天正10年6月2日早朝・二条御所
信忠「……?」
信長「何を呆けた顔をしておる」ユラユラ
信忠「父上!?な、なぜこの二条御所に……父上は本能寺にて自刃したのでは!?」
信長「うむ。確かにわしは燃え盛る本能寺にて腹を切った……その証拠にほれ」ユラユラ
信忠「?」
信長「わしには足がなくなったわ!わっはっはっ!」ユラユラッ
信忠「笑い事ではありませぬ!」
信忠「はっ、いかんいかん、これは御仏がみせる幻影にすぎぬはず……父上!信忠はすぐお側に参りますぞ!」カタナヌキツツ
信長「おぉ!この体は壁もすり抜けるのか!霊体とはかくも便利なものであったとは……!」
信忠「お、お側に……」カミヲマキマキ
信長「見た目も若き日のそれだ……」スガタミミツツ
信忠「側に……」フリカブリ
信長「はっ!霊体になったということは……わしは名実共に第六天魔王になったというわけか!信忠っ!やったぞ、父の長年の夢が今叶ったぞ!今宵は宴じゃぁ!!」
信忠「あぁ、もう!その傍若無人ぶりは間違いなく真の父上ですね!っていいますか、父上の夢ってそんなものだったのですか!?天下統一では!?」カタナガシャーン
鎌田新介「わ、若殿?先程からいかがなさいました?」
信忠「あっ、いや、なんでもないぞ。気にするな」
新介「は、はぁ…では若殿、一体いつ腹をおめしになるので?早くせねば明智の軍勢が……」
信忠「そうであったな……しかし……」チチヲミアゲル
信長「なんだ?だから共はいらんといっておる。そんな暇があれば、あのキンカ頭を討ち取って父の敵をとれ!」
信忠「ち、父上っ……分かりましたぞ!この信忠、必ずや逆賊光秀めを―――」ナミダウカベ
信長「それに共ならばお蘭がおる。その方は無用だ」
信忠「―――討ち取って……」
森蘭丸「し、失礼いたしまする若殿……」トノノウシロカラオソルオソル
信忠「……あぁ」
蘭丸「えっ?な、なぜそんな露骨に意気消沈!?」
信長「というわけだから、その方の共はいらん!存分に敵を討つがよい!」
信忠「えぇ、絶対に父上なんかのために腹なんて切りません」フクナオシ
信忠「まぁ、そういうわけだ。新介、直ちに貞勝と利治をここに呼べ」
新介「は…何がそういうわけで?」
信忠「そういうわけはそういうわけだ。いいからその方は大人しく俺の命を聞け!」
新介「は、はっ!」ダダダッ
信忠「ふぅ……しかし父上、光秀を討つと申しましても、まず一体どうやってこの京を―――」
信長「ふむ、お蘭は大して見た目は変わっておらんな……?どれ触り心地は……」カラダマサグリ
蘭丸「ちょ、ま、信長様……ダメですよ、こんなところで……!若殿の前ですし……!」イヤイヤ
信長「む?なんだ、そんなこと言いつつお前のココはこんなにmアダァッ!!…なにをする!痛いではないか!!」アタマオサエ
信忠「何をするはこっちのセリフです、このエロ親父!アンタ死んでも何一つ変わってませんね!!」
蘭丸「申し訳ありません若殿……私が未熟なばかりに、若殿にご迷惑を……」アタマサゲ
信忠「いや、そういう問題でもないが……」
蘭丸「そ、そうでしょうか……」
信忠「あぁ、大体悪いのは9割以上は父上だからな」
信長「酷い言われようだな」
蘭丸「えへへ、若殿はお優しいのですね。私なんかのために……」ポッ
信忠「いや、別にそういうわけでもないが」
信長「おいお蘭!まさかその方、信忠なんぞに熱を上げたわけではあるまいな!?」
信忠「実の息子相手に『なんぞ』ってどうなんですか父上」
蘭丸「はっ!い、いえっ!決してそのようなことは!私は信長様の小姓にございます。この命も体も、すべては信長様のものでございまする!!」
信長「よくぞ言った。お蘭っ!」ダキッ!
蘭丸「信長様ぁ!」ダキシメラレッ!
信忠「……改めて母上の偉大さを理解しました」トオイメ&ソガイカン
利治「若殿ぉー!急な召集とは、一体何事にございまするかっ!?」
貞勝「若殿!その恰好……じぃの進言、聞き入れて下さいましたか!」
信忠「うむ、先刻はすまなかったなじぃ……父上はじぃの言う通り、この俺に明智光秀を討てと仰せだ」
利治「なんと!?まさか本能寺より大殿からご遺言でも届きましたのか!?」
信忠「あ、いや、遺言というか……」
利治・貞勝「?」
信忠「お告げ?というか……」
貞勝「お、お告げにごいますか!?」
信忠「あー………」
信長「お蘭っ!」ダキィ!
蘭丸「信長様ぁ!」ダキシメラェ!
信忠(こんなことしてる奴の言葉を、お告げと表していいのだろうか……?)
信忠「ま、まぁ、そんなところだ。俺は腹を切らんし、一刻も早くこの二条御所から抜け出すぞ」
利治「しかし若殿…抜け出そうにもいまだ明智方の動向は把握できておらず、この京の都がどれほど包囲されているかも……」
信忠「うむ、確かにあの光秀のこと…蟻の子一匹這い出る隙がないほどの包囲をしいているのであろう」
貞勝「で、では、一体どうやって……?」
信忠「うむ、それは……」
蘭丸「信長様ぁ!」ダキィ!
信長「お蘭っ!」ダキシメラェ!
信忠「おい、いつまでやってんですかエロ親父!これで三回目ですよ三回目!いい加減にしてください!!」ヒキハナシッ
信長「うるさい奴だなぁ……わかったよ、で、何ようぞ?」
信忠「父上でも成利でもどちらでもいいので、外の様子を探って来てください。どうやらあなた達の姿は私にしか見えていなようですので」
信長「お前……実の父に隠密活動せよと?この父が万が一死んでもよいと?」
信忠「もう死んでるじゃありませんか……お願いですから行ってください。このままクダクダしてると、この二条御所にいる諸将全員で父上のお供をすることになります」
信長「ふむ……ではお蘭、頼めるな?」
蘭丸「はっ!おまかせください!」カベスリヌケッ
信長「まっ、お蘭ならばさほど時間もかからず戻ってくるであろう」
信忠「結局人任せですか……」
貞勝「若殿…?先程からお一人で何を……?」
信忠「あー、いや気にするな。いましばらく待て、そのうち転機が回ってくるはずだ。利治!お前は諸将達に、今の話の旨を下知せよ」
利治「はっ!」
信忠「さて、成利が戻ってくるまで、明智の攻勢を耐えなければならぬが……」
貞勝「幸い、徐々に混乱していた馬回りたちも落ち着き、この御所に集まり始めました。攻勢に転ずることが出来ずとも、しばらく守りきる事くらいなら容易かと」
足軽「ぬわー!」ターンッ
貞勝「な、何事じゃ!?まさかすでにここまで敵兵が!?」
足軽「申し上げます!突如空より鉛玉の雨が!!」
信忠「鉛玉の雨だと!?馬鹿な!一体ここまでどうやって鉄砲を……?」
信長「……あそこだな」ユビサシ
信忠「父上?あそことは……?確かその方角には……!まさか」
信長「まさかもなにもないであろう。この方角には近衛前久の邸宅がある。御所を狙撃できる場所など、あそこしかないわ」
信忠「し、しかし、前久卿が光秀めに手を貸していると?」
信長「何を動揺しておる?朝廷はわしを相当恐れておるはずだ。公家衆がこの機に乗じてわしとお前の敵に回るなど容易に想像できる」
貞勝「若殿、ここにいては危のうございまする。部屋のおくの方へ。雨戸も締めまする故」
信忠「うむ……」
?「ま、待ってくれー!」
信忠「?」
?「わしも!中に!入れて!くれ!」ターンッターンッターンッターンッ
信忠「お、叔父上!?そんなところで何を?」
長益「何って!見て!分からん!のか!?鉄砲を!よけて!おる!のだ!」ターンッ×8
信長「おぉ、源五の奴、茶しか能のない奴だと思っておったが……かような踊りも得意であったとは!中々のものであるぞ源五!」アッパレ
信忠「いえ、恐らく叔父上は命がけで避けているだけかと……」
長益「だーっ!!はぁ、はぁ、はぁ……死ぬかと思ったぞ」ヘヤニダイブ
長益「ふぅ……む?信忠様、まだ生きておいででしたか?てっきり既に腹をお切りなったものと……」
信忠「えぇ、少しばかり状況が変わりまして。せっかくの叔父上の進言ではありましたが、私は腹を切らず父上の敵を討つと決めました」
長益「なんと!いや、流石はあの兄上のご嫡子……この長益、目の鱗が取れた思いだ!信忠様がそうお決めになられたのならば、この長益…及ばずながら叔父としてご助力いたそうぞ!」
信忠「頼りにいたしますぞ、叔父上」
長益「うむ!……しかし信忠様?それはともかく、まずはこの京を脱出し安土へ逃げるが先決と思うが……何か策は?」
信忠「そのことに関しては―――」
信長「おぉ、お蘭の奴、もう戻ってきおったわ」
信忠「本当ですか父上!?」
蘭丸「遅くなりました、信長様!若殿!」カベスリヌケッ
信忠「いやいや、十分早かったぞ成利!して、首尾は!?」
蘭丸「はっ!明智の軍勢の大半は本能寺・この二条御所に集中しており、いまだ京の出入り口は完全には封鎖されておりません」
信忠「…?あの光秀にしては手ぬるいようだが……それに父上を討った今、なぜ本能寺に兵を?」
蘭丸「それは―――」
信長「わしの亡骸であろうな。光秀の奴、わしの亡骸が一向に見つからないから血眼になって探しておるのであろう?」
蘭丸「はっ!流石は信長様。その通りです」
信忠「父上の亡骸……しかし父上?なぜご自分の亡骸見つからないと分かるのです?」
信長「ふっふっふっ……光秀なんぞにわしの首をどうこうされるのは癪であったからな。わしの亡骸は弥助に頼んで阿弥陀寺へこっそり運ばせたわ!この様子からして、うまくいったようだな!」トクイゲ
信忠「弥助、とは…確かあの南蛮人でしたな?確かに南蛮人の身体能力をもってすれば、父上の亡骸を運びながらの脱出も不可能でない…か」ナットク
