緒方智絵里「歩き出せ、クローバー」 (46)
『クリスピー』
三村かな子「智絵里ちゃん、杏ちゃん、新作マカロン作ってみたんだけどどうかな?」
緒方智絵里「わあ…見た目からしていつもすごい完成度だよね」
双葉杏「ほんとほんと。お店で売ってても遜色ないよね~」
かな子「そんなに誉められると恥ずかしいな…ちゃんとおいしくできてるかな?」
智絵里「じゃあ早速一口…」
杏「私ももらうね」
P「じゃあ俺も」
かな子「わっ!Pさん、いつからいたんですか?」
P「堂々と戻ってきたつもりだったんだけど、誰も気づいてくれなくてな…」
杏「みんなマカロンに夢中だったからね、そういうこともあるよ」
P「正直ちょっとへこんだけど…まあかな子のお菓子が食べれるならいいか」
智絵里「すみません、先にいただいちゃって…」
かな子「それで、智絵里ちゃん、味はどうだったかな?」
智絵里「うん、すごくおいしかったよ。ビターチョコレートが濃厚で…」
杏「何個でも食べれるね」
P「まったくだ」
かな子「…」
P「ん?どうしたかな子?」
かな子「実はそのマカロン、私の中では未完成というか…まだもうちょっと改善の余地があるかなぁって思ってて」
杏「そう?杏はこれでも十分完成されてると思ったけどね~」
P「まあ待て杏よ。そこは職人のこだわりがあるんじゃないか?」
智絵里「すごいね、かな子ちゃん求道者だね」
かな子「そんな大げさなものじゃないよ~。ただ私もどこが足りないのかわからないんだよね」
杏「ふぅん…Pはなんかアイデア無いの?」
P「なぜお菓子づくりに縁遠い俺に聞くのか」
杏「いやなんとなく」
P「雑だなお前は…うーん、そうだな俺だったら…」
かな子「何かいい案が!?」
P「いや本当思い付きなんだけど…アイドルに例えるなら、単体で起用するのが難しい場合はユニットを組ませたりとかするから何か足してみるとか」
かな子「なるほど…」
智絵里「職人の顔つき…」
かな子「問題は何を足せば合うかなんだけど…」
P「よし、じゃあ次は杏が案を出そう」
杏「えー…」
P「お前は本当反応が正直だな」
杏「まあかな子ちゃんのためだし考えよっかなあ…でもすぐは思い浮かばないや」
智絵里「杏ちゃんが最近おいしいと思った飴の味とかはどうだろ?」
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『クリスピー』②
杏「おっいいね、それいただき。最近だとミルク入りの飴がなかなか良かったかな」
かな子「ミルクを使ったもので何か…あっ!カスタードを挟んでみるのはアリかも!ありがとう杏ちゃん!」
杏「えっ、うん。杏特に何もしてないけど、どういたしまして~」
P「まあ結果的に閃いたんだし杏も役に立ったんじゃないか?」
杏「いぇーい」
智絵里「ふふ…杏ちゃんらしいね。せっかくだしもう少しバリエーション考えてみる?」
杏「かな子ちゃんがチョコレート、私がカスタードとして、智絵里ちゃんが成分がまだないね」
智絵里「うーん…でも私もお菓子作りに詳しいわけではないし…」
P「ちえり…ちえり…あっ、チェリー味とかどうだ?」
杏「ダジャレじゃん」
智絵里「私からも何とも言えないです…」
P「楓さん!楓さんなら評価してくれるから!」
かな子「いえ…それも使えるかもしれませんね」
P「マジ?」
かな子「チェリーボンボンとかもありますし、結構さくらんぼとチョコレートって相性いいんですよ。チェリーソースをマカロンの間に挟めば…」
杏「思い付きも役に立つもんだねえ」
P「ドヤ」
杏「偉そうにするほどではないと思うけど」
P「シュン…」
智絵里「まあまあ…こうやって皆で考えたのが良かったのかもしれませんし」
P「智絵里…やはり天使か」
杏「甘やかしちゃダメだよ。Pはすぐ調子に乗るから。その分私を甘やかそう?」
P「何気に楽しようとしてんじゃねえよ」
かな子「じゃあ三人とも、今日はありがとうございました!おかげですごくおいしいものができるような気がします!」
P「おー頑張れよ」
智絵里「一件落着、ですね」
P「しかしお菓子作りに関してはすげー真剣な目つきするよな、かな子は」
智絵里「みんなに喜んでもらえるのが好きなんじゃないですかね、かな子ちゃんの場合」
P「ええ子や…」
杏「今更なんだけどさ…あんまり甘いものばっかり作って食べてたらまたトレーナーさんに怒られるんじゃ…」
P「あっ…」
『グラスホッパー』
智絵里「失礼します…あれ、レッスンルームにいるなんて珍しいですね。プロデューサーさん」
P「おう智絵里か。実はコイツを搬入するのを手伝っててな…」
智絵里「これって…トランポリン、ですか?」
P「うん。今時のアイドルは飛んだり跳ねたりもしなきゃいけないからな。トレーナーさんとも前から相談してたんだ」
智絵里「へぇ…そ、そうなんですね…」
P「おっ智絵里さん、コイツが気になるようですね」
智絵里「…バレてました?」
P「そう来ると思ってマットも既に敷いてあるぜ」
智絵里「わかってらっしゃる…」
P「いつでもどうぞ」
智絵里「えい。わっ、これ意外と跳ねますね」
P「足首ひねらないように気を付けてな。二台置いてあるし、俺も空いてる方に乗ってみるかな」
智絵里「ほっ、とうっ」
P「はしゃいでますなあ…うおっ、これは…確かに楽しいな」
智絵里「ですよね!こういうトレーニングならいくらでも出来そうです」
P「うおっ、それにしてもスーツだと飛びにくいな…」
智絵里「お洋服…大丈夫なんですか?」
P「まあ安物なんでな…近いうち買い換えるし」
智絵里「…」
P「…」
智絵里「なんかこう…二人で跳ねてるとアレみたいですね」
P(ん…ウサギみたいってことか?)
