コバヤシ少年とハシバ少年のとある日常風景
3話と4話の間の出来事として書きました
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― 街中 ―
コバヤシ「はぁ……」
ハシバ「そんなに落ち込むことないだろう?」
コバヤシ「落ち込むよ~。だってアケチ先輩に事務所から追い出されちゃったんだよ!?」
ハシバ「仕方がないだろ? 今日は私用があるって言うんだから」
コバヤシ「うぅ……。折角、毎日準備してきてるのに……」
ハシバ「毎日準備してきてるってお前……。あの探偵事務所に毎日入り浸っていることは非日常的なことなんだぞ?」
コバヤシ「ううん。ボクにとってはあの場所だけが、唯一楽しいと思える日常なんだ」ニコッ
ハシバ「……」
ハシバ「な、なぁコバヤシ」
コバヤシ「――うん? なーに?」
ハシバ「たまにはクラスのみんなみたいに寄り道とかしてみたらどうだ?」
コバヤシ「……へぇ、意外」 ハシバ「えっ?」
コバヤシ「ハシバ君のことだからきっと……」
コバヤシ『学生の本分は勉学に励むことなんだから家に帰って勉強しろー!』
コバヤシ「――って、言うのかと思った」
ハシバ「ぜ、全然似てないからなそれ!!///」
コバヤシ「えー、そうかな?」
ハシバ「ま、まぁ似せよう努力したことだけは認める!///」
コバヤシ「でもやっぱりモノマネって上手く出来た方がいいよね」
ハシバ「はぁ? どうした急に?」
コバヤシ「だって、きっと捜査に役立つと思うし。――そうだ! もし今度、影男さんに会ったらコツ教えてもらえないかなー」
ハシバ「……」
乱歩SSとは珍しい
期待
ハシバ「ほ、ほら! この辺りだったらカラオケとかゲームセンターとか何でもあるぞ!?」
コバヤシ「うーん。ボク、そういうのに興味無いし……」
ハシバ「そ、そうか……」
コバヤシ「それにいきなり寄り道をしようって言われても……」
ハシバ「……で、でもさ」 コバヤシ「――あっ!」
ハシバ「ど、どこか行きたい所あったか!?」
コバヤシ「うん! ねぇねぇハシバ君!」
コバヤシ「今からボクと一緒に映画観に行かない?」ニコッ
ハシバ「はぁぁぁぁぁ!?///」
コバヤシ「実はちょうど今、ボクの好きな映画がリバイバル上映してるみたいなんだ」
ハシバ「いいい今から!?///」
コバヤシ「――あれ? そういう話じゃなかったっけ?」
ハシバ「ココココバヤシと二人っきりで!?///」
コバヤシ「そうだけど……」
コバヤシ「ダメかな?」チラッ
ハシバ「い、いやあの!///」 コバヤシ「……」
ハシバ「別にダメってわけじゃ!///」 コバヤシ「……」
ハシバ「…………その」
ハシバ「俺で良ければ……///」ボソッ
コバヤシ「ホント!? ありがとうハシバ君!」
――――――
――――
――
― 映画館 ―
ハシバ「……」
ハシバ(ほ、本当に来てしまった///)
ガヤガヤ
ハシバ「そ、それにしても複合施設だからか、平日でも結構混んでるものなんだなー」
コバヤシ「あまりこういう所へ来たことないからボクにはよくわからないや」
ハシバ「――あれ? 普段、映画館で映画観ないのか?」
コバヤシ「うん。そもそもこうして誰かと一緒に映画館で映画を観るのも初めてだよ」ニコッ
ハシバ「そ、そうか///」
―― あれ? ハシバ君とコバヤシ君だ!
ハシバ「えっ?」チラッ
―― あっホントだ! 二人で映画観に来たの?
ハシバ「いいいや別に俺たちはデー……じゃなくて!/// その――」
コバヤシ「うん、そうなんだ。でもハシバ君はボクの観たい映画に〝無理やり″巻き込んじゃっただけなんだけどね」
ハシバ「――なっ! 俺は別に」
―― あ、そろそろ映画始っちゃうよ!?
―― ホントだ! それじゃ二人ともまた明日!
