【艦これ】あなたとつづるうた(短編集) (53)
昔書いたSS(暁と響)を加筆修正し、雷と電編を追加していきたいと思います
暁編と響編を読んだ事がある方は、雷編からお読みください
それではよろしくお願いいたします
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1486471605
暁「司令官……居るかな?」
暁「司令か……」
提督「この情報を総合するに……だから!……で……」
暁「……また明日にしよう」
暁「今日は……どうかな?」
提督「…………」カキカキ
暁「……書類仕事……」
暁「今日も……だめ……かな……」
暁「お仕事中だもの、仕方ないわ」
暁「今日は……どうかな?」
提督「なんだって!?定時連絡が途絶えた⁉大淀、状況確認を!」
大淀「はいっ!」
提督「天龍たちは待機せよと伝達!」
暁「――!準備しなきゃ!」
暁「結局、無線が故障して定時連絡が出来なかっただけだったみたいね」
暁「司令官……やっぱり、この事を報告書にまとめてる……」
暁「…………」
暁「……戻ろう……」シュン…
暁「司令官……大丈夫かな?」
暁「……寝る前で眠いけど……」
暁「うん、レディだけど……レディだからこそ、よ!何か手伝えるかもしれないわ!」
暁「司令官?」コンコン
暁「明かりはついてるのに……」
暁「司令官、入るわよ」
提督「……スースー……」
暁「寝てる……報告書は……途中みたい……」
暁「司令官、起き……」
暁「ううん、最近大変だったみたいだし、もう少し寝かせてあげた方がいいかも」
暁「起きた時大変かもしれないけど……」
暁「やっぱり起こしてあげた方が……」
提督「か~……」
暁「…………」
提督「むにゃむにゃ……」
暁「うふっ、司令官、子どもみたい」ナデナデ
提督「……くしっ!」
暁「あ、寒いのかしら?何か羽織るもの……」
暁「……毛布がお部屋にあったけど……その間寒いまんまよね」
暁「……あ、スカーフ……」
暁「んっと……ヨイショ」シュル
提督「……すー……すー……」
暁「よし、じゃあ待っててね、司令官」テテテ…
暁「ふぇぇ~、みんな待ってよぉ~」
響「暁が寝坊するのが悪いんだよ」
暁「ふぇぇ~~」
電「あれ?暁ちゃん、スカーフがないのです」
暁「えぇ!?……あっそういえば……」
雷「どうしたの?無くしちゃったの?私が探してあげるわ!」
暁(司令官に毛布を掛けてあげた後、スカーフを首に捲いてたの、忘れて帰っちゃった……)
暁「ううん、その……ちょっと置き忘れてきちゃったみたい」
響「まったく、だらしないね」
暁「そんなんじゃないわよ!」
電「それよりも、時間がないのです!」
雷「暁が遅いから!」
暁「私のせい!?」
響「とにかく走るよ!」
暁「はぁ~っはぁ~っ」
天龍「お前ら!遅いぞ!」
龍田「遠征任務よ~。北方鼠輸送ですって。ドラム缶の装備を忘れないようにね~」
雷「は~い」
暁「んしょ……艤装は……あれ、ハンカチ?」
天龍「そういや、提督のヤツが来て、お前の艤装の上にそのハンカチ置いてったな」
暁「……中に何か……?手紙?」
龍田「あらあら~、恋文かしら?」
暁「そんなんじゃないわよ!……たぶん……」
天龍「えっとぉ?」バッ
暁「あっ!見ちゃだめ!」ガバッ
龍田「私も興味あるわ~」
響「……」ソ~…
暁「響も!」
暁「も~……えっと……有明の つれなく見えし 別れより……」
雷「俳句?」
電「どういう意味なのです?」
龍田「えっと……確か古今和歌集に編纂されていた和歌だったかしら。意味は……」
天龍「有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし、だな。意味は『有明の月の出ていたあの時、逢えずに帰ってきたあの時から、暁、つまり明け方ほど辛い時はない』って意味だ。大方『暁』って入ってるから暁に送ってみたんじゃねえか?もっと勉強しろってな」
暁「も~、ひどいわ!天龍のいじわる!」!かすんぷ
龍田「それだけ?」
暁「……うん」
天龍「ふ~ん……ま、いいや、早く支度しろよ」
響・雷・電『は~い(なのです)』
