P「なんて置き手紙を見つけてしまった」
P「いや知らねーよ…」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1506836029
P「せんせぇってことは、薫だよな多分」
P「良く見たら"よ"が小文字になってないし」
P「かわいいな」
P「赤ペンで修正してあげよう」キュ
P「……って違う、そんなことより」
P「ちょっと電話しに席外してたら、一体どういうことなんだ。何だよ"どこでしょうか"って」
P「唐突すぎるだろ。話の流れがどこでしょうかだよ」
P「…もしかして家出とかじゃないよな」
P「"探さないで"とかだったらどうしよう……立ち直れないかもしれない…」
P「あ、裏にもなんか書いてある」ピラ
『ヒント、このへやのなか!』
P「部屋?」
P「…ははーん、分かったぞ。要はかくれんぼだ」
P「遊びたいならそう言えば良いのに。わざわざ書き置きするなんてかわいいやつめ」
P「事務所の中で遊ぶな、と本来なら言いたいところだけど……」
P(誰かさんたちと違ってボールが飛び交う訳でもないし、まぁ大目に見てあげようか)
P(そもそも本人がいないんじゃしょうがない。見つけ出さないことには始まらないな)
P(それにアレだ、仕事サボる口実にもなる)
P(アイドルとの交流と言い張れば、仕事してなくてもワンチャンあるに違いない。しめしめ)
P「……しゃーない、付き合ってやろうか」
P「さて、と」
P(見渡した感じ、視覚的な違和感はないな。まぁ、目に見えるところにいたらかくれんぼにならんけど)
P(部屋の中って言っても、隠れられる場所はそう多くない)
P(薫の大きさなら、書類をどかして空いたスペースにだって入れそうだ)
P(……が、この短時間で紙束やファイルを動かして、綺麗に隠蔽する時間はなかったはず)
P(とりあえず、本棚は全部スルーで良いかな。後回しだ)
P「後は、影になってるところとか……裏をかいて、実はこの部屋にはいないとか。うーむ」
P(…そうだ。この部屋には1人、住人がいるんだった。あいつなら薫のこと見てたかもしれない)
P「なぁ輝子、何か知らない?」ヒョコ
星輝子「フッヒャァ?!!」
龍崎薫「あっ…」
P「えっ」
P「えぇー…」
P「まさかの一発ツモ」
輝子「そんな……わ、私のマイベストスポットが…こんなに、あっさり見破られるとは……」
P「マイと私が被ってるぞ」
薫「も、もうみつかっちゃったぁ」
P「俺もこんなワンパンチだなんて思ってなかったよ…さっきの思考時間は何だったの…」
薫「もう、せんせぇ! みつけるの早すぎだよぉ!」
P「ご、ごめんなさい…」
P「……なんでデスクの下なんだ、薫?」
薫「えっとね、かくれるとこ探してたら、輝子ちゃんと目があったの!」
輝子「は、入りたそうにしてたから……来るか?って、思わず…」
薫「うん!」
P「なるほど」
輝子「狭いから、ちょっとだけ窮屈だけどな……フヒ…」
P「悪かったな狭くて」
輝子「あ、ちが……狭いのは、キノコ置いてるからで……プロデューサーは悪くないんだ…」
薫「さいしょね、ならんで座ったら、ぎゅうぎゅうだったんだぁ」
輝子「でも…キノコ外に出したら、不自然だし……」
P「そりゃそうだ」
輝子「た、縦なら…入るかなって思って…」
P「あぁ…確かに。2人で固まって、丁度ぴったりぐらいのスペースだな」
薫「かおる、頑張ってちっちゃくなってたんだよ?」
P「輝子が抱っこしてたのはそういう事情だったのか」
輝子「コンパクトに収納……名付けて、かおるキノコ……フフ」
P「ポケモンかよ」
P「それにしたって、こんな近くに隠れなくても良かったろう」
薫「だって入ってみたかったんだもん……」
輝子「そ、それに…こっちも、真っ先に覗かれるなんて、思わなかった…」
P「輝子なら何か知らないかなって思っただけなんだけどなぁ」
輝子「うぅ…キノコ下暗し作戦、失敗か…」
薫「きのこもとくらしぃ…」
P「灯台な、キノコじゃなくて」
輝子「…フ、フヒヒ」
P「ど、どうした急に」