智絵里「バッタさんみたいですね」
P「えっ、そっち?」
智絵里「意外でしたか?クローバーを探してるとよくバッタさんには遭遇するので…」
P「ちょっと驚いた。智絵里、虫とか苦手そうなのに」
智絵里「苦手なのもいますが…少なくともバッタさんは平気ですよ。特に害もなく跳ねてるだけですし、善き隣人です」
P「バッタか…子どもの頃はバッタ捕まえたりしてたけど最近は見てないな…」
智絵里「プロデューサーさんの子どもの頃…なんか想像できないです…」
P「結構やんちゃだったよ。こう…オンブバッタを引き剥がしたりとかさ」
智絵里「それは…あんまりよくないですね…オンブバッタは仲の良い夫婦らしいですし」
P「そうなのか…そりゃ悪いことしちゃったな」
智絵里「ちなみに上に乗ってる方がオスらしいですね」
P「えっそうなのか?オスの方が小さいんだな…まあ俺もきらりとかに比べると小さいけど」
智絵里「ふふ…プロデューサーさんがきらりちゃんに背負われるところ想像してしまいました」
P「おう…何ともシュールな光景だな…」
智絵里「…私も、もっと背が高かったらなあ…」
P「ん?」
智絵里「…何でもないです」
P「私も背が高かったら、と聞こえたけどそれはどういう…」
智絵里「何でもないですーーーーー…!」
P「ちょっ待てよ智絵里…!走り去ってしまった…」
ダンゴムシ「智絵里さんですか?」
マイマイカブリ「えぇ、よくお見掛けしますね」
『猫になりたい』
一ノ瀬志希「ふぅ…志希ちゃん歌詞考えるの疲れるちゃった…ちょっと休憩ー」
P「おい…なんで俺の膝の上に乗ってるくるんだ」
志希「えっ、いいじゃーん。あたしに乗ってもらえてキミも本望でしょ?」
P「いや仕事中なんで本当勘弁してください」
志希「え~じゃあせめてあと3分」
P「3分間も俺は拘束されるのか…」
志希「それならあと5分で」
P「おい待て増えたぞ!?」
志希「たまにはいいじゃ~ん」
P「お前の『たまに』は頻度が多いんだよ」
志希「撫でさせてあげるからさ~」
P「…あーだこーだ言って時間稼ぎする気だろ」
志希「あはっ、バレた?」
P「お前のやりそうなことだからな…はいさっさと降りる!」
志希「仕方ないなぁ…じゃあお仕事終わったらまた乗せてね?」
P「へいへい…こんなオッサンの膝に乗って楽しいもんなのかね…」
智絵里「…」
前川みく「猫になりたい?」
智絵里「うん…正確に言うと、猫みたいに甘えたいっていう感じなんだけど…」
みく「なるほど…誰に甘えたいのかは聞かないでおくにゃ」
智絵里「さすがみくちゃん…優しいね」
みく(というか相手が誰かわかってるだけなんだけど…)
智絵里「そこで猫マスターのみくちゃんに極意を教わりたいんだけど…」
みく「智絵里ちゃんの人選はすばらしいにゃ。そういうことならみくにお任せ!まずはこれを付けるにゃ」
智絵里「猫耳…」
みく「猫耳を侮ってはいけないにゃ。これを付けるだけで女の子は大胆になれるんだよ?」
智絵里「じ、じゃあ付けてみるね…似合ってる…かな?」
みく「ほう…智絵里チャンはうさ耳の方が似合ってると思ってたけどこれはこれで…」
智絵里「に、にゃー…」
みく「!?みくはとんでもない強敵を生み出してしまったかもしれないにゃ…」
智絵里「これで猫っぽくなれるかな…?」
みく「カンペキにゃ」
智絵里「へ、変じゃない…?」
みく「よく似合ってるにゃ。ただその恥じらいは持ったままでいいかもしれないにゃ。その方がPチャ…相手の人も喜ぶと思うにゃ」
智絵里「ありがとうみくちゃん…!私がんばるね!」
みく「うむ。健闘を祈るにゃ!」
智絵里「失礼します…」
P「おう。智絵…!?お前頭のそれどうしたんだ智絵里!?」
智絵里「…ちえり猫です」
P(どうしよう…まるで意味がわからない)
智絵里「今日の私は猫なのでプロデューサーさんに甘えます」
P「お…おう」
智絵里「えい」
P「!?俺の膝の上に乗っても柔らかくないと思うが…」
智絵里「大丈夫です…猫なので」
P「そ、そうか」
智絵里「にゃー」
P(智絵里…疲れてるのかな…よくわからないが労ってやらないとな…)
智絵里(なんか思ってたのと違うけど…まあ良いかな…)
