高垣楓「愛の足し算」 (60)
『──。返事をしてくれよ』
『なぁ……頼むよ……』
『なんで……こんなことに……』
『う、うわぁぁぁぁ!!』
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pipipi……
P「はぁ……」
P「またこの夢か……」
P「いい加減……忘れないとな……」
P「って支度しないと!」
───
P「う~ん、今日もティンとくる子がいなかったなぁ」
P「どこかにアイドルの原石はいないものか……」
店員「はい、中ジョッキお待ち!」
P「ありがとうございます! さて、とりあえず飲むとしますか!」
P「ん~! 美味い!!」
P「しかし、また最近あの夢を見るようになっちゃったな……」
P「吹っ切れたと思ったんだけど……」
「じゃあ生ビールを。中ジョッキでお願いします」
P「え?」
P(うわ~! 綺麗な人だなぁ!)
P(でも……今の声って……)
「では、たこわさを」
P(や、やっぱり……似てる……)
P「…………」
「ふぅ……美味しい」
P「…………」
「…………」
P「…………」
「あ、あの……何かご用……でしょうか?」
P「え!?」
「そ、その……さっきからずっと私の方を……」
P「えっと、その、なんというか……あははっ」
P(や、やばい! 思わずガン見しちゃってたか!)
P(こ、こうなったら!)
P「あ、あの! アイドルに興味ありませんか!?」
「……はい?」
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楓「あの時は……本当にびっくりしたんですよ?」
P「いやぁ、面目無いです」
楓「でもまさか同じ事務所だとは思いませんでした。私はモデル部門でしたけれど」
P「僕もですよ……ははっ」
「高垣さーん、お願いしまーす」
楓「私の出番ですね。それでは行ってきます」
P「はい、頑張ってください!」
P(あの日、楓さんをスカウトして以来、二人三脚で頑張っている)
P(非凡な才能を秘めていた彼女は、瞬く間に人気アイドルとなっていった)
P(そのお陰か、最近は日夜仕事漬けの目まぐるしい日々を送っている)
P(あの日の事も忘れるほどに……)
───
楓「それでは、かんぱ~い!」
P「乾杯! でも飲み過ぎは厳禁ですよ」
楓「は~い♪」
P「本当に分かってるのかな……」
P「今日の撮影もバッチリでしたね」
楓「ふふっ、ありがとうございます。でもスポーツしたのなんて久しぶりだから筋肉痛が怖いですね」
P「はははっ」
楓「そういえばプロデューサーは何かスポーツとかやってたんですか? 学生時代とか
に」
P「え? えーと……その高校の時にテニスを……」
楓「わぁ、凄いですね♪ 私は、その……人見知りだったので……何もやっていなくて。羨ましいです」
P「は、ははっ……」
楓「あ、店員さん。これのお代わりをお願いします」
P「ち、ちょっと飲み過ぎですよ!」
楓「それじゃあプロデューサーに介抱して貰おうかしら。ふふっ」
P「か、楓さん!」
───
─
事務所
楓(今日は焼き鳥と日本酒で……)
楓(あら?)
