悟空「聖杯戦争? なんだそりゃ」 (813)

界王「こことは違う世界の地球で行われている魔術師たちの戦争のことでな。まさか世界を越えて悟空の手に令呪が宿るとはのう」

悟空「よくわかんねえけど強えやつと闘えるってことか?」

界王「闘えんことはないが、聖杯戦争の基本はサーヴァントと呼ばれる英霊を呼び出して代わりに闘ってもらうんじゃ。マスター、つまり令呪を宿す者はサポート役じゃよ」

悟空「メンドくせえことやってんだなぁ。どうして自分たちで闘わねえんだ?」

界王「七人のサーヴァントの命と引き換えにどんな願いも叶うとされているからじゃ。まあドラゴンボールみたいな物かのう。実際は違うんじゃが……」

界王「とにかくお前に分かりやすく説明すると神龍を呼び出すときに魔人ブウが出てくるような危険な代物でな。聖杯戦争に参加して世界を救ってこい」

悟空「魔人ブウかー。へへっ、ワクワクしてきたぞ」


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続きは書ければ夜中から明け方に書きます

ケータイでかくかもしれません

教会

ギイイイイイ

悟空「オッス、神父さんいねえかー?」

言峰「私がそうだが、何か用ですかな?」

悟空「令呪っちゅーのが手に現れたけど、サーヴァントの呼び方がわからねえから聞きにきた」

言峰「ほう、では聖杯戦争については多少なりとも知っているのか? 見たところ魔術師には見えないが」

悟空「おう、大体は界王様に聞いたぞ。召喚のやり方だけ教えてくれれば大丈夫だ」

言峰「そうか、召喚には魔法陣が必要でな。それは私が用意してやろう」

悟空「良いのか! おめえ良いやつだなぁ」

言峰「良いやつ……か。では早速準備をしてこよう。ここで寛いでいると良い」

言峰「よし、ではやってみるといい。詠唱は先ほど教えた通りにやれば問題ない」

悟空「よし、始めっぞ。え〜っと、降り立つ風には壁を。 し、しほーの門はとじ……王冠よりいで……なんだっけ。王国に至るみ、み、 ああもう、わかんねえ! とにかくオラにぴったりのサーヴァントよ、出てこい!!」

言峰「詠唱を中途半端にしては強い英霊は選ばれにくくなるぞ。まあもとより聖遺物もなにもない状態、これもまた当然の結果か」

魔法陣が光輝く。

???「問おう。貴様が俺様のマスーーって悟空さん!?」

悟空「よっ、サタンじゃねえか。ん? おめえ若くなったな」

サタン「一応英霊ですからね、一番強い時の姿になっているんでしょう」

言峰「サタンだと!? バカな。聖書にはこの世の支配者として書かれていたがやはり実在したというのか。それに、お前たちは知り合いなのか?」

悟空「まあな。とにかく召喚できて助かったぞ。いつか必ず礼はするからよ」

言峰「気にするな。これも監督役の役目だ」

悟空「へへっ、じゃあな!」

ギイイイイイイイ

言峰「あいつらは一体……」

悟空「ここなら人が寄り付かなさそうだし大丈夫だな。ブルマから家のホイホイカプセルもらってきてんだ」

ホイホイ

サタン「ここは嫌な気配を感じますね。多分前回の聖杯戦争が行われた場所かもしれません……」

悟空「まあ寝るだけなら変わらねえさ。それよりサタン、これからどうする。オラは誰も死なせねえで終わらせてんだけどよ」

サタン「そうですね。知名度のおかげか生前よりパワーアップしている気がします。これならその条件でも行ける気がしますよ」

悟空「そうなんか? よし、んじゃオラといっちょ手合わせしてみっか!」

サタン「ご、悟空さんには敵いませんよ。とにかく他のサーヴァントを見つけてすべて俺の配下に加えましょう」

言峰「おかしい。これで全てのサーヴァントが揃ったはずだが、あのクラス不明のサタンを含めるとサーヴァントが八人になってしまう」

ギルガメッシュ「八人のサーヴァントか。ふん、雑種の分際で増えるとは実におぞましいな」

言峰「此度の聖杯戦争、油断していては倒されるかもしれんぞ、ギルガメッシュ」

ギルガメッシュ「この英雄王に向かってその言い草、不敬であるぞ」

言峰「すまんな。心臓の止まっている身でありながら、どうにも胸騒ぎがしてな」

ギルガメッシュ「ハッ、これはまたおかしなことを。お前がそこまで言うサタンとやら、俺の退屈しのぎになれば良いがな」

サタン「悟空さん、サーヴァント同士の戦闘の気配を感じます。見に行きますか?」

悟空「うーん、気が小さすぎてわかんねえな。とにかく行ってみっか!」

ビューン シュタッ

サタン「あれはおそらくセイバーとバーサーカーですね。」

悟空「おい! あの青い服のやつのマスター死にかけてるぞ。サタン、バーサーカーの相手を頼む」

悟空「おい、大丈夫か? これ食え」

士郎「ーーーーこふっ」

士郎(正義の……味方……?)

死ぬ間際の幻覚だろうか。少年は自分がなりたかったものの体現者を、見たような気がした。

イリヤ「ーーなんで? ……こんなの……つまんない」

サタン「マスターを殺そうとしてるから酷いやつかと思ったが……。安心しな、ホムンクルスのお嬢ちゃん。あのガキは助かるし、お嬢ちゃんもこのミスターサタン様が救ってやる。ガハハハハハ」

イリヤ「新手のサーヴァントね……。どうしてホムンクルスと見抜いたかは知らないけど、お前に何がわかるというの」

サタン「なぜなら俺様は全てを救う救世の英雄ミスターサタン。救う必要がある人間を見ればその理由、原因までわかるんだよ。それこそがこのミスターサタン様の宝具だ」

ーー救えるわけないじゃない

イリヤ「やっちゃえバーサーカー!」

サタン「ぐ、ぐおおおおお!! 腹が!」

腹を抱えながら地面を転がるサーヴァント。

イリヤ「?」

サタン「くそっ、お、おい、今回の勝負はお預けだ。次までに腹痛を治しておく」

イリヤ「……まあいいわ。ーーリン。次に会ったら殺すから」

雪のように白い少女は去っていった。




翌日

凛「おはよう。勝手に上がらせてもらってるわ、衛宮くん」

悟空「オッス! 目が覚めたみてえだな」

衛宮「な、なんで遠坂がここに!? それとその隣にいる人は誰だ」

凛「待った。そのまえに昨夜の一件について謝ってくれない?」

衛宮「昨夜の……一件……?」

ーー待て。思い出した。バーサーカーに腹を斬り捨てられたはずだ。

衛宮「ーーへんだ。なんだって生きてるんだ、俺」

凛「思い出したようね。昨夜自分がどんなバカをしでかしたかって。少しは反省しなさい」

士郎「でもあの時はあれ以外にすることなんてなかっただろ!」

凛「マスターが死んだらサーヴァントは消える。それって本末転倒よ? 衛宮くん」

士郎「……次からは気をつける。それで、俺の傷は誰が」

凛「そこにいる悟空さんが治してくれたのよ。士郎にヘンな豆を食べさせたと思ったら、一瞬で傷が塞がったのよ。あれは魔法の域だわ」


士郎「まずは礼を言わせてくれ。えっと、悟空さんで良いのか?」

悟空「ああ、オラは孫悟空だ。にしてもおめえすげえ回復力みてえだな。多分仙豆食わなくても治ってたぞ」

士郎「いやいや、絶対ない。あんな怪我、回復力で治る次元じゃない」

凛「ところで衛宮くんと悟空さんはこれからどうするつもりかしら」

士郎「ーー正直、判らない。魔術師同士の戦いなんてしたことがないし。それに聖杯なんていう得体の知らないモノに興味はないんだ」

凛「はあ。貴方ね、そんなこと言ったらサーヴァントに殺されるわよ」

士郎「な……殺されるって、どうして!?」

凛「サーヴァントの目的も聖杯だから。彼らは聖杯を手に入れる、という条件だからこそマスターの召喚に応じているのよ」

悟空「あれ、そうなんか? なんかオラの聞いてた話と違うな」

凛「ん? 詳しく聞かせてもらえるかしら」

悟空「オラが聞いた話では聖杯戦争っちゅうのは七人のサーヴァントの命を生贄に願いを叶える儀式って言ってたぞ」

凛「七人? つまり自分のサーヴァントも含めて生贄にしないといけないって事……? ーー今回は八人いるけど」

士郎「八人? サーヴァントは七人じゃないのか」

凛「普通はそうね。もう七人のサーヴァントは出揃っているし、悟空さんのサーヴァントが完全にイレギュラーなのよ。サーヴァント本人が自分のクラスがわからないって言ってるみたいだし」



士郎「サーヴァント本人が? そんなことありえるのか」

凛「……まあ自分の正体が思い出せないサーヴァントもごく稀にいるみたいだし、ありえないことはないわね。それより私からすればサーヴァントが八人いる方がよっぽどありえないわ」

凛「とにかく話を戻しましょうか。人殺しはしないっていう衛宮くんは、他のマスターが何をしようが傍観するんでしたっけ?」

士郎「そうなったら止めるだけだ。サーヴァントさえ倒せば、マスターだって大人しくなるんだろう」

凛「呆れた。自分からマスターは倒さない、けど他のマスターが悪事を働いたら倒すっていうんだ」

士郎「都合がいいのは分かってる。けど、それ以外の方針は考え付かない」

凛「問題点が一つあるけど。昨日のマスターを覚えてる? あの子、必ず私たちを殺しにくる。それは衛宮くんにもわかってると思うけど、あの子のサーヴァントは桁違いよ。自分から仕掛けずに攻めてきた時だけやり返してるようじゃ手遅れよ」

士郎「……たしかに。今度襲われたら、きっと次はないと思う」

凛「わかった? 何もしないで聖杯戦争の終わりを待つ、なんて選択肢はないってコトが」

サタン「ワハハハハ、その心配は無用だ。この英雄王、ミスターサタン様があの少女を救うからな」

いきなり現れたサーヴァントは不躾にそんなことを言った。

士郎「こいつが悟空さんのサーヴァント」

凛「改めて見るとライダー以外には適性がなさそうだけど……。ねえ貴方、本当に自分が何のクラスかわからないの?」

ピクッ

サタン「生意気な小娘め。生前、わたしを英雄たらしめたのはこの拳のみ。この偉大なる功績を前に拳闘士のクラスでも新たにできたのだろう。ワハハハハハ」

凛「拳闘士ねぇ。悟空さんは何を求めて聖杯戦争を戦うのか、聞かせてもらっても良いかしら?」

悟空「オラか? おめえらには悪いけどよ、オラは聖杯を破壊しにきたんだ」

凛「聖杯を破壊!? そういえば前回の聖杯戦争の最後もそうなったと聞いているけど、どうして破壊を。あれは万能の願望機なのよ」

悟空「別に願いを叶えるだけなら良いんだけどな。アンリ・マユっていう悪いやつが潜んでるみてえだからな」

凛「アンリマユ? この世全ての悪を担うと言われるあれが聖杯の中身だと言う気?」

悟空「オラはそう聞いた。別に聖杯が悪いやつじゃなかったらおめえらに譲ってやるさ。おめえらなら悪いことには使わねえだろうしな」

凛「ふうん。ねえ、ミスターサタン。貴方は聖杯を壊すことに異論はないわけ?」

サタン「当然だ。そんなモノが聖杯なら壊さんとな」

ーーハハッ、こいつら、まるで……

士郎「悟空さん、俺も協力するよ!」

ーー正義の味方みたいだ。

凛「とにかく、当面はこの三人で同盟を組むということで良いかしら」

悟空・士郎「ああ」

カランカラン

バッ

セイバー「シロウ!!」

士郎「結果に反応が! 敵だ!」

ランサー「よう。サタンってのはいるか?」

凛「マスターが三人もいるのに飛び込んでくるなんて馬鹿ね。三体のサーヴァントを相手に勝てるとでも?」

ランサー「俺はランサーだぞ? 別に逃げ帰るだけなら無傷でできよう。わざわざ来たんだ、騎士として正々堂々サタンとやらに挑みてえんだがな」

悟空「サタン、相手してやったらどうだ……ってあれ?」

士郎「あ、サタンならさっきトイレにいくって」

凛「サーヴァントがトイレにいくか!」

悟空「しょうがねえなぁ。よし、そこの青いの。オラが相手してやる」

衛宮家・庭

凛「ねえ悟空さん、やめた方がいいわ。人間ではサーヴァントには勝てない」

悟空「へへっ。それを聞いたらもっとワクワクしてきたぞ。さあ来いランサー! 遠慮はいらねえぞ」

セイバー「無茶だ!」

ランサー「良いねえ。マスター自ら相手をしてくれるとはな。お前みたいなやつ嫌いじゃないぜ。……では行くぞ。我が槍撃防ぎきってみろ!」ビュッ

ヒュンヒュンヒュン

凛「嘘。躱してる……!?」

悟空「なかなか良い槍さばきだな! けどそれじゃあオラにはあたんねえぞ」

セイバー「あのマスターは一体」

士郎「ーーだ」

士郎「ーーあれは、正義の味方そのものだ、セイバー」

ランサー「クソッ、当たらねえ!」

悟空「今度はこっちから行くぞ!」

シュッ

ランサー「ガハァッ!」

悟空の放った軽いパンチで、ランサーは血反吐を吐きながら何メートルも飛ばされた。

ランサー「グッ…おもしれえ! この俺に傷を負わすとはな!」

ランサー「様子見程度だったが気が変わった。まさか人間のマスターに我が宝具を使うことになろうとはな」

セイバー「いけない! ゴクウ、ランサーの間合いから離れて!」

悟空「やっと本気になったか……。こい!」

ランサー「刺し穿つ死棘の槍《ゲイ・ボルグ》!!」

悟空「遅えぞ! ーーあり? 」

悟空はこの時異変に気付いた。躱しても躱してもありえない方向から角度から不自然なまでに心臓を狙う一撃に。

ランサー「クククッ。お前異常だぜ!だが躱し続けるだけ無駄だ。我が必殺のゲイボルグの真名を聞いた時点で、お前の未来は決まったんだよ」

悟空「当たるまで追ってくるってやつか。しょうがねえ。おめえのお気に入りの武器みてえだから壊したくなかったんだけどよ……」

悟空「ハッ!」

一瞬、魔力に似た強大な力を感じたランサー。次の瞬間、ゲイボルグは塵も残さずかき消えた。

ランサー「貴様……何をしやがった! 我が必殺の、ゲイボルグが……」

悟空「わりいな。気で消滅させてもらった」

ランサー「気、だと? そんなもので我が魔槍を……」

悟空「……まだやるか?」

ランサー「いや、オレの負けだ。さっきのを防がれたのならどうしようもねえ。……上には上がいるもんだな」

ランサー「ーー殺せ。お前にやられるなら武人としちゃあ最高の名誉だ」

悟空「……断る。また闘おうぜランサー! オラすっげー楽しかったぞ」

ランサー「クククッ、ハーッハッハッハッ! 良いだろう。俺にやられるまで死ぬんじゃねえぞ、悟空」シュタッ

凛「はあ、サーヴァントは倒せる時に倒しておくのが鉄則だっていうのに……。あんな闘い見せられちゃ文句も言えないじゃない」

セイバー「ゴクウ、見事な闘いでした。まさかランサーの槍を完全に防ぎきるとは」

サタン「ふぅ、スッキリしたぜ! さあ来いランサー!! このミスターサタン様が相手だ」

悟空「サタン、おめえまた隠れてやがったな」

サタン「ご、悟空さん。本当に腹が痛かったんですよ!」

士郎「……本当は悟空さんがサーヴァントでサタンがマスターなんじゃないか?」

凛「そうだったらまだ納得できるんだけどね……」

協会

言峰「帰ってきたようだなランサー。サタンについて報告しろ」

ランサー「サタンとは闘ってねえ。代わりにサタンのマスターと戦闘になった」

言峰「何ッ。マスターを殺したのか?」

ランサー「遊んでやろうかと思ったが、逆に遊ばれちまった。サタンなんて心配いらねえが、あのマスターはちと厄介だぜ」

言峰「つまり、サーヴァントであるお前がサタンのマスターに軽くあしらわれたということか?」

ランサー「軽く、なんてもんじゃねえなありゃ。文字通りバケモンだ。俺の宝具も消滅してしまった」

言峰「バカな。人間にサーヴァントの宝具が壊せるものか」

ランサー「気、とか言ってたぜ。何となく理屈はわかったし、そのうち見せてやるよ」

戦闘後、遅めの昼食

悟空「ハグッハグッ。士郎、おめえ料理うめえな!」

士郎「どんだけ食うんだよ……。セイバーも張り合わなくていい」

セイバー「いずれは敵となるマスターに遅れをとるわけにはいきません!」ガツガツ

……

悟空「ふぅー。食った食った。士郎、どっか修行できそうなとこねえか?」

士郎「うちには一応道場があるけど……。使うか?」

悟空「頼む。そうだ、おめえも一緒に修行しねえか!」

士郎「良いのか?」

悟空「もちろんさ。セイバーもどうだ?」

セイバー「いいでしょう。貴方とは一度手合わせしてみたかった」

道場

セイバー「ゴクウは剣は使えるのですか?」

悟空「ん〜あんまり使ったことはねえな。どっちかっつーと棒の方が得意だ。まあ拳で闘うのが一番楽なんだけどな」

セイバー「なるほど、棒術ですか。ゴクウ、私は模擬刀で貴方は棒を使い、試合をしませんか?」

悟空「良いけど、棒はあるか?」

セイバー「ありますか、シロウ?」

シロウ「いや、ないけど。外で拾ってきて強化でもかけるか?」

悟空「いいや。オラも模擬刀でやらせてくれ」

セイバー「よろしいのですか?」

悟空「ああ、別に剣もまったくの素人ってわけじゃねえ。殺しあうわけでもねえし十分さ」

ーー二時間後

セイバー「ゴクウ、もう一度です! 」

シロウ「……セイバー、いい加減諦めたらどうだ?」

セイバー「大丈夫です。次は勝ちます!」

セイバー(剣の型はでたらめなのに、ありえない速度で的確に隙を突いてくる……)

セイバー「たあっ!」

悟空「よっと」

セイバー「セイバーのクラスのサーヴァントである私が本気を出していないとはいえ、一太刀も浴びせられないなんて……」

士郎「なあ悟空さん、一度だけ負けてあげてくれないか? このままじゃ俺の修行なんて一生回ってこない」ヒソヒソ

悟空「でもワザと負けたらセイバー怒んねえか?」ヒソヒソ

士郎「あんたぐらい強けりゃ上手く負けられるだろ?」ヒソヒソ

悟空「……わかった。やってみるぞ」ヒソヒソ

……

悟空「こい、セイバー!」

セイバー「でやあ!!」

バシン!

