春の選抜大会1回戦会場にて
咲「ツモ!リンシャン小三元!満貫!」
能口「エッ!?」
みさき『これで宮永咲3回連続のリンシャンツモです』
野依『すごい!』=3=3
能口「くっ……」ギリッ
みさき『このまま行けば石川代表鞍月高校がトンでしまいます』
咲「次行くよー」
野依『……!!』=3=3
みさき『野依プロ、この宮永咲の好調の要因はなんでしょうか?』
Σ野依『う!!よ、よういん!!』
みさき『野依プロ?』
野依『す、すごい!!』=3=3=3
みさき『凄いのはわかっているんですいったいなにが凄いのかをわたくしは聞いているわけでして』
野依『と、とにかくすごい!!すごいったらすごい!!』プンスコ!
咲「ツモ!!リンシャンカイホーサンカンツドラドラドラ!!」
能口「そんな……!!」グニャー
みさき『なんと宮永咲4連続のリンシャンツモ!!これで鞍月高校がトビました!!』
野依『ううう……』
みさき『試合終了!1回戦を突破したのは夏の王者の清澄高校です!!』
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咲「お疲れさまでした」ペコリン
能口「おつかれ……」
みさき『清澄高校春夏連覇へ順調な滑り出しです!』
あの夏から早数か月、宮永咲たちは春のセンバツ大会を戦っていた
みさき『1位は長野代表清澄高校、2位は神奈川代表東白楽高校、3位は京都代表桜が丘女子高校、そして最下位が石川代表鞍月高校でした』
能口「春の借りを夏に返す、春にボコボコされるということはつまりこれどういうことかわかりますか?」
咲「ど、どういうこと?」
能口「伸びしろですねぇ!」
みさき『東白楽はスロベニアから留学生を呼ぶも清澄高校には百歩及ばずでしたね』
野依『……!!』プンスコ!
みさき『この清澄高校の強さの秘訣とはどんなところにあるのでしょうか野依プロ』
野依『そ、それは!!』
みさき『それは?』
野依『と、とにかくすごい!!宮永さんがすごい!!』=3=3=3=3=3
みさき『だからその凄さの元とはいったい……』
野依『と、とにかくすごい!!すごすぎる!!』=3=3=3=3=3
みさき『……ではまた2回戦でお会いしましょう』
シャカツェナショータイッ♪ココジャスベテガライブッ♪
野依「……」
みさき「理沙ちゃんおつかれ」
野依「お、おつかれ!!」=3=3
みさき「今日も疲れたね、でも清澄の宮永さんが早く終わらせてくれたからいつもより楽だったよ」
野依「ら、らくちんだった!!」プンスコ!
みさき「もっと早く終わってたら過去の名勝負とか流せてたね、理沙ちゃんが活躍したときの映像とか」
野依「……」
みさき「理沙ちゃん大丈夫?」
野依「だ、だいじょうぶ!!」プンスコ!
みさき「別に無理して上手いこと言おうとしなくていいんだよ」
野依「わかってる!!」プンスコ!
みさき「理沙ちゃんは理沙ちゃんのまま、ありのままの理沙ちゃんで良いんだからね」
野依「うん!!」=3=3=3
ガチャン
プロデューサー「ちょっとちょっと野依ちゃ~ん!あの解説いったいなんなのよ!」
Σ野依「ご、ごめんなさい!!」
みさき「プ、プロデューサー……」
プロデューサー「なんなのあの喋り!まるで放送事故じゃないの!」プンプン!
野依「ううう……」
プロデューサー「いつになったら喋りが上達するのかねぇ!いくらケーホトのボクでもローブクニンカンがブチ切れそうだよ!」
みさき(仏……堪忍袋……)
プロデューサー「まったく野依ちゃんを使ってるこっちの身にもなってほしいね!好きで使ってるわけじゃないんだから!」
野依「ご、ごめんなさい……」ポロポロ
みさき「プロデューサーやめてください、野依プロだって一生懸命やってるんですし……」
プロデューサー「一生懸命だけじゃダメなのよテレビの世界は!野依ちゃんの解説はワケワカメだから視聴者がほかの局にとられちゃうの!」
みさき「ふくすこコンビや戒能さん佐藤アナのコンビは人気ですからね……」
プロデューサー「あんな解説だったら九官鳥置いておいたほうがマシよ!コンニチワ!サヨウナラ!アイシテル!ぐらい言えるわよ鳥だって!」
野依「ううう……」
みさき「理沙ちゃん……」
プロデューサー「本当は小禄ちゃん使いたいけどあのコは口が悪すぎるのよねぇ」
心≪このチーム糞雑魚だよ!どのつらさげて地元に帰るのかな!総スカンだよきっと!つらよごしだよ!≫
プロデューサー「以前起用したらえらい苦情の嵐だったわよ!基本人の悪口しか言わないしあのコ!」
みさき「小禄プロはああいう性格が売りですからね」
プロデューサー「だーかーらー小禄ちゃんの代わりに野依ちゃんを使ってるわけなの、しっかりしてよねもう!」
野依「ううう……」ポロポロ
プロデューサー「次上手く解説出来なかったらほかのコに代わってもらうからね!栗巣ちゃんなんかいいかもしれないけどもうほかの局が使ってるし……」ブツブツ
野依「ウウーッ!!」スタタタタタタッ!