輝子「あ、いや……薫ちゃん抱いてると、あったかくて、イイな…これ……」
薫「そうかなあ?」
輝子「ゆ、湯たんぽとか、あんな感じ…」
薫「ゆたんぽ!」
P「子供って体温高いからなぁ」
輝子「うん…。これなら、暖房要らずだね……フヒ」
薫「へへ! じゃあ、かおるたんぽが輝子ちゃんあっためてあげる!」
輝子「眩しくない太陽みたいだな……なんて素晴らしい、ぬくもり…」ギュ
薫「ひゃ、くすぐったいよー♪」
P「…仲がよろしくて結構なことだ」
P「……さ、俺は仕事戻るかぁ」
薫「あっ! せんせぇ!」
P「ん? どったの」
薫「明日も、かおるのことみつけてね!」
P「えっ」
――
―
~次の日~
『 かおるはどこでしょうか! かおる 』
P「マジかよ…」
P「え? もしかして毎日やるのこれ」
P「…あ、"しょう"が直ってる。偉いぞ」
P(輝子といたからかな……しょうだけに、なんつって)
P「花丸つけてやろう」キュキュ
P「裏には…、」
『ヒント こういしつ』
P「更衣室? 女子の?」
P「…入れってか」
【更衣室前】
P「……まさかいきなり開ける訳にもいくまい」
P「もしもーし、誰かいるー?」
「ひゃあ! ぷ、プロデューサーさん!?」
P「その声……幸子か」
P「なぁ幸子?」
「は、はい! カワイイカワイイ幸子ですが?!」
P「ちょっと用事あるんだけど。ドア開けて良いか」
「用事? ボクにですか? 今出ますので、少し待って……」
P「いや、更衣室に」
「更衣室!!? 女子更衣室に用事なんて、どんな趣味しているんですか?!」
P「どんなもこんなもないよ、大した用じゃないから。お前だけ?」
「え、えぇ。ボク1人ですけど…」
P「まだ着替えてんの」
「や、ちょっと待って…! まだ、ソックスが…」
ガチャ
P「入るぞ」
輿水幸子「ふぎゃーーー!!?!?」
P「お、みんなちゃんと綺麗に使ってるな。偉い偉い」
幸子「な、なな、な……っ」
幸子「なんで入ってくるんですか?!」
P「着替え終わってるんでしょ」
幸子「まだソックス履いてないって、ボク言いましたよね!?」
P「靴下なんざ着替えの内に入らんだろう。ノーカンノーカン」
幸子「入ります! 裸足なんて、はしたないじゃないですかっ」
P「別に気にしないのに」
幸子「ボクは気にするんです!」
P「言い返してる暇あるなら靴下履けよ…」
幸子「……ハッ。そ、そうですね! ヘンタイにこれ以上、ボクの足を見せつける訳にはいきませんから!」
P「誰が変態だ」
幸子「ボクの生足を拝みに女子更衣室に侵入するプロデューサーさんなんて、立派なヘンタイです!」
P「被害妄想がすぎる」
幸子「うぅぅ……こんなにカワイイボクの素足が、ヘンタイプロデューサーさんの前に晒されてしまうなんて…」
P「なんだ今さら、足の1本や2本や3本」
幸子「3本もありませんよ」
P「じゃあ1本か」
幸子「勝手にボクの足を減らさないでください!」
P「ところで、薫見なかった?」
幸子「もっと興味示してくれたって良いじゃないですかぁ!!」ウワーン
P「見られたいのか見られたくないのかどっちなんだよ!」
――
―
(靴下を履く音)
幸子「薫さん?」
P「うん。ここにいると思うんだけど」
幸子「もしや、更衣室にいる薫さんを狙って……? ヘンタイな上にロリコンまで拗らせましたか」
P「違うから。ほらこれ」ピラ
幸子「"かおるはどこでしょうか"……なんです、これ?」
P「手紙。かくれんぼしてんだ、今」
幸子「かくれんぼ…」
幸子「この花丸は?」
P「それは俺が描いた。薫の成長の証だ」
幸子「はぁ…?」
幸子「よく分かりませんが。薫さんなら、今日は見ていませんよ?」
P「そっか」
幸子「そもそもボクだって、今さっき事務所に着いたばかりなんですから」
P「あ、そうだったの」
幸子「そうです! 寄り道もせず、学校から真っ先に事務所へ到着したボクに、何かかける言葉はないんですか? ヘンタイプロデューサーさん」
P「だから変態じゃねっつの」ペチ
幸子「あぃたっ!」
P「あんまり人を変態呼ばわりするんじゃありません」
幸子「……もう、今日は酷い日です」
