「逃げろ！！」

　かつて日本と呼ばれ、東京と呼ばれていた場所。今では焦土と化していたが、二人の青年が叫びあっていた。

「君を置いて逃げるなんて…っ！」

　中性的な顔立ちの少年が首を横に振る。その先にいた筋肉質な青年は少年に向かって叫び続ける。

「人類軍に理性なんて残ってはいない！　超能力者を殺戮しろとプログラムされたロボットしかいねぇんだ！」

　青年の前方には鉄の塊が無数に並んでいた。それはとても機械と呼べるような美しさを備えていなかったが、明らかに目的のある行動を取っていた。


　――超能力者を圧死させよ。


　改良の果てに得た人類側の結論。それは「超能力者に対してプライドを捨てること」だった。

　第一次超越戦争では精巧に作られた機械兵士と、それに伴う高度なプログラミング、人工衛星を利用した緻密なシステムが使用された。

　第二次超越戦争ではパワースーツを着た人間達が弾丸となり、文字通り「自爆」を目的とした戦略が使用された。

　そして第三次超越戦争では原子、分子構造を自由に組み替えることのできるチップ(人間を圧縮したもの)によって限りなくシンプルに動くことのできる無機物の塊が使用されている。

「俺はもうだめだ！　超能力で止めてはいるが、いずれ浸食される！」

　青年の右足には鉄の塊ががっちりとくっつき、ブブブと音を立てて振動していた。

「そ、それでも、それでも僕なら……っ」

　少年は青年の足を超能力で切断しようとしたが、

「最後まで俺に逆らうんじゃねぇ！！」


　先に超能力を使った青年の手によってどこかへ転移させられてしまった。


「え……、う、うわぁああああ！？」

　突如として広がる青。

(ぼ、僕が空を飛べないからって！！)

　少年は非常に強い能力を数多く使用できたが、なぜか空を飛ぶ力だけはなかった。

　少年が助かる方法は一つ。

(空間を切り裂いて、異世界へ行くこと……)


　超能力を解析する事のできる仲間から教えてもらった少年の力。

　一度しか使えず、一人しか通れない光の道を作り出す力。


『最悪が起きたら貴方はそれで逃げるの。そして異世界で生き延びる事こそ私達が生まれた意味につながるわ』


　かつての誓い。今は亡き少女との約束。

「……くそっ、くそぉおおおおおおお！！」



　そして、そして少年は―――――。

安価>>4～>>10くらいまで、主人公の名前をお願いします！気に入ったのがあったらその時点で本編へ行きます！

御門 龍矢(みかど　りゅうや)

久我 悠(くが はるか)

皆さん良い名前をありがとうございます！

龍の名前がついていると後々の展開に助かったりするので、一番最初に安価してくださった御門龍矢でいこうと思います！

この後、安価でキャラ募集するので今回の名前はその時使ってみたりしてください！

募集は

名前：
性別：
種族：
特徴：

のような感じで募集するのでよかったらすでに考えておいてください！

「ここは……」

　切り裂いた空間の中は、思った以上に暖かく、思った以上に優しい場所だった。

　遠くに小さな光がいくつか見えるが、それ以外は宇宙にいるような感覚だ。重力も感じない。龍矢は周囲を見渡し、考える。

(おそらく光の先に向かえばどこかの世界にいけるんだろうな……)

　光はそれぞれ違う色を放っており、強さもまた違った。



安価下１


１、白(人間が多く住む大陸)
２、赤(魔物が多く住む大陸)
３、緑(エルフが多く住む大陸)
４、青(未開の地)
５、黄色(いわゆる天界)

　龍矢は赤い光を選んだ。青年の好きだった色だからだ。

　光の先に向かうと、龍矢の前に森が広がった。

「……ここが、異世界」

　なんだか暗い森だ。光もほとんど届いていなければ、生き物の気配を感じない。

「人はいるのかな」

　想像して、背筋が凍った。

　龍矢が空間を切り裂けるのは一度だけ、もう二度とやり直しは効かないのだ。

(もし人がいなければ……僕は)


　――刹那。


「！？」

　三メートル後方の空から、矢のような細い物質が龍矢に迫る。

　空間把握能力【バリア】と名付けられたそれは、龍矢が最初に覚えた超能力だ。物質の通過する先に自分がいる時、それを把握することができる。

「誰だっ！？」

　サイコキネシスで矢のような物を停止させる。

　誰だと叫んだのは、その物質が明らかに「誰かの手によって作られた矢」であったからだ。

(誰かが僕を狙っている！？)

キャラ募集【第一回目】

龍矢の前に現れたのは、


名前：
性別：
年齢：(若いとかでおｋ)
種族：
特徴：


安価下１

『今のは魔力か！？』


　遠くから叫び声が聞こえる。遠吠えのような、それでいて低い唸り声のような、不思議な声だ。

「魔力！？　魔力って漫画に出てくるあれ！？」

　文明のほとんど失われた世界で育った龍矢にとって、知識のほとんどは漫画から得たものだった。

『貴様！　死の森に訪れし侵略者よ！　何の為にここに来た！？』

　ひゅっ、ひゅっ、と空を切る音が森に響く。

　無数の銃弾と戦うことを想定させられてきた龍矢にとっておもちゃのような物だが、何度も何度も攻撃されるのはいい気分ではない。

「僕の名前は龍矢！　御門龍矢！」

『ミカドリューヤ？　どこの国の者だ！？』

「……遠く！　はるか遠くだ！」

『何が目的だ！』

「事故で空間を飛んできた！　敵意はない！」

　龍矢は両手を上げ敵意がないことを示す。

　そこに現れたのは、

「……嘘を吐いているようには見えないな」


　狼男のような巨体に毛皮、竜のような瞳、そして見たことのない服装をした男だった。

「人間……？」

「……人間の血などとおに捨てた。貴様こそこの世界で最も弱い種族ではないか」

　狼男は鼻で笑うと、帯刀していた剣を抜いた。

「さて、死の森に人ごときが入るなど許されることと思うなよ」

「敵意はないんだ。森から出ていくから許してくれないか」

「俺の名はヴァン・ブリザード。誇り高き魔王軍の精鋭なれば、貴様のような罪人を逃す手などない！」

　ヴァンがつま先に力を込めた瞬間、

「本当に敵意はないからね！」

　龍矢はサイコキネシスでヴァンの服を空間に固定した。

「くっ！？　また妙な力を！！」

　ヴァンはグネグネと体を動かすが微動だにしない。龍矢ははぁとため息を吐くと、ヴァンの眼前に移動した。

「残念だけど平和的解決を図れないなら……」

　龍矢は右目を大きく見開く。ヴァンを精神的に支配するためだ。あまり得意な力ではなかったが、使えないことはない。

「くっ……人ごときにっ」

　ヴァンが悔しそうに呻く。

(だから平和的に解決しようって……えっ！？)


　突如、竜矢の背筋にぬめりと舐められたような感覚が襲った。

「なんだ！？」

　悪い予感から避けるようにヴァンから離れる。

「えぇ！？　そんなぁ！？」

　ヴァンとは逆方向の先で甲高い声が響いた。

　少女、だろうか。嘆いているような声の主を確認するため、龍矢が振り向くと、

(ば、バニーガール！？)

　そこには、水着のような露出度の高い服を着た女性が立っていた。起伏の激しいスタイルは性的であり、龍矢は思わず見とれてしまう。

「な、なんで私の魅了(チャーム)を避けられたんですかぁ！？」

「ちゃ、チャーム！？」

「ばかウサギ！　わざわざ敵に情報を与えるな！」

「はっ！！　し、しまった！」

　ばかウサギと呼ばれた女性は両手で口を押えぴょんぴょんと飛び跳ねた。生死の境目に立っていたヴァンと龍矢は冷たい目で彼女を見る。

「むぅ～、あなた策士ですね！」

　びしっと名探偵のように指さす女性に対し、龍矢は、

「お、おおふ……」

　と答える事しかできなかった。

　戦争に生きた彼にとって、あまりにも刺激が強すぎたからだ。

「………一体なんなんだ」

　ヴァンは深くため息を吐く。助けに来たアンナにも、龍矢にも失望していた。

　彼は死を名誉とし、誇りある戦いを求めていたからだ。

「と、とにかく、彼には言ったけど僕は事故でここに来ただけだ！　敵意なんてない！」

　いち早く理性を取り戻した龍矢が叫ぶ。

「え、そうなんですか？　なんだー、先に言ってくださいよ～」

　アンナが笑顔を見せ、警戒心を完全に解いた。

「……くそっ」

　ヴァンも戦意を無くしたようで、ゆっくりと目を閉じた。

　異世界に来たばかりの龍矢に、初めて交流の時が訪れる。

「ぐすっ……ひ、酷いですぅ」

　龍矢は異世界から来たということだけ隠して、戦争から逃げてきたことを告げた。

　アンナはぼろぼろと泣きながら、龍矢の頭を抱きかかえ撫でる。

　死の森から抜け出した彼らは、開けた丘に座っていた。

　ヴァンはふんと鼻息を鳴らすと、

「逃亡者に名誉はない。さっさと死ね」

　と悪態を吐いた。

「……おっしゃる通り僕に名誉はない。戦争を終わらせることもできず、友を見捨て国を捨てた」

「だったら――」

「でも、死ねないんです」

　龍矢の目には強い意志が宿っていた。ヴァンはさっと視線をそらすと、

「勝手にすればいい。お前はお前だ」

　と言った。

「かわいそうなリューヤ。もみもみする？」

　アンナはおもむろに龍矢の手を取ると自身の胸に持っていこうとした。

「え、遠慮しときますっ！」

「そう？　みんな嬉しそうにモミモミするのにー」

　無邪気な顔で笑うアンナ。龍矢は心の中で「ビッチだ。ビッチラビットだ」と思いつつも声には出さなかった。

「それで……その、魔大陸と呼ばれるここに人間は住んでるんですか？」

　ヴァンの説明によると、この世界には大きく分けて五つの大陸があるらしい。

　最も西にあり、数多くの魔物が住むことから「魔大陸」と呼ばれていた。

「我々が人間でないと？」

　ぎろりと眼光を光らせるヴァンに龍矢は慌てて釈明する。

「あ、いえ、そういう意味じゃなくて、僕のような見た目の人は……」

「……東部にはいるが、奴隷や商人が多い。人の支配する国はこの大陸には存在しない」

「そうなんですか」

「失望したか？」

　ヴァンが嬉しそうに言った。

「いえ、会話が成立するなら見た目にはこだわりません」

　即答する龍矢にヴァンとアンナは目を見開く。

「めっずらしー」

「……どうせ口だけだ」

「………」

　どうやら魔族と人の間には確執があるらしい。龍矢は戦争のない世界だったらよかったのにと心の中で叫んだ。

「りゅーやはこれからどうするの？」

「……僕は」

分岐【一回目】

１、静かに暮らしたい。
２、戦争をなくしたい。
３、旅をしたい。
４、その他(前向きな行動のみ採用)