天龍「……暁、ちょっと待て」
暁「なに?」
天龍「お前、スカーフ忘れてんぞ」
暁「あ、それは……」
天龍「しゃーねーなー……あ、もしかしてこのハンカチ……」ぎゅっぎゅっ
暁「……あっ」
天龍「お~、ぴったりだな……もしかして提督のヤツ、分かってたのか?」
龍田「そういえば提督、手首に何か巻いてたような~?」うふふっ
雷「なになに?」
電「いけない恋の匂いがするのです!」
響「……あとで詳しく聞かせてもらうよ、暁」
暁「も~~、そんなんじゃないわよ~~」
天龍「まあ話はあとで聞けるしな。おらお前ら出発するぞ!」
龍田「りょ~か~い」
雷「分かったわ!」
電「なのです!」
暁(みんなには話さなかったけれど、実は手紙にあった言葉は、天龍の言っていたそれとは違ったのよね……)
暁(手紙には 有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 恋ひ渡るかな って書いてあった)
暁(天龍の説明からだと、夜、会えなかったあの時からってことは、昨日の夜のことでいいはず)
暁(そして恋渡るっていうのは、司令官が変えた部分……ということは天龍の説明とは違うってことで……)
暁「ねえ、龍田」
龍田「なぁに?」
暁「恋ひ渡るかなって、どういう意味なの?」
龍田「あなたの事を慕い続けますよ~って意味ね。簡単に言うなら、好きですって意味」
暁「ふええっ⁉」
龍田「うふふっ……それから、『恋』は来てくださいって意味の『来い』ともかけてあることが多いわね~」
暁(暁ばかり、恋い慕い続け……)ボッ
暁(ねえ、司令官……きっと今日も忙しくしているんだろうけど……それでも私が入って行ったらどうなるのかな?)
暁(迎え入れて、くれるのかな?)
暁(司令官は、本当に暁のこと……き……なの?)
暁(私は……司令官のこと……)ぎゅっ
響「どうしたんだい?さっきから百面相していて。みていて面白いよ」
暁「うう、うるさいわね!なんでもないわよ!」
響「…………やはりさっきの手紙を見せてくれないか?」
暁「ふぇぇ!?なな、何でもないわよ!ホントなんだから!」
龍田「恋~~♪来~い~♪」
暁「か、書いてない!恋ひ渡るかな、なんて書いてないもん!」
響「暁、語るに落ちるって知ってるかい?」
暁「ふぇぇ~~ん」
次は響編です
響「司令官……ここに居たのか」
提督「ああ、響か。まあ、少し休憩だ。響こそどうした?」
響「別に……」
提督「くっくっ……自主休憩か?」
響「司令官の判断に任せるよ」
提督「お互い悪だな」
響「私はそうとは限らないよ?」
提督「じゃあ悪の道に染めないと……。一本どうだ?」
響「……司令官」はぁ…
提督「なんだ?」
響「チョコ菓子じゃ、悪の道には程遠いんじゃないかな?」
提督「そうとも言えないぞ。コイツを口にするってのはとんだ不敬に当たるんだぜ」
響「そんなたいそうな事には思えないけど?」
提督「日本語だとな、普通の菓子なんだが。英語だと……なんとMIKADOって御大層な名前が付いてるんだぜ」
響「それはそれは……そんな物にかみついては不敬に当たるね。確かに私は悪の道に踏み出してしまったようだよ」ポキン
提督「じゃあ、響が不良になった所で……ほれ」ぽんぽん
響「ん……」ぽすっ
提督「…………」
響「…………」
提督「風が気持ちいいな」
響「……私には、少し寒いかな」
提督「……もっとよれ」グイッ
響「スパスィーバ」
提督「…………」
響「…………」
提督「…………」スッ
響「ん…………」ポリポリ
提督「…………」ポリポリ
提督「お前、重くなったな」
響「女性にそれは失礼だよ」ポカッ
提督「あ~、ほら、命の重みとか?」
響「そんなこと、全員に言ってるのかい?」
提督「いや、さすがにそんな恥ずかしい事言えるはずないだろ?お前だけだ」
響「と言って口説くわけだ」
提督「バレたか」
響「……本音は?」
提督「こんな恥ずかしいこと冗談以外で言えるか」
響「だと思ったよ」
響「司令官」
提督「ん?」
響「…………なんでもない」
提督「そうか」
響「…………」
提督「…………」
響「司令官」
提督「なんだ?」
