提督「おい、おい!」足柄「あら提督」 (69)

提督「なにやってんだお前」

足柄「なんだと思う?」

提督「……大掃除」

足柄「やーね、洗い物よ洗い物」

提督「そうでなければいいと思ったんだよ……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1516199045

足柄「食堂だけじゃ場所が足らないと思って、外に簡易のキッチンをね、ちょっとね」

提督「日本語は正しく使え! これはちょっとじゃない。……それにその、これが洗い物だとしたら、その大量のフライパンはなんだ」

足柄「フライパンだけじゃないわよ? 使えそうな鍋を片っ端から集めたわ」

提督「……どこから?」

足柄「……悲しいけれど、これって戦争なのよね……」

提督「お前、まさか!?」

足柄「これらはやがて飛行機や艤装となつて、御国のために戦うことになるでせう。……だから心配要らないわ」

提督「そういうこっちゃねーんだよ!!」

足柄「大丈夫大丈夫、米があれば人は生きていけるわ」

提督「……圧政すぎる……」

足柄「まぁまぁ、総力戦ってわけでなし、根こそぎ頂いたわけじゃないんだから、市民の方々はボランティアの一種とでも思ってくれてるんじゃないかしら」

提督「……で、その集めた金属で、なにをするつもりだ。今のところ資材には余裕があったろうに」

足柄「? 調理器具なんだから料理に使うわよ」

提督「お前……」

足柄「トンカツパーティーよ!!」

提督「……今さら返してこいとも言えん」

足柄「当然でしょ? 相当上層部まで話が通っているんだから、やっぱり要らないから返すだなんて言えるはずがないわ」

提督「……直属のはずの私にはまったく話が通っていないんだが……」

足柄「ああ、それは」

提督「いや、まて、聞きたくない。言うな。見当は付く」

大淀「オライッオライッ」

トラック「」プーップーッ

大淀「……はい! そこでオッケーです!」

提督「おらっ、なにがオッケーだこのポンコツ眼鏡!」

大淀「ああ、提督。ちょうどいいところに、積み荷をおろすのを手伝っていただけますよね?」

提督「確認するな! せめて訊けよ!!」

大淀「ああ、ありがとうございます。ちょっと量が多いので、一人だと大変だなと思ってたところです」

提督「……一応、一応聞いておこう。積み荷はなんだ?」

大淀「豚肉ですけど」

提督「……」

提督「何に使うんだ?」

大淀「前線で戦う我らの血肉とするためです」

提督「……トンカツだろ?」

大淀「有り体に言えば、そうですね」

提督「お前さぁ……! いや、お前らはさぁ!」

大淀「まぁまぁ、いいじゃないですか。お偉方は深海悽艦との戦いを戦争とは呼びたがらないですし、戦争ではなくあくまで『害獣駆除』と仰るなら、彼ら彼女らも贅沢が敵とは言えませんよ」

提督「金属類はどうやって集めたんだっけ?」

大淀「ボランティアですが」

提督「戦時徴発だろ!?」

大淀「やだなぁ、それ、もう何十年も前に廃止されたじゃないですか」

大淀「あくまでも、有志の一般市民による善意のボランティアです。……あ、ここを否定するといろんなところが敵になりますので、ご理解のほどどうぞよろしく。戦争、嫌ですよね?」

提督「うるせーよ! 切らなくていいカードを切っといて偉そうにすんな!」

大淀「まぁまぁ、建前とはいえ前例というのは無駄にはなりません。今はいいですが、今後、どういった情勢になるかはわかりませんから」

提督「……いずれ、戦争になると?」

大淀「そうは言ってません。万が一、です。それに、なにも私利私欲のために集めた訳じゃないんですから。最終的な使い途さえはっきりしておけば大丈夫ですよ大丈夫」

提督「……いや、トンカツだろ?」

大淀「ふふっ」

提督「お前さぁ!!!」

提督「第一、この大量の豚肉はどう説明する気だよ」

大淀「食糧です。予算内で出来る限り集めました」

提督「必要ねえだろ!?」

大淀「……あのですね、人はパンのみにて生きるにあらず。時にはお肉が食べたいな。そうでしょう?」

提督「含蓄に溢れた啓句を、そんな適当に使うんじゃねえよ!!」

大淀「心配無用です。食糧難というでなし、前線の兵士諸君がトンカツパーティーしたって、誰も咎めやしません。というか、咎めさせません」

提督「……もういい。しかし、トンカツパーティーだと? 余裕があるとはいえ余ってる訳じゃないだろう。何処にそんな予算があったんだよ」

大淀「ふふっ、提督?」

提督「なんだよ」

大淀「私を、誰だと思ってるんですか!」

提督「…………ああ、そうだな。腹立つくらい優秀なやつだよ、お前は…………」

__

提督(阿呆ふたりはダメだ。俺には抑えられん……!)