P「今のは自業自得だろ」
幸子「足は見られるし、おでこは叩くし…」
P(足見られんのがそんなに嫌か)
幸子「せっかく早く事務所に着いたのに……うぅ…」ジワ
P「んー…」
P「……悪かったよ、すまん」
幸子「っ!」
P「えらいえらい」
幸子「……ふ、ふふーん♪ 他に何か、忘れてはいませんか?」
P「かわいいかわいい」
幸子「そうです、それで良いんです! やればできるじゃないですか、ヘンタイプロデューサーさん♪」
P「だから変態じゃねえって!」ワシャシャ
幸子「ふぎゃああ、髪がー!」
P「……さて、幸子のご機嫌も直ったことだし」
P「開けるか、ロッカー」
幸子「へ?」
幸子「ちょちょ、開けるって……正気ですか?!」
P「もちろん」
幸子「非常識です! ここ、女子更衣室ですよ!?」
P「知ってるよ」
幸子「男性に見られたくないものとか入っていたらどうするんですか!」
P「下着とか?」
幸子「直球! もっとオブラートに包んでですね…」
P「充分包んでるだろう。パンツとかブラって言った方が良かったか?」
幸子「ちょっと!」
P「そもそも人肌を包むのが下着なんだから、これ以上包んでやる必要なんかないでしょ」
幸子「いい加減セクハラで訴えますよ」
P「ウィッス」
P「下着なんか見えるところに置きっぱなしにしてる方が悪い。以上」
幸子「そ、そんな横暴な」
P「だいたい、お前らが履いてるようなお子ちゃまぱんつに興味ないよ」
幸子「くっ……お、大人向けの下着があったらどうするんです」
P「良い大人が下着なんか放置する訳…」
P「……してそうなのが居るなぁ、何人か」
幸子「でしょう」フンス
P「なんでお前が偉そうなんだ」
幸子「ボクが更衣室の、最後の砦にならないといけないからです!」
P「番犬か」
幸子「わん!」
P(かわいい)
P「…じゃあ幸子が開けると良い」
幸子「ぼ、ボクですか?!」
P「おう。女子が開けるんならなんも問題無いし、丁度良いな」
幸子「それは…まぁ、確かに……」
P「俺がロッカー開けるのには反対なんだろう?」
幸子「…はい」
P「薫がどこかに隠れてる以上、避けては通れない道なんだ。協力してくれ」
幸子「わ、分かりましたよ」
P「うむ」
幸子「その代わり、今度ボクの買い物に付き合ってもらいますからね!」
P「えぇ、なんで…」
幸子「お願いを聞いて欲しいのなら、それに見合った報酬が必要だと思いませんか?」
P「かくれんぼの次は荷物持ちかよ…」
幸子「どうなんですか、プロデューサーさん!」
P「プリンとかじゃダメなの? 今すぐにでも買ってやるけど」
幸子「あ、それも良いですねぇ♪ では、ショッピングの次はスイーツ巡りということで!」
P「しまった、墓穴った」
ガタッ
幸子「ひぅっ」
P「む、そこか」
P「よしいけ! 幸子!」
幸子「もうっ…、まだ話は済んでいないのに……えいっ」
ガチャ
薫「せんせぇ!!」
幸子「フギャ!!」
ヘゴチン!
薫「いたたた……うぅ~」
P「大丈夫か…?」
薫「うん、へいき」
P「お、いいぞ。強い子だな」
薫「でしょー? えへへ!」
薫「ねぇねぇせんせぇ! 幸子ちゃんと、プリンたべに行くの!?」
P「え、あぁ……そんな話になりかけてたけど」
薫「かおるも! かおるもプリンたべたい!」
P「増えた」
薫「いっしょにお出かけしまー!」
P「うーん…」
薫「…だめ?」
P「……分かったよ、今度行こうか」
薫「わーい! たのしみだね、幸子ちゃん! ……幸子ちゃん?」
幸子「きゅ~……」
薫「あ」
P「しんでる…」
――
―
~また次の日~
P(昨日はあれから、気絶した幸子を介抱してたらいつの間にか就業時間が終わっていた)
P(結果的に仕事をサボってしまったぞ。しかたないよな、うん。わはは)
P(2人のおでこはちょっとだけ痣になっちゃったけど。若いしすぐ治るだろう)
P「今日明日に撮影とか入ってなくて良かった……おっと」
『 かおるはどこでしょう? ヒント、じむしょのへや 』
P「今日は靴棚に入れてきたか…」
P「ということは、隠れるのに時間がいる場所だな? いよいよ本棚か」
