高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「ある意味でヤバイカフェで」 (52)

――路上――

北条加蓮「……ねえ、藍子」テクテク

高森藍子「はい」テクテク

加蓮「ホントにさ、そのカフェに行くの?」

藍子「…………」ピタッ

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――まえがき――

レンアイカフェテラスシリーズ第57話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

~中略~

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「都会のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「郊外のカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「謎解きと時計のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「昔も今もこのカフェで」

※ちょっと季節感ないですが許してくださいな

前々回までのあらすじ

加蓮ちゃんと藍子ちゃんがカフェ巡りをしているようです。


藍子「これで何度目ですか! 行くっていったら行くんですっ」

加蓮「……」

藍子「……何ですか」

加蓮「……藍子が頑固で意地っ張りで、言い出したら引っ込まないってことは知ってる」

加蓮「でも!」

加蓮「私にだってプライドがあるのっ!! もうあんな姿は見られたくないの! 特に藍子には! 何度言えば分かるのっ!!!?」

藍子「このカフェに行くのは加蓮ちゃんの為でもあるんです!」

加蓮「余計なお世話だって言ってるでしょ!!」

藍子「モバP(以下「P」)さんからもお願いされてます!」

加蓮「見られたくないって気持ち、藍子だって分かるでしょ! 私だってそういう藍子を何度も見てるんだから!!」

藍子「それは……。分かりますけどもういいじゃないですか! 今さらそんなに意地を張らなくても!」

加蓮「今さらって何よ! 今さらって!」

藍子「今さらは今さらです!!」

藍子「私は、そんな加蓮ちゃんの姿を見ても絶対に笑いません。それどころか安心するくらいなんです」

藍子「加蓮ちゃんがそういうところをぜんぜん見せてくれないから、私もPさんも逆に不安になっちゃうんですよ!!」

加蓮「うぐぐぐ……! 藍子の分からず屋!!!」

藍子「それは加蓮ちゃんの方ですっ!!!!」

……。

…………。


――15分後――

――足湯カフェ――

加蓮「くー」(藍子の隣で寝てる)

藍子「5分も経たずに寝ちゃった……」(加蓮の隣に座ってる)

加蓮「すぅ……」zzz

藍子「さて、コラムを書かなくちゃ」ガサゴソ

加蓮「くー」zzz

藍子「ここは、足湯を楽しめるカフェです。……温泉というよりはレストランに近いのかもしれません。
大通りの、高速道路の近くにあるので、これから旅をされる方も、旅から帰ってきた方も……」カキカキ

加蓮「んー……」zzz

藍子「お店に入った時には、……お店に……うーん」

藍子「出入り口の戸を叩いた時、水の流れる音が……。水の流れる、しゃらしゃら、って音がして」カキカキ

加蓮「んん……」クタ

藍子「(あ、加蓮ちゃんがよりかかってきた……)お湯に足をつけると、すごく暖かくて……。
ううん、お湯に足をつける前から、とっても暖かい気持ちに――」カキカキ

加蓮「くぅ……」zzz(ぽてっ)

藍子「わひ」

藍子「ひ、膝の上に加蓮ちゃんが……。い、今の声、聞かれてない……よね?」キョロキョロ

藍子「他には……。メニューがあって、内装が……店員さんは……。疲れた時には、ワンコインで受けられるマッサージも……」カキカキ

加蓮「すー」zzz

藍子「……」チラ

藍子「……もうっ。加蓮ちゃんのせいで集中できません! 集中できなかったことまで書いちゃいますからっ」カキカキ

加蓮「あいこがわるいのよー」zzz

藍子「!? 起きていたんですか? いやその悪いとかじゃなくてっ――」

加蓮「あいこのばかー……」zzz

藍子「あれ?」

藍子「なんだ……。眠っていたんですね」

藍子「……あはは。加蓮ちゃんの夢の中でも、私は加蓮ちゃんを怒らせてるのかな?」

加蓮「すー」zzz


藍子(最初に話し合った時から、このカフェだけは何度も渋い顔をされました)

藍子(絶対に寝てしまうから、寝てるところを見られたくないから、って)

藍子(加蓮ちゃんが、気を抜いてる姿……。見るの、結構好きなんです。ほっとしている顔、ゆっくり休んでいる顔……)