安価下１

「色々な所に行ってみたい……かな」

　魔法が存在する世界。漫画で見た夢のような場所。

　常に死の臭いがし、戦う場所しかなかった地球とは違う世界。

　きっと奇麗な場所や安らげる場所がたくさんあるんだろう。

「……ならば、大陸の東に行け」

「うんうん！　コキュトス港まで行けば、船もたくさん出てるし旅をするのに必要な物はたくさん揃うよ！」

「コキュトス港……」

「お前が別の大陸に渡ればもう二度と会わなくて済むな」

　ヴァンの悪態にアンナが寂しそうに反応した。

「一緒に行きたいけど、今は戦争中だから…はう」

「戦争中……」

「気にするな。魔族同士でも派閥は存在するのだ」

「私たち獣人族は魔族同士で争う必要はないって思ってるんだけどね」

「……そう、ですか」

　龍矢は一瞬、ほんの一瞬であったが彼らと一緒にいることを選ぼうとした。

　だが、彼にとって戦争はあまりにも避けたい存在であったため、口にすることはなかった。

「……おいしい」

　アンナに分けてもらった魔界人参を食べながら、龍矢は東を目指していた。

　超能力を使えば肉体を疲弊させることなく動くことができる。だが、龍矢はあえて自らの力で歩み続けた。

(戦争以外の目的で歩くことがこんなに気持ちいい事だったなんて……)

　決して緑豊かな生命にあふれた大陸ではない。

　だがそれでも、龍矢にとって安らぎさえ感じる世界だった。

(人間が多く住む大陸に行けば、もっと楽しいことが待ってるんだろうか……)

　気づけばコキュトス港に着いていた。

　すっかり日は落ちており、龍矢は宿を目指す。



「は？　文無しはお断りに決まってるだろ」



　龍矢は知らなかった。

　文明のある世界には、貨幣システムが存在し、寝泊りする事にも代金が必要なことを――。




　プロローグ　そして彼は――。



　完

いったん３０分ほど離れます！

旅の話となったので、三名～五名ほどの旅の仲間を集めようと思います。(話の流れで別れる場合もある)

まずはその内の一名か二名募集します。


全てを拾っていくことはできないので、採用されなかった場合は次の安価を狙ってください！


旅の仲間

安価下１～２

名前：
性別：
種族：
年齢：若いとかでおｋ
特徴：




※一応過去に登場した人物も表に出ないだけで行動しています！
今回の二人でいえば、魔族の間で戦争をしているので、後の安価で逃げ出してきたなんてのもありえます！　


では二名お願いします！　奴隷とか商人でなくても、旅の港なのでつじつまを合わせることができますので！

名前：リリア
性別：女
年齢：16(人間換算)
種族：夢魔(エンプーサ)
特徴：夢魔族の中でも特に物理戦闘能力に長けたエンプーサ族の少女戦士。魔翌力で強化された鉤爪と足甲を装備している
性方面に奔放な夢魔族には珍しい固い貞操観念の持ち主で、自分を真正面から打ち破れる強い男性を初めての相手にしたいと思っているが
そんな相手は中々現れず、気づけば(夢魔的には)とっくに処女を卒業できているはずの年齢を過ぎており、同族からは「行き遅れ」とからかわれている

>>1に質問
もし募集安価で選ばれなかった場合、別の募集の際に同じ内容を投稿する(あるいは安価で示す)のはあり？
本人確認できないからやめといた方がいい？一応確認しておきたい

ただいま。>>41　手間になると思うんですけどもう一度投稿していただけるとありがたいですね。

昔は主人公の経営する喫茶店に人が集まる形でやってたから安価外でも拾うことができたけど、ここから旅するならあまり拾えないと思います！

それとも一つの場所(主人公のいる場所)に集まる形のほうがよかったかな？

薄々勘付いてはいたがあなたか！なら期待できる

おかえり。

>>43
同じ文面をもう一回投稿すればいいのですかね？了解です

「……お金って大切なんだなぁ」

　龍矢は数少ない支給品と、戦場に落ちていた物のみで生きてきた。

　何かに対して何かを支払うという概念などなかったため、ヴァン達にお金を恵んでもらうことさえ思いつかなかったのだ。

　コキュトス港の夜は静かだったが肌寒い。超能力で身を護れば問題なく寝ることはできるが、睡眠中は無防備に近い。

「さて……どうしたものか」

「ねぇ君、人だよね？」

「え？」

　後方から声がかかり、振り向くとそこには人間の姿をした少女が立っていた。

　猫耳としっぽが生えていなければ、普通の人間だと思っただろう。

「そうだけど……君は？」

「にゃあはルバーサ！　自由ともふもふを愛する猫人(ニャァル)族だよっ！」ﾆｬﾝｯ

　驚くことに両手は猫のような手をしており、肉球もあった。にゃんとポーズをとる姿がなんとも愛らしい。

「僕は龍矢」

「リューヤ！　いい名前ね！」

「あ、ありがと」

　突如現れた少女に戸惑いを隠せない龍矢だったが、敵意はなさそうなので会話を続けてみる。

「あの、突然話しかけてきたけど……」

「にゃあは人さんにも優しくするように育てられたからね！　困ってることがあったら言ってみなよ！」ﾆｬﾝｯ

「………」

　ルバーサの目に悪意は感じられない。

　迷った末、龍矢は事情を説明することにした。

　他人を信じることができない者に他人は信じてくれない。青年の口癖だ。

>>46　安価を見ながら文字を打つのであまり遠くにあると大変なのです。申し訳ない。

>>44>>45　覚えてくれててうれしい

「なんだぁ、にゃあと一緒で一文無しなんだねっ」ﾆｬﾊﾊｯ

「………」

　事情を説明して損をした。龍矢は一瞬そう思ったが、彼女の好意にケチをつけるのは失礼だと考え直す。

「もしお金を得る方法があれば教えて欲しいんだけど……」

「にゃあ達猫人族はあまりお金を稼がないんだよねぇ……あ、そうだ！」

　ぷにとルバーサの手が龍矢の手をつかんだ。肉球が気持ちいい。

「友達なら知ってるかも！」ぐいっ

「と、ともっ！？」

　ルバーサに引きずられ龍矢はコキュトス港の北へと走る。

　そこに待っていたのは、一本の大きな木だった。

「獣族はここで寝泊りするんだよ！」

「すごい……」

　空まで伸びる大木はところどころでポカリと穴が開いており、誰かがそこで休んでいるのか光が漏れていた。

「こっち！」

「う、うん」

　連れられるまま木の中に入る龍矢。なんとも表現しがたい温かみが彼を歓迎した。

「る、ルバーサちゃん！？　ひとさんを連れてきたの！？」

「うん！　リマルちゃんってお金稼ぎ得意な獣族だったよね！」ﾆｬﾝｯ

「お金稼ぎ得意っていうか、洗い物が好きっていうか……」

　ルバーサが話しかけていたリマルと呼ばれる子は、獣人というよりも獣そのものだった。二足歩行で服を着ており、人語を喋っていることからようやく獣人だと判断できる。

「彼、お金なしのかわいそうな人なの。助けてあげられないかなぁ？」

　なんだかすごく聞こえの悪い言い方だ。龍矢は否定しようと一歩踏み出したが、何一つ間違っていないので何も言えなかった。

「うーん、ひとさんって奴隷がいっぱいいるから仕事ないかも」

「そこをなんとかっ！」

「……じゃあ、洗い物手伝ってみる？」

　リマルのつぶらな瞳が龍矢を見定めた。

「……お、お願いします」

　龍矢は洗い物が何かわかっていなかったが、とりあえず彼女たちの優しさに答えたいと思った。

　そして――、

　魔族専用の料亭


　巨大な厨房、巨人や魔王を相手にするため人間ではどうしようもないほど大きな厨房。

　アライグマ族達は自分たちの体をタワシ代わりに、巨大な皿の上を滑っていた。

「あれが人にできるっていうのか！？」

　洗い物担当のリーダーであり、リマルの父親であるルマルは馬鹿にしたように両手を上げた。

「巨人の皿には簡単には落ちねぇ汚れがたくさんついてるぞ！？　スライムのカスはどうやって流す気だ！？」

「え、えっと……」

　龍矢は彼の言っている意味が分からなかったが、彼らが大変な仕事をしているということは分かった。

「頑張るのにゃ！　リューヤなら行ける！」ﾆｬﾝｯ

「あ、うん……頑張ってみる。とりあえず汚れを落とせばいいんですよね？」

「ふんっ！　できるもんならやってみやがれぃ！」

「……わかりました」

　龍矢は視線を右にずらした。

　そこにはアライグマ族たちが使ってないスポンジがたくさん置いてある。

(あれを使って……)