P(あるいはどこか引出しの中とか。コピー機の裏なんかもありえる)
P(案外、また机の下とかにいたりして…)
P「なんてな、そんなまさか」
ガチャ
P「お疲れさまです、戻りました……」
姫川友紀「よーし薫ちゃん! 次はもっと、強く投げてみよっか!」
薫「つよく……えいっ」ヒュ
友紀「ストラーイク! 良い球投げるねぇ!」
薫「そう? えへへ」
友紀「うんうん! 将来有望な子が多くて、ゆっきーも鼻が高いよ! ほいっ」
薫「っとと……きゃっち!」パシ
友紀「ナイスキャーッチ!」
薫「へへー!」
P「……」
友紀「いやぁ……ちっちゃい子たち用のグローブ、買ってきた甲斐があったなぁ」
薫「キャッチボール、たのしいね!」
友紀「でしょ~? じゃあ次は、ポンポンって弾ませて、ゴロを捕る練習をしよう!」
薫「ごろ?」
友紀「カキン! って打って、コロコロ~って転がった打球をゴロっていうんだけどさ」
P「ほう」
友紀「こう、下に向かってポイっと投げたボールを、姿勢を低くして…」
P「低くして?」
友紀「うん! 腰を落としてね、低く……えっ?」
P「よぉ」
薫「あっ」
友紀「げっ」
P「楽しそうなことしてるなぁ友紀」
友紀「あ、いや えっと……お、おかえり~……」
P「おう、ただいま」
薫「せんせぇ、かえってきちゃった…」
P「薫も。随分目立つところに隠れてるんだな」
薫「う、うん……友紀ちゃんとあそんでたら、かくれるの忘れちゃった」
P「そうかそうか。てことは、結構前からやってたってことだな?」
薫「うん…」
友紀「ちょ、薫ちゃん! しーっ!」
P「……なぁ友紀」
友紀「は、はい!」
P「前からずーーーっと言ってるよね、事務所でキャッチボールするなって」
友紀「……はい」
P「遊ぶんなら外に出てやりなさいって、何回言った?」
友紀「…あ、新しいグローブ見てたら、我慢できなくって、つい…」
P「薫の付けてるのか」
友紀「うん…」
P「だからって、ボールで遊んで良い場所じゃないことぐらい、いい加減分かるだろ?」
友紀「うぅ……」
薫「せんせぇ……わるいのは、友紀ちゃんだけじゃないんだよ? かおるも…」
P「おおかた、隠れるの手伝ってもらおうとしてたら、流されて遊んじゃったってところだろう」
友紀「うぐっ」
P「だいたい、お前はいつもいつも落ち着きというものがだな…」
ガチャリ
結城晴「うーっす」
P「…晴か。お疲れ」
晴「オッス。……空気重くね? なんかあった?」
薫「えっと…」
晴「おう、薫。グローブなんかして、遊びにでも行くのか?」
P「あぁ、これはな…」
友紀「今だっ」バッ
P「あっ! 待てコラ!」
友紀「薫ちゃん、晴ちゃん! 公園行くよ!」ダッ
晴「え?」
P「逃げるな!」
友紀「じゃーねプロデューサー! お説教は、また後で聞くから!」ピュー
薫「ま、まってよー! 友紀ちゃーん!」
晴「………なんだか良く分かんねーけど、遊ぶんならオレも行くぜ! サッカーボール取ってくる!」
P「チクショウ! 素早いやつばかりだ!」
P「晴ーっ! 後でユッキのこと、連れて帰って来てくれー!」
晴「オッケー!」
P「頼む! 家に逃がすんじゃないぞー!」
晴「任せろー」
P「全く…」フゥ
薫「……せんせ?」ヒョコ
P「ぅわ! ビックリした」
薫「ご、ごめんなさい」
P「あ、いや。もう行ったのかと思ってたから…」
薫「あのね、えっと」
P「?」
薫「友紀ちゃんのこと、おこらないであげて?」
薫「グローブほしいって言ったの、かおるなの。だから…」
P「…ふぅん」
薫「えっと、ごめんなさい!」
P「……うん。事務所の中でキャッチボールは、もうしないようにな」
薫「あと、かくれんぼも忘れちゃって…」
P「あ、そっち」
薫「明日はちゃんとかくれるから、さがしてくれる?」
P(本当なら、事務所で遊ぶの自体あんましオッケーしたくないんだけどなぁ…)
P「……まあ、良いか」
薫「じゃあ…?」
P「危なくないところに隠れるんだぞ?」
薫「うん!」
P「さ、公園行ってきな。野球でもサッカーでも、いくらでも遊んで来い」