みさき「あ!理沙ちゃん!」
ガチャン
プロデューサー「次はちゃんとやりなさいよね!まったく……」ブツブツ
みさき「ちょっと野依プロに言い過ぎじゃありませんか」
プロデューサー「良いのよあのコにはあれぐらい言わなくちゃわからないわよまったく
そんなことよりこのあとザギンでシースーで一杯やらない?もちろんみさきちゃんとボクの二人きりでよ」グヘヘ
みさき「お断りします、わたしも帰りますので、では」スタスタスタ
プロデューサー「なによいけずねぇ、ってそんなことより仕事仕事あぁ忙し忙し」
夜の街にて
野依「ううう……」ポロポロ
スタスタスタスタ・・・・・・
野依「くそお……」ポロポロ
スタスタスタスタ・・・・・・
野依「ううう……」ボロボロ
番組プロデューサーに怒られその場を飛び出した野依理沙は行くあてもなく夜の街を歩いていた
野依「ううう……」ポロポロ
野依「ううう……」ポロポロ
野依「ひっぐ……」ポロポロ
元来口下手な野依理沙は言葉を発するのが非常に苦手だった
野依「ううう……」ヒックヒック
スタスタスタスタ・・・・・・
そのため言葉を多く話さなくてはならない解説業はまさに野依理沙にとって生き地獄も同然だったのだ……
野依「みさき……」ポロポロ
しかしただ闇雲に夜の街を闊歩してもなにも解決はしないのだった……
野依「ハァ……」
外人「エクスキューズミー」
夜の街にて
野依「ううう……」ポロポロ
スタスタスタスタ・・・・・・
野依「くそお……」ポロポロ
スタスタスタスタ・・・・・・
野依「ううう……」ボロボロ
番組プロデューサーに怒られその場を飛び出した野依理沙は行くあてもなく夜の街を歩いていた
野依「ううう……」ポロポロ
野依「ううう……」ポロポロ
野依「ひっぐ……」ポロポロ
元来口下手な野依理沙は言葉を発するのが非常に苦痛だった
野依「ううう……」ヒックヒック
スタスタスタスタ・・・・・・
そのため言葉を多く話さなくてはならない解説業はまさに野依理沙にとって生き地獄も同然だったのだ……
野依「みさき……」ポロポロ
しかしただ闇雲に夜の街を闊歩してもなにも解決はしないのだった……
野依「ハァ……」
外人「エクスキューズミー」
Σ野依「ギエッ!!」ドキィッ!
外人「スミマセーン、エキニハドウヤッテイケバイイデスカ?」
野依「あ……あ……」
外人「エキワカラナイ、オシエテクダサーイ」
野依「あ……あ……」
突然の外国人からの問いに野依理沙はパニックに陥った……!
野依「え、駅……駅……!」プルプル
外人「ソウデース」
野依「ううう……」プルプル
外人「ドウシマシタカ?オシエテクダサーイ」
あのビルを曲がってすぐに駅がある―――ただそう言えば良いだけ……
野依「ううう……」ポロポロ
が、その言葉が出てこない……!口下手……!口下手だから出てこないのだっ……!
外人「ナゼクラインナンデスカ?!ホワーイ!」
野依「ううう……」ボロボロ
野依理沙が言葉が出なくて泣き出したそのとき……
???「駅ならあのビルを曲がってすぐですよ……」
野依「ン!?」
外人「オーサンキューベリーマッチ!アナタホントジェントルマンネ!」
???「困ったときはお互いさまですよ……」
外人「サンキューネ!グッバイ!!」
野依「ホッ……」
???「いきなり道を尋ねられて大変でしたね……」
野依「エッ!?あ!ありがとう!」=3=3=3
???「いえいえ困ったときはお互いさま、助け合うことが大切なのです」
野依「たすけあい!」プンスコ!
???「しかしここで本当に困っていたのは野依さんあなたですね」ビシッ
野依「ギョッ!な、なんで……!」
???「あんな悲しそうな顔をしてたら誰だって一番困ってるのがあなただとわかりますよ」
野依「こ、こまってない!!」
???「いいえあなたはいまココロに大きな悩みを抱えているハズです……」
野依「こ、こわい!!おじさん!!だれ!!」
???「そんな警戒しないでください、わたしはこういうモノです」サッ
野依「ココロのスキマおうめします……も……も……」
喪黒「喪黒福造です……実はわたしセールスマンなんです……」
野依「セールス?!いらない!!なにもいらない!!」プンスコ!
喪黒「いえいえわたしが取り扱うのはモノではありません、ココロなんです」
野依「ココロ……?」
喪黒「はい、わたしはボランティアで病める現代人の悩みを解決しているのです」
野依「ゴクリ……」
BAR 魔の巣にて
マスター「……」キュッキュッ
喪黒「なるほど口下手をなんとかしたいと……」
野依「うん……」
喪黒「生まれつきの口下手で言いたいことがきちんと相手に伝えられずいらぬ誤解を招く
小さいなころからそのことで悩み続けてたということですかさぞやお辛かったでしょうねえ」
野依「くちべたなおしたい……」ポロポロ
喪黒「たしかに麻雀中継を見ていても野依さんの解説はかなり素っ頓狂ですからなあ、ホーホッホッホ」
野依「ひどい!!」プンスコ!
喪黒「しかしそんなに解説がイヤならその仕事を断ればいいではないですか」
野依「ムリ!チームがやれって!!」プンスコ!
