トキメキ少女小路綾の赤面日和 (30)

きんいろモザイクのSSです。

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綾自室


綾「……」

綾「こ、これは…… !」

綾「ふぅ……」

綾「ゆ、百合モノ…… 初めて読んだけど想像以上だったわ……」

綾「人見知りで寂しがり、なのに素直になれなくて中々人と打ち解けられない主人公」

綾「そんな女の子を時に強引に、時に繊細に扱ってあげる幼馴染……」

綾「かっこ良すぎるわ! こんな人が居たら好きになっちゃうに決まってるじゃない!!」

綾「ふふふ…… 今日は家に一人っきりだしゆっくり読んでいられるわ……」

綾「さぁ残りも読んじゃいましょう!」

綾「…… これで終わりなのね」

綾「『この物語が終わってしまうのが惜しい』なんて感覚久々だったわ……」

綾「1ページめくるたびにもうこの幼馴染の子と会えなくなっちゃうって考えたら泣けてきちゃった……」

綾「はぁ…… 私にもこんな人が居てくれたらなぁ……」


綾『……』

陽子『ん、どうした綾?』

綾『私…… 自分に自信が無くて……』

綾『陽子は明るくて頼もしくて友達も多いけれど、私は暗くて引っ込み思案な人間だし友達も少ないわ』

綾『そんな私と付き合ってたら陽子だって迷惑なんじゃ…… いえ、もしかして陽子は優しいからこんな私と

陽子『そこから先は言っちゃダメ』

綾『あっ…… ごめんなさい』

綾『でも…… どうして私を? 陽子なら他にも相手は居たでしょう? どうして暗くて素直じゃない私を選んでくれたの…… ?』

陽子『えへへっ、綾は自分の悪いとこばっかり見て良いところに全然気付いて無いな』

陽子『優しくて気配りできるところとか、まじめでしっかりしてるところとか、綾にだっていいところはいっぱいあるし』

陽子『わたしに見せてくれる綾の笑顔、誰よりも可愛いよ!』

綾『も、もう! 陽子!』

陽子『それに、わたしが好きなのは照れ屋で素直じゃない女の子なんかじゃなくて、綾が好きなんだよ』

陽子『綾が好きだから、恥ずかしがって上手く笑えないところも、少し失敗しただけで凄く落ち込んじゃうところだってわたしはとっても可愛いってそう思ってるよ』

綾『陽子……』

陽子『だからさ、たまには綾の口から聞かせて欲しいな 好きって』

綾『えぇっ!?』

陽子『綾、普段恥ずかしがって言ってくれないだろ? あれ案外気にしててさー』

綾『わ、私そんなに素直じゃない性格じゃ……』

陽子『じゃ、今聞かせてみて』

綾『わ、わかったわよ そのくらい言ってあげるわ』

綾『……』

綾『よ、陽子…… す、』

綾『す……』


綾「って言える訳無いじゃない! キャー!」

綾「はっ! な、なんで私陽子なんかで妄想してるのよ! あのガサツな陽子がこんなこと言ってくれるはず無いじゃない!」

綾「それに陽子はこの漫画の幼馴染みたいにかっこよく無いし! 女の子にモテても無いし!」

綾「とにかく! 私が陽子を好きなんて…… あっ!」

綾(わ、私なんでこんなにのめり込んでるのよ……)

綾(家に一人きりとは言えあんまり大声出すのはやめましょう……)

綾「……」

綾(やっぱり少し寂しいわね……)

綾(こんなときこの漫画の幼馴染だったら絶対側に居てくれるのに ……)

綾「…… やっぱり陽子はバカね! 私がこんなに寂しい思いをしてるのに側に居てくれないなんて!」

綾(でも陽子を呼ばなかったのは私なんだし、仕方無いか……)