提督「か、霞!!! 助けてくれ! 霞!!!」


霞「オライッオライッ」

朝霜「あいよーっと、おーう、邪魔だぜ司令」

霞「危ないから作業中に近寄ってくるんじゃないわよこの屑! 怪我したらどうすんのよ!」

提督「」

提督「なにやってんだお前ら! なんだそれ!」

朝霜「おいおい、司令。フォークリフトくらいでそう目くじら立てないでくれよ。大丈夫、免許はある」

提督「そういうことじゃありません!!」

霞「『ご安全に』でしょ? このあたしを誰だと思ってんのよ」

朝霜「ああ、そうだよ司令。霞のやつと監督代わってくれ。これじゃ日が暮れちまうぜ」

提督「ちゃうわ、このバカたれども! ……勘弁してくれよ、お前らまでボケたら誰が収拾つけるってんだよ」

霞「大まじめに決まってんでしょうが!! はったおすわよ!!」

提督「……そうだよなぁ、お前は朝潮の妹だもんなぁ……」

朝霜「なんだよ司令、そんなに疲れた顔して」

提督「……その大量の段ボールはなんだ? なにが入ってる」

霞「キャベツよ」

提督「そうか。キャベツか。……キャベツだけか?」

朝霜「キャベツだけだぜ」

提督「……まぁ、いいだろう。しかしなぜキャベツなのだ」

霞「お肉を食べるときは野菜をその三倍食べる。常識でしょ? あたしらは獣じゃないのよ」

提督「確かにその通りだが、その常識は抑止に使ってくれよ……」

霞「……別に、あんたが禿げないか心配でバカみたいにキャベツを集めたんじゃないわ。あんたのからだが心配なのよ。もう若くないんだから」

朝霜「お、ツンデレか?」

霞「ツンデレ違うわ!」

提督「その通り、ツンデレじゃない。……ツンデレを言いにくい言葉をオブラートに包むためのマジカル語法にするな。おっさんの夢を壊すんじゃあない」

朝霜「お、おう」

朝霜「いやまぁ、あれだ。霞も最初は真っ赤になって反対してはいたんだけどなぁ」

霞「あれ、見なさいよ」

提督「あれとな」



清霜「~~~♪」

===============
 パ ー テ ィ ー 会 場
===============



提督「おおう……」

提督「なんだあれ、なんであんな立派な看板が」

霞「清霜が一人で作ったのよ」

提督「まじか」

朝霜「マジだぜ」

霞「あれを見ちゃうと、どうしてもね」

提督「……そうか」

霞「そうよ」

提督「ふむ……」

霞「……」

朝霜「……」

提督「……」

清霜「~~♪」シューッパチパチッ

提督「いや、ちょっと待て」

提督「看板を作るのは良しとしよう。飾り付けもだ。……だが溶接する必要はあるのか?」

霞「ないわ」

朝霜「ないなぁ」

提督「……」

提督「……おーい! 清霜!」

清霜「あれ? 司令官! みてみて! これ、清霜が一人で作ったんだよ! すごい? すごい?」

提督「……おう、偉いぞ清霜。で、質問があるんだが」

清霜「なぁに?」

提督「その資材の山はなんだ」

清霜「!」

提督「……」

清霜「……てへっ、失敗しちゃったの。大丈夫、清霜が責任持って処分するから、大丈夫、任せて!」

提督「……そうか、一人だと大変だろう。人を寄越すから、手伝ってもらいなさい」

清霜「い、いらないよ! き、清霜に任せてってば!」

提督「……見たところ」

清霜「な、なにー?」

提督「その看板、鉄材しか使っていないようだが」

清霜「か、かっこいいでしょ!」

提督「そうだな」

提督「……紙やらリボンは使わんのか? 装飾もいるだろう、景気よくパチパチするならそういう凝ったことはせんのか?」

清霜「えー、撤去するとき邪魔になるし、板状の方が隠しやすい……じゃなくて、そういう気分!!」

提督「なるほど、終わったら全部徴発するから、覚悟しとけよ」

清霜「やだーーーー!!!!!!」


提督「こんなのしかおらんのか……」

今日はここまで

____


提督「えー、ではこれより、諸々色々、なんやかんやをなんやかんやのため、……食え!」

大淀(提督、もう少し理由をはっきりさせてくださいよ)

提督(うるせー! こっちは全然納得いってないんだよ!)

