【ミリマスSS】クレシェンドブルーの百分の五物語 (22)


これはミリマスssです

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志保「それで、どうして私達は集められたんですか?」

茜「もうすぐ茜ちゃんが企画した合宿だからだよしほりん!」

星梨花「わぁ!そう言えば、もうすぐなんですね!」

静香「理由になってないと思うんですけど……」

麗花「それでね?夜のキャンプファイアーの時に私達5人で怖い話を披露しよう!って事になったの!」

茜「そ、それで今のうちにそれぞれネタ練っておかないと即興じゃ大変だからね!その打ち合わせみたいなものかな」

志保「なるほど……とは言え、今考えろって言われても苦しい事に変わりはありませんが」

静香「怖い話、ね……どう言うのがいいのかしら」

星梨花「私、聞いた事があります……お饅頭が怖いっていうと、本当にお饅頭が襲ってくるそうです!」

茜「プリンが怖い!!」

麗花「じゃあ私が食べておいてあげるね!」



静香「そう言えば、私の学校の階段の怪談なんですが……んふっ」

茜「はい静香ちゃんアウトー」

静香「なっ?!お、面白いじゃないですか!」

志保「はぁ……仕方ないわね。私がお手本を見せてあげるわ」

麗花「茜ちゃん、録音は?」

茜「別にしなくていいんじゃないかにゃあ。それじゃーしほりん!」

志保「はい。これは、とある女の子のお話です……」



彼女は、少し変わった人でした。
人ならざるモノの声が聞こえたり、ソレを生き物だと言ったり。
とてもつまらないギャグを言って、一人で笑っていたり。
そんな女の子と、私は非常に不本意ながら知り合いになったんです。

とは言え、普段から変な言動が目立つ訳ではありませんでした。
普通に学校に通って、普通に友達と会話して。
人間として必要最低限のコミュニケーションはとれる、と。
だから私も、騙されていました。

本当の彼女は、そんなに甘いモノではなかった。
それに気付くのが遅過ぎた事を、私はとても後悔しています。
もっと早くに気付いていれば。
皆んなが、幸せでいられたかもしれないのに。

ある日その女の子が絵を描いていました。
それも、赤い色鉛筆で。
何を描いてるんだ?と。
周りの人がそう尋ねると……

『アルパカです。分かりませんか?』

ーーと。
そう、答えたんです。

私は驚愕しました。
どう見ても、動物園に存在する生き物とは思えない形相の絵だったのですから。
首は長すぎ、足は短すぎ、頭は不気味に、目は狂気に満ちていて、口はまるで怪物の様なソレを。
彼女は、アルパカだと言ったのです。

問い掛けた人も、困った顔をしていました。
もしかしたら、聞き間違いかもしれない、と。
そんな期待を込めて、もう一度問い直すも。
彼女は壊れたロボットの様に、これはアルパカですと繰り返すだけ。

じゃあ、なんで赤で描いているんだ?
次に抱くであろう疑問を、その人は投げかけました。
当然です、アルパカは赤くはないんですから。
でも……




『何を言っているんですか?これは白です』

私の思考が、真っ白になりそうでした。
赤は、白では無い。
そんな事、誰もが知っている常識な筈なのに。
彼女にとって、赤は白で。

あぁ、きっと彼女の見ている世界は、私達とは違うんだ。

そう、実感しました。
それと同時に、恐怖を感じました。
全く別の世界に暮らし、全く別の視点を持った人物が。
私達の日常に溶け込んでいるんだ、と。

そして、そんな女の子は。
今もまだ、この765プロで私達に混ざって。
さも当たり前のように、生活を共にしているんです。
ほら、今貴女の隣で笑っている女の子も。

……別の世界の住人かもしれませんね。




志保「以上です」

星梨花「わぁ……とっても怖いです」

茜「志保りん話し方上手いね、ノーベル賞ものだよ」

麗花「怖すぎてマフラーだね」

静香「……ねぇ、志保」

志保「どうしたの?異世界の住人さん」

静香「張り倒すわよ」

志保「ダメに決まってるでしょ暴力なんて。やっぱり価値観が違うのね」

茜「よーし、次は茜ちゃんのターンだね!」

静香「いいえ、私がいきます」

茜「……」

静香「これは、うちの学校の屋上に関するお話です」



うちの学校の屋上は、基本的に天候が悪くない限り一般開放されてるんです。
以前は色んな人達が屋上で遊んだり何かの練習をしたりしてました。
昼休みになれば昼寝をする人がいたり、こっそりお菓子を食べる人がいたり。
告白なんかにも使われたり、と。