書いてほしいアイドル(Cu限定)、書いてほしいスピッツの曲等あればお気軽にお申し付けください。
アイドルなら美穂かダチャン、曲なら夢追い虫が読みたいです
>>14
承知。頑張るね。
『ジュテーム?』
小日向美穂「うーーーーーん」
宮本フレデリカ「おっ、若人よ。お悩みかな~?」
美穂「フレちゃん…ちょっと相談してもいいかな?」
フレデリカ「いいよー!相談料は一時間20円ね!」
美穂「格安…あのね、実はこれからPさんと現場で合流する予定なんだけど…」
フレデリカ「本当!?それは大変だね!」
美穂「まだ本題に入ってないよ!?」
フレデリカ「うんうんわかるよー、つらいよねー」
美穂「待って、一人で解決しないで…」
フレデリカ「オッケー♪ 話を戻そう」
美穂「うん…朝からずっと働いてるPさんにどういうねぎらいの言葉をかけようか迷ってて」
フレデリカ「ねぎらい…ねぎらい…ネギ!?」
美穂「そんな『大発見!』みたいな顔をされても…」
フレデリカ「つまりプロデューサーにネギを渡したいと」
美穂「そうそう新鮮な長ネギをね…って違うよ!?ねぎらいだよ!?」
フレデリカ「ふぅん…美穂ちゃんは優しいねえ」
美穂「いや、それほどでも…」
フレデリカ「旦那さん思いだねえ」
美穂「だ、旦那さん!?まだそういう関係じゃないよ!?」
フレデリカ「まだ、ということはゆくゆくは…?」
美穂「わー…恥ずかしいからやめて本当…」
フレデリカ「お?顔赤くなってる?なっちゃってる?」
美穂「うう…とにかくPさんを元気づけれたらいいんだけど…」
一ノ瀬志希「話は聞かせてもらったよ~!
美穂「わっ、志希ちゃん…!一体どこから?」
フレデリカ「わーお神出鬼没!」
志希「ふっふっふっ…志希ちゃんはどこからでも現れるのだ。具体的には机の下とか」
美穂「せっかくだし志希ちゃんにも相談していいかな?」
志希「ちょうどヒマだしいいよ~」
美穂「何かその…Pさんと会った時に元気づけられることってないかなぁ?」
志希「人を元気づけることねえ…そりゃあ万国共通でジョークじゃない?」
フレデリカ「おっ、さすが志希ちゃん冴えてるぅ♪」
志希「よせやい相棒」
美穂「なるほど…でも私笑いのセンスとか無いしなぁ」
志希「クスッって笑わせるのなら難しいことじゃないよ♪突拍子もないことすればいいだけだし~」
美穂「た、たとえば?」
志希「出会いざまに外国語であいさつするとか?」
美穂「外国語かぁ…詳しくないしなぁ」
フレデリカ「おっ、ここはフレちゃんの出番かな~?」
志希「待ってました親善大使!」
フレデリカ「どうもフランス代表の宮本で~す♪」
美穂「えっ、でもフレちゃんフランス語話せないんじゃ…」
フレデリカ「あ、そういう設定だったっけ?うっかり!」
志希「でもあいさつぐらいはわかるんじゃない?」
フレデリカ「まあね♪ 美穂ちゃん、プロデューサーに会ったら『ジュテーム』って言えばいいよ!」
美穂「ジュテーム…あれ?でもそれって何か別の意味だったんじゃ…」
志希「いやいや、今のフランスではジュテームが流行りのあいさつなんだよ?」
美穂「流行りとかあるの!?」
フレデリカ「フレちゃんを疑うと申すか!?まっ、気持ちはわかるけどね~」
美穂「そこは自分で認めちゃうんだね…」
志希「いや~でもいきなり美穂ちゃんにジュテームって言われたらきっとウケるだろうな~」
美穂「ホントに…?」
フレデリカ「我々が保証しよう!」
美穂「さっきからフレちゃん元気だね…そっか、ジュテームジュテーム…」
志希「ところで美穂ちゃん、そろそろ出発しないと時間やばいんじゃないかな~?」
美穂「わっ、本当だ!じゃあ行ってくるね、二人ともありがとう!」
志希「お気をつけて~♪」
フレデリカ「気をつけまくってね~♪」
志希「ところでフレちゃんさ~」
フレデリカ「ん?何かね?」
志希「ジュテームの意味、ホントはわかってたよね?」
フレデリカ「ん~どうだろ♪ 毎日パパがママに言ってる言葉だし、あいさつみたいなものかな、って」
志希「そういう解釈か~♪ それなら一応嘘ではないね」
フレデリカ「フレちゃんはいつでも正直者だからね~」
志希「もっと正直者の美穂ちゃんは今頃どうなってるかな?」
フレデリカ「うーん、わかんないけどすごく面白いことになってるんじゃないかな♪」