　サイコキネシスで持ち上げる。通常なら数が増えれば操作も難しくなっていくが、新世代と呼ばれる超能力者たちにとって数はあまり問題ではなかった。

「……魔法か？　だが魔力が出てる様子はない…」

　ルマルが驚きの声を漏らす。

「えっと、ここをこうして……」

　超能力を使える龍矢にとって、大きさなどなんの障害でもなかった。

　瞬く間に一枚洗い終えた龍矢に、横で見ていたアライグマ族たちから歓声が起こった。

「いいぞ！」
「お前がナンバーワンだ！」
「きれいな皿を見るのは気持ちがいいぜ！」

「……あ、ありがとうございます」

　龍矢はぺこりと頭を下げると、次々に皿を洗っていく。

　通常なら半日かかる量を龍矢は一時間もしないうちに洗い終えてしまった。

「終わりました」

「…お、おう……」

「たくさんお金もらえたね！」ﾆｬﾝｯ

　はしゃぐルバーサを横目に龍矢は少し悲しい気分に浸っていた。

『おめぇが実力あるのはわかった。だが、俺らにも仕事が必要なんだ。奪わないでおいてくれるか』

　ルマル通常の十倍の給料を龍矢に支払った。経験のない彼でも分かる。

(もう来るなって事か……)

　確かに、自分ひとりでやれるなら彼らはもう必要ないだろう。それはシステムを変える事であり、超越戦争が起きた原因と同じだ。

(やっぱり超能力者は邪魔な存在なのか……？)

　末代である龍矢のような存在は、超能力者であることに誇りを持ってはいなかった。

　むしろ普通の人間たちから恨まれていた彼らにとって、自分たちは畏怖の対象であり異質な存在だという認識しかない。

「……ごめんなさい。ぱぱはああいうアライグマ族だから」

　後ろをついてきていたリマルが深々と頭を下げた。熊のぬいぐるみみたいで愛くるしい。

「でも、龍矢さんのことはすごく尊敬したと思う。アライグマ族にとって物を奇麗にできる人は尊敬の対象だから」

「……そう、なのかな」

「うん……、私も龍矢さんのことが……」

　もじもじとするリマルを見て、ルバーサが、

「すごーい！　リマルちゃん一目ぼれしたんだね！」

　と言った。

「えぇ！？」
「る、ルバーサちゃん！？」

　慌てるリマルをおいてルバーサは二人の周りをぐるぐると回った。

「好きなことはいいことにゃっ！　良い事は好きになるにゃ！」ｱﾊﾊﾊｯ

　龍矢は反応に困りつつも、二人に感謝した。

　こんなにも楽しい時間を過ごせるのは二人のおかげなのだから。

いったんここまで！

さすがにこの二人を連れて旅をできるほど龍矢は経験豊富ではないので、どちらか一人だけにします！

安価下１～５(多数決)

１、ルバーサ
２、リマル

多数決終えたらもう一人の仲間を人(もしくは戦うことのできる魔族)限定で行いますのでご協力お願いします！

良い勝負！僅差でリマルちゃんとなりました！

では、残り一人の旅の仲間の募集ですが、これもまた多数決にしようと思うので一番を取れなくてもチャンスはあります！

安価下１～10くらいまで（後に多数決）


名前：
性別：
年齢：若いとかでおｋ
種族：人、もしくは人の姿をした者
特徴：なんでも良いですが、戦える者でお願いします！


多数決は明日しようと思います！

では！

乙

名前：リリア
性別：女
年齢：16(人間換算)
種族：夢魔(エンプーサ)
特徴：夢魔族の中でも特に物理戦闘能力に長けたエンプーサ族の少女戦士。魔翌力で強化された金属製の鉤爪と足甲を装備している
性方面に奔放な夢魔族には珍しい固い貞操観念の持ち主で、自分を真正面から打ち破れる強い男性を初めての相手にしたいと思っているが
そんな相手は中々現れず、気づけば(夢魔的には)とっくに処女を卒業できているはずの年齢を過ぎており、同族からは「行き遅れ」とからかわれている

一年か二年ぶりだったから全然来ないだろうと思ってた……

時間少しだけあるので今進めちゃいましょうか。

でも先に投稿した人でブラウザ閉じた人が不公平に感じるかな。

もうやっちゃいましょうか。
各自本当に良いと思ったキャラに一票入れてあげて下さい。

仲間の数はいずれ増える（もしくは別れて新たに出会う）と思います。

試しに作ったスレなので短めにまとめて新しくやるかもしれませんし、軽い気持ちでお願いします！



安価下１～５多数決

１、アイリス
２、ベルエル
３、レックス
４、リリア
５、アベル
６、オルタ
７、ミリアリア
８、アリエル
９、ナイロ
１０、リエル

同票が三票以上あった場合、コンマ判定に切り替えます！

ID同一はどちらも無効で！

では五票お願いします！

ごめん言い方間違えた。
ばらつきが３票以上あったらって意味でした＞＜

やはり皆さん自分のキャラに愛着があるのは当たり前ですし、素直にコンマ判定にしたいと思います！

その代わり、一桁目と二桁目の二人採用で！


安価下１コンマ判定下二桁が仲間。

１、アイリス
２、ベルエル
３、レックス
４、リリア
５、アベル
６、オルタ
７、ミリアリア
８、アリエル
９、ナイロ
０、リエル

更新していきます

その前にキャラ紹介まとめ

主人公：御門龍矢
未来の地球で超越戦争と呼ばれる超能力者対人間の戦争を生きてきた少年。
戦争末期である事も重なって驚くほど強く多岐にわたる超能力を使用できる。
何故か自重を支える超能力のみ使えない。※使った事のない超能力は使えるかどうか分からない。

【魔大陸住人】

☆魔族☆

名前：ヴァン･ブリザード
性別：男
種族：オオカミとドラゴンの魔物と人間のクォーター
年齢:若い
特徴：赤髪金目で頭部にオオカミ耳がある、背中にドラゴンの赤い翼が生えていて両手首に赤い鱗がある。
迫害されていて、爪は尖っていて犬歯が発達していて鋭い。

名前：アンナ・バニーズ
性別：女
種族：兎の獣人
特徴：外見は童顔垂れ目の超乳バニーガール。主な移動方法が跳躍なので揺れまくる胸が目に毒。引っ込み思案で臆病だが、性には疎く無防備。

名前：ルバーサ
性別：女性
年齢：少女ぐらい
種族：ネコ科の半獣人
特徴：天真爛漫で心優しくなおかつポジティブな性格
　　　大きな耳、柔軟な脚力と鋭い爪、優れた聴覚・嗅覚を持つ

☆旅の仲間☆

名前：リマル・ラシュクート
性別：少女
種族：アライグマ獣人
年齢：1４
特徴：立ち上がったアライグマそのままみたいな姿(髪はあるし服は着てる)。好奇心旺盛な子供。辺境出身のため派閥などのしがらみがない。
手先が器用。手洗いしたものしか食べない。

名前：オルタ
性別：謎
種族：ドッペルゲンガー
年齢：200歳
特徴：姿形を自在に変えられるいたずらっ子、何にでもなれるのに常に人の姿をとっているのは憧れから

名前： ミリアリア
性別： 女
種族： 人間
年齢：16
特徴： 商魂の強い少女。ナイフの扱いと水の魔法に長ける。また、商人としての算術、交渉、目利きなど様々なスキルを体得している。

「施しは受けないにゃ」

　ルバーサは可愛らしい手をふりふりと振ると、「あ、そろそろ行かなきゃ」と足早に去って行った。

「何もお礼出来てないや……」
「ルバーサちゃんはいつもこうですから」

　リマルは困ったような笑顔を見せた。見た目はアライグマだが仕草は完全に人間だ。

「リマルは受け取ってくれるかな？」
「……その、ですね…」
「ん？」

　モジモジと両手を擦るリマルに龍矢は首を傾げる。

　リマルは数度深呼吸をした後、スッと――、



「私も旅に連れて行ってくれませんか？」



　と、告げた。

「えぇ！？」

「私、ずっと憧れていたんです！　他の大陸には何があるんだろう、旅人ってどれだけ楽しいだろうって！」

「でも、君には家族が……」

「私の家は大家族なので大丈夫です！　それにお金の稼ぎ方も知らないりゅーやさん一人にするのはアライグマ族の名に恥を塗る事になりますから！」

　ｺﾞｺﾞｺﾞと気迫めいた何かがリマルの背中越しに溢れていた。

　龍矢とリマルは数分押し問答したが、駆け引きなどした事ない龍矢はついに、

「……じゃ、じゃあ、一緒に行こうか」

　と、根負けしたのだった。

「い、今すぐ準備してきます！　ここで待ってて下さい！」

　短い足をタタタと駆けながら大木へと帰るリマル。

「……大丈夫かな」

　龍矢の知っている旅は漫画で見た波乱に満ちたものしかない。行く先々で事件が頻発し、刺客が現れ、街が爆発する。

　自分だけなら超能力で何とかなるだろう。近くにいればリマルも守れるはず。

　だが、もしリマルが自分のいない所で事件に巻き込まれたら、


「何か心配事ですか？」
「……うん、リマルを守り切れるだろうか……って、えぇ！？」


　突如として現れた少女、見た目は人間でフードを被っており、背中には大きなリュック。

　蒼い髪は流れるように長く、大きな円眼鏡の奥には全てを見透かすような深緑の瞳があった。


(ﾊﾞﾘｱは張っているはずなのに……どうやって！？)


　近づく物は物質であれば探知できるはずだ。

「あ、心配なさらないでください。私は貴方に友好的な感情しか抱いておりませんから」

　少女は眼鏡を外しにこりと笑った。

(う、可愛い……///)

　白く透き通るような肌。小さい顔は思わずなでたくなる愛くるしさだ。

(……そうか、“最初から立ち止まる気”だったら僕のﾊﾞﾘｱも反応しないのか)

「私の名前はミリアリアと申します。シラダリア商会所属の商人です」

　ミリアリアと名乗る少女は胸元から金のペンダントを取り出した。羽の大きな鳥をモチーフにしたそれは剣を掴んでいる。

「ぼ、僕の名前は御門龍矢です」
「みかどりゅーやさんですか！　素敵な名前ですね！」
「！？」

　ミリアリアがおもむろに龍矢の右手を掴んだ。小さい手は温かく、龍矢の心を跳ねさせるには十分だった。

(ななな、何この子、すごく近いんですが！？)

