老僧侶「魔王はもう倒したでしょ?」
老勇者「あれぁ?そうだったかいのう……??」
老僧侶「そうですよ……それよりおじいさん、今日は息子夫婦が遊びにくる日なんですから部屋の掃除をしないと」
老僧侶「はいそこどいて、雑巾がかけられないじゃないですか」
老勇者「おお、すまんすまん……そうか今日は息子たちが来る日だったか……すっかり忘れとった」
老僧侶「もう…」
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呼び鈴「チリンチリーンッ」
老勇者「ありゃ?誰か来たみたいじゃ」
老僧侶「?あの子達もう来たのかしら、はーい」
ガチャッ
老戦士「よおっす、久しぶり」
老僧侶「あら戦士さん、どうしたんですか?急に」
老戦士「いやぁ別に用はねえが、仕事で近くを通ったんでちょっと顔出そうと思ってよ」
老戦士「悪いな、急だったんで特に手土産もなくって」
老僧侶「そんな、気を使わずどうぞ上がってください」
老戦士「邪魔するぞー」
老勇者「おう?何じゃお前まだ生きとったんか、この死に損ないめ」
老戦士「お互いにな、この死に損ない」
老勇者「あぁ?コラ」
老戦士「やんのか?コラ」
老僧侶「二人とも、もう若くないんですからはしゃがないでください」
老勇者「ふぁい」
老戦士「うーっす」
老僧侶「今お茶淹れますから、くつろいでてください」
老戦士「おう」
老勇者「いやーしかしなんだ、最近とんと目が悪くなってなぁ」
老戦士「お前もか、こっちも体の節々がどうもないうこときかなんで……」
老勇者「この間は町医者に『肝臓が弱ってる』とか言われてのう…」
老戦士「オレもタバコの吸いすぎで肺が…」
老僧侶「はいどうぞ」
老戦士「おう、すまねぇな」ズズズ
老僧侶「そうそう、今日じつはこの後に息子たちが来ることになってるんですけど、知ってました?」
老戦士「なぬ?あのヒヨッコ坊主ここに来んのか?そりゃいい、いっちょ挨拶してやらんとなぁ」
老勇者「おいおい手柔らかに頼むぞ、あんまり嫁さんの前で恥かかせてやるな」
老戦士「ん?嫁?ああそういえばそうか……」
…
呼び鈴「チリンチリーンッ」
老僧侶「はーい」ガチャッ
息子勇者「こんにちは、久しぶり母さん」
老僧侶「久し振り、遠いところよく来たわね……さ、上がって」
息子勇者「お邪魔します、父さんも久しぶり」
老勇者「おう」
老戦士「随分と立派になったじゃねえか、え?ヒヨッコ坊主」
息子勇者「うぇ?!せ、さ、先生!?何でここに」
老戦士「何だぁ、オレがここにいちゃいけねえのか?コラ」
息子勇者「い、いえ別にそういう意味じゃないですけど……」
老勇者「だからやめなさいやめなさい、こらこら」
魔法使い「はいはいそこまで、あんまりウチの旦那イジめないでよね、老ぼれさん」
老戦士「げっ、年増女」
息子勇者「いや、別にイジめられてたわけじゃ…」
老僧侶「こんにちは、魔法使いさん」
魔法使い「ちわ~、僧侶ちゃん元気にしてた?」
老僧侶「もう、だから"ちゃん"付けはやめて下さいって、私もこのそんな歳でもないんですから」
魔法使い「何言ってんの、私より年下のくせに」
老戦士「くわばらくわばら、あれで俺たちよかウンと年上なんだからなぁ……どんだけ若作りしてんだか」ヒソヒソ
息子勇者「あ、あははは、はは」
魔法使い「そこ、陰口聞こえてるから。あたしはエルフとの混血児だからあんたらより寿命が長いだけなの」
老戦士「ああ、そういやそうだったな忘れてた、最近ボケがひどくってのう……」
魔法使い「コイツ、今すぐ燃やして灰にしたろか……」
息子勇者「まぁまぁ、抑えて抑えて」
孫「こんちゃー!ゆーしゃのじーちゃー」トテトテ
老勇者「おお、よう来たなぁ、元気じゃったか?」
孫「うん!」
魔法使い「ほら、今年で何才になったか勇者に教えてあげなさい」
老勇者「ほうほう、それはそれは、して今年で何才になったのかのう?」
孫「みっつ!」
老勇者「そうか、もう三才になったかー。よしじゃあちゃんと言えたご褒美にアメをやろうな」