悟空「くそっ、油断しちまったか!」

セイバー「ふふっ、私の勝ちみたいですね」

悟空「よーし、もう一度だセイバー!」

セイバー「いえ、今日はシロウの鍛錬もありますから、このぐらいにしておきましょう」

悟空「よし、じゃあ士郎の修行を始めっか! おめえ、気はどのくらい使えんだ?


士郎「気? 魔力の循環なら多少はできる」

悟空「魔力? いっぺんみせてくれ」

士郎「ああ。ーー同調、開始」

悟空「……」

士郎「……どうだ?」

悟空「ん〜。なんとなく気に似てるけどなんか無駄が多い気がすんなー」

士郎「……そうか。俺は魔術師としては半人前がいいとこだし、そう見えたのかもしれないな」

悟空「じゃあまずは士郎に気を教えるとこから始めるか!」

士郎「そもそも気が何なのかわからないんだが」

悟空「気ってのは……そうだなぁ。見た方が早えか。ハッ!」

悟空は気弾を浮かべ、自由自在に動かした。

士郎「凄いな! これが気か」

悟空「まあこんなのは使い方の一つだ。慣れればこんなこともできるぞ」

士郎「なッ、……空中に浮かんでる !?」

悟空「ああ、舞空術っていうんだけどよ。気を使った応用技みてえなもんさ」

セイバー「人が空を飛ぶなんて……! ゴクウ、私にも教えてもらえないだろうか」

悟空「いいぞ。でも二人とも、とにかく基礎からだな!」

悟空と同じオレンジ色の胴着姿の士郎とか似合うと思う
士郎だと「正義」

>>76
悪いageたまま送信ミスった…
士郎だと「正義」って背中に書かれてたり

ーー二時間後

士郎「はあ、結局一発も気弾を出せなかった……」

セイバー「シロウ、気に病むことはありません。私でも一度出すのが精一杯だったのですから」

悟空「まあそう心配すんな。オラも初めてかめはめ波を撃った時は車を壊すぐれえの威力しかなかったしな」

士郎「いや、それは十分ヤバイと思うぞ」

セイバー「かめはめは……? とはなんですかゴクウ」

悟空「……オラの必殺技みてえなもんだな。亀仙人のじっちゃんが言うには使えるようになるまで五十年かかるとか言ってたっけなー」

士郎「五十年……。聖杯戦争には間に合いそうにないな」

悟空「初日で気の流れを感じただけでも上等さ。安心しろ! オラの周りで本当に五十年かかったやつはいねえからよ!」

同時刻

アーチャー「凜、あいつは危険だ。今のうちに対処したほうがいい」

凜「あいつって悟空さんのこと? ランサーと生身でやり合うやつに手を出したって無駄よ」

アーチャー「しかし……」

凜「根拠はあるの?」

アーチャー「展開が多少変化するとしても、あんなやつがいれば私が知らないはずがないんだが……」ブツブツ

凜「アーチャー、あんた何か思い出したの?」

アーチャー「まだ完全ではないがな。それゆえの勘違いかもしれん」

凜「そう。まあ悟空さんは悪い人間ってわけじゃなさそうだし大丈夫でしょ。というかそう信じるしかないわ。あんたアレに勝てる?」

アーチャー「さあな。もしもの時は時間稼ぎくらいはしてやるさ」

同時刻、アインツベルンの城

サタン「よう、お嬢ちゃん」

イリヤ「一人で敵の本拠地に来るなんてバカね。すぐに殺してあげるわ」

バーサーカー「ーー■■■■■■■■」

サタン「お、おい。今日は闘いにきたんじゃないぞ。一つ質問だが、お嬢ちゃんは聖杯に何を望む?」

イリヤ「私に望みなんてないわ」

サタン「そうか。普通の人間として普通に生活したいとか思わないのか?」

イリヤ「……思わないわよ、ばーか」

イリヤ「おしゃべりならやめてさっさと消えなさい。次は殺すわ」

サタン「まったく最近のガキは物騒だな。お嬢ちゃん、本当に助けが必要な時は、このミスターサタン様に言うんだぞ。じゃあな」

サタンは一瞬だけバーサーカーすら反応し得ない速度でイリヤの頭をポンポンと叩いてから去っていった。

バーサーカー「……」

イリヤ「なんなのよあいつ……」

翌日

士郎「それじゃ行ってくる」

セイバー「待ってください士郎。私も行きます」

士郎「ダメだ。セイバーは霊体化出来ないんだから学校には入れられない」

セイバー「何を呑気なことを! 学校にサーヴァントが現れたらどうするのです」

士郎「大丈夫だ。もしもの時は令呪を使うよ。それにセイバーは俺のせいで魔力が少ないんだ。出来るだけ休んでいてくれ」

セイバー「……わかりました。ですが危なくなったらすぐに呼んでください」

悟空「そんなに心配なら、サタン、おめえちょっとついて行ってやってくれ」

サタン「わかりました。おまかせください」

セイバー「失礼ですがゴクウ。私はまだ貴方達を完全に信用したわけではない。私の目の届かないところでサタンを士郎につけるのはやめていただきたい」

悟空「孫悟空の名の下に、令呪をもってサタンに命じる、だっけか? 士郎を必ず守り通してやれ」

セイバー「なッ!? なにもそこまで……」

悟空「へへっ、これならどうだ?」

セイバー「……はぁ、信じましょう。いえ、先ほどの失言を許してほしい。この借りはいずれ必ず」

学校

サタン「……」

サタン「士郎、気付いたか?」

士郎「ああ、結界が張られてる」

サタン「この結界、発動すればかなり厄介だぞ」

士郎「とりあえず遠坂に相談してくる。サタン、結界を壊せるか」

サタン「ここまで準備されているなら無理だ。結界を張ってる奴をぶっ飛ばしたほうが早いぞ」

屋上

バタン

士郎「遠坂! こんなところにいたのか」

凜「あら、どうしたの衛宮くん?」

士郎「学校に結界が張られてる」

凜「知ってるわ。私が気付かないわけがないでしょう」

士郎「なら手を貸してくれ。発動する前に止めないと!」

凜「断っておくけどね、私とあなたは敵同士よ? サーヴァントを連れてきていない愚かなマスターが目の前にいるのを私が見逃すと思う?」

士郎「サーヴァントなら連れてるさ」

サタン「ガハハハハ、この英雄王ミスターサタンを忘れてもらっては困るぞ!」

凜「……いつ裏切られるかもわからない悟空さんのサーヴァントを連れてるなんて、正気の沙汰じゃないわね」

士郎「セイバーもそう言ってたよ。そしたら悟空さんがさ、令呪まで使って俺を守れって言ってくれたんだ」

凜「到底信じられないけど、どうやら悟空さんを完全に味方に付けたみたいね。……なによそれ、そんなの勝ち目ないじゃない」ムーッ

士郎「遠坂も手伝ってくれ! 三人で同盟を組めば結界だってきっと止められる」

凜「私にとってはありがたい申し出だけど、悟空さんの意見を聞かずに私を同盟に入れるのは良くないんじゃないの」

サタン「心配するな。悟空さんはそんなこと全然気にしないからな!」

凜「そう、なら同盟成立ってことで。聖杯がアンリマユでなければ、その時点で同盟は終わりって条件でいいかしら?」

士郎「ああ、それでいい」

凜「じゃあ早速結界の件だけど……、出来る限りの手はもう打ってあるわ。っていっても時間稼ぎが良いとこね。早いとこ術者を見つけないと手遅れになるわ」

士郎「やっぱり見つけるしかないか。何かいい方法はないか?」

凜「ないわね。ただ一つわかるのはこの結界を張ってるのはうちの生徒、もしくは先生だってこと。……ここらへんの魔術師なら知らないはずがないんだけどなぁ」

サタン「ちょっと待て。ここらへんの魔術師は凜以外にもいるのか?」

凜「私と……後はまあ衛宮君ぐらいね。一応もう一人知ってるんだけど、魔術回路も持ってないしまずありえないわ」

サタン「まあ手がかりもないんだ。そいつから調べた方がいいだろう」

士郎「で、そいつは誰なんだ? ……まさかこの学校こんなに魔術師がいるなんて」

凜「衛宮くんもよく知ってるはずよ。マキリ、いえーー間桐慎二って言えばわかるわよね」

士郎「なっ、慎二が……!?」

サタン「友達か?」

士郎「……ああ」

凜「間桐の家は魔術師としてはもう終わっているし、杞憂に終わるとは思うけど」

サタン「……嫌な予感がするな」

凜「ちょっとやめてよね。サーヴァントの直感は馬鹿にできないんだから。まあ私的にはあいつが黒幕の方が楽なんだけどね」

士郎「なんでさ」

凜「取るに足らない人物だからよ。あいつがマスターなら楽でいいわ」

士郎「遠坂って時々えげつないよな……」

夜、衛宮の家

セイバー「結局手がかりは掴めなかったということですか」

士郎「慎二も結局学校に来なかったし、これといった収穫はなかったな」

凜「衛宮くん。それって私が同盟に入ったことは収穫でもなんでもないってことかしら」ニコッ

士郎「ち、違う。そうだ、忘れてた。遠坂も協力してくれることになったんだ。悟空さん、別に構わないよな?」

悟空「ああ、むしろありがてえ。オラあんまり聖杯戦争のこととかわかってねえからよ」



凜「せっかく同盟を組んだことだし、みんなで見回りに行きましょうか」

士郎「見回り?」

凜「ええ、聖杯戦争の闘いは夜にするのが基本よ。夜に出歩けば他のマスターと出会う可能性は高いわ」

士郎「なるほど。でも三人もマスターが入れば逃げるか隠れるんじゃないか?」

凜「普通はそうでしょうね。でも同盟を見せつけるだけでも相手への牽制にもなるし、やっておいて損はないわ」

悟空「っし、じゃあ行くか! どっか怪しい場所はねえのか?」

凜「新都か……あと、確実なのは柳洞寺だけど、そこだと戦闘は避けられないわよ」

セイバー「柳洞寺ですか……。あそこはサーヴァントにとっては鬼門です。正面突破しかなくなりますが」

悟空「どうせ闘うんだし、そこで良いんじゃねえか?」

凜「じゃあ柳洞寺で決定ね。三十分後に行くわよ」

…あれ?>>29で同盟組んでなかったか?

そういやこの士郎達は「孫悟空」って名前聞いて中国の方を思い浮かばないのか?
そもそも西遊記が無い世界ってことで良いのかな

>>108 これは致命的なミスですね……

アドリブで書いていくものではありませんね……

とにかくなかったことにしなければ……!

>>96から差し替えを今から投下していきますので見なかったことにしてください……

屋上

バタン

士郎「遠坂! こんなところにいたのか」

凜「あら、どうしたの衛宮くん?」

士郎「学校に結界が張られてる」

凜「知ってるわ。私が気付かないわけがないでしょう」

士郎「なら手を貸してくれ。発動する前に止めないと!」

凜「もうやってるわよ。っていっても時間稼ぎが限度だけどね」

士郎「そうなのか。何か俺にも手伝えることはないか? 」

凜「ないわね。それより衛宮くん。いくら同盟を組んでいるからってサーヴァントを連れてこないのは頭がおかしいとしか思えないんだけど。今ここで私が裏切ったらどうするつもり?」

士郎「遠坂はそんなことしないだろ? それにサーヴァントなら連れてるさ」

サタン「ガハハハハ、この英雄王ミスターサタンを忘れてもらっては困るぞ!」

凜「……呆れた。いつ裏切られるかもわからない悟空さんのサーヴァントを連れてるなんて、正気の沙汰じゃないわね。……同盟考え直そうかしら」


士郎「セイバーもそう言ってたよ。そしたら悟空さんがさ、令呪まで使って俺を守れって言ってくれたんだ」

凜「令呪ですって!? はぁ、本当に組む相手を間違えたみたいね……。魔術の知識はからっきしだと思ってたけど、令呪の使い時もわからないなんて」

士郎「む、そういう遠坂は何に使ったんだよ」

凜「わ、私は良いのよ! いざって時の余力はちゃんと残してるんだから」

士郎「とにかく同盟はもう組まれてるんだ。キャンセルは受け付けないからな」

凜「……わかってるわよ。一応確認しておくけど、聖杯がアンリマユでなければその時点で同盟は終わりってことで良いわよね?」

士郎「ああ、異論はない」

凜「そ、じゃあ話を結界に戻すわね。時間稼ぎをしたとはいえ、明日以降いつ術式が発動してもおかしくない状況よ」

士郎「術者を見つけ出すしかないってことか……。何かいい方法はないのか?」

凜「ないわね。ただ一つわかるのはこの結界を張ってるのはうちの生徒、もしくは先生だってこと。……ここらへんの魔術師なら私が知らないはずがないんだけどね」

サタン「ちょっと待て。ここらへんの魔術師は凜以外にもいるのか?」

凜「私と……後はまあ衛宮君ぐらいね。一応もう一人知ってるんだけど、魔術回路も持ってないしまずありえないわ」

サタン「まあ手がかりもないんだ。そいつから調べた方がいいだろう」

士郎「で、そいつは誰なんだ? ……まさかこの学校こんなに魔術師がいるなんて」

凜「衛宮君もよく知ってるはずよ。マキリ、いえーー間桐慎二って言えばわかるわよね」

士郎「なっ、慎二が……!?」

サタン「友達か?」

士郎「……ああ」

凜「間桐の家は魔術師としてはもう終わっているし、杞憂に終わるとは思うけど」

サタン「……嫌な予感がするな」

凜「ちょっとやめてよね。サーヴァントの直感は馬鹿にできないんだから。まあ私的にはあいつが黒幕の方が楽なんだけどね」

士郎「なんでさ」

凜「取るに足らない人物だからよ。あいつがマスターなら楽でいいわ」

士郎「遠坂って時々えげつないよな……」

夜、衛宮の家

セイバー「結局手がかりは掴めなかったということですか」

士郎「慎二も結局学校に来なかったし、これといった収穫はなかったな」

凜「そうね。それより悟空さん。衛宮くんを守るために令呪を使ったって本当かしら?」ニコッ

悟空「だってセイバーがオラのこと疑ってたからよー。まあ後二つあるし大丈夫だ」

凜「大丈夫じゃないわよ! 令呪がなくなったらマスターじゃなくなるの。今後は自分の為だけに使いなさい。良いわね」

悟空「ちぇっ」

凜(まっ、ここまでのお人好しなら信頼してもよさそうね)

凜「せっかく三人集まったことだし、みんなで見回りに行きましょうか」

士郎「見回り?」

凜「ええ、聖杯戦争の闘いは夜にするのが基本よ。夜に出歩けば他のマスターと出会う可能性は高いわ」

士郎「なるほど。でも三人もマスターが入れば逃げるか隠れるんじゃないか?」

凜「普通はそうでしょうね。でも同盟を見せつけるだけでも相手への牽制にもなるし、やっておいて損はないわ」

悟空「っし、じゃあ行くか! どっか怪しい場所はねえのか?」

凜「新都か……あと、確実なのは柳洞寺だけど、そこだと戦闘は避けられないわよ」

セイバー「柳洞寺ですか……。あそこはサーヴァントにとっては鬼門です。正面突破しかなくなりますが」

悟空「どうせ闘うんだし、そこで良いんじゃねえか?」

凜「じゃあ柳洞寺で決定ね。三十分後に行くわよ」

柳洞寺

凜「……すんなりこれたわね」

士郎「静かすぎるな。人の気配もしない」

セイバー「気をつけて。嫌な予感がします」

アーチャー「寺の中が怪しいと思うが」

悟空「ああ、中に誰か隠れてるな。それと死にかけてるやつもいるみてえだ! 急がねえとやべえぞ」

アーチャー(サーヴァントより優れた気配察知能力……。人の身でありえるものか? それよりはここを縄張りにしているのがあいつで、俺たちを寺の中に誘い出そうとしていると考える方が自然ではないか?)