「先ほどのアライグマ族の子と仲が良いんですか？」
「あ、いや、そうですね」
「へぇー、アライグマ族って保守的なので簡単に心を開いて貰えないんですよ！」
「そ、そうなんだ」
「もしかして貴方の職業は魔物使いですか？」
「い、いえ、違います……」
「そうですか？　でもこの世界に来て長いんでしょう？」
「いや、それがまだ今日来たば……か」

　空気が止まった。

「……………何で？」
「シラダリア商会が最も力を入れているのは衣類の分野です。貴方の着用しているそれはどこの国にもありませんから」

　敵意はないように見える。が、龍矢はそれ以上に怖ろしい何かを感じた。

「ど、どうする気……」
「貴方が異世界の住人だと知ってですか？」

　ミリアリアは数秒、間を置いてから、



「私を貴方の仲間に入れて下さい♪」



　と告げた。

「……と言う訳で、一緒に旅するミリアリアさんです」
「………」

　帰ってきたリマルにミリアリアを紹介する。にこやかなミリアリアと対象的にリマルは顔を引きつらせていた。

「よろしくお願いします」
「りゅ、りゅーやさん！」

　抗議しようとするリマルにミリアリアは素早く、

(これ、お近づきの印です)

　と、小声で白く円い物体を渡した。

(こ、これは！　幻の石鹸！！？)
(不死鳥と呼ばれるラミーアの羽でしか作る事の出来ない石鹸です。アライグマ族である貴方にぴったりかと思いまして)

　龍矢の聴覚は超能力によって常人より何十倍と優れている。その為、彼女達の内緒話を全て聞く事ができた。
　だが、この世界には聞かない方が良い事もあると悟り、ひっそりと力を抑える。

「りゅーやさん！　ミリアリアさんは良い人です！」
「そ、そう、良かったね」

　アライグマ族は簡単に心を開かないという情報が揺らいだ瞬間だった。

「それで、リューヤさんはどこを旅しようとしているのですか？」
「えっ」
「北のエルフが住む大陸、南の未開の地、人が沢山住む中央大陸、そして人しか住まない東大陸」

　確かに旅をするなら行き先を決めなければならない。それは龍矢にも分かっている。

　だが、戦いしか知らなかった彼にとって、どこを向かえば良いかなど簡単に決められるものではなかった。

　悩んだ末に龍矢は、


１、東大陸
２、北大陸
３、南大陸
４、中央大陸


　安価下１を選んだ。

「東大陸には人しか住んでいないんですか？」
「そうですね。もちろん獣はいます。あくまでも“文明を持つ種族が人間だけ”という意味です」
「………」

　行ってみたい気はする。人間だけが作った魔法の存在する世界の国がどんなものか気になった。

　だが、リマルはどうする。人間だけしかいない国にアライグマの姿をした少女は浮かないだろうか。

　それどころか迫害されたり、食材にされそうになったら……。

「りゅーやさん……」
「リマル？」

　ｸｲｸｲとズボンを引っ張るリマル。その顔はどこか悲しそうで、そして嬉しそうだった。

「私を心配してくださっているのは嬉しいですが、行きたい場所を選んでください。旅の足手まといになるようでしたら抜けますから」
「リマル……」

　えへへと潤んだ瞳で笑うリマル。

「確かに人間だけが暮らす大陸なので心配なのは分かりますが、どこの大陸に行こうと悪い人はいます。むしろ人間ばかりいる大陸の方がアライグマ族という珍しい存在を狙いにくかったりもしますよ。突然いなくなったら気が付きますし」

　ミリアリアのフォローを聞いて、龍矢は行き先を決める。

「東大陸にするよ。なんだかすごく……見てみたいんだ」

　かつて龍矢は人間に失望した。自分達のエゴの為に地球をここまで汚す事ができるのかと。
　だが、一方で優しさは存在した。輝きもあった。

　龍矢は誰よりも人間を嫌いながら、誰よりも求めていた。

「東大陸なら私もシラダリア商会本部に行く用事があったので旅費は持ちますよ」

　ミリアリアは薄い胸をどんと叩く。何とも頼もしい言葉だった。

　その日、ミリアリアの宿泊している宿に泊った龍矢は生まれて初めてのベッドに感動したり、風呂の気持ち良さに感動したり、強襲されない安らぎに感動したりした。

　ぐっすり眠った龍矢の部屋にミリアリアが訪れる。

「おはようございます。良く眠れましたか？」
「うん！　最高だった！！　本当にありがとうミリアリア！」

　心の底から感動した龍矢は満面の笑みを見せた。

「……そ、それは良かったですね」

　ミリアリアは彼の無邪気な喜びと感謝に照れる。商人を始めてから一度して戸惑った事などなかった彼女にとって初めての出来事だった。

「船旅は初めてですよね」
「うん、海なんてなかったからね」

　第三次超越戦争時代の海はとっくに枯れ果てていた。海溝の底を根城としていた超能力者を捕まえる為の人間側の策だ。

「でしたら、注意する事がいくつかあります」
「………」

　海に落ちたら魔物がいる事。船酔い。そして海賊。
　様々な危険が船旅にある事を告げたミリアリアに対し、龍矢は、

「そんなに大変なのに、ミリアリアはすごいね」

　と答えた。

「そ、そんな事はありません。商人として当然ですからっ」

　顔を赤く染めるミリアリアに龍矢はきょとんと首を傾げた。
　この辺りからミリアリアは悟る。

(この人……天然で女を狂わせるタイプです)

　女商人達の中で一番初めに覚えるべき言葉がある。

『男はやってもやられるな』

　女商人にとって最大の敵は無邪気な男性客だという。辛い旅と商売に疲れた女にとって、無邪気な男性客はあまりにも魅力的過ぎるのだ。

(私には目的がある……絶対やられてはいけません……)

　心の中で堅く誓うミリアリア。
　奴隷を解放するまでは絶対に――。

　昼過ぎになって、リマルを迎えに行くと、そこにはルマルが立っていた。

「おう、うちの娘を連れて行くらしいな」

　ルマルは短い腕を組み、威圧的な態度で口を開いた。

「はい」

　駆け引きを知らない龍矢は素直に頷いた。

「……くそっ、自信満々かよぉおおおおおお」

　悔しそうに叫びながらルマルは去って行った。洗い物対決で負けた彼にリマルを止める権利はなかったからだ。

「……放っておいて大丈夫かな？」
「………大丈夫です」

　リマルは恥ずかしそうに俯いたが、龍矢はもちろんその意味が分からなかった。


　□　□　□


「これが……海」

　船着き場に着いた龍矢を大海が迎える。はるか遠くで巨大魚が飛び跳ねていた。

「切符は買ってますので、あちらの船に乗りますよ」

　と、指差すミリアリアの先には、誰が見ても不安になるボロ船が待っていた。

「……ほ、本当に大丈夫ですか？」

　リマルが不安そうに呟いた。龍矢には何が駄目なのか分からなかったが、ミリアリアの返答を待つ事にした。

「海に浮かべば船ですから！　大丈夫ですよ！」

　円眼鏡をクイとさせながら、ミリアリアは根拠のない自信を見せた。

「……アライグマ族は海泳げないんですけど…」
「もちろん私も船が沈めば荷物と一緒に昇天ですよ！　多少のリスクは冒険につきものです！」

　ふふんと胸を張るミリアリアにリマルは溜息を吐いた。
　ようやく事情を呑みこめた龍矢は最悪超能力で何とかしようと心に誓う。

　船に近づくと、ますますリマルは不安になった。

　船は所々補修されていたが、そのやり方が素人でも付け焼刃だと分かる代物だったからだ。

「不安になるのは分かりますが、隣の船よりは安全ですよ」

　と、ミリアリアは隣の豪華客船を指差した。

「おいおいおいおい、ボロ船の乗船客が何か言ってるぜ」
「ほほほっ！　お金がないからって僻んじゃって！」
「お前らなんて海の魚の餌にしかならねぇんだよ！」

　奴隷を買いつけに来ていた貴族達が口々に悪態を吐いた。

　ミリアリアは悪態を全く気にせず、むしろ憐れんだ様子で、

「どの船に乗ろうと自由ですが、命は大事にしてください」

　と言った。貴族達の顔が真っ赤に染まる。

「ふん！　船長にお前達と同じ航路を辿るように言ってやる！」
「沈む所を見て笑ってやるんだから！」
「後で助けを求めても無駄だからな！」

　捨て台詞を吐いて豪華客船に乗る貴族達。

　ミリアリアの言葉を不思議に思った龍矢が尋ねる。

「なんであっちの方が危ないんだ？」
「……船も人間と同じだから、ですよ」

　ミリアリアはそれだけ言葉にすると、ボロ船へと乗船した。

「行ってきます。お父さん、皆」

　リマルが後に続き、最後に残った龍矢はテレパシーで、

『ヴァンさん、アンナさん、ルバーサ、ありがとうございました』

　と、お礼を発信した。彼らからの返信はないだろう。それどころか二度と会えないかもしれない。

　だが、それが自分の選んだ道なのだと言い聞かせる龍矢。




　船旅が始まる。




　第一話「出会いと別れ、そして出会い」　完

　ドッペルゲンガー族の多くは自分の両親を知らない。

　どこで生まれたのか、自分は愛された事があるのか、誰かに抱かれた事があるのか、



　自分が何者なのか、それらさえも知らない。



「オルタぁ！　３０４号室までこれを運んで来い！！」

　豪華客船エンドジエンド号。その船底でオルタと呼ばれた男は獣の耳をした少女を渡された。

「ぐすっ……、ひっく……、こわいよぉ……」

　獣耳の少女は抵抗する事を諦め、ただただ泣いていた。オルタは少女を少しだけ眺めると、

「……行くよ」

　と、少女の手を引っ張った。

　エンドジエンド号は法外な値段の乗船料を要求する代わりに、この世のありとあらゆる悪事を黙認する世界の闇のような場所だった。

　薬、殺し、闇の儀式、様々な悪意が渦巻く中で、男の乗船客から最も支持されているのが『獣人狩り』だ。

　オルタはその案内人であり、狩人の安全を護る“装置”だった。

「３０４号室……ここか」
「お願いします！　見逃して下さい！　何でもしますから！」

　少女の懇願にオルタは首を傾げた。

「……何でもする？」
「ひっ！？」

　オルタの瞳を覗きこんだ少女は悲鳴を上げる。

　一見優しそうな青年。その瞳の奥には、“死よりも怖ろしい何か”が存在していた。

「じゃあ、生き残ってみなよ。そしたら見逃してあげる」

　オルタは躊躇なく３０４号室を開ける。

　そこに待っていたのは裸の男達。

「いや……いやぁ……」

　この世の物とは思えない“何か”を装備した彼らの中に、オルタは少女を――、








　放り込んだ。







　