孫「あめー!」
老勇者「美味いか?」
孫「うめー!」コロコロ
老勇者「そうかー」
魔法使い「はい、じゃあ勇者にちゃんとありがとうは?」
孫「じいちゃー、ありがとー!」
老勇者「うむ」
老戦士「何だこのほがらか空間」
老僧侶「ふふふ」クスクス
老僧侶「じゃあ私は夕ご飯の支度をしますから、戦士さんも食べていってください」
老戦士「おう、じゃあまぁ飯代にちょっと外行って薪割りでもしてくるかぁ」
魔法使い「あたしも手伝うよ、僧侶ちゃん」
老僧侶「だからちゃん付けはやめてください、はぁ」
魔法使い「あはははゴメーン」
息子勇者「えと、俺もなんか手伝おうか?母さん」
老僧侶「そうねぇ、それじゃあ」
魔法使い「アンタは勇者と一緒に子供と遊んであげてよ、こっちは大丈夫だから」
老勇者「これが必殺の勇者パーンチ」ヨロヨロ
孫「じいちゃー、つよーい!」
息子勇者「えっ?でも」
魔法使い「いいからハイ、男は台所に入らないの、行った行った」シッシッ
息子勇者「そ、そうか?そこまで言うなら」
老戦士「ヒュー、アイツも相変わらず風当たりキツイなぁ、昔と全然変わらん」
息子勇者「もう先生、またそういうこと言ってると怒られますよ?」
老戦士「だいたい、お前いったいアイツのどこが良くて結婚したんだよ、姉さん女房も大概だろうに」
息子勇者「それはまぁ、竜王討伐のときに世話になったからというか……その時にちょっと」
老戦士「おっ?何だ何だ、何があった聞かせろよ」ヒソヒソ
息子勇者「実はその、むかし洞穴で二人きりになったときに…」
魔法使い「……」ピクッ
ボッ
息子勇者「おっぱ、あっつ!?熱ぁ?!?ひ、ひぃひっ!火ィ?!」
老戦士「うおあっ?!何だオイあちぃあっ!?熱っ!!!尻が燃えてんぞ!」
老勇者「おいおいそんな所で火ぃ使うなよ、小さい子もいるじゃろが」
孫「ふぁぁ、おとーさんたち、もえてるー」
息子勇者「あっつ!みず、みず水!!」
老戦士「外!外の川辺にはやく、ひぃーー!」
魔法使い「……ばーか」
老僧侶「もう、魔法使いさんってば」
…
息子勇者「ああ、イテテ……ヒリヒリする」
老戦士「ひでぇ目に遭った……この性悪め」
魔法使い「つーん」
老僧侶「はいはいもうご飯の支度が出来ましたから、席に座ってくださいね」
孫「じいちゃ、はーくはーく」
老勇者「おうおうわかった、わかった」
呼び鈴「チリンチリーンッ」
老戦士「ん?何だ、誰ぞ来たみたいだな」
老僧侶「誰かしら、こんな時間に……」
老勇者「……!」
ガチャッ
魔王「……………」デーン
老僧侶「あっ」
老戦士「なっ!こ……コイツ、まさか」
魔王「クックック、久し振りだな勇者らよ……邪魔するぞ」
老僧侶「ま、魔王……そんな」
魔王「ふっ、なるほど……一家団欒を邪魔してしまったかな?まさかこんな所に隠れていたとは」
老勇者「魔王……お前、生きておったか」
魔王「ふん、ずい分と老いたものだな勇者……今のキサマでは我に一太刀さえ浴びせることは出来んだろう」
老勇者「言わせておけば、お前なんぞにこの家の敷居は跨がせんぞ!」
老戦士「勇者!剣を」ポイッ
老勇者「おしっ、いいか跨ぐなよ……跨ぐなよコラ!跨ぐな、跨ぐなコラ!」
魔王「ククク……」
魔王「ふんっ!」バシッ
老勇者「がはっ」ドテッ
老戦士「ぐぅわーーーっ」パタッ
魔王「他愛もない、これが我を退けた勇者だというのか……まったく嘆かわしい」
息子勇者「と、父さん!先生!」
魔王「さて、次はその血族を絶やすとしようか……ククク」
息子勇者「ぐっ、くそぅ……」
魔王「どいつから消してやろうか……ん?」
孫「………」プルプル
魔王「なんだ?この、小童は……」
息子勇者「や、やめろ!危ないぞ、お前は下がってろ!」
孫「……じ」
魔王「じ?」
孫「じいちゃーたちをいじめるなー!ゆうしゃぱーんちっ!!」
魔王「むっ!」
ポコッ
魔王「…………」
孫「……」
魔王「ぐ…」
魔王「ぐわぁああああああっ、やーらーれーたー……がくっ」ドサッ