アーチャー(しかしここにきたのは偶然だ。あいつから話を振ったわけでもない。……ふむ、少し考えすぎたか。とにかく、敵であれば倒せば良い。いついかなる場合でも殺れる準備だけはしておくか)

アーチャー「悟空、先頭を頼めるか? 殿は私が務めよう。なに、腐ってもアーチャーだからな。後方支援ならお手の物だ」

悟空「ああ、わかった。いくぞ!」

>>109 士郎たちも西遊記は知っていますが、悟空は英霊ではないのでそこを疑うことはないって感じですね

修正で進まなかったけど今日はここまでにします……

柳洞寺・内部

士郎「葛木先生!?」

セイバー「隣に倒れているのはキャスターですね」

凜「葛木先生がマスターだったなんて……」

士郎「とにかく治療しないと!」

悟空「士郎! 動くな!」

カキン!

アサシン「キキキキキキキキキ」

セイバー「アサシンか!!」

アサシン「キキ!」ダッ

凜「逃げるわ!」

ヒュッ

凜が追いかけるよりも先に、離脱しようとしたアサシンの右肩に矢が突き刺さった。

アーチャー「まさか本気で逃げられると
思ったんじゃないだろうな」

アサシン「キキキキキキキキキ!」ダッ

矢などお構いなしに、尚もアサシンは逃げ続けた。

アーチャー「チッ」

セイバー「士郎、追いますか?」

士郎「いや、先生達の治療が先だ」

アーチャー「無駄だな。……この男はもう助からんよ」

凜「ねえ悟空さん。あの時士郎に食べさせた豆なら治せるんじゃないの?」

悟空「ん〜でもこいつら怪我してねえしなぁ。仙豆は傷しか治せねえんだ」

凜「……エセ神父に頼るしかないか。教会へ運びましょう。可能性は低いけど、助かるかもしれないわ」

悟空「教会ってあの言峰って神父がいるとこか?」

凜「そうよ、マスターなら一度は行っているはずね」

悟空「あいつの気……あった。よし、オラが連れてってやる」

サタン「俺も行きましょう」

そう言ってキャスターを抱き抱えるサタン。

サタン(メディア……か。なんて可哀想な女だ……)

サタン「ぐおおおお!!」

悟空「ん? 何泣いてんだサタン」

サタン「……目にゴミが入ってしまったようです。行きましょう」

悟空「そんじゃ、ちょっと行ってくるぞ」ピシュン

セイバー「……消えた!?」

アーチャー「私の目でも移動を捉えられなかった」

凜「瞬間移動ってこと……? ああ、もう何よあの筋肉ダルマ! 魔術の魔の字も知らないくせに、魔法使いみたいなことばっかりして」

士郎「良かった。あんなに速いんだ。きっと間に合うよな」

凜「そうね、私たちも教会に急ぎましょう」

柳洞寺

ガサガサガサガサ

士郎「虫?」

凜「これは……」

虫に目が行ったその直後、暗闇の中からスッと一人の老人が現れた。

臓硯「カカカ。お主らのせいで計画が台無しじゃわい」

凜「間桐臓硯……!」

臓硯「遠坂家の現当主に名前を覚えられているとは光栄じゃな。ほれ、お前も挨拶をせんか」

アサシン「キキ」

凜「ふーん、そういうことだったのね。でもわざわざ顔を見せるなんて、勝負を諦めたのかしら」

臓硯「当然じゃとも。あのような化け物を見せつけられて、まだ戦う意思があるならとっくに死んでおるて。ワシは此度の聖杯戦争からは手を引くつもりじゃ」

セイバー「それを信じろと? アサシンを私たちに消しかけた貴様が何を抜け抜けと」

士郎「よせ、セイバー。おい、本当に聖杯戦争から降りるんだな?」

臓硯「うむ。二言はない。信じられぬというなら殺すが良い。一度は主らを襲った身、甘んじて受け入れようとも」

士郎「……よし、わかった。今回だけは見逃す。ただし、嘘だったら次は容赦はしない」

臓硯「感謝するぞ衛宮の小倅。ではワシは去らせてもらうとしよう……」

間桐臓硯は去ろうとして、その動きを停止した。

湿っていた空気が一瞬にして凍りつく。
何か、良くないものが近くにいる。
だから逃げなくてはいけない。
それと関わってはいけない。

寺から階段へと続く出口に視線を向ける。

ーーそこに。その影は立っていた。

それは、見たこともない何かだった。

知性もなく理性もなく、おそらく生物でさえ有り得まい。

臓硯「ーーあり得ぬ、あり得ぬ、あり得ぬわ!!」

悲鳴を上げながら、間桐臓硯は離脱していった。

黒い影はゆらりと、獲物を見つけた蛇のようにその切っ先を遠坂に向けた。

士郎「遠坂、危ないっ……!!!」

夢中で、遠坂を弾き飛ばしていた。

凜「衛宮くん!!」

ーー悟空さんならどうしただろうな……。

衛宮士郎の意識は闇へと落ちていった


凜「……みやくん、衛宮くん……!」

士郎「あ……、つ」

凜「目が覚めた!? 大丈夫、私がわかる……!?」

ぱんぱん、と頬を叩かれる感覚。

士郎「……わかる。こんな時に人を平手打ちすんのは、間違いなく遠坂だ」

凜「ーーよかった。減らず口を言えるなら大丈夫ね」

士郎「……遠坂。あのヘンなのはどうした」

凜「消えたわ。衛宮くんが影の上に立って、倒れたと思ったらもういなかった」

士郎「……そうか。けど俺、随分と長く、ヘンなのに絡まってた気がするんだけど」

凜「……ほんと? あなたが私を突き飛ばしてから十秒も経ってないわよ」

セイバー「シロウ、あなたはまた無茶をして……!」

アーチャー「助かったか。まあ本体に触れたわけでもなし、実態のあるモノなら瘧を移された程度だろう」



セイバー「……アーチャー。貴方は、今の影が何者か知っているのですか」

アーチャー「ーーさてな。だが、私怨を優先できる状況ではなくなったようだ。そうだろう、衛宮士郎」

士郎「……え?」

アーチャー「アレがなんであるかは、お前の直感が正しい。……ふん。サーヴァントとして召喚されたというのに、結局はアレの相手をさせられるというワケだ」

セイバー「アーチャー……? 貴方は一体」

アーチャー「そうか。君はまだ守護者ではなかったな。ではあの手の類と対峙した事はなかろう。……まったく。何処にいようとやる事に変わりがないとはな」

遠坂を促し、赤い騎士は去っていく。

アーチャー「……いや、そう悲観したものではないか。ーーまだ事は起きていない。後始末に留まるか、その前にカタをつけるのか。今回は摘み取れる可能性が、まだ残されているのだから」

教会

言峰「ーーこれで大丈夫だろう。お前たちが視界にいきなり現れた時は肝を冷やしたぞ」

悟空「へへっ、悪いな。おめえには世話になってばっかだ」

言峰「なに、これも仕事の内だ。礼には及ばん。しかしこいつらが目覚めた時が厄介だ。こいつらは街中の人間から魔力を集めている奴らでな、いきなりサーヴァントをけしかけられては敵わん。起きるまでの見張りは任せたいのだが」

悟空「ああ、わかった。それくらい任せてくれ」

サタン「ガハハハハハ、白々しいな。自分のサーヴァントに身を守らせたらどうだ?」

言峰「……貴様。気付いていたのか」

サタン「当然だ。この英雄王ミスターサタンに見抜けぬものなどない」

悟空「おめえマスターだったんかー。まあ良っか! 怪我人連れてきたのはオラ達だし、こっちで見張るさ」

言峰「安心しろ。こちらもすぐに手を出すつもりはない。お前たちが帰るまでは戦闘行為をしないと誓おう。無論、そちらがやる気ならば話は別だが」

悟空「大丈夫だ。こっちも手はださねえ」

言峰「そうか。では私は失礼する。次に会う時は敵同士だな」

悟空「ハハッ、また怪我人連れてくるかもなぁ。そん時はまた治してくれよな」

言峰「ふん、お人好しめ」

神父は奥へと消えていった。

サタン「悟空さん。頼みがあるんですが……。こいつらの見張り、俺に任せちゃもらえませんか?」

悟空「別に構わねえけどよ、おめえ一人で大丈夫か?」

サタン「大丈夫ですよ! それより悟空さん、士郎の様子を見てきてやっちゃもらえませんか。さっきから何というか、令呪がざわついているんですよ」

悟空「わかった。おめえも気をつけろよ」ピシュン

二時間後

キャスター「……ここは」

サタン「よお、目が覚めたか」

キャスター「あなたは?」

サタン「俺様はミスターサタン。柳洞寺でお前とそのマスターが死にかけていたんでな。助けさせてもらったってわけだ 」

キャスター「そう、礼は言わせてもらうわ。でもバカな人。私はいずれあなたを殺すわ」

サタン「まあ待て。お前の今に至るまでの歴史、すべて覗き見させてもらった。相当に裏切られてきたようだな」

キャスター「知ったような口を。……あなたに何がわかる!」

サタン「わかる、なんて言えば気分が悪いだろうが少し同情してしまっただけだ。お前の願いはそこにいる男と一緒に居たいということ。つまりはこの世に肉体を持ち、共に暮らしていきたいというのがお前が聖杯に望むことだ」

キャスター「……ええ、そうよ。やっと出会えたの。宗一郎様とずっと暮らしていけるのなら、私は聖杯を必ず手に入れる」

サタン「お前の望み、俺様が叶えてやる。だからもう、聖杯戦争からは降りろ。あれは願いを叶える願望機なんかじゃないぞ」

キャスター「アハハハハハ、なんて都合のいい話。それを信じろと……?」

サタン「俺は裏切らんよ。信じられないと言うのなら、ここで殺せ」

キャスター「……そう。では死になさい!」

一瞬の詠唱の後、サタンへと魔弾が放たれた。


しかし、魔弾はサタンに当たる直前に消えた。

サタン(ひ、ひぃいいいいい……!! 死ぬかと思った……)

キャスター「眉ひとつ動かさないとは。……どうやら本気で言っているようね。はぁ、良いわ。あなたを信じましょう」

真実は、高速詠唱から繰り出された魔弾にサタンは反応すら出来なかっただけであるが、結果的にキャスターからの信用を得ることができた。

サタン「ふん。こ、この俺様を試すとはなかなか肝のすわった女だ」

キャスター「それで、どうやって私の望みを叶えてくれるのかしら」

サタン「ガハハハハハ、楽しみに待っておけ! この聖杯戦争が終わる頃には、お前の願いは叶っているさ。その代わり、それまで人を襲ったりするんじゃないぞ! 最低限の魔力供給なら黙認してやる」

そう告げて、ブサイクなアフロ頭は去っていった。

ーーふふ、ヘンなひと。

この世界にドラゴンボールはあるのか

一応悟空は原作終了時点
サタンは天寿を全うして英霊として呼ばれています

なので悟空が自分の地球に帰ったら当然生きたサタンもいます

>>147 士郎たちの世界にドラゴンボールはありません。(ないとはいってない)

衛宮家

ピシュン

セイバー「ーー!! ……ゴクウか。そのような登場の仕方はやめてもらいたい。危うく斬ってしまうところでした」

悟空「悪い悪い。サタンから士郎が危ないって聞いたからよ」

セイバー「……そうですか。敵の攻撃を受けましたが、命に別状はありません。今はご覧の通り眠っています」

悟空「そうか。おめえでも守りきれねえなんて、敵はどんな奴だったんだ?」

セイバー「あれは……死、そのものでした。あらゆるモノを吸収し、エネルギーに変えている化け物です。そして恐らく、サーヴァントである以上はアレに勝つことはできない……」

悟空「そんなに強えんか。一度相手してみてえな」

セイバー「サーヴァントでない貴方なら、敵に触れただけで精神に異常をきたします。気弾で攻撃をするにしても通じるかどうか……」

悟空「ま、会ってから考えるか!」

セイバー「あなたの能天気さが少し羨ましい。私には、次にあの影に遭遇したときに士郎を守り通せる自信がない……」

悟空「よし。だったら修行だ、セイバー。早速始めっぞ!」

セイバー「フッ、そうですね。今勝てないのなら強くなれば良い。貴方のその考え方、嫌いではありません」


道場

悟空「よし、やるか。セイバー、今日中に無理やり気を使えるようになってもらうぞ」

セイバー「今日中にですか。あれは一朝一夕で身につけられるものではないのでは?」

悟空「ああ、だからちょっと無茶な方法を使う。オラがおめえの身体の気を操って気弾を出したりするから、気の流れや使う時の感覚を無理やり覚えるんだ。かなり身体に負担もかかるし、良い方法じゃねえが……、おめえならすぐに感覚を掴めるはずだ」

セイバー「なるほど。多少無茶でも強くなれるのであれば構いません。やりましょう」

悟空「へへっ、おめえならそう言うと思ったぞ」

悟空はセイバーの背中に手を当てた。

悟空「いくぞ。しっかり集中してくれ」

セイバー「ぐっ」

セイバー(これは思ってた以上に体力を奪われる……。だが、気の感覚がハッキリと理解できる)

悟空「どうだ? これを何回も繰り返すぞ」

五時間後

悟空「今日はここまでにすっか!」

セイバー「……というか朝です。もう朝日が昇っています」

悟空「ハハッ、ちょっとやり過ぎたかもな。最後にオラに気弾をぶっ放してみろ」

セイバー「ゴクウにですか?」

悟空「ああ、全力で構わねえ。大丈夫、絶対に怪我はしねえからさ」

セイバー「……では、いきます。ハーッ!!」

セイバーの渾身の気弾を、悟空は片手で受け切った。

悟空「上等だ。おめえやっぱ才能あんな」

セイバー「……片手で受けとめておいてよく言う。だが、私にとって中距離の攻撃手段ができたのはありがたい」

悟空「まあ威力はもうちっと欲しいな。次は必殺技の修行だな! 」

セイバー「必殺技ですか。それこそ簡単に身に着くものでは……」

悟空「にしし、オラに任せとけ」

朝食

士郎「おはよう……って、もう朝食が出来てる」

桜「……先輩、おはようございます」

士郎「桜、来てたのか。ん、なんか元気ないな。体調でも悪いのか?」

桜「い、いえ……! 先輩こそ体調の方は大丈夫ですか?」

士郎「ああ、さてはセイバーに聞いたな。ちょっと風邪で寝込んだけど、一晩寝たら良くなったよ」

桜「そうですか。あまり無理はしないでくださいね」

悟空「おっす。 お、朝飯出来てんじゃねえか! ってあれ、おめえ誰だ?」

桜「わ、私は……」

士郎「そう言えば桜と悟空さんが会うのは初めてか。悟空さん、こいつは間桐桜っていって俺の後輩。家事をしにきてくれたり色々世話を焼いてもらってる」

悟空「そうか。桜、よろしくな。オラは孫悟空だ。一応オラもマスターだ!」

ピシッと空間に静寂が走った。

士郎「そうそう、悟空さんは喫茶店でマスターをやってるんだ!」

セイバー「悟空さん、桜は一般人なのです。聖杯戦争に関することは伏せてください」ヒソヒソ

悟空「え、でもあいつマスターじゃねえんか? 他のマスターとおんなじ気配を感じるぞ」ヒソヒソ

桜「……」

サタン「ふん、隠すだけ無駄だ。聖杯戦争なんざそこのお嬢ちゃんはとっくに知っておるわ。そうだろ?」

士郎「サタン、何を言って……。桜は一般人なんだ」

桜「……良いんです、先輩。私、本当はすべて知っているんです。聖杯戦争のことも、セイバーさんがサーヴァントなのも全部……全部…!!」

士郎「桜……」

サタン「まったく、また救うモノが増えたな……。桜とか言ったか、お前の過去、すべて見させてもらうぞ」

そう言ってサタンは桜に触れた。

サタン「……ぐ、ぎぎぎぎ。こんな、こんなものがお前の歴史か……!」

歯を食いしばり、怒りを露わにする。

桜「やめて……。みないでください!」

サタン「すまんな。安心しろ、プライバシーは守る」

セイバー「サタン。貴方には人の過去が見えるのですか?」

サタン「俺様の宝具、英雄王の慧眼でな」

英雄王の慧眼(サタンズアイ)
ランクB
種別・対人宝具
生前、人類滅亡の危機から子犬の虐待まで、ありとあらゆる出来事から世界を救ったとされるミスターサタンの全てを見通す目。
視界に入った人間の救うべき箇所がわかると言われているが、実際は対象の歴史を見通す程度。対魔力で防がれることはないが、戦闘力の高いモノには防がれることがある。サーヴァントには直接触れない限り、ぼんやりとしか読み取ることが出来ない。