「……本当に付いてきてますね。悪趣味な人達です」

　ミリアリアは後方を走る船を眺めながら、はぁと深いため息を吐いた。

　エンドジエンド号は付かず離れずの距離を保ちながら、龍矢達の船を追いかける。

「と言ってもまぁ、航路は数本しかないので仕方ないんですが……」
「ミリアリアはあの船のこと嫌いなの？」
「ええ、嫌いも嫌い、大嫌いです」

　龍矢の質問に即答したミリアリアだが、その理由だけは一向に告げる気配がなかった。
　龍矢は何故だか聞かない方が良いと思った。ミリアリアの瞳の奥に殺意に近い感情が籠っていたからだ。

「それよりも……」
「し、死にます……しぬぅ…」

　出向して数分もせず船酔いしたリマル。アライグマ族が海に弱い事を証明していた。

「ど、どうすれば……」


１、抱きかかえてみる
２、超能力で宙に浮かせてみる
３、ミリアリアに頼ってみる


安価下１
　

「ミリアリア、リマルが船酔いしちゃったんだけど……」

　龍矢はミリアリアならすぐ解決する策を出してくれるだろうと思っていた。

「なるほど！　でしたら――」

　彼の予想通りミリアリアは解決方法をすぐに提示した。ただ、



「船酔い止めのペンダント、一個二万ェンです！」



　そこには商売が存在していた。

「二万ェンってこれで足りる？」
「りゅーやさん……そ、それは……」

　ルマルから受け取った給料を渡す龍矢。

「……ちょうどですね！　はい、これをどうぞ！」

　と、お金を受け取ったミリアリアが即座にリマルの首にペンダントをかける。船の形をした翡翠色のそれは輝きを放った。

「治りました……」
「良かった……」

　龍矢は安堵し、ミリアリアはにっこりと笑う。
　リマルは申し訳なさそうに、

「足を引っ張らないと誓った矢先に……すみません」

　と謝った。龍矢は首を横に振る。

「船酔いなんて誰がなるか分からないんだし気にしないで！」
「りゅーやさん……」

「何でもするって言ったのになぁ……」

　船底後方部にある死体処理場へと少女を運ぶオルタ。この世のものとは思えない呻き声が耳に届く。

(死体を“喰って海へと排泄する”だけに作られた魔物。それに比べたら僕なんてまだマシか……)

　その魔物に脳はなく、意志はない。ただ触れた物を口の中に放り込み、消化し、魔力に変えるだけの生物。

　少女を肉の塊へと放り込むと、それはうねうねと少女を取り込んだ。

「……いっそ飛び込めば…」

　オルタは常に死を求めていた。死だけは平等ではないのかと考えていたからだ。

(ドッペルゲンガーは生まれてきた意味を知らないけど、船の動力になるなら死ぬ意味が……)

　一歩踏み出す。

(見た目を変え、歴史を変え、心を変えた。もう本当の僕はとっくに死んでいる)

　もう一歩踏み出す。

(死人は死人らしく、大人しく……)

　あと一歩踏み出せば、魔物は動き出す。

(そうだ。それが良い。きっとドッペルゲンガーの数が増えないのは皆死んでるからだ……)


　さらに一歩、


「さよなら……この世界の全ての――『警報！　警報！　リヴァリアス出現！　乗組員はただちに戦闘の準備！　繰り返す――』



　

「ミリアリア、あれ！！」
「やはり出ましたか！」

　ミリアリア達の前に現れたのは、巨大なイカのような、それでいて龍のような形をした魔物だった。
　ボロ船をまるごと飲み込んでしまいそうなそれは、勢いよく空へと舞い、海へと戻る。

「こ、怖い……」

　リマルは震えていた。魔大陸は見た目こそ異形なれど、殺戮を良しとする生物は少ない。
　リヴァリアスはただそれを目的にしているような、破壊と殺戮の象徴のような雰囲気を見せていた。

「……僕が行くしか」

　龍矢には自信があった。例えどれだけ巨大で魔力を秘めていようと、生物である限り超能力に勝つ事はできないと思ったからだ。

　だが、ミリアリアは首を振り龍矢を止めた。

「リヴァリアスは殺してはいけません。この辺りの生態系が変わったり、潮の流れが変わると、世界に影響が出ます」
「でも、皆が――「大丈夫です」

　ミリアリアはニコリと笑うと、

「リューヤさんは不思議に思いませんでしたか？　“ボロ船はどうやってここまでボロくなったのだろう”と」

「それって……」

　龍矢が答えを告げる前に、それらは飛び出した。



「行くぞ野郎ども！」
「おぉおおおおお！！」
「やってやるぜぇええええ！」



　背ビレの付いた半分魚のような人間達。

「海の事は海に生きる者達に任せるのが一番。なんですよ」

「こっちだ！　追い込め！」
「喰らえぇえええ！」
「ハンギョ舐めんなぁあああ！」

　三又の槍を片手に彼らはリヴァリアスに向かっていった。象と蟻ほどの差があったが、彼らは勇敢だった。

「リヴァリアスって本当はすごい臆病なんですよ。だからこそ弱い相手を苛めるのが好きで、少しでも弱気を感じると攻めてくるんです」

　だからこそ心の底から負けない闘志を持つ彼らハンギョ族の乗る船は安全なんです。ミリアリアはそう付けくわえる。

「私達は安全に航海を続ける事が出来ますが、よりストレスを溜めたリヴァリアスが向かうのは……」

　ミリアリアの視線の先にあったのは、エンドジエンド号だった。

「……別の航路を辿っていれば良かったのに」

　彼女の言葉通り、リヴァリアスはエンドジエンド号に向かっていく。

「エンドジエンド号の乗客は貴族達がほとんど……少しでも怖い事が起きると怯えてしまう弱い人達ばかり……」

　リヴァリアスは力いっぱい宙を舞うと、そのまま――エンドジエンド号にぶつかった。



　鼓膜が割れるほど大きな音が大海に響く。

　リヴァリアスは触手のような足をうねらせ、エンドジエンド号を潰そうとする。
　乗船客の悲鳴と、それを宥める乗船員達の叫び声はまるで地獄の調べだった。

「可哀相……」

　リマルが今にも泣き出しそうな顔で言った。龍矢は何とか出来ないものかとミリアリアの顔を見る。

「……ああなってしまってはどうしようもありません」

　ミリアリアもまた、何かに耐えている様子だった。船の中には多くの奴隷がいる事を彼女は知っていたからだ。

「リマル、ミリアリア、教えてほしい」

「え？」「リューヤさん？」

　龍矢には分からなかった。
　彼らが招いた事故は自業自得だとミリアリアは言うが、ならば助けるべきではないのか。
　それとも、“助ける力を持った者は助けるべきなのか”。

　リマルとミリアリアは同時に、


「助けられたら助けるべきです」「だと思います」


　と、言った。

「うん、僕もそう思う」

　龍矢は思い出す。
　かつて、自分の事を弟のように可愛がってくれた青年は、敵である人間兵にも優しく介抱していた事を。



「僕に任せてほしい」



　龍矢は船のヘリに移動すると、右手をリヴァリアスに向けた。

『……止まれ』

　リヴァリアスの心に直接命令する。
　止める方法は数多くあるが、これが一番負担が少ないと判断したからだ。

　リヴァリアスはゆっくりと動きを止めた。船に絡みついていた足がゆっくりと解ける。

『海へ帰れ』

　とてつもなく巨大な質量だが、心はとても小さい。人間よりも弱い生物だと龍矢は理解した。

　するすると完全にエンドジエンド号を放すリヴァリアス。そしてゆっくりと船へと戻って行く。

「凄い……力です」
「りゅーやさん……」

　龍矢の力に見惚れていた二人だが、突如として、


　――ガギッ！！！


　と、何かが壊れる音が大海に響き、正気を取り戻す。

「あれを見てください！」

　ミリアリアはエンドジエンド号を指差す。

　その船はもはや船としての機能を果たしていなかった。

　ぽっきりと二つに割れ、ｺﾞｺﾞｺﾞと音を立てながら海に沈んで行く。

「……この辺りに島とかないのかな？」
「えっ？」

　龍矢はエンドジエンド号に右手を向ける。
　超越戦争を生き抜いてきた者にとって、船の一つや二つ浮かせる事は朝飯前だった。

「はいはい、こちらに移動してください！」

　ミリアリアは楽しそうにエンドジエンド号の乗客と乗船員をボロ船に誘導していく。

「せめて魔術書だけで「駄目です。それとも泳いで帰りますか？」

　懇願する貴族に対し、ミリアリアはにっこりと拒否する。



『ボロ船で次の大陸まで運ぶ代わりに“エンドジエンド号の物は全て放棄する”』



　それがミリアリアの提示した条件だった。

「おいっ！　早く乗れ！」

　船長達に押されながら、獣人の少年少女がボロ船に移動しようとする。

「やめてください」
「あ！？　これは物じゃなくて人だろうが！！」

　凄む船長に対しミリアリアは物おじせず。

「もちろん奴隷も貴方達の所有物ですので置いて行ってもらいます」

　と告げた。

「……糞が。顔覚えたからな」
「ええ、……私も」

　龍矢は横目で彼女達のやりとりを見ていた。

(ミリアリア……なんでそんなに必死になってるんだろう)

