北条加蓮「あれ? 他のみんなは?」 (33)

P「おはよう加蓮……って今日は皆休みだぞ? 聞いてないか?」

加蓮「えーっ!? 私聞いてないよ?」


P「あちゃー……すまない加蓮、今日は皆休みになったんだが、加蓮に連絡がいってるとばかり……すまん」

加蓮「もうっ、ちゃんと連絡してよー」

P「ごめんって、何かお詫びするから許しておくれ」

加蓮「うーん……じゃあMOSのハンバーガー奢ってくれたら許すっ」

P「ジャンクフード好きだなぁ……もっとおいしいものでもいいんだぞ?」

加蓮「いいの、ハンバーガーだって結構おいしいよ? 何だったら二人で食べにいってみる?」

P「さすがにアイドルとプロデューサーが外で食べるのは、なぁ……買ってきてやるからそれで」

加蓮「ぶー、ご飯奢ってくれるならデートがいいのに」

P「ははっ、こんな俺とデートしても楽しくもないだろ。それにアイドルなんだからスキャンダルになったらどうするんだ」

加蓮「それは、そうだけど……別にPさんといてつまんないって事はないよ」

P「そっか、ありがとうな。加蓮は優しい子だよホント。こんな俺にも慰めの気遣いをしてくれるなんてな」


加蓮(別に慰めじゃなくてホントの事なんだけどなぁ……)

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P「それで、今日は加蓮も休みだから仕事は何も入ってないが、どうする? 俺はいくらかやる事があるからこのままだけど」

加蓮「私は……仕事だとばっかり思ってたから予定はないけど……Pさんは休まないの?」

P「まぁ加蓮にもっと仕事をとってこないとならないからな、普段営業まわりしてる分こういう時に書類とか片付けとかないとな」


加蓮「そっか……ね、このまま事務所に居ていい?」

P「あぁ、お茶を飲むなり寛いでいいぞ。俺は書類を書いたりするからあんまり相手にしてやれないが」

加蓮「うん、Pさんもお茶飲む? よかったらついできてあげる」

P「お、ちょっとお願いしようかな」

加蓮「事務所の冷蔵庫、麦茶あったよね? コップどれかな」

P「あぁ、それなら食器置いてる所にあるマグカップでマークがついてる―――――」


―――――――
――――――
―――――

加蓮(……二人っきりなのはちょっと嬉しいんだけど)

加蓮(Pさんはさっきからずーっと仕事だけしているんだよね……でも邪魔にはなりたくないし……うーん……)

加蓮(まぁ、Pさんのお仕事片付くまで時間つぶしにネイルのお手入れでもしよっと)

      ゴソゴソ……


P(ん……? 加蓮はカバン漁って何して……あぁネイル? っていうんかな、爪を綺麗にするのか)

P(ああやって見ると加蓮の手って綺麗だな……いや手以外も綺麗だけどさ、すらっと伸びた白魚のような手……)


加蓮「……ん、Pさんどうかした?」

P「え? あぁ……その、綺麗だな……って」

加蓮「えっ!?」

P「あっ、いや……なんでもない、さーて仕事仕事!」


加蓮(今Pさん私の事綺麗って……急に)

P(手が綺麗で見入ってたなんて急に言ったら変だって思われるな……仕事に集中集中……!)

 ◇ ◇ ◇ ◇

加蓮(あれから何も言わなくなっちゃった……)

加蓮(ネイルの手入れも終わっちゃったし……することないや)

加蓮(……そうだ!)