薫「うん! 行ってきまー!!」
P「怪我すんなよー」
薫「はーい!」
タタタ…
P「…やれやれ」
――
―
~またまた次の日~
『 ヒント → ふとんのあるところ 』
P「……ヒントだけかぁ」
P「そろそろ書かなくても伝わるとはいえ、省略されてしまうのもそれはそれで寂しいものがある」
P「さぁ、テンポ良くいこう。今日は薫もレッスンがあるからな」
P「事務所内で布団といえば……」
【仮眠室】
P「おーい、薫やーい」
荒木比奈「………ぐぅ」zzz
P「…っとと。比奈が寝ておる」
P「そうか、今日はこいつもレッスンだったか」
P(時間が来るまでの仮眠なんだろうけど……まーた徹夜でもしたのかね)
P(静かにしておいてやるか。でも、この部屋のどこかに薫が…)
比奈「………んぁ?」
P「む。起きたか」
比奈「…あれ、プロデューサー。ぉはよーございまふ…」
P「わり、起こしちゃったか?」
比奈「あー……タイマー鳴ってない…。まだ早かったっスね……ふわぁ」
P「また徹夜?」
比奈「そーなんスよ……原稿進めてたら、勢い余って朝どころかお昼に……」
P「…先生も大変だね」
比奈「いえいえ、好きでやってることなんで…」
比奈「なんかあったんスか…? レッスン中止とか…」
P「いや、そんなことはないけど」
比奈「ちぇ、なーんだ…」
P「ちょっと探し物をね」
比奈「探し物…」
P「ちょっとだけゴソゴソするけど、気にしないで寝てていいから」
比奈「ふぁあい……」
――
―
P「んー……いないな」
P(ベッドの下にも、布団しまってるタンスにもいない)
P(もしかして、この部屋じゃない…? でも布団っていったらここしか…)
比奈「…さっきから何探してるんスかぁ?」
P「薫」
比奈「かおる……薫ちゃん?」
P「うん」
比奈「かくれんぼでもしてるんスか」
P「そんなとこ」
比奈「へぇ……私が来た時は誰もいなかったっスけどね…」
P「そっか」
P「寝てていいんだぞ?」
比奈「寝てるっスよぉ。気分はまだ夢の中なんで…」
P「そうかい」
比奈「ほわほわっス」
P「ほわほわか」
比奈「二度寝最高…」
P「わかる」
比奈「それにしても……」
P「?」
比奈「今日のベッドは、なーんかぬくぬくっスねぇ…ふへへぇ…」
P「…そりゃよかったな」
比奈「もしかして、干したてっスか…? ラッキーっス」
P「そうかもね」
比奈「んんー…♪ むにゃむにゃ」
P「ほわほわしてるな」
P「……ん? 暖かい?」
P(まさか…)
P「ちょい失礼」
比奈「ん……なんスか、プロデュ…」
P「せいっ!」ガバァ
比奈「っぎゃーーーっ!! ちょっとぉ!??」
比奈「な、何なんスか?! 急に布団剥いで!」
P「はいはい先生、落ち着いて」
比奈「落ち着いてなんていられるか!……って、ありゃ」
薫「………スー」zzz
P「見つけた」
比奈「薫ちゃん、布団の中にいたんスか……」
P「潜って隠れてたら、いつの間にか寝ちゃってたパターンかな」
比奈「多分そっスねぇ。寝苦しくなさそうで良かったっス」
P「気付けよ…」
比奈「いやぁ、あんまり気持ちよくって」
薫「……んー」zz
比奈「かわいい寝顔してるっスね」ナデナデ
P「おぉ…。あの比奈に母性を感じる日が来るとは」
比奈「…どういう意味っスか」
P「そういう意味だよ。日頃のだらしなさを振り返ってみるがいい」
比奈「あー…」
P「お前と友紀のこと、みんな陰で『ダラシナイ・トゥエンティ』って呼んでるの知ってるか」
比奈「なんスかそれ初耳なんスけど?!」
P「冗談だよ」
比奈「冗談に聞こえない…」
P「だったらもっとちゃんと日々を生きるんだな」
比奈「ちぇー。分かってるっスよーだ」
P「さて。目的は果たしたし、俺はもう行くよ」
比奈「え、それだけ?」
P「他になんかあるっけ」
比奈「人の布団ひん剥いといて、何すっとぼけてるんスか………何か言うことあるでしょう」
P「あー…」
P「比奈は犠牲になったのだ」
比奈「古くから続く因縁、その犠牲に……って何言わせるんスか!」
P「流石、良いノリしてるね」