信忠「それで成利、他はどうであった?」
蘭丸「はっ!そういう次第なわけでありまして、多くの兵は本能寺にて信長様の亡骸の捜索にあたっております。今すぐにでもこの城を抜け出せば、二条大路から京を脱出することも可能かと」
信忠「二条大路……しかし二条大路と言えば朱雀大路に次ぐ広き道…いくら包囲が不完全といえど流石に……」
信長「いや、信忠、お蘭の言うことも最もだ……」
信忠「しかし、父上!こればかりはあまりに危険な……!」
信長「信忠!わしは何も、無策でこのようなことをせよと申しているわけではない。『木を隠すなら森の中』という諺もある。頭を使うのだ信忠」
信忠「は、はぁ……木を隠すなら森の中…ですか……はっ!成利!」
蘭丸「はい!なんでしょう?」
信忠「成利、近衛前久卿の邸宅は見てまいったか?どのような状況であった?」
蘭丸「はい、近衛様の邸宅には20人ばかりの鉄砲隊がおりましたが……」
信忠「鉄砲隊のみであったか?」
蘭丸「はい、他には近衛前久様ご本人、数名の公家達しかおりませんでした」
村井貞勝「は……公家衣装にございますか?」
長益「信忠様?それは一体どういう……」
信忠「説明は後だ!急いでくれ!」
貞勝・長益「は、はっ!」ダダダッ
信長「よく気が付いたな、信忠」
信忠「はぁ…しかし、うまく事が運びますでしょうか?」
信長「心配はいらぬであろう。確かに光秀に加担する公家もいるだろうが、所詮は公家。逃げ出すものが大半であろう。ましてや今だ応仁の乱から100年少ししか経っておらん。公家共も再び京が焼け野原になるのではないかと恐れているであろう」
信忠「だといいのですが……」イササカフアン
間違えた18の一番上の行に
信忠「貞勝!直ちに御所中ある公家衣装を此処へ!叔父上は利治を呼んできてくだされ!」
を。
斎藤利治「若殿!今度は何用でございましょう!」
信忠「おぉ、利治!早かったな!実はお前にひと暴れしてもらうことになったぞ!」
利治「ひと暴れ……!では、うってでるのですか!?」ワカニツメヨリ
信忠「いやいや、そういうわけではない。利治にはな、手勢を引き連れ近衛前久の邸宅に奇襲をしてほしいのだ」
利治「なっ…!?近衛前久と言えば前関白であったお方!そのお方の邸宅を奇襲…せよと!?」
信忠「うむ。二条大路へ出るにはどうあっても近衛前久邸の前を通らねばならない……しかし今のままでは鉄砲隊の恰好の的になってしまう。だから利治にはその鉄砲隊を蹴散らし、近衛前久以下公家共を捕え―――いや、丁重に持て成してもらいたい……やってくれるな?」
利治「……はっ!御意にございまする!では早速手勢を集め出陣いたしまする」ダッ
信忠「頼むぞ……利治の首尾に、俺の…織田家の命運がかかっている……!」
眠いから寝る。続きは起きたら書く。
信忠「さて…利治が戻ってくるまで、この二条御所を守りきらねばならぬが……」
信長「どれ、わしが直々に表をみてまいろう!」カベスリヌケ
信忠「あっ、ちょ!父上!!……まぁ、いいか。どうせ死んでおられるのだし」
二条御所・大手門
ワーッ!ワーッ!
伊勢貞興「えぇい!たかだか数百の兵相手に、何を手間取っておるか!?」
足軽「はっ!城方の士気は旺盛!その上、京の各地に宿泊していた馬廻り衆が集結し始め、予想以上に抵抗が激しく苦戦しております!」
貞興「ぐぬぬ……大殿の本隊は、今だ本能寺にて信長の亡骸を探しておるようであるし……止むを得ん、ここは御所に火でも放つか…?」
足利義昭「なんと!?畏れ多くも御所に火を放つかなど、貞興は正気であるか!?」シャクツキツケッ
貞興「う、上様!いえ、そのような……ほ、ほんの冗談にございまする……」
義昭「冗談が過ぎようぞ貞興……この御所は代々、我が足利将軍家・親王様が居城…その二条御所に火を放つなど……」ヤレヤレ
貞興「はぁ、申し訳ありませぬ……」
義昭「うむ……あっ!止めぬか!いたずらに矢や鉄砲を放つでない!!余の御所に傷がつくであろう!!!」キシャーッ
貞興(大殿……なぜ上様をお連れになったのですか……?)
信長「あの腐れ公方…中々役に立っておるではないか」ミナオシタゾ
信長「信忠、今戻ったぞ!」
信忠「父上!して、外の様子はいかがでしたか?」
信長「うむ……まだまだこの御所は落ちそうにないな」
信忠「そうですか!それは重畳…」ホッ
信長「あの公方も頑張っておるようだしの」ボソッ
信忠「父上?」
信長「いや、なんでもないぞ。独り言だ」
貞勝「若殿っ!仰せのとおり、御所中の公家衣装を集めてまいりましたぞ!」
信忠「おぉ!でかしたぞじぃ!」
長益「それで信忠様?一体こんなもの何に使うのだ?」
信忠「うむ、なに単純なこと。この衣装で公家に化けて、堂々と京を出よう……というわけだ」
貞勝・長益「なんと!?」
長益「し、しかし信忠様!そのようなこと……本当にうまくいくとお思いか!?」
信忠「私にも確証はありませんが……しかし、うまくいけば無傷で安土へ逃げるとも可能です」
貞勝「確かに……そろそろこの騒ぎに気付いた公家達が慌て、我先にとこの京を逃げ出し始めている頃。その機に乗じ、何食わぬ顔で京を出る……」
信忠「その通りだ」
長益「うーむ……それならば下手に狭い小路などを通るより、広い二条大路の方が都合がよい…と…いや、だがしかし……」
貞勝「じぃは若殿についてまいりますぞ!」
信忠「うむ!ではじぃ、この御所に留まってくれる者を集ってきてくれ」
貞勝「はっ!」
同刻・近衛前久邸
利治隊「………」シゲミニヒソミ
鉄砲組頭「異常はないか?」
鉄砲隊1「はっ!」
鉄砲隊2「今だ、御所に動きはありません」
鉄砲組頭「よいか?例え女子供や下郎であっても、一歩でも出てきたらハチの巣にしてやるのだぞ!」
鉄砲隊1~20「はっ!」
利治「…まとまっている今が好機だ。一気にかかり居合に入れば鉄砲など恐るるにたらん……いいな皆のも、一人も生かしてはならんぞ?」
足軽衆「はっ…!」ヤリニギリ
利治「かかれっ……!」
足軽衆「っ!」ヤリカマエトツゲキッ
鉄砲隊「ぐあぁ!?」グッサァ!
鉄砲組頭「な、何事だ!?」
鉄砲隊「と、突如っ、伏兵による奇襲が!!」アワテフタメキッ
鉄砲組頭「奇襲だと!?えぇい、動揺するでない!!撃ち方用意!!」
鉄砲隊「む、無理です!この距離あいでは、とてもそnグフゥ!!」ヤリササリ
鉄砲組頭「くっ!怯むな!鉄砲を捨て応戦せよ!」カタナヌキッ
鉄砲隊「おーっ!」
利治「させるか!皆の者、反撃の隙も与えるな!!」
足軽衆「おーっ!」
利治「はぁっ!」ツキサシッ
鉄砲隊「かはぁっ!!」クシザシッ
利治「ふぅ、お前で鉄砲隊は最後だな……」クビモトニヤリヲ
鉄砲組頭「ぬぅ……こうなっては致し方なし…武士の情けだ。腹を切らせてくれ」
利治「……潔いな、よかろう」ヤリオロシ
鉄砲組頭「かたじけない……では、ごめん!!」グサリッ
利治「一人も逃げてはおらぬな?」
足軽「はっ!ことごとく切り伏せたかと」
利治「うむ。では、後は屋敷内いる公家達を取り押さえるぞ」
足軽衆「はっ」
信忠「うぅむ……利治の繋ぎはまだかっ……?」ソワソワ
小姓「申し上げます!只今、斎藤利治様より繋ぎの者が参りました!」
信忠「おぉ!急いで通せ!」
伝令「失礼対します!」
信忠「うむ!して、首尾は!?」
伝令「はっ、鉄砲隊は壊滅。公家衆も屋敷内にて捕え、逃げ出したものはおりません!」
信忠「おぉ!うまくいったか!やりましたぞ父上!!」
信長「喜ぶのはまだ早かろう信忠。まだ京を抜け出したわけではないのだぞ?」
信忠「そ、そうですね。まだまだ気を引き締めなければ……伝令よ、諸将達に下知せよ!準備は整った。これよりまずは御所より近衛前久邸へ抜け出し、利治の隊と合流するとな」タチアガリッ
伝令「はっ!承知つかまつりました!」タッタッタッ
貞勝「若殿ー!遂に動くのですね!」
信忠「おぉ、じぃ。そんなに走って大丈夫か?じぃもいい歳であろう」
貞勝「何をおっしゃいますか若殿!じぃはまだまだ若いですぞ!」ゲンキイッパイ
村井貞成「ち、父上……」イキキラシ
村井清次「走るのがはようございますぞ……」イキキラシ
貞勝「えぇい、若殿の前で何を情けない!」
貞成・清次「す、すみませぬ……」
信忠「これこれじぃ、あまり咎めてやるな」
貞勝「いやはやお見苦しいものを……」
信長「信忠、あまり時間がないぞ。一刻も早くこの御所をでるのだ」
信忠「はい。では皆の者!まずは近衛前久邸へ向かうぞ」
諸将達「はっ!」
信忠「では長頼、正成、秀勝……あとは任せたぞ」
菅谷長頼「はっ!お任せくだされ!」
野々村正成「必ずや若殿達が京を出るまでは耐えて見せまする!」
福富秀勝「ですからご安心くだされ!」
信忠「うむ、だが、決していたずらに命を散らすでないぞ……!」
長頼・正成・秀勝「はっ!肝に銘じましてござりまするっ!」アタマフカブカ
長益「……はっ!誰もいない……おいてかれた!?」
二条御所・忍び口
信忠「……この御所にこんな抜け道があろうとは」
信長「ふむ、まさか御所改築のおり、面白半分で作らせた抜け道が息子の役に立とうとは……流石のわしも驚きだ」
信忠「今回ばかりは、父上の酔狂が功を奏しましたな……」
蘭丸「流石は信長様っ!鋭い先見眼ですっ!」
信長「いやいや、それほどでもあるぞ」
信忠「あなた今さっき自分でも驚いたって言ったばかりじゃないですか……」
金森長則「しかし若殿、よくこの様な抜け道をご存知でしたな?」