少し前 帰り道

綾「よ、よよよよよ陽子……」

陽子「ど、どうした綾 なんかあったか?」

綾「きょ、今日私の両親が二人とも居なくて、だからうちに遊びに来ない? ほ、ほら今日は宿題も出たし、丁度いいでしょ?」

陽子「なーんだそんなことか、うんいいよー」

綾「そ、そう…… それなら夕御飯準備してあげるから

陽子「ま、綾は寂しがり屋だし、今日は陽子ちゃんがずっと隣に居てあげるかー」

綾「え?」

陽子「ん?」

綾「な、何よ! 私は一人じゃ寂しくて死んじゃうとでも言いたいの!?」

陽子「えっ、いや」

綾「もうほんと信じられない! 宿題は自分でやりなさい! 後で泣きついて来たって見せてなんてあげないんだからっ!」

綾(あんなこと言わなければ良かったのかしら……)

綾「だ、だけどあれは陽子が悪いに決まってるじゃない! 陽子から謝ってきたって許さないんだから!」

ピンポーン

綾「ん、誰かしら」


綾「よ、陽子!? 何で来たのよ!」

陽子「ごめんっ! さっきのこと謝りに来た!」

綾(なっ…… 本当に謝りに来たの……? あんなのどう考えたってくだらないことで癇癪起こした私が悪いじゃない)

綾「わ、わざわざ謝ること無いわよあれは

陽子「だから宿題見せて!」

綾「は?」

陽子「いやー、あの後自分で宿題やろうとしたんだけどやっぱり難しくてさー」

綾「……」

陽子「ダメ…… かな?」

綾「もう! ホントに陽子はバカね! 宿題くらい自分でやりなさいよ!」

綾(あっ…… なんで私また怒鳴ってるのよ…… 素直に来てくれて嬉しいって言えばいいじゃない……)

陽子「ご、ごめん……」

綾(陽子もなんでそこで謝るのよ…… どう考えたって私が悪いじゃない……)

綾「ま、まぁ一応自分でやろうとした努力は認めてあげるから勉強教えてあげるわ」

陽子「ホントか!? ありがとー 綾!」

綾「お、教えるだけよ! 丸写しなんてさせないんだからね!」

陽子「わかってるって あ、そう言えば今日は綾の家に泊まるって家族に言って来たんだけど大丈夫だよね?」

綾「ええ、大丈夫よ」

陽子「ありがと、よろしくなー」

綾(…… あれ)

綾(きょ、今日はお母さんもお父さんも帰ってこないし……)

綾(よ、陽子と二人っきり!?)

陽子「ん? どしたのそんな赤くなって?」

綾「な、何でも無いわよ!」

綾「じゃ、じゃあまずは宿題を終わらせましょう」

陽子「えー、少し遊んでからでいいじゃーん」

綾(あ、『遊ぶ』…… ?)

綾(そう言えばさっきの漫画で……)


幼馴染『…… ちょっと遊ぼ?』

主人公『だ、ダメよ ここは学校の中よ!』

幼馴染『大丈夫だよ、誰も見てないし すぐに終わるから……』

主人公『あっ…… んんっ……』

綾「だ、だだだだダメに決まってるでしょ!!!」

陽子「え~」

綾「は、早く宿題を終わらせてご飯食べて寝ましょう!」

陽子「うぅ~ せっかく綾の家に来たのに……」


綾「はい、これで分かったでしょ? 後は自分でやってみて」

陽子「おっけー」

綾「……」

陽子「……」

綾(勉強を教えてれば何とかなるけど…… 無言になると場が持たないわ……)

陽子「……」

陽子「よーし、これで終わりー!」

綾「ふふ、よく頑張ったじゃない」

陽子「最後の方は教えてもらってばっかだったけどなー」

綾「それでも丸写しじゃないんだし、きっと力になってるはずよ」

陽子「だといいな~」

綾「まだ夕御飯までは時間あるし、お茶菓子持ってくるわ」

陽子「あ、じゃあわたしも手伝うよ」

綾「陽子はお客さんなんだし座ってて」

陽子「そう? じゃあお願い」

綾「ええ」

陽子「ただ待ってるのも暇だなー」

陽子「んー……」

陽子「あ、そうだこの本さっきから気になってたんだよね」

陽子「あの几帳面な綾が本を本棚に入れずに平積みしてるなんて、どんな本なんだろ」

綾「お待たせ…… って ちょっと陽子その本!」

陽子「えっ、これ?」

綾「な、なななななんでそれ読んでるのよ!」

陽子「いや、置いてあったから…… 読んじゃダメだった…… ?」

綾(ど、どどどどどうしよう…… わ、私が百合モノの漫画を読んでるなんて知られたら……)