加蓮「ね、Pさんまだお仕事かかりそう?」

P「……ん、もうちょっと……かな」

加蓮「それならさ、少し休憩しようよ」

P「そうだなぁ、一息つくぐらいなら問題ないな」


加蓮「じゃあPさんこっち来て来て」

P「んー……? 何かあるのか?」

加蓮「そしたら手をちょっと出して。Pさんもネイルのお手入れする?」

P「俺が? いやいや男はそういうものやらないだろ?」

加蓮「そんなことないよ、男性用のネイルアートだってあるんだから」

P「ほー……そんなのもあるのか、でも俺はそこまで指先を飾ったりするのはちょっと……」

加蓮「それなら爪を綺麗に整えるだけでもやってあげる! 清潔感が出るだけでもぐっとよくなるよ」

P「ふむふむ……じゃあ、お願いしてみようかな」

加蓮「うんっ、任せて。……Pさんの手って結構綺麗だね」

P「そうか? あんまり気にしたことないが」

加蓮「爪も形が整ってるし……しっかりしててかっこいいよ」

P「なんだかそこまで言われると照れるな……」

加蓮「ふふっ。私を支えてくれる素敵な手だから、もっと綺麗にしてあげるね」

P「ははっ、それじゃあ頼むよ」



加蓮「はーい、それじゃあ手をもうちょっとこっちに……指先しつれいしまーす」

加蓮「それじゃあネイルケアってことで……爪は切ってるみたいだから、少し形を整えるように削るね」

       シャッ…シャッ……


P「なんだかちょっとくすぐったいな……むずむずする」

加蓮「じっとしててね、傷つけちゃうとよくないから」

P「あぁ、我慢我慢」


加蓮「こうやって最初は先端を綺麗にしたら次はサイドを整えて……」


       シャッ……シャッシャッ…………

加蓮「最後にコーナーの角を少し丸みをつけて……」


       シャッシャッ…シャッ…シャッ……


P「結構大変なんだな」

加蓮「でも、こうやって綺麗になっていくのがわかるから、結構楽しいよ」

加蓮「……はい、親指はできたっと、次は人差し指ね」

P「全部の指やるのか?」

加蓮「そりゃ勿論、ぜんぶ綺麗になってないと変でしょ?」

加蓮「両手全部綺麗にしちゃうからね」

P「あぁ、このままお願いな」

加蓮「うんっ」


       シャッシャッ……シャッシャッ…………


P(これ……ずっと加蓮に手握られてるんだよなぁ……)

P(手入れされるのもだんだん慣れてきて、くすぐったくなくなったから余計な事を気にするようになってきた……)

P(加蓮の手、やっぱ綺麗だよな……それに優しく握ってもらえて……いかんいかん)

加蓮(Pさんの手、素敵な手だよね……しっかりして、それでいてあったかくて……)

加蓮(私を支えてくれるおっきな手……)


       シャッシャッ……シャッシャッ…………

          シャッシャッ……シャッシャッ…………



加蓮「…………」

P「…………」

P(なんだか妙に会話がない……)


加蓮「……じゃあ、次は薬指ね」

P「お、おう」

加蓮(左手……薬指……)

加蓮(指輪は、ついてない……)

加蓮(いつか、この手に指輪がはめられるのかな……私の手に指輪つけてくれるかな……?)

加蓮(お仕事で着たドレス、Pさんの隣に並んで着れるかな……?)



P(なんか、左手の薬指だけ他の指より丁寧に……これは、そういう事……なのか?)

P(いやいや……思い込みも甚だしい。自意識過剰だ、これは……)

P(たまたま、爪を手入れする話になって……手を握ってるだけだ……変な事は考えるな、俺)

P(だけど、こうしてもらえるのは……なんだか、いいな)

加蓮「あとは、左手の小指だけだね」

P「じゃあ、最後の指頼むな」

加蓮「うん」


     シャッ……シャッ……




加蓮「……ふぅっ、これで全部おしまい」

P「あぁ、ありがとうな」

加蓮「ふふっ、他の人のネイルなんて初めてだからちょっと緊張して手が疲れちゃったかも」

P「ん……そうなのか?」

加蓮「うん、いっつもは自分のだけだからね」

P「やっぱり自分のとは違うんだな」

加蓮「そりゃあね、それにPさんは男の人だから手も違うし」

P「疲れた……なら手、マッサージしてやろうか?」

加蓮「え!?」

P「爪を綺麗にしてくれたお礼だ、手を貸してごらん」


    ぐいっ


加蓮「あっ……」



       ぐっ ぐっ ぐっ


加蓮「んっ……」

P(……これで終わってしまうとなんだか寂しくなってつい、加蓮の手を勢い余って握ってしまったが……)

P「っと……痛かったか? やっぱりよくなk」

加蓮「大丈夫、いきなりだからちょっとびっくりしちゃっただけだよ。そのまま、マッサージしてもらって……いいかな」

P「あ、あぁ……」

 
 
       ぐっ  ぐっ  ぐっ


加蓮「ん……」


加蓮(やだ……手、握ってもらってるだけなのになんかすごい、ドキドキする)

加蓮(おっきくて……あったかくて……力強くて……それでいて痛くなくて……)

加蓮(私をすごく大切にしてくれる、手……)


       ぐっ  ぐっ  ぐっ


加蓮(さっきまでは私が手を握っていたけど、今度は握られて……)

加蓮(うぅ……だんだん恥ずかしくなってきちゃった……心臓もばくばくいってるの聞かれちゃいそう)

加蓮(……だけどマッサージしてくれる手がとっても心地よくて……)

 
加蓮「んっ……ふっ……」


       ぐっ  ぐっ  ぐっ  ぐっ


P(なんだか……手をマッサージしてるだけなのに変な気分になりそうだ……)

P(加蓮も……漏れてる声が妙に……艶っぽくて……このままだと何かいかん気がする……)