美穂「という事の顛末でして…」
P「なるほどな…アイツら放っておくとこれだからな…」
美穂「急に私から変なこと言われてビックリしましたよね」
P「ビックリというか、むしろ、その…」
美穂「何でしょう?」
P「いや、うん。今ちょっと顔見せれないからあっち向いてて」
美穂「えー!そんなこと言われたら余計気になりますよ!」
P「いや本当勘弁してほしい。許して」
美穂「うーん…でも嫌がられてないなら、それでいいかな…」
P(嫌がるわけがないでしょう)
『ルナルナ』
P「あー!時間ヤベー!早く出なきゃ!」
ちひろ「あら…気を付けて行ってきてくださいね」
P「うっす!安全運転で飛ばします」
遊佐こずえ「ふわぁ…わすれもの…ないー…?」
P「えっ、忘れ物…?あっ、そうだ!今日は印鑑持っていかないとダメなんだ!」
こずえ「そうなのぉ…?」
P「ありがとなこずえ!それじゃ行ってくるから!」
P「ふぅ…こずえのお陰で助かりましたよ」
ちひろ「おかえりなさいPさん。その様子だと打ち合わせはうまくいったみたいですね」
P「署名だと通用しない書類があって、それに打ち合わせの場で印鑑をすぐ押せたのが良かったみたいです。いや本当に、こずえに感謝しないとですね…」
ちひろ「ふふ…こずえちゃんには何か不思議な力があるんでしょうかね?」
P「どうなんでしょうね。俺はあんまりそういうの信じてないんで…こずえがよく人を観察してるってことかな、と思ってます」
ちひろ「それもあるかもしれませんね」
P「ちょっと…いやかなり個性的な子なのは否定できないですが…」
ちひろ「初めてこずえちゃんに会った時はPさんが妖精を拐ってきたのかと思いましたよ」
P「失敬な。ちゃんとした手続きを踏んで拐ってきましたよ」
ちひろ「結局誘拐してるんじゃないですか…」
P「まあ、こずえに超常的な力があるにせよ無いにせよ…やっぱり俺はこずえをアイドルにしたいと思ってたんじゃないですかね」
ちひろ「こずえちゃん可愛いですしね」
P「それもあるんですが…何より素直ですからね。素直な子は成長も早いですし。ただ、まぁ…」
ちひろ「まぁ…と言うと?」
P「いや、やっぱいいです。仕事しましょう」
ちひろ「そう言えば頼んでおいた残務処理は大丈夫ですか?」
P「全然大丈夫じゃないです。はい。すぐ取り掛かります」
ちひろ「そんな怯えなくても…」
P「ふー…やっと今日やらなきゃいけないタスクが終わった…」
ちひろ「私もちょうどいいぐらいですし、そろそろ事務所を閉めて帰りましょうか」
P「うっす。折角だし送っていきますよ」
ちひろ「さすが気遣いのできる男ですね」
P「誉めてもメシはおごりませんよ」
ちひろ「ちょっと期待してたんですが…バレましたか」
P「ちひろさんのそういう強かなところは見習いたいですね」
ちひろ「さて…戸締まりもしましたし、行きましょうか」
P「それじゃ助手席に乗ってもらって…」
ちひろ「お願いします♪」
P「あ、そう言えばさっきのこずえの話なんですけど…」
ちひろ「また何かお悩みですか?」
P「鋭いっすね…まあ大体当たりですよ。こずえにこのままアイドルを続けさせていいのかな、って」
ちひろ「えっ、でもこずえちゃんお仕事は順調じゃないですか」
P「順調だから心配なんですよ。普通の小学生より遊ぶ時間とか少ないでしょうし」
ちひろ「確かに…」
P「他のジュニアアイドル見てても同じことは思いますけどね。芸能活動よりも、普通の子どもらしく遊んだ方が将来のためになるのかな…とか」
ちひろ「仰ることは正論だと思いますが…でもそれはPさんが心配することではないのでは?」
P「そうですね…確かに出過ぎた真似かもしれないです。ただ、こずえの場合本人の意志が掴みづらいので余計心配に…」
ちひろ「あー…こずえちゃんは何と言うか…フワフワしてますしね」
P「それに結構大人の事情にも気を遣っててくれますからね…親御さんや俺の気持ちに配慮して辞めたくても言い出せなかったりとか…」
ちひろ「悩み出すとキリは無いですよね…」
P「まったくです…」
ちひろ「…それなら、こずえちゃん本人に気持ちを訊いてみるのはどうでしょう?」