喪黒「看板選手が解説を担当することで所属クラブの宣伝を狙ってるわけですねえ」
野依「だから……かいせつやめれない……」ポロポロ
喪黒「しかしこのままだと解説者をクビになってしまうというわけですね」
野依「クビ!!おこられる!!」ポロポロ
喪黒「たしかにクラブのお偉いさんからは大目玉かもしれませんなあ」
マスター「……」キュッキュッ
野依「どうしよ……」
喪黒「大丈夫ですよ野依さん、そんなあなたにぴったりなモノがあるのです」ガサゴソ
野依「ぴったり?」
喪黒「これです……」
ジャジャーン
野依「こ、これは……?」
喪黒「舌飴というモノです……ホーホッホッホ……」
野依「したあめ……?」
喪黒「喉の調子がおかしいときに喉飴をなめるように上手く話せないときはこの舌飴をなめるのです……」
野依「ど、どゆこと!!」
喪黒「簡単に言えばこの舌飴をなめるだけでアラ不思議なんと途端に饒舌になるのですよ……」
野依「ホ、ホント?!」=3=3
喪黒「嘘ではありません、舌飴は舌を滑らかにするのですひどい口下手の野依さんもこれをなめるだけでいいのです」
野依「す、すごい……」ゴクリ
喪黒「もちろん舌が滑らかなのは飴をなめているときだけ、飴がなくなると元の野依さんに戻ってしまいます……」
野依「しあいちゅう……」
喪黒「その通りです解説中のときになめるのですそうすればあなたも人気解説者の仲間入りですよ」
野依「ホントすごい……」
喪黒「まぁ普段のあなたの解説ぶりを気に入ってる人もけっこういるのですがね、ホーホッホッホ」
野依「でも……」
喪黒「心配しなくても大丈夫ですお金は一銭もいただきません、わたしは悩める人々の救済が目的なのです」
野依「きゅうさい……」
喪黒「そうですわたしは野依さんが喜んでいただけるだけで満足なのです」
野依「ううう……」
喪黒「ホーホッホッホ」
野依「……」
数日後 センバツ大会実況席にて
野依「……!!」ソワソワ
みさき「大丈夫理沙ちゃん?」
野依「だ、大丈夫!!」=3=3=3=3=3
みさき「変に気負わなくていいからね、無理しなくていいから」
野依「うん!!」プンスコ!
みさき「試合が終わって怒られたら私が守ってあげるから、理沙ちゃんを傷つけるような人はたとえプロデューサーでも許さないわ」
野依「みさき……ありがとう……」
みさき「だから安心してていいからね」ニコッ
野依「みさき……」
スタッフ「本番10秒前です!」
みさき「もうすぐ本番よ理沙ちゃん」
野依「うん……」
スタッフ「7!6!5!!」
野依「……」
野依理沙はまだ半信半疑だった……あの怪しい男―――喪黒福造に渡された舌飴が本当に効くのかが……
スタッフ「4!3!」
野依「……はむっ!」モグッ!
しかし一縷の望みに賭けて野依理沙はその舌飴を口に含んだ……!
みさき「みなさんこんにちは、今日も春のセンバツ大会中継のお時間です」
野依『……』
みさき『実況はわたし村吉みさきが担当させていただきます、そして……』チラッ
野依『か、解説の野依理沙です……』
みさき『では出場選手の紹介です』
優希「今日もタコスぢからでお前らをボコボコにしてやるじぇ!」モグモグ
みさき『ご存じ夏の王者清澄高校の先鋒は片岡優希!』
泉「調子こいてる奴は私が痛めつけてやりますわ」ニタリ
みさき『大阪の名門千里山女子の先鋒は二条泉!』
伏屋「わたし気になります!」
みさき『岐阜代表の斐太商業の先鋒を務めるのは伏屋那都!』
百鬼「そいじゃみんなよろしくー」
みさき『静岡代表の后土学園!先鋒であり部長の百鬼藍子!』
優希「さっそく試合をおっぱじめるじょ!」カラカラ
みさき『準決勝への進出を賭けた戦いが始まります!準決勝へ行けるのは2校です!』
野依『……』
優希「リーチだじょ!」
みさき『なんといきなりリーチです片岡』
泉「いきなりかいな……」
優希「ツモだじぇ!ダブリーツモイッパツホンイツドラドラ!倍満だじょ!」
みさき『開始直後に早くも倍満ツモです片岡!』
優希「私の早さにお前らは果たしてついてこれるのか?」フフン
泉「この世代最強の私が負けるわけないやろ」フンッ
伏屋「なんでこんなに早いんですか?わたし気になります!」
野依『そ、それは……』
ここで意を決して今の片岡優希について解説しようとしたが……
みさき『しかし相変わらず早いですね片岡優希、そして早くも闘牌が再開されてます』
野依『う、うん……』
村吉みさきが遮ったために解説するタイミングを逸してしまった……
優希「リーチだじぇ!!」
泉「またかいな!絶対イカサマやろ!」
百鬼「噂に違わぬ快速っぷりだね」ヒュー
優希「ツモだじょ!ダブリーイッパツツモドラドラドラドラ!倍満だじぇ!」
みさき『怒涛の倍満二連発!片岡優希まさに絶好調です!!』
伏屋「倍満連発……」
優希「やはりタコスのちからは偉大だじぇ」モグモグ
泉「メキシコかぶれやな!」フンッ!
野依『清澄の……』
みさき『本当に清澄高校の片岡優希すごいですね、果たしてこのまま片岡優希は突き進むのでしょうか!』
野依『す、凄いね……』
またもみさきに遮られてしまう、そこで野依理沙は気づく……
野依『わ、わざと……』
そうわざと村吉みさきは野依理沙が無理に喋らなくてもいいよう実況してるのだ……!
野依『みさき……』ポロポロ
村吉みさきの気づかいに野依理沙は涙が出る思いだった……
優希「ツモだじょ!!ダブリーツモイッパツサンショク!ハネ満だじぇ!」
優希「イッパツ……ならずだじぇ!」
みさき『四連続でイッパツはならずでした』
優希「もうガス欠なのか?いつもより早いじぇ……」カチャ
百鬼「ポン」
優希「!!」
みさき『ここですかさず百鬼藍子がポン』
泉「なんやねんもう……」カチャ
百鬼「それもポン」
泉「な……」
みさき『連続してポンです百鬼藍子、いったいなぜでしょうのよ……』
野依『それは……』
みさき『い、いえしかしこのままどうなるか……』
野依『……』
百鬼「ツモ、發のみ」
みさき『なんとここで百鬼藍子が和了……』
泉「なんやねんそのクズ手……」
百鬼「ふふふ……」キラン
みさき『いったいこのツモの意図は……』
野依『い、今のは……』
みさき『いや次行きま……』
村吉みさきが先に進めようとする……が
AD【野依プロの解説お願いします!】←カンペ
みさき『な……』
AD【野依プロの解説お願いします!】
みさき『え、えーっと……』
野依理沙に話をさせないために村吉みさきが頑張っていたが
まさかここでADが話を振ってくるとは二人は思いもしなかった……
野依『……』
AD【解説早く!!】バンバン
みさき『えーっと……』
野依『……』
AD【早く!!】バンバン!
