魔法使い「主様、持ってきました」魔女「えぇ、ありがとう」 (23)

・オリジナルSSです

・地の文なしで書き進めますが、途中で入れるかもしれません

以上の注意点を踏まえた上でよろしくお願いします
次から開始です

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魔女「使うのはもうしばらく後だから、そこのテーブルに置いといてもらえるかしら」

魔法使い「はい、主様」

魔女「ふぅ……ちょっとひと息入れましょうか」

魔法使い「そろそろそう言うだろうと思って、お茶の準備もしてきてあります」

魔女「あら、気が利くのね……って、どうして湯呑みがひとつしかないの?」

魔法使い「?」

魔女「『?』じゃなくて……あなたの分がないじゃない」

魔法使い「わたしの分?」

魔女「一緒にお茶を飲みましょう?」

魔法使い「わたしは大丈夫です、疲れていませんから」


魔女「じゃあ、言い方を変えるわ。あたしと一緒にお茶を飲みなさい。これは命令です」

魔法使い「わかりました。わたしの湯呑みも持ってきます」

トテトテ

魔女「はぁ……世話のかかる子だこと」

トテトテ

魔法使い「持ってきました。ついでに、お菓子も」

魔女「アイスクッキー?」

魔法使い「はい」

魔女「本当に好きねぇそれ。そんなにおいしい?」

魔法使い「主様が初めてわたしに食べさせてくれたものなので、一番親しみがあります」

魔女「……もう少し可愛げがあればねぇ」

魔法使い「?」


魔女「今日のお茶はなにかしら?」

魔法使い「フレイムハーブの紅茶を淹れてみました」

魔女「フレイムハーブ?そんな希少品、ウチにあったかしら?」

魔法使い「いえ、この前の買い出しの時に見かけたので、主様喜ぶかなと思って買ってきたんです」

魔女「高かったでしょう?」

魔法使い「この前主様から頂いたお金で買えましたよ?」

魔女「……まさか。あなた、今の所持金は?」

魔法使い「? 1Gもありませんけど?」


魔女「やっぱり……あのね、魔法使い。この前あげたお金は、あなたが好きなものを買えるようにって渡したお金なのよ?」

魔法使い「はい、わかっています」

魔女「こうやって二人で頂くものは、あたしが別にお金を渡します。だから、あなたはこのお金で好きなものを買いなさい」

チャリチャリン

魔法使い「またお小遣いもらって良いんですか?」

魔女「『また』ではないわ。生活品にはあたしがお金を出す。そのお金は、あなたのもの。いいわね?」

魔法使い「は、はい……?」

魔女(絶対分かってないわね)


魔女「それじゃ、いただきましょうか」

魔法使い「はい、いただきます」

魔女「コクッ……おいしい。フレイムハーブの紅茶なんて飲んだの、どれくらいぶりかしら」

魔法使い「コクッ……ッ?ケホッ、コホッ!」

魔女「あらあら、大丈夫?」

魔法使い「……渋いです」

魔女「この渋みと香りがいいのよぉ」

魔法使い「……お砂糖、入れてもいいですか」

魔女「もちろんいいわよ。あなたの飲みやすい味で飲みさないな」

魔法使い「それでは、そうさせていただきます」

サラサラサラ

魔女(スプーン三杯は入れすぎよ。まあ、ああ言った手前そう言うわけにもいかないけれど)


魔法使い「……♪」サクサク

魔女(ずいぶんご機嫌そうな顔でアイスクッキーを食べるわねぇ)

魔法使い「………」コクコク

魔女(紅茶の方は魔法使いの口には合わないみたいね。一応砂糖を入れたから飲めないことはない、って感じかしら)