大淀(諦めてください。もう料理は卓に並んでいます)

提督(ちくしょう……)

「これ、なんのパーティー?」

「さぁ、なんだろう」

「けどなんでトンカツ? どうせなら間宮のデザートパーティーとかさー」

「センスないよねー」

提督(好評なのかこれ)

大淀(半々でしょうか?)

提督(お前なぁ……)

大淀(感謝されすぎるよりは良いのでは?)

提督(うぐっ、いやしかしだな……)

大淀(いいですか? 足柄さんはカツを作りたい。私は予算の無駄遣いがしたい。貴方は実積が欲しい。まさに誰も損しないグッドでナイスなパーティーです。アゲていきましょうよ)

提督(……今お前、予算の無駄遣いっつったか? というか、なんの実積だよ)

大淀(それはほら慰労とか)

提督(これが慰労になるかぁ? むしろ胸焼けしそうなんだが……)

大淀(勝てばいいんですよ勝てば。少なくとも思い出にはなります)

提督(お前さぁ……)

大淀(ですので公的にも無駄遣いにならないように、提督、ひとつビシッとお願いします)

提督(……しれっと巻き込んだなお前……)

提督「……あー、まぁそのなんだ。諸君らは日々戦ってる訳だからな。カツを食って戦いに勝つ、つってな。これからも各員、精進されたしってやつだ」


「司令官親父くさーい!」

キャハハ
  ウフフ

提督「……。よし、霧島、音頭取れ」

霧島「はい! では皆さんのグラスをチェックワンツー、乾杯!!」

 か ん ぱ ー ー い !


大和「本当に! 本当に全部食べていいんですね!? 食べますよ!?」

提督「あぁ、やまちゃんはほんとうに頼もしいなぁ」

朝霜(まぁ食えるもんならな)

矢作「大和、それは少しはしたないと思うわ」

大和「うっ……」

提督「……馬鹿者! 矢作この、馬鹿者!」

矢作「なぜ二度も言ったの?」


提督「私はやまちゃんがな、最後までうまいうまいと食べてくれることを切に願っているのだ。それを貴様、遠慮して食べろと、……この馬鹿者!」

大和「て、提督……!」

矢作「なるほど。その言い方は卑怯だけど、そう言われると確かに」

提督「いいか、大淀と足柄が全力で悪ノリして用意したトンカツだぞ。ちょっとやそっとで食いきれる量だと思うな! 気合い入れていけ! 最後は泣きながらでも無理矢理詰め込め!」

大和「はい!」

矢作「いやいや、命をありがとうって知ってる?」


磯風「なぁおい、司令。そうは言うがあの大淀が食べ物を粗末に扱うとは思えん。なんだかんだと言ってちゃんと食べ切れる量を調整しているだろうさ」

提督「甘い! 足柄と組んだ時の大淀はなぁ! 『下準備と後始末は完璧にするけど過程はまぁなんとかなるだろう』くらいで見切り発車するんだよ!」

磯風「ふん、随分と悪し様に言うがな、司令。あの鎮守府きっての才女が、なぁ? 初霜」

初霜「え? ……うーん……」

磯風「む?」

初霜「さ、最終的にはきれいになくなっていると思います! ……最終的には」

磯風「何故、含みのある言い方をする」


朝霜「まぁまぁ、飯が不味くなる言い争いはやめようぜ。浜風を見ろよ」

浜風「ふぇっ!?」

提督「うむ。いい食べっぷりだぁ……! 実にうまそうに食うなぁ! こうあるべきだよなぁ!」

浜風「えっ、でもこれ、本当に美味しい……」

初霜「美味しいですよね。最初に聞いた時は嫌な予感がしましたけど、これならたくさん食べられそうです」

朝霜「まー、姉御は今もその美味しいカツを揚げ続けてるんだけどな」

初霜「……美味しいんですけどね、本当に」


磯風「わからんな。何故司令は誰も得をしないことを考えるのだ。それは杞憂と言うものだろう? 大淀とて我々と喧嘩がしたいと思って企画した訳ではないないだろうに。素直に食べればいいじゃないか」

矢作「そうそう、カツで勝つでしょ? そう言うの嫌いじゃないわよ、私」

磯風「うむ」

提督「……大淀も計算はしているだろう。恐らく、後で振り返れば文句の付けようがないのだろうってのは想像がつく。……ただなぁ、あいつの場合、食卓に阿呆ほどカツが並んだら面白いだろうな! って理由で平気で実行するからなぁ」