響「喉がかわないかい?」
提督「ん~、まあ、ちょっと」
響「……コレ、飲むかい?」ふふっ
提督「おう……ってこりゃウォッカじゃねえか!」
響「ロシアじゃウォッカは子どもでも飲む飲み物だよ」
提督「ここは日本だ」ぺし
響「あう」
提督「まったく……俺以上の悪じゃねえか……」くいっ
響「…………そう言いつつ飲んでるじゃないか」
提督「まあ、俺は未成年じゃないし……うん、温まるな」ほい
響「…………///」
響「……」きゅっきゅっ
響「……」こくっ
提督「なんてーか、拭いてから飲まれると、少し傷つくな」
響「それはセクハラだよ、司令官」
提督「膝の上に座らせておいて、今更だっての」
響「……おまけに女心を理解しない、と」
提督「う~~あ~~……そりゃ……その……なんだ」
提督「ありがとう?」
響「黙って椅子になっていればいいんだよ」ポカリ
提督「めんぼくない」
提督「…………」
響「…………」
響「……雨……降るかな?」
提督「ん~どうかな?降るかもしれないし、降らないかもしれない」
響「降って……ほしいな」
提督「……そりゃまたどうして?」
響「考えてみたらどうだい?」
提督「ん~……演習が中し……アイテッ」
響「不正解」ムスッ
提督「やれやれ……」
提督「…………」
響「…………」
提督「…………」
響「…………」
提督「そろそろ……」
響「……」ぎゅっ
提督「……響、さっきのウォッカ、まだ残ってるか?」
響「…………ああ」
提督「さんきゅ」
提督「…………」きゅっきゅっ
提督「…………」くいっ
響「…………なるほどね」ムカッ
提督「…………」ふふんっ
響「…………」バッ
提督「うおっ」
響「…………///」
提督「今ならまだ見なかったことにしてもいいぜ」
響「//////」くいっ
提督「///あ~……うん」
響「ふふんっ」
提督「……顔、赤いぞ」
響「司令官だって」
提督「……俺は酔ってるんだよ」
響「私は……そうだね。私もだ」
提督「さ、俺は戻るぞ。さすがに大淀の雷が怖い」
響「あ……うん、そうだね……」
提督「響」よいしょっ
提督「鳴神の 少し響みて 降らずとも 我は留まらむ 妹し留めば、だ」
響「なんだい?それは」
提督「男心も勉強しといてくれ」じゃ
響「司令官も!」
響「…………帰ろう」
響「…………」検索中
響「えっと……意味は……」
響「君が居てくれと言うのなら、私は雨などと理由が無くても……///」ボッ
響「司令官……」
響「私から言わせるなんて、甲斐性がないよ」
響「今度も、私からは言ってやらないからね」
欄外解説
詩・雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて 降らずとも われは留らむ 妹し留めば
意味・雷が鳴らなくても 雨が降らなくても 君が引き止めてくれたなら 私はここにいるよ
次は雷編です
雷『司令官、元気?雷はとっても元気よ!』
雷『司令官が本部に栄転してから始めての手紙ね』
雷『あ~あ、まだ一週間しか経ってないだなんて、信じられないわ」
雷『だって、とっても司令官の事が心配なんだもの』
雷『きちんと朝は起きられる?寝相悪くてだらしないんだから』
雷『朝ごはん抜いたりしていない?本を読みながら寝て、歯を磨かないとか……してないでしょうね?』
雷『いつか、抜き打ちチェックに行くかもしれないわよ』
雷『それじゃあ、お手紙、楽しみに待ってるわね』
雷『ねえ、早く返事がしたいからって、他の駆逐艦に伝言頼むのはやめてもらえないかしら』
雷『も~、すっごく恥ずかしかったんだから!せっかく貰ったチョコレートが溶けた~だなんて冷やかされちゃって……』
雷『……でも、嬉しかったわ。あなたが私をこんなに想ってくれてるって分かったから』
雷『だから、許してあげるわ。お手紙もきちんとくれたしね』
雷『それじゃあ、司令官も頑張ってね。追伸、私はそんな風に思ったんだからね。どう?思い知った?』
雷『月日が過ぎるって、早いのね。もう半年よ』
雷『実はね、私、一か月でさえ司令官と離れ離れになるなんて耐えられないって思ってたわ』