ハシバ「ま、まさかこんな所でクラスメートに会うとは思わなかった///」ボソッ
コバヤシ「…………あ、なるほど。だからあの人たちはボクたちのことを知っていたんだね」
ハシバ「なるほどって……。お前、クラスメートの顔くらい認識しとけよ?」
コバヤシ「……あはは。ボク、人の顔を覚えるのが苦手だから」
ハシバ「影男の変装を見破る程の観察力があるのにか?」
コバヤシ「えへへ……」ニコッ
ハシバ「はぁ……。それよりお前が観たい映画っていうのはどれなんだ?」
コバヤシ「えーとね。……あ、これこれ! ボクこの映画が観たいんだ!」
ハシバ「どれどれ。……うーん。知らない映画だな」
コバヤシ「10年以上も前の映画だし、大作でもないから知っている人の方が少ないかも」
ハシバ「まぁとりあえず、時間も頃合いみたいだし早速チケット買おうか」
コバヤシ「うん、そうだね。 …………あれ?」チラッ
コバヤシ「……」
ハシバ「おーい。どうしたんだコバヤシ?」
コバヤシ「……なるほど」ボソッ
ハシバ「もしかして違う映画が観たくなったのか?」
コバヤシ「ごめんハシバ君。チケット買う前にボク、ちょっとトイレに行ってくるから少しだけ待っててくれる?」
ハシバ「――えっ? わ、わかった」
コバヤシ「ありがとう。すぐ戻ってくるから」
――――
――
ハシバ「……」
ハシバ(なんで俺はクラスメートと遭遇した時、あんなに慌ててしまったんだぁぁぁ!?///)
ハシバ(べべべ別に男友達と二人で映画を観に行くなんて普通じゃないか!?///)
ハシバ(変に意識しすぎなんだよ俺ッ!///)
コバヤシ「お待たせハシバ君」
ハシバ「さ、さて! そそそれじゃ早速チケットを買いに……」チラッ
ハシバ「って、なんで女装してるんだよぉぉぉ!?///」 コバヤシ「えへへ///」
コバヤシ「アケチ先輩の助手として、いついかなる時でも捜査しやすいようにこの服を持ち歩いていてよかったよ」ニコッ
ハシバ「ぜ、全然質問の答えになってないッ!!///」
コバヤシ「もちろんボクがこの格好になった理由はちゃんとあるよ」
ハシバ(こ、こんな恰好をしたコバヤシと二人で映画を観るだなんて!///)
コバヤシ「ほら、そこのポスターを見てよ」
ハシバ(これじゃまるで俺たち……)
コバヤシ「今日はカップルデイっていう割引サービスがある日みたいなんだ」ニコッ
ハシバ「~~~ッ!?///」
ハシバ「カ、カ、カ、カッ……///」
コバヤシ「この格好のボクならば、もしかしたら割引してもらえるかもしれない」
ハシバ「動機が不純だ! それに何より……、は、破廉恥だッ!!///」
コバヤシ「――あ、そろそろボクたちが観る映画始まっちゃうよ」ギュッ
ハシバ「うわぁ~!!///」バッ コバヤシ「――あっ」
コバヤシ「むぅ……。早くチケット買いに行こうよー」
ハシバ「ななななんで急に俺の手を握るんだよ!?///」
コバヤシ「だって、こうした方がカップルっぽいでしょ?」ニコッ
ハシバ「はぁぁぁぁ!?///」
コバヤシ「ほら、行こう?」ギュッ
ハシバ「~~~ッ!?///」
――――――
――――
――
― カフェ ―
―― 先にアイスコーヒーとアイスティをお持ちしました。
コバヤシ「ありがとうございます。アイスコーヒーは彼にお願いします」
―― かしこまりました。お砂糖とミルクはご自由にお使いください。
ハシバ「あ、ありがとうございます……」ボソッ
―― それでは失礼致します。
コバヤシ「早くボクが頼んだパフェも来ないかなぁ」
ハシバ「……」
ハシバ(案の定、カップル割引料金で鑑賞してしまったぁぁぁ!!///)ゴクゴクゴクゴク
ハシバ「――ぷはっ!」
コバヤシ「ハシバ君、そんながぶ飲みするとお腹壊しちゃうよ?」
ハシバ「な、なぁ!? いい加減着替えてこいよ!///」
コバヤシ「ダメだよハシバ君! 店員さんに聞こえたらどうするの?」ボソッ
ハシバ「本気かよ……」チラッ
[☆本日カップル限定☆ スペシャルパフェ半額!!]