ですが、とある噂が流れる様になってから。
一般開放時に一人で屋上に上がる人はいなくなりました。

曰く、どこからともなく歌が聞こえてきて。
そこで引き返さずその姿を探そうとすると。
一人の女の子が、現れる、と。
そして気がつけば、意識を失っているそうです。

その時何が起こったのか、覚えている人はいません。
皆、その前後の記憶を失う程強烈な何かに出会って。
最初は笑い話にすらなっていたのに、気付けば皆が怖がりだして。
結局、誰も使わなくなったんです。

その事件の真相がどうしても気になった私は。
と言うよりも、なんとなく。
……犯人に心当たりがある様な気がして。
ある日私は、覚悟を決めて一人で屋上へ向かいました。




……誰もいないわね。

屋上へ出たはいいものの、そこには部活の洗濯物が干してあるだけで他には誰もいませんでした。
そんなに都合よく、ソレに出会える訳じゃないのかもしれないわね。
なんて、無駄足だったかと引き返そうとした時。
洗濯物の向こうから、聞こえたんです。

女の子の、歌声が。

びくっ、と身体を震わせるも、驚きで足が動きません。
まずいまずい!早く戻らないと!!
でも、足が動かないし……!
この歌声どこかで聞き覚えが!

……あら?

「……未来、何しているの?」

「あ、静香ちゃーん!歌の練習中!」

未来がいたんです。
そして近くのベンチには、不思議な色をしたペットボトル。
……そういうことね。
確かに、記憶が飛ぶくらいのとんでもジュースだわ。



「あのね、最近誰も屋上に来ないから集中出来るの!」

それはみんなが怖がっているからよ。
どうやら、屋上に来た人にそのドリンクを振舞っていたようでした。
普通のドリンクだった場合は、何も起こらないから怪談の犯人だとは思われない。
アタリを引いた人は、記憶が飛ぶから未来が犯人だという事を忘れてしまう。

