男「朝だ」(19)

チュンチュン…

男(……もう朝だ)

ジリリリリリリリリ!!!

男(うるせぇなぁ…)ヨイショッ

カチッ

時計「もう朝の7時だよ」

男「分かってるって…」

時計「ほらほら、早く用意しないとまた仕事に遅れるぞ」

男「はぁーっ…その前に一服させてくれよ」



煙草「よう兄ちゃん、また今日も眠そうだな」

男「毎日残業続きだからな…」

シュボッ

男「ぷはー…マズイ」

煙草「なら辞めたらどうだい」

男「今更相方を手放すのも無理」

煙草「嬉しいねぇ」

煙草「そろそろお別れの時だな」

男「あいよ」グリグリ

時計「早く早く!」ジリリリリ

男「めんどくせぇなー…」カチッ



男「まだ眠い…」

男「毎日毎日決まった時間に起きて」

男「行きたくもない会社に行ってこき使われて」

男「……こんな人生、一体何の意味があるんだろうなぁ」

5分後

時計「ほらまた二度寝してる!」ジリリリリ

男「はっ!」

男「危ない危ない…また寝過ごすとこだった」

男「ありがとよ」カチッ

時計「早く顔を洗いなよ」

男「そうだな…その前に」

キッチン

フライパン「オッス」

男「おーおはよう」

フライパン「また目玉焼きかい?」

男「これが一番楽だから」ガサゴソ



卵「私を食べるの…?」

男「おー食べるぞ」カンカンッ

卵「痛い!やめてよ!」

男「悪い悪い」カンカンッ

ジュンッ

ジュワー……


目玉焼き「酷い…もうお嫁に行けない……」シクシク

男「大丈夫、今日も綺麗に出来上がったから」

目玉焼き「本当!?嬉しいっ!!」

男「良かったな」パクパク


コーヒー「やぁ少年や…また会ったのぉ…」

男「もう俺も25歳だぞ」

コーヒー「そうか…もうそんなに大きくなったんじゃなぁ…」

男「よっと」コポポ…

コーヒー「ワシの記憶が正しければまだあの時の少年は」

コーヒー「ミルクだけじゃなく砂糖もたんまりと入れていたはずじゃが」

男「最近甘いものが苦手になったんだ」



コーヒー「ホッホッホ…もう少年は少年ではなくなったのじゃな?」

男「よくわかんね」ズズッ

洗い場

男「よいしょっと…」

歯ブラシ「最近ちゃんと歯を磨くようになったな」

男「まぁね」ゴシゴシ

歯ブラシ「女でも出来たか?」

男「あー…まぁそだね」ゴシゴシ

歯ブラシ「そうか…大切にしないとな」

男「めんどくさいけどな」ゴシゴシ

リビング

テレビ「また殺人事件だってよ」

男「へー怖いな」

テレビ「最近どこも物騒だからな」

テレビ「男も気をつけるんだぞ」

男「誰が俺の命なんて狙うんだよ…」

テレビ「分からないぞ?」

テレビ「例えば君の彼女をずっと狙っていた奴とかが…」

男「そんな可愛い彼女じゃないから大丈夫」

テレビ「世の中には物好きって奴も」

男「黙ってニュースでも流しとけ」

テレビ「」

時計「おーいもう出ないと間に合わないぞ!」ジリリリリ

男「やっべ!もうこんな時間か!」ガタッ



玄関

自転車「おはようございます」

男「おはよう」カチャッ

自転車「今日も急がれてますね」

男「時間にルーズだからね」

自転車「あっその前に…ほっぺにごはん粒付いてますよ?」

男「え?あ、本当だ」ゴシゴシ

シャツ「もぉー兄ちゃんいつもワイの袖で拭くなや!!」

シャツ「兄ちゃんの口臭くて臭くて堪らんねん!」

男「ちゃんと歯磨いてるわボケ」

シャーッ…

男(あー今日もまた仕事…)

男(嫌だなぁめんどくさいなぁ…)




男(振り返れば俺の人生、全然楽しくないんだよなぁ)

男(学校に通っていた頃は勉強ばかりして)

男(親に言われた大学入って普通に就職して)

男(就職したら友達とも段々と疎遠になってきて)

男(今は殆ど会社に行くだけの毎日だ)

男(これが歳を取るって事なのかな)




男(……このまま仕事だけの毎日なんて嫌だなぁ)

男(彼女がいるからって楽しい事だけって訳じゃないし)

男(喧嘩ばかりしてる日々も増えて来てる)

男(でも…悪い事ばかりじゃない)

男(そうだ…そう言えばあの時…)




会社にて

男「…………」カタカタ

女「お疲れ、今日も残業?」

男「あぁそうだよ」カタカタ

女「顔が死んでる」クスッ

男「お前はいつも定時で上がれていいやな」

女「出来る女ですから」



男「……」カタカタ

女「……」ジーッ

男「……なんだよ?」

女「別にー?」

男「もう皆帰ってるぞ」

女「知ってる」

男「なんでお前も残ってるんだよ」

女「暇だから」

男「暇だからって…」

女「あと私の名前は”お前”じゃない」

男「……めんどくさい」

18時

男「……」カタカタ

女「はーっ……まだ終わんないの?」

男「まだ掛かる…っていうか帰れよ」

女「別にいいじゃない」

男「これだから給料泥棒は…」

女「ちゃんとタイムカードは切ってます」

男「…もうすぐ暗くなるから危ないぞ」

女「心配してくれるの?」

男「……大丈夫そうだな」



バシンッ

男「……頬が痛い」カタカタ

18時半

女「ねーまだー?」

男「もうちょっと…ていうか本当何で一緒に残るんだよ」カタカタ

女「別にー?たまにはご飯でも一緒にどうかなって」

男「お生憎さま俺にはこの相方がいれば十分なんだよ」シュボッ

煙草「嬉しいねぇ」

女「……つまんない奴」

19時前

男「……よし!何とか明日の資料が完成したぞ!」

女「………」スヤスヤ

男「帰るぞ……って寝てんのかよ」

男「自分で誘おうとしておいて……」クククッ

男「全く…どういう風の吹き回しなんだか」



携帯「(*´∇`*)オツカレサマー」

男「おー」

男「こいつの寝顔撮るぞ」

携帯「まじャハ〃くなぃ?(´σ`)」

男「いいからカメラ起動して」

携帯「(●`・(エ)・´●)プンプンッ」

ウィーン

男「後でLINEに送ってやろ」





時計「19時だよ」カチッ



ドーンッ


男「!?」ビクッ

女「!! え?え?もしかして花火始まっちゃった!?」ガバッ

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