陽子『あっ…… 綾ってそういう趣味だったんだね』

綾『ち、違うの! これはあくまで二次元の話で』

陽子『ま、まぁ世の中には色んな人が居るし、わたしはあんまり気にしないから……』

綾『よ、陽子ー!』

綾「あああ……」

陽子「えっ、ちょっと綾! お茶こぼすよ!」

綾「えっ?」

陽子「危ない!」

綾「きゃっ」

陽子「あっつ!」

綾「え…… ?」

綾(私の上に陽子が…… ?)

綾「ちょ、ちょっと何してるのよ!」

陽子「ええ!?」

綾(あっ…… そうか こぼれたお茶が私にかからないように陽子が庇ってくれたのか……)

綾(そ、それじゃあ陽子にお茶が!)

綾「だ、だいじょ

陽子「綾 大丈夫? どっかヤケドとかしてない?」

綾「え…… 私は大丈夫だけど……」

陽子「あー、それなら良かったー」

綾「…… って良くない! なんでお茶がかかった陽子が私の心配してるのよ!」

陽子「いやまぁ綾が怪我とかしたら一大事だけど、わたしが怪我する分には別に…… ティーカップも割れてないみたいだし」

綾「いいわけ無いでしょ! 服にシミになる前に早く脱いで洗濯しないと、それとシャワー浴びてきなさい!」

陽子「はいはい」

綾「きゃああああ! なんでいきなり脱いでるのよ!」

陽子「脱げって言ったの綾だろー!?」

綾「うう…… 何やってるのよ私……」

綾(お茶こぼすなんてどんくさいところ見せて、陽子の服を汚しちゃって、陽子に心配されちゃうなんて……)

綾(しかも私が百合漫画を読んでることもバレちゃったし……)

綾(この後どんな顔して陽子に会えばいいのかしら……)

綾「…… て言うか何で私は陽子のことでこんなにもやもやしてるのよ! 陽子のことなんて別にどうでもいいじゃない!」

綾「……」

綾(もう何言ってるのよ私……)

綾(私ってなんでこんなに素直じゃない性格なのかしら……)

綾(もっと素直に…… もっと素直に陽子と接することが出来たら……)

綾「うぅ…… 私だって素直に『陽子のことが好き』って言ってみたいわよ!」

陽子「あ、そうなの」

綾「えっ……」

陽子「わたしも綾のこと好きだよ」

綾「」

陽子「ん?」

綾「あ……」

綾「あああ……」

陽子「どしたの?」

綾「な…… なななな、なんで居るのよ陽子!」

陽子「いや何でって言われても……」

綾「もう! 陽子のバカバカ!」

陽子「ちょっ…… 素直に好きって言いたいんじゃなかったのかよ!?」

綾「そんなの恥ずかしくって言える訳無いでしょ! 察しなさいよ陽子のバカっ!」

陽子「あははっ そっか、ごめんごめん」

綾「……」

綾「なんで陽子は怒ったり呆れたりしないのよ」

陽子「え?」

綾「だって私凄い理不尽じゃない! 勝手に機嫌悪くして怒るなんて!」

陽子「ふふっ、いいじゃんそんなの」

綾「え?」

陽子「綾が素直じゃないのは今に始まったことじゃないし、上手く気持ちを伝えられない綾を見てかわいいなーっていっつも思ってるよ」

陽子「それに綾がわたしのこと好きだってこともちゃんと伝わってるから、無理に言葉にしなくたっていいよ」

綾「陽子……」

陽子「えへへ、わたしは大好きだよ 綾のこと」

綾「……」

綾「…… 私も」


終わり

陽綾っていいですよね、読んでくれた方ありがとうございます。
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