プロデューサー(このまま野依ちゃんがなにも話さなかったらまるでボクがいじめてるみたいじゃない!
ボクはどっかのテレビ局の鑑定番組のPみたいな性格わるーい奴じゃないのよ!)
野依『……』
みさき『理沙ちゃん……』
百鬼「ポン」
みさき『百鬼藍子またもポン!!』
百鬼「ツモ!中のみ!」
みさき『またも安手で和了りました百鬼藍子!』
優希「ムムムッ!!」グッ…
泉「まるでゴミ屋敷みたいな麻雀やな、そんなんじゃ私には勝てへんで」フフン
AD【早くっ!!】バンバンバン!
野依『……』
百鬼「チー!」
野依『……百鬼さんは場の流れを変えようとしてるんだよ』
みさき『エッ!?』
野依『みなさんご存じの通り清澄の片岡さんは序盤に大物手を連発しますよね
百鬼さんはそれを止めようとわざと場を乱して流れを片岡さんから引き離そうとしてるんです』
みさき『り、理沙ちゃんが喋った……』
百鬼「ポン!」
野依『しかし百鬼さんはただ闇雲に鳴いているわけではありません』
泉「ポンポンポンポンまるでポン菓子やな……」カチャ
伏屋「ロンです!!」
泉「なんですて!」
みさき『なんと二条泉!伏屋那都に振り込んでしまった!』
野依『自分が和了れなさそうと見るや巧みに相手を誘導しほかの人間に振り込ませる、百鬼さんはその技術が抜群に上手いですね』
優希「ぐぬぬだじぇ……」
野依『本来なら片岡さんの和了りがもっと続いてるハズなのですが百鬼さんが片岡さんの和了の芽をすべて摘んでいってますね』
百鬼「ポン」
野依『先鋒戦は王者清澄の片岡さんではなく百鬼さんの独壇場になるでしょう』
百鬼「ツモ!チャンタのみ!」
みさき『理沙ちゃん……』
AD【実況!!】バンバン!
Σみさき『はっ!!百鬼藍子まさに絶好調です!』
百鬼「ふふん♪」
泉「余裕でいられるのも今のうちやで……」フンッ…
優希「ま、まだ負けないじぇ……!」ギリッ!
伏屋「勝ちますよぉ!」
野依『清澄の大爆発を回避できた斐太商業は想定外である意味ラッキーでしょうね』
みさき『し、しかしあまりに安い手を連発しても片岡優希には追いつけないのでは……』
野依『もちろん鳴いて安い手ばかり和了るつもりは百鬼さんも毛頭ないでしょう、きっとどこかで勝負をしかけてくるハズです』
みさき『なるほど……』
百鬼「リーチ!!」
野依『言ったそばから勝負を仕掛けてきましたよ、流れが自分に来たことを感じたのでしょう』
優希「こ、ここはオリだじぇ……」カチャ
野依『以前の片岡さんなら失速したあとでもがむしゃらに和了ろうとして痛い目に遭っていましたが
いまの片岡さんは自分に流れが無いと見るや素直におりられるようになりました、あの夏から成長したということですね』
泉「これや!」カチャ!
百鬼「ロン!リーチイッパツイッツードラドラドラ!ハネ満!」
泉「くっ……!」
野依『かたや千里山女子の二条さんは自分がこの世代最強の雀士というプライドがありますのでそう簡単にはオリようとはしません』
泉「次や次や!次こそ私が和了ってやりますわ!」
野依『平たく言えばいいカモですね』
百鬼「リーチ」
みさき『またも百鬼藍子リーチ!果敢に攻めていきます!』
優希「このお姉ちゃんすごいじぇ……」カチャ
伏屋「わたしオリます!」カチャ
泉「ここでオリたら最強1年の名が泣きますわ!」カチャ!
みさき『あくまで強気の二条泉ですね』
野依『本当に最強の1年生は宮永咲さんなんですけどね』
泉「う、このイーピンはヤバいな……」
みさき『二条泉イーピンを切ればテンパイですが……』
野依『イーピンは百鬼さんの和了牌ですね』
泉「しょうがないここはオリ……」
百鬼「ふーん逃げるんだ自称最強1年?」
泉「あ?」
みさき『なにやら百鬼藍子が二条泉を挑発し始めました!』
百鬼「本当に強い雀士ならここいらでジャーンと勝負に出るのが本当なんじゃないの?」ニヤリ
泉「なんやと!?」カチン
百鬼「最強なのは威勢だけ、弱い犬ほどよく逃げるとはこのことだね」キラリ
泉「このグラサンめ……!」ギリッ!
みさき『百鬼藍子のサングラスが妖しく光っています……』
百鬼「ほーらオリないで私の和了牌を切りなさい……」ウニョニョニョニョニョ!!!!
泉「ン?!」
百鬼「ビーム!!」ウニョニョニョニョニョ!!!!!
泉「は、はいぃぃぃぃぃぃ!!!」カチャ!