毛利良勝「若殿以外、ここにおるものは誰一人知りませんでしたぞ」
信忠「あー……これはもしもの時のために、親王様が無事に逃げることが出来るようにと、父上が密かに作らせた忍び口だ。だからこの抜け道は父上と俺、それに帝の一族しか知ってはおらぬ」ボウヨミ
諸将達「なんとっ……!」
長則「流石は大殿……亡くなってもなお、若殿をお助けいたすとはっ……!」
良勝「本当に大殿は偉大なお方であった……」
貞勝「若殿……必ずや大殿の敵、討ちましょうぞ……家臣一同及ばずながら若殿の力になりますゆえ」
信忠「うむ……」
信忠(しかし……)
信長と蘭丸キャッキャッウフフ
信忠(決心が揺らぐ……)
長益「の、信忠様ー!わしをっ、置いていかんでくれー!」
信忠「叔父上!なぜここに?てっきり叔父上は御所に残るものかと……」
長益「はぁ、わしはそんなことは一言も言ってはおらん!」
貞勝「しかし長益様、よくここがお分かりで」
長益「これでもわしも織田一門……侮ってもらっては困るぞ」トクイゲ
貞勝「これは失礼いたしました」
長益(小姓に聞いておいてよかった……こんなところ絶対にわからん……)ヒヤアセ
近衛前久邸
信忠「利治!俺だ、信忠だ!どこにおる?」
利治「おぉ、若殿!ご無事でなりよりです!」
信忠「お主もな!しかしよくやってくれたぞ利治!安土へ帰った暁には、好きな褒美を取らせようぞ!」
利治「ははぁ!ありがたき幸せ!」アタマサゲッ
信忠「うむ、ではお主も早々に公家衣装に着替えよ。俺は一応、近衛前久にあっておく」
利治「はっ!近衛前久以下公家どもは奥の部屋におりまする」
信忠「あい分かった」
信忠「……失礼いたす」フスマアケ
近衛前久「……何者じゃ?」
信忠「織田左近衛中将信忠にございます」
公家衆「織田信忠!その方、我らに縄を打つとは一体どういう了見でおじゃるか!?今すぐにとかぬか!」キシャー
公家衆「そうでおじゃる!それにここをどこと心得る!畏れ多くも前関白、太閤近衛前久殿下の屋敷でおじゃるぞ!そこに無断で押し入るとは……!」キシャー
信忠「押し入ったつもりなど毛頭ござらぬが……」
公家衆「何を白々しい!屋敷に押し入り、麻呂たちに縄を打ったのは紛れもなくお主の―――」
前久「えぇい、少し黙らぬか!」カツッ
公家衆「!?は……も、申し訳ありませぬ太閤殿下」
前久「ふぅ…申し訳なかったの中将殿……して、この隠居に何用でおじゃるか?」
信忠「一応……前久卿の真意のほどを、窺っておこうかと」
前久「麻呂の真意でおじゃるか……」
信忠「えぇ、なぜ前久卿の屋敷の敷地内に、鉄砲隊の一隊がいたのか……そして御所を狙撃していたのか」
前久「ふむ……」
信忠「……」
前久「麻呂は一切、あずかり知らぬ……明け方前、突如として押し入った賊どもに捕えられ、今の今までこの部屋に監禁されておじゃった。そこに中将殿が助けに参ってくださった……という次第」
信忠「…では、前久卿や公家衆たちは今回の一件とはまったくの無関係……と?」
前久「うむ」
信忠「……それを聞いてこの信忠、安堵いたしました。もし前久卿が加担していたとあっては、私はここにいる皆々様方を謀反人明智光秀の一派として、首を切らねばなりませんでした」
公家達「ひぃ……!」オソレオノノク
信忠「そうなっては、織田家は朝廷ともことを構えることに……いやはや、恐ろしいことですな」ニコリ
前久「朝廷は織田家とは末永くよき関係たいと考えておじゃる」
信忠「織田家も同じ思いにございまする」
前久「…その旨、御帝にもよく言上申し上げよう」
信忠「……では、失礼いたします」フスマパタン
公家衆「あっ、おい!中将殿!縄をほどいていかぬか!」ジタバタ
前久「騒ぐでない……」
公家衆「し、しかし、このままではあまりにも……」
前久「よいといっておる……しばらく黙っておれ」
公家衆「は、はぁ……」
前久(織田信忠……あれもまた、父・信長に勝るとも劣らぬ器量の持ち主と見た……末恐ろしい一族じゃ……)
室町小路
信忠「二条大路の様子は……」ヨウスウカガイ
公家a「また武士どもがこの京で戦を始めたとか……」シャクヲクチニアテ
公家b「これだから野蛮な武士は困るのじゃ……」ヤレヤレ
公家c「何はともあれ、とばっちりを受けては叶わぬ。麻呂は奈良にでも逃げつもりじゃ」
公家a「おぉ!麻呂も奈良に行こうと思っておったのじゃ」
公家b「麻呂は堺にでも行くかのう……」
公家abc「さて……逃げるでおじゃる!」ダットノゴトク!
眠いから寝る。続きは夜になる。
訂正、44と45の間にこれを。
信長「ふんっ、あんな腐りきった公家共など切り捨てればいいものを」
信忠「そういうわけにもいきませぬ。確かに朝廷など恐るるに足りませぬが……この国の領民の、意識ないし無意識の内の、帝に対する崇拝は恐ろしゅうございます。下手に朝廷と争っては人心が離れかねません。その上無駄な敵まで作りかねませぬ……それは父上もよくご承知のことでしょう?」
信長「ふんっ」
信忠「それに釘も刺しておきました。これで朝廷が表だって織田家に敵対する可能性は低いかと」
信長「まぁ、よい……用が済んだのであれば、とっととこんなところは出るぞ」
信忠「はい!」
貞勝「見事に逃げる公家ばかりですな」
信忠「うむ、しかしこれならば思いのほか楽に京を抜け出せるというもの……」
信長「だが、あまり油断するなよ?どこでボロがでるともわからぬ……なるべく目立つでない」
信忠「はい、心得ています……よいか皆の者!これより俺たちは一世一代の大芝居を打つ……皆もこの大芝居、必ずや成功させようぞ!」
諸将達「おぉ!!」
信忠「では、ゆくぞっ……!」
二条大路
信忠「………」
諸将達「………」
公家d「―――」オジャオジャ
公家e「―――」オジャオジャ
信忠「………」
諸将達「………」
公家f「そこのご一団、ずいぶんと大所帯でおじゃるな?」
信忠「!?……おrゲフンッ!ま、麻呂たちでおじゃるか?」
公家f「?そうでおじゃるが?」
信忠「ほほっ、た、たまたま道で知り合いにおうての……何かと物騒故、まとまっておるのじゃ」
公家f「ほう、確かに今は物騒ですな…いやしかし、それほど顔がお広いとは……さぞ名のある方とお見受けいたす。麻呂は飛鳥井雅庸(あすかいまさつね)。そこもとのお名は?」
信忠「うっ……」タジロギ
信忠(ま、まずい……下手に知っている名前を言っては、相手も知っているやもしれん……たしか飛鳥井家と言えば、代々蹴鞠や和歌に通ずる家……交友も広いはず……)
雅庸「?」
信忠(どうする……!?)
雅庸「どうなされた?麻呂はお名を訪ねただけでおじゃるが……」
貞勝「あー、ゴホン……このお方はさるやんごとなき身分のお方。どうかここは無用な詮索はご遠慮いただきたい」アイダニハイリ
信忠(じ、じぃ……!)タスカッタゾ
雅庸「さるやんごとなきお方……?はっ、もしや……こ、これは失礼した。では麻呂はこれにて」カシコマリ
信忠「……はぁ、じぃ、助かったぞ。しかしよくあれで引いたな」ホットヒトイキ
貞勝「いえいえ、若殿のためですから。恐らくは若殿を誠仁親王(さねひとしんのう)様か何かと勘違いしたのでありましょう」
信忠「誠仁親王様……一体なぜ…?」ハテ?
貞勝「京中に噂が広まっているのでありましょう。既に誠仁親王様が若殿の手によって御所を抜け出していることを」
信忠「確かに親王様は帝の元へ逃がしたが……」
貞勝「噂故、正確には伝わっておらぬのでしょう。はたして親王様が真に逃げたのか、それとも未だ御所におわすのか、はたまた逃げたとしても無事帝の元に逃げたのか、市中に紛れているのか……にわかに様々な憶測が飛び交っておるのでありましょう」
信忠「なるほど……」ナットク
貞勝「その上、親王様ともなれば、その龍顔を拝する者などごく一部……勘違いするのも無理はありませぬ」
信忠「まさか親王様に助けられるとは……因果応報とはこのことぞ」
貞勝「左様で。さて、のんびりはしておられませぬぞ若殿。そうそう何度もこの手は通用いたしませぬ」
信忠「うむ。皆、少し足を速めるぞ」
諸将「はっ……!」コゴエ
二条大路・出入り口付近
足軽1「あいや、待たれよ」ヤリヲクロスニヒキトメ
公家g「なんでおじゃるか?」
足軽2「只今、帝の勅令により京より出る者の検めを行っておる。貴殿のお名は?」
公家g「帝の勅令でおじゃるか。これはご苦労なことじゃ。麻呂は中院道勝でおじゃる」
足軽1「中院道勝様……失礼、お顔を」マジマジ
道勝「?」
足軽2「……確かに、失礼仕った。どうぞお通り下され」
道勝「うむ」
信忠「くっ……予想はしていたが、流石に二条大路ともなれば検問も厳しそうであるな……」
信長「信忠よ、狼狽えるでない」
信忠「し、しかし父上、ああも厳しい検問であっては……」
信長「相手は所詮わっぱ侍。先程の公家のように、公家の顔と名前が一致することなど万が一にもありえぬわ。堂々と名を騙ってやれ」
信忠「はっ……」
足軽1「あいや、待たれよ」ヤリヲクロスニヒキトメ
信忠「……なんでおじゃるか?」
足軽2「只今、帝の勅令により京より出る者の検めを行っておる。貴殿らはご一団とお見受けいたすが……何故京をお出に?」
長益「明日、堺にて茶会が催されるのじゃ。じゃから今日は早めに京を出立し、堺見物でもいたそうかとの」
信忠「それに京がこのありさまでおじゃるからの……」
足軽1「ふむ……では貴殿らのお名を」
信忠「……二条昭実じゃ」
足軽1「二条明実様……」マジマジ
信忠「っ……!」
信忠・諸将(ば、ばれるなっ……!)