比奈「話を逸らさないでほしいっス」
P「ほら、布団被らないと寒いだろ。お体に触りますよ」
比奈「誰のせいっスか! 誰の!」
薫「……んぅ」
P「しーっ」
比奈「…もうっ」
比奈「全く、人のこと何だと思ってるんスか……私だって一応…」モニョモニョ
P「なんて?」
比奈「何でもないっス!」プイ
P「……まぁ、邪魔して悪かったよ。後はゆっくり休んでておくれ」
比奈「薫ちゃんは?」
P「レッスンまでまだ時間あるし、このまま寝かせといてやって」
比奈「私がっスか…」
P「一緒に寝てると、姉妹みたいだぞ」
比奈「…それ、褒めてるんスかね」
P「褒めてる褒めてる。よろしくな、比奈お姉ちゃん」
バタン
比奈「うーん…。正直、眠気なんか吹っ飛んじゃったっス」
薫「…えへへぇ」zzz
比奈「…まぁいいか」
薫「ままぁ……♪」zz
比奈「……まだそんな年じゃあないっスよぉ…」
――
―
~次の日~
P「お疲れ様でーす」
P「…あれ、薫がいない」
『 今日はヒントなし! かおる 』
P「……ついにノーヒントか」
――
―
輝子「……いや、見てない、ぞ?」
輝子「かくれんぼ、まだ続いてたんだね……フヒ」
輝子「わ、私も、隠れたキノコたちを探しに……また、森に行ってみようかな……フヒヒ…」
幸子「あ、プロデューサーさん! ショッピングに付き合ってもらう約束、ちゃんと覚えてますかっ!?」
幸子「…え? 薫さんなら、さっきあちらに行くのを見かけましたけど。お手洗いでしょうか」
幸子「……まさか、今度は女子トイレですか? やっぱりヘンタイですね…」
幸子「わわっ! か、髪がぁ…!」
――
―
晴「え、薫? 見てねーけど」
友紀「あたしも」
晴「事務所には来てんのか? …ふーん、そっか」
友紀「それよりさ、プロデューサー! 今から晴ちゃんとサッカーしに行くんだけど、一緒にやらない?」
友紀「うっ……や、やだなぁ…。ちゃんと外でやるってば……あはは…」
晴「まぁ、外で見つけたら連絡するから。ホラ、行こうぜ友紀」
比奈「いやー、残念ながら。お力になれず申し訳ないっス」
比奈「原稿? や、まだ仕上がってはないっスけど」
比奈「…あ、ハイ。徹夜は、あんまししないようにしまス。なるべく…できれば……」
P「うーん…」
――
―
「……ほんとに、くるかなぁ」
「大丈夫だよ」
「でも、今日はヒントないし…」
「彼のことだ。事務所をしらみ潰しにしてでも、探しに来るだろうさ」
「だと良いなぁ」
「……ほら、聞こえてきた。階段を登る足音」
「え! ほんと!?」
「フフ。しばらく、静かにね」
「はーい♪」
【屋上】
P(流石にここは……)
二宮飛鳥「やぁ、キミか」
P「おっ! …って、飛鳥だったか」
飛鳥「……なんだいその言い方。ボクが此処にいて、何か不都合でも?」
P「そんなことないよ。お前だけ?」
飛鳥「ああ。見ての通りだけど」
P「そっか」
飛鳥「どうかしたのかい」
P「薫、見てない?」
飛鳥「薫?」
P「さっきから見当たらないんだよな」
飛鳥「…失踪?」
P「どっかのおクスリさんと一緒にするのはやめてさしあげろ」
飛鳥「冗談さ。…いや、居なくなったのならば冗談では済まないか」
P「そこまで深刻な話じゃない、とは思うけど」
飛鳥「ほう……根拠は?」
P「今週に入ってから、かくれんぼ的なことをしてるんだけどさ」
飛鳥「ふむ」
P「今日はヒントなし。色々探してるんだけど、なかなか見つからないんだわ」
飛鳥「表に出た、とか」
P「勝手に外に出ちゃうような子だとは思えないんだよなぁ」
飛鳥「…それもそうだ」
P「事務所の中にはいると思うんだけどね…」
飛鳥「しかし、だからと言って何故此処に? 独りでこんな場所に来るほど、酔狂な子でもないだろう」
P「…正直、手詰まりなんだよ。全然いなくって」
飛鳥「隠れるような場所、此処にはないよ」
P「うーん。もしかしたらと思ったんだけど、見当違いだったか」
飛鳥「残念ながら」
P「何となく、いそうな気がしたんだけどなぁ」
飛鳥「薫じゃなくて、悪かったね」
P「まぁ……こんなところに来る酔狂なヤツなんて、1人しかいないか」