矢作「別にいいじゃない。大量の油物が並んで胸焼けしてるおじさんの僻みにしか聞こえないわよ?」

提督「うっ、まぁ、そうだ。そこはその通りだ。私が悪いな。悪かったよ」

浜風「提督は食べないんですか?」

提督「もう少し他を回った後で食べる。……なんだかんだ言って、美味しそうに食べる若者を見るのはな、好きなんだ。浜風のようにな」

浜風「……え、えっと、あんまりその、恥ずかしいというか……」

雪風「あの!!」ガラガラ

矢作「あれ、どこ行ってたの? 雪風」

あっ・・・


雪風「足柄さんが、6人前揚がったと言っています!」

矢矧「えっ、いや待って、ここはもう揃ってるわよ? 他のテーブルじゃないの?」

雪風「追加だそうです!」

矢矧「つ、追加って、まだ食べきってないわよ!?」

雪風「『いっぱい食べてほしい(はーと)』だそうです!」

提督「……じゃあ私はもう行くからな!」

矢矧「あ、ちょっ!」


磯風「……まさかとは思うが、まだ揚げているのか?」

雪風「『いっぱい食べてほしい(はーと)』だそうです!!」

磯風「……そうか」

矢矧「……大和……」

大和「はい?」

矢矧「提督もああ言ってたし、私たちに遠慮せず食べてね? ……ほんと、遠慮しなくていいから」

大和(……発言の意図が見え透いてるのが少々寂しいけれど、頼られて悪い気はしないわね……!)

大和「任せてください! こんなの私にかかればチョチョイのチョイですよ!」

矢矧「さすがね……!」

朝霜「ひゅー!」

初霜「……流石です」



大和(ううっ、見え透いてる。すごく見え透いてるけど……気持ちいい……!)


提督(ふむ、やはり主導権握ってる者が脳筋よりだと頼もしいな。やまちゃんもいることだし、あそこは大丈夫だろう。……私もあそこで食べるかな?)

提督(……しかし、存外に好意的だったのがあれだ、癪だな。こういう時は……っと)

曙「あいつら頭おかしいんじゃないの!?」

提督(おっほ)


曙「限度ってもんをいい加減覚えなさいよ! 何回目よこういうの!!!」

初春「やめんか。場をわきまえよ」

提督「お、おぉ? 珍しい席順だな。どうしたどうした、おら、さっさと食えよ」

曙「……ぶ、っっっっっっっっころす!」

初春「……やめんか、まったく」

漣「まぁまぁご主人様、ぼのいぢりがウルトラ楽しいのはわかりますけど、今回漣も被害者の立場なんで、あんまり煽ってるとぶっ飛ばしますよ?」

曙「ふしゃーーーー!!」

朧「どうどう」

潮「曙ちゃん、落ち着いて……」

初春「貴様らは黙って座っていられんのか……?」


提督「そっち側の席は随分と落ち着いているな。お前らも命をありがとう派閥か?」

初春「なんじゃその胡散臭い派閥は。道徳としてあるべきものを旗標にするでない」

若葉「命をありがとうはともかく、今回のような催しは嫌いではないぞ」

提督「ほう、その心は?」

若葉「見ろ。あそこに積まれたカツの山を。まるで豚の餌だ。……あれを食わされると思うとな、こう、滾るものがあるのだ」

潮「ひっ」

漣「かばちんさぁ、変態もいい加減にしないとタイーホされるますぞ?」

若葉「何故だ? お前たちはアレを見て何も思わんのか? 曙などは若葉と同じ感想を持つと思ったのだが……」

曙「ざっけんな! このクソドM!」

朧「反骨精神が湧いてくるだろうって話じゃないの? ……まぁ確かに、絶対食べきってやろうって気になるかもね」


漣「おぉ、精神的ドMはシンパシー感じるのネ」

朧「負けず嫌いって言ってくれない?」

漣「肉体的ドMの方がヨロシ?」

朧「余計に変態っぽさが増したんだけど、それはどういう意味?」

漣「タイイクカイケー」

朧「なるほど」

初春「ふぅむ、いやしかし若葉の戯言に同調する者が現れようとはの。ちなみにわらわは非体育会系じゃ。畳の上で一生DSとかしていたい」

朧「……いやいや、一つの台詞の中に何個もツッコミどころをいれないで」

漣「DSて! せめて3DSっしょ!!」

朧「そこじゃないし」


曙「で、なんでこんなことになったのよ」

提督「こんなこと?」

曙「……あの、クソチビは何してたのよ。腹黒メガネとトンカツ狼のお目付け役の」

提督「霞か? 霞なら今すごい剣幕でキャベツ切ってるな。すごいぞ。鬼みたいだった」

曙「阿呆かあいつは!」

提督「たまに阿呆になるんだ、あいつは。今回はもうキャベツとしか絡まないつもりかもしれん」

曙「な、なんでそんなことに……」

提督「まぁこんなことになったからそんなことになったんだろう。……はっはっは、いや、参ったな」

曙「ヘラヘラすんな!!!」

提督「じゃ、私はそろそろ行くから、頑張って食えよ」

曙「ざっけんな! 一人で食え! むしろ食わせて来なさいよ!!」

提督「さらばだっ!」



提督(あいつはほんと、欲しい時に欲しい一言をくれるなぁ。今度個人的に何か買ってやろう)