桜「……私の過去、全部見えましたか?」

サタン「ああ、すぐにでも臓硯とか言うジジイをぶっ飛ばしてやる」

士郎「臓硯に何かされたのか!?」

桜「先輩には知られたくありません。……きっと知ったら嫌われちゃいます。私は、汚い女ですから……」

士郎「バカ、桜は桜だろ? どんなに最低なヤツだったとしても嫌ってなんてやるもんか」

桜「……先輩は優しいですね。でもごめんなさい。アフロさん、絶対に言わないでくださいね……」

サタン「サタンだ! ……士郎、知らん方が良いこともあるんだ。女の秘密の一つや二つ、男なら黙って受け止めてやれ」

士郎「別に無理に聞く気はないさ。……ふぅ、とりあえず飯にしよう。湿っぽい話はやめだ」

テレビ「新都で行方不明者が出ており、近くの公園では行方不明者が身につけていたと思われる衣服なども見つかっています。なおーー」

士郎「……これって」

セイバー「ええ、昨日の影の仕業でしょう」

悟空「大変なことになってきたな。今日も見回りに行かねえとな!」

桜「悟空さん。先輩を危険な所に連れて行くのはやめてください……!」

士郎「桜、お前もマスターならわかるだろ。家でじっとしてても解決にはならない」

桜「でも……」

悟空「大丈夫だ桜。オラが近くにいるうちは士郎の安全は絶対に保障してやる」

桜「悟空さんは人間じゃないですか!」

士郎「……とりあえず学校に行こう桜。このままじゃ遅刻だ」

学校

凜「おはよう衛宮くん。今朝のニュースはもう見た?」

士郎「おはよう。ああ、見たよ。悟空さんが今夜も見回ろうってさ」

凜「それは良かった。これ以上被害者が出るのは同じ魔術師として見過ごせないわ。問題はどうやってアレを倒すかね……」

士郎「わからないけどさ……、あの影、どこかで見たような気がするんだよな」

ーーアレがなんであるかは、お前の直感が正しい。

アーチャーの言葉が引っかかる。
そしてずっとまとわりついてくる、気付いてはいけないと警告するような感覚。
気付いてしまえばとんでもないことになりそうな、予感めいた確信があった。

ガラガラ

慎二「よう、お困りのようだな」

士郎の思考をかき消すように、間桐慎二が教室に入ってきた。

凜「何か用?」

慎二「冷たいな。助けがいるんじゃないのかい? 」

凜「助け? なんのことかしら」

慎二「とぼけるなよ! お前ら同盟組んでるんだろ。なあ、あんな変な道着着たやつと組むのなんてやめてさ、僕と組めよ」

士郎「慎二も聖杯戦争に参加してるのか!?」

凜「サーヴァントの数が全然合わないわね……。とりあえず、貴方が同盟に入りたいって言うならともかく、悟空さんを裏切って貴方につくわけ無いでしょ? なんのメリットもないじゃない」

慎二「なんだよ、知らなかったのか。僕は間桐の正式な後継者だぞ? 遠坂、始まりの御三家たる僕たちが組めば、勝利は間違いないんだ! じゃあそれを踏まえた上でもう一度返事してくれ。……僕たち三人だけで同盟を組もうぜ 」

凜・士郎「断る」

慎二「ああ、そうかよ。ふん、後悔するなよ」

士郎「慎二、俺たちの同盟に入れよ。悟空さんは悪い人じゃない。お前も話せばわかるさ」

慎二「うるさい! 魔術師の血なんて入ってないお前が偉そうにしやがって……。その悟空ってやつに言っておけ。お前みたいな筋肉バカは真っ先に殺してやるってな!」

道場

セイバー「かーめーはーめー波ーー!」ポッ

悟空「なんだそのちっこい気弾は」

セイバー「難しい……」

悟空「そうだ、気を使う前に普段のおめえの使う必殺技は何かねえのか?」

セイバー「そうですね……。まあ、ゴクウになら良いでしょう。私の宝具に約束された勝利の剣と言うものがあります。その宝具を使った攻撃は、まさに必殺技と言っても差し支えないでしょう」

悟空「へえ、一度見てみてえな。とりあえずそれをイメージしてかめはめ波を撃ってみろ。手からエクスカリバーを放つイメージだ」

セイバー「かーめーはーめー波ー!」ズン

悟空「おお、今のは良かったじゃねえか!」

セイバー「何となくしっくりきません。技名に違和感があります」

悟空「じゃあエクスカリバーで良いんじゃねえか?」

セイバー「そうですね。……エクス、カリ波ーーーー!!」ズドーン

悟空「ハハッ、また威力が上がったな。この分ならすぐに実戦で使えるくらいになるんじゃねえか」

セイバー「ふふ、楽しくなってきました」

放課後

凜「衛宮くん、今日はこのまま寄って行って良いかしら? どうせ夜には集まるんだからこのまま向かった方が楽だし」

士郎「ああ、わかった。買い物に寄ってから帰るから先に行っといてくれ。晩飯食ってくだろ?」

凜「あら、なかなか気が利くじゃない。今日の晩御飯、期待して待ってるわ」

士郎「とびっきり美味いのを作ってやるよ」

凜「そ、じゃあちょっとだけ真面目な話。間桐くんには気をつけてね。何か仕掛けてきそうな雰囲気があったし、それにあいつがマスターだったとなればあの結界はあいつがやったとみて間違いないわ」

士郎「……そうだった。あの結界は解除させなくちゃな」

凜「単独行動はだめよ。もし見かけても、今日は何もしないで」

士郎「わかった」

買い物

士郎「えーっと、玉ねぎと人参を買って……」

イリヤ「シロウ!!」

士郎「ん? ってイリヤスフィール!?」

イリヤ「なに警戒してるの? バーサーカーなら居ないよ?」

士郎「……つまり、イリヤスフィール一人ってことか?」

イリヤ「うん! イリヤでいいよ」

士郎「おいおい、聖杯戦争の最中なんだぞ。もう少し警戒したほうが良いんじゃないか」

イリヤ「魔術師の先頭は夜が基本でしょ? シロウが今やりたいって言うならやってあげるけど」

士郎「つまり昼間は闘わないってことでいいのか?」

イリヤ「ええ。それよりお話しましょ!」

サタン「お嬢ちゃん、私も仲間に入れてくれるかな?」

イリヤ「げ……。なんでいるの?」

サタン「士郎の護衛をしているからな」

イリヤ「ふーん。良いけど、変なことをしたらバーサーカーを呼ぶからね」

公園 夕方

イリヤ「そろそろ行かなくちゃ。早く帰らないと夜になっちゃう」

士郎「なあイリヤ、明日も来るか?」

イリヤ「……わかんない。シロウは
来て欲しいの?」

士郎「ああ」

イリヤ「わたしはシロウを殺すんだよ?」

士郎「昼間は殺さないんだろ? ならそのうち、夜も殺したくなくなるぐらい仲良くなってやるさ」

イリヤ「うん! そっか。シロウはわたしと仲良くなりたいんだ。えへへ、じゃあ気が向いたら来てあげるわ」

士郎「なら、今日と同じ時間くらいに待ってるからな」

サタン「気をつけて帰れよ!」

イリヤ「べぇー、だ」

サタン「はっ、クソガキめ!」

帰り道

サタン「……士郎、誰か来る。おそらくサーヴァントだ」

士郎「……!! どうする、一旦逃げるか?」

サタン「無駄だな。俺の側を離れるなよ」

ギルガメッシュ「おい、そこのアフロ頭。貴様がサタンだな」

サタン「は、はい、そうです。あの〜、あなた様は何者で?」

ギルガメッシュ「我の名を知らんのか?
まったく、綺礼が心配していたから少しは楽しませてくれるような傑物かと期待したが、やはり雑種は雑種であったか」

サタン(綺礼? あの神父のサーヴァントで金髪、つまりギルガメッシュか……!! ーーククッ、やっと会えたな!)

サタン「失礼しました。その絶対的な王の気配……、もしやかの有名なギルガメッシュ様でございますか?」

ギルガメッシュ「ふん、理解したか? 貴様、雑種にしてはなかなか見所がある」

サタン「もったいないお言葉です。ところでギルガメッシュ様、献上したい品があるのですが……」

ギルガメッシュ「ほう、貢ぎ物か。中々気が利くではないか。だが我はつまらぬ物は受け取らんぞ」

サタン「いえいえ、これは私のマスターの宝を拝借した物でして。仙豆と言って死んでさえいなければどんな怪我も治る伝説の豆です」

ギルガメッシュ「……どんな怪我をもか。それが本当なら我の宝物庫に入れてやらんこともない。サタンよ、我に献上することを許す」

サタン「ありがとうございます! ではどうぞ」

仙豆を手渡すサタン。

サタン(……なるほど、最古の王か。狙い通りこいつの宝具なら試す価値はある)

サタン「士郎、離れるぞ!」

士郎を引き連れ、ギルガメッシュと距離を開ける。

ギルガメッシュ「ん? どうしたのだ」

サタン「がっはっはっはっ、死にやがれ! 貴様の身に余る凶行、その思想……、救うに値せんわ!」

言うと同時、豆に仕組まれた爆弾が起動した。
小規模な爆発が起こり、無防備なギルガメッシュに炸裂したのであった。

爆煙が消えると、上半身の服こそ消し飛んでいるが無傷のギルガメッシュの姿があった。

ギルガメッシュ「クックック、ハーッハッハッハッ!! おい雑種、今のは楽しめたぞ。だが……、よりにもよってこの英雄王に刃を向けるとは。楽に死ねると思うなよッ!!」

士郎「何やってるんだサタン!! あんな卑怯なことまでして、無傷じゃないか!」

サタン「ふん、やはりアレでは死なんかったか。安心しろ。次は正々堂々闘うし、負けはしないさ」

士郎「……大丈夫なんだろうな」

サタン「ああ。このミスターサタン様の最強の宝具を使うときが来たようだ」

ギルガメッシュ「遺言は済んだか?」

ギルガメッシュの背後から現れた無数の武器。その切っ先すべてがサタンへと向けられていた。

サタン「王の財宝か。便利な宝具だな。それなら或いは、俺様にも可能性があるということ」

ギルガメッシュ「何をぶつぶつと喚いている。虫けらの羽音ほど不快なものはないぞ。まずはその手足、切り落としてくれるわ!」

サタン「ガハハハハハ、出来るものならやってみやがれ!!」

ギルガメッシュ「なッ……!? 貴様、
何をした!!」

ギルガメッシュが宝具を射出しようとした直後、背後にあったはずの王の財宝が、サタンの後ろへと移動していた。そしてその切っ先は全て、ギルガメッシュへと向けられていた。

サタン「……俺も貴様と同じく英雄王などと呼ばれたりしているが、俺が何をした英雄か知っているか?」

ギルガメッシュ「貴様のような雑種のことを、我が知っているはずがなかろう!! さっさと王の財宝を返さぬか!!」

サタン「俺はほとんど何もしていない。俺の英雄譚の九割ほどは誰かの手柄だ。人の歴史を奪いさも自分がやったかのように偽るハリボテの英雄。それこそが俺様の本質。だが、人々に最後までバレることはなく、俺は英雄として生涯を終えた」

ギルガメッシュ「……その貴様の薄汚い過去と、この我の宝具を使うことになんの関係がある。この街ごと貴様を破壊して力尽くで取り返してやっても良いのだぞ」

サタン「まあ落ち着け。このミスターサタン様の宝具、俺様の歴史にまた1ページは対象の歴史を奪う宝具でな。貴様が歩んできたはずの歴史は、俺が歩んだ。ならばその歴史の過程で得た貴様の宝具、この俺様の物となることになんの不思議もあるまい。つまりこの王の財宝。もとより、貴様の宝具ではない。俺様の歴史の上に得た宝具よ。ガーッハッハッハッ」

ギルガメッシュ「この贋作にもなれぬ出来損ないが!! 我の歴史を奪っただと? 英雄王ギルガメッシュは天上天下に我一人。貴様のような雑種に奪える覇道ではなかったわ」

サタン「うるさい野郎だ。今日のところは見逃してやるからとっとと失せろ。宝具を持たぬお前はそこらの雑種と変わらんぞ」

ギルガメッシュ「おのれ、おのれおのれおのれおのれおのれ!! 覚えていろサタン。貴様には生き地獄を見せてやるわ」

英雄王ギルガメッシュは去っていった。

俺様の歴史にまた1ページ(グレートサタンズヒストリー)
ランク・EX
種別・対人宝具
レンジ・1〜2
人の功績を我が物とし続け、不動の英雄の地位を築いたサタンの宝具。対象の歴史を奪い、自分の歴史の一部へと組み込む。その特性から英霊の宝具を自分の物として扱うことができるが、武器や魔術などの技量はサタンに依存する。一時間以上奪ったままでいるとサタンとしての歴史が揺らぎ、英霊として存在できなくなる。そのため一時間以内に宝具を解除し、歴史を返さねばならないため使い勝手は少し悪い。また、一度奪った歴史をもう一度奪う際は66時間以上のインターバルが必要である。通常の使用も24時間のインターバルを要する。