飛鳥「違いない」フフ
P「……薫いないし、戻ろうかな」
飛鳥「そう」
P「お前も来る? なんなら、手伝ってくれるとありがたいんだけど」
飛鳥「……いいや、悪いが遠慮させてもらう」
P「こんなとこにあんまりいると、風邪ひくぞ」
飛鳥「少々事情があってね。ボクは今、此処を離れるワケにはいかないんだ」
P「事情? …まぁ良いけど」
飛鳥「これからどうするんだい」
P「いちからもっかい探すよ。今度はケーキで釣ってみようかな……なんて」
飛鳥「ずるいオトナだな、キミは」
P「あれは不可抗力…って、あれ? 幸子の話、知ってるの?」
飛鳥「……いいや、知らない。"今度は"というからには、モノで誘い出した経験があるのかと推測したまでさ」
P「…ふーん。相変わらず、頭がよく回る…」
ヒュウッ
飛鳥「っと、」
P「うお、風が」
飛鳥「フフ…今日も良い風だ。此処にいると、より一層感じられるね」
P「ちょっと強い気もするけどな」
飛鳥「案外、薫もどこかで風に当たっているだけだったりして。風の吹くまま、気の向くまま、日々の何処かで痛んでしまった心に安息を…
「…っくしゅ!」
P「くしゅ?」
飛鳥「あっ」
P「あ?」
飛鳥「…ッ。いや、何でも」
P「……なぁ飛鳥」
飛鳥「…なんだい、改まって」
P「俺さ、さっきからなんとなくだけど、思うところがあってな」
飛鳥「…」
P「でも、別に問い詰めるほどのことでもないかなって。気にしすぎだと思ってたんだ」
飛鳥「話が見えてこないな、もっと簡潔に」
P(お前にだけは言われたくないぞ)
P「……つまりだな。この違和感、流石に今のでスルーできなくなったってことだよ」
P「ちょっと後ろ、見せてみ」
飛鳥「…うしろだって? ふ、何のことやら」
P「……」ジリ
飛鳥「まぁ待つんだ、落ち着きたまえよ。物理的に距離を詰めるのも悪くないが、ここで1つもっと精神性を大事にしてみるのはどうだろうか。キミなら理解るだろう? 世の中には、眼には見えないココロの距離感というものがあってだね」タジ
「あ、あんまり近いとちくちくするぅ」
P「またなんか聞こえた!」
飛鳥「クッ…」
飛鳥「……は、」
P「は?」
飛鳥「はくしゅんっ」
P「演技下手か!」
飛鳥「演技じゃない」
P「嘘つけ!」
飛鳥「正真正銘、ボクのくしゃみだよ」
P「そんな不自然なくしゃみ聞いたことないぞ」
飛鳥「此処は寒いからね。風のせいかな、全く。くしゅん」
P「どの口が言ってんだそれ」
P「とにかく、後ろ見せてみろって」
飛鳥「…そ、そうか。後ろ、つまり景色を見たいワケだね。なるほど、なるほど。さぁ好きに観ると良い。それ以上近付かなくとも、眼の前に広がっているだろう」
P「お前の背中に興味があるんだよ俺は」
飛鳥「背中を見たいだって? 全く、ボクの後ろ姿なんか見て一体何になると…
P「そういうの今はいいから」ガシ
飛鳥「あ、やめっ……強引なのも嫌いじゃないが、今ここでしなくたってっ」
P「変なコト言うんじゃない!」グイ
薫「うぅ~、くすぐったかったぁ」
P「見つけたぞ、薫」
薫「みつかっちゃった…」
P「全く、どこに隠れてるかと思ったらこんなところに」
飛鳥「……すまない、薫」
薫「ううん、飛鳥ちゃんのせいじゃないよ?」
飛鳥「だけど、」
薫「先っちょが鼻にかかって、こしょかっただけ!」
P「風が吹いたのが運の尽きだったな」
薫「うん。風がひゅうって吹いたら、えくすてふわわーって! かおる、びっくりしちゃった!」
飛鳥「……悪戯な風には、困ったものだ」
P「まぁ、無事見つかってよかったよ」
薫「あのね、ぶわーってなった飛鳥ちゃんの髪、すっごくきれいだったんだよ?」
飛鳥「…そうかい?」
薫「ばさーって広がって、鳥さんみたいだった! きれいなみずいろ!」
飛鳥「それは、その…あ、ありがとう」
薫「えへへ!」
P「くらげみたいじゃなかった?」
薫「え?」
飛鳥「このっ」ゲシ
P「いって」
飛鳥「妙なことを吹き込むのはやめてくれないか」
P「すんません」
薫「くらげ?」
飛鳥「気にしなくていいから」