P「いやそれは…万一辞めたいとか言われたら俺どうしたらいいか…」
ちひろ「その時はその時で、また考えればいいじゃないですか。それに、私の見立てだと辞めたいとは言われないと思いますし」
P「言われてみれば、何も行動せず煩悶を続けるよりはいいかもしれませんね」
ちひろ「それなら善は急げ、ですよ!明日私はお休みですが、頑張ってみてくださいね」
P「そうですね…もしちひろさんに泣きつくことになったらよろしくお願いします」
ちひろ「よろしくお願いされました」
P「あー…でもやっぱ不安だなー…」
P「なあこずえ、アイドルは楽しいか?」
こずえ「?たのしいよー…?」
P「そりゃそう答えるよな…」
こずえ「どうしたのー…?」
P「こうさ…普通の女の子みたいに、友達と毎日遊んだりしたいとか思わないか?」
こずえ「じむしょのみんなと…あそんでるよー…?」
P「なるほど…」
こずえ「こずえ…あいどるむいてない…?」
P「いや!そういう意味じゃないんだ!ただ、アイドル業が負担になってないか心配でな」
こずえ「ふたん…」
P「この仕事してるとさ…『やっぱり普通の人として生活したい』ってアイドル辞めちゃう子もいるからさ。中にはその気持ちを隠したまま無理にアイドルを続ける子もいるし」
こずえ「そうなのー…?」
P「実際、大勢の人間に見られるってのはストレスになり得るしな。下手すりゃプライベートにも介入されたりとか…」
こずえ「ふわぁ…」
P「俺が言うのも変な話だが…アイドルやってて大変じゃないか?どうしても忙しくなるし」
こずえ「んー…たいへんだとはおもうよー…」
P「そうだよなぁ…」
こずえ「でもやめたくはないのー…ぷろでゅーさーと…はなれたくない…」
P「こずえ…」
こずえ「そんなりゆうじゃ…だめー…?」
P「いや、十分だよ。むしろ立派な理由だ」
こずえ「そうー…?」
P「ああ。ただ、もしもこの先悩んだら遠慮なく相談してくれよな」
こずえ「ふわぁ…わかったー…」
P「という感じで解決しました」
ちひろ「良かったですね!こずえちゃんもアイドル続けてくれそうで」
P「一件落着ですよ」
ちひろ「それにしても『Pさんと離れたくないですか』…」
P「なついてくれるのは嬉しいことですね」
ちひろ「なつくというか何というか…」
P「?」
ちひろ「まあお気になさらず」
P「ところで、やっぱ俺心配性ですよね?」
ちひろ「それは否定できませんが…Pさんのそういうところが好きな子も多いんじゃないですかね」
P「マジですか。頼りないとか思われてたらどうしよう、とか悩んでましたが」
ちひろ「うーん…異性としてなら堂々としてる人の方が人気かもしれませんが…仕事仲間としては慎重な人の方が安心できますよ」
P「独身の俺としては喜んでいいのか微妙なところですね…」
ちひろ「少し意地悪な答えでしたかね?何にしても、こずえちゃんに信頼してもらえてるならいいじゃないですか」
P「それは間違いないですね」
ちひろ「私もPさんのことは信頼してますよ」
P「やったー!」
ちひろ「仕事仲間として、ですがね」
P「そこは強調しなくても…」
ちひろ「ふふっ、今のは冗談ですよ」
P「どこから冗談なのかわからないのですが…」
ちひろ「本当の気持ちは…なかなか言えるものじゃないですから」
P「えっと…それはどういう…」
ちひろ「何でもないです!仕事しましょう!」
P「ちひろさん…今日何かテンションおかしくないですか?」
『スピカ』
ベテラントレーナー「ストップ!緒方、ちょっといいか」
智絵里「すみません、今日あんまり調子よくなくて…」
ベテトレ「そうだな…動き見てるだけでも焦ってるのがわかるぞ」
智絵里「ごめんなさい…もう一度、お願いできますか?」
ベテトレ「いや…今日は休め。このまま無理に続けても逆効果だろう」
智絵里「えっ…でも…」
ベテトレ「休むのも練習のうちだ。その代わり明日は厳しくやるからな?それまでに調子を戻しておけ」
智絵里「わ、わかりました…ごめんなさい…」
ベテトレ「クラリスはまだいけるな?」
クラリス「ええ、問題ありません」
ベテトレ「よし、じゃあさっき止めたところから、クラリスだけでもう一度やるぞ!」
クラリス「お願いいたします」
