っていた。偽物の跋扈で本物が肩身を狭くしていると)
私(先輩は言っていた。水と油を一緒の水槽に入れているようなものだと)
私(友達は言っていた。”何か大切なものを失っている”と)
私(お父さんは言っていた。”俺は何も失っていない”と……)
私(日差しの照りつける中庭で、先生のセリフが頭に反芻する)
先生『真偽とは時に矛盾するものだよ』
私(その夜、うさぎの夢を見た)
私(うさぎは満月の中で、家族と一緒に餅つきを楽しんでいる……)
──ビル群──
私(12月。買い物をしに都心に出ると、背の高いビルが並ぶ街中で、うさぎの姿を見つけた)
私(いや、あれはうさぎなのだろうか。ブランド物の服を着込み、1番のトレードマークだったうさ耳がなくなっている)
私(うさぎと私は向き合う形で立ち止まった)
うさぎ「……あんたはいつも、私を驚かせる登場をするうさね」
私「どうしてあなたが東京に?」
うさぎ「あんたネットやらないの? 私はTwitterでトレンド1位を取った女だよ?」
私「そうなんだ」
うさぎ「これからは、企業に雇われて配信することになったうさ」
うさぎ「引っ越し作業も進んでて、あそこにあるマンションにもう決めている」
私(うさぎは後ろのタワーマンションを指差す)
私「……」
うさぎ「勿論あんたの懸念もわかるうさ。企業に入ったら幾らかの取り分を持ってかれてしまうからね」
うさぎ「だけど、企業に所属すればお抱えの税理士が確定申告の相談に乗ってくれるし、誹謗中傷の際の弁護士も企業が雇ってくれて……」
私「月に帰りたいんじゃなかったの?」
うさぎ「──え?」
私「あなたの話は配信についてばかり。違うよ、配信は手段でしょ」
うさぎ「……」
私「目的は月に帰ることだったはずだよ。私があなたの口から聞きたいのは、月に帰る計画がどれだけ進んだかって部分なのに」
うさぎ「……。前に、あんたに言ったうさよね。あんたは良い奴か、それか単なるバカのどちらかだって」
私「? それが何?」
うさぎ「あんたは、後者だったみたいだね。どうして気づかないのかな?」
うさぎ「私が宇宙から来た月のうさぎだなんて」
うさぎ「そんなの、全部嘘に決まってるのに」
私(ビル風が吹く。耳のない彼女の寂しい頭を横風が撫でた)
うさぎ「どうかしてたんだよ。きっとフリーターの自分の境遇が惨めで、幻想の世界に逃げ込んでいたんだ」
うさぎ「現実逃避すると人は宇宙についてネットサーフィンをするものだから。私もその症状にかかっていただけ」
うさぎ「月が故郷だという話も、スペースシャトルが必要だという話も、全部お金稼ぎのための嘘だった」
うさぎ「今ならそれがわかる。この世界のことを正しく認識できる。ふふ、地球が嫌な場所だなんてとんでもない」
うさぎ「ここはとても住みやすくていい星だよ」
私「……」
うさぎ「結果的にあんたを騙してしまったことは謝るよ。私にだって良心のカケラくらいはある。何なら謝礼も──」
私「可哀想に」
うさぎ「……!!」
私(うさぎの表情が一瞬にしてこわばった)
うさぎ「……登録者数50万人の私が、かわいそう……?」
私「あなたは本物の月のうさぎだったのに」
うさぎ「は、はぁ……?」
私「……私たちが出会ったあの日。砂浜で語ってくれたあなたの言葉は、嘘なんかじゃなく全て本音だった」
私「月の石と同じ。博物館の展示は本物だった。でもお金に目が眩んで、偽物に替わってしまった」
私「あなたもそう。魂を売ったんだ。嘘だったんだじゃない。嘘になったんだよ」
うさぎ「……」ポカーン
私「可哀想な月のうさぎ」
私「地球の引力に惹かれて、2度と月に帰れなくなってしまったんだね」
──
私(私には本物がどうとかって話はわからない)
私(ぼーっとした性格で、難しいことはあまり得意じゃないから)
私(何より、問いに対して明確な答えのあるようなテーマだとも思えないから……)
私(私には音楽がわかわない。友達も先輩も、どちらの言い分も正しくて間違っているようにも思える)
私(私には美術がわからない。Twitterで話題になった漫画の単行本を読んだことがある。あの画家には悪いけど、読んでて普通に面白かった)
私(私にはテレビがわからない。お父さんの番組を隠れて見たことがあった。低俗だなんて、少なくとも私は全然思わなかった)
私(私には配信がわからない。だから、うさぎの配信の内容についてどうこう言うつもりは毛頭ない)
私(だけど──彼女が本物の月のうさぎであることを諦めてしまったことだけは、どうしようもなく悲いのだ)
私(偽物にならざるを得なかったことが、可哀想でしょうがないのだ)
私(それからもうさぎは、配信界隈で活躍し続けていると、同級生から度々噂話を耳にする)
私(けれど、私とうさぎが再び顔を合わせて)
私(彼女を驚かせるようなことは、もう起こらなかった)
──回想・音楽室──
友達『他に借りたいものがあったら、次からは部長を通さなくて良いですわ』
友達『直接私に聞きに来てください』
バタン
私『……あの子はああ言っていたけど、部長さんに黙って判断しちゃって大丈夫なのかなぁ』
先輩『呼んだかい?』スッ
私『わっ!?』
先輩『ドア越しに聞き耳を立てていたんだ。彼女の言い分に従って構わないよ。是非あの子と仲良くしてやってくれ』
私『もう。先輩は優しいのに意地悪です』
先輩『もちろん、借り物を口実に君と会えなくなるのは寂しいけれど』
私『ふふふ。格好いいんだから』
アハハハ…
私『口実なんてなくても会いに行きますよ。友達ですもの』
先輩『うん。今度私の部屋に遊びに来るといい』
私『ありがとうございます。楽しみにしていますね。それでは』
スタスタ
先輩『あ、そうだ。君に聞いておきたいことがあったんだ』
私『はい?』クル
先輩『私は2年生だから、来週に修学旅行がある』
先輩『北海道に行くんだ。お土産は何がいいかな?』
私『……。リクエストしても良いんですか?』
先輩『当然だよ』
私『ありがとうございます。それじゃあ……もし、チャンスがあったらでいいので』
先輩『?』
私『兎の写真を撮ってきてくれませんか』
先輩『ん。兎の写真? そんなお金のかからないもので良いのかい?』
私『ええ。兎が好きなんですよ。故郷を思い出すので』
先輩『故郷って?』
私『ここだけの話。私は月からやって来たんです』
私(先輩は少し驚いた表情を見せたあと、得心いったという感じで私のタンバリンを見た)
先輩『そうだった。君はかぐや姫なんだった』
私『はい』シャン♪
先輩『ふふふ。姫には似つかわしくないハリボテの満月に見えるけれど』
私『お言葉ですが先輩。信じ続ければタンバリンだっていつか本当の月に見えますわ』
私『本物も偽物も曖昧なものです。重要なのは本物の可能性を信じる心の力なのです』
先輩『……。君は真面目な良い子だが、同時にちょっとだけ不思議ちゃんだね』
私(太陽が傾いて廊下の窓から夕日が差す。その色は兎の目のように鋭く赤い)
先輩『君はいつ月に帰るのかな。かぐや姫?』
──
──友達の家──
私(新曲を聴いてほしいと言われて、私は友達の家に招かれた)
私(白いエントランスに置かれたピアノの前に、パイプ椅子をおいて彼女の演奏を待つ)
私「……始めますわよ」
私(友達は緊張した面持ちで、白い鍵盤に指を這わせていった)
──
友達「以上ですわ。どうだったかしら」
私「……」
友達「き、気を遣わず本当のことを言って良いんですよ。変に忖度される方が嫌ですわ」
友達「……え?」
私「……」ボロボロ
友達「あなた……泣いているの?」
私「ごめん。い、良い曲だったよ。本当に」ゴシゴシ
友達「感動して泣いてくださいましたのね。私……感無量ですわ」
友達「あなたこそが、あなただけが私の理解者です。あなたと出会えて私は本当に幸せ者です」
ギュッ
私(友達が私を柔らかく抱く。彼女の胸の中で私は泣き続けた)
私(良い曲だった。それは本心からの言葉だ。だけど、泣いた理由は曲に感動したからではない)
私(可哀想だから泣いたのだ)
私(私は音楽には詳しくない。だけど、彼女の作った曲が綺麗だということはわかる)
私(綺麗すぎる。潔癖すぎる)
私(先輩の予言めいた言葉が耳にこだまする)
先輩『もしも学生の身分から卒業し、このままの状態で社会に出たならば』
先輩『彼女は間違いなく飢え死にするだろう』
私(きっと先輩の言う通りだ。この曲は綺麗すぎる。多くの人の心には響かない)
私(だから友達は、いつかきっとこの曲を捨てるだろう)
私(生きるために偽物になる時がきっと来る)
私(それがわかるから、私は泣いてしまったのだ)
──
私(その夜。お父さんと一緒にドキュメンタリー番組を見た)
私(宇宙飛行士がインタビューに答えている)
記者『宇宙空間での暮らしとはどのようなものでしょう』
宇宙飛行士『基本的には実験と軽作業ですね。仕事で行っていますので当然ですが』
記者『仕事以外の時間は何をしているんですか?』
宇宙飛行士『筋トレが多いです。あとは……望遠鏡でお月見をしたりもしましたね』
記者『月?』
宇宙飛行士『はい。私の滞在した宇宙ステーションは、月からそう遠くない場所にありましたから』
記者『なるほど。それで、月にうさぎはいましたか?』
宇宙飛行士『うさぎ? ……あっはっは。そうですね、目を凝らしてよく見てみましたが』
宇宙飛行士『残念ながら、月にうさぎはいませんでしたよ』
私(リモコンの電源ボタンを押す)
私「……嘘つき」
私「いなかったんじゃない。いなくなったんだよ」
私(視線を感じて横を見ると、お父さんが驚いた表情で私を見ていた)
私(私は自室に戻る)
ガラララ
私(窓を開けて、月に手をかかげた)
私「……」
うさぎ『潮の満ち引きがどうやって起こるか、あんたはその仕組みを知ってる?』
うさぎ『月に引力があるからうさ。つまり、月が地球の海を引っ張っているわけうさね』
私(私がいくら手を伸ばしてみても、月は一向に私の身体を引っ張り上げてはくれない)
私(本物の月以上に強い偽物の引力がそれを許さないからだ)
ビュオオオ…
私(もしも私が本当にかぐや姫で、いつか月に帰ることが叶ったならば)
私(あの哀れな友人を、あの可哀想な友達だけは)
私(彼女が偽物になる前に、あるいは本物の死体になる前に)
私(一緒に連れ去ってしまいたいと、私はそう思った)
──数年後・砂浜──
ザザーン
店長「……くそ。本店の奴らめ。フランチャイズ店だからって平気な顔で潰しやがって」
店長「おかげで俺は明日から職なしだ。くそくそっ」
店長「……ん。気晴らしに散歩しにきた砂浜に、変な赤いボタンが落ちているぞ」
店長「爆弾かなんかだったりしてな。ははは」
店長「どうとでもなれだ。押してやる!」
ポチッ
ゴゴゴゴゴ
店長「……な、何だこりゃ」
店長「これは、ロケット……?」
???「ロケットじゃなくてスペースシャトルだよ」ザッ
店長「!?」
うさぎ「スイッチは砂深く隠していたのに、満潮干潮の関係で露出したんだろうね。やっぱり月は偉大だなぁ」
店長「急に後ろから現れやがって。誰なんだお前は!?」
???「はぁ? 私が誰かだって?」
──
???「やれやれこれだから人間は」
???「うさぎの顔も覚えられないうさか」
おわり
お疲れさまでした
見てくださった方、ありがとうございました
よかったら他の作品も見てください
https://twitter.com/sasayakusuri
提督「嫌われスイッチ?」明石「はいっ」
提督「嫌われスイッチだと?」夕張「そうです!」
提督「嫌われスイッチだと?」夕張「そうです!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428849410/)
魔剣転生というスレの作者ですが、断筆する事に致しました。
魔剣転生というスレの作者ですが、断筆する事に致しました。 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1602503948/)
外野の反応に負けてエタった先人たち
彼らの冥福を祈りつつ我々は二の舞を演じない様に注意しよう
このSSまとめへのコメント
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