百鬼「はいローン!!リーチチンイツドラドラドラドラ!三倍満!」
みさき『どうしたんでしょうか二条泉!あんな危険牌を簡単に振り込んでしまいました!』
野依『催眠術ですね』
みさき『エッ!?さ、催眠術ですか?!』
野依『そうです、百鬼さんは催眠術の使い手で相手を短い時間帯ですが操ることができるのです』
みさき『そ、そんなのアリなんですか?』
野依『ルールブックに催眠術をしてはいけないとは書いてないのでOKなんでしょう』
みさき『ルールブックに書いてなければなにしても良いってわけではないと思いますけど……』
泉「なんで私こんな誰が見ても危険な牌を切ってしまったんや……」
野依『意志が固くない人間ほど催眠術に掛かりやすいのです、この面子では二条さんが百鬼さんの格好の餌食だったのですね』
百鬼「……」カチャ
みさき『いつの間にかまたも百鬼藍子がテンパイです!しかも倍満!このまま百鬼藍子の勢いは止まらないのでしょうか!』
百鬼「ふふふ」カチャ
みさき『エエーッ!?まさかのテンパイせず!いったいどうしたのでしょうか!』
野依『伏屋さんの和了牌だったからですよ』
みさき『あ!いつの間にか伏屋那都もテンパっていました!』
野依『流れが自分から離れつつあるのを感じたのでしょう、麻雀というのは流れを敏感に感じ己の欲を上手く断ち切れるかが重要なんです』
みさき『な、流れ論者みたいなこと言いますね……』
泉「失った点棒を取り返さにゃ!攻めるで!」カチャ!
伏屋「ロンです!」
泉「そ、そんな……!」グニャー
みさき『二条泉ボロボロです!!』
泉「わ、わたしは1年最強なんやっ……」ポロポロ
その後も野依理沙の解説は続いた……
パトリッコ「ウサミ!クラタ!」カチャ!
みさき『ブラジルからの留学生!千里山女子のパトリッコ!凄い勢いで有効牌が入ってきています!』
野依『パトリッコさんは相手の危険牌とか関係なくとことん攻めていくタイプですね』
まこ「わけわからん捨て牌しよってからに!!」ギリッ!
野依『染谷さんにとっては苦手なタイプですね』
まこ「おがた!」カチャ!
パトリッコ「ローンダヨ!ハネマーン!」
まこ「なん……じゃと……」
みさき『染谷まこ振り込んでしまいました!』
パトリッコ「ドドドドドドドド!!」
まこ「やかましいんじゃ!!」
野依『お馴染みの機関銃パフォーマンスですね、まさにパワー麻雀ですね』
時には正確に麻雀について解説し時には小ネタを挟んで視聴者を和ましていった……
和「リーチです」
みさき『ここでリーチです原村和!』
野依『しかし原村さんの和了牌のパーピンはいま千里山女子の下柳さんと斐太商業の田中さんが持ってるね』
下柳「……」カチャ
みさき『本当ですね!千里山の下柳が2牌、斐太の田中が1牌持ってます!』
野依『下柳さんはもう原村さんがパーピンを待ってるのを察してるみたいですね、果たして田中さんが察してるかどうかですが』
みさき『さすがに田中も原村がパーピン待ちだというのを察しているのでは……』
田中「えい!!」カチャ!
和「ロンです」
みさき『田中は察していませんでした!!』
下柳「このやろう!!」バーン!
和「ひぃ!」
みさき『田中の失策に下柳が大激怒です!!』
下柳「ふざけんじゃねぇよバカヤロー!!」バーン!!
田中「じゃがいも!!」
野依『やすやす原村さんを和了らせてしまった田中さんに対する怒りですね
ちなみに田中さんはサッカー元日本代表の田中マルクス闘莉王選手のお父さんにそっくりらしいですよ』
みさき『は、はぁ……』
野依『あとで下柳さんは中堅の赤星さんに怒られますね』
こうして無難に解説をこなしていったのだった……
咲「うぐ……」
みさき『2回戦も終盤!なんと王者清澄高校が3位で敗退の危機です!』
船久保「王者王者と言っても大したことあらへんな」ニヤニヤ
みさき『現在トップは千里山女子!さすが名門の実力です!』
野依『ここまで宮永咲さんは船久保さんに得意のリンシャンカイホーが封じられてるのが痛いですね』
咲「うううどうしよう……」プルプル
野依『船久保さんの捨て牌を見てもわかる通り国士無双を狙ってるように見えますからね』
みさき『チャンカンを怖がってるということですか……』
咲「こ、これどうかな……」カチャ
船久保「ドシーン!!それロンや!!」
咲「和ちゃん……」ジワッ
みさき『ついにオーラス!このままでは清澄高校が敗退です!千里山女子と后土学園が準決勝進出ですよ!』
野依『さすが船久保さん、宮永咲さんをちゃんと研究してきてますね』
咲「が、頑張らなくちゃ……!」キリッ!
みさき『まだ諦めてはいないようです宮永咲!』
野依『そうでなくてはいけません、麻雀は最後まで諦めない者に栄光が待っているのです』
船久保「ほいじゃオーラス突入やな」ニヤニヤ
咲「え、えい!」カチャ!
船久保「ほいさ」カチャ
みさき『果たして勝利の女神は誰に微笑むか!』
野依『最後まで諦めてはいけませんよ』
咲「えい!」カチャ!
船久保「カーン!!!!!」
咲「ひぃ!!」
みさき『船久保浩子なんとカンです!』
咲「ううう……」ブルブル
船久保「なに震えてるんやまるで生まれたてのシマウマみたいやな」ニヤニヤ
野依『一番得意なカンを封じられた上にそのカンでやり返される
完全に船久保さんの手のひらに転がされてる状態ですね宮永咲さんは』
咲「このままじゃ負けちゃう……」
みさき『完全に戦意喪失か宮永咲!』
野依『まだまだこの戦いは終わりませんよきっと』
船久保「もいっこカンや!!」
咲「ぷぅ!!!」
みさき『宮永咲のお株を奪うカンカン攻勢です!』
咲「でも……」カチャ
みさき『しかしいまのカンのおかげで宮永咲がテンパりました!』
咲「……」
野依『でも役なしですね』
みさき『あ!ホントだ!役なしです!このままでは宮永咲和了できません!』
咲「……」ポロポロ
咲「(リーチしてもすぐ振り込みそうだよ……)うぐ……」ポロポロ
船久保「どないしたん?もう諦めたんか?リーチする勇気もないんか?」ニヤニヤ
みさき『ついに万事休すか宮永咲!』
野依『……』
前田「カン」
みさき『おーっとここで后土学園の前田もカンです!』
咲「!!そ、それロン!!」
前田「!!」
みさき『なんとチャンカンです!!』
咲「ロンロンローン!!チャンカンドラドラドラドラドラ!ハネ満!!」ポロポロ
前田「……」
みさき『これで清澄が静岡代表后土学園を逆転で捲って2位!準決勝進出は千里山女子と清澄高校に決まりました!』
野依『最後の最後でチャンカンが決まりしかもドラ5つ、サッカーで言うならば後半ロスタイムにGKに点獲られて負けるようなものですよ』
咲「良かった……良かった……」
船久保「準決勝もよろしく頼むで咲ちゃん」ニヤニヤ
咲「つ、次は勝ちますから!」キッ!