士郎「サタンって本当に強かったんだな」

サタン「ガハハハハハ、当然だ。……さあ、ここからが本番だぞ」

サタンの背後より七つの玉が出現する。

サタン「フッ、やはりあったか。この宝具ならもしやとは思ったが。出でよ! 神龍!」

眩い光が弾け、巨大な龍が姿を現わす。

士郎「な、なんだこいつは……!?」

神龍「さあ願いを言え。どんな願いも二つだけ叶えてやる」

サタン「二つか。さすがにパワーダウンは免れんか。メディアに現世での肉体を与えてくれ!」

神龍「お安い御用だ。さあ、次の願いを言え」

サタン「イリヤを聖杯とは関係のない普通の人間にしてくれ。寿命も一般人の平均くらいにはなるように頼むぞ」

神龍「……願いは叶えた。さらばだ」

龍は七つの石へと姿を変え、各地へと散らばった。

サタン「今のは神龍といってな。俺の世界にあった宝から呼び出せるんだが、玉を七つ集めるとどんな願いでも叶えてくれるぞ」

士郎「でたらめじゃないか……。今のヤツいつでも呼べるのか?」

サタン「いや、一度願いを叶えたら一年は使えん。一回限りの反則技みたいなものだな」

士郎「それを他人のために使うなんて、サタンって卑怯だけどいい奴だな」

サタン「フン、卑怯は余計だ。まあこれでも元いたところでは凄い英雄だったからな。敬ってくれて構わんぞ」

衛宮家

士郎「ただいま」

凜「遅い!」

士郎「……やばい、忘れてた! わるい、すぐに夕飯作るよ」

凜「あんたが遅いから桜が作ってくれてるわ」

士郎「そ、そうか。すまん遠坂。アーチャーのサーヴァントと戦闘になったんだ」

凜「え、私のサーヴァントと!?」

士郎「いや、違う。ギルガメッシュとかいう金髪のサーヴァントなんだけど。でもあいつは間違いなくアーチャーだってサタンが」

セイバー「ギルガメッシュ……!! 今回もあいつがいるのですね」

士郎「知り合いか、セイバー」

セイバー「ええ、前の聖杯戦争の時にもいました。あのサーヴァントの宝具は強力です。シロウ、よく無事に帰ってこれましたね」

サタン「ガハハハハハ、それは俺様のおかげだぞ」

士郎「ああ。サタンがギルガメッシュの宝具を奪って追い払ったんだ」

セイバー「宝具を奪う……? サタン、それが貴方の宝具ですか?」

サタン「そうだ。正確には俺様の歴史にまた1ページは相手の歴史を奪う技だがな」

セイバー「歴史、ですか。はぁ、まったく。貴方もゴクウも滅茶苦茶だ……」



食事中

カチャン。カチャン。

士郎「……」

カチャン。カチャン。

悟空「おい桜、おめえ箸握れなくなってんのか」

桜「い、いえ。ちょっと手が滑っただけです」

カチャン。

士郎「……大丈夫か?」

悟空「さっきまで普通に飯作ってたんだけどなぁ。ちょっと休んだほうが良いんじゃねえか」

桜「ほ、本当に大丈夫ですから。ーーあれ?」 バタン。

士郎「桜!!」

凜「凄い熱じゃない! あーもう。なんで黙ってたのよ」

桜「おか、しいな。……さっきまでは、本当に元気だったんですけど」

士郎「空き部屋に運ぶから、ちゃんと休め」

桜「……ごめんなさい」

士郎「桜が悪いわけじゃないだろ。大丈夫、すぐに良くなるさ」

食後

凜「今日の見回りだけど、二手に別れましょう。一組はあの影を、もう一組で間桐くんのところへ行くわ」

士郎「……慎二に仕掛けるのか?」

凜「ええ。あの結界がある以上、学校で戦闘するのは避けたい。だったら先にこっちから攻めに行った方が楽でしょ?」

士郎「まさか慎二を殺す、とか言わないよな?」

凜「それは最後の手段ね。令呪を破棄してくれればそれで良いんだけど」

士郎「慎二も同盟に入れてやるって方法はないか」

凜「今日の会話からしてもその可能性はないんじゃない? それに同盟に入れたところで大した戦力にもならないし、聖杯戦争から撤退してもらった方が楽でいいのよ」

悟空「まあオラはなんでも構わねえけどよ。どっちが攻めに行くんだ?」

凜「私とアーチャーで行く。影の方がよっぽどヤバいから、そっちの人数は多い方が良いわ」

サタン「待て。俺も攻めに行く。間桐臓硯とかいう奴に用があるんでな」

凜「……そう。なら悟空さん、サタンを借りても大丈夫かしら」

悟空「ああ。サタン、ちゃんと二人を守ってやってくれよ」

アーチャー「……私を守るとは失礼な。もしあるとすれば、それは逆の展開しかないさ」

巡回中

セイバー「特に気配はありませんね」

士郎「まあ現れないのが一番だけどさ」

悟空「ちょっと上から見てくる」ビューン

セイバー「気の修行をしたから改めてわかりますが……、あんなに自在に空を飛ぶなどできる気がしません……」

士郎「セイバーならいつか飛べるさ。問題は俺の方なんだけど……」

セイバー「士郎はまず気弾を普通に撃てるようになってからですね」

悟空「お、アイツはたしか……。とりあえず行ってみっか!」 シュタッ

悟空「士郎、セイバー、こっちだ」

公園

悟空達が公園に到着すると滑り台で膝を抱えてうずくまっている少女と、その横で佇んでいるバーサーカーがいた。

悟空「やっぱりおめえ、イリヤとかいう子供だな。何泣いてんだ?」

イリヤ「グスッ、……なんかわかんないけど普通の人間になっちゃったから家に帰れないのよ」

士郎「そうか……! そういえばサタンがドラゴンボールとか言う宝具にイリヤを普通の人間にしてくれって願ってたんだ」

悟空「サタンがドラゴンボールを使ってたのか。でもよ、別に家に帰るのなんて普通の人間でもできるだろ」

イリヤ「アインツベルンの家はそうは行かないの!」

士郎「イリヤ、俺の家にくるか? 今更一人や二人増えても変わらないしな」

イリヤ「行ってもいいの! ……でもやっぱり駄目。私たち敵同士だもん」

士郎「俺はイリヤと闘いたくない。俺たちの味方になってくれないか?」

イリヤ「……しょうがないわね。シロウがどうしてもって言うなら考えてあげるわ」

士郎「ああ、どうしてもだ」

イリヤ「まったく。シロウはワガママなーー」

バーサーカー「■■■■■ーー!!」

突然、バーサーカーが咆哮をあげ、悟空に接近した。

イリヤ「……バーサーカー?」

バーサーカー「……イ……リヤ……弱くな……た。オレを……制御…………でき……ない。…………い……そげ」

悟空「……」

悟空「……なるほど、オラが大猿化した時に似てんなぁ。尻尾もねえし、理性を保ってもらうしかねえか」

バーサーカー「■■■■■■■■■ーー!!」

セイバー「危ない!」

ブォン

バーサーカーの拳が空を切る。

悟空「へへっ、なかなかやるじゃねえか」

セイバー「ゴクウ、バーサーカーに肉弾戦は自殺行為だ! 舞空術で逃げながら気弾を撃つべきです」

悟空「バーサーカー! しっかりしろ。おめえも英霊ならクラスなんかに支配されてんじゃねえ!」

バーサーカー「■■■■■■■■!!」

ブォン

悟空「どうした。本当のおめえのパンチはそんなもんじゃねえだろ」

バーサーカー「……グッ、■■■■■」

イリヤ「……今、一瞬ーー」

悟空「良いぞ。その調子だバーサーカー」

ブォン ブォン

三十分後

バーサーカー「ーーッグッ、ぐおおおお!!」

バーサーカー「……フゥーッ」

悟空「……どうやら抑え込めたみてえだな。調子はどうだ、バーサーカー」

バーサーカー「……感謝するぞ、悟空」

イリヤ「バーサーカー? 狂化が解けたの?」

バーサーカー「……解けた訳では、ない。抑え込んでいるだけだ。それより、イリヤ。やっと言葉を交わすことができたな」

イリヤ「うん! それでも凄いわ! 流石は私のバーサーカーね」

バーサーカー「……そう、だな。イリヤ、今のお前の魔力では本気のオレを動かすには足りん。危なくなったら令呪を捨てるのだぞ」

イリヤ「ふん、そんなの余裕なんだから! サーヴァントの心配することじゃないわ」

バーサーカー「……まったく。喋れるようになると苦労が増える」

ギルガメッシュと同等の格(ただしほとんどウソ)
天下一武道会覇者の実力(ただし常識的な人間が相手)
数々の死線をくぐり抜けた経験(攻撃対象だったとは言ってない)
魔神すら更正させるカウンセリングスキル




ライダーやアサシンなんぞ物の数じゃないな!

間桐家

慎二「急に家にきて何の用だ遠坂。まさか今更同盟に入れてくださいなんて言うつもりじゃないよな? まあ、考えてやっても良いけどさ」

遠坂「……違うわ。私ね、マスターとして貴方を攻撃しにきたのよ。ご丁寧に家まで上がらせてくれて感謝するわ」

慎二「なッ!? 僕を殺しにきたってことか! ハハッ、なんだよ。それならそうと最初から言えよな……。ライダー!! 相手してやれ」

遠坂「貴方がマスターから降りるなら、危害は加えないつもりだったんだけど……、その気はあるかしら?」

慎二「うるさい! 逆だろ遠坂。今ならさっきの発言、なかったことにしてやってもいいぜ」

遠坂「そ、交渉決裂ね。アーチャー」

臓硯「これこれ、待たぬか! ワシの家を壊す気か」

遠坂「何よ、まだ聖杯戦争に関わろうって言うのなら貴方もまとめて……」

臓硯「関わるつもりはないが……。間桐の屋敷に遠坂の人間が侵入しておる。そればかりか孫を殺そうとしているとあっては、ワシの正当防衛も十分通るじゃろうて。ここで殺りあうと言うなら、サーヴァント二人を相手にすることを覚悟してもらわんとのう」

凜「別に構わないけどね。こっちもサーヴァント二人だし」

サタン「貴様が間桐臓硯か……! なんたる外道ッ。志しすら忘れおって」

臓硯「……あの道着の男から奪ったのか? ともかく戦闘は避けれそうにないようじゃのう」


臓硯「せめて庭に場所を変えてもよいかな」

凜「ええ、構わないわ」

ヒュッ

サタン「ひぃっ!?」

死角から投げられた三本のナイフがサタンのアフロに突き刺さる。

ヒュッ

次いでもう三本。またもやアフロへ突き刺さった。

アサシン「……矢除けの加護の類いか? どこを狙っても全てアフロに向かっていく」

凜「早まったわね。屋敷が壊れるのは諦めなさい。アーチャー! いくわよ」

臓硯「アサシンめ、しくじりおって。これ慎二、何を呆けておる。さっさとライダーで攻撃せんか!」

慎二「……殺れ、ライダー。悪く思うなよ遠坂。お前が悪いんだからな」

アーチャー「サタン。アサシンは任せたぞ。なに、大した英霊じゃない。君でも十分に倒せるだろう」

アサシン「舐められたものだ」

サタン「おい、ちょこまか動いてんじゃねえ! 男なら拳でかかってこんか!」

そんな言葉は意にも介さず、アサシンは壁に天井に張り付きながらナイフの投擲を行う。

サタン「仕方ない……。宝具、天下一武道会!」

アサシン「固有結界か!?」

視界には石造りの正方形のリング、天下一武道会の看板を掲げた寺。そして金髪にサングラスの男と大勢の観客。

そして標的たるサタンは玉座のような上等な観客席に座っていた。

サタン「どうだ? ここなら張り付く壁はあるまい。がっはっはっはっ」

アサシン「……それだけか。大した宝具ではないな。この観衆は目障りだがな」

ヒュッ

アサシンが無造作に観客に放ったナイフはしかしすり抜ける。

アサシン「この観衆、あくまで景色の一部という事か。直接力を発揮するわけではないようだな」

サタン「ふん、この舞台から落ちたら負けだからな。気をつけろよ」

アナウンサー「さ〜て、いよいよやってきました準決勝!! 正体不明の謎の暗殺者アサシン選手vs言わずと知れたサタンの弟子ミスターブウ選手。果たしてスーパーチャンピオンミスターサタン選手への挑戦権を得るのはどちらだ!?」

突如、ピンク色の化け物がリングに出現した。

ブウ「その仮面、かっこいいな。勝ったらオレにくれ」

アサシン「なんだお前は。……まあ良い、死ね!」ヒュッ

しかしナイフを放った先にピンク色の化け物はいなかった。

アサシン「消えた?」

ブウ「遅いな。ちょっと退屈だぞ」

背後から声がした。アサシンに戦慄が走る。

ーーアサシンたる自分が追えないほどのスピードで、後ろに回ったのか!?

アサシン「バカな」

振り返ることもせず、全力で前へ飛び出す。

ブウ「もう攻撃してもいいか?」


アサシン「クッ、触れれさえすれば……!!」

アサシンの手が異様な程伸びる。

ブウ「触れたらなんかできるのか? よし、触れても良いぞ」

アサシンのその手がブウに触れた。

アサシン「バカめ! 妄想心音!」

ブウ「……心臓を潰す攻撃か。残念だったな。オレを殺すなら一瞬で全てを消し飛ばさないと意味ないぞ」

アサシン「この化け物め……!」

ブウ「じゃあ終わりにするか」

アサシン「フギィッ!?」

桃色の閃光が走ったのが微かに見えた。それがアサシンの見た最期の景色だった。

天下一武道会(てんかいちぶどうかい)
ランク・B
種別・対人宝具
生前無敗を誇ったサタンが闘い続けた場所が固有結界になったもの。この結界内におけるサタンの弟子、ミスターブウを倒すことでサタンへの挑戦権が得られる。サタンのブウの記憶が具現化されているだけの仮想存在であるため、実際の魔人ブウの一割程度の戦闘力に落ち込んでいる。それでもサタンよりも圧倒的に強いため、ブウが倒された時点でサタンの負けはほぼ確定する。場外に落ちると負けが確定し、何をしてもサタンに勝てないように因果が書き換えられる。逆にサタンが場外に落ちた場合は無敗の英雄という歴史がなくなり、英霊として消滅する。気力や戦闘力が高いと、この結界自体のルールを破ったり、そもそも結界に入るのを拒否することが可能。また再使用には48時間のインターバルを要する。

サタン「おい、起きろ」

アサシン「あれ……ここは……?」

サタン「ここは俺様の結界の中だ」

アサシン「そうだ……! 僕は殺されたはずでは!」

サタン「天下一武道会は相手を殺したら失格というルールがあってな。この宝具内のブウさんが殺すのは悪の気持ちだけだ。まあ少しは体にダメージもあるだろうが」

アサシン「そう、なのですね。生まれ変わった気分です」

サタン「そうか。お前みたいに口調まで変わってしまうとは俺様も知らなかったが……。とにかく悪いアサシンは死んだってことだな」

アサシン「はい! 僕は真アサシンとでも名乗ります!」

サタン「あ、ああ。とにかく結界を解除するぞ」

結界を解くとライダーが倒れていた。

アーチャー「君は固有結界が使えたのだな。……しかしアサシンを倒しきれていないが」

サタン「がっはっはっはっ、こいつはもう更生させたから大丈夫だ」

アーチャー「何をぬるいことを……」

臓硯「アサシン! 何をしておる。さっさとそこのサーヴァントを殺さぬか!」

真アサシン「マスター、こんな無意味な
殺し合いはもうやめましょう。私は気付いたのですよ。平和の尊さに。人の身で不老不死なんてあまりにも愚かだったのです」

臓硯「おのれ……! お主、アサシンに何をした!」

サタン「ふん、心を綺麗にしただけだ。臓硯よ、貴様の腐った心も正してやろうか」

臓硯「いらぬわ! ワシの心は腐ってはおらぬ。腐ったのはこの肉体だけよ」

サタン「……そうか。なら思い出すがい。貴様がかつて願ったことをな。救世する爆弾の如き拳」

サタンの右ストレートで臓硯が吹っ飛ぶ。

臓硯(……そうか。なぜ……忘れておったのじゃ。ーーのう、ユスティーツァ、遠坂永人よ……)

そして一瞬の思考の後、意識は闇へと落ちていった。

凜「あんた宝具何個もってんのよ……」

アーチャー「……まるで宝具のバーゲンセールだな」

凜「?」

救世する爆発の如き拳(サタンズボンバージャスティス)
ランク・D
種別・対人宝具
生前爆発で悪を善人にしたと言うサタンのエピソードが拳に乗せられた宝具。
自分より弱いものを正義へと更生させるパンチを放つことが可能。尚、爆発はしない。もとより正義の心を持たない者には効果がない。

結界を解くとライダーが倒れていた。

アーチャー「君は固有結界が使えたのだな。……しかしアサシンを倒しきれていないようだが」

サタン「がっはっはっはっ、こいつはもう更生させたから大丈夫だ」

アーチャー「何をぬるいことを……」

臓硯「アサシン! 何をしておる。さっさとそこのサーヴァントを殺さぬか!」

真アサシン「マスター、こんな無意味な
殺し合いはもうやめましょう。私は気付いたのですよ。平和の尊さに。人の身で不老不死なんてあまりにも愚かだったのです」

臓硯「おのれ……! お主、アサシンに何をした!」

サタン「ふん、心を綺麗にしただけだ。臓硯よ、貴様の腐った心も正してやろうか」

臓硯「いらぬわ! ワシの心は腐ってはおらぬ。腐ったのはこの肉体だけよ」

サタン「……そうか。なら思い出すが良い。貴様がかつて願ったことをな。救世する爆弾の如き拳」

サタンの右ストレートで臓硯が吹っ飛ぶ。

臓硯(……そうか。なぜ……忘れておったのじゃ。ーーのう、ユスティーツァ、遠坂永人よ……)

そして一瞬の思考の後、意識は闇へと落ちていった。

凜「あんた宝具何個もってんのよ……」

アーチャー「……まるで宝具のバーゲンセールだな」

凜「?」

救世する爆発の如き拳(サタンズボンバージャスティス)
ランク・D
種別・対人宝具
生前爆発で悪人を善人にしたと言うサタンのエピソードが拳に乗せられた宝具。
自分より弱いものを正義へと更生させるパンチを放つことが可能。尚、爆発はしない。もとより正義の心を持たない者には効果がない。

凜「どうする間桐くん。あなたも殴ってもらった方が良いんじゃない?」

慎二「ひっ!? やめろ!! ライダー、何寝てるんだ! 早く戦え!! 」

サタン「自分のサーヴァントの状態も理解できんのか……。 所詮は偽物のマスターだな」

慎二「くそっ! 僕は偽物なんかじゃない! ……令呪をもって命じる。ライダー、こいつらを殺せ!!」

ライダー「う、っぐぁ!」

無理やり立ち上がるライダー。

アーチャー「……見るに耐えんな。すぐに楽にしてやる」

アサシン「避けてくださいアーチャー!」

間一髪、伸びてきた影を躱す。

アーチャー「……!!」

突然現れた影は、ライダーを守るように立ちふさがった。

サタン「こいつがお前らの言ってた影か。……俺様はとんだ失態をしてしまったらしいな」

サタン(……もっと早く臓硯に接触していれば、桜と聖杯の繋がりも読めたというのに)

アサシン「一度引きましょう! あれはサーヴァントでは太刀打ちできません!」

凜「だめよ、ライダーを殺さなきゃ。 吸収されてあれ以上パワーアップされたら本当に打つ手がなくなるわ!」

サタン「……吸収されるのはまずいが、殺してはならん。殺しても奴はパワーアップするぞ」

凜「……どういうこと ?」

サタン「あれはおそらく聖杯の中身だ。サーヴァントの命を糧に力を増していく」

凜「なによそれ。 手の施しようがないじゃない」

サタン「なに、簡単なことだ。ライダーを救い出してから逃げればいい」

アーチャー「フン、ではやるしかあるまい。……一分だけ時間を稼いでやる。その間にライダーを連れてこい」

サタン「おう!」

サタンに迫る影の魔の手を、アーチャーは的確に弓で射っていく。

サタン「よお。少し抱えさせてもらうぞ」

ライダー「……離れなさい。私には令呪に抗う力はありません」

サタン「がっはっはっはっ。そんな体で俺様を殺せるわけがあるか」

強引にライダーを抱えると、凜たちめがけて走り出す。
その間、ライダーはサタンの顔面を殴り続けた。

サタン「ふぁんふぉはひふぇひっふぁは」(なんとか逃げ切ったな)