藍子(加蓮ちゃんは見られたくないって何度も言うんです。今日までに、何度もケンカしちゃいました)

藍子(でも――)


藍子「……来てよかったなぁ」

藍子「寝顔、Pさんにも送っ――たら、さすがに口も利いてくれなくなっちゃいそう」アハハ

藍子「寝顔は、私の心のメモリーに、そっとしまって。Pさんには、お話だけで我慢してもらうことにしましょう」

加蓮「すー」zzz

藍子「……ふわ」

藍子「足、すごくあったかい」チャプ

藍子「それに……加蓮ちゃんも……」

加蓮「ん……」zzz

藍子「加蓮ちゃんが眠っているのを、見てたら、私まで眠く……」

藍子「はっ。いけないいけない。コラムコラムっ」

藍子「ええと――」

加蓮「くぅ……」zzz

藍子「メニューは……。あぁ、注文してないっけ……」

加蓮「すぅ……」zzz

藍子「それ、から……。ええと……」ウトウト

加蓮「ぅん……」zzz

藍子「……くー」zzz

……。

…………。

――30分後――


藍子「ん……」コスリコスリ

藍子「ふわ……?」

藍子「ん~~~~っ!」ノビ

藍子「ねちゃってた……。メモ、ひらきっぱなし……」

藍子「んーっと……」

藍子「あ、加蓮ちゃんは」チラ

加蓮「んん……」モゾモゾ

藍子「ふふ。加蓮ちゃんも、今起きたばっかりなのかな?」

加蓮「……ぁー……。なんか、あったかい……?」

藍子「おはようございます、加蓮ちゃん」

加蓮「あれ……。藍子がいる」ニヘ

藍子「はい。藍子ですよー?」エヘヘ

加蓮「ここどこー?」オキアガリ

藍子「足湯カフェですよ。ほら、コンセプトカフェその2ってことで、取材に」

加蓮「ぁー……あー。あぁ。そういえばそうだっけ。私、やっぱり寝ちゃってたか」

藍子「顔、洗って来ますか?」アハハ

加蓮「ん~~~~~!」ノビ

加蓮「もう! 絶対こうなるから行きたくないって言ったのにっ」

藍子「いいじゃないですか~。のんびりする為の足湯なんですよ? のんびりしましょうよ~」

加蓮「のんびりするのはいいけどさ……」

藍子「ほら、あっちにも。テーブルに突っ伏せて、おやすみされてる方がいますよ」

加蓮「そんなに疲れてたのかな? そういえば駐車場にトラックが停まってたよ。結構いっぱい」

藍子「ここ、運転手さんの間では有名なスポットみたいですよ。特に、トラックの方には」

藍子「あ、でも最近ではいろいろな人も来るようになったみたいです」

加蓮「藍子が宣伝したらもっといっぱい人が来そうだね」

藍子「そうなるといいですね」

加蓮「喉乾いちゃった。藍子、何か飲む?」

藍子「それなら……。何か、ジュースがいいかな? 今、ちょっぴり甘い物が飲みたい気分かもっ」

加蓮「オッケー。じゃあ取ってくるねー」

藍子「お願いしますっ。味は加蓮ちゃんにお任せしますね」

加蓮「……」

藍子「……?」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……藍子にお願いしていい? ほら、たまには」

藍子「へ?」

加蓮「ね、ね。たまにはお願いっ」

藍子「はあ。じゃあ、私が行ってきますね?」

加蓮「いってらっしゃーい♪」

藍子「……」

加蓮「……?」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……やっぱり、加蓮ちゃんが行ってきてくれませんか?」