コバヤシ「それはそうとハシバ君。映画はどうだった?」
ハシバ「――えっ? あぁ、そうだな」
ハシバ(コバヤシの所為で最初は全然集中できなかったけど)
ハシバ「面白かったよ。ただ……」
コバヤシ「ただ?」
ハシバ「少し気が滅入る映画だった、かな」
コバヤシ「なるほどね」
ハシバ「……なぁ? あの映画は本当に、実際にあった事件をモチーフにしているのか?」
コバヤシ「うん、そうだよ。アメリカで昔、実際に行われた心理学実験がモチーフになっているんだ」
ハシバ「被験者たちは実験だってわかっていたはずなのに、どうしてあんな事になったんだろうな……」
コバヤシ「囚人役と看守役のグループに別れて模型の監獄で2週間過ごすだけなのにね」
ハシバ「俺には理解できないなー」
コバヤシ「あははっ。でももしかしたらハシバ君も、何も知らずにあの実験に参加していたら同じようなことをしたかもよ?」
ハシバ「――なっ! お、俺があんなことするわけないだろッ!?」
コバヤシ「どうして?」 ハシバ「――えっ?」
コバヤシ「どうしてそんなことが言い切れるの?」キョトン
ハシバ「どうしてってお前……」
コバヤシ「もちろんボクは、ハシバ君があんなことをする人ではないと信じているよ」
コバヤシ「だけどそれが集団あるいは群衆の中に置かれた場合、話は変わってくるんだ」
ハシバ「はぁ?」
コバヤシ「ましてはその中に強い権力を持つ人がいたらどうだろう?」
コバヤシ「それに先日の影男さんの事件を思い出してみてよ」
コバヤシ「監禁されていた女の子たちはみんな手足を縛られていなかったし、出入り口に鍵が掛っている様子もなかった」
コバヤシ「それなのにどうして彼女たちは逃げださなかったんだろって思わなかった?」
ハシバ「た、確かにそれは……」
コバヤシ「アケチ先輩に訊いてみたら、〝学習性無力感″と〝同調圧力″で説明が付くって教えてくれたよ」
コバヤシ「こういう事件ではよくあること……、だということも」
ハシバ「だ、だから何だって言うんだ!? お前はいったい何が言いたいんだよ!?」
コバヤシ「えーとね、つまり……」
所詮〝退屈で空虚な毎日″を過ごしているボクたちが
極限状態に追い詰められた人の行動心理なんてわかるはずがないんだよ。
でも、ボクは知りたいんだ。加害者が、被害者がいったい何を考えているのかを。
アケチ先輩の傍に居ればきっとその欲求は満たされる。
そうして、ボクは初めて……
コバヤシ「生きてるって実感するんだ」ニコッ
ハシバ「コバヤシ……」
コバヤシ「だからね。ボクは今、アケチ先輩の助手になることができてとっても嬉しいんだ!」
アケチ『可愛いこと言うじゃないか。でもな……』
アケチ『好奇心に殺されるぞ』
ハシバ「お前は……」
コバヤシ『今のまま生きていても仕方ないですよ』
コバヤシ『……壊れたいです!』
―― お待たせしました。 ハシバ「!?」ビクッ
―― スペシャルパフェをお持ちしました。
コバヤシ「待ってましたぁ!」
―― それでは失礼致します。
ハシバ「――あ、あのすみません」
―― どうかなさいましたか?
ハシバ「ア、アイスコーヒーのおかわりを頂けますか?」
―― かしこまりました。すぐにお持ちします。
コバヤシ「う~ん美味しい! ハシバ君も食べてみる? ……はい!」サッ
ハシバ「ちょっ!?///」
ハシバ(もももしかしてこれって、あ~んってやつじゃないのか!?///)
コバヤシ「どうしたの? 食べないの?」
ハシバ「おおお俺は遠慮しておくッ!///」
コバヤシ「えー。美味しいのに勿体ない」パクッ
ハシバ「そ、それよりほら! 口元に生クリームついてるぞ!?///」
コバヤシ「――えっ? ホント?」ペロッ
ハシバ「~~~ッ!?///」
―― アイスコーヒーのおかわりお持ちしました。
ハシバ「あ、ありがとうございます!!///」パッ
ハシバ(し、舌が! コバヤシの舌がペロッてッ!///)ゴクゴク
コバヤシ「あのー、店員さん。このパフェってボクたちでも半額になりますか?」
―― ふふっ。もちろん適応されますよ。お似合いのカップルですから。
ハシバ「ぶふぅぅぅ!!///」 コバヤシ「――うわぁ!?」
ハシバ「けほっ! けほっ!」
―― だ、大丈夫ですかお客様!? 今新しいおしぼりお持ちします!!