みさき『やはり最後まで諦めない者が勝つということですね』
野依『そうですね、后土学園の前田さんも決して最後手を抜いたというわけではありません、夏の躍進に期待ですね』
みさき『今日の麻雀中継はここまでです、ではまた準決勝にお会いしましょう!』
カラダジュウミチアフレルヤセイノエナジー♪タギラセテイマトキハナテ♪
センバツ大会実況席にて
野依「フーッ!!」=3=3=3
みさき「……」ジーッ
野依「み、みさき?」
みさき「理沙ちゃん!」ガシッ!
野依「な、なに!?」
みさき「やればできるじゃない解説!私感動しちゃった!」
野依「も、もちろん!やればできる!」プンスコ!
みさき「昔から理沙ちゃんのこと知ってるけどあんな喋ってる理沙ちゃん初めて見たよ」
野依「えっへん!」
みさき「次からはもう大丈夫だね!」
野依「うん!」=3=3=3=3=3=3=3
プロデューサー「ちょっとちょっとのよりちゃ~ん!!」
Σ野依「うう!!」
プロデューサー「なんなのよあの解説!冗談じゃないわよぉ!」
野依「ご、ごめんなさい……」シュンッ
みさき「プ、プロデューサー!今日の理沙ちゃんは精一杯頑張ったじゃないですか!理沙ちゃんを責めるのはやめてください!」
プロデューサー「……」
野依「ううう……」
プロデューサー「ナーンチャッテ!!今日はすっごく良かったじゃなーい野依ちゃーん!」
野依「え……」
プロデューサー「あんなちゃんと解説出来るとは思わなかったわよ!どうしたの変なモノでも食べたのー?」
野依「た、たべてない……」
プロデューサー「あんだけ話せなかった野依ちゃんがあんだけ饒舌になるなんてまさかニセモノじゃないでしょうね!」
野依「ほんもの!」プンスコ!
みさき「本物の野依プロですよプロデューサー」
プロデューサー「能ある鷹は爪を隠すとはまさにこのことね!最高よホント!」
野依「えへへ……」
みさき「良かったわね理沙ちゃん」
プロデューサー「今日はボクのおごりよ!みんなでパーッと景気よくやるわよ!」
AD「やっほーい!!」
カメラマン「飲むぞ飲むぞー!」
音声「いえーい!」
みさき「本当ですかプロデューサー?みんなよく食べますから後悔しますよ」ニコニコ
プロデューサー「ボクだって男よ!男に二言は無いわ!」
野依「……あ」
ふと気づくと口の中の飴は消え喋りも元の野依理沙に戻っていた
野依「まぁ……いい!!」
野依理沙はいままでにない高揚感に満たされていた……
野依「……!!」=3=3=3=3=3=3=3
BAR 魔の巣にて
野依「すごい!このあめすごい!!」=3=3=3=3=3=3=3
喪黒「ホーホッホッホ、お気に召していただけたようでなによりですよ」
野依「もう!ペラペラ!すごい!とにかくすごい!」=3=3=3=3=3=3=3
喪黒「野依さんの興奮ぶりからも舌飴の効き目がバツグンだったということが伝わってきますなあ」
野依「ありがとう!もぐろさん!ありがとう!!」
喪黒「いえいえ感謝したいのはわたしのほうですよ、お客様に喜んでいただけるのがわたしにとって至高の喜びなのですから」
マスター「……」キュッキュッ
喪黒「マスター、野依さんに水割りを一杯」
マスター「……」タンッ!
野依「うまい!!」ングング!
喪黒「なかなかイケるクチですねえ野依さん」
野依「えへへ……つぎ……がんばる……」プンスコ!
喪黒「次の試合の解説も期待してますよ、しかし……」
野依「しかし?」=3=3=3=3
喪黒「その舌飴は試合の解説以外では使わないでほしいのです」
野依「なんで!!」プンスコ!
喪黒「あくまでわたしは試合の解説のためにその舌飴を渡したのです、試合以外で使用するのは控えてもらいたいのです」
野依「だいじょうぶ!!つかわない!!」
喪黒「では次の試合も頑張ってくださいね……ホーホッホッホ……」
野依「うん!!」=3=3=3=3
数日後 準決勝会場にて
咲「ロン!!」
船久保「くっ……」
みさき『船久保浩子!またも宮永咲に振り込んでしまいました!』
野依『前回の対戦から船久保さんにリンシャンカイホーは効かないと見るやリンシャンを捨て正攻法で攻めてきましたね宮永咲さん』
咲「もいっこロン!」
船久保「またかいな!」
みさき『船久保浩子なすすべなしです!』
船久保「ええいもうこうなりゃ逆転狙って大物手を……」カチャ
咲「それカン!!」
船久保「エッ!?」
野依『そしてリンシャンができるようになったと見るや待ってましたとばかりにリンシャン炸裂ですね』
咲「ツモ!!!」
みさき『試合終了です!清澄高校が貫録のトップでの決勝進出です!』
船久保「なんでや……」ヘナ…
咲「お疲れさまです」ペッコリン
野依『やはり宮永咲さんは怪物ですね、あの小鍛冶健夜プロを彷彿とさせるオーラを感じますよ』
みさき『1位の長野代表清澄高校と2位の千葉代表輝日東高校が決勝進出です!』
絢辻「お疲れさま、決勝もよろしくね」ニコニコ
野依『輝日東高校の絢辻さんは裏表の無い素敵な人みたいです』
みさき『その割には裏ドラがやたら乗ってましたね……』
野依『では次は決勝ですね』
みさき『果たして春のセンバツを制するのはどこの高校なのでしょうか!ではまた次回お会いしましょう!』
アリガトーアリガトー♪アリガトーアリガトー♪
センバツ大会実況席にて
プロデューサー「いやぁ今日の解説も良かったよ野依ちゃん!」
野依「えへへ……」
プロデューサー「他の局のふざけた解説&実況と違ってウチは堅実さが売りなのよ!
