<某日 事務所内>


仁奈「美優おねーさん、『みこんのみぼーじん』ってなんでごぜーますか」

美優「え…みこんの…みぼうじん？？」

仁奈「そーです、仁奈のしらないことばばっかりですよ」

美優「わたしも…知らないわ、どういう意味かしら」

仁奈「美優おねーさんでも かいもくけんとーつかねーですか」

美優「むずかしい言葉を知っているのね、仁奈ちゃんえらいわ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

仁奈「えへへ」

美優「私もどういう意味か知りたいわ、誰に教わったの」

仁奈「杏おねーさんでごぜーますよ」

美優「あ、いたいた」

杏「ふぁぁぁ…あー美優さんこんちゃー、おやすみー」

仁奈「おきるですよ、杏おねーさんにのっぴきならねー ようじがあるでごぜーます」

杏「おおう、どしたどした」

美優「『未婚の未亡人』」

杏「…？」

仁奈「さっき杏おねーさんがゆってた、あれでごぜーますよ」

杏「あー、なんかそんなこと言ったかなあ」

美優「意味が…わからなくて、訊きに来たんです…私が、そうらしいから…」

杏「……え、ドユコトデスカ」

仁奈「くわしくかいせつしてくだせー」

美優「私からも、お願いします」

杏「ｱｯﾊｲ」

杏（…美優さん、素でわかんないのかな…）

杏「えーっと、未婚っていうのは…結婚してない、ってことだね」

仁奈「仁奈も杏おねーさんも『みこん』でごぜーますか」

杏「まあ、そうかな」

美優「…私も、ですね」ﾀﾞｰｸﾏﾀｰ

杏「なんかこの辺だけ空気が重いんだけど」

杏「で、未亡人っていうのは…」

杏「…………………」

杏（美優さんちょっと）ﾁｮｲﾁｮｲ

美優（？）

杏（仁奈に、『パパがいない』とか言いづらいんだけど）

美優（！…ああ…そう、よね…）

仁奈「？」

杏（なんかいいかわし方、ないかな）

美優（ええと、だったら…）

杏「こほん、未亡人、っていうのは」

仁奈「みぼうじん、てゆーのは？」

杏「病気にならない健康な人、って意味だね」

仁奈「？？？びょうき、でごぜーますか」

美優「そうなんだー（棒」

杏「仁奈はまだ習ってないかもだけど、こう書くのだー」

　ｻﾗｻﾗ


［未病人］


美優「なるほどー（棒」

仁奈「へー」

杏「アイドルたるもの、元気じゃなければつとまらないからね」

杏（美優さん、GJ）

美優（ふふっ、大人の知恵です）

杏（　（それで『未婚の未亡人』わからないっていうのがねえ）　）

仁奈「んー、でもやっぱりよくわかんねーです」

杏「え？」

仁奈「じむしょのおねーさんのほとんどが、びょうきじゃねーです」

美優「…あ」

仁奈「加蓮おねーさんいがいは、みんな『みぼーじん』になりやがります」


　加蓮「くちゅん！」


美優「ああ…」

仁奈「なんで美優おねーさんだけ『みこんのみぼーじん』でやがりますか」

杏「あーそれはだねー…」

杏（美優さんこれどうすんの）

美優（…えーっと…あまり、深く考えて、なくて…）

杏（ﾃﾞｽﾖﾈｰ）

仁奈「？？さっきから、なにごしょごしょしてるでごぜーますか」

杏「協議の結果が出ました」

仁奈「なんのきょーぎでごぜーますか」

美優「ひ・み・つ」ｳﾌﾌ

仁奈「ずりーですよ、仁奈もまぜてくだせー」

杏「まあまあうまい棒どうそ」

仁奈「こいつぁありがてーぜ、杏おねーさん」

美優（杏ちゃん、いいお姉さんね…）

杏「じゃ説明しよう、未亡人、ってのは、『とってもきれいな人』って意味なのだ」

仁奈「ふんふほふほふはふほ？」

美優「食べてからしゃべりましょ、ああほらこんなにこぼしちゃって…」

杏（美優さん…育ての母だこれ）

美優「お口の中、ないわね」ｱｰﾝ

仁奈「はーい」

杏「じゃ改めて、『未亡人とは、とってもきれいな人』について、 説　明　し　よ　う！」

仁奈「わくわく」

杏「というか見てすぐわかるよね、『美優さんは、とってもきれい』はい言ってみよう」

仁奈「美 優 お ねー さん は、とっ て も き れー で や が り ます！」

美優「///」