加蓮「えー」

藍子「加蓮ちゃんが行ってきてください」

加蓮「やだよ。藍子が行ってきてよ」

藍子「加蓮ちゃんが」

加蓮「藍子が」

藍子「加蓮ちゃんっ」

加蓮「藍子!」

藍子「む~」

加蓮「むー」

藍子「そうだ。やっぱり顔を洗ってきた方がいいですよ。加蓮ちゃん、まだねぼけまなこになってます」

加蓮「藍子こそ、身体がのびきってないでしょ。肩がだらーんとなってるし。歩いたらスッキリするんじゃない?」

藍子「ドリンクバーですよ。ほら、そこにドリンクバーがありますよ~。加蓮ちゃんの大好きなドリンクバーですよ~」

加蓮「ほどほどにお客さんもいるみたいだし、今のうちに許可とって写真とか撮っておきなさいよ」

藍子「私が行ってしまうと、加蓮ちゃんがカバンやスマートフォンを漁りそうです。だから私はここを離れる訳にはいきません」

加蓮「藍子こそ私のいない間に何かするでしょ。なんで私のスマフォの待受が猫になってんのよ」

藍子「何もしませんよ」

加蓮「するって」

藍子「しません」

加蓮「する」

藍子「しません」

加蓮「藍子ならやる!」

藍子「それは加蓮ちゃんですっ」

加蓮「私もするけど藍子もする!」

藍子「するって言いましたね!? なら私は行きません! ぜーったいにいきません! 加蓮ちゃんが行ってくればいいじゃないですかっ」

加蓮「私だって行かないし!」

藍子「ふんっ」プイッ

加蓮「ふんっ」プイッ

藍子「……」

加蓮「……」

加蓮「……正直に言いなさいよ」

藍子「……加蓮ちゃんこそ、はっきり言ったらいいじゃないですか」

加蓮「足湯から出るのが辛いから行けません、って! ほら! 正直になりなさいよ!」

藍子「正直になりなさいって加蓮ちゃんが言いますか!?」

加蓮「だって私だし?」

藍子「じゃあ私だって私ですっ」

加蓮「……それなら、こうしようよ」

藍子「……どうするんですか?」

加蓮「一緒に行こう。こう、せーの、で足をお湯から出して。それなら平等でしょ?」

藍子「確かに。どっちが行くんだって喧嘩も、終わらせられますね」

加蓮「そうそう」

藍子「では、いっせーの、で足を出しましょう」

加蓮「いっせーのっ」

藍子「でっ」

加蓮「……」シーン

藍子「……」シーン

加蓮「……出なさいよ! せーのっ、って言ったでしょ!」

藍子「加蓮ちゃんこそ! 1ミリも動いてないじゃないですか!」

加蓮「5ミリくらいは動いてるし!」

藍子「何ですかその細かいの!? 出てないんだから同じです!」

加蓮「なんで今日の藍子はこんなに頑固なの! ここに来る時といい今といい!」

藍子「わたしにだって譲れないことはあるの!」

加蓮「もっと別のに意地張りなさいよ!」

藍子「いじっぱりばっかりの加蓮ちゃんに言われたくないもんっ!」

加蓮「……」ポカン

藍子「……」ハッ

藍子「……な、なんですか」

加蓮「……いや別に」

加蓮「ならこんなのはどう?」

加蓮「私はドリンクバーに行って、私の飲み物と、藍子は甘いジュースだっけ? を持ってくるから、藍子はほら、写真取って、ついでにそこのパンフレットを取ってきてよ。で一緒に見よう」

藍子「なるほど。別々に行動して、持ってくるんですね」

加蓮「今度は、ワンツースリーって言うから。あ、スリー、って言い終えた瞬間だからね?」

藍子「なら私が言いますね。わん、つー……」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……言いなさいよ!!!」

藍子「ごめんなさい~~~! でもそのっ……うぅ……だって、ここあったかくて、気持ちよくて……」

藍子「加蓮ちゃあん……! 今日だけ、今日だけですから!」ウルウル

加蓮「うぐ。そ、そのあざとい感じやめてよ。その感じを出せば誰でも言うことを聞いてくれると思って……」

藍子「ううぅ~」ウルウル

加蓮「……………………」

加蓮「……ここ藍子のおごりだからね!」ザバッ

藍子「! ありがとう加蓮ちゃんっ!」

加蓮「ったく!」フキフキ

……。

…………。

加蓮「ただいま」

藍子「ふわぁ~♪」ヌクヌク

加蓮「……ただいま」

藍子「あ、おかえりなさぁい加蓮ちゃん……。えへ~」ホケー

加蓮「……」

藍子「やっぱり、足湯っていいですよね~。ずっとこうしていたいなぁ……♪」ホケェ-

加蓮「……」(ジュースとパンフレットをテーブルに置く)