足軽1「……失礼いたした。では、お通り下され」
信忠「……後の者はよいのか?」
足軽2「えぇ、かまいませぬ。二条様といえば正二位・内大臣様。いかに御帝の勅命と言えど、これ以上の無礼はいたせませぬ」
信忠「そ、そうか。それは有難い……では、まいろうかの」ヒョウシヌケ
斎藤利三「……行ったか、検問やめい!」
京・近江間街道
信忠「は、ははっ……こうもうまくいくとは、本当に拍子抜けだな」
利治「誠に……死傷者はおろか負傷者すら0とは……」
信忠「うむ」
長益「いやいや信忠様。わしはこうなると確信しておりましたぞ!なにせ信忠様の策でございますからな」
信忠「お、叔父上……」
貞勝「長益様だけではござりませぬぞ若殿。わしら家臣一同も若殿を信じておりましたとも!」
諸将達「若殿っ!」
信忠「お、お前たち……俺は皆のような忠義者が家臣であってうれしいぞ!」
信忠「ふぅ、さて…京を出たからと言って悠長にしてはおられん……良勝!お前はどこかで馬を調達し、直ちに岐阜城に向かい手勢を引き連れ安土合流してくれ。後、出来れば三法師の事も頼む」
良勝「はっ、お任せ下され!」ダッ!
信忠「後は安土についてからだな……」
信長「む?この匂い……?」クンクン
信忠「父上?いかがいたしましたか?」
信長「……これは火薬の匂い!?信忠!鉄砲ぞ!」ハッ
信忠「!」
利三「撃ち方用意!狙うは織田信忠ただ一人!!」グンバイカカゲ
信忠・諸将達「!?」フリムキ
利三「放てーっ!!」グンバイオロシッ
だめだ、眠くて書けない。起きたら書く。
信忠「皆!!伏せるのだ!!!」
タタタターーーンッ!
信忠「っ!」
信長「信忠っ!」
利三「………」
信長「信忠っ!返事をせんか!無事なのか!?」
信忠「父上…私は何ともございませぬ……しかし」
信長「っ!?」
貞勝「ぐふっ…わ、若殿……ご無事で、何より……ごほっ!」トケツ
信忠「じぃ!お主何ということをっ……!」
貞勝「ふ…ふふっ……なぜ、そのように悲しげな…ごほっ!お顔をなさるのです…?じぃは、じぃは幸せでございますぞ……何せ、若殿の御為に、討死…出来るのですからのう……」
信忠「っ!」
信長「貞勝……見事であるぞ。褒美は主の思うがままじゃ」
貞勝「おぉ、信長様……まさか信長様が、わしのお迎えとは……この貞勝、感激の極み……」ヤスラカ
信忠「じぃ!何を弱気なことを!?気をしっかり持つのだ!!」
貞勝「若殿…じぃのことなど構わず……はよう安土へ、安土へお逃げくだされっ……!」ゼツメイ
信忠「じぃ…!?じぃ!!」
諸将達「貞勝様っ!!」
利三「撃ち損じたか……第二隊、撃ち方用意!」グンバイカカゲ
利治「くっ…義兄上か!者どもさせるな!何としても若殿お命をお守りせよ!!」
諸将達「おーっ!!」カタヌキッ
信忠「じぃ……俺なんかのために……じぃは大ばか者だ」
信長「信忠……感傷に浸っている場合ではない。そんな時間があれば、一刻も早く安土へ走れ」
信忠「しかし父上!諸将達が必死に戦っているというのに、大将であるこの私が我先に逃げ出すなどできませぬ!!私も共に戦いまするぞ!!!」サヤニテヲソエ
信長「この大うつけ者が!!」
信忠「!」ビクッ
信長「大将なればこそ、退く勇気も必要なのだ!!よいか信忠、どんな戦であっても大将一人が討ち取られればそれで終いだ。しかし、大将がたった一人でも逃げおおせれば、いずれまた借りを返す機会も訪れよう」
信忠「………」
信長「ここにいるお主の家臣たちは、それを分かっておるのだ……たとえここで討死したとしても、お主さえ無事であれば必ずや、必ずや自分の敵を取ってくれるであろう…と」
信忠「………」
信長「それともお主はなにか!お主はここでむざむざと討たれ、貞勝やお主のために倒れた者の死を犬死にするきか!?」
信忠「………」
信長「答えぬか信忠!!」
信忠(じぃ……!)
『若殿…じぃのことなど構わず……はよう安土へ、安土へお逃げくだされっ……!』
長則「ぐふっ!!……これくらい、若殿の為ならばなんのそのぉ!!」キラレツツモキリカカリ
足軽「ひぃ!く、くるな……ぐあぁ!!」バッサリ
信忠(そして皆……俺はっ……!)
信忠「……分かりましたぞ父上……私は何としてでも安土へ逃げおおせて見せます。そして皆の無念を、晴らして見せまする!」カクゴヲキメマシタ
信長「うむ、よくぞ言った。それでこそわしの跡取り…織田家の棟梁ぞ」
信忠「利治ーっ!俺は先に安土へ向かうぞ!俺の背中は、その方に預けたぞ!!」
利治「ははあぁっ!!この利治!身命に変えましても若殿の殿、勤めはたして見せましょうぞ!!」オウセンシツツ
信忠「っ!」カケダシッ!
利三「くっ…!逃がすか!!」
利治「待たれよ義兄上!義兄上のお相手は、この利治がお引き受けいたす!」タチハダカリ
利三「えぇい、どかぬか利治!信長亡き今、信忠さえ討ってしまえば織田家の天下など無に帰するわ!悪いことは言わぬ、今からでもこの義兄に加勢せよ!」
利治「馬鹿を申されるな!そのお言葉、義兄上もご承知なのであろう。若殿さえご無事であれば、織田家は十分に天下を治められると!わしは何としてでも若殿に天下人となっていただきたい……その邪魔をするのであれば、たとえ義兄上であっても…切るっ!」カタナカマエ
利三「どうあっても…主とは分かり合えそうにないの……残念だ」カタナカマエ
利治「いざ……」
利三・利治「はあぁ!!」キリカカリッ
信忠「はぁっはぁっ……利治、どうか無事であってくれよ……」タッタッタッ
信長「あれも中々の猛将…そう簡単には倒れまい」
信忠「もちろん、私もそう信じております」
信長「ならば無駄なことなど考えるな。お主は今後の事だけを―――む?あれは……」フリムキ
信忠「父上?ま、まさか、すでに追手がっ!?」ヒヤアセ
信長「いや違う……あれは」
長益「の、信忠さまーっ!わ、わしもお供つかまつるぞ!織田家の当主が、供もなしに城に帰ったとなっては面目が立たぬであろう」ゼンソクリョク
信長「……源五だな」ヤレヤレ
信忠「お、叔父上……驚かさないでくだされ…追手かと思い、肝を冷やしましたぞ……」ダツリョク
長益「いや、驚かせてすまなかった。そんなことより!歩を緩めておる場合ではないぞ。急いで安土城に入らねば!」バビューン
信忠「あっ、叔父上!……は、速い」オイテケボリ
京・本能寺
光秀「なにをしておる!まだ信長の遺体は見つからぬのかっ!?」
足軽「はっ!瓦礫の下に埋まっているものと思われますゆえ、瓦礫の除去と並走しておりますので思いのほか時間が……」
光秀「よいか!草の根分けてでも信長の遺体を見つけ出せ!!」
足軽「は、はっ!」ソウサクニモドリ
伝令「光秀様、二条御所を攻撃中の伊勢貞興様よりの伝令にございます」
光秀「おぉ、貞興からか。もしや、すでに御所を陥落せしめたか!?」
伝令「い、いえ…もうし上げにくいのですが、その逆でございまして……」
光秀「なんだと?」
伝令「はっ、貞興様に従軍なされた、足利義昭公が主な原因でございまして……貞興様が御所を落すため色々と策を弄そうとはしているのですが、ことごとくそれを批判……最終的には、御所に攻撃を仕掛けるななどと貞興様にご命じなされまして……貞興様もほとほと困り果てておいでで」
光秀「な、なんと……そんなことになっておようとは……兵の士気を上げるためにと上様を担ぎ出したのだが、無意味であったか……わかった、上様はこちらで何とかしよう。お連れしてくれ」
伝令「はっ!」
光秀「………天は我に味方せぬのか?」ソラヲアオギ
堺
徳川家康「………」メイソウ
服部半蔵「殿」スッ
家康「半蔵か……どうであった京は?」
半蔵「はっ、織田信長様、家臣の明智光秀様のご謀反により、討死とのこと」
家康「ほほう、信長公が……それは一大事だな。では、ご嫡子の信忠様はいかがした?」
半蔵「はっ、織田信忠様は辛くも京を抜け出し、安土城へ向かっているもよう」
家康「信忠様は難を逃れたのか………それは重畳」
半蔵「光秀の本隊は未だ、京・本能寺にて信長公の亡骸の捜索にあたっており、目立った動きはありませぬ」
家康「………」
半蔵「今回の光秀の謀反……光秀にとっては、あまり良い結果とは思えませぬな」
家康「…光秀にとっては……か」
半蔵「……報告は以上にございます」スッ
徳川家重臣一同「………」
家康「そろったようだな…」
酒井忠次「大殿、いきなりのお召とは一体何事にございますか?」
家康「うむ……皆、天下を揺るがす一大事が、京にて起こった」
榊原康政「天下を揺るがす一大事……にございますか?それは一体……」
家康「信長公が、家臣・明智光秀の謀反によって横死…とのこと」
家臣達「な、なんと……!」
井伊直政「それは真にございますか!?」
家康「先程、別件にて京に行っておった半蔵からの報告だ……間違いなかろう」
大久保忠佐「では、信長公亡き後の織田家は嫡子の信忠公が継ぐのでしょうが……信忠公の安否のほどは?」
家康「これも半蔵からの報告だが、信忠公は無事に京を落ち延び。今は安土へ向かわれているとのこと」
家臣達「おぉ」
本多忠勝「では大殿!一刻も早く浜松へ舞い戻り、織田の援軍に駆けつけねば!!」
家康「まぁ、まて忠勝。皆の者、皆も忠勝と同じ考えか?」
渡辺守綱「と、申されますと?」
家康「いやなに、確かに忠勝の考えも正しいが、他にも選択肢があると思ってな」
石川数正「それは…大殿は織田とは同盟関係を解消するとお考えで?」
康政「なるほど、織田家の混乱に乗じ…織田領に侵攻しようと……」
数正「そうなれば甲斐ですかな?甲斐は織田家が治め始めてまだ日も浅い…恐らく一揆が多発して混乱した織田家では治めきれますまい」
忠勝「おのおの方、何を馬鹿なことを申すか!俺はそのような、人の弱みに付け込むようなまねは断じて認めん!!」ガオー
家康「落ち着かぬか忠勝。何もわしもそこまでは言っておらぬ。ただ、急いで援軍を出さずとも、しばらく成り行きを見定めるのもよいのではないかとわしは思うのだ」ドウドウ
忠勝「例え大殿のお考えと言えど、こればかりは俺の性分ゆえ納得いきませぬ。織田には、すぐに援軍を出すべきと」カタクナ
家康「忠勝の考えは分かったぞ。で、皆はどう思う?遠慮せず言ってくれ」