杏「ちなみに漢字で書くと、難しいけどこう書くのだー」

　ｻﾗｻﾗ


［美貌人］


美優（自分で言っておいて、想像以上に…恥ずかしい///）

仁奈「すげーです、せんがいっぱいある じでごぜーますよ」

杏「線だらけだとこんなに美しいのだー」

美優（小皺は増えて欲しくないけれども、ね）

仁奈「うーむ、むむむ」

杏「なにがむむむだ」

仁奈「やっぱりわからねーです」

美優「仁奈ちゃんは、知りたがり屋さんなのね」

仁奈「ほめても、なんにもでねーですよ」

杏「代わりに杏にアメをおくれ美優さん」

美優「あとでね、それで、何がわからないのかしら」

仁奈「じむしょには、美優おねーさんみたいにきれーなひと、いっぱいいやがりますぜ」

仁奈「ほかのきれーなおねーさんも『みぼーじん』でねーとおかしーです」

杏「そーかなー、美優さんほどの人はいないんじゃないかな」

美優（もう杏ちゃんったら…アメ2個ね///）

仁奈「するってーと、美優おねーさんいがいは『みこんのみぼーじん』は いねーとでも」

杏「いないな」ｷﾘｯ

美優「ということは…私専用の二つ名、っていうことかしら」

仁奈「ふたつな！『かげろうおぎん』みてーなものですか」

杏「そうそう」

杏（毎度思うけど、仁奈の情報源は何なんだ）

仁奈「やっぱり美優おねーさんは、すんごいやんばいおねーさんだったですよ」

杏「ね、わかったしょ」

杏「美優さんくらいの、健康で、美しさが際立ってる人だけが、二つ名『未婚の未亡人』を名乗れるわけだ」

美優「////////」

仁奈「…なんか、まるめこまれたきがしねーでもねーですけど」

杏「美優さんも、こんな感じの説明でわかった？」ｳｲﾝｸ

美優「え、ええ…杏ちゃん、説明ありがとう」ｳｲﾝｸ

美優（おかしいわ…なんだか丸め込まれたような気が…）

ちひろ「美優さん、いますか」ｶﾞﾁｬ

美優「…はい、こちらに」

ちひろ「そろそろ歌の収録に行ったほうが」

杏「ん？お仕事あったの」

美優「あら、こんな時間…ええ、今度出すCDの歌入れが」

杏「へー、んじゃがんばってね」

仁奈「…」

美優「？どうしたの、仁奈ちゃん」

仁奈「…ついてっても、いーですか」

美優「え？」

仁奈「仁奈、おしごとのおべんきょーがしてーです」

美優「あらあら、熱心なのね」

杏「いいの？仁奈も美優さんも」

美優「ブースの外でおとなしくしてくれれば、たぶん大丈夫と思うけれど…」

ちひろ「仁奈ちゃんは…この後お仕事は入っていないけれど」

ちひろ「寮の門限があるので、時間になったら誰か連れて帰ってくれるのであれば…」ｼﾞｰ

美優「そう…ですね」ｼﾞｰ

杏「…え、なにそういう流れ？」

仁奈「おねげーします、杏おねーさん」

杏「しょうがないなあ…じゃ連れてくか」

仁奈「やったー！『みこんのみぼーじん』のおべんきょーができるですよ！」

ちひろ「？？？」

杏（いろいろ言われるな、あとで…）

美優「行きましょう、こっちです」

<事務所内 録音スタジオ>


美優『……あなたの……指が……外から…………そっと………』

美優『…だんだん……激し………ダメ……ダメ……いや………』

美優『……許して……いや……いや……いやん………いやん…』

美優『…もっと……もっと………いっ！…ちゃ…った…………』


※「エチュードは1曲だけ」の収録です

<録音スタジオ ブース>


仁奈「…ほえー…」

杏「なんていうか…やっぱ凄いわ美優さん」

仁奈「美優おねーさん、ほっぺがまっかですぜ」

杏「あれは、『切ない演技』だねー」

仁奈「せつないえんぎ…『せつなそうに』！あれでごぜーますか」

杏「そうそう、レッスンでやるでしょ」

仁奈「いっつも仁奈、うまくできなくて『市原ァ！』ていわれて、にがてですよ」

杏「未婚の未亡人だと、あれくらい熱のこもった演技ができるんだね」

仁奈「美優おねーさんの『みこんのみぼーじん』のふたつなは、だてじゃなかったです！」

仁奈「そいつはいいとして…」

杏「？」

仁奈「どうしてスタッフのおにーさんは、みんな『まえかがみ』になってるですか？」

杏「そこは触れてやるな」

仁奈「？？？」


おわれ