男「どこでもいつでもパンツを覗いて好き放題出来る能力をくれ」神「は?」 (21)


神「誰だお前」

男「東京世田谷区在住の男です」

神「何故ここに居る」

男「窒息死」

神「?」

男「クジラに飲まれて、死んだんすよ俺」

男「で、お迎えに来た天使達シメてここまで乗り込んで来たわけで」

神「それを聞いて私が何か力を授けると思う?」

男「私にいい考えがある」



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神「異世界なんか無いよ」

男「嘘をつくんじゃない! あるだろ! 並行世界とか異次元とか!!」

神「私が作ったのがこの世界なんだからあるわけ無いだろう」

男「じゃあ俺はどうなるんだよ!!」

神「いや魂が消えるだけだが」

男「転生は!?」

神「しない」

男「なんで!!?」

神「虫や恐竜の幽霊や前世持ちの人間が存在しない理由と同じ理屈だ」


男「……」

神「そもそも、どうやって天使達を退けたんだお前」

男「心臓病のフリして、心配して近付いて来た所を不意打ち」

神(なんで此奴こんなに堂々としてるのだろう)

男「真っ白い神殿見た時はワクワクしたんだけどなー」

神「はぁ」

男「……」

神「……」

男「どうしたらいいっすかね俺」

神「元々、死者は待合室でのんびりしている間に消滅する仕組みだ」

男「じゃあこのままぐだってれば消えるわけね」


男「所で、あれ本当なの?」

神「何がだ」

男「キリストとか、仏教とか、色々ある神話」

神「全て等しく事実だな」

男「全て?」

神「人間も、それ以外の星の者達も、皆私が生み出した存在だからね」

神「自分の書いた小説の登場人物が作者について讃え崇める様なものだ」

男「なんかイタイなそれ」

神「こそばゆいのは確かだが」


男「中々消えないな……」

神「稀に魂が戻る時もある、それかもしれないな」

男「えっ、生き返るのかよ」

男「でも俺はクジラに飲まれたんだが」

神「そもそも何故に都会の人間であるお前がクジラに飲まれたのだ」

男「神なら分かるんじゃないの」

神「自分の飼ってる蟻の巣の事情には疎いという物だ」

男「アンタさっきから分かりやすいな」

神「お前が一番理解出来る話し方と言語に聴こえるだけだ、私は常に私の言葉で全てを表現している」

男「神っぽい」

神「神だ」


男「実は知り合いに芸能人がいるんだわ」

神「俳優か」

男「そうそう、たまにキッチンで油垂らしてる奴なんだけどさ」

男「そいつがクルーザー貸してくれたんだよ」

男「で、案の定遭難してさ」

神「案の定て」

男「そうしたら一緒に来てた女の子が、イルカがいるって喜んで海面覗き込んでたのよ」

神「ずいぶん呑気だな」

男「携帯は繋がったから救助を呼んで安心してたのよ」

神「遭難……?」


男「で、そんな事していたらサメがザバァっと来たわけだ」

神「日本海に先日群れを向かわせたからな」

男「えっ」

神「彼奴ら、あれで天使なのだ」

神「それでサメがどうした」

男「お、おう……でな。 女の子がびっくりして海に落ちちゃってな」

男「すぐ飛び込んだから大事になる前に上に戻してやったんだけど」

神「手際が良いな」

男「ありがとよ。 んで、その後にサメに噛まれて海中を滅茶苦茶引き摺り回された感じだと思うんだよな」

男「目なんか開けられないし、息も出来ないし痛いし、途中から耳が潰れたから訳わかんなくてさ」

男「急にサメが離れたから、無我夢中で海面に上がろうとしたら」

男「下からクジラみたいなデカいのに飲まれて、全身焼かれる感じの中窒息したわけだな」


神「……散々だったのだな」

男「まぁ今は痛くないから良いよ別に」

男「運が悪かったんだろ」

神「その割には目に生気が感じられる、逞しいなお前は」

男「まぁ鍛えてるんで?」

神「だが今の話、ふむ」

男「なんだよ嘘はついてないぞ」


神「本来ならお前の助けた娘が死ぬ筈だったわけだが、お前が助けた事で因果が移ったのだな」

神「それで合点がいった」


男「何がだよ」

神「異世界は無いが異星ならある、そういう事だ」

神「お前の因果に反応して白羽の矢が立ったらしい」


神「さっき、お前の言っていた能力。 あれで良いんだな」

男「お? おっ? 何だなんだ急に」

神「今、私の使いが報告して来たのだ。 地球とは遠く離れた星の何者かがお前を呼び出す式を立てたらしい」

男「なんだその限定的な儀式」

神「式を立てた者は分かってないらしいがな、まぁそういう話だ」

神「達者でな」

男「いやいやいや、待てやオッサン! 異星って違う星だろが! 死ぬんじゃねぇの!? プレデターとか居ないだろうな!!」

神「所謂、召喚式には前提として同種の物しか出せない法則がある」

神「故に心配は無用だ、安心して行くが良い」

男「あ! あとなんか便利な能力くれよ!」

神「そんなものは無い、精々疫病や寄生虫で死なぬようにな」

男「 」



かくして男は召喚される。

そこで待ち受けていたのは勇者召喚の儀式を行っているテンプレ中世ファンタジー世界だった。

果たして彼はパンツに顔を埋める事が出来るのか。




~完~(続かない)

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