雷『うん、本当はね。もう、…………なんてね。どう?雷様にときめいた?』
雷『抜き打ちで会いに行くって言ってたけど、なかなか難しそうだわ。って、そんなこと司令官の方がもっと分かってるわね』
雷『私は私の出来る事を頑張るわ。だから、司令官も司令官のできること、頑張ってね』
雷『そうそう、みんなで撮った写真、同封したわよ。響、少しだけ身長伸びたみたい。暁が抜かされた!って騒いでたわ』
雷『実は私、見ていたから知ってるの』
雷『健康診断の時、響はこっそり背伸びしてたのよ。ふふっ、だから、実は何も変わってないの』
雷『でも、暁ったら必死になって背を伸ばそうと、電と一緒に牛乳飲んでるわ』
雷『ちなみに私は……5ミリ、背が伸びたわ』
雷『こうして少しづつ、司令官に近づいていくのかしら』
雷『ねえ、私、怒ってるんだからね』
雷『先週、手紙くれなかったでしょ』
雷『これはもう、帰ってきて私をギュッってしてくれなきゃダメなくらい、許されないことよ』
雷『…………会いたい、よ』
雷『…………ごめんなさい。わがまま、だよね。うん、分かってる。末端の私でさえ休みが取れないんだもの……』
雷『…………でも、会いたい』
雷『ねえ、今日、ようやく司令官に会えたわ!ふふっ、苦労したのね』
雷『そう、とっても久しぶりにあなたに会えた!…………テレビ越しにだけど、ね』
雷『ちょっと痩せたのかしら。それから、きちんと寝てる?目の下にクマが出来てたわよ』
雷『ああ、そうそう。眠れる獅子だなんて、イメージじゃないわ!』
雷『まさか自分から名乗ったりなんてしてないわよね。獅子って柄じゃないもの』
雷『あなたはもっと優しくて、ライオンみたいに怖くない。あなたはもっと暖かくて、周りの人を眠らせてくれる干した後のお布団みたいな人よ』
雷『ねえ、ぬくぬくお布団なんてどうかしら?あなたのイメージにぴったりじゃない?』
雷『最近、お手紙少なくなってきたわね。でも、その分テレビで見られるわ……』
雷『凄いね。英雄、だって』
雷『いっつもいっつも、テレビは司令官のことでいっぱい』
雷『私があなたの事を一番知ってるんだって思ってたのに、自信無くなっちゃったわ』
雷『なんてね。私は知ってるのよ。ピーマンが苦手なあなた』
雷『テレビでは何でも好き嫌いなく食べられるなんて言ってたけど…。私、あなたがピーマンを噛まずに飲み込む所を思い出して、思わず笑っちゃったわ』
雷『ねえ、もしかして、もう食べられるようになったのかしら?』
雷『あなたは私の知ってる司令官から、私の知らない提督さんに変わっちゃったのかしら?』
雷『あははっ、そうなんだ。うんうん、そうだと思ってたわ!』
雷『ピーマン、まだ苦手だったのね。でも、私が食べさせてあげなくても、食べられるなんて偉いじゃない!』
雷『………………』
雷『ありがとう』
雷『とっても嬉しかったわ』
雷『忙しいのに、私のためにお手紙を書いてくれるなんて』
雷『もらえるなんて、思ってなかったから……』
雷『でも、無理しなくていいのよ、みんなの英雄さん』
雷『私だけが独り占めしたら、ダメ。みんなの希望なんだから』
雷『頑張って』
雷『頑張って』
雷『みんなの英雄さん』
雷『…………司令官…………ううん』
雷『提督さん』
雷「テレビで見るあの人は、とってもカッコいい」
雷「思い出のあの人は、とってもだらしない」
雷「テレビで見るあの人は、誰からも頼られて」
雷「思い出のあの人は、私が居ないとダメ」
雷「カッコいいあの人」
雷「カッコ悪いあの人」
雷「カッコ悪いあの人を、私は大好きで」
雷「カッコいいあの人を、私は大嫌いで」
雷「だから、私は司令官を嫌いになる」
雷「司令官を私一人が捕まえてちゃダメ」
雷「みんなの為に、司令官はカッコ良くなくちゃ」
雷「きっとそれが、正しいから」
雷「だから、この手紙は…………」
雷「………………」
雷「嘘」
雷「嘘嘘!」
雷「嘘だっ!」
雷「司令官が死んだなんて!」
雷「絶対、嘘だ!」
雷「みんなを守る為に賭けに出て、賭けを成功させる為に、自分の命を使ったなんて……囮になっただなんて……」
雷「みんなみんな喜んでる」
雷「これで助かるって」
雷「英雄がやってくれたって」