加蓮「……」(右頬を叩く)

藍子「あたっ!?」

加蓮「……」(左頬も叩く)

藍子「あうっ!」

加蓮「……」(おでこをぶっ叩く)

藍子「いったぁ! さ、3回もたたかなくても!」

加蓮「ごめん。つい」スッ

藍子「そう言いながら4回目の準備をするのやめてください!!」

加蓮「ごめん。つい」

加蓮「はいジュース。っと」スワル

藍子「ひゃ」

加蓮「ぁ~、足湯やっぱり気持ちいい……。眠くなりそ……。次何かあったら絶対藍子の番だからね。絶対だからっ」

藍子「……」ジー

加蓮「……? どうしたの藍子。お湯が散っちゃった?」

藍子「あ、ううん……」ジー

加蓮「いや、だからどしたの……」

藍子「……なんとなく、ですけれど……。最近、加蓮ちゃんが隣に座ることが増えてきたなぁって」

加蓮「そだっけ」

藍子「一緒にコラムを書いた時や、おじいさんの時計と謎解きのカフェに行った時もそうでしたよ」

藍子「それに……ほら、この前も。一緒に写真を撮った時に……えへへ」

加蓮「……どしたの急に?」

藍子「う、ううんっ。なんでもないですっ」

加蓮「?? でも言われてみれば、そういうことも結構あるんだね」

藍子「こうしているとなんだか、加蓮ちゃん――」

加蓮「うん」

藍子「普通の友だちみたいだなぁ、って」

加蓮「じゃあそれまでは?」

藍子「加蓮ちゃんは……加蓮ちゃん?」

加蓮「??」

藍子「今の加蓮ちゃんは普通の友だちで、前の加蓮ちゃんは加蓮ちゃんなんです」

加蓮「????」

藍子「だから、今の加蓮ちゃんは普通の――」

加蓮「繰り返せってことじゃないっ」

藍子「どうしたら伝わるかな……。……じー」

加蓮「伝わらないからってじっと見られても……。でも、藍子の言いたいこと、ちょっと分かるかも。いや分かんないけど」

藍子「どっちなんですか~」

加蓮「藍子だってさ、藍子なんだけど……」チャプチャプ

加蓮「こうしてると、普通の友達みたい」

藍子「そういうことですよ。よかった、伝わりましたっ」

加蓮「よかったねー」チャプチャプ

藍子「よかったー♪」チャプチャプ

加蓮「そもそも友達って何なんだろ」

藍子「うーん……? あ、ジュース、頂きますね」

加蓮「んー」

藍子「ごくごく……ふうっ。美味しい♪」

加蓮「ファミレスに一緒に行ったら友達とか? じゃあ、カフェに一緒に行く藍子とは友達じゃないのかな」

藍子「どっちでもいいじゃないですか」

加蓮「藍子がそれ言う?」

藍子「それなら今度、ファミレスに行きますか?」

加蓮「ああいうところって約束して行くものでもないでしょ。ノリで行くとこでしょ」

藍子「カフェなら?」

加蓮「それはー……約束して行くところかも?」

藍子「ふふっ」

加蓮「約束がしたいだけなのかな」

藍子「カレンダーを見る度に、楽しみになれますよね」

加蓮「今日も私はメロンソーダー」ゴクゴク

藍子「ごくごく」

加蓮「……ドリンクバーってそれこそファミレスでしょ普通。ここって何なの?」

藍子「足湯カフェですよ?」

加蓮「雰囲気ファミレスだけどね。ほらあっち、親子連れ」チラ

藍子「お父さんがぐったりされてますね。お疲れ様です」ペコリ

加蓮「お疲れ様です」テアワセ

藍子「そのポーズだと、ご愁傷様です、みたいになりますよ?」

加蓮「じゃあ、ご愁傷様です」フカブカ

藍子「ご愁傷様ということは、お墓参りとかでしょうか」

加蓮「男の子はつまらなさそうにしてるねー」

藍子「やんちゃな子には、退屈な場所かもしれませんね」

加蓮「あ。でも足ちゃぷちゃぷってさせてる。かわいー♪」

藍子(……私たちもさっき同じようにやってましたよね? って言うのは……やめておきましょう)アハハ

加蓮「?」

藍子「ふふ、なんでも」

藍子「ん~~~~♪ いつまでも、のんびりしちゃいそう……」

加蓮「足、ちょっとふやけてきちゃったかもー」

藍子「あ。そういえば、パンフレットを取ってきていませ――」

加蓮「行かないからね」

藍子「……もう。じゃあ、あとで一緒に行きましょうね?」

加蓮「む。藍子が落ち着いてる。なんかムカつく」

藍子「どうしてですか~」

加蓮「もっとこう、ムキになる藍子ちゃんとか見てみたいなー?」

藍子「むきになる……。こんな感じに?」プクー

加蓮「期待した私がバカだった」

藍子「えー」

加蓮「やっぱり人に期待しちゃダメだよね。どうせ裏切られるんだから」

藍子「加蓮ちゃん……。って、口元、笑ってるじゃないですか。手で抑えててもバレバレですよ」

加蓮「たはは」

藍子「くすっ」

加蓮「藍子ならこの後、どこに行きたい?」

藍子「私?」

加蓮「足湯とか温泉とか、行った後」

藍子「うーん……。のんびり温まった後は、体を動かしてみるのもいいかもしれませんね」

加蓮「あー」

藍子「ほら、温泉にはお散歩コースがあるじゃないですか」

加蓮「遊歩道とかだよね。あるあるー。景色が綺麗だったり、遊ぶ場所があったりするよね」

藍子「そういえば、このカフェにはそういう場所は……」キョロキョロ

加蓮「ないみたいだね、残念」

藍子「要望書に書いちゃいましょう。お散歩コースがほしいです」カキカキ

加蓮「……」(頬杖をつきながら眺めてる)