魔法使い「……っ!」ピタッ

魔女「ん?どうかしたの、魔法使い」

魔法使い「……クッキーが、残り5枚」

魔女「そうみたいね」

魔法使い「後は全部、主様の分……」

魔女「そうなの?」


魔法使い「持ってきたアイスクッキー、全部で10枚……それで残り全部だったから」

魔女「ぴったり半分こ、ってこと?」

魔法使い「……」コクン

魔女「律儀ねぇ。食べたいんでしょ?」

魔法使い「………………そんなことは、ないです」

魔女「無理しないで、正直に言いなさい」

魔法使い「……………た、食べたい、です」

魔女「そう、それでいいのよ。あたし相手に遠慮はしないこと、いいわね?その代わり、ダメなことはダメと言うから」

魔法使い「……はい。……………ありがとう、ございます」

魔女「うん、お礼が言えるのはいいことよ」


魔女「さてと、それじゃもうひと頑張りしましょうか」

魔法使い「あの、主様。何かお手伝い出来ることありますか」

魔女「気持ちだけいただいておくわ。あとはあたし一人で大丈夫だから。あなたはもう『お休みなさい』」

魔法使い「―――わかりました。では主様、また明日」

魔女「ええ」

ガチャ バタン

魔女「………さあ、明日までに終わらせなきゃね」


翌日―――


コンコン

魔女「どうぞ、開いているわよ」

ガチャ ゾロゾロ

女騎士「失礼いたします、魔女様。多勢での訪問、ご容赦ください」

騎士たち「………」

魔女「構わなくてよ、いつものことだしね」

女騎士「依頼の物は、用意できているでしょうか」

魔女「もちろんよ。はい、どうぞ。持って行ってちょうだい」

女騎士「ありがとうございます。副官、持ってくれ」

副官騎士「はっ。失礼します、魔女様」


魔女「そっちの副官さん?は、見慣れない顔ね」

女騎士「紹介が遅れました。先日から、わたしの補佐を務めてもらっている副官騎士です」

副官騎士「初にお目にかかります、魔女様」

魔女「堅苦しい挨拶はいいわ。女騎士の副官ということは、これから定期的にここへ来るのでしょう?」

副官騎士「そういうことになります。よろしくお願いいたします」

魔女「ええ、よろしくね」

副官騎士「話は伺っておりましたが、こんな深い森の中で暮らしていると不便ではないですか?」

魔女「色々不便なこともあるけれど、もう慣れたわ。それに、あたしが好きでここに居を構えているのだしね」

副官騎士「もっと王国に近しい場所にも、森はあります。そちらへの転居など、考えてみては?」

女騎士「………」

魔女「―――それは、国の近いところへ移り住んだ方があなた達にとっても都合がいいから、かしら?」

副官騎士「いえ、決してそのようなことは」

魔女「……今のところ、そういうことは考えていないわ。心配しなくても、雲隠れなんてしないから安心してちょうだい」

副官騎士「………気分を害したのでしたら、申し訳ありません」


魔女「それで、次はなにを作ればいいのかしら」

女騎士「宮廷魔術師より、こちらの資料をお預かりしてきました。ご確認の上、用意の方をお願いします」

魔女「どれどれ……」パラパラ

女騎士「いかがでしょうか、魔女様」

魔女「……相変わらず、ね。『あたし一人で作る』っていう前提でこれだけのものを用意しろ、なんて無理難題もいいところよ」

女騎士「王の信頼の現れでしょう。貴女ならばできる、という」

魔女「嫌がらせとしか思えないわ。もしくは、できないことを承知の上であたしを城へ連れ戻す理由付けにでもするつもりかしら?」

女騎士「それは―――」