雷「喜んでる」
雷「あの人の死を」
雷「喜んでるの?」
雷「違う」
雷「違う違う」
雷「そう、違うんだ」
雷「生きてる」
雷「生きてる」
雷「帰ってくるって、約束した」
雷「だから、帰ってくる。絶対帰ってくる」
雷「どんなにかっこ悪くてもいい。私は笑わない」
雷「どんなにみっともなくたっていい。私は蔑んだりしない」
雷「みんなの英雄は死んでも、私の英雄さんは死なない」
雷「カッコ良い英雄さんは死んでも、カッコ悪い英雄さんは死なない、死んでない」
雷「絶対」
雷『信じてた』
雷『ずっと、生きてるって信じてた』
雷『でも、時間が進んで、少しだけ復興された町が、私に現実を運んできた』
雷『あの人の手紙』
雷『送られることなく、溜まりに溜まった手紙の山』
雷『それが全部、私の所に運ばれた』
雷『全部、読んだよ』
雷『全部、伝わったよ』
雷『でも、卑怯だよ』
雷『最後の手紙。出撃前の手紙』
雷『帰れるからって、会えるからって』
雷『指輪……用意してるなんて……』
雷『その指輪は結局、全く知らない人の手で、私の手元にやってきた』
雷『あなたは、その指輪を嵌めて出撃したんだって』
雷『ねえ、これを付けていれば、あなたの傍に居られる気がするの』
雷『こうして手紙を書いていたら、あなたに伝わる気がするの』
雷『気のせいじゃないのよ』
雷『あなたが死んだことを受け入れてる私が居て』
雷『あなたが死んでいないって信じてる私が居る』
雷『不思議ね』
雷『あなたが二人居たように、私も二人居るみたい』
雷『少しだけ、私もみんなのために頑張ってみようかしら』
雷『少しだけ、私は私の為に頑張れる気がする』
電「雷ちゃんはやりすぎなのです!」
電「困っている人が居たらすっ飛んで行って、自分の体をもっと大事にするのです!」
雷「はいはい、ごめんなさい反省してますよ~」
電「その言い方は絶対反省してないのです!」
電「いいですか?雷ちゃんが今日突っ込んでいったタンカーは、化学薬品を運んでいたのです」
雷「そうね、すっごく息が苦しかったわ」
電「それで済むわけないのです!気化した薬品が粘膜から入って炎症を起こしてるのです!」
雷「私は艦娘よ?そんなの入渠すればすぐに治っちゃうわ」
電「今、電が何本指を立てているか、見えるのですか?」
雷「大丈夫よ、もう治ったわ!」
電「嘘を言ってはいけないのです!まともに目も見えないのに……」
電「それなのに、そんな中に何度も何度も……」
雷「だって。困ってる人が居るんだもの、仕方ないじゃない」
電「だったら電が困ってるのです!大事な家族を、もう失いたくないのです!ちょっとは電の気持ちも分かってほしいのです!」
雷「そ、それは……」
電「雷ちゃんは、死ぬつもりなのですか?司令官さんの後を追って」
雷「……違うわ」
電「そうとしか見えないのです!」
看護師「すみません、静かにお願いします!」
電「はわわ……、すみませんなのです」
看護師「……一応、意識不明ですけど、もう一人いらっしゃるんですからね」
電「はいぃ~、ごめんなさいなのですぅ~~」
雷「ごめんなさい」
看護師「それではよろしくお願いしますよ。あ、それから雷さん。いくら艦娘と言えど、目が見えない様な人は絶対安静ですからね!大人しくしていてください!」
雷「は~い」
看護師「それからこれはお願いなんですが、お隣の方が寝返りを打ってベッドから落ちるときもありますので、変な音がしたらコールで呼んで貰えますか?」
雷「意識不明なのに、寝返りを?」
看護師「ええ、寝相が悪い人なんですよ」
雷「分かったわ、雷に任せといて!」
電「じゃあ、雷ちゃん。くれぐれもよろしくお願いしますなのです」
雷「も~、信用ないわね、私も」
電「お・ね・が・い・な・の・で・す」
雷「りょ~か~い」
電「ありがとうございますなのです、看護師さん。ああでもしないと、雷ちゃん抜け出しちゃうので……」
看護師「いえいえ、こちらこそ面倒見てもらって助かりますよ」
看護師「たま~にですけど、あの人本当にベッドから落ちてしまうんで、ちょくちょく見に来るんです。それが無くなるだけでずいぶん助かるんですよ」