だからこのままいけば他の局に嫌気が差した視聴者がウチの番組を……」グヘヘ
みさき「……」
プロデューサー「とにかく!最後の決勝戦もよろしく頼むわよ!」
野依「うん!!」
プロデューサー「さァ景気づけに今日もみんなでパーッと行くわよ!」
AD「オッケーイ!」
カメラマン「行こう行こう!」
音声「酒……酒……」
みさき「あのすいません私もう帰ります」
プロデューサー「エッ!?なに言ってるのみさきちゃん?!」
野依「みさき……?」
みさき「でも今日はもう予定が入っててダメなんです!行こう理沙ちゃん!」ガシッ!
野依「ちょ!!」
みさき「ではお先に失礼します!」スタタタタタッ!
野依「し、しつれい!!」スタタタタタタッ!
プロデューサー「ちょっと二人とも!ンモー!野郎共と飲んでもなにも楽しくないじゃないの!!」
スタタタタタタタタタタタタ・・・・・・
みさき「……」スタスタスタスタッ!
野依「み、みさき!!」スタスタスタスタッ!
みさき「……」スタスタスタスタッ!
野依「みさき!!」スタスタスタスタッ!
みさき「あ、ごめんね理沙ちゃん」サッ
野依「どうしたの!」プンスコ!
みさき「うんちょっと……」
野依「……!!」=3=3=3=3=3
みさき「……」
野依「……!!」=3=3=3=3=3
みさき「ねぇ理沙ちゃん……」
野依「なに!」プンスコ!
みさき「今から二人で飲みにいかない?」
野依「え……」
とあるホテルのBARにて
みさき「ン!ン!」ングング!
野依「みさき!のみすぎ!」プンスコ!
みさき「そんな飲んでないよっ」クラクラ
野依「でも……」
みさき「デモもパレードもないわよ!今日は飲みたい気分なの!」
野依「みさき……」
村吉みさきとは長年の付き合いである野依理沙だがここまで荒れている彼女を見るのは初めてであった……
みさき「ン!ン!」ングングング!
野依「ううう……」
みさき「プハァー!!ハァ……」
野依「……!!」=3=3=3=3=3
みさき「もう一杯……」ング……
野依「なんで!」=3=3=3=3=3
みさき「え……」
野依「なんで!のむの!」プンスコ!
みさき「なんでって言われても……」
野依「なんで!!」プンスコ!
みさき「だって……」
野依「……!!」=3=3=3=3=3
みさき「……なんか疲れちゃったんだもん」ヒック
野依「え……」
みさき「この仕事を続けていて大丈夫なのかな私……だって地味だしもう若くもないし……」
野依「み、みさき……」
みさき「他の局の福与さんとか佐藤さんに比べるとさ……私なんか人気無いし……本当に必要とされてるのかな……」
野依「え……え……」
みさき「私なんかそんなキレイでもないし明るくもないし……針生さんにぐらいしか勝てないもん……」
野依「ううう……」
みさき「このまま地味に年をとって埋もれていくのかな私……」
野依「……」
みさき「アナウンサー辞めちゃおうかな……」ングングング!
野依「みさき……」
野依理沙は村吉みさきに優しい言葉を掛けてあげたかった……しかし……
野依「ううう……」
やはり口下手の野依理沙にとってここでみさきにどんな言葉を掛けてあげればいいのかが分からなかった……
野依「どうしよ……」ガサ…
何気なくズボンのポケットを探る……すると……
野依「!!」
そこには喪黒福造に渡された舌飴があった……
野依「あめ……」
この舌飴をなめればみさきに温かい言葉を掛けてあげられる……
野依「でも……」
喪黒≪試合の解説以外では決して使ってはいけませんよ……≫
野依「……」
みさき「このままおばあさんになるまで一人……寂しいなぁ……」ングングング!
野依「……」
みさき「どうせ私なんか……」ポロポロ
野依「みさきの……ため……」
みさき「水割りもう一杯……」ングングング!
野依「いちどぐらい……だいじょうぶ……!!」サッ!
そう言うと喪黒との約束を破り舌飴を口に含んだ……!
野依「……」
みさき「私なんか……私なんか……」
野依「そんなことないよみさき」
みさき「エッ!?」
みさき「り、理沙ちゃん……?」
野依「みさきちゃんは要らない人間なんかじゃないよ、そんな自棄にならないで」
みさき「でも雑誌とかの女子アナ人気ランキングはいつも30位とか微妙なとこだし……」
野依「そんなゴシップ誌の記事なんて気にするだけ損だよ、そんなのに投票する奴なんて結局上辺の部分しか見てない連中だよ」
みさき「上辺だけ……」
野依「そう、みさきが魅力的だというのは私が一番知ってるから……」
みさき「理沙ちゃん……」ドキッ……
野依「だからそんな落ち込まないで、みさきが落ち込んでると私まで悲しくなっちゃうよ」
みさき「うん……」
野依「飲んですっきりするならとことん飲もうそれじゃ、私も最後までとことん付き合うからさ」
みさき「……」
野依「みさき?どうしたの?」
みさき「……すき」
野依「エッ?」
みさき「理沙ちゃん好き!!大好き!!愛してる!!」ダキィ!