ハシバ「す、すみませ……けほっ! けほっ!」
コバヤシ「ボクの服がびしょ濡れになっちゃった……」
ハシバ「す、すまんコバヤシ……。ふ、服は弁償するから……」
コバヤシ「――えっ!? 変装用の新しい服買ってくれるの!?」
ハシバ「だだだ誰が買うかそんなものッ!!///」
コバヤシ「えー。言ってることが矛盾してるよー」
ハシバ「と、とりあえず今すぐ着替えて来い!///」
コバヤシ「でもそうしたら店員さんに」
ハシバ「ダメだダメだッ! お前をその恰好のままで居させるわけにはいなかいッ!///」
コバヤシ「むぅ……、わかったよ。トイレで着替えてくるから少し待ってて」
ハシバ「……はぁ」
ハシバ「……」
コバヤシ『アケチ先輩の傍に居ればきっとその欲求は満たされる』
コバヤシ『そうして、ボクは初めて……』
コバヤシ『生きてるって実感するんだ』ニコッ
ハシバ(本当にこのまま……、あの事務所に居続けていいのか?)
―― あの、こちらの新しいおしぼりをお使いください。
ハシバ「――あ、すみません。わざわざありがとうございます」
―― いえ。失礼致します。
ハシバ「……」フキフキ
ハシバ(コバヤシにとってはこれが……、〝日常″とでも言うのか!?)
ハシバ「……くそっ!」ボソッ コバヤシ「ハシバ君」
ハシバ「――ず、随分着替えてくるのが早かったじゃな」チラッ
コバヤシ「残念。このお店、複合施設のテナントだからトイレはないみたい」
ハシバ「……はぁ。それじゃそのパフェを片づけて店を出るしかないな」
コバヤシ「そうだね。でもこのパフェ、ボク一人じゃ食べきれないからハシバ君も食べるの手伝ってよ?」ニコッ
ハシバ「……わ、わかったよ!///」
――――――
――――
――
― 街中(夜)―
コバヤシ「今日はハシバ君が付き合ってくれたおかげで、ボクの変装スキルが改めて完璧だということが証明されたよ」
ハシバ「……いつからそういう話になっていたんだよ」
コバヤシ「えへへ。……でもハシバ君、ホントにいいの?」
ハシバ「まだ言うか」 コバヤシ「だって」
ハシバ「元はと言えば俺から言い出した事なんだから、お茶代くらい俺が出すよ」
ハシバ(初めからこうしていればあんな面倒なことにはならなかったんだよな……)
コバヤシ「うーん」 ハシバ「……」
ハシバ「それじゃ今度は、お前が俺にコーヒー奢ってくれよ」ニコッ
コバヤシ「そっか。そうだね!」
ハシバ「但し、女装は無しだからな!///」
コバヤシ「わかったよ」
ハシバ「本当にわかってるのかー?」
コバヤシ「えへへ。それじゃ今日みたいに〝時間が空いたら″また二人で寄り道しようね!」ニコッ
ハシバ「……」
ハシバ「あぁ、そうだな」
コバヤシ「それじゃボクはここで」
ハシバ「車に気を付けて帰るんだぞ?」
コバヤシ「もう、ハシバ君はボクの事心配し過ぎだよー」
ハシバ「お、お前は集中すると周りが見えなくなるから不安なんだよ!」
コバヤシ「大丈夫。ちゃんと気を付けているから」ニコッ
ハシバ「……信じてるぞ」
コバヤシ「それじゃまたね、ハシバ君!」
ハシバ「あぁ……」
ハシバ「また明日」ニコッ
以上です
ありがとうございました
>>5 支援ありがとう
3話を鑑賞してから構成まとめて、それを少しずつ清書していましたが
まさか4話、5話であんな展開になるとは……
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