智絵里「あっ、お疲れ様です。クラリスさん」
クラリス「お疲れ様です、智絵里さん。お身体の調子はいかがですか?」
智絵里「お陰様でだいぶ元気になれた気がします…あの、レッスン、抜けちゃってごめんなさい…」
クラリス「いえいえ。もう本番も近いですし、健やかな状態で望みたいですよね」
智絵里「そう、ですね…」
クラリス「…差し出がましいようですが、何かお悩みではないですか?智絵里さん」
智絵里「…クラリスさんは何でもお見通しですね」
クラリス「いえ…ただ、教会に来られる方の中には、今の智絵里さんのような表情をされている方もいらっしゃいますので…」
智絵里「本当に、すぐ不安になっちゃって、私ってダメだなぁ…」
クラリス「…」
智絵里「少し調子が悪いと、すぐ落ち込んじゃって…本番までずっとこんな調子ならどうしようって不安になって…」
クラリス「今の智絵里さんは、あまり幸せを感じられない状態にある、という理解でよろしいでしょうか」
智絵里「そうなりますね…」
クラリス「でしたら、少し考え方を変えてみてもいいかもしれませんね」
智絵里「考え方、ですか?」
クラリス「ええ。幸せには二つ考え方があって、一つは『幸せが無い状態が標準で、稀に幸せな出来事が起こる』という捉え方です。実際に多くの方がこの考え方ですね」
智絵里「私もたぶんその考え方ですね…時々は幸せな気分になれるのですが、普段は不安とかが邪魔してしまって…」
クラリス「そうですよね…ただ、幸せについてはもう一つ別の解釈もできます」
智絵里「別の解釈、ですか?」
クラリス「それは『幸せは途切れながらも続いている』という考え方です。時折憂慮に悩まされることはあっても、普段から幸せな状態はずっと続いているという考え方ですね」
智絵里「なるほど…不安な状態が続いていて、時々幸せがやってくるっていう私の捉え方とは真逆ですね」
クラリス「ええ。実はどちらも同じ事象を別の視点で見ているだけなのですがね。ですが、後者の解釈だと、なんとなくまた幸せがやって来やすいように思えませんか?」
智絵里「確かに…今私が調子悪いのも、また良くなりそうな気がしてきますね」
クラリス「不安を持つ気持ちはわかります。しかし、それはあくまで現在の話であって、未来はどうなるかわかりませんからね」
智絵里「うーん…」
クラリス「どうかなさいましたか?」
智絵里「なんだか、本当にすごいな、って…」
クラリス「すごい、とは…?」
智絵里「…どうしてクラリスさんはそんなにしっかりした考え方を持っているのかな、って…何事にも動じないというか…」
クラリス「そうですねえ。主が見守ってくださるから…と言っても信徒でない智絵里さんにはわかりにくいですかね?」
智絵里「はい…すみません」
クラリス「ですが、あなたにも見守ってくださる方はいらっしゃるでしょう?」
智絵里「あっ…」
クラリス「なんとなく、感覚はわかっていただけたでしょうか」
智絵里「そうですね…あの人のことを考えると、勇気が湧いてくるような気がします」
クラリス「ええ。いつも見守ってくださる方がいる、それだけで人は強くなれるものですよ。それだけで…」
『トンビ飛べなかった』
福山舞「うーん…」
P「おっ、どうした舞?えらく考え込んでるな」
舞「実は学校の宿題で、『将来の夢を書きましょう!』っていうのがあって…」
P「あー…俺が子どもの頃もあったなそういうの」
舞「本当は『トップアイドルになりたい』って書きたかったんですけど、先生に『アイドルを引退した後の夢を書いてね』って言われちゃって…」
P「そうか…先生としても心配なんだろうな。アイドルを辞めても人生は続くわけだし」
舞「はい…先生の言ってることもわかるのですが…難しいです」
P「ちゃんと舞のことを考えてくれる先生みたいだし、嘘はつきたくないよな」
舞「そうなんですよ…プロデューサーさんは、子どもの頃夢とかあったんですか?」
P「ん…まあな。言うの恥ずかしいけど」
舞「えー、教えてくれないんですか!?」
P「わかったわかった、言うよ。俺な、昔漫画家になりたかったんだよ」
舞「漫画家さん…ですか?」
P「おう。意外か?」
舞「はい…絵がお上手なのは知ってましたが…」
P「ま、才能は無かったけどな」