康政「俺も忠勝殿と同意見です。例え信長公が倒れても、信忠公が健在であれば織田の混乱もすぐに収まりましょう」
直政「確かに…それならば織田とは優良な関係を保ち、北条攻略に後顧の憂いなく当たった方がよいかと」
忠次「わしもすぐに援軍を出すべきと」
家臣達「………」
家康「…後の皆も、忠勝たちと同じ考えか?」
家臣達「はっ!」
家康「ふっ、それでこそ三河武士というもの。さて、では浜松へ帰らねば始まらぬが、一体どう帰るべきか……」シアンガオ
半蔵「殿、でしたら伊賀をお通り下され。道は険しゅうございますが、その分、賊に会う可能性はありませぬ。それに道案内は私にお任せを」スッ
家康「……わかった。頼むぞ半蔵」
半蔵「はっ!」
家康「数正、お主には使者をやってもらうぞ。急ぎ安土城に向かい信忠公に、徳川は全面的に織田殿にご助力いたす…援軍もすぐに向かう故、しばしお待ちくだされ。と伝えてくるのだ」
数正「はっ、承りましてございます」
家康「うむ!では皆の者!急いで浜松へ帰る支度をせよ!」
家臣達「おぉ!」
疲れたからここまで。続きはまた夜に書く。
<<78
<<79の言うように、家康の伊賀越え時に正信がいたかどうかは曖昧な部分があるから、あえてセリフにはださなかった。俺はいないものと考えてるけど、どちらでも特に問題なように進めるから各々すきな解釈でいい。
岸和田城
蜂屋頼隆「―――というわけで、何とかこちらでも5000余の兵を集めることが出来ました」
織田信孝「うむ、ご苦労であった。これで四国遠征の兵は、目標の総数2万を超えたな長秀?」
丹羽長秀(にわながひで)「はっ、確かに」
信孝「流石の長宗我部元親も、この大軍を前にしては手も足もでまい」フフン
長秀「左様で、しかし油断は禁物かと」
信孝「わかっておる。まったく、長秀は心配性だな」
頼隆「では殿、さっそく城をで、まずは大阪の津田様・丹羽様の隊と、そして摂津の殿の隊と合流し四国へ渡航したしましょう」
信孝「そうだな。では―――」
足軽「よ、頼隆様ーっ!!い、一大事にございまする!!!」
頼隆「何事だ騒々しい!殿の御前であるぞ!」
足軽「はっ!と、殿!?い、いえ、しかし真に一大事でなのでございます!」
頼隆「えぇい、殿の御前であるといってあるであろう!控えぬか!!」
信孝「よい、頼隆。その方、そんなにも慌てておるとは、よほどの事なのであろう?許す、申してみよ」
足軽「は、はっ!では恐れながら申し上げます!今朝、京・本能寺にて大殿が明智光秀様の謀反にあい、討死なされたとの報!」
信孝「なっ……ち、父上が?そんな馬鹿なっ……!」シンジラレナイ
長秀「しかも謀反人は明智殿と……!?なぜ明智殿が大殿を!?」
頼隆「その方!それはどこからの知らせだ!?真なのであろうな!?」
足軽「はっ!すでに京より逃げ出してきたと思われる公家によって、噂は大阪中に広まっております。内容は様々でありますが、大殿が討死したということだけは確実かと……」
信孝「………」
長秀「そ、そんな……はっ、で、では若殿は!確か、若殿も今は京に滞在していたはず、若殿はご無事なのか!?」
足軽「そ、それが…若殿に関しましては、今一つはっきりしないのです……」
頼隆「どういうことだ?」
足軽「噂によれば、若殿は、二条御所にて大殿の後を追い果てたとも、いまだ二条御所にて籠城中とも、はたまたすでに京を落ち延び安土城に向かっているとも……など等、様々な憶測が飛び交っております」
長秀「つまるところ、若殿の安否や行方はまったくの不明…というわけだな」
足軽「はっ……」
頼隆「殿、いかがいたしますか?大殿が討死とあっては、もはや四国遠征など……」
長秀「それよりもまずは一度安土へ戻り、正確な状況を確認すべきかと。若殿もご無事かもしれませぬし」
信孝「………」
長秀「……殿?」
信孝「ふ、ふふっ……長秀、俺は安土へは戻らぬぞ……」
長秀「は……な、なぜでございます?」
信孝「敵討ちだ……俺はまず京へ向かい、逆臣光秀を討ち、父上の敵を取る」
頼隆「大殿の敵を……!」
信孝「幸い、この大阪は京に近い……それに俺たちには十分な戦力もそろっている。いまこの俺が父上の無念を晴らさずして、一体だれが晴らせようぞ!」
長秀「おぉ、殿!ご立派な考えですぞ」カンプク
信孝「そして俺は、織田家の棟梁となる!!」
長秀「なっ…!?し、しかし織田家の跡取りは、大殿が生前から若殿にと仰せでございましたぞ!?」キョウガク
信孝「その兄上の安否がわからぬのであろう?もし兄上も討死なされておったとあれば、もちろんこの俺も、十分な織田家の跡取り候補だ」
頼隆「た、確かにそうではありますが、まだ若殿が亡くなったとは……」
信孝「兄上の生死など関係ない……俺は、父上が生前なんと申していようと、最も早く父上の敵を取ったものが、織田家の跡取りとなるがふさわしいと考える」
長秀・頼隆「………」ゴクリッ
信孝「父上の敵を取り……兄上が生きておるのであれば、力ずくでも俺が織田家の棟梁の座に就くまで」
長秀「……そのようなこと、うまくいくとお思いですか殿?」
信孝「出来ぬと思えば、はなからこのような大それたことは申さぬ……長秀、頼隆…この俺に力をかしてくれるな?」
頼隆「……わかり申した。この命、殿にお預け申す!」
信孝「そうかっ!では、長秀、お前は?」
長秀「……私は―――」
長秀「―――私は、殿については行けませぬ。若殿の生死もわからぬ時に、いたずらにお家を騒がせようとする殿には、私は命を預けることはできかねまする」
信孝「………そうか」
長秀「申し訳ありませぬ」
信孝「いや、長秀の言うことも最もだ……では、お前は安土へ向かうがよい」
頼隆「と、殿!?なにを言って……!?」
長秀「……よいのですか?私は殿の謀を聞いてしまっているのですぞ」
信孝「構わぬ。お主がこの事を言いたければ言えばよい。それはお主の自由だ……何より、織田家の事を一番に考えてくれておるお主を捕えることなど、俺には出来ぬ」
長秀「殿……ありがとうございまする。では、私は安土へ向かわせていただきまする!」
眠いから寝る。続きは起きたら書く。
頼隆「本当によろしかったのですか殿?丹羽様を安土へ向かわせてしまって……」
信孝「構わぬといっておる」
頼隆「し、しかし、もし若殿が生きておいででしたら、殿に別心ありと……」
信孝「頼隆、何も俺は光秀のような謀反を起こそうというわけではない。あくまで俺は、織田家の正当な跡取り候補として兄上と家督を争うまで。後ろめたい気持ちなど微塵もないわ」
頼隆「で、ですが……」
信孝「しつこいぞ頼隆!これ件はもう終わった、これ以上この事は聞くな」
頼隆「は、はっ、わかりました……」
足軽「大変にござます!殿!」
頼隆「またお前か……今度は何事ぞ」
足軽「はっ、ただいま兵舎に向かいましたところ、大殿討死の報を聞きつけた思われる者達が相次いで逃走し始めております!」
信孝「なんだと!?」
足軽「すでに逃げ出した者は500余にのぼるものかと……」
頼隆「えぇい、情けない者ばかり……いかがいたしますか殿?このままでは、光秀を討つことが出来なくなりますぞ!」
信孝「くっ……頼隆!俺自らが兵舎に向かい、兵たちに喝を入れようぞ!ゆくぞ!」
頼隆「おぉ、流石は殿!では早速に!」
岸和田城・兵舎
足軽1「なぁ、大殿が京で亡くなったとは本当なのか?」
足軽2「さぁなぁ…噂ではそうらしいが……」
足軽3「話によると、若殿まで討たれてしまったそうな」
足軽4「なんと……では織田家は、俺達はとうなるんだ……?」
足軽5「大殿だけでなく跡取りの若殿まで討たれたとあっては……織田家も終いか」
足軽6「こりゃあ、とっとと織田家には見切りをつけて、逃げたほうがいいかもしれないな」
頼隆「何をたわけた事を申しておる!!」
足軽達「!?」
頼隆「一同!畏れ多くも殿のおなりである。控えよ!」
信孝「………」
足軽達「は、ははぁ!」ヒレフシ
信孝「一同面を上げよ。今より、恐らく皆が知りたいであろうことを話す」
足軽達「……」ゴクリ
信孝「まず、父上の事だが……京より来た公家の話では、本能寺にて明智光秀の謀反にあい、自害なされた」
足軽達「な、なんと………!」ヤハリ
信孝「そして、兄上は未だ安否及び消息も不明…とのこと」
足軽1「で、では噂は本当で!」
足軽2「殿!一体俺たちはどうなるので!?」
足軽3「大殿も若殿も討たれたと諸大名にしれれば、織田家は恰好の的ですぞ!」
足軽4「そうなれば俺達も―――」
頼隆「えぇい、静まらぬか!!」
足軽達「は、はっ!」ビクッ
信孝「確かに、このままでは織田家の行く末はないやもしれぬ……しかし、父上・兄上が果てたとしても、まだ織田家にはこの俺がいる」
足軽達「!」
信孝「この俺が逆臣光秀を討ち、織田家の棟梁となり父上の遺志を継ぐ……そうなれば織田家の身代は揺らがぬ。だがそのためには、お主たちの力が必要不可欠。皆、俺のために逃げずに戦ってくれ!」
足軽達「………」
頼隆「どうなのだ、皆の者!?」
足軽達「お、おぉ!」バラバラ
信孝「……まぁ、よい。では皆、まずはすぐにでも大阪に向かうぞ。急いで準備せよ」
足軽達「は、はっ!」バタバタ
信孝「あっ、お前たち二人は待て」
足軽1・2「は…なんでしょう?」
信孝「足軽1、お主は四国におる三好康長に繋ぎを。京の一件を知らせ、急ぎ軍を引き上げ摂津に向かえと」
足軽1「はっ!」
信孝「足軽2は、毛利攻めを行っている羽柴秀吉に繋ぎを。同じく京の一件を知らせ、俺に加勢してくれるよう説得してくるのだ」
足軽2「はっ!」
頼隆「……はたして筑前守様は、殿にお味方いたすでしょうか?」
信孝「分からぬな……しかし、もし兄上が生きていたとすれば秀吉には、俺についてもらわねば困る」
頼隆「……」
信孝「さて、どう転ぶものか………」
伊勢・松ヶ島城
織田信雄「………」ダンマリ
家臣1「御本所!いつまでそう黙っておいでですか!?」
家臣2「本能寺にて信長様が自害なされたとはいえ、信忠様は無事に安土へと向かっているとのこと!」
家臣3「我々も今すぐ軍を編成し、信忠様の援軍に駆けつけるべきかと!」
信雄「………」ダンマリ
家臣一同「御本所っ!!」ツメヨリ