　聞きたいような、聞いてはいけないような。

「……貴方が船を支えているんですか？」
「え？　あ、ああ、はい」

　突然話しかけてきたのは銀色の髪をした少年。
　感情の見えない顔はしっかりと龍矢を見ていた。

「そうですか……では、“貴方が死ねば船は沈むんですね”」



　ブンッ！！




　少年は背中に隠していた剣を龍矢にめがけて振り下ろす。

「……あれ？」

　銀髪の少年、オルタは怒りのままに振り下ろした剣が折れてしまった事を不思議に思った。

(僕が初めて決めようとした事を邪魔した報いを受けて貰わなきゃ……)

　オルタは怒っていたのだ。

　死を邪魔したリヴァリアスを、そして龍矢を。

「リューヤさん！？」

　ミリアリアが事態に気付き叫んだ。既に龍矢の手によって剣は折られていたのだが、彼女はオルタに向かって飛び出した。

「もう良いや」

　オルタは龍矢を殺す事を早々に諦めると、その場にしゃがみこんだ。

「ええっ！？」

　突然オルタを見失ったミリアリアは勢い余って、

「きゃんっ！」

　龍矢の胸元に飛び込んでしまった。

「……大丈夫？」

　超能力で痛みはないように調整したが、驚いた心を調整する事は出来ない。
　龍矢の問いかけにミリアリアは顔を真っ赤にして、

「だだだだ大丈夫！　大丈夫だから！」

　と、走り去ってしまった。

「それで……、君は何故僕を殺そうと？」

　龍矢の問いにオルタは首を傾げた。

「さぁ、忘れました」

　本当にオルタの記憶にはそれがすっぽりと抜けていた。

　すでに殺意を抱くほど怒り狂っていたオルタは死んだ。今存在しているのはエンドジエンド号で言われるがままに働いていたオルタだ。

「……そっか」

　龍矢は彼が嘘を吐いていないと判断すると、視線をエンドジエンド号に戻す。

　壊れた船は光輝き、人々の視線を釘づけにしていた。

　龍矢達は航路を変え、中央大陸南部へと降り立つ。貴族達と共に航海する気になれなかったのと、奴隷達を解放するためだ。

「本当にこれを貰って良いんですか？」

　奴隷二十五名が当分生きていける量の宝石を孤児院に渡す。孤児院はミリアリアが昔から知っている場所らしく、神父も信頼できるという。

「正直に言うと、私はあなた達を見捨てようとしました。あの状況で貴方達を助ける方法が見つからなかったからです。ですが、リューヤさんは圧倒的な力で貴方達を救いました。その彼が良いと言うのだから、これらは全て貴方達の物で、貴方達の未来は自由です」

　その瞬間、彼らの表情に笑みがこぼれた。安堵して泣きだす獣人もいた。

「強く生きて下さい。そして、死んでいった仲間の為にも幸せになって下さい」

　ミリアリアは眼鏡をくいと持ち上げた。涙が流れない術式をかけられた魔法具でくいと持ち上げると発動する。



「彼らはこれから幸せになれるかな」
「……絶対大丈夫ですよ。りゅーやさんのおかげです」

　龍矢は解放された奴隷達に自分を重ねていた。終わりのない戦いに希望を見いだせなかった自分。
　そこから解放された時、彼らのように皆で笑う事が出来たのだろうか。


　少なくとも分かる事は、自分は二度とその権利を得られない。


　戦場から逃げ出した者に、その権利はないのだ――。



　第二話「未来が死んだ日、生まれた日」　完

いったんここまで！　離れます！

乙乙
オルタは真の姿は別にあるのか
それとも真の姿なんて無いタイプなのか

>>124　こういうのは救いのない方が好きだったりします。


ｓｓ速報vip詳しい方に質問なんですが過去作ってもしかして消えちゃったりしてます？　それとも過去倉庫に入れられているだけ？

異世界に喫茶店を建てた【安価】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385649444/)

>>133　ありがとうございます！　間違いなく私の宝です！　第一スレ一番人気はフレイヤでしたね……個人的にはシルキー……ではなくベルデとエリーゼでしたが。

少しだけ続き行きますー。

　中央大陸は魔大陸と違い、光に溢れ、熱いとさえ思えるほど温かみがあった。

「リューヤさんが得た物は旅に使えそうな物以外全て高レートで換金しておきますね」

　と、自信満々に胸を張るミリアリア。机の上には剣や鞄、高級そうな服が置いてある。

「この剣は数ある宝の中でも最も高く売れる物なのですが、リューヤさんに持っていて欲しいです」
「……でも僕は剣とか使えないよ？」

　もちろん超能力を合わせて振れば何とかなるだろうが、それなら棒きれでも変わらない。

「いえ、剣としての能力は精々上の下、もちろん市場に出回っている量産品に比べたら格段に性能は良いです。……この竜神の矛は別の使い道があるのです」

　そう語るミリアリアはどちらかと言うと悲しげで、剣を誰かの手に回したくないようだった。

「とにかく、リューヤさんが持っていて欲しいんです。良いですか？」
「ミリアリアが言うならもちろん」

　即答した事が嬉しかったのかミリアリアはパァと顔を明るくした。

「後は旅人の服に術式の施された鞄ですね。中央大陸にある世界銀行の保管庫へと繋がっていて、大量の物資を出し入れできます」
「全部売ったらいくらくらいになるんですか？」

　リマルの質問にミリアリアの眼鏡がｷﾗﾘと輝いた。

「ざっと、国が一つ買えるくらいですかね」
「……お、おおふ」ｺﾃﾝ

　驚いたリマルが固まったまま倒れてしまった。だが、龍矢にはピンとこない。

「それは……すごいんだよね？」
「もちろんです。私が今までに稼いだ額より数倍凄いですから」
「じゃあ、僕の分も――「リューヤさん」

　全てあげようとする龍矢にミリアリアは首を振った。

「もちろん気持ちは嬉しいですが、私は商人です。一流の商人だと自負しています。決して施しなど受けません」

　龍矢は施しという言葉を聞いて何だか恥ずかしくなった。
　その理由までは分からなかったが、とても恥ずかしかったのだ。

「さて、東大陸へ向かうに当たって三つのルートがあります」

　と、ミリアリアは地図を机に広げた。

「中央大陸は北と南を分断するように真っすぐ道が通っています。神々の凱旋と呼ばれるそれは、ひたすらに真っすぐ歩く事ができます」

　かなり縮小された地図なのに、その道ははっきりと描かれていた。相当の広さを持っている事が龍矢でも分かる。

「次に航路を使うルートです。知っての通りたまに危険な事が起きますが早く行けます」

　中央大陸南部の海を指でなぞるミリアリア。細くしなやかな手に龍矢は見惚れた。

「最後は空のルートです。魔力で浮かぶ飛行機を使えば最も早く行けますし、事故も少ないです。料金は高いですが、確実な手段です」
「事故が起きたりしないんですか？　ドラゴンとぶつかったり……」

　リマルの質問にミリアリアは即答した。

「だから安全なんですよ。魔力で浮かぶと言う事は地面に接地している事と同じです。だったら鉄に囲まれた飛行機の方が安全でしょう？」
「確かに……」

　リマルが納得している様子を見ると、魔力は相当信頼できる物らしい。
　龍矢は自分も魔法を使用できるのだろうかと考えたが、言葉にする事はなかった。魔法の使用目的も言えないようでは幼稚園児と同じだと馬鹿にされてもおかしくないからだ。龍矢はそう結論付けた。

「リューヤさんはどうしたいですか？」
「僕は……」

「凄い……」

　神々の凱旋と呼ばれる道をルートに選んだ龍矢は、その広さに驚いていた。

　端から端まで見ようとすると地平線に行きついてしまう。平坦な道がただ広く、ただ真っすぐ伸びているのだ。

「町が道にすっぽり収まっている場所もありますよ」

　ミリアリアの言葉に龍矢とリマルは「ほえー」と声を漏らした。

「そもそもがこの道は道として作られた物ではなく、始祖と呼ばれる最初の人間が魔法で整地したただの空き地だとされています」
「この広く綺麗な道がただの空き地？」
「もちろんただの伝説ですが、始祖の残した遺跡などを調べるとあながち嘘ではないのかもと思ってしまいます」
「……何がしたかったのかな」

　草一つ生えていない道。小石さえも存在していない。
　それを始祖は気まぐれで作った言うのだろうか。

「何もないからこそ、色々な移動手段があるんですよ」

　と、ミリアリアは鞄から木の板を取り出した。それは楕円形で細長く、人間がギリギリ寝ころべない長さのモノだった。

「ホバーボードと言います。魔力で浮いたり移動できます」

　ミリアリアはおもむろに板に乗る。すると板は青く輝いて浮き上がった。

「おお……」「すごい……」

　龍矢とリマルはぱちぱちと拍手をする。ミリアリアは「えへへ」と照れながらホバーボードから降りた。

「龍矢さんは超能力と呼ばれる力で殆どの事が出来ますが、自分を浮かせる事は出来ないんですよね？」
「うん……そうなんだ」




「出来ない事を出来るようになるのが、魔法の力なんですよ」




　ミリアリアはニコリと笑うと、龍矢にホバーボードを渡した。

　特訓が始まる。

　

「難しく考えがちですが、魔力を操るのに必要な物は技術だけです。才能はもちろん特殊な力も要りません」

　ミリアリアは龍矢の手を握る。

「今から手の上に集めるのが魔力です。強く握ってみてください」
「…………っ！？」

　言われるがままに強く握ると、魔力がバチと弾けた。

「分かりましたか？　それが魔力です」

(認識したからか、魔力が可視化できるようになったみたいだ)

　龍矢の目にはミリアリアやリマルの周りに淡い光が映った。

(ミリアリアは紅い魔力。リマルはオレンジ色の魔力か)