孫「やったあ!」
魔王「ま、まさか……勇者の孫がこんなに強かったとは……我の、誤算であった」
孫「えっへん」
老僧侶「すごいわ、あの魔王を倒すなんて」
老勇者「大したもんじゃな、うんうん」
老戦士「へっへ、まいったなこりゃ」
魔法使い「…………」
老僧侶「はいそれじゃあ、ケンカが終わったらちゃんと仲直りしましょうね」
孫「もうじいちゃーいじめないでね」
魔王「ははーっ、分かり申したー」
魔法使い「……んで、ウチの子で遊ぶのもう終わったの?」
老勇者・魔王「「あっハイ」」
側近「すみません、このアホ…もとい魔王様がどうしてもお孫さんと遊びたいと言うので」
魔王「おい今なんと言った、オイ」
老僧侶「いえ、こちらこそ」
側近「あとこれ、魔王様からお土産です、お子さんにどうぞ」
息子勇者「や、いつもすみません、どうも」
孫「ねーねー、おみあげってなぁに?」
魔王「獣奏剣だ、笛にもなる」
孫「?」
老僧侶「さぁさ、終わったら席について、お二人の食事も用意してありますから」
側近「ありがとうございます、では」
魔王「……かたじけない」
魔法使い「全員グラスは持った?」
孫「もったー」
魔法使い「よしよし、それじゃ勇者」
老勇者「うむ、では皆の健康と、長寿と繁栄と……あとは、この世界の平和を祝し……お互いに51%の思いやりを云々」
老僧侶「……ちょっと、おじいさん」
老戦士「挨拶が長いぞ勇者、乾杯する前に寿命が来ちまうぜ」
魔法使い「それはまた笑えない冗句ね」
老勇者「スマンスマン、年を食うとどうもな……ごほん、では気を取り直して」
老勇者「一同、カンパーイ!」
「「カンパーイ!!」」
…
老勇者「……ふぅ」
老僧侶「お疲れ様でした、おじいさん」
老勇者「いやあなんの、これくらい若い頃に比べれば……なんてこたない」
老僧侶「そうですねぇ」
魔王「今度お前たちも我が城に招待してやろう、手厚く歓迎してやろうぞ」
魔法使い「それって、針つきの落とし穴とか?つり天井に魔族の大群とか?」
老戦士「どうせ相手にするならハーピィかサキュバスくらいにしといてくれよ?」
魔王「馬鹿を言うな、その……鳥の丸焼きと、ワインとあと。チーズとクラッカーだ」
魔法使い「完璧、こんどはおじさんのお家に遊びに行けるって、よかったねー」
孫「やったぁ!ありがとおじさん」
魔王「お、おじさ………う、うむ」
息子勇者「竜王のヤツも呼んでおいてよ、久しぶりに手合わせがしたいから」
側近「ええ、ではそのように伝えておきます」
魔法使い「またそんなこと言って、子供の前で赤っ恥かかないようにね」
息子勇者「分かってるよ、ははは」
老勇者「…………いいものだなぁ」
老僧侶「ええ、本当に……これがあなたの、勇者様が守った平和なんですから」
老勇者「……だな」
…
……
戦士『お前ら、いつまでもグズグズしてんじゃねえぞー』
魔法使い『みんな花嫁さんたちの登場を待ってるんだからね』
勇者『ああ、ゴメンごめん、いま行くよ』
僧侶『すみません!お待たせしてしまって』
勇者『いやいいさ、それよりも、さぁ行こう僧侶さん』
僧侶『は、はい。勇者様』
…
老勇者「……なぁ」
老僧侶「はい、なんです?」
勇者『これからも、末長くよろしく』
老勇者「これからも、末長く……よろしく』
僧侶『は、はい!こちらこそ、よろしくお願いしみゃす!』
老僧侶「……クスッ、はい……こちらこそ、よろしくお願いします」
息子勇者「それで?魔王おじさんはいつになったら結婚するつもりなの?予定とかは」
魔王「ふん、我は魔王だぞ……そのようなことにうつつを抜かす気は毛頭ない」
側近「まぁこの通り、魔王様も奥手でして……なかなかお相手が」
老戦士「なんだ、まだなのか……あらら」
魔法使い「かわいそー、ねー」
孫「かあいそー……??」
魔王「」
おわり
裏設定として"孫"の父親は老戦士です
依頼出す
子宮悦狐であと頼む
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