加蓮「……ぷっ」

藍子「?」

加蓮「ううん。そういえばこうして隣から眺めるのって初めてかも、って思って」

藍子「さっきのお話の続きですか?」

加蓮「かもね。で、見てたらなんだか面白くなっちゃった」

藍子「じゃあ私も加蓮ちゃんを眺めてみることにします。じー」

加蓮「こらこら。アンケートを書き終わってからにしなさい」

藍子「そうでした。ええと、例えばみんなでわいわいできる遊歩道とか――」

加蓮「ぷくくっ」

藍子「……もう。何回も笑われると、書けなくなっちゃいますよ」

加蓮「だってさー。ただのアンケートなのに、藍子、すごく熱心にしてるから。なんだかおかしくて」

藍子「む~」

加蓮「ね。そういえばさ、ドリンクバー以外に何も注文してないよね。藍子、何か食べる?」

藍子「そういえば――」グー

藍子「!」ハッ

加蓮「あははっ。すみませーん」

加蓮「えーっと」

加蓮「……」

加蓮「……藍子、何がいい?」

藍子「私は、このホットサンドとスクランブルエッグの――え? これは朝限定なんですか?」

藍子「あ、本当だ。書いてありましたね。ごめんなさいっ」

藍子「それなら、こっちの……ミニ玉子丼で」

加蓮「……」ジ-

藍子「加蓮ちゃんは?」

加蓮「あ、じゃあ私はこの、今日のオススメ? のパンケーキで」

藍子「お願いしますっ」ペコッ

加蓮「お願いします」

……。

…………。

――数分後――

藍子「いただきますっ」アムッ

加蓮「いただきます」アーン

藍子「もぐもぐ……。……! たまごがふんわりしてて美味しいっ。ご飯も、すごく食べやすくて、あったかい……♪」

加蓮「これ私もグルメリポやらないといけない感じ?」

藍子「はっ。今のはつい……。カフェで食べたものをコラムに書いてるからですっ」

加蓮「いやそんなにムキになんなくても」

藍子「ムキになってほしいって言ったの加蓮ちゃんですっ」

加蓮「あ、そだっけ」

加蓮「しょうがないなー、私もアイドルだってところを見せてあげよう」キリッ

加蓮「あーん」モグモグ

藍子「じー」

加蓮「うん。パンケーキおいしー♪」

藍子「…………」

加蓮「あむあむ……。む。なにふぉの、」ゴクン

加蓮「何その目。美味しいんだから別にいいじゃん」

藍子「パンケーキ……」ジー

加蓮「……、ほしいの?」

藍子「…………えへ」アーン

加蓮「玉子丼のすぐ後に食べるんだ……。いいけど」ハイ

藍子「あむっ」

藍子「もぐも……ぐ……。……な、なんだか口の中が変な感じに」

加蓮「そりゃそーでしょ……。私はいらないか――」

藍子「じゃあ次は、加蓮ちゃんの番っ」ハイ

加蓮「らね……。いらないからね?」

藍子「そう言わずっ。ほらほら」ハイ

加蓮「いらないってば」

藍子「私だけもらっちゃうのは悪いですから。ね?」ハイ!

加蓮「いや私にもその"へんなかんじ"を味わわせたいだけでしょ」

藍子「ね?」ハイッ!

加蓮「……はいはい」アム

加蓮「……」モグモグ

加蓮「……あれ? 案外いけるくない?」

藍子「あれっ?」

加蓮「玉子丼のふんわりした感じと、さっきまで食べてたパンケーキのこう、
ご飯とは違うけどご飯みたいなほどほどの甘さ……ビター感? がいい具合にさ、混ざり合って」