       ぱっ


加蓮「あ……」

P「も、もう手はほぐれただろう、これでどうだ?」

加蓮「あ、う、うん……楽に、なった……」

P「それなら、よかった」

加蓮「うん……」


P「さ、もうそろそろお昼だから、俺はちょっとご飯買ってくる。事務所で待っててな」

P「MOSで適当に見繕ってくるから」

加蓮「あっ、うん、待ってるね」


P「じゃあちょっと行ってくる」

加蓮「えと、行ってらっしゃい」

      バタン



加蓮「……ふぅ……」

加蓮(Pさんの手、気持ちよかったな……)


加蓮「って、やだ、手に汗かいちゃってる……すごく熱くなっちゃって……」

加蓮「手洗ってこなきゃ」





P(何やってんだろう俺……)

P(変に気をもっちゃうとか……おかしく思われるだろうに……)

P(加蓮の手……すべすべで気持ちよかったな)

P(……って! 言ったそばから何考えてんだ俺は、とにかく飯だ飯!)


――――――
―――――
――――

加蓮「……ごちそうさま」

P「ん、あぁ……おいしかったか?」

加蓮「うん、ありがと……」


加蓮(なんか……Pさんの顔、まともに見れないや……ちょっと今日はこのままじゃ、駄目かも……)

加蓮「えっと、お仕事、まだあるんだよね?」

P「ああ、まだ……残ってるな」

加蓮「じゃあ……あんまり邪魔しちゃうのも悪いから、今日はこれで……帰るね」

P「あ、あぁ。気をつけて帰るんだぞ」

加蓮「うん……じゃあ、おつかれさまでした」

P「あぁ、また明日な」



    ばたん

 ◇ ◇ ◇ ◇


奈緒「なぁなぁ加蓮」

加蓮「ん? どうしたの奈緒」

奈緒「昨日の休み、加蓮のプロデューサーとどうだった?」

加蓮「えっ!? ど、どうってどういうこと?」

奈緒「いやぁ、加蓮がここ最近『Pさんと二人になれないー!』って言ってたからよ」

奈緒「休みの連絡頼まれた時に加蓮のプロデューサーさんが仕事に出るって言ってたから、二人きりにしてやったんだけど」

奈緒「二人きりになれて何かできたかぁ~? うりうり」

加蓮「……ちょっと、私に休みの連絡まわさなかったのは奈緒の仕業?」

奈緒「なんだよぉ、ちょっと気をまわしてやったんだからそれぐらいいいだろ?」

凛「私もそれで奈緒に休みになってる事口止めされたんだけど……どうだった?」

加蓮「ちょっと二人して何……何もないよ!」


奈緒「へへっ、顔を赤くしてちゃとぼけても無駄だぜ? こりゃあ何かあったな?」

凛「ふふっ、三人の中じゃ一番加蓮が進んでないからね……ね、どうだった?」

加蓮「う、うるさいっ。何もなかったわよ……奈緒ー?」

奈緒「な、何だよ」

加蓮「私のことばっかり聞いてるけど、奈緒のほうこそどうだったの」

奈緒「へっ、私?」

加蓮「私知ってるんだからね、奈緒のプロデューサーさんと二人っきりでアニメの鑑賞会やったって」

奈緒「っ!? ど、どうしてそれをっ!?」

加蓮「一昨日、奈緒のプロデューサーさんが事務所で大きな声で慌てて奈緒に電話してたの聞こえてたから」

加蓮「そのとき『家に行くから!』とか、『代わりのDVD持っていくから』とか話してたもん」

凛「あ、そうなんだ? 奈緒の話も気になるね、ちょっと教えてもらお」

奈緒「お、おい凛までっ、私こそアニメ見ただけで何にもねぇよぉ!?」

凛「ふふっどうだか」

 
加蓮(凛、助け舟ありがと)ボソボソ

凛(どういたしまして、奈緒の話も興味あるしね……これで貸し1つ、お返しはさっきの話の続きね?)

加蓮(げっ……)


奈緒「おいそこぉ!? 何こそこそ話してんだ!? さては結託したなぁっ」

凛「そんな事ないよ、奈緒の話『も』気になるだけだから」

凛「二人ともじっくり聞かせて?」


加蓮・奈緒「なんにもないってー!」


おしまい

-おまけ-

加蓮(ふぅ……なんとかやりすごしたけど……)


P「…………」

加蓮(Pさんはもう普段通り、だね……)

加蓮(でもこのまま何もなかった事になるのはちょっと……)

加蓮(ちょっとだけ、一歩前進で……)


加蓮「ねぇ、Pさん」

P「お、加蓮どうした?」

加蓮「昨日は、ありがとね」

P「あ、あぁ昨日のことは、気にするな」

加蓮「ううん、それでね……」



加蓮「これからもさ……Pさんの爪、手入れするから。またその時マッサージ、してくれるかな?」

おわり感謝、見てくれてありがとう

酉テスト
続きができるようなら次はこの酉つけます、いつできるかは目処たたないけど

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