副官騎士「女騎士様、横から失礼します。魔女様、今の発言は王国への敵対発言と取ってもよろしいでしょうか?」

女騎士「おい、よせ」

魔女「さあ、どうかしらね?少なくとも、王国に対していい印象を持っていないことは確かよ」


副官騎士「敵対発言を確認した場合、問答無用でその身を拘束せよとの王からのご命令です。―――くれぐれも、発言には細心の注意を払っていただきたい」

魔女「はいはい、わかったわよ」

女騎士「副官、あまり魔女様を威圧するのもよくない。お前のその態度で、魔女様が王国への不信感を募らせかねん」

副官騎士「はっ、すみません女騎士様。出過ぎた真似でした」

女騎士「失礼しました、魔女様」

魔女「いえ、あたしも悪かったわ。本音とは言え、少しばかり意地の悪い言い方だったのも事実なのだから」

副官騎士「………」

女騎士「お戯れを。今までの依頼も全てこなしてきている貴女ですから、今回の依頼もこなすと信じております」

魔女「誉め言葉として受け取っておくわ」


副官騎士「―――ところで、ひとつ気になるものがあるのですが」

魔女「なにかしら?」

副官騎士「そちらに飾ってある石像ですが」

魔女「ああ、これ?」

副官騎士「ずいぶんと精巧な造りの石像ですね。『まるで生きている』ような」

魔女「ふふっ、面白いことを言うのねあなた?石像が『生きている』、なんて」

副官騎士「思ったままを言っただけです。さぞかし腕の良い職人が手掛けたんでしょうなぁ?」

女騎士「………」

魔女「いい出来でしょう?あたしのお気に入りよ」


女騎士「副官、お前は部下達を連れて一足先に王国へ戻っていてくれ。わたしは、もう少しここで魔女様とお話がある」

副官騎士「……お話の内容を伺ってもよろしいですか?」

女騎士「お前も知っているだろうが、わたしは魔女様とは旧知の仲だ。こうしてひと月に一度しか顔を合わせないからな、募る話もあるのさ」

副官騎士「……承知いたしました」

女騎士「心配しなくとも、長居はしないさ。魔女様も、依頼の物を作るのに忙しいだろうからな」

副官騎士「では、わたくし達は先に失礼します。女騎士様も、道中お気をつけて」

女騎士「ああ、お前達も気をつけて帰るんだぞ」

副官騎士「はっ」

ガチャ バタン

ザッザッザッ―――

女騎士「ふう、やれやれ……」


魔女「ふふふ、女騎士様もずいぶんと偉くなったものね?補佐がつくなんて、まるで一個小隊の隊長みたいよ」

女騎士「よしてくれ、魔女。補佐なんて名ばかりの、わたしの監視役さ」

魔女「まあ、無理からぬことよね。王国から逃げたあたしのところに来るのが、『旧知の仲』のあなたなんだから」

女騎士「意地悪な言い方だな、本当に。わたしの立場というものも考えてくれ」

魔女「ごめんなさい、女騎士。あの副官騎士とかいうやつが、あたしの神経を逆撫でするようなことばかり言うものだから」

女騎士「あいつには、わたしからきつく言っておく。悪いやつじゃないんだが、王国への忠誠心が高すぎるのがたまに傷でな」

魔女「忠誠心、ねえ。あの国のあり方に嫌気が差したあたしには理解できない物ね」

女騎士「……なあ、魔女。やっぱり、城へ戻るつもりはないのか?」

魔女「言ったでしょ。『あの国のあり方に嫌気が差した」って。あなたには申し訳ないけれど、今のところは戻るつもりはないわ」

女騎士「お前なら、宮廷魔術師長にだってなれる腕はあるだろう?わたしも今度、騎士長代理試験があるんだ。合格することができれば、少しは発言力のある地位につくことができる。二人で、あの国を変えよう」