加蓮「いけるよこれ! 玉子丼パンケーキ。絶対いけるって!」

藍子「えぇ……」

――さらに数分後――

藍子「ごちそうさまでした」パン

加蓮「ごちそうさまでした」パン

<ぶぶぶぶっ

加蓮「あ」

加蓮「……あー」ポチポチ

藍子「連絡ですか?」

加蓮「連絡……かなぁ。さっき言ってた玉子丼パンケーキさ、未央に提案してみたんだ」

藍子「未央ちゃんに……ってあれ本気だったんですか!?」

加蓮「そしたら一言。「それはない。」って。ほら見てよこれ、スタンプすらない」

藍子「あ~……」

加蓮「やっぱないのかなー」

藍子「せめてご飯とご飯か、スイーツとスイーツとかにしましょうね」

加蓮「じゃあ私ポテトとかサンドイッチを担当するから、藍子はスイーツね」

藍子「はーいっ。……あれ、これ私もやるんですか?」

加蓮「何言ってんの。カフェマスターでしょ?」

藍子「関係あるのかな……?」

藍子「お腹いっぱいになったら、また眠くなっちゃいました。ふわ……」

加蓮「足湯もそろそろ飽きてこない?」

藍子「そうですか? 私はまだ、あと5時間はここにいられますよ~」

加蓮「5時間」

藍子「じゃあ、加蓮ちゃんは足を出せるんですか? パンフレットをお願いします、って言ったら取ってきてくれますか?」

加蓮「……、ま、たまにはのんびりするのもいいかなー」

藍子「♪」

加蓮「しょうがないなー」グニー

藍子「って、ほっへのばふぁないで~」ペチ

藍子「もうっ」

加蓮「ふふっ」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……しゃらしゃらっていってるね。水の音だよね」

藍子「そうですよ。ずっと、綺麗な音が聞こえます」

加蓮「ふぁ……。あはは、私まで眠くなっちゃったかも」

藍子「ふふっ」

加蓮「ちょうど、お客さんが少なくなる時間なんだね……。急に寂しくなっちゃった」

藍子「……出ますか?」

加蓮「んー、いい。もうちょっと、音を聞いてたいかなぁ」

藍子「なら、私も」

加蓮「……」

藍子「……」

藍子「そういえば、加蓮ちゃん」

藍子「……あ」

藍子「お話しても、いいですか?」

加蓮「いいよ。何?」

藍子「はい。この間、ファンレターをもらったんです。女の子から」

加蓮「やったじゃん」

藍子「えへへ。……その子、私が行ったカフェに行ってみたそうですよ。ほら、前に行った、郊外の静かな場所の」

加蓮「うんうん」

藍子「店員さんと、お話もしたそうです。ちょうど、あまり人のいない時間帯だったみたいで、盛り上がったって」

加蓮「店員ってあの時の女の人?」

藍子「かもしれませんね。その時に……私たちのことも、聞いたそうなんです」

加蓮「えっ」

藍子「私と、加蓮ちゃんのこと」

加蓮「私達のことって……待って。変なこと吹き込まれてないよね? 私あのカフェで何したっけ?」

加蓮「確かパンケーキ食べて藍子を手伝って、田舎の話をし――」

藍子「あはは。大丈夫ですよ、加蓮ちゃん……一応、私たちもアイドルですから。
詳しいことを聞いたのではなくて、このカフェに私たちが来たことを確認したくらいって。その後は、別のお話で盛り上がったそうですよ」