　それが何を意味しているか分からないが、何となく面白い。

　するとミリアリアが、

「魔力には意思に似た何かを宿していて、人の感情によって近寄る魔力の色が違うとされています」

　と、説明した。何となく嫌な予感がする。

「……ふむ」

「紅い魔力は――」



１、異性に対する愛情を発している場合に近づきます。
２、情熱を宿している者に近づきます。
３、復讐心を持つ者に近づきます。


安価下１

「復讐心を持つ者に近づきます。似た色でオレンジ色は慈愛を持つ者に近づくのは不思議ですよね」
「………」

　見てはいけない物を見てしまった気分だ。

(凄く紅い……。どれだけの復讐心を持てば……)

「青は冷徹な心、黒は歪んだ心、白は慈愛、緑は静かな心です。高度な魔法使いならそれを調べる魔法使えます」
「へぇ……」

　と、龍矢は自分の周囲に近づく魔力が様々な色である事に気付いた。

「ちなみに、全ての色が近づいてくる場合は？」

　ミリアリアは少し迷った後、



「……変態…ですかね？」



　と苦笑いを浮かべた。

「……特訓する必要もなさそうですね」

　ミリアリアが若干悔しそうに呟いた。

「超能力使ってるだけだけどね」

　原理としては魔法だ。しかし、この世界の住人が手や体、言葉や術式で魔法へと昇華するプロセスを“超能力”で代用している。

「魔力を使えば全て魔法です。魔術も法術も全部同じです」
「私は魔法が苦手みたいです……」

　えへへと笑うリマル。その理由をミリアリアは即答する。

「アライグマ族……というより獣族の手は魔法に向いていないので仕方ありませんよ。その代わり魔力を体毛で吸収して力に変えたり出来ますし」
「そうなんですか……」

　リマルは残念そうに項垂れた。龍矢と並んでホバーボードを運転したかったのだ。

「仕方ありません。龍矢さんのホバーボードにはサイドカーを着けますね」
「えっ？」

　と、ミリアリアは鞄からトレーのような円い板を取り出した。

「私よりも龍矢さんのそばにいた方が安全ですのでお願いしても良いでしょうか？」
「えっと……」


　１、分かった
　２、ごめん、お願いして良いかな
　３、ミリアリアも一緒に乗ろう

安価下１

１了解です！　今日はここまでにして明日安価消化から始めます！

後、オルタは敵として良い存在になってくれそうなので、旅の先々で現れる系の敵にしたいと思います！


この物語は後五つほどの山場を乗り越えようと思っているので、イベントキャラを安価で募集しようと思います！
※状況によってはヒロインやボスキャラになる可能性はあります。

安価下１～3

名前：
性別：
年齢：若いとかでおｋ
種族：
特徴：


悪い奴でも良い奴でもオッケーです！

お願いします！そしてお疲れさまでした！

過去作の異世界喫茶読んでると今度は大陸や国、派閥や情勢も安価で決めてから始めるのもありかなーと思いました。

アルゴス・クレア・リエル了解です。

続き行きます。さっそくアルゴスの所からですー

　神々の凱旋と呼ばれる中央大陸の巨大街道。その中心部に二つの国があった。

　巨人族が建てた国グランデピレトロ。そして、人が建てた国スティリベール。

　かつて友好国だった二国。今では数世紀に渡る戦争を繰り広げていた。



「バルドンが殺された！？」

　グランデピレトロ南部。戦争の最前線に怒号が響いた。

「……ええ、しかも“我々の魂を的確に壊されていました”」

「馬鹿な！？　この世界でそれを知る者はいないはず！！」

「……しかもバルドン師団長を殺した人間は、



　黒髪の若き少年でした」



　巨人の兵士は過去に起きた事を映し出す宝石でバルドンを殺した犯人を映し出した。

「……こいつが、バルドンを…」

　アルゴスの表情が怒りに満ちる。巨人族は見た目こそ人間と同じだが、体躯は数倍、怒りに身を任せるとありとあらゆる物を破壊し尽くすと言われていた。

「数世紀の戦争で色々あったが、これほどまでに屈辱的な出来事はなかった！！」

　アルゴスは目の前の石で出来た円卓を叩き割ると、

「もはや人間共は滅びの対象！　全軍出撃の準備をしろ！！」

　と叫んだ。



　二国間最後の戦争が――始まる。



　第三話「容疑者龍矢の潔白」



　

「気持ち良いですね！」

　ホバーボードにすっかり慣れた龍矢達は猛スピードで東へと向かっていた。今の所街はおろか人のすがたさえ見えず、この街道がいかに大きいか身を持って体験できていた。

「もう小一時間すればスティリベールという国に着きます。北の国と戦争中ですがシラダリア商会のペンダントがあれば入れてくれるはずです」
「戦争中なのに危なくないですか？」

　リマルの質問にミリアリアは即答した。

「戦争相手は巨人の国なんですが、巨人達は誇り高い民族で一般人や旅人を襲ったりはしません。よほどの事がない限り安全でしょう」
「そう……ですか」

　ミリアリアの言葉を聞いてもなお不安そうなリマルを龍矢は優しく撫でた。

「もし危なそうだったら立ち寄らずにそのまま行こう」
「……りゅーやさん」

　アライグマ族は戦闘に向いている種族ではない。短い手足では武器を装備する事も出来なければ、魔法を使う事も出来ない。
　そんな彼女を危険な目に合わせてはいけないと龍矢は考えていた。

「……ミリアリア、止まろう」

　スティリベールが目と鼻の先に見えた矢先、龍矢はホバーボードの進行を止める。

「あれは……エンドジエンド号に乗っていた……」

　三人に向かって近づいて来るのはオルタだった。銀髪に特徴のない顔、年は若く見える。

(私達より早く移動した……？)

　ミリアリアは龍矢を襲った彼に対し、強い警戒心を抱いていた。

　オルタはその殺気染みた気配を感じ取ったのか、

「やる気はないよ。僕は“弱い”からね」

　と、両手をあげながら歩み寄る。

「僕達に何か用が？」

　龍矢の質問にオルタはふっと笑みをこぼす。口元だけが歪んでいて、醜い笑顔だった。

「特に用はありませんが、一つ忠告してあげます」
「忠告……？」

　オルタはスティリベールを指差し、

「人の国に行けば貴方達は英雄になれる可能性を得るでしょう。対して巨人の国に行けば貴方達は汚名を雪ぐチャンスを得るでしょう。どちらも行かなければ貴方達は罪人となるでしょう」

　と、言った。その言葉は棒読みで、何の感情も籠っていない。

　だが、妙な説得力があった。まるで“本当にそうなるような”。

「君は一体……」
「僕は何者でもない。ただの……」

　オルタはそれ以上言葉にせず去って行った。




１、巨人の国に行く
２、人の国へ行く
３、どちらも行かない



安価下１

ごめんここから台詞主体で行きます(テンポが悪すぎるため)。全部ではないです。

スティリベール入口

門番「貴様ら、旅の者か？」

龍矢(凄く機嫌が悪そう。……というか疲れてる？)

ミリア「はい。東大陸へ向かっている商人です」ﾁﾗｯ

門番「……シラダリア商会か。ここで商売はできんぞ？」

ミリア「何故ですか？」

門番「……昨日、突如として巨人達が総力戦を仕掛けてきたのだ」

三人「「！？」」

門番「何でも、向こうの師団長が人間に殺されたとかで……」

ミリア(まさか……彼が巨人を？)

門番「……シラダリア商会なら巨人を殺す武器とかないのか？」

ミリア「いくつかありますので、紹介してもらえますか？」

門番「……ああ、取り次いでおく」ﾊｧ…

ミリア「良かったらこれ、精力剤です。気休め程度ですが」

門番「すまん……」

スティアート家

クレア「私が当主のクレア＝スティアートだ」

ミリア「シルダリア商会のミリアリアと申します。

クレア「何でも巨人と戦える武具を売ってくれるとか」

ミリア「ええ、使い手を選ぶ武器や防具ですが、必ず役に立ちます」

ミリア(この人も死にそうな顔をしていますね……。ほとんど寝ていないんじゃ……)

クレア「……ところで、彼は？」

ミリア「？　彼は私の用心棒みたいな者です。どうかしましたか？」

クレア「……いや、黒髪が珍しくてね」

ミリア「そうですね。この世界に黒髪の種族など存在しませんからね」

クレア「……良かったらここに泊ってくれ。大したもてなしはできないが……」

ミリア「………」ﾁﾗｯ

龍矢「………」ｺｸﾘ

ミリア「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきますね」ﾆｺｯ

クレア「………」ﾎｯ

ミリア(やはり何かを隠している……一体何を？)

寝室(龍矢の部屋)

ミリア「それでは私は武具を売りに行ってきますね」

龍矢「うん、ついて行かなくて大丈夫？」

ミリア「ええ、というより商談している時の私を見て欲しくないですね」ｴﾍﾍ

龍矢「あ、そか、分かった」

リマル「行ってらっしゃい」

ミリア「リマル、龍矢をお願いしますね」

リマル「……？　分かりました」ｺｸﾘ


　□　□


龍矢「この国の部屋ってすごく大きいよね」

リマル「昔は巨人と人が共存してたからじゃないですか？」

龍矢「なるほど、戦争になる前はここに巨人も住んでたのか……」

リマル「……魔族にも派閥があります。生物は争う事しかできないのでしょうか……」

龍矢「……僕も知りたいよ。別の答えを……」

議会室

クレア「やはりあの男で間違いないか？」

師団長「巨人が求めている黒髪の若者、背の高さや顔立ち、全て一致しています！」

クレア「……彼が巨人を殺したと言うのか？」

クレア(あんな優男にスティリベール兵が千人死んで一体倒せると言われている巨人を殺す力が……？)

師団長「どうしますか？　あの男を引き渡して停戦を「バカ者！」

クレア「そんな事をすれば巨人を殺せる力を失ってしまうだろう！」

師団長「で、ですが……、今までは巨人達が建設物を壊さないように戦ってくれていたから五分五分でしたが、今はおかまいなしに……」

クレア「分かっている……。このままではどちらにせよ私達が滅ぼされる……」

クレア(ならば……どんな方法を使ってでも……)