電「意識がないのに落ちるのですか?」
看護師「ふふっ、変な人ですよね。きっと、ずいぶんだらしない人なんじゃないですか?」
電「そんなこと言ったら悪いのです」
雷「雷よ!かみなりじゃないわ!そこのとこもよろしく頼むわねっ!どんどん、私に頼っていいんだからね!」
雷「貴方は大丈夫。だって、私が傍にいるんだから」
雷「なんて、懐かしいわね」
雷「こんな風に司令官に言ってたっけ……」
雷「雷、司令官のために出撃しちゃうねっ」
雷「えっと、特にやることはないの?んー…… もっと私に頼っていいのよ?」
雷「司令官、私がいるじゃない!」
雷「これからも、もっともっともぉーっと私に頼っていいのよ!」
雷「もっと……もぉーっと……もぉーーっと」
雷「司令官……」
雷「私は、あれからいろんな人に頼られるようになったわ」
雷「たっくさん人を助けたわ。……まあ、司令官……みんなの英雄さんには敵わないかもしれないけどね」
雷「でも、私が本当に頼って欲しい人は一人だけ」
雷「司令官……」
ドサッ
雷「…………」ゴシゴシ
雷「あら?さっそくかしら」
雷「コールで呼べばいいのよね?えっと……」
雷「そう、そうね。ここは私が……」
雷「……見えないって嫌ね」ゴソゴソ
雷「こっちかしら?」
雷「きゃっ」ガツッ
雷「いったぁ~い!なによもう、雷は大丈夫なんだから!」
雷「っと……さぁって、この雷様に任せなさい!」
雷「よいっ……」
雷「……うっ……」
雷「…………ぐすっ」
雷「ふっ…………」
雷「あ…………ああ……あふ……」
雷「うあああぁぁぁぁぁぁっ!」
雷「えぐっ…………ふぁっ、ああああんんっ」
雷「んんぅ……ぐすっ、あああぁぁ」
『ごめん』
雷「う……ううん……ひぐっ」
『遅くなって』
雷「わ、わた、しっ……待っ……えぐっ待って……」
「ただいま」
「おかえり」
欄外解説
あふことは 雲ゐはるかに なる神の 音に聞きつつ 恋ひ渡るかな
逢って愛し合うことは雲の彼方を目指すようなものだが、遠い雷が聞こえるようなあなたの噂を聞いては恋しく思いつづけることです
電編は明日か明後日にでも……
本日はありがとうございました
失礼、33以降をちょっと加筆します
まさか夢でまでs出てきて加筆しろと言われるとは思わなかった…
ドサッ
雷「…………」ゴシゴシ
雷「あら?さっそくかしら」
雷「コールで呼べばいいのよね?えっと……」
雷「そう、そうね。ここは私が……」
雷「……見えないって嫌ね」ゴソゴソ
雷「こっちかしら?」
雷「きゃっ」ガツッ
雷「いったぁ~い!なによもう、雷は大丈夫なんだから!」
雷「っと……さぁって、この雷様に任せなさい!」
雷「よいっ……」
――忘れたことなんてなかった――
雷「……うっ……」
――この包まれるような優しさを――
雷「…………ぐすっ」
――あの人の匂いを――
雷「ふっ…………」
――あの人の温もりを――
雷「あ…………ああ……あふ……」
――意識を失っていてもなお――
雷「うあああぁぁぁぁぁぁっ!」
――ベッドから落ちる寝相の悪さを――
雷「えぐっ…………ふぁっ、ああああんんっ」
――わたしの、私だけの――
雷「んんぅ……ぐすっ、あああぁぁ」
『ごめん』
雷「う……ううん……ひぐっ」
『遅くなって』
雷「わ、わた、しっ……待っ……えぐっ待って……」
「ただいま」
「おかえり」
電編
電「それでは暁型駆逐艦4番艦、電。これより一日、休暇に入るのです」
提督「了解、ゆっくり休んでくれ……って、有給用の書類を全部電に処理させておいて言えるセリフじゃないよなぁ」
電「ふふっ、忙しいのはよく分かっているのです。そんな中、休暇を頂けるだけでもありがたいのです」
提督「そう言って貰えると助かるよ。有能な秘書艦殿」
電「はわわっ、そんな、言い過ぎなのです」
提督「言いすぎなものか。君が居なければ……っと、暁たちが待っているんだったな。早く行ってあげるといい」
電「あっ、そうだったのです。ありがとう、司令官……さん」
提督「ああ、こちらこそ」
電「それでは、失礼しますなのです!」ガチャッ