凜「……顔、大丈夫?」

アーチャー「少し眠ってもらうぞ」

トン

アーチャーの手刀で、ライダーの意識は落ちた。

アーチャー「さて、後はあの影をどうするか……」

凜「このまま引いても、あの影は街の人間を襲うかも知れないか。……厄介ね」

アーチャー「まったく、触れることも出来ないのではどうしようもないな。弓での攻撃もいつまでも持たないぞ」

???「ハハッ、おもしれえのと闘ってるじゃねえか! こいつの相手はオレに任せな、嬢ちゃん」

凜「ランサー!? どうしてここに」

ランサー「細けえこたあ良いんだよ。ま、負けることはねえとは思うが、念のため悟空を呼んどいてくれよ。こんな化け物街に放したとあっちゃ英霊の名が泣いちまうからな」

アーチャー「一体どういう風の吹き回しだ?」

ランサー「なーに、本音を言やあちょっと新技を試してみてえだけさ。……わかったらとっとと失せな。まだ制御が効かねえんだ、巻き込まれても知らねえぞ」

サタン「おい、ここは任せるぞ!」

ランサーに影が伸びる。

ランサー「カッ!」

悟空に消されたゲイ・ボルクのように、ランサーの間合いに入った影が消滅する。

ランサー「ハハッ、やっぱり気は有効みてえだな。じゃあ早速で悪いが……オレの新たな必殺技であの世へ帰りな」

ランサー「気功式・突き穿つ死翔の槍……!!」

ゲイ・ボルクを模した気弾が影へ向かって高速で放たれる。


必中の気弾は影へと突き刺さり、間桐邸を半壊させるほどの衝撃波を放った。

ランサー「チッ、思ったより威力が出やがらねえ。ま、あの影を殺るには十分だったみてえだがな」

敵が消し飛んだことを確認して、ランサーは踵を返す。

悟空「後ろだランサー!」

ランサー「……!!」

背後から迫っていた影の触手を間一髪で躱す。

ランサー「……まだ生きてやがったか。かっこ悪いとこ見せちまったな」

悟空「いや、この短期間で気であの槍を再現するなんて大したもんさ。才能だけならオラより上かも知れねえぞ」

ランサー「ハッ、野郎の世辞なんていらねえよ。……それよりあの影、次こそ仕留めてやる」

悟空「あいつの相手はオラにさせてくれねえか?。なんか知り合いの気を感じるからよ。吸収されてんのかもしれねえ」

ランサー「……しょうがねえな。ま、テメエがやった方が確実だしな。ならお手並み拝見させてもらうぜ」

悟空「すまねえなランサー。……じゃ、まずは挨拶代わりだ!」

まずは様子見とばかりに気弾を一つ放つ。
影は避けようともしなかった。
否、反応すらできずに気弾は直撃する。
その一撃で影は跡形もなく消えていた。

悟空「……あり?」

ランサー「チッ、やっぱりオレと闘った時は本気じゃなかったか。なんだよ今の気功は。スピード、威力、どれも尋常じゃねえ……!」

悟空「……まさか気弾一発で終わっちまうなんてよ。もうちょっと強そうな気配はしたんだけどなあ」

ランサー「おい、誰か倒れてんじゃねえか」

悟空「桜! やっぱりおめえの気を感じたのは間違いじゃなかったみてえだな。……とにかく仙豆を食わせねえと」

気弾で爆ぜ、クレーターとなった場所に瀕死の桜が倒れていた。
悟空が仙豆を食べさせると、たちまち傷が塞がっていく。

悟空「よし、これで大丈夫だ」

ランサー「さっきまでは何とか気功をマスターすりゃいけると思ってたが……、テメエにだけは勝てる気がしねえ」

衛宮家

悟空「オッス! 今帰ったぞ」

士郎「おかえり。なんで桜を抱えてるんだ?」

悟空「ちょっと色々あってよ」

イリヤ「ねえ、……その子、聖杯に選ばれてるわ」

サタン「……!! やはり、そうか」

悟空「どういうことだ?」

イリヤ「サーヴァントの魂を留めておく聖杯の器、それが私の役目だった。でも私が普通の人間になっちゃったから、聖杯が代わりを求めたのよ。つまりその子は、私の代わりに聖杯の器になっちゃったってわけ」

悟空「何か問題でもあんのか?」

凜「おおありよ。桜は聖杯の一部になりつつある。簡単に言うとモノとして必要な機能以外は徐々に失っていくはずよ。感情とか記憶とか、余計なモノは全部ね」

士郎「なんだよそれ……!! どうして桜なんだ!」

サタン「桜の体には聖杯の欠片が埋め込まれている。多分そのせいだろう」

凜「なるほどね。そんなことする奴は臓硯しかいないわ。今度会ったらただじゃおかないんだから!」」

士郎「待ってくれ、あの影と臓硯達はどうなったんだ?」

凜「ほんとにぶちんね……。臓硯達は逃げたわ。そして、あの影は桜よ」

士郎「ーーよく……聞こえなかった。もう一回言ってくれ、遠坂」

アーチャー「本当はとっくに気付いていただろう? あの影の正体に。いつまでも見て見ぬ振りをするのはよせ」

ドクン、ドクン。心臓が高鳴っていく。

ーーとっくに気付いていただろう?

アーチャーの声が頭からこびりついて離れない。

考えるな。気付くな。そんなはずがない。あの影は悪だ。桜であるはずがない。だってあの影は。

ーーあの影は、正義の味方が罰する存在だ。

あいつのせいで人が死んでいる。

なら、桜がもしあの影を操っていたのなら……。

俺はーー

悟空「何考え込んでんだ士郎。桜はおめえの大切な仲間じゃねえのか? 仲間が道を間違えたなら、やることなんて一つしかねえさ」

その一言はやけに胸に沁みた。

士郎「ああ、そうか。ーー俺は、桜の味方だったんだ。桜がどんなヤツでも関係ない。桜の罪も全部含めて、俺が、守り通す!」

アーチャー「……一つ忠告しておいてやろう。お前が正義の味方の理想を捨てれば、待っているのは自己の破滅だけだ」

どこか実感のこもったような、重みのある言葉だった。

士郎「構わない。それでも俺は桜を守る」

翌日

アサシン「おじゃまします! マスターに頼まれて慎二を連れてきました」

慎二「くそ! 離せ!」

凜「臓硯が? 一体何の用なの」

アサシン「みなさんの前で令呪を破棄するよう指示されています」

凜「……胡散臭いわね」

サタン「心配することはない。このミスターサタンが保証しよう」

アサシン「これ、偽臣の書です」

凜「やっぱり自力ではマスターになれてなかったか」

アサシン「はい。正規のマスターは桜です。それではこの偽臣の書を燃やします」

ボウッ

慎二「あ、ああ……。僕の……、僕の令呪が!!」

力なく膝をつく慎二を抱えあげるアサシン。

アサシン「では失礼します!」

士郎「なんか、ちょっと可哀想だったな……」

凜「私が昨日攻めに行ったから、次は間桐くんが殺されるかもしれないと思ったんじゃない? 案外孫思いなとこあるのかも知れないわね」



見廻る必要のなくなった一同は、道場にいた。

悟空「よし。じゃあ気の修行始めっか!」

セイバー「はい!」

アーチャー「まったく。なぜ私まで……」ブツブツ

凜「ぐだぐだ言わないの。あの影への攻撃手段は身につけておかないとね」

イリヤ「ゴクウししょー! 準備おーけーです!」

ーー

和気あいあいとした雰囲気を遠くから眺めながら、微笑むサタン。

サタン「フッ、行くか」

皆が気の扱いに神経をすり減らしている頃、サタンはひっそりと去っていった。

寝室・桜

コンコン

サタン「入るぞ。…………寝ているようだな」

桜は穏やかな表情で寝息を立てていた。

そんな桜の頭をそっと撫でる。

サタン「今までよく頑張ったな」

桜「サタン、さん?」

サタン「すまんな、起こしてしまったか」

桜「あの、ここで何を……?」

サタン「い、いや、違う。俺は変態じゃないぞ。 桜が起きたら道場につれてこいと悟空さんに言われてな」

桜「ふふ、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」

サタン「先に行ってるから、準備ができたら道場にくるんだぞ」

桜「はい」

サタン「じゃあな」

ーー幸せにな、お嬢ちゃん。

サタンの去り際の呟きは、寝起きの少女に聞こえることはなかった。

柳洞寺・地下

サタン「気味の悪い場所だ。さっさと聖杯の孔を閉じんとな」


臓硯「おや、奇遇じゃのう」

サタン「ハッ、こんな場所で奇遇などあるか」

アサシン「みんな考えることは同じということですね」

臓硯「ぬう、アサシンもきたか。お主は来なくて良いと言ったのじゃが」

アサシン「サーヴァントはマスターに付き従うものですから」

サタン「せっかくだが、この聖杯の杯たるサタンにしか孔は閉じれんのだ。お前らは家で大人しくしてろ」

臓硯「この先にはおそらく言峰綺礼がおるぞ。あやつは下手なサーヴァントよりもよっぽど厄介じゃ」

サタン「あの神父か」

アサシン「ま、断られても勝手についていきますけどね」

サタン「ふん、せいぜい死ぬんじゃねえぞ」

クライマックスはまだまだ遠いです、、、

ーー

アサシン「言峰、綺礼……!!」

言峰「止まれ。このような場所に何の用だ?」

サタン「ガッハッハッ、聖杯をぶち壊しにきたぜ」

言峰「それは構わんが、アレは産まれたがっている。職業柄、生命の誕生は見届ける義務があるのでな。その後でなら好きにすると良い」

アサシン「何をバカなことを。アレを産ませたら終わりなんですよ!」

言峰「……ならば仕方あるまい」スッ

格闘の構えをとる言峰。

サタン「三人相手に勝てると思っているのか?」

ギルガメッシュ「フッ、我の気配にすら気づけんか。貴様ら雑種が何人いたところで同じであろう」

臓硯「……ギルガメッシュ!」

ギルガメッシュ「あの時の借りは返すぞ、偽りの英雄もどきよ!」

王の財宝への鍵が開かれる。

ギルガメッシュ「どうした? 今度は奪わんのか?」

サタン「奪ったらなにもできず可哀想だからな。またあの爆弾でもくらうか間抜け野郎!」

ギルガメッシュ「王への度重なる愚弄……、万死に値する!!」

剣、槍、斧、あらゆる宝具がサタンめがけて放たれる。

当たる直前、サタンを守るように黒い柱が三本立ち上った。

ギルガメッシュ「影だと? なんとおぞましい」

サタン「……出来れば使いたくはなかったが。それにしても何という……」

俺様の歴史にまた1ページで桜の歴史を奪ったサタン。影の力の使用の際、負の感情が尋常ならざるレベルで昂ぶっていくのを感じた。

サタン「もっと弱い子だと思っていたが、わからないもんだな」

桜の精神力の高さに素直に驚嘆する。

ーーしかし、あんなに綺麗な少女がこのような感情に耐える必要はない。

そう考えた瞬間、その小さな怒りすらも昂り、煮え滾るマグマのように激しい怒りがせり上がってくる。

その感情に合わせるように、さらに十体。計十三体の影がギルガメッシュへと触手を伸ばす。

ギルガメッシュ「おのれ小癪な!!」

宝具を射出し、影を消していく。
しかし消したとたんに新たな影が出現し、ジリ貧状態となっていた。

サタン「なかなか苦戦してるじゃねえか。貴様の財宝、幾らあっても足りんぞ」

ギルガメッシュ「くそっ!」

ジリジリと距離を詰められ、苛立ちが募る。
ギルガメッシュは今までの宝具とは明らかに異質な剣を引き抜いた。

ギルガメッシュ「貴様のような雑種にこの剣を使用すること、光栄に思うが良い!」

サタン「……そいつはヤバそうだな。だが相手を見極め正しい時に使わないと、宝の持ち腐れだぞ。時間切れだ、ギルガメッシュ!」

この戦闘の最中こっそりと伸ばし続けていた影が、ギルガメッシュの背後から伸び、腹に突き刺さった。

ギルガメッシュ「バカ……な……!!」

ゆっくりと歩いて近づいてくるサタン。

ーー生まれ変われよ。お前はすごい英雄のはずだ。……このミスターサタン様の次くらいにな。

サタン「救世する爆発の如き拳!!」

鮮やかな右ストレートがギルガメッシュの顔面を射抜いた。

ギルガメッシュ「ククク、ハーッハッハッハッ!! 英霊とは思えん貧弱な攻撃だな。宝具にしては味気ない。何か精神作用を及ぼそうとしたようだが、我に通じるわけがなかろう」

サタン「悪人を善人へと変える俺様のパンチが……」

ギルガメッシュ「なるほど。それならば尚のことよ」

ーー彼はただひたすらに王であった。
善も悪も希望も絶望も、この世に存在するありとあらゆるものは等しく王の所有物でしかない。
彼の根底にあるのは愛。
善人であろうが悪人であろうが、楽しませてくれるなら、それは寵愛すべき対象となる。
正義を良し悪を悪しという概念自体が存在しないこの王の前では、サタンのパンチは羽虫が止まった程度のものとなんら変わりはなかった。

ギルガメッシュ「……気が変わった。聖杯の孔を閉じたいなら閉じるがいい。我は見物させてもらうとする」

サタン「い、良いんですかギルガメッシュさん。いや〜ありがとうございます! では失礼します!」

ギルガメッシュ「ただし、そこの男は我慢ならないようだがな」

倒れた臓硯とアサシンを背景に言峰綺礼が立ちふさがっていた。

言峰「まったく。肝心なところで私に愛想を尽かしたかギルガメッシュ」

ギルガメッシュ「クックックッ、なに案ずるな。この男にも興味が湧いたのでな。貴様らの願いはどちらか一方しか叶わぬ故、我が手を出しては面白くなかろう」

言峰「……致し方ない。では始めるとしよう」ダンッ!

地面を蹴るその一歩でサタンの懐へと接近する。放たれる拳は十分に、人の領域を凌駕していた。しかしサタンは間一髪で回避する。

サタン「なかなかやるじゃねえか。出し惜しみしてる場合じゃなさそうだな」

影を三体作る。

サタン(そろそろヤバイな。これ以上使えば意識を乗っ取られそうだ)

言峰は影から伸びる触手を軽い動きで避けていく。

言峰「厄介だな。この影、一体一体がサーヴァントに匹敵しうる代物だぞ」

サタン「そうだ。そしてお前がこの世に出そうとしているアレはさらに厄介だぞ。諦めて真っ当に神父として生きやがれ」

言峰「フン、それでこそ生まれる価値があるというものだ」

サタン「とことん歪んでやがるな。このミスターサタン様が貴様に悪以外の愉しみを教えてやる」

言峰「無駄なことだ。私には悪以外への感情がもともと存在していないのだから」

サタン「そうか、気付いていないか」

言峰「……何を言っている?」

サタン「ガッハッハッ、後で嫌でも分かるさ!」ダッ

言峰の右、左、後ろから影が迫る。そして前方からはサタンが駆けてきていた。

サタンのパンチは自分に効果をもたらさないと判断し、影の防御にのみ意識を集中させる。

サタン「この英雄王ミスターサタン様をを侮ったな」

かくして救世する爆発の如き拳は、言峰の横っ腹を抉った。

言峰「グフッ。そうか……。これが、私の……罪なき悦びか……」

溢れて来たのは麻婆豆腐への愛とも呼ぶべき気持ちだった。ふらふらと立ち上がる言峰の顔はどこか晴れやかだった。

サタンは影を解除すると、ゆっくりと聖杯の中身へと向かっていく。もう言峰は視界にさえ入っていなかった。後は孔を閉じるのみだ。


サタンが聖杯へと近づく度に、アレは胎動していく。

ドクン。ドクン。ドッドッ。ドッドッ。

生まれたいとでも抗議するかのように、どんどん鼓動を早めていく。

サタン「さあ、聖杯よ。閉じてもらうぞ」

言葉とは反対に、サタンの動きは停止する。

サタン「……時間、切れか」

すでにサタンの首から下は半透明になって、今にも消えかかっていた。

俺様の歴史にまた1ページの使用制限時間はとっくに過ぎ、精神力で踏ん張っていたサタンだが、ついに限界がきたのだ。

ギルガメッシュ「クックックッ、ハーッハッハッハッ! 志半ばで散るかサタン! ありきたりな展開ではあるが……その滑稽さ、なかなかに楽しませてもらったぞ!」

アサシン「……そん、な。ぜんぶ、無駄に……なった…………のか」

サタン「無駄ではない。桜の歴史を奪ったまま消える以上、あいつと聖杯の関係は断ち切られる。最後に一人しか救えんかったが……まあ、俺様一人でやったにしては上出来か。……後は頼んだぞ。化け物が出てくるだろうが、お前らが力を合わせれば勝てないことはないだろう」

言峰「協力するつもりは毛頭ないが、麻婆の恩は返さんとな」

サタン「ギルさん。もしもの時は頼みます。貴方なら、一人でも聖杯なんて倒せそうだ」

最後にそう告げて、サタンは英霊として消滅した。

ギルガメッシュ「……」

ギルガメッシュ「フン、雑種にしては大儀であった」


サタンの消滅。それだけで聖杯は満たされる。

ドッドッドッドッ。

胎動するアレから黒い霧のようなモノが噴き出していく。
やがてそれは人間のようなフォルムを形成した。

言峰「……なんという邪悪な気配!」

徐々に霧が晴れていく。
聖杯が内包する無限とも呼べるエネルギー。そのすべてを使って、サタンの記憶を読み取った聖杯からなんとか再現されたそいつは、今、この世に顕現した。

緑色の身体、昆虫に似ているがどこか完成されたフォルム。

ーーその名は人造人間セル・超完全体。

サタンの記憶の中でも中堅の敵ではあるが、それが聖杯の限界だった。
しかし、それで十分。当初生まれる予定だったこの世全ての悪とは比べ物にならない程の力を秘めていた。

セル「さあ、セルゲームを始めよう」

界王「とにかくお前に分かりやすく説明すると神龍を呼び出すときに魔人ブウが出てくるような危険な代物でな。聖杯戦争に参加して世界を救ってこい」

悟空「魔人ブウかー。へへっ、ワクワクしてきたぞ」


グレード下がってるじゃねーか

その場にいる誰もが動くことができなかった。ギルガメッシュでさえ、ただ呆然と眺めることしかできない。

少しでも闘いに通じている者なら嫌でもわかるだろう。この悪魔の強さが、どう抗っても覆ることがない絶対的なものであることが。

セル「どうした? 緊張しているようだが」

臓硯「サタンのマスターも規格外であったが……、こやつは次元が違うわ……」

ギルガメッシュ「虫けら風情が! 緊張するのは貴様の方であろう? それとも格の違いもわからぬか」

セル「……虫けら? もしかして、わたしのことを言っているのか?」ピクッ

ギルガメッシュ「まさかその姿で人間にでもなったつもりではあるまいな? 猿でももう少し似ているぞ」

次の瞬間、ギルガメッシュは瀕死の重傷を負っていた。

ギルガメッシュ「あ?」

バタン

セル「手加減したつもりだが、今の速度にすらついてこれないようだな」

ギルガメッシュ「お……の、れ」

セル「安心しろ。セルゲームまでは人を殺せないのでね」

それはサタンの最後の抵抗だった。聖杯より生まれ出ずるモノが十日間人を殺せないよう聖杯に制限をかけたのだ。

アサシン「強すぎる……」

セル「それでは私はやることがあるので行かせてもらう。セルゲームの詳細は追って連絡するとしよう。テレビを常にチェックしておけ」

衛宮家

悟空「そうか……。サタンは消えちまったか」

アサシン「はい……。すいません。私がもう少し強ければ……」

悟空「おめえのせいじゃねえさ。あいつは殺したって死なねえし大丈夫だ! ……にしてもセルか〜。あんまりワクワクしねえぞ」

凜「ワクワクってあんたねえ……。その言い方だと、悟空さんはセルってやつと闘ったことがあるのかしら?」

悟空「ああ、昔闘ったことがあるけどそん時は負けたんだ。あいつ最後の最後で自爆するもんだからオラ死んじまったぞ」

凜「死んだって……悟空さんはここにいるじゃない」

悟空「ドラゴンボールで生きけえったんだ」

凜「士郎が言っていた石ね? ……その話の真偽はともかく、悟空さんでも勝てないってことはかなりまずいわね……」

悟空(今なら楽勝で勝てるんだけどなー)

悟空「そういや聖杯ってのはここ以外にもあんのか?」

凜「そうね、確認されていないものも含めれば何百とあるはずよ」

悟空(ってことはセルくれえのヤツがまた現れるかもしれねえ。こいつらだけでセルを倒せるようになっといてもらわねえとな!)