魔女「あたしは、今のこの暮らしが気に入っているの。そりゃ、自由とは言い難いけれど、好きな研究を好きなときにできるのだからね」


女騎士「………そうか」

魔女「悪いわね、女騎士。あなたの気持ちは嬉しいわ。あたしがこうしていられるのも、あなたのおかげだって思ってる」

女騎士「そんなことはないさ。王国も、お前という魔女を失うのを恐れているからな。そうそう強硬手段には出られないのさ」

魔女「その割には、ずいぶんと当たりがきついみたいだけどねぇ?あの副官騎士とか、この無茶な依頼の量とか」

女騎士「実際、すごいと思うよ。毎回の大量の依頼をこなしているのは」

魔女「ふふっ、優秀な助手がいるからね?ねえ、『起きなさい』、魔法使い」

石像「―――」ピシピシッ

魔法使い「―――……おはようございます、主様」

魔女「ええ、おはよう魔法使い」

魔法使い「こんにちは、女騎士様」

女騎士「こんにちは、魔法使い」


魔法使い「お茶を淹れてきますね」

魔女「ええ、お願い」

トテトテ

女騎士「いつ見ても、大したものだ。王国の騎士達の目を欺くほどの魔法とは」

魔女「まあ、あの国にはない系統の魔法だからね。人間というのは、自分の常識から外れているものは疑うということをしないものよ」

女騎士「そういうものなのかねえ。まあ、初めて見た時はわたしもずいぶんと驚いたものだから人のことは言えないか」

魔女「そうねぇ、初めて見た時のあなたったら、腰を抜かして驚くんだもの、傑作だったわ」

女騎士「そりゃ、驚くよ。石像が割れたと思ったら、いきなり動き出して喋りだすんだからな」

魔女「あの子は、あたしの目指す目標の第一歩なの。あの子には、あたしの知識の全てを叩き込むつもりよ」

女騎士「目標、ねえ。その目標ってのは、まだ教えてくれないのか?」

魔女「ええ、『まだ』教えられないわ」


女騎士「……わたしにできることがあれば、なんでも言ってくれ。出来る限り、力になるよ」

魔女「ありがとう、女騎士。やっぱり、持つべきものは親友ね」

女騎士「おや、『旧知の仲』からようやく進展してくれたんだな」

魔女「冗談に決まっているでしょ、あんなの。全く、あなただってなかなかの意地悪よ」

女騎士「お前の性格が移ったのさ」

魔女「言うようになったわねえ、あなたも」

女騎士「お互い様さ」

トテトテ

魔法使い「お茶、入りました」

魔女「ありがとう、魔法使い……って、なんで湯呑みが二つしかないのよ!」

魔法使い「?」

魔女「はあ……だから、お茶をする時は一緒に飲むものよ」

魔法使い「よろしいのですか?」

魔女「よろしいに決まってるじゃないの」

魔法使い「えっと……」チラッ

女騎士「余計な気を遣わないでくれ、魔法使い。一緒にお茶しよう」

魔法使い「………わかりました。わたしの湯呑みも持ってきます」


夕暮れ―――

女騎士「それじゃ、そろそろわたしも城へ戻るよ」

魔女「ええ、気を付けて帰ってね」

魔法使い「またいつでもいらしてください。女騎士様でしたら、いつでも歓迎します」

女騎士「はは、ありがたい申し出だが、気安くは来れないんだ。またひと月後に、な」

魔女「全く、王様だってわたしとあなたの仲は知っているはずなのに、来させないなんて意地の悪い人よねぇ」

女騎士「すまないな、魔女。それじゃ、依頼の物、よろしく頼む」

魔女「わかっているわよ。今回も完璧に依頼をこなして、王様を悔しがらせてやるんだから」

女騎士「そのあたりの心配はわたしはしていないよ。お前なら、言ったことは必ずやり遂げるだろうからな」

魔女「信頼されているのなら、それに答えなきゃね。それじゃね、女騎士」

女騎士「ああ」


魔女「さて、と。まずは資料に一通り目を通さなきゃ」

魔法使い「わたしも、読ませてもらってもいいでしょうか?」

魔女「もちろん、構わないわよ。今回からは、あなたにも色々頼みごとをするつもりだから、よろしくね、魔法使い」

魔法使い「! はい、頑張ります!」

魔女「よろしい。わからないことがあったら、なんでも聞きなさいね」

魔法使い「わかりました!」

本日は以上です
書き溜めなしなのでまったり更新になるかと思います。よろしければお付き合いください

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