提督「…………危ない危ない。電が居ないとダメだ、なんて言ったら、電が気持ちよく休暇を楽しめなくなるじゃないか……」
提督「さて、こちらもさっさと仕事を済ませて電が居なくても大丈夫なくらい、むしろ電に頼られるくらい頑張りましょうかねっ」コキコキ
電「待たせちゃってごめんなさいなのです!」
雷「そうね~、ずいぶん待ったわ~」ニヨニヨ
響「そうそう、足が棒になったよ」ニマニマ
電「はにゃぁーっ!ご、ごめんなさいなのですぅ!」
雷「これはきっと、誰かさんが司令官と離れたくなかったからね」
電「はわわ。そ、そんなこと……そんな事……」
響「ない、とは言い切れないよね」
雷「電と司令官は何時でもラブラブだもの」
響「ああ、電。君はどうして電なんだい?」だきっ
雷「ああ、司令官。あなたはどうして司令官なの?」ひしっ
電「そ、そ、そ……///」
雷「司令官、あなたが司令官でなくなってくれれば私も軍をやめて、二人でラブラブできるのに……」
響「ああ、それはとってもいい考えだね、電。二人で愛の逃避行をしようじゃないか!」
雷「司令官……いえ、あなた!電はいつまでも着いていくわ!」
響「電!」ガバッ
雷「あなた!」ガバッ
電「////////////」プシュー
暁「はいはい、茶番はそこまでにしときなさい。電が真っ赤になって今にも倒れそうよ」
響「やあ、すまない。つい力が入ってしまったよ」
雷「だって、電ったらいっつも司令官のことばっかりなんだもの」
響「だから茶化したくもなるのさ」
電「やぁん///」
暁「そうそう電。私たちはそんなに待ってなんかいないわ」
電「ふへ?なんのこと……ああっ!だ、騙したのです!響ちゃん、雷ちゃん、酷いのです!」
響「悪い。謝るよ」
雷「お詫びに酒保でお菓子を買ってあげるわ」
電「む~~……チョコレートが良いのです!」
暁「はいはい、それじゃあいくわよ」
響「こっち……」
電「…………」ぬぬぬ
響「こっちかな?」
電「…………」ぱぁっ
響「やっぱりこっち……」
電「…………」ぐぬぬぬ
響「…………ふぅ」
響「まったく、分かりやすすぎだよ」ひょいっ
電「あ~~!」
響「はい、あがり」
電「また負けちゃったのです……」
雷「電は表情に出すぎなのよ」
電「そ、そんなことないのです。司令官さんとだったら負けた事ないのです!」ふんす
暁「司令官とだったら私も勝負したことあるけど……」
響「司令官はゲームとなると表情がまったく読めなくなるね」
雷「ずっと笑顔だから、逆に無表情なのよね~」
電「そんな事ないのです。司令官さんはとってもよく表情が変わって……」
雷「それ、絶対電にしか見分けられない違いよね」
響「ごちそうさま」
暁「電、幸せなのはいいけれど、あんまり言いすぎてもよくないと思うわ?」
電「はわわ、そんなつもりはなかったのです」
雷「ねえ、電。ちょっと賭けをしてみない?」
電「賭け、なのですか?」
雷「そう。今日一日、電が司令官の事を言わずに居られるかどうかよ」
響「面白そうだね」
暁「……絶対無理だと思うわ」
雷「負けた方が間宮さんの所で甘味を奢る、どう?」
電「それは、電が勝ったら雷ちゃんが電に甘味をくれるということでいいのですね?」
雷「そうよ。その変わり負けたら……」
響「待ってくれ。その勝負、私も混ぜさせてもらうよ」
電「……つまり、電が勝ったら二人からもらえるって事なのですね」
響「ああ。その代わり、電が負けたら雷と私に甘未だよ」
電「分かったのです。受けて立つのです!」
暁「……勝敗が分かり切ってる事を賭け事にするのは感心しないわよ」
電「ふふふ……司令官の事を考えないでいるなんて、余裕なのです。勝利は電のものなのです」
暁「…………」
電「うふふふ……。勝てば二つも甘未が手に入るのです。そうすれば司令官さんと……」
暁「……これは駄目そうね」
電「はにゃぁぁぁぁぁっ」
響「勝利の味は格別だね」パクパク
雷「ん~~、あんみつおいしい~」
暁「まさかあの後お茶を入れようとして、司令官の好みの熱さは、何て自爆するとは思わなかったわ……」
響「予想を上回る早さだったね」
雷「まったく、期待を裏切らないわね」
電「ふにゃぁぁぁぁっ」
暁「ほら、電もそこで頭を抱えてないで。何か頼みましょう」