舞「そんな…でも、元々アイドルプロデューサーを目指してたのかと思いました」
P「大学生の時に色々あったんだ」
舞「あっ、じゃあ絵を描いてもらえませんか?」
P「おっ、唐突だな」
舞「プロデューサーさんの描く本気の絵が見てみたくて…」
P「いいよ。今日はまだ昼休憩取ってなかったし…休憩がてらな」
舞「やった♪」
P「で、何描いてほしい?生き物でも無機物でも何でもいいぞ」
舞「何でも?すごいですね…!じゃあ…」
P「じゃあ?」
舞「小春ちゃんの、ヒョウくんでお願いします!」
P「生き物か。得意分野だ」
舞「描くのにどのくらいかかりますか?」
P「うーん…時間かけようと思ったらいくらでもかかるけど…今回は20分ぐらいで仕上げようかな」
舞「じゃあ私、できるまで見てますね」
P「おいおい…宿題はいいのか?」
舞「これも勉強のうちですから♪」
P「なるほどな…」
P「ふぅ…こんなものかな」
舞「すごい…本当にヒョウくんそっくりです!」
P「うーん…もうちょっと時間かければ良かったかな?細部に粗が目立つし」
舞「そんな!こんなに上手だったんですね♪」
P「そこまで真っ直ぐ誉められると照れるな…」
舞「でも…これだけ上手なのに、どうして…」
P「なんで漫画家を目指すのやめたか、気になるか?」
舞「はい…答えたくない、ですか?」
P「いや…舞になら話してもいいかな」
舞「聞きたいです!」
P「実はな…一度だけ出版社に持ち込みに行ったことはあるんだよ」
舞「持ち込み、というのは?」
P「自分の作品を編集者に見てもらうことだ」
舞「へえぇ…それで、評価はどうだったんですか?」
P「誉められたよ」
舞「えっ、それなら…」
P「絵の技術だけはな」
舞「あっ…」
P「個性が無い、って何度も言われた。『君の絵は上手いだけ。それ以上の魅力がない』だとさ」
舞「そんな…」
P「俺自身も薄々気づいてたんだけど…改めて他人から指摘されるとすげーショックでさ…」
舞「でも…プロデューサーさんは頑張ってたんですよね…」
P「まあそれなりにな。人より沢山絵は描いてきたつもりだったが…まあ、そこから先は才能ってやつなんだろ。たぶん」
舞「うぅっ…ぐすっ…」
P「うおっ!?どうした舞!?」
舞「ぐす…な、なんだか、話を聞いてて、悲しくなっちゃって…」
P「悪い悪い。暗い話になっちゃったな。ここから先は前向きな話もしよう」
舞「前向きな話、ですか?」
P「ああ。プロデューサーを目指すきっかけの話だ」
舞「それも聞いてみたいです!」
P「漫画の道を諦めてすぐ、俺は大学に通いながら就職活動を始めたんだ。まあ全然やる気なかったけど」
舞「すぐに立ち直れるものでもないですしね…」
P「まあな…で、俺が漫画以外に好きなものって何なんだろうなー、ってその時にじっくり考えたわけよ」
舞「ふむふむ」
P「なかなか思いつかなくてな…三日三晩考えた結果、『俺は可愛い女の子が好きだ』って思い至ったんだ」
舞「へえ…」
P「舞ちょっと引いてない?」
舞「…引いてないですよ!」
P「まあ話を続けよう。それで、このプロダクションの採用活動に申し込んでみたんだ」
舞「プロダクション以外の会社は見てみなかったんですか?」
P「んー…色んな会社の選考には参加したんだけど…」
舞「けど?」
P「全部落ちた」
舞「えっ…!意外です」
P「まあ真剣に臨めてなかったんだろうな。そういうのは受けてる会社から見てもわかるだろうし…とは言え結構焦ったな」
舞「就職活動って大変そうですね…」
P「まあ舞は心配しなくても大丈夫だよ。ちゃんと勉強もしてるしな…俺は勉強サボってたからさ」
舞「そういうものでしょうか…ところで、プロダクションの採用活動は評価良かったんですよね?」
P「んー…面接を受けた時は絶対落ちたと思ったんだけどな」
舞「えっ!なんでですか!?」
P「受けた面接が集団面接だったんだけど、俺以外すげー優秀に見えたんだよ」
舞「ふむふむ」
P「もうね、みんな理想語りまくりでさ。俺だけだよ、『デカい夢とか語るよりも目の前の人を大切にしたい』みたいなこと言ってたの。業界のこととかよくわかってなかったし」
舞「でも…プロデューサーさんは合格したんですよね?」