……学校の怪談の真相なんて、こんなものなのね。

「まぁいいわ、程々にしておくのよ。変な噂が流れてるんだから」

「らしいね?なんでも、一人で屋上にくると女の人の歌声が聞こえる、って。だから私も確かめようと思って屋上に通ってるんだ」

「ふふっ、それは貴女なんじゃないの?」

笑いながら、屋上を後にしたの。
事務所で話すにはもってこいのネタね、なんて思いながら。
屋上からはまた、綺麗な歌声が聞こえてきたわ。
未来、頑張ってるのね。



静香「以上です。怪談話の真相なんて、実際意図してなかった誰かが原因なんですね」

茜「いやいやいや!いやいやいやいや!」

志保「それは……まぁいいわ、未来なら大丈夫でしょうし」

星梨花「未来さん、頑張ってるんですね!」

麗花「歌うのって楽しいよね!」

茜「よーし、次こそ茜ちゃんが」

星梨花「私がいきたいです!」

茜「……ファイトー!星梨花ちゃん!」



星梨花「えっと……小鳥さんのパソコンに、絶対子供は見ちゃいけない何かが隠されてるらしいんです」

志保「静香」

静香「分かってるわ。ねぇ星梨花、それはきっとこの事務所の企業方針に関するものなのよ」

茜「もし見ちゃって、それをポロっと外で口にしちゃったら大変でしょ?だからじゃないかな?」

麗花「なら私は見てもいいのかな……?」

茜「ダメ、絶対」

星梨花「私、もう子供じゃありません!」

麗花「私も大人だよ?」

茜「……冷蔵庫にスペシャルプリン冷えてるよ。みんなで食べよ?」

星梨花「え?いいんですか?!」

麗花「わーいわーい!」

志保「……ありがとうございます」

静香「野々原さんの犠牲、無駄にはしません」

茜「茜ちゃんはきっと泣いていい。あとでプロちゃんに買ってきてもらおっかな!」




麗花「うーん!美味しかったよ!」

星梨花「ご馳走様でした、茜さん」

茜「まーまーいいって事よ!それじゃー次は茜ちゃんの」

麗花「食べてたら面白い話思いついちゃった!話していい?」

茜「……どうぞ」

志保「あ、もうすぐレッスンの時間で移動なので、これが最後になりそうです」

静香「まきでお願いします」

茜「……」

麗花「えっとね……」




駅へ向かう途中、突然鍵を掛けたか心配になったりした事ってない?
今から走って引き返せば間に合う微妙な時間に限って、よくあるよね。
でも大体、引き返した時に限ってちゃんと閉まってるんだよね。
鍵だけに。

わぁい、静香ちゃんのいい笑顔いただきました!

でもまた、駅と家との中間あたりで不安になったりしない?
ちゃんと確かめたっけ?戻っただけじゃなかったっけ?って。
気になって心がすり減って、確かめずにはいられなくて。
まだ間に合うかな?もう時間ないかな?でもほんとにちゃんと閉めたっけ……?って。

そんな風に不安に押しつぶされそうになって。
その日一日中、ずっと気になり続けて。
どんどん何も上手くいかなくなって、尚更余計に心配になるの。
こんなに上手くいかない、運の悪い日なんだもん。

ねぇ、ほんとに無い?

今日、ちゃんと家出てくる時に鍵閉めた?
もしかしたら泥棒さんに入られちゃうかもよ?
まだレッスンまでギリギリ時間あるから、今から走れば間に合うかもよ?
今この話をしてる最中に走れば、ギリギリ少しの遅刻で間に合うかもよ?



不安になってこない?

大丈夫?本当に閉めた?
蛇口は水が止まるまで閉めた?
ちゃんとガスの元栓閉めた?
鍵、閉めたの確認した?

ほら、まだ間に合うんだよ?
不安なら、確かめなきゃダメじゃないかな。
あ、もう間に合わないかも。
でもギリギリ間に合う可能性だってあるよ。

大丈夫?間違えてない?
そんな風に時間と不安にすり潰されて、間違えたことしてない?
送ったメール、ちゃんと宛先あってる?
一度確認するだけで気が楽になれるよ?

ほら、どんどん不安になってきたよね?
なんでも、全部を確かめないと不安で気が狂いそうになるよね?
小さなミスで、あとあと大変なことになるかもしれないんだよ?
時間はもう全然無いけど、急げば少しは確かめられるかもよ?

でも、確かめた後に。
本当に確かめたっけって不安になるの。
不安になって、また確かめて。
それでも不安で、自分が信じられなくなる。


不安で仕方なくなってきたでしょ?

まだ間に合う?もう一回確かめる?
もう間に合わない?もう諦める?
後悔するかもよ?安心出来るよ?
でももう、迷ってる時間は無いよ。

……え?話のオチ?
そんなに気になるの?
そんな状況になった後に、不安になった後に、どうなっちゃうのか。
気になるよね、不安になるよね。

でもね。
オチは要らないよ、だって。

陥るのは、あなただから。



志保「何というか……麗花さんの凄さを改めて感じた気がします」

麗花「何かを忘れてる気がするのに、思い出せないって怖いもんね!」

茜「にゃー……茜ちゃんのとっておきの怖い話が……」

静香「それじゃ、行きましょうか」

星梨花「……何か、忘れてる様な……なんだったでしょう?」

びー、びー!

律子「こらぁ!誰よ冷蔵庫開けっぱなしにしてるの!プリンが無い……茜ね!」

茜「にゃぁぁぁぁぁ!怖い話なんかよりもよっぽど怖いのがくるし濡れ衣だよ!!」


怪談の季節がやってきたので
まったく怪談じゃありませんでしたが
お付き合い、ありがとうございました

今年も下半期になったので、ミリの過去作をぺたり
よろしければ是非


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