師団長「………」

寝室(龍矢の部屋)

龍矢(リマルはこの国の洗い方を勉強するために厨房に行っちゃったし、暇になったな……)


コンコン


龍矢「………？」ｶﾞﾁｬ

クレア「……少し、お話を良いでしょうか？」

龍矢「あ、はい」

龍矢(綺麗な人だな……。でも、こんなに疲れた顔してたら皆に心配されそう)

クレア「紅茶を持ってきましたの」

龍矢「ありがとうございます」

クレア「どうぞ」ｺﾄ

龍矢「いただきます」

クレア「あなた、えっと……」

龍矢「御門龍矢と言います」

クレア「リューヤさん。貴方はミリアリアさんの用心棒をするだけあって腕には自信があるのですか？」

龍矢「いや、どうなんですかね？　旅の道中に危険がほとんどなかったもので」

クレア「なるほど……」

龍矢「どうかしました？」

クレア「あ、いえ、こんな情勢ですし、お強ければここで名を上げて頂こうと思いましたの」ﾌﾌｯ

龍矢「戦争なんて僕には無理ですよ！」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

クレア(この怯えよう……情報は間違っていたのかしら？)

龍矢(たぶん僕が戦場に立てば……抑えられなくなる)

クレア(ですが、この国に黒髪の人間などいませんし……)

クレア「ところで私、いくつくらいに見えます？」

龍矢「成人なされてるんですよね？」

クレア「……今年で十四歳になります」

龍矢「ぶっ！？」

クレア「驚かれましたか？」

龍矢「……貫禄があったもので」

クレア「色々ありましたから。父が死んでからずっと、私がこの国を支えてきましたし……」

龍矢「クレアさん……」

クレア「リューヤさん……一つお願いがあるのですが！」ｷﾞｭｯ

龍矢(きゅ、急に手を！？)ｶｧ///

兵舎

兵士「これはすごい！　龍殺しの槍だ！」

兵士「こっちも凄い防具だ！」

兵士「こっちも！」ﾜｲﾜｲ


師団長「……非常に助かる」

ミリア「いえ、商人は道を外さない限り、求められる所に求められる物を運ぶだけですから」

師団長「見た目の幼さに侮っては行けぬと言う事か……」

ミリア「一つ、聞いても良いでしょうか？」

師団長「ああ、話せる事なら何でも」


ミリア「ここ数日間のうちに、“一風変わった少年”が何かをしたと噂になった事はありませんか？」


師団長「！！」

ミリア(その反応、やはり……)

師団長「君の用心棒がやった事ではないのか？」

ミリア「………え？」

ミリア「リューヤさんが巨人を……？」

師団長「ああ、巨人兵達は黒髪の男を出せと怒り狂っていた。巨人族は滅多に殺されないからな。その分仲間が殺された時の怒りは半端じゃない」

ミリア(……彼は銀髪だった。……でも)

師団長「本当に彼がやった事ではないのか？」

ミリア「ええ、つい先日まで私達は魔大陸にいて、ホバーボードでようやくここまでたどり着いたのですから」

師団長「……だが」


兵士「師団長！！」ﾀﾞﾝｯ


師団長「騒がしいぞ！」

兵士「す、すみません！　ですが！　クレア様が騎士団と共に戦場へと向かったのです！」

師団長「何！？　どういう事だ！？」

ミリア「………！」ﾊｯ



兵士「私達は何も知らされていませんが、クレア様の馬には“黒髪の少年”が一緒に乗っていたそうです！！」



ミリア「リューヤさん！」ﾀﾞｯ

師団長「……一体何を…」

戦場最前線

クレア「本当にありがとうございます」

龍矢「僕は貴方の傍にいるだけで良いんですよね？」

クレア「ええ、本当は旅の人に頼む事ではないんですが……、年の近い人がいなくて……」

龍矢「……僕で役立てるなら」

クレア「これで戦争が終わる……」

龍矢「でも、本当に何とか出来るんですか？」

クレア「ええ、巨人達も戦争を終わらせたいと考えています。スティアート家の私が停戦を申し込めば、きっと受け入れてくれるでしょう」

龍矢「そっか……良かった」

クレア「………着きました」


巨人達「………」ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ


龍矢(これが巨人……、リヴァリアスを見てなかったら失神してたかもな……)

アルゴス「本当に連れてくるとはな」

クレア「我が名はスティアート家当主クレアスティアート！　そちらの長は誰だ！」

アルゴス「俺だ。アルゴスと言う。とうとう顔を出したなスティアート家」

クレア「……思ったより小さいのがトップなのね」

アルゴス「貴様らこそ女を長にするなど変わってるな」


二人「「………」」


騎士団「………」ｺﾞｸﾘ

龍矢(何だか穏やかな様子じゃないな。本当に停戦を申し込むのか？)

アルゴス「……さぁ、その男を引き渡せ」

龍矢「えっ？」

龍矢(何で僕？)

クレア「断る」

巨人達「「！？」」ｻﾞﾜｯ

アルゴス「貴様……どういう事だ」ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ

クレア「彼はこちらの秘密兵器だ。そう簡単に渡す訳がなかろう」

龍矢(ど、どういう事だ！？　戦争を終わらせるんじゃ……)ｱｾｱｾ

アルゴス「秘密兵器を表に出してきたという事は、そう捉えて良いんだな？」

龍矢「クレア……？」

クレア「………」ﾁﾗｯ

龍矢「？」


　ご・め・ん・ね

クレア「今日で貴様ら巨人達は滅ぶ！　覚悟せよ！！」




巨人達「「小さき者どもがぁああああああ！！！」」ｳｫｵｵｫｫｵｵｯ!!

騎士団「怯むな！！　クレア様を護るぞ！！」

龍矢「なっ！？　一体！？」

アルゴス「黒髪の男を捕えろ！　逃がすくらいなら殺せ！！」

龍矢「えぇ！？」



ミリア「リューヤ！！」



龍矢「ミリアリア！？」

ミリア「今すぐ逃げて！　貴方は銀髪の男によって巨人殺しの犯人に仕立て上げられたのよ！！」

龍矢「！！？」

一旦ここまでにします。続きは九時か十時過ぎからで！

　巨人族と聞くと動きがのろく大ぶりな攻撃しか仕掛けてこないと思われがちだが、むしろ逆。

　鋼のような筋肉を駆使した動きは風のように早く、魔力を乗せた一撃は雷のように強い。


巨人「がぁあああああ！！」ﾌﾞﾝｯ


　地響きが轟くほど大きな声を上げて巨人の兵士が一撃を繰り出す。


龍矢(この程度の攻撃なら避ける事は……)

龍矢「……え？」

クレア「………」ﾊﾞｯ

クレア(リューヤ、私は貴方に命を賭けました。もし私の期待が外れるならば、貴方と共に死にましょう)


　巨人と龍矢の間に立つクレア。一歩も動かないと、両手を広げていた。


ミリア「リューヤ！　逃げて下さい！」

龍矢「………っ！」ﾊﾞｯ

龍矢(止まれっ！)

巨人「……がっ…」ｷﾞｷﾞｷﾞｯ

騎士団「……お、おお…」

騎士団２「止まった……」

騎士団長「まさか……彼は本当に……」

巨人「ぐが……ぎっ」

龍矢(そうか……、そう言う事か……)

　
　巨人の攻撃を止めつつ、過去を読む力でなにが起きたか読みとる。


龍矢(銀髪の少年が僕の姿で巨人を……)


　目的までは読みとれなかったが、明らかな悪意が見えた。

　銀髪の少年は龍矢が巨人の味方でも人の味方でも“どちらになっても”良かったのだ。

　いや、むしろ“何もしなかった場合”でさえ、彼の思惑通りとなったのかもしれない。


龍矢(……君は一体何のために…)


　目的が分からなければ対処のしようもない。その場しのぎの答えを出した所で、それが正解かどうか分からないのだ。


クレア「……リューヤ。お願いします。我々の味方になって下さい」

龍矢「………」


１、クレアの味方になる。
２、巨人族につく。
３、どちらにもつかない。


　安価下１

龍矢「悪いけど、僕は君達の味方をする気はない」

クレア「……なっ！？」


　龍矢はパチンと指を鳴らした。

　アルゴスの意識が龍矢に向いた瞬間、


龍矢『これが君達の仲間を殺した光景とその後の彼の姿だ』


　と、テレパシーで過去に起きた事とオルタの姿を伝えた。


アルゴス「……なるほど、貴様もまたはめられたと言う訳か」

龍矢「僕は貴方達と争うつもりも、この人達の味方をするつもりもない」

アルゴス「そうか」



クレア「ま、待ちなさいっ！」ｶﾞｯ

リマル「りゅ、りゅうやさん……」

ミリア「卑怯な……っ」


　兵士の手によってミリアは人質に取られていた。


クレア「ミカドリューヤ！　私達の言う事を聞いてきょ……え？」



龍矢「どこも痛い所はない？」ﾀﾞｷ

リマル「ふぁい……大丈夫ですぅ」ｷﾞｭｰｯ

クレア「」

スティリベール城から東へ数キロ

龍矢「……ふぅ」

ミリア「転移魔法……のようですね」

龍矢「正確には地面の下を猛スピードで移動しただけなんだけどね。僕は自分の身体を移動させる超能力使えないから」

リマル「私の所為で……ごめんなさい」

龍矢「いや、君の所為じゃない。どうやら僕は銀髪の彼に恨まれたみたいだ」

ミリア「エンドジエンド号の彼に？」

龍矢「逆方向に歩いていたから二度と会わないと思いたいけど……」



　龍矢は確信していた。

　近いうちにまた彼と出会うだろうと。



　第三話　完




リマル(今日のりゅうやさんカッコ良すぎでした///)ｷｭﾝｷｭﾝ

次はリエル・グランドのお話で！　

その後の展開も考え始めたいので、三名ほど新規キャラを募集したいと思います！


安価下１～3

名前：
性別：
年齢：若いとかでおｋ
種族：
特徴：


悪い奴でも良い奴でもオッケーです！