テレビ『お、おい! なんだ君は!?』

セル『おはよう、地球人の諸君。今日は君たちに大事なお知らせがあるので少しお邪魔している。この平和な日々に退屈していた君たちに朗報だ』

アサシン「セルがでました!」

凜「こいつがセル……」

士郎「なんか虫みたいだ」

セル『十日後、セルゲームを行うことにした。セルゲームというのは、早い話が殺し合いだ。何人で来ても構わない。ただし、私を倒せる者がいなければ地球を滅ぼすのでそのつもりでくるように。参加者は十日後の正午までにに冬木の街にある柳洞寺に集まってくれ。それ以降チャレンジャーがいなくなった時点で皆殺しを開始する』

テレビ『何を言ってるんだ! だれか摘み出せ!』

セル『信じてくれなければ困るので、私の力のほんの一部をお見せしよう。そこのカメラマン、あそこにあるビルを映せ!』

カメラマン『は、はい!』

セル『ふん!』

士郎「ビ、ビルを持ち上げてる……」

イリヤ「バーサーカーより力持ちかも」

セル『良いデモンストレーションになっただろう。ところでそこの君、私の雄姿はちゃんと世界に放映されたかね?』

テレビ『これは関東のローカル番組です……』

セル『なに!? ま、まあ良いか。とにかく! 人が来なければ皆殺しだからな!』ビューン

セイバー「舞空術!」

アーチャー「案外間抜けなヤツだな」

悟空「でも強えぞ。十日間しかねえんだ。早速修行始めねえとな!」

士郎「十日間で間に合うのか?」

凜「やるしかないわ! 何人で闘っても良いって言ってたし、連携を磨きましょう」

悟空「そのことなんだけどな、オラの知り合いにおめえらを鍛えてもらおうと思うんだけどどうだ?」

凜「悟空さんの知り合い? 私は構わないけど……」

悟空「ああ、全員鍛えてえけど基礎をやった方が良いヤツもいるしな! 士郎と凜は亀仙人のじっちゃん、アサシンはミスターポポ、セイバーとアーチャーとバーサーカーは界王様んとこだな!」

イリヤ「ねえ、私は?」

悟空「おめえは……、パンにすっか!」

悟空「じゃあおめえら、三日前になったら迎えにいくから、それまでしっかりやれよ!」

悟空はそれぞれを瞬間移動で送り届けると、最後にパンのところへ向かった。

悟空「パン、この子はイリヤってんだ。一緒に遊んでやってくれ」

イリヤ「遊んでやるってこの子の方が年下じゃない!」

悟空「ま、まあそう怒んなって。こいつはオラの孫のパンだ。おめえは体力がねえけど、パンと遊んでりゃしらねえ間についてるはずだ」

パン「よろしくね! お姉ちゃん!」

イリヤ「……まったく、仕方ないんだから。お姉ちゃんが遊んであげるわ」

パン「わーい! じゃあまずは、世界一周タイムアタックしよ!」

イリヤ「へ? え、ちょっと待っーー」

イリヤ「いやああああああ!!」

パンはイリヤの手を引き走り去っていった。

悟空「……オラはあいつんところへ行くか!」ピシュン

教会

悟空「オッス!」

ランサー「テメエ、どっから現れやがった」

悟空「瞬間移動さ。そんなことよりランサー、オラと修行しねえか? おめえならかなり強くなれると思うんだけどな」

ランサー「修行……ねえ。あのセルってバケモン見たか? おそらくアンタでも敵わねえはずだ。今さら十日間修行したくらいでどうにかなるような差じゃねえぞ」

悟空「そんなことはやってみなきゃわかんねえさ」

ランサー「チッ、まあいい。最初から一人で挑むつもりだったしな。教わるのは癪だが、それで負けりゃどうしようも」え。じゃ、改めて言わせてもらう。オレに気功を教えてくれ」

悟空「へへっ、そうこなくっちゃな!」





教会

悟空「オッス!」

ランサー「テメエ、どっから現れやがった」

悟空「瞬間移動さ。そんなことよりランサー、オラと修行しねえか? おめえならかなり強くなれると思うんだけどな」

ランサー「修行……ねえ。あのセルってバケモン見たか? おそらくアンタでも敵わねえはずだ。今さら十日間修行したくらいでどうにかなるような差じゃねえぞ」

悟空「そんなことはやってみなきゃわかんねえさ」

ランサー「チッ、まあいい。最初から一人で挑むつもりだったしな。教わるのは癪だが、それで負けりゃどうしようもねえ。じゃ、改めて言わせてもらう。オレに気功を教えてくれ」

悟空「へへっ、そうこなくっちゃな!」



ギルガメッシュ「クックックッ、英霊が人間に教えを請うか。流石は負け犬、我には到底真似できん」

ランサー「あん? セルに半殺しにされた負け犬が何吠えてんだ?」

ギルガメッシュ「フン、王とは慢心するものだ。しかし格の違いは見せておかなければならん。次は最初から全力で行く。……それで終わりだ」

悟空「おめえ誰だ?」

ギルガメッシュ「まったく、我を知らんとは教養が足りん。英雄王ギルガメッシュ、この名をしかと覚えておけ」

悟空「なんかベジータみてえなヤツだな。オラは孫悟空だ。よろしくな!」

ギルガメッシュ「……貴様、王に対して馴れ馴れしいぞ」

言峰「やめておけギルガメッシュ。今は人間同士で争っている場合ではないだろう」

ギルガメッシュ「貴様、いつから我に指図できるようになった?」

言峰「なに、これは指図ではなく私からのささやかなお願いだ。セルを倒せるのはギルガメッシュの持つエア以外にありえまい。だが単独で当てることは不可能だろう。ここにいる全員でセルを抑え、エアをぶつける。これが一番成功率が高いと踏んでいるがどうだ?」

ギルガメッシュ「共闘などありえん。すっかりサタンに毒されおって。貴様がこの世全ての悪を望んだくせに、まさか倒す方法まで考えているとは思わなかったぞ」

言峰「共闘しなければ勝てないことはこの間の遭遇で理解しているだろう? 世界が滅べば麻婆を食うことができん。それをわかっているのか!?」

悟空「おいおい、おめえらまで揉めるなよ! そんなに言うならギルガメッシュ、おめえがセルを倒すのをオラに見学させてくれ。そこで倒せなかったら、おめえも一緒に修行だ」

ギルガメッシュ「フン、なぜ我がそんな賭けをせねばならん」

悟空「別に勝つんなら問題ねえだろ。もしかしてあんまり自信ねえのか」

ギルガメッシュ「……良いだろう。その代わり、我がセルを倒したら貴様には死んでもらうぞ?」

悟空「よし、決まりだな!」

柳洞寺

セル「……やれやれ、セルゲームは十日後だと伝えたはずだが?」

ギルガメッシュ「思い上がるな雑種! 王を待たせて良いのは真の王たる我だけだ。借りは返させてもらうぞ!」

途端、あらかじめ展開されていた王の財宝から武器の雨が降り注いだ。

必中、必殺、あらゆる効果を乗せた宝具達はセルに突き刺さっていく。

セル「ガハッ!」

紫色の鮮血が散る。

もはや生きているとは思えない姿になっても、王は油断などしなかった。

死体とも呼べそうなその体を、友の名を冠する鎖で空中に縛り上げる。

ギルガメッシュ「天地乖離す開闢の星!!」

次元をも切り裂く最強の一撃がセルを襲う。

一瞬の暴風の後、残っていたのは肉塊だった。

ランサー「アイツの本気ってのがこれほどとはな……。でかい口叩くだけはあるじゃねーか」

肉塊がもぞもぞと動きながら集まっていく。時間が経つにつれ、セルの形へと戻ろうとしていた。

ギルガメッシュ「やはり完全に消滅させるしかないようだな。……耐えろよ綺礼」

王はまだ戦闘の最中にいた。武器を、構えを解いてはいなかった。

限界を超えて放つ二連続の天地乖離す開闢の星。その溜めを怠ってはいなかった。

セル「ワザと喰らってみたがなかなかの威力だったよ。かなり火力に欠けるが、無理やり体を切断されそうになるのはなかなか面白ーー」

ギルガメッシュ「雑種の戯言は聞こえんな。今度こそ迷わず逝けよ、天地乖離す開闢の星!!!」

再び、無防備なセルの体を衝撃が襲う。しかしそれだけだった。

ギルガメッシュ「バカな!?」

セル「ワザと喰らってやったと言ったはずだが? 本来そんな技で私に傷をつけられるワケがないだろう」

ランサー「……対界宝具に無傷はねえだろ」

ギルガメッシュ「ふざけるな!!」

王の財宝から無数の武器が射出される。

それをセルは手だけで弾く。あらゆる効果を持つ宝具達は地面に突き刺さっているだけの棒切れへと化していた。

セル「王なら慌てるなよ。みっともない。先ほどまでの偉そうな威勢はどうしたのだ?」

ギルガメッシュ「おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれええええええ!!」

なおも宝具を放ち続けるが、どれも傷一つつけることすら叶わない。

セル「やれやれ、芸が無いな。それより喜べ、貴様の先ほどの攻撃でサタンからの制限が解けたようだ。礼だ。楽にしてやろう!」

セルの手元に気が集まっていく。

放たれる気弾はエアをも超える威力を有しているだろう。

気の概念を知らないギルガメッシュをしてそう思わせた。

ギルガメッシュ「……認めてやろう。今はお前の方が強いとな」

セル「今は、ではない。これからもだ!!」

気弾、と言うよりはレーザービームのような閃光がギルガメッシュへと向かっていく。

しかし死に際にこそギルガメッシュは落ち着いていた。まっすぐ向かってくる死を堂々と、偉そうに腕を組み立ちながら睨む。

たとえ殺されようとも、王の尊厳は踏みにじることはできない。その背中が雄弁に語っていた。

ーー思ったよりやるじゃねえか。

ギルガメッシュへと向かう死は、横から飛んできた極太のレーザービームによってかき消された。

セル「……!! かめはめ波だと!? この気、まさかッ!!」

悟空「よお、久しぶりだなセル」

セル「やはり孫悟空か! 貴様、なぜここにいる」

悟空「まあ色々あってよ。セルゲームはまだ先だろ? それまで大人しくしててくれよ」

セル「先にちょっかいをかけてきたのはそっちだ」

悟空「オラからちゃんと言っとくからさ」

セル「……良いだろう。私もまた貴様と闘えるとは思っていなかった。ついでに一つ言っておく。今回のセルゲームには降参はないぞ」

悟空「ああ、オラ今回は参加しねえから大丈夫だ。おめえを倒すのはこの地球の人間たちだぞ」

セル「……本気で言っているのか? 貴様ですら勝てないこの私に、地球人だけで勝てるはずがないだろう」

悟空「オラはそうは思わねえけどな。さっきも死にかけてたじゃねえか」

セル「あれはワザとくらってやったんだ! バカにするなよ!!」ダッ

その場にいた英霊達をして目視不可能な加速で悟空へと迫る。

その一撃一撃が必殺を誇るパンチや蹴りを浴びせていくが、悟空はいとも簡単に躱していく。

悟空「そんなんじゃ当たらねえぞ。もしおめえがセルゲームの参加者を全員倒せたらオラも闘ってやるさ」

セル「覚悟しておけ! 必ず地獄を見せてやる!」

協会

悟空「じゃあギルガメッシュも修行するってことで文句はねえな?」

ギルガメッシュ「……王に二言はない。今のままでは勝てぬのも事実。だが心しておけ。我に教えるということは敗北は許されんぞ」

悟空「あたりめえだ。負けたら地球がなくなっちまうからな」

ランサー「こうしてる時間ももったいねえ。さっさと始めようぜ」

悟空「よし、場所を変えるぞ」

言峰「私は……、柳洞寺へ人が来ないよう見張っておこう。先ほど魔力を存分に奪われて動くこともままならん」

悟空「そうか。一応仙豆を渡しとくか。大きな怪我したり体力がない時に食えば一瞬で回復できるぞ」

ギルガメッシュ「仙豆とやら、本当にあったのか」

アインツベルンの森

悟空「ここなら良さそうだな」

ランサー「で、まずは何から始めりゃ良いんだ?」

悟空「ランサーにはまず色んな気の使い方を教える。一人で気を覚えたくれえだし、すぐにできるようになると思うぞ」

悟空「ギルガメッシュはオラと組み手しながら接近戦を鍛えてもらう」

ギルガメッシュ「接近戦だと? そんなことより我にも気とやらを教えろ。そうだな、貴様がセルに放った技……あれが良いだろう」

悟空「教えてやってもいいけどよ、まずは接近戦だ。おめえは遠距離向きの攻撃手段しか持ってなさそうだったし、接近戦もあんまり強くねえ。本当は距離を開けて闘えりゃあ良いんだけど、セルなら一瞬で詰めてくるからな」

ギルガメッシュ「ぐぬぬ!」

悟空「……でもよ、あのエアっちゅー剣はなかなか良かったぞ。おめえがもっと強くなればセルだって避けるしかなくなるはずだ」

ーー

ギルガメッシュ「かめはめ波!!」ぽしゅ

ランサー「かめはめ波ーー!!」ブォーン

悟空「ランサー、かめはめ波は合格だな! 次は舞空術やってみっか! ギルガメッシュはもうちっと練習した方が良いな」

ギルガメッシュ「クッ、我が雑種如きに遅れをとるとは……」

ランサー「ま、せいぜい追いついてこいよ!」

ランサーが新しい技を覚えてはギルガメッシュが追いつく。それをまたランサーが離してはギルガメッシュも食らいついていく。そんな日を繰り返す。

そして一日の終わりにする悟空との組み手で、二人は自身の成長をはっきりと実感していた。

同時に理解もした。悟空という男の底知れぬ実力。前まではその差すらもみえなかったが、今では僅かに感じとることができる。その上で、悟空ではセルに勝てないということもやはり再認識させられてしまった。

ランサー「なあギルガメッシュ。俺たちこのままいったとしてもよーー」

ギルガメッシュ「ーーセルには絶対勝てぬか?」

ランサー「……おそらくな」

ギルガメッシュ「……明日、悟空を倒す。それすらも出来ぬようなら結果は同じであろう」







翌日

悟空「オッス! 今日も修行始めっか!」


ギル・ランサー「……」

悟空は二人の様子がいつもと違うことに気がついた。静かに気を練りながら、僅かな殺気を滲ませているのを感じたのだ。

悟空「……おめえら、なんのつもりだ?」

ギルガメッシュ「……セルより弱い貴様にこのまま修行を受けたところで、結局は倒せぬのが道理。それよりもこの三つ巴の闘いを制した者こそ、奴の喉元に届き得るというものであろう」

ランサー「俺も同じ意見だ。テメエとのマジの闘いとなりゃ、百万回の戦闘経験にすら勝るだろう」

悟空「協力して倒そうとは思わねえのか?」

ランサー「確かにそれができれば一番効率は良いかもしれねえが、柄じゃねえんだ」

悟空「そうか……。言われてみっと強さも見せねえで、偉そうに教えてたように感じさせちまったかもしれねえな」

ギルガメッシュ「フン、強さは十分に見せてもらったぞ。だが、我も強くなったことでわかったのだ。貴様とセルの差、到底覆るものではないことにな」

ランサー「そういうことだ。この闘いを制して、誰かが一皮むけりゃそれで良い」

悟空「っし、じゃあちょっと移動するぞ。ここじゃ本気は出せねえからな」

神殿

ピシュン

悟空「ピッコロ、精神と時の部屋借りるぞ」

ピッコロ「……好きにしろ。」

ランサー「おい、なんかこいつセルに似てねえか?」

ジロッ

ランサーはピッコロの視線を受けると、蛇に睨まれたカエルのように動けなくなった。

ピッコロ「……ふん」

ピッコロが視線を外す。

ランサー「ック!! はあっ、はあ。……あいつセルより強いんじゃねえか?」

悟空「へへっ、ピッコロは耳が良いから気をつけろよ」

ギルガメッシュ「……空に浮かぶこの神殿、我が住むに相応しい場所だな」

精神と時の部屋

悟空「よし、準備はいいか?」

ギルガメッシュ「グウッ……!!」

ランサー「グギギギ……!!」

ランサーとギルガメッシュはその場に踏ん張りながら返事をすることもできないでいた。

精神と時の部屋の中は地球と違い10Gの重力がかかっている。常人なら押し潰れているだろうこの重力に、耐えているだけでも見事と言えた。尚且つ、ここは高山のように空気も薄い。いかに英霊と言えども適応には時間がかかるだろう。