P「まあな…後で聞いたら、プロデューサーはあくまで裏方で汚れ仕事もするから、その辺を弁えてる若者が欲しかったんだとさ」
舞「プロデューサーとしての才能を見抜かれたってことですね」
P「そう…なのかもしれんな。実際今は楽しく仕事してるよ」
舞「目の前の人を大切にする、っていう姿勢もその時から変わってないみたいですしね」
P「んー…まあな。そこは昔からずっと心がけてることなんだ」
舞「忙しくても、私たちへの気配りも忘れずしてくれますもんね…」
P「あんまり誉めると調子に乗るぞ、俺は」
舞「それにしても…今日は本当にありがとうございます!色々とお話が聞けてよかったです♪」
P「おう。で、宿題は書けそうか?」
舞「書けそうな気がしてきました!」
P「それなら安心だ。挫折体験ってのもたまには役に立つもんだな」
舞「仕事の話とかはわからないところも多いですが…でもなりたい自分はわかった気がします」
P「おっ、どんなだ?」
舞「それは…ヒミツです♪」
P「いやいや気になるだろ」
舞「ヒミツはヒミツなので♪」
P「納得いかねえ…」
舞(いつか私も、プロデューサーさんみたいに…)
以上SSは終了です。
更新速度が遅くて申し訳ありませんでした。
皆様ご指摘の通り、今回はスピッツの歌詞から着想を得てSSを書きました。
スピッツ好きのPさんに読んでもらえると、自分としては嬉しい限りです。
あとはタイトルごとの解説も残しておきますね。
いずれのSSもスピッツの楽曲から着想を得て作成しました。
作詞者は草野マサムネです。
『クリスピー』
かな子=チョコレート、杏=カスタード、智絵里=チェリーソースということで。
かな子と言えば持ち曲がショコラですが、そう言えばショコラってチョコレートのことだよな、という思い付きから書きました。
折角3種類の甘みが出てくる曲なので、Candy Islandのメンバーで。
智絵里=チェリーは名前の通りで、杏=カスタードは髪色的にそれっぽいかなと。
『グラスホッパー』
バッタってすぐ逃げますよね。
智絵里ちゃんは草原に生息しているので、虫とも仲良くやってそうなイメージがあります。
原曲の歌詞は卑猥ですが、良心の呵責ゆえに智絵里ちゃんを卑猥には書けなかったです…
『猫になりたい』
猫ですし、まずみくにゃんと志希にゃんには出てもらいたいなと。
個人的な願望で非常に恐縮ですが、一刻も早く智絵里ちゃんの猫耳が見たいです。
『君が思い出になる前に』
スピッツの失恋ソングめっちゃ好きなので一つは書いておきたいなあ、と思いまして。
健全まゆもヤンデレまゆも好きですが、今回はキレイな佐久間まゆを描きました。
『ジュテーム?』
フランス語の「コーヒー」って「コッヒ」に聞こえますよね。
小日向さんです。
フランス繋がりでフレちゃん、コーヒー繋がりで志希にゃんに来てもらいました。
しかしこの二人が揃うとこっひは大変な目に遭いそうですね…
曲中に二胡のソロがあるのでフェイフェイにも登場してもらおうかと思いましたが、話が長くなりそうなのでやめときました。
『ルナルナ』
これはスピッツの歌詞準拠というより、楽曲タイトルの元ネタになったブラックジャックの「白いライオン」の話を基に書きました。
モバマスのセリフを見ていてもこずえちゃんの真意は読み取りにくいですが、プロデューサーのことを信頼しているのは間違いないでしょうね。
『スピカ』
スピカ→おとめ座→キリスト教では聖母の象徴→モバマス界の聖母、ということでクラリスさんです。
『スピカ』の「幸せは途切れながらも続くのです」という歌詞に感銘を受けたので、文中にねじ込みました。
『トンビ飛べなかった』
飛べなかったトンビでも次世代を導くことはできるのではないか、と考えながら書きました。
原曲の歌詞は普通にバッドエンドっぽいですけどね。
「トンビが鷹を産む」という諺もありますが、トンビは才能の無い者の象徴として扱われがちなのが少し寂しいところです。
トンビ可愛いんですけどね。
以上になります。
読者の皆皆様も、どうか善きスピッツライフをお送りください。
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