信雄「うっ……し、しかしだな………」シドロモドロ
家臣一同「しかしなんでございますか!?」ズイッ
信雄「い、いや……い、伊賀に不穏な動きがあるから、下手に動きたくないし……」ユビヲイジイジ
家臣一同「……」ジーッ
信雄「四国遠征の信孝に兵を貸してしまっているから、十分な兵力もないし……」メヲソラシ
家臣一同「……」ジーッ
信雄「正直………動きたくない!」プイッ
家臣一同(こんな主君もういやだ………)アキレマシタ
6月3日・亀山城
光秀「………」
明智秀満「昨日より引き続き信長の遺体の捜索に当たりましたが、信長の遺体は見つかりませんでした……殿、もしや信長はまだ……」
光秀「それはないはずだ……あの状況では、いかに信長とて逃げおおせる訳がない。それは秀満もわかっておろう」
秀満「はっ」
光秀「……仕方ない、信長の遺体の捜索は一旦止めよう。伝令よ、本能寺におる兵たちにそう伝えよ」
伝令「はっ!」
秀満「よろしいので?」
光秀「遺体の捜索などいつでもできる……問題は生きておる方だ」
秀満「信忠……ですな」
光秀「……利三の繋ぎにより、信忠が京を抜け出したことが分かったが……」
秀満「利三殿が討死とは……今でも信じられませぬ」
光秀「それは私もだ……しかし悲しんでばかりもいられぬ。利三の為にも、私が天下を治めねば」
秀満「左様で……では、安土へ逃げた信忠はいかがいたしましょう」
光秀「うむ……今から追っても無駄であろうから、軍を整え安土城へ攻め入るか、野戦に持ち込むかして信忠に勝たねば……」
秀満「安土城へ攻め入っても、信忠が指揮しているのでは落すのはかなり困難かと……それならばまだ野戦の方がよいと」
光秀「いずれにしても、万全な兵力を集めることが先決だな……」
秀満「殿に確実に協力してくれると思われるのは、毛利・長宗我部・細川・筒井の4家かと……しかしこの4家が立てば、一色や京極などの小大名たちも加勢してくれるものと」
光秀「ふむ……」
秀満「うまくいけば北条・上杉も動き、徳川・柴田の足止めとなってくれるやもしれませぬ」
光秀「そうだな……では、さっそく各大名へ書状を書こう。紙と筆を」
秀満「はっ……」
疲れたからここまで。続きは起きたら書く。
安土城
蒲生賢秀「奥方様…そろそろ夕刻なりまする。どうか、この安土城から我が日野城へお移り下さいませ」
濃姫「いやです。行きたければあなた達だけでいきなされ」
賢秀「お、奥方様…先刻より申していますように、このまま安土城にいては危険でございます。いつ明智の軍勢が押し寄せるとも……」
蒲生氏郷「そうなってはいかに堅固なこの城と言えど、長くは持ちませぬ……」
賢秀「なにとぞ御決断を……!」
濃姫「…何と言われようとも、私はこの安土を出ませぬ。私は信長様の正室…その私が信長様の居城である安土城より逃げ出したとあっては、織田家の面目が立ちませぬ……例え信長様が果てたとしても、私は最後まで城に残る覚悟です!」
氏郷「し、しかし―――」
小姓「も、申し上げます!!」
賢秀「な、何事じゃ!まさか明智の軍勢がすでに!?」
小姓「あっ、いえ、そういうわけでは……」
氏郷「では、そんなに慌てて…一体何事ぞ?」
小姓「はっ、それが若殿がっ…信忠様がご帰城なされましたっ!!」
濃姫・賢秀・氏郷「!」
信忠「なんだ皆……折角無事に帰ってきたというのに、まるで幽霊を見るような目で俺を見おって」
賢秀「若殿!生きておいででしたかっ!」
氏郷「御無事で何よりっ……!」
信忠「ふふん、この俺がそう簡単にくたばってたまるものか。それにしても賢秀、留守居を務めるお主が、勝手に城を逃げ出そうとは……一体どういう了見ぞ?」
賢秀「あっ!いや、それはですな……」シドロモドロ
氏郷「若殿、父上をお許しくだされ。これも奥方様方の身の安全を確保するためにとの考え……何卒ご容赦を」アタマフカブカ
信忠「……ふふっ、それくらいわからぬ俺ではないわ。だからそのように、今にも腹を切りそうな目をするでない」
賢秀・氏郷「若殿……」ホッ
濃姫「信忠殿っ……!」
信忠「母上、心配をおかけしました……ですがこの信忠、無事に安づtむぐっ!?」ハハニトビツカレッ!
濃姫「信忠殿ーっ!母は、母はどれだけあなたの事を心配したことかぁ!!」ムスコダキシメッ!
信忠「む、むぐぅ…は、母上…!苦しい、苦しいです……!」ハハニダキシメラレッ!
濃姫「本能寺にて信長様が自刃、その上あなたの生死まで不明との報…母は生きた心地がいたしませんでした!」ムスコヲチカライッパイダキシメェ!
信忠「…は、ははうえ……!」ギブギブッ
濃姫「しかし母は信じてました……あなたは、必ずやこうして無事に戻ってくるとっ……!」ムスコヲキワメテイカドウブン
氏郷「お、奥方様!」
濃姫「なんです?今私は忙しいのです。話なら後にしてください」ムスコヲイカドウブン
氏郷「いえ、そういうわけにも……そのままだと若殿が………」
濃姫「?」
氏郷「若殿が、信長様の元に……」
信忠「………」
濃姫「………あっ」ハナシ
信忠「……死にかけました」ゲッソリ
濃姫「ごめんなさい信忠殿……感極まってしまって」アタマサゲ
信忠「いえ…頭を上げてください母上、別に私は起こっているわけではないので」
信長「はっはっはっ、お濃は相変わらずだな!」
信忠「父上…一応、笑い事ではありませぬ。一瞬、川の向こうで必死にこっちに来るなと訴えるじぃを見ましたよ」
氏郷「そうです若殿!若殿が生きておいでということは、もしや大殿も!?」
信忠「ん?父上ならこk……はっ!」
信長「?」
信忠「い、いや…残念だが父上は……」
信忠(あぶない、あぶない……あまりに父上と普通に話していたから、父上が死んでいるのを忘れるところだった……)
氏郷「そうですか……」ガックシ
賢秀「いや、しかし、若殿が生きておいでだっただけでも良かったというもの……もし若殿もなくなっていたら、織田家はどうなっていたことか……」
信忠「安心せよ。こうして俺はなんとか生きておる」
信長「さて、無事に着いたからと言って無駄にできる時間は少ないぞ信忠」
信忠「分かっております父上。まずは、父上が光秀の謀反にあい自害したこと、そして私が生きているということを急ぎ各地の諸将達に正確に伝えなくては……」
小姓「申し上げます。徳川家康様より石川数正という使者が参っております」
信忠「なに、徳川殿からと!急ぎ通せ」
小姓「はっ」
数正「徳川家家臣、石川数正と申します。このたびは、殿の使者として参りました次第……」ヒレフシ
信忠「頭を上げなされ、して徳川殿は一体なんと?」
数正「はっ、まずは此度の明智光秀謀反による信長公自害の一件…我が主君、家康様も堺にて聞き及び、酷く胸を痛めておいででおられまする……」
信忠「ふむ……徳川殿は耳が早いことで」
数正「しかし、同時に信忠公が無事に京を落ち延び、光秀めの刃から逃げおおせたことも聞き及び、家康様はたいそう安堵しておいででございます」
信忠「……」
数正「つきましては、家康様は急ぎ浜松に戻り、軍を引き連れ信忠公のお力になるとのことにございまする」
信忠「徳川殿がそこまでこの織田家を思っていてくれたとは……この信忠、礼を申すぞ」
数正「はっ、そのお言葉…よく殿に申し上げておきます」
信忠「これからも織田家と徳川家は盟友ぞ。さて、もう日も暮れる…今宵はこの安土城に留まるがよい。賢秀!数正殿のもてなしを頼む」
賢秀「はっ!では、こちらへ」ミチビキ
数正「お心使い痛み入りまする……」ミチビカレ
ここまで。続きは起きたら書く。
備中高松・羽柴秀吉本陣
秀吉「高松城の様子は?」
黒田孝高「依然、目立った動きはありませぬ。しかし恐らくはそろそろ兵糧が尽きるころと」
秀吉「では、早ければ今日の夜にも、毛利方から和睦の使者が来るかもしれぬな」
羽柴秀長「兄上」
秀吉「おぉ、秀長か。もしや毛利方から使者が参ったのか?」
秀長「いえ、それが備前と備中の国境の検問にて怪しい者を捕えまして……その者がこの様な密書らしきものを」ショジョウワタシ
秀吉「なに、密書と…恐らくは毛利宛のものであろうが……どれ」ヒラキ
秀吉「ふむ………ん?……っ!?」
孝高「…殿、いかがなさいました?」
秀吉「そ、そんな馬鹿な……このようなこと、あり得るははずが………」キョウガク
秀長「あ、兄上?」
秀吉「……大殿が…信長様が本能寺にて明智光秀の謀反にあい……自害なされたと……」テガフルエ
孝高・秀長「!?」
秀吉「………」ショジョウオトシ
孝高「……これはっ!」ショジョウヒロイ
秀長「孝高…本当なのか?」
孝高「えぇ、確かにそう書いてあります。印も間違いなく明智のものと……」
秀長「では………」
石田三成「殿、ただいま大阪の織田信孝様からの使者を名乗るものが……」
秀吉「信長様ぁー……」オトコナキ
三成「と、殿……?」
秀長「あー、三成…兄上は今…その、お取込み中だ。要件なら私が変わって聞こう」
三成「は、はぁ……それがその者、大殿が本能寺にて明智光秀の謀反にあい、自害したとか申しているのですが……」
秀長「み、三成!そのこと、まだ誰にも言ってないであろうな!」ツメヨリ
三成「は、はい…誰にも申しておりませぬが……」ノケゾリ
秀長「そうか……まず三成。その者言っている事、確かに嘘ではない」
三成「ま、まさか……では、本当に?」
秀長「うむ。今しがたこの密書をもった者を捕えてな……読んでみよ」ショジョウワタシ
三成「はっ、拝見いたします………」ショジョウウケトリ
秀長「………」
三成「………これは…あの者、嘘偽りを申しているわけではなかったのですな」
秀長「うむ…して、信孝様の使者は何と申しておるのだ?」
三成「はっ、信孝様は大殿の敵を討つため、殿に是非とも加勢してほしいと。ですからいったん毛利攻めを中断し、急ぎ摂津まで向かってくれとのことです」
秀長「ふむ……信孝様はそのように……」
孝高「……ん?しかし秀長様…確かこの密書には、信忠様は討ち損じたと書いてあります……信忠様が生きておいでなのだとしたら、光秀討伐の盟主となるのは嫡男である信忠様では?」
秀長「確かに、言われてみればおかしな話だな……では一体なぜ信孝様は単独でこのようなことを……」ハテ?