P「あぁ、忘れて良いぞ薫」
薫「うん。…んん?」
飛鳥「いいから」
薫「でも、飛鳥ちゃんが言った通りだったね!」
飛鳥「だろう?」フフ
薫「うんっ!」
P「何の話だ」
薫「せんせぇなら、かくれんぼでもぜったいみつけてくれるって教えてくれたんだ!」
P「え?」
飛鳥「今日も含めて5日間。……うち1回は数えないとしても、4回全てクリアだ。大したものだね」
P「……あ! まさか、この1週間は」
飛鳥「ご明察」
P「お前が薫をそそのかしたのか!」
飛鳥「…そんな、悪徳な言い方をしなくても良いじゃないか。かくれんぼをしたいと言うから、1つ提案をしてみただけ。そうだったよね」
薫「うん! おてがみ置いて、かくれました!」
飛鳥「遊びの一環、ちょっとしたゲームみたいなものさ。キミも楽しかったろう?」
P「…まぁ、楽しくなかったって言えば嘘になるけどさ」
薫「かおるもたのしかった!」
飛鳥「ならば、ノープロブレムだ」
薫「えへへ、せんせぇ。かくれんぼしてくれて、ありがとう!」
P「え……あぁ、うん?」
薫「いっつもみつけてくれて、かおるうれしかったよ♪」
P「見つかったのに、嬉しいのか」
薫「うん!」
飛鳥「ただ隠れるだけがかくれんぼじゃない、ということだよ」
P「そうなの?」
飛鳥「探す相手がいて、誰かに見つかることで初めて成立する。これがこのゲームの肝さ。見落としがちだけどね」
P「確かに、見つからないまま置き去りにされるのは、なんか嫌だな…」
薫「さいしょね? みつけてくれなかったらどうしよーって、ちょっぴりこわかったんだぁ」
飛鳥「だろう?」
飛鳥「自身という存在を見つけてもらえる喜びは……。うん、何とも形容し難いものだよ」
飛鳥「隠された自分を繋ぎ、暴き、解き明かしてくれる誰かは、必ず居る。そこに気付くことができるのも、この遊戯の魅力にして本質ではないかと、ボクはそう思う」
P「…かくれんぼの話、だよな?」
飛鳥「フフッ。さぁ、どうだろう」
P「結局、全部飛鳥の主導だったんだな……怪しい訳だよ」
飛鳥「…ケーキの件は確かに、はやまった事を言った自覚はある」
薫「ケーキ!」
P「遊んでるのが薫1人だって知ってたこととか」
飛鳥「…そうだったかな」
P「そもそもかくれんぼに対して、やけに理解が早かったし。ちょっとずつだけど、違和感がね」
飛鳥「……やれやれ、ボクの演技もまだまだか」
P「あのくしゃみが無かったら、最後まで気付けなかったかもしれないけどね」
薫「ケーキもたべに行きま!」
P「か、勘弁してくれ……」
薫「え、行かないの…?」
P「行きません。プリンもあるだろ?」
飛鳥「甲斐性なしめ」
P「ひどくない?」
薫「飛鳥ちゃんもケーキ、たべたいよね?」
飛鳥「ああ。楽しみにしているよ、プロデューサー」
薫「ケーキ♪ ケーキ♪」
P「ま、また増えた…」
薫「幸子ちゃんとも、はやく行きたいな!」
飛鳥「なら、一緒に誘えば良い。1人増えるくらいどうってことないだろう」
P「人の財布を何だと思ってるんだお前は」
飛鳥「善は急げだ。さあ往くよ、薫」スタスタ
薫「はーい!」
P「えっちょっ、今から?」
薫「せんせぇも、はやくー!」タタタ
薫「ひゃ! 飛鳥ちゃん、手つめたーい」
飛鳥「そう? まぁ、此処は少々冷えるから」
薫「かおるがあっためてあげる! ぎゅーって!」
飛鳥「…やさしいな」
薫「そう?」
飛鳥「ああ。ひまわりみたいな、やさしい温もりだ」
薫「へへー、輝子ちゃんにもいわれた!」
飛鳥「きっとみんな思っているさ。このあたたかさ、いつまでも手放さないようにね」
薫「はーい」
テクテク…
P「…ほんっと、仲良しさんが多い子だな薫は」
おしまい
おまけ
薫「ねぇねぇ飛鳥ちゃん」
飛鳥「どうしたんだい」
薫「さっき言ってた、『ごういんなの』ってなあに?」
飛鳥「……薫には、まだ早いよ」
P「お前にもはえーっつーの」ペチ
飛鳥「いたっ」
おわり。ロッカーに入る薫ちゃんめんこい
イベント頑張ります
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