あずさ「流離」 (18)


石畳の上を、こつ、こつと靴音を鳴らしながら歩く。
鈍色をした石畳の上に、所々赤や黄色い箇所。

イチョウやカエデの落ち葉ね。

道の両脇に、沢山の木々が並び立っている。
並木道の中はとても静か。

「ここは、どこなのかしら?」


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とても綺麗で穏やかな景色と空間だけれども、今、自分が立っているこの場所が判然としない。
なんとなれば車の音も聞こえない、右も左も分からないまま歩みを進めると、所々にしか無かったイチョウやカエデの落ち葉が、並木道を覆っている。
もしかしたらここは夢の中なのではないか。
そう思ったけれど、黄色や赤の絨毯を踏みしめる感覚が、夢でないことの証明だった。

暖色に包まれた空間を一人歩き続け、並木道を抜けると、一軒の旅館が。
誘われるように中に入り、まるで当然であるかのようにその旅館の温泉に浸かる。


露天風呂から外を眺めると、さっきまで黄色と赤だった景色は一変して、そこから見える景色は白銀の世界。
遠くに見える峰々は、雪化粧を施され、陽の光を浴びながらキラキラと輝いている。

そうしてしばらく景色を眺めて、冷たい外気と温かいお湯を楽しんだ後、旅館を後にした。

数歩進んでから振り返ると、旅館は影も形も見えない。
不思議に思いながらも、あてど無く歩を進める。
相変わらず、ここがどこなのかは分からない。


さっきまで気持ちの良い天気だったのが嘘のように、今は雪がチラついている。
いつの間にか着ていたコートの襟を立て、次第に強くなっていく雪の中、寒さに身を強張らせて歩く。
視界が雪で白く塗りつぶされたかと思ったら、次の瞬間には綺麗な青空に変わっていた。

雪を被った木の、枝に転々と桃色の花が付いている。

梅の花だった。

雪の中でも力強く、そして美しく花を開かせていた。
木を眺めながら歩くと、次第に雪はなくなり、代わりに梅よりも太い幹の木々が立ち並ぶ景色に変わる。

瞬間、少し強めの風が吹いた。
薄いピンクの花弁が、風に吹かれ、ヒラヒラと舞い始めた。

桜の花だ。


風に弄ばれるように花弁が宙に舞う。
その様に見とれながら、それでも足は自然と進んでいく。
どちらが前か後ろかも分からないのに。

桜吹雪を抜けた時、目の前には海が広がっていた。
雲一つない空に、燦々と太陽が辺りを照りつけている。


いつの間にか薄着になっていた私は、靴を脱ぎ、素足になって、波打ち際を、ぱちゃぱちゃと水音を聞きながら歩いた。
歩いていると、次第に空はオレンジ色に変わり、太陽は海へ沈んでいこうとしていた。
オレンジに染まる海、そこから空に向かうに連れて藍に染まり、天頂付近では濃紺に包まれている。
ぽつぽつと星も見え始めていた。

陽が沈みきると、満天の星空。
あれは、南十字星かしら?


すっかり暗くなった頃には、砂浜は終わり、気づけば街を見下ろす高台を歩いていた。

自然の灯りから、人口の灯りへ。

高台に設置された柵に手を置いて、そこで立ち止まった。
ふと、誰かに呼ばれた気がして、その場で背後へ振り返る。

「――――迎えに来てくれるって、信じてました……っ」

そう投げかけた相手に、私は微笑むのだった。






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監督「はい、カーーーット!!」

あずさ「ふぅ……」

監督「あずさちゃん、良かったよ、いや良い画が撮れた!」

P「お疲れ様です!」

監督「おぉ、Pくん! いや~、こりゃ良いCMになるぞ~」

P「ありがとうございます!」


あずさ「お疲れ様です~」

P「あずささん、お疲れ様です」

あずさ「プロデューサーさん、お疲れ様です」

監督「お疲れさん、あずさちゃん!」

あずさ「お疲れ様です~、監督さん」

監督「いやホント良い画が撮れたよ! あずさちゃん様様!」

あずさ「いえ、そんな……」


監督「最後のセリフなんて、誰かに向けて言ってるみたいなリアリティがあったよ!」

あずさ「そ、それは……その……」

監督「わっはっは! それじゃあチェックしてくるから、休んでていいよ!」

あずさ「あ、お、お疲れ様です!」

P「良かったですよ、あずささん」

あずさ「そ、そうでしょうか?」


P「えぇ。最後のセリフなんて、思わずドキッとしちゃいましたよ」

あずさ「本当ですか?」

P「勿論!」

あずさ「そうですか……」

P「色んな景色を背景に立つあずささんが見られて、楽しかったですよ」

あずさ「私も、色々な場所でロケができて楽しかったです」


P「あずささんの迷子癖が、こんな形で仕事に繋がって良かったですよ」

あずさ「も、もぅ! プロデューサーさん!」

P「ははは、冗談ですよ。まぁでもJ◯の駅にも広告が出ますから、かなりの反響が期待できそうですね!」

あずさ「あの……プロデューサーさん」

P「どうしました?」

あずさ「……もしも私が、遠くへ迷子になっても……その……い、いえ、なんでもありまs」

P「迎えに行きますよ、どこにいても」

あずさ「えっ?」


P「だって俺は、あずささんのプロデューサーですから。どこに行っても、必ず探し出しますよ」

あずさ「プロデューサーさん……!」

P「はは、ちょっと、クサかったですかね?」

あずさ「ふふっ、そうですね」

P「ちょ、あずささぁん!」

あずさ「うふふ、ちゃ~んと見つけてくださいね? 約束ですよ?」


おわり

終わりです。

よくわからない。

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