秀吉「……それは、信孝様は信忠様を出し抜き…自らが織田家の棟梁となる腹積もり……ということなのではないか?」
秀長「おわっ!あ、兄上、おどろかさないでくだされ……もうよろしいので?」
秀吉「いつまでも男がメソメソとしてはおられぬわ。というかお主たち、もう少しわしにかまってくれてもよかったんじゃないか?」
孝高「なるほど……」
秀吉「聞けよ」
孝高「殿の言うことが本当であれば、確かに信孝様が単独で使者を送ってきたことも納得がいきますな」
三成「し、しかし、あの信孝様が信忠様に、そのような謀反まがいなことをいたすでしょうか?」
孝高「いや、あのお方ならやりかねぬ……信孝様はご兄弟の中では人一倍の野心家と思われる……今回の四国征伐も、信孝様は信長様に是非にと頼み込んで任を引き受けたと聞くしな……」
秀長「功を上げ、織田家の次期棟梁とまではいかぬも、序列の二番手くらいまでは信長様に認めてもらおうと思っていたのであろうな……そして今回の光秀の謀反…」
孝高「信孝様は思ってしまったのでしょう、誰よりも先に大殿の敵を討ち取った者こそが、織田家の正当な跡取りにふさわしいと……」
秀長「ふむ……どうしますか兄上?」
秀吉「………ん?あぁ、いや、どうするかな……?」
秀長「……兄上?聞いてましたか?」
秀吉「なっ…!聞いていたに決まっておろう!えっと、若殿につくか、信孝様につくかであろう?」
三成「えぇ、その通りにございます」
秀吉「うーむ……普通に考えれば若殿につくのが当然だが……」
孝高「……殿が天下をつかむには、信孝様についた方が何かと都合がよろしいかと……」
秀吉「ふむ………」
孝高「信忠様は信長様に勝るとも劣らぬ器量の持ち主……比べて信孝様は無能ではないまでも凡庸な方……」
秀長「では、信孝様の考えに乗り信忠様を屠り……そのあとは上手く信孝様を操り兄上の天下をなす……孝高はそうお考えか?」
孝高「いえいえ、私はそこまでは……しかし、殿のお考え次第ではそうなるやもしれませぬな」
秀吉「……ははっ、わしの天下か!面白い、どうせ一度きりの人生……一回くらい天下を賭けた大博打、打ってやろうではないか!」
秀長・孝高・三成「はっ!」
秀吉「秀長、お主は大殿討死の報が毛利方に知られないよう、厳重に緘口令をしけ」
秀長「はっ!」
秀吉「孝高、お主は毛利本陣に向かい和睦の交渉を……よいか、大殿討死を気取られてはならぬぞ。決して焦り弱気な交渉に出るなよ」
孝高「はっ、心得ておりまする」
秀吉「三成はこの事を皆にも伝え、すぐにでも摂津に向かえる準備をさせよ」
三成「はっ!」
ここまで。
6月4日・岐阜城
良勝「はぁっ、はぁっ……やっと、着いたぞ………かいもーん!」
岐阜城「………」シーン
良勝「かいもーん!私は織田信忠様家臣、毛利良勝!信忠様より火急の御用!門を開けられよ!」
岐阜城「………」シーン
良勝「えぇい、聞こえておらぬのか!?急いでるというのにっ……!」ジダンダ
城門「ギィィ……」ヒラキ
良勝「おぉ、やっとわかってくれたか……」
斎藤利堯「………」
城兵達「………」ズラリ
良勝「なっ……利堯殿!これは一体……」
利堯「……捕えよ」
城兵達「はっ!」トリカコミ
良勝「えぇい、俺は城主・織田信忠様の使いのものと申しているであろう!それを知っていてもなお俺を捕えるか!?」
利堯「…構わぬから、捕えて城内につれてけ」
城兵達「はっ!」トリオサエ
良勝「…ま、まさか利堯殿!お主、光秀と口裏を合わせて、若殿のいない間にこの岐阜城をっ……見損なったぞ!!」トリオサエラレ
利堯「………」
安土城・天守
信忠「……はぁ」
信長「どうした信忠?ため息などつくものではないぞ」
信忠「申し訳ありませぬ……しかし、こう一人でゆっくりしていると、今になって一昨日ことを思い出してしまいまして……」メヲツブリ
信長「ふむ……しかし一人とはお主、わしもおるではないか?」
信忠「父上はいていないようなものですからいいのです」
信長「なかなか酷いなお主は……」
小姓「…信忠様、丹羽長秀様がお目通りを願っておいでですが……」
信忠「何、長秀が?だが長秀は確か……」
信長「わしが信孝の補佐として四国征伐に同行させたはずだな」
信忠「では、信孝からの使者ですかな?それにしては些か早いような……まぁよい、通せ」
長秀「!…し、失礼いたします……若殿……丹羽長秀、お目通りが叶い恐悦至極に存じます」カシコマリ
信忠「堅苦しい挨拶などよい。して、この俺に何用だ?」
長秀「…はっ、御用、というのは……ですな……」
信忠「?」
信長「………」
長秀「…の、信孝様は、信忠様お一人では何かと大変であろうから…ということで、家老であるこの私を遣わしまして……」
信忠「ほう…信孝の奴、この兄を心使うとは……」
長秀「信孝様ご自身はなるべく急ぎ摂津に軍を集め、再び繋ぎを送るとのことにございまする……」
信忠「信孝め、手際のいいことだ……分かったぞ長秀、折角の信孝の心使い無下にはできぬな……存分に働いてもらうぞ」
長秀「はっ……」
信忠「では、下がるがよい」
長秀「失礼いたしまする」サガリ
信忠「……ふぅ、長秀は優秀な家臣。信孝も味な真似をいたしますな父上?」
信長「………」
信忠「父上?いかがなさいました?」
信長「ん?いや……そうだな、信孝か………」
信忠「……父上?もしや、長秀の話に何か不審な点でも?」
信長「…わしの思い過ごしであってほしいが……今の長秀、少し挙動不審であったような、何かを隠しているようでもあったような……それに……」
信忠「それに?」
信長「お主を最初に見たときの長秀の顔……何か複雑なものを……」
信忠「……言われてみれば確かに………しかし、それほど気にすべきことでもないかと」
信長「一応、頭の隅にでもおいておけ……」
信忠「はっ」
信長「信孝め……馬鹿な気を起こしていなければいいが………」ソトヲミ
6月5日・亀山城
光秀「……秀満、各大名からの返事は参ったか?」
秀満「はっ……返事が参ったのは長宗我部、京極、一色、姉小路の4家……」
光秀「して、返事のほどは?」
秀満「それが……長宗我部は四国を平定しだい加勢する、京極、一色は協力したいのやまやまだが、安土に信忠がいたのでは下手に動きたくないとのこと……色よい返事を返してきたのは、姉小路家だけ……という状況です」
光秀「……細川、筒井からの返事はまだないのか?」
秀満「書状は届いているはずですが……未だ」
光秀「………」
秀満「飛騨の姉小路が返事を返してきているのです。恐らくは細川、筒井は殿に味方しないか、あるいは中立を保つ気かと……」
光秀「……藤孝殿、順慶殿、なぜ……」
秀満「今一度……今度は使者も一緒に同行させましょうか?」
光秀「時間がかかるが致し方ない……準備せよ」
秀満「はっ」
光秀「おのれ……信忠さえ仕留めておればこのような………!」コブシヲニギリ
ここまで。
北ノ庄城
柴田勝家「…それで、まだ各々城を離れることはできそうにないか?」
佐々成政「申し訳ありませぬ……上杉の反撃が思った以上に激しく……」
不破光治「今、こうして評定に出ることもままならぬ有様……」
勝家「ふぅむ……しかしこの上杉の必要なまでの攻撃…もしや上杉景勝め、大殿が自害なされた事、知っているのでは……?」
前田利家「可能性はありまするな。上杉がそれを知れば、ここぞとばかりに織田領へ侵攻してきましょう……そうなれば殿は上杉に気を取られ所領を動けませぬ」
勝家「わしの足止めというわけか……となれば、わしはまんまと光秀の策にはまった……と」
成政「残念ながら……」
勝家「おのれ光秀……小癪な真似を」
利家「いかがなさいますか?このままでは越前を動けぬばかりか、今の上杉の勢いでは再び越中が奪い返される勢いですぞ」
光治「てっとり早く動くには、一度上杉と和睦するしか……」
勝家「いや、和睦は駄目だ。いま上杉に和睦を持ちかけても、最低でも越中全土を渡さねば交渉にはならぬはずだ……」
光治「………」
勝家「苦労して手に入れた越中の地……そうやすやすと上杉に返したとあっては、諸将に示しがつかぬ」
利家「それに越前を動けるようになったとしても、その後の殿の進退も決めておりませぬ」
成政「若殿、信孝様よりそれぞれ書状が参っておりますからな……」
利家「若殿の書状には他意を感じませぬが、信孝様の書状は確実に殿に、家督争いをするので自分につけ…と言っているようにしか思えませぬ」
勝家「うむ……」
光治「わしは若殿につくべきと存じまする。若殿は大殿が生前より織田家の後継者と明言しておりました。それを出し抜いて家督を継ごうとするなど、謀反も同然……信孝様に加担する道理はないもと」