野依「エエーッ!?み、みさきちょっと!」
みさき「ンンン!」チュッ!
野依「ンン!?」
みさき「えへへ……理沙ちゃんのファーストキッスいただき……」ベロベロ
野依「みさき……すごく酔っぱらってる……」
村吉みさきは野依理沙が思っている以上にベロベロに酔っぱらっていたのだ……
そして野依理沙の言葉がその悪酔いした村吉みさきに火をつけてしまったのだった……!
みさき「理沙ちゃんねぇ最後まで私に付き合ってくれるんでしょう」ベロベロ
野依「う、うんそのつもりだけど……」
みさき「じゃあ抱いて」
野依「え……」
みさき「もう部屋もとってあるの……」ウルウル
野依「そ、そんなこと言われても……」オロオロ
みさき「今日はもう一人になりたくないの……ねぇいいでしょう?」
野依「ううう……」
野依理沙に欲望に抗うだけの意志は無かった……
野依「い、いいよ、私もみさきが好きだから……」
みさき「じゃあ早く行きましょう理沙ちゃん……」トローン
野依「うん……」
・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・
ホテルの部屋にて
みさき「ムニャムニャ……」
野依「……」
ホテルのベッド―――野依理沙の隣には村吉みさきが眠っていた
みさき「理沙ちゃん好きよ……ムニャムニャ……」
野依「みさき……」
時計を見るともう朝の5時、窓の外を見るとすでに空が白み始めていた
野依「ふふふ……」
野依理沙は満足していた、あの舌飴のおかげで村吉みさきと結ばれることができたのだから……
野依「みさき……あいしてる……」チュッ
みさき「んん……」ゴロゴロ
野依「おきちゃう!!」プンスコ!
野依理沙は村吉みさきが起きないようにそーっとベッドから降りる
野依「のど!!かわいた!!」=3=3=3=3=3
ふと喉の渇きを感じた野依理沙は床に放ってあった服を着る
野依「じはんき!ジュース!!」プンスコ!
自販機に飲み物を買いに行こうと部屋のドアを開けた……そこには……
喪黒「ホーホッホッホ」
なんと喪黒福造が立っていたのだ……!
野依「も、もぐろさん!?」
喪黒「野依さん約束を破りましたねえ」
野依「そ、それは……!!」
喪黒「わたしは言ったハズですよ試合の解説以外ではあの飴をなめないでくださいと」
野依「で、でも!!」
喪黒「言い訳は聞きたくありません……」ジリッ
野依「ごめんなさい!ごめんなさい!」
喪黒「ホーホッホッホ……」ジリジリッ
喪黒福造がジリジリと近づいてくる……
野依「こ、こないで!!」
喪黒「野依さんには罰が必要です……」
野依「こわい!!」ポロポロ
喪黒「大丈夫です安心してください……あんな飴なんて必要無いお体にするだけですから……」
野依「ううう!!」
喪黒9m
喪黒9m「ドーーーーーーン!!!!」
野依「ギニヤアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・
みさき「う~ん……」パチッ
みさき「もう朝か……」
時計の針は朝の7時半を指していた
みさき「ううう頭痛い……ちょっと飲み過ぎたかしら……」
ふと隣を見ると野依理沙の姿が無かった
みさき(シャワーでもしてるのかしら……)
しかしバスルームからはなんの音もしなかった
みさき(しかし昨日の理沙ちゃんは可愛かったわね……)ウフフ
昨夜の情事を思い出し村吉みさきはつい顔がにやけてしまう
みさき(とうとう理沙ちゃんと一緒になれたんだもん、感無量ね)
ベロベロに酔っていても記憶はたしかな村吉みさきであった
みさき「それにしても理沙ちゃんはどこにいるのかしら」
ガタッ!
みさき「シャワー室から音が……やっぱシャワーでもしてたのね」スクッ
そう言うとみさきは立ち上がりバスルームに近づく
みさき(突然入って理沙ちゃんを驚かしちゃお!そしてあわよくばもう一戦……)ニヒヒ
みさき「理沙ちゃんなにしてるの!」ガチャ!
みさきは思いっきりバスルームのドアを開ける……そこには……
野依「……」
野依理沙の後姿があった……
みさき「理沙ちゃんおはよう、なにしてるのそこで?」
野依「……」
みさき「どうしたの?まだ酔っぱらってるの?」
野依「……」
みさき「あ、分かった恥ずかしいのね、うふふ理沙ちゃんってやっぱりウブね」
野依「……」
みさき「ねぇ恥ずかしがらないでこっちを向いて、理沙ちゃんの顔をじっくり見せて?」
野依「……」
みさき「今日は二人とも仕事が休みじゃないだからもっと二人で……」
野依「……」
みさき「……ねぇなんでこっちを向いてくれないの?ひょっとしてなにかあったの?」
野依「……」
みさき「理沙ちゃん……」
野依彡「……」クルリ
みさき「な!!り、理沙ちゃん?!」
野依理沙が村吉みさきに顔を向けた……しかし……
野依「―――!!―――!!」ポロポロ
なんと野依理沙の顔に口が無かったのだ……!
みさき「り、理沙ちゃんどうして……」ヘナヘナ
野依「―――!!―――!!」ポロポロ
必死にみさきになにを訴えようとする……しかし言葉はおろかうめき声すら漏れてこないのだった……
野依「―――!!―――!!―――!!」ジタバタジタバタ
みさき「理沙ちゃんどうして……」
野依「―――!!―――!!」ポロポロ
野依理沙はただひたすら涙を流すしか出来なかった……
喪黒「野依さんはこれで喋る苦痛から解き放たれました……これであの人は一生言葉を話す煩わしさを感じずにすむのです……」
喪黒「良かったですね野依さん……もう口下手で悩むことはもうありませんよ……」
喪黒「ホーホッホッホッホッホッホッホッ……」
野依「くちべた……なおしたい……」ポロポロ みさき「理沙ちゃん……」 カン
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