悟空「おめえら重力の修行は初めてか? 弱ったな。これじゃあ闘いになんねー」

悟空「……悪いけど、まずは普通に動けるようになるまで修行だな」

三ヶ月後

ギルガメッシュ「……そろそろ頃合いだな。三ヶ月前の続きを始めるぞ、悟空!」

悟空「ああ、なんかワクワクすっぞ!」


ランサー「この闘いで死んでも恨みっこなしだぜ。様子見はなし、ハナから全力で行かせてもらう」

悟空「そうだな……。おめえらにはちょっとキツイだろうけど、オラも久しぶりに本気で行かせてもらうぞ! これで負けたら協力してセルを倒してもらうからな」

悟空はベジータとのある一戦を思い出していた。本気でこいと言ったベジータに、悟空は勝てる程度の力を出して挑んだのだ。その結果、戦友のプライドを傷付け、ある悲劇が起こったのである。

悟空「……今回は間違えねえ」ボソッ

悟空「ハーーーーッ!!」ボウッ

悟空の気合いの一声で、周りの空気が一変する。悟空の周囲から烈風が逆巻きながら金色の闘気が滲み出ている。彼の髪は金色へと変わりながら、腰ほどまで伸びていく。そして普段温厚な彼からは想像もつかないほどの殺気が辺りに充満していた。

ギルガメッシュ「な、なんだこのパワーは!?」

ランサー「これが……悟空の本気……!!」

ランサー「もうダメだ、おしまいだぁ・・・」
ギル「逃げるんだ、勝てるわけない」

悟空「どうしたこねえのか? 今さらビビったなんて言わねえでくれよ」

ランサー「ハン! 上等だ!!」ダッ

ランサーは悟空に接近すると、打撃のラッシュを浴びせる。しかし悟空はあっさりとその全てを躱した。

悟空「今度はこっちの番だ! だりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

悟空の拳が降り注ぐ。

あまりの速度に防ぐこともできず、急所だけを庇うことに専念する。

ランサー(チッ、加減されていやがる。……まあ仕方ねえか)

ランサーは悟空のパンチが加減されているであろうことを肌で感じた。もしこれが本気であったなら、その一撃一撃がギルガメッシュの天地乖離す開闢の星をも超える威力を有しているだろう。信じがたいが、根拠のない確信があった。




ランサー「グフッ」

急所を庇ったとはいえ、その効果は無かったに等しい。満身創痍になったランサーだが、まだその目は死んではいなかった。

ランサー「刺し穿つ死棘の槍!!」

気で創りあげたゲイボルグを手に持ち、叫ぶ。気と魔力を織り交ぜて創られたこの槍は、本物となんら変わらない威力、効果を秘めていた。

悟空の心臓へと向かって有り得ない方向から突き出されるその槍は、目的の場所へと接近しーー刃先から折れてしまった。

悟空「前も見たけどよ、ほんとは避けるまでもねえんだ。おめえらが扱う宝具っちゅーのは、戦闘力が離れてたら多分ほとんど通じねえはずだ」

ランサー「ハッ! これで倒せねえことなんざ織り込み済みなんだよ!」

言うと同時、ランサーの右胸から槍が突き出る。刺し穿つ死棘の槍に気をとらせたその一瞬、ランサーはただ愚直にこの時を待っていたのだ。

背後に隠していた突き穿つ死翔の槍で自分ごと貫き、見事意表をついてみせた。槍は爆発を起こしながらも勢い衰えず、悟空へと突き刺さる。

爆煙が晴れると、服こそ消し飛んだものの無傷の悟空と倒れ伏したランサーがいた。

悟空「今のは驚いたぞ。 おめえがセルくらい強くなってたら、オラも怪我してたかもしれねえ」

ランサー「ククッ、それ……でも……怪我どまり、か……よ」

最後にそう言い残し、ランサーは気を失った。

ギルガメッシュ「ーー天地乖離す開闢の星!!」

何もギルガメッシュは二人の闘いを黙って見ていたわけではない。
ただひたすらに、フルパワーで自身最強の技を放つために力を溜め続けていたのだ。

ゲイボルグによる爆煙が晴れると同時、ギルガメッシュは初めて、世界が壊れることも厭わずにフルパワーのエアで攻撃を繰り出す。

その斬撃は地獄を創造する一撃となり、悟空に迫る。
こんな状況においても、悟空は気付かずにランサーに一言何かを告げていた。

ギルガメッシュ「いや、ーー貴様が気づいていないはずが無い。まだ慌てさせるには至らぬか。……た、太陽拳!!」

ギルガメッシュの黄金の鎧がいつもにも増して輝く。悟空がいよいよ斬撃を見ようかとした直前、眩い閃光が空間を包んだ。

悟空「へへっ、まさかおめえが太陽拳を使ってくるとはな。王のするポーズじゃないとか言ってたくせによ」

悟空は目を閉じながら、はっきりとギルガメッシュの方へと殺気を飛ばす。太陽拳をまともに直視すればしばらく目は使い物にならなくなる。それならば最初から目を閉じていればいい。

ギルガメッシュ「やはり太陽拳を食らわせることすらできんか。だがーー」

ーー貴様が目を閉じているその間に、我がエアの斬撃が八つ裂きにしてくれる!!

悟空「波ーーーーッ!!」

斬撃に向かって悟空は気功波を放つ。

ぶつかった二つのエネルギーは轟音と衝撃波を撒き散らしながら、やがて相殺されるようにかき消えた。

ギルガメッシュ「……認めてやろう。我の負けだ」

悟空「なんだ、もう諦めんのか?」

ギルガメッシュ「今のが我の全力だ。まさかセルが可愛く見えるほどの力を隠していたとはな。奴は貴様が倒せばいいだろう」

悟空「前にも言ったけどよ、この地球の奴らだけで倒せるようになっててほしいんだ。セルより強えやつだって宇宙にはたくさんいるからな」

ギルガメッシュ「宇宙……か。クックックッ、我が王道は所詮、狭い箱庭の中の出来事であったということよな」

ランサー「……おいおい、らしくねえな。テメエはいつでも王様気取ってふんぞり返ってたじゃねえか」

ギルガメッシュ「ランサー、生きていたのか」

ランサー「ああ、相当手加減されたらしい。ま、仙豆食ってやっと回復したんだけどな。なあギルガメッシュ、このままじゃ終われねえだろ」

ギルガメッシュ「……貴様、何が言いたい?」

ランサー「合体技だ! それなら勝てるかもしれねえ!」

ギルガメッシュ「フン、そんなものを当てる隙があると思うか?」

ランサー「おい悟空! 最後は必殺技のぶつけ合いでケリを着けようや。お互いに避けるのは無しだぜ?」

悟空「なんか面白くなってきたなー。よし、それで決着をつけるか!」

ランサー「ってわけだ。やるぞ、英雄王さんよ」

ギルガメッシュ「……良いだろう。ランサーよ、勝算はあるのだな?」

ランサー「わからねえが、ゼロってことはねえだろ!」

ギルガメッシュ「ならば問題はない。英霊が二人も入れば、求める結果にたどり着くことも可能であろう」

悟空と二人の英霊は一定の距離を取ると、気を練り始めた。

悟空「かーーーーめーーー!!」

ランサー「ギルガメッシュ、さっきと同じように技を放て。後は俺が何とかしてやる!」

ギルガメッシュ「よかろう!」

悟空「はーーーーーめーーーーー!!」

ギルガメッシュは気を練りながら、違和感を感じていた。絶対の王であった自分の行動とはズレてきているような、そんな予感。本来の行いとは違う行為・思考をしているという確信があった。

ギルガメッシュ(サタンの拳、思った以上に効いていたか)

だが、悪い気分ではなかった。いっそこのままの思考に完全に身を委ねて見るのも面白いかもしれない。あくまで彼は彼なのだから。その根本、王であることに揺るぎはないはずだ。

ギルガメッシュ「鳴け、エアよ! 天地乖離す開闢の星ーー!! !!」

ランサー「ーー別ち穿つ創造の星《エヌマエリシュ》!!!」

悟空「波ーーーーーーーーーーーッッ!!!!」

エアの斬撃は必中の効果を持って悟空へと迫っていく。

しかしその時、悟空より放たれたかめはめ波はあまりにも巨大だった。

斬撃が小隕石なら、アレはまさに惑星としか形容出来ない。少なくとも眼前の視界からはその全貌を見ることは不可能だった。

斬撃は衝突すると、水際の砂浜に描いた絵のように一瞬でかめはめ波に・まれてしまった。

僅かばかりの勢いを殺すことすら叶わず、ギルガメッシュとランサーに向かって真っ直ぐ進んできている。

ギルガメッシュ「……美しい。そうは思わんかランサー」

ランサー「わからないでもねえ。地球を外側から見るとこんな感じなのかもな」

ギルガメッシュ「この財宝とも呼べる光景の中に埋もれて消えるなら、それもまた一興か」

ランサー「完敗だな。けど、最高だった。こんな楽しい闘いは初めてだ」

クンッ

二人が死を覚悟したとき、いよいよ直撃しようとしていたかめはめ波は直角に曲がり、空へと進んでいった。

悟空「へへっ、オラの勝ちだな!」

ギルガメッシュ「クッ、クックック、ハーッハッハッハッ。我をここまでコケにできるのは天上天下に貴様だけだろうな


ランサー「悟空の目を見ろよ。まだ俺たちにセルを倒させる気だぜ……」

悟空「にっしっしー。あたりめえだ。そのためにわざわざ本気出して闘ったんだからな。 おめえらももう文句ねえだろ」

ランサー「ああ、もう逆らう気力も起きねえよ」

ギルガメッシュ「うむ。この我をして認めてやらざるをえないようだ。それにしても此度の闘いは久方ぶりに心が躍ったぞ。悟空、ランサー、こっちへ来い」

ギルガメッシュは王の財宝からグラスを三つと酒の入った容器を取り出した。いずれも黄金の装飾が為されていてやんごとなき品物であることが伺えた。

ランサー「おっ、酒か!」

ギルガメッシュ「ああ、だがその前に心して聞くがよい。今日我は貴様らを友として認めることに決めた。今から交わすのは友の盃だ。この酒は我に相応しい至極の一品故、しかと堪能するが良い」

ランサー「おいおい、やけに偉そうな友達がいたもんだ。おめえの友なんざまっぴらごめんだが、そこの酒が呑まれたがっているから仕方ねえ。勘違いするんじゃねーぞ」

ギルガメッシュ「ふん、我も馴れ合うだけの関係なら要らぬわ! なに、親殺しの
狂犬に手も足も出ぬ化け物だ。退屈には困らぬだろうよ」

ランサー「……ま、とりあえず乾杯といこうや!」

カン!

悟空「うめえな! 何だこりゃ!?」

ランサー「っぷはぁー! もう一杯くれ!」

ギルガメッシュ「……エルキドゥよ。お前が今の光景を見たらどう思うだろうな」

小さな宴会が終わると、悟空は一足先に精神と時の部屋から出た。そのまま向かったのは士郎たちの所だ。

悟空「よっ。元気にしてっか?」

亀仙人「ほっほっほっ。昔のお前さん程じゃないがなかなかの速度で成長しておるぞ。天下一武道会でも良い線行きおるわい」

凛「ええ、今なら並のサーヴァントとなら結構闘える気がするわ」

悟空「そうか。じゃあちょっと早えけどカリン様のとこに行くか!」

士郎「カリン様?」

悟空「ああ、修行レベル2ってとこだな。ここの修行よりきついぞ」

凛「良いわ。やってやろうじゃない!」

一方その頃

イリヤ「ハァぁぁーッ!!」 ドンっ

パン「すごいすごーい!! イリヤお姉ちゃんもすーぱーさいや人だったんだ」

悟飯「おーーい、昼飯ができたぞって……ええ!?」

イリヤ「気で魔力を代用して私もスーパーサイヤ人になれないか試してみたんだけど……なれちゃった」

悟飯「すごい。戦闘力も本当に上がってるよ! これならなんとかすればセルも……。よし、僕が鍛えてあげよう」

パン「あ、ずるーい。私も修行する」

イリヤ「へへーん。お姉ちゃんの凄さを思い知ったか」

パン「私もなれるもんね!」シュインシュイン

各々が修行をして過ごしながら、いよいよセルゲームまで残り二日となった。

修行のため同行を拒否したイリヤ以外のメンバーは一度、界王星に集まった。

悟空「みんな短期間でグッと腕を上げたな! こっからは二人一組になってもらって連携を強化していってくれ。いくら強くなったとはいえ、協力しねえとセルには勝てねえからな」

ギルガメッシュ「我は無論、ランサーと
組ませてもらう」

セイバー「じゃあ私はシーー」

アーチャー「ーー私は衛宮士郎と組ませてもらおう」

士郎・セイバー「は!?」

アーチャー「……フン」

凛「じゃ、私はセイバーかな?」

セイバー「……わかりました。凛、よろしくお願いします」

アサシン「では僕はバーサーカーですね」

バーサーカー「ああ」

悟空「そうだ、精神と時の部屋っちゅう一日で一年分の修行ができる場所があるんだ。いっぺんに二人までしか入れねえから使いたいヤツがいたらオラに言ってくれ」

凛「ほんとなんでもありね……。質問だけどそこで一年分の修行をすれば歳をとるのかしら?」

悟空「ああ、そんときは一年分歳をとるぞ」

凛「それなら私はパスかな? セイバーも良いかしら」

セイバー「ええ、構いません」

>>783
魔翌力で気を代用じゃないだろうか

>>785
亀仙人のスケベを撃退するだけでそこそこの修行になりそうww

精神と時の部屋

アーチャー「……では始めるか」

士郎「その前に、俺をペアに選んだ理由を聞かせてくれ。二人きりになれば教えるってさっき言ってたじゃないか」

アーチャー「良いだろう。まず私の正体だが、貴様もうすうす感じているだろう? 私はお前であり、お前ではない」

士郎「……やっぱり、俺が英霊になったってことなのか?」

アーチャー「そうだ。人々を救う力のなかった衛宮士郎がそれでも救いたいと、英霊になることを代価に叶えた願いの成れの果てだ。結局救った数は百人にも満たないだろう。そしてそんな男自身の最期は実に救いようがないものだった」

そう。こいつが時々言ってくる忠告めいた言葉はどれも俺の心臓を抉るかのように胸に刺さっていた。それもそのはず。こいつの忠告はすべて過去に経験したことだったのだ。つまりは俺がこれから経験していくこと。心に響かないはずがなかったんだ。

アーチャー「最初はお前を殺すつもりだった。それで私がどうなるという訳でもないが、これ以上バカな男が増えずに済むとな」

アーチャー「私は絶望した気でいた。どれだけ鍛錬をしても救えない人間が出てくる。そして人の身の限界を超えるため英霊となったところで結果は変わらない。ーーだが、甘かった。悟空を見てわかった。修行が足りなかったとな」

アーチャー「片方を救えばもう片方を救えないのならもっと早く動けばいい。悟空なら救えた。そんな場面なら無数にある。結局私は少し力を付けたくらいで自分で限界を決めていたのだ」

>>787イリヤはサタンにDBで普通の人間にされたため魔術回路がかなり減ってます。なので気で代用しています

士郎「俺もあんたと同じ運命を辿るのか?」

アーチャー「私の時は悟空はいなかった。結果は変わるさ。あくまで私はお前の可能性の一つに過ぎない」

士郎「そうか。俺はあんたとは違う道を行く。たとえ未来の自分に否定されても全てを救おうともがくよ」

アーチャー「その道には地獄しか待っていないぞ? それでもその理想を絶対曲げないと誓えるか?」

士郎「ああ、曲げない」

アーチャー「フッ、そうか。今のお前ならば、少なくとも『オレ』よりはマシな未来に辿り着けるだろう。これから俺の経験の全てを教える。覚悟はいいな!」

士郎「上等だ!」

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3連単6番星宮いちご⇒12番氷上スミレ⇒16番霧矢あおいを買ったようだなーー!!」

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ベジータ「どうやら城樹は、7番氷上スミレ-3番北大路さくらを買ったようだなーー!!」

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ベジータ「どうやら城樹は、7番神崎美月を買ったようだなーー!!」

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中山競馬の11R,.弥生賞(G2)!の
ベジータ「どうやら城樹は、11番黒沢凛-10番朝日奈みらいを買ったようだなーー!!」
ベジータ「どうやら城樹は、4番宇海零を買ったようだなーー!!」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年12月24日 (土) 15:16:21   ID: bGExoR1-

面白かったです!

2 :  SS好きの774さん   2017年12月02日 (土) 21:50:56   ID: MtMOxOpW

未完結とは.....

3 :  SS好きの774さん   2018年03月19日 (月) 00:47:27   ID: xeACsQ0u

やっぱり長編の良作ってのは、スレの最後の方で荒らされて台無しになるってことだな

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