提督(さて、次はと)

はい、ここまで。


矢作だとなんか寂しいなと思った(白目)

初春「おう、待たんか貴様」

提督「お、おお? 追いついてきたのか、とんかつはどうした」

初春「食らうたぞ。一片二片ほどの」

提督「それは食ったうちに入らん。あとで腹が減っても知らんぞ」

初春「かかか、童のような扱いをするでないわ。なに、腹が減ったらまた食らえばよいじゃろ」

提督「カツをか?」

初春「うむ」

提督「まぁ、冷えたカツでいいならそれでもいいが……」

初春「そんなことより貴様、卓から逃げ回ってなにをしておるのじゃ。行儀の悪い」

提督「……いや、なんていうの? ほら、おっさんには目に毒というか」

初春「ふむ? 気の毒じゃの。寄る年波には勝てんと言うが」

提督「お前には言われたくない。いつの時代の人間だよ」

初春「いつの時代、と言われてもの。れっきとした現代の若者じゃぞ。ツイッターとかもやっておる」

提督「ツイッターとか言うな。キャラ付けなら徹底しろ」

初春「キャラ付け? ……ふむ、いやそういう家庭に育ったからとしか言えんが、まぁ確かに社会に出て少し驚いたものじゃ」

提督「まぁ社会と言うが鎮守府も充分閉じてるけどな。クローズドサークルだ。いやしかし、いいのか? ツイッターとかやってて。怒られない?」

初春「なぜじゃ?」

提督「いやほら、機密とかそういうほら、ややこしいのがいろいろ」

初春「へーきへーき、みんなやってるもん」

提督「もんってお前……」

初春「SNSでの、自らの身辺を類推させるような情報を漏らすようなことは愚か者のすることじゃ」

提督「そりゃ立派だが、SNSって。いよいよお前のキャラクターが謎だな。おっさんが一瞬詰まる横文字を使うんじゃない」

初春「かかかっ、妾を年寄り扱いするからじゃ。言葉遣いは治らんでも、使う言葉は覚える。これじゃの」

提督「……ふーん」

初春「で、貴様、なにをしておるのじゃ。食事中の女子に茶々を入れて回るような真似をして。恥を知れ恥を」

提督「なんとでも言え。……実は阿鼻叫喚が見られるかと思っていたのだが、思ったより皆受け入れているのが癪だ」

初春「は?」

提督「人の不幸は蜜の味という。もう少し皆のテーブルを回りつつ、怨嗟の声が上がり始めた頃に私も食べ始めようかと思っている」

初春「……貴様がそれでいいというなら何も言わんが」

提督「私は怒っているのだよ。恨みを共有してみんなで幸せになろう」

初春「最低じゃぞ、貴様」

提督「……で、付いてくるのな、お前」

初春「いや、なに、腹ごなしじゃ。ほれ、あすこに貴様の望むような声をあげる者ありじゃぞ」


山城「食べなさいあなたたち! 黙って食べなさい!」


提督「うむ、……うむ? うーん、……ちょっと予想とは違うが、いい感じだ」

満潮「だから、食べないとは言ってないでしょ」

山城「ひときれごとにため息を吐く人間がなにを言っても無駄よ」

満潮「そりゃため息のひとつも出るわよ。なんの罰ゲームよこれ」

山城「罰ゲームじゃありませんー。おいしいおいしいとんかつですー。……あのねぇ、最初くらいもっと美味しそうに食べなさいよ」

満潮「どう食べようが勝手でしょ? ……ところで私、表情筋が固いことで有名になろうと思うの」

山城「阿呆の発言で誤魔化そうったってそうはいきません。いかのなんとかよ。子供はもっと子供らしく食べなさい。食べて」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年03月04日 (日) 15:42:23   ID: OeWMDkiM

この噛み合ってるような噛み合っていないような、なんとも特徴的なふわふわ感を残したキャラ付けというか台詞回しはちょっと貴重だと思うw 独特なセンスがあって面白い。もっと読みたい。

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom