ウマ娘怪談 (13)

私、怖い話なんて出来ないんだけど……
ああ、でも少し不思議な出来事はあったわ
この前の夕方、マルゼンスキーさんが何人かで並走していたの
とても楽しそうに走っていたし、参考になると思って見ていたんだけど
並走相手の人たちが凄かったの
あのマルゼンスキーさんに今にも追い付きそうな所まで迫っていたのよ
並走相手の人たちも見事な追い込みだったんだけれど、やっぱりマルゼンスキーさんが逃げ切って
それでせっかくだから息を整えているマルゼンスキーさんに声をかけて、並走相手の人たちを紹介してもらおうかなって近付いたんだけど

日が落ちたコースにはマルゼンスキーさん一人しか居なかったのよ

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これ、アタシが体験した話なんだけど…
この前、少しの間風邪引いて寝込んじゃってさ。同部屋のクリークさんがいろいろ看病してくれてたんだけど、ある日夜中にクリークさんがアタシのこと起こして「こっそり寮を抜け出して夜風に当たろう」って急に言い出したんだ。もちろん抜け出したことバレたら怒られるし、アタシはいいって言ったんだけど、クリークさんアタシの手を引いて飛び出して行っちゃって
いきなりそんな事するからアタシも怒ったんだけど、なんか様子が変でさ。顔が真っ青で息を荒くしてたんだよ。それで「何かあったの」ってクリークさんに聞いたら、
ベッドの下から白い手がアタシの足をつかもうとしてた…って
それ聞いてゾッとしちゃってさ。フジ寮長にワケを話して使ってない部屋があるからその日はそこでクリークさんと二人で寝かせてもらったんだ
それで次の日、起きたらクリークさんがいなかったんだ。その時は「ああ、もう部屋に帰ったんだなー」ぐらいにしか思ってなかったから、フジ寮長にお礼言って部屋に戻ったらクリークさんが寝てたんだ。アタシが部屋に入った拍子に起きたから「もしかして二度寝?」ってからかったらクリークさん

「何のことですか…?私は一度も起きてませんけど…?」

…って

あれは俺がちょっとばかし残業して家に帰る途中だったんだ。俺実家がトレセンから近いし、職員寮使ってないんだよな。
で、トレセンから家に帰る道って言うとちょうどトラックの横を通り過ぎてちょっとした藪を超えるあたりなんだが、あそこって夜になると満月の日でも薄暗くていやーな感じなんだわ。
そんな感じのところをいつも通り歩いてたんだが、ふと顔を上げると前の方に黒髪のウマ娘が歩いてるのが見えてな。その子が、なんかをポロッと落としたんだ。

特定の担当はまだいないとはいえ、俺もトレーナーの端くれだしな。大方トレーニングかなんかなんだろうが若い子が夜に暗い道を一人で歩いてるってのも危ないし、落とし物を渡すついでに早いところ寮に戻るように忠告しようと思ったんだ。
で、慌てて落ちてるものを拾って追いかけに行ったんだが、走っても走ってもその女の子に追いつけないんだよな。

……ウマ娘の脚力に人間が追いつけるわけない?……いや、そうなんだけどな……なんというかその時はいけると思ったんだよ。その子だって走ってるけど、ずっと視界には入る範囲にいたしさ。
とにかくひたすら……どうも覚えてる時間から計算すると30分ぐらいは走り続けてた計算になるんだが、どんどん走って、とうとう獣道みたいなところに女の子が入っていくのが見えたから、追いかけようと思って腰まで伸びてる草に手をかけた。

そこで、突然後ろから「こんなところで何をしているんだい?」って声が聞こえたんだ。
びっくりして振り返ったら、なんてーのかな……栗毛?そんな感じの子が腰に両手を当てて仁王立ちしてたんだよ。
その子の顔を見たらなんか急にどっと疲れが出てきてな。いきなりぶっ倒れて、結局後から駆けつけてきたその子のトレーナーの部屋に担ぎ込まれちまった。情けないなぁ……

その子は……なんというか、ちょっと話し言葉が難しい子だったんだが、言っていることを噛み砕くと、なんでも夜の追加トレーニングに励んでたら俺がフラフラ変な方向に向かっていくのが見えたから道を間違えてると思って話しかけたんだと。

俺はその子に教えてもらうまで知らなかったんだが、あの藪の中ってちょっとした崖や沼みたいになってるところもあって危ないから入らないようにってのが入学時に先輩から後輩に伝えられるのが慣例になってるらしいぜ。お前知ってた?
………おいおいマジかよ。教えてよそういうの。泣いちゃうよ?俺。
……え?このままじゃ全然怖い話でもなんでもない?ただ俺が間抜けなだけ?

ああ、すまんすまん。ここからが不思議なところでな?俺が最初に追いかけてた黒髪の子が着てたジャージのデザインに違和感があったからちょっと調べてみたんだが、どうもそのデザインってもう十年も前に廃止になったやつらしいんだよな。
そもそも俺、その子の落とし物を拾ったから追いかけてたはずなのに、その子が落としたのが何だったのか全然思い出せないんだよ。
あれ、一体なんだったんだろうな?

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