電「はいなのです……」
暁「私は白玉団子にしようかしら」
電「えっと、電は栗羊羹を……」
暁「分かったわ。間宮さ~ん!」
電「……二つお願いするのです……」
暁「二つ?沢山食べるとバルジができるわよ?レディなら気をつけなきゃ」
電「その……一つは司令官さんへのお土産にしようと思うのです」
暁「…………」
響「…………もう病気だね、これは」
雷「…………私、苦いお茶が欲しくなったわ」
電「えへへへ///」
――コンコン
提督「どうぞ」
電「失礼するのです」ガチャリ
提督「電?君は休暇だっただろう?」
電「はい、なので司令官さんの所に遊びにきたのです」
提督「でも、ここに来ても別に面白いことは何も……。明日になったら嫌でもここに来るわけだし、もっと休んでいてもいいんだよ」
電「……その……会いたかった……からなのです///」ごにょごにょ
提督「//////」
電「そ、それから、いつも言っているお休みなさいを言いたかったのもあるのです///」ワタワタ
提督「そ、そうだね、うん」
電「お、おやすみなさい、なのです///」
提督「あ、ああ。おやすみ」
電「…………///」
提督「…………///」
電「あっあの……」
提督「な、何かな?」
電「司令官さんは、まだお休みにならないのですか?」
提督「ああ、少しだけ書類が残っていてね。それをすませたら眠らせてもらうよ」
電「そ、そうなのですか……」
提督「ああ、だから電は気にせず……」
電「い、電がお手伝いするのですっ」
提督「それは……ありがたい申し出だが、電はせっかく休暇を取ったんだろ?明日から頑張ってくれればいいから……」
電「電は……司令官さんのお役に立ちたいのです!」
提督「いや、でも……」
電「そんな事を言っている間に、二人でやれば終わってしまうのです!」
提督「……そう、だね。ならお願いするよ」
電「はいなのです!」ぱぁぁっ
電「……こちらの件は問題ないと思うので、そのまま印さえいただければいいと思うのです」
提督「了解っと」ポンッ
電「えっと……これで……」
提督「終了、だね」
電「終わったのです~~」のび~
提督「いや~、助かったよ。ありがとう」
電「電は司令官さんの力になれてとっても嬉しいのです」ぐ~~
電「//////」
提督「そういえば……少しお腹がすいたね」
電「はにゃぁ///」
提督「そうだ、本当は良くないんだけど……」ゴソゴソ
提督「いつものお礼も兼ねて、ちょっといいチョコレートを手に入れておいたんだ。これ、食べようか。電、チョコレート好きだったよね」
電「はわわ、う、嬉しいのです。大好きなのです///」
電「あっ、そういえば電も司令官の為に栗羊羹を買っていましたのです」
提督「おっ、嬉しいなぁ。羊羹は好物なんだよね」
電「知っているのです。……だから差し入れにしようと思ったのです///」
提督「そ、そうなのか///」
電「はい、なのです///」
提督「…………」
電「…………」
提督「じゃあ、どうせだから少しだけお話しようか」
電「は、はいなのです……。少しだけ」
提督「お茶……はカフェインが入ってるからよくないか。ホットミルクでも飲みながら、ね」
電「はい、なのです」
提督「今日のこととか、聞きたいな。電は何をしてたのかな、とか……」
電「電もお聞きしたいのです。司令官が今日どうなさっていたのか、とか……」
提督「じゃ、じゃあ準備しようか」
電「はわわっ、羊羹は明日差し入れするつもりだったので……急いで持ってくるのです」
提督「うん、じゃあ、待ってるよ」
電「はいなのです」パタパタ
電「少しだけ。……でも、たくさん話すのです」トクン
元詩
秋の田の 穂の上を照らす 稲妻の 光の間にも 我や忘るる
秋の田の稲穂に光る稲妻(いなづま)のほんのわずかな間でさえ、あなたのことを忘れる事なんてありませんよ
ということで六駆全員終了にございます
お付き合いいただきありがとうございました
それでは皆様もよい駆逐ライフをお過ごしください
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