莉嘉「P君、見て見て! カブトムシだよ☆」
P「うわっ! 俺、虫ダメなんだよっ!」
莉嘉「えー? 可愛いのにー!」
楓(そうだわ……ふふっ)
P「ったく……」
楓「P君♪」
P「え!? まっ!?」
楓「?」
P「か、楓さん!」
楓「ふふっ、ちょっと趣向を変えてみました」
P「し、心臓が飛び出るかと……」
楓「そ、そこまで驚くとは思ってなかったです。すみません」
P「あ、いや、謝ることじゃないですよ! ははっ」
焼き鳥屋
瑞樹「え? P君の様子がおかしい?」
楓「はい。前に飲みに行った時もそうですし、今日も……」
瑞樹「詳しく話してごらんなさい」
楓「えーと……」
瑞樹「それってもしかして……」
楓「わかるんですか?」
瑞樹「非常に言いづらいんだけど」
楓「お、教えてください」
瑞樹「言いの?」
楓「はい」
瑞樹「たぶん……元カノじゃないかしら?」
楓「も、元カノ……ですか……」
瑞樹「たぶん、あなたとその子を重ねてるのよ」
楓「…………」
瑞樹「楓ちゃん。あなた、もしかして……」
楓「い、いえ……その……」
瑞樹「私の前でくらい無理しなくてもいいのよ」
楓「そう……ですね……」
瑞樹「気持ちは……わかるわ。そうね、今日はとことん相談に乗るわよ」
楓「ありがとうございます、川島さん」
───
─
事務所
楓(あ、頭が痛い……)
楓(でも……はっきりさせないと……)
楓(ここは卯月ちゃんに習って……)
楓「高垣楓、頑張ります!!」
ガチャ
楓「…………」
P「楓さん、おはようございます」
楓「お、おはようございます。あ、あの……」
P「はい?」
楓「そ、その……お話があるですけれど……」
P「なんでしょう?」
楓「ここでは……その……」
P「……では屋上へ行きましょうか」
楓「はい……」
屋上
P「…………」
楓「…………」
P「それで……話というのは?」
楓「あの……プロデューサーは……その……」
楓「私を……誰かと重ねて……見ているんですか?」
P「…………」
P「……すみません」
楓「……っ」ズキッ
楓「それは……昔の……彼女さんですか?」
P「……そうです。失礼な事だとはわかっているんですが、時折どうしても」
楓「……私に……似ているんですか?」
P「初めて居酒屋で出会った時は、耳を疑いました」
楓「そう……ですか……」
楓「その方は……今は?」
P「事故で……その……」
楓「っ!? ご、ごめんなさい」
P「いえ、いいんです」
楓「で、でも……」
P「もう昔の事ですから」
P「本当にすみませんでした。凄い失礼な事ですよね……」
楓「い、いえ……そういう事情とは露知らずに……」
P「もう忘れようと思ってるんですが……」
楓「そ、そんな! いいんですか?」
P「はい。いい加減に現実を見ないと」
P「これも……未練がましく残しといても仕方ないよな」
楓(携帯電話? 写真とかかしら……)
楓「……消してしまうんですか?」
P「楓さんに心配をかけるようでは、プロデューサー失格ですから」
楓「本当にいいんですか?」
P「はい、大丈夫です。それに」
楓「それに?」
P「サービスも終了してますし」
楓「サービスも……え? サービス?」
P「はい、去年の9月には終了していたんですよ」
楓「え? ……え?」
P「え? これの事では無いんですか?」
http://i.imgur.com/p9d7KR6.jpg
楓「あ、あの~元カノ……というのは?」
P「いやぁ、本当にびっくりしましたよ。楓さんの声が愛花にそっくりだったので」
楓「……愛花?」
P「あ、いや、元カノの名前が高嶺愛花っていうんです」
P「前に名前で呼ばれた時は本当に驚きましたよ。同じ呼ばれ方だったので」
楓「は、はぁ……」
P「でもこれはもう必要ありません! 俺には楓さんをトップに導くという使命がありますし!」
楓「あ、あの! 亡くなったというのは?」
P「え? ああ、前に3DSを落とした時にそのまま」
楓「3DS?」
P「紗南が時々やってるやつですよ。二つ折りのやつ」
P「本当に楓さんのお陰で目が覚めました! ありがとうございます!」
楓「い、いえ……」
P「ラブプラスは現実ではない!」
楓「あ、あともう一ついいですか?」
P「なんでしょうか?」
楓「私をスカウトしたのは……その愛花さんに似ていたからですか?」
P「いえ、声を聞いた時は驚きましたが、実際は一目惚れだったと思いま……あっ」
楓「…………」カァ
P「あ、その、今のは忘れてください!」
楓「……嫌です♪」
P「ち、ちょっと楓さん! 待ってください! 楓さーん!」
楓(思わぬライバルでしたけど……私は負けません)
楓(今度は……ずっと……私だけを見ていてくださいね)
楓「オッス、楓だよ♪ なーんて、ふふっ」
終わり
>>20
訂正
瑞樹「言いの?」×
瑞樹「いいの?」◯
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