加蓮「そ、そうだよね。よかった。……あはは。藍子に"私たちもアイドルだから"って言われる日が来るなんて」

藍子「私だって、言う時には言うんですからっ」

加蓮「でも"一応"って言ってるのはマイナスかなー」

藍子「うぅ。厳しいです」

加蓮「で、その子がどうかしたの?」

藍子「ファンレターには……。応援していますって言葉と、加蓮ちゃんがすごいアイドルだってことが書いてありました」

加蓮「……藍子へのファンレターなのに、私のこと?」

藍子「ふふ。加蓮ちゃんの出た番組を見たそうです」

加蓮「なんだか照れるね、こーゆーの」

藍子「あと……うらやましいですって言葉が書いてありました」

加蓮「うらやましい?」

藍子「その子、カフェに1人で行ったみたいなんです」

加蓮「あぁ」

藍子「私も、1人で行くことはよくありますけれど……。たぶん、そういうことじゃないですよね」

加蓮「だろうねー」

藍子「でも、店員さんとは仲良くなれたそうですよ」

加蓮「すごいじゃん。その子って女の子なんだよね? 大人じゃん」

藍子「大人ですね」

加蓮「もしくは藍子」

藍子「? はい」

加蓮「いや。その女の子は大人か、藍子と同じだなーって。すぐカフェの人と仲良くなれるところとか」

藍子「……ふふ。加蓮ちゃん、さっきちょっぴり緊張」

加蓮「してないから。あれは藍子が何注文するか聞きそびれてただけだから」

藍子「はいはい。そういうことにしておきますね?」

加蓮「ホント違うからね……。とりあえずお湯、散れっ」ピチャ

藍子「わっ。もうっ、スカートが濡れたらどうするんですか~」

加蓮「散れっ」ピシャ

藍子「こらっ」ゲシ

加蓮「ふうっ。その子ってさ、実は大人びすぎてて周りと話が合わないとか?」

藍子「はい。書いてありました。加蓮ちゃんが言うようなことが」

加蓮「あー」

藍子「なんとなく合わない、って」

加蓮「そっかー……」

藍子「加蓮ちゃんとなら、仲良くなれそうかな?」

加蓮「……さぁね。藍子の思う通りなら、藍子の方がむしろ仲良くなれるんじゃない?」

藍子「そんなことないですよ~。だって、ほらっ」チャプチャプ

加蓮「たはは。それなら私もなんだけどね」

藍子「もっと、心を軽くさせてあげられたらいいな……」

加蓮「頑張れゆるふわ」

藍子「ねぇ、加蓮ちゃん」

加蓮「ん?」

藍子「実はさっきから、少しだけ体が動かしたくて」

藍子「加蓮ちゃんじゃないですけれど、足湯も、ちょっぴり飽きちゃったのかもしれません」

藍子「でも――」

藍子「やっぱり今日は、もうちょっとだけ、のんびりしてもいいですか?」

藍子「隣同士、いっしょに」

加蓮「……しょうがないなぁ」

藍子「ありがとうございますっ」

加蓮「しょうがないなぁ」

……。

…………。

――後日・高森藍子のコラムより一部抜粋――

足湯を楽しめるカフェです。温泉というよりは、レストランに近いのかもしれません。
賑やかな場所だけれど、目を閉じていると、水の「しゃらしゃら」って音が、すーっと染み渡って、それがすごく心地よくて――





これは、私たちが座った窓際の席の写真です。お昼前から夕方まで、ずっとのんびりしてしまいました。
こうしていると、大人になれた気分……♪
でも、時々足をちゃぷちゃぷってしたくなっちゃいますよね♪

どっちも楽しめちゃうのが、足湯カフェなんです!


――左下に小さな吹き出しがある――

↑藍子ちゃんのなまあしー♪(by加蓮ちゃん)


おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。

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