成政「しかし若殿は光秀謀反の折、家臣を盾に京より逃げ出してきたと聞く……そのような腰抜けに織田家の棟梁が務まるとはわしにはとても……なられば、信孝様の方が織田家の次期棟梁に相応しいと」
勝家「このありさまだ……」
利家「光治殿と成政殿を筆頭に家中が二分しているのは私も承知しております。しかしこのまま決めあぐねていても……」
勝家「分かっておる……どうすべきか……」
忍び「申し上げます」スッ
勝家「おぉ、忍びよ戻ってきたか。して、信孝様のご様子は?」
忍び「はっ、信孝様はただいま大阪にて津田信澄様らの軍と合流。今は進軍を止めております」
勝家「そうか……では、いまのところ信孝様に協力しようとする者は?」
忍び「恐らくは羽柴秀吉様が信孝様に呼応するものと」
勝家「何ぃ!?猿めが信孝様に加勢すると!!」タチアガリ
利家・成政・光治「!」オオゴエニビックリ
忍び「はっ、既に交戦中であった毛利との和睦を成し、一度居城の姫路城により摂津に向かっているもよう」
勝家「…わかった。ご苦労であったぞ。お主は引き続き信孝様を見張っておれ」
忍び「承りまして」スッ
勝家「ふ……ふふっ……はーっはっはっはっ!!」タカラカ
利家「と、殿?いかがなさいまして……?」
勝家「はっはっ!これが笑わずしていられるか!今こそあの憎たらしい猿を成敗できる時が来たのだからな!いたずらにお家を騒がすうつけ者に加担する、天下の罪人としてっ!」
成政「殿、では信孝様ではなく若殿につくと?」
勝家「当たり前だ!正当な跡取りであらせられる若殿が生きておいでなのだ。その若殿を出し抜き家督を奪おうなど、謀反も同然!それに味方する奴も同罪よ!!」
光治「はっ、では早速に下知をいたしましょう」
勝家「うむ、頼むぞ光治!それと利家、上杉とは急ぎ和睦だ!」
利家「よろしいので?」
勝家「あぁ、なるべく急ぎ和議を結べ。越中全てを返しても構わぬし、多少なら能登・加賀に食い込んでもよい。だからなるべく急げ」
利家「はっ、うまくまとめてまいりまする」
成政「では、わしは急ぎ富山城へ戻り準備を」
勝家「頼むぞ……ふふっ、秀吉め…こんどこそお主を織田家から………ふははははっ!」
ここまで。
浜松城
平岩親吉「大殿、まずは無事のご帰城、家臣一同を代表し喜び申し上げます」ヒレフシ
家康「うむ、わしも皆とこうしてまた会えた事、うれしく思うぞ」
親吉「ありがたきお言葉……しかし大殿、とんだ災難にあいましたな」
家康「あぁ、だが過ぎたことをどういっても無意味なこと……こうしてわしは無事に浜松に帰ってこれたのだ。わしはこれからの事だけを考える」
親吉「さすがは大殿……」
家康「それで親吉、周辺諸国の様子はどうだ?」
親吉「はっ、目立った交戦は一つも……しかし一時北条氏邦、氏直率いる軍団が上野に侵攻したようですが、信忠公が存命の報を受けたのか早々に軍を引き上げました」
家康「………」
親吉「その後は上野、甲斐、信濃の一揆や武田残党の反抗に手を焼いた滝川一益様が、北条氏政様に鎮圧の援軍を求めたようで…今は滝川・北条の連合軍の働きで上野、甲斐、信濃の大半は落ち着いております」
家康「滝川殿に援軍を出したということは、北条も織田との同盟関係を解消するきはないということだな?」
親吉「はい、恐らくは」
家康「よし、それを聞いて安心した。では皆の者!これよりわしらは、信忠公の援軍の為安土へ駆けつける!急ぎ準備せよ!」
家臣一同「はっ!」
家康「それと親吉、お主は北条への使者を頼む。織田の援軍に出ている間だけ休戦を申し入れてくるのだ」
親吉「北条は受け入れますでしょうか?」
家康「織田の援軍の為と言えば嫌でも断れまい。なにせ今、わしら徳川と事を起こしては織田の邪魔をすることになるのだから……そうなれば織田との同盟も破綻だ」
6月9日・亀山城
光秀「その後の状況は……?」
秀満「はっ、細川はすでに中立のを表明し、筒井は相変わらずの煮え切らぬ態度。上杉、北条はそれぞれ柴田、徳川と和睦、休戦をし足止めは期待できず……毛利に至っては未だ返事もありませぬ」
光秀「………」
秀満「いかがいたします?このままここにいては十分な戦力も整っておりませぬ……対して安土には既に徳川家康が入城し、合わせて2万余りの兵が……その上柴田勝家が8000余り兵を引き連れ、長浜城付近まで押し寄せているとも」
光秀「………」
秀満「殿?」
光秀「こうなれば、勝家の軍が安土に合流する前に、何とかして信忠をあぶりださねば………」
秀満「はっ、しかしどうやって……」
光秀「まずは……近江へ攻め込む」
秀満「近江へ……?ですが攻め込むほどの準備はとても……」
光秀「数は少なくてもよい…あくまで近江侵攻は信忠をおびき出すおとり……だから少数でも適当に目立つ行動をしてくれればよい」
秀満「はぁ……」
光秀「うまく信忠をおびきだしたら、すぐに撤退させよ。だがここにではないぞ……天王山まで、信忠軍を引き連れながら逃げるのだ」
秀満「天王山にですか?何故……?」
光秀「天王山は西国街道への入り口。しかし街道に入るまでは、天王山と沼地に挟まれた細い道一本しか通ってはおらぬ」
秀満「…なるほど!それではとても2万余もの大軍は思うように動けませぬな」
光秀「なんとかそこまで引き連れたならば、天王山に本陣を敷いた本隊が信忠軍のわきを一気に奇襲する……うまくいけば信忠軍は大混乱。その隙に信忠を討てばこっちのものよ」
秀満「大がかりな釣り野伏せといったところでしょうか?」
光秀「そうだ。そしてかつて、織田信長が田楽狭間にて、今川義元を討ち取ったように、狭い道での奇襲でな……」
秀満「……しかし、信忠達は疑いもせずに天王山まで深追いしますでしょうか……?」
光秀「その心配はいらぬ。なぜならそのおとり役……この私が自ら引き受けるからな」
秀満「なっ……!?それはなりませぬ!殿がおやりになるというのならこの私がっ……!」
光秀「ならぬ。お前の言うようにこの作戦の弱点は、信忠達がそこまで深追いしないというところだ……だからこそ、私自らでなくてはならぬのだ。私が少数の共だけで逃げておれば、いかに信忠とてここぞとばかりに追ってくるはず」
秀満「し、しかし……!」
光秀「わかってくれ秀満。いまこの劣勢を覆すには、これしか方法はないのだ……この旨、皆に下知せよ。秀満には本隊の指揮官を命ずる」
秀満「………はっ」
6月11日・安土城
信忠「うーむ……」
信長「どうした信忠?」
信忠「いえ、岐阜に送った良勝の帰りが遅いと思いまして……」
信長「ふむ…確かにすでに9日も経つのか……いくら岐阜とて些か遅いな」
信忠「岐阜には三法師がいますゆえ真っ先に良勝を送ったのですが……」
伝令「申し上げます」
信忠「あぁ、何用だ?」
伝令「ただいま勢田城の山岡景隆様より繋ぎが参りました」
信忠「景隆から……?で、なんと?」
伝令「はっ、勢田城が明智光秀率いる軍団に攻められいるとのよしにございまする」
信忠「なに!?光秀自らと……して数は?」
伝令「およそ2000余と……」
信忠「たったの2000余?なぜそのような少数で……」
信長「恐らくは、腰の重い連中に腹を据えかね、自ら攻め込むことで呼応させようという魂胆ではないか?」
信忠「しかし、これは好都合……いまこそ逆賊光秀めを討伐するとき!」
家康「わしも及ばずながらご助力いたしましょうぞ」
信忠「頼もしい限りですぞ徳川殿……皆のもの!出陣の用意だ!!」
諸将達「おぉ!!」
6月12日・光秀本陣
ワーッワーッ
光秀「………」
伝令「殿……信忠の軍勢が」
光秀「来たか……者ども、撤退ぞ!」
諸将「ははっ!」
信忠「ついたか……」
家康「む?しかし信忠殿、明智の陣が……」
信忠「?」
信長「馬に乗って……信忠!光秀は逃げるきぞ!」
信忠「なんですと!皆、光秀は逃げ出そうとしておる!急ぎ追いかけるぞ!」
諸将達「おーっ!」
山城・天王山麓
光秀軍「……」ダッダッダッ
信忠「光秀め、一体どこまで逃げるきだ……」
信長「この先は西国街道……光秀の奴、毛利領か長宗我部領へ逃げる気かも知れぬぞ」
信忠「毛利か長宗我部……そうなってはかなり厄介だ……皆のもの、歩を速めるぞ!」
諸将達「おーっ!」
天王山
光秀軍「……」ダッダッダッ
信忠「………」
諸将達「………」
信長(それにしても光秀の奴……先程からずっとこちらの速さに合わせ、付かず離れずを維持しているような……馬を疲れさせないためか?)
ダッダッダッ!
信忠「あっ!急に速度を上げたぞ!」
信長「……!」
信長(なぜ今になってあんな速さで……はっ!)
信長「信忠!これは光秀の罠ぞ!今すぐ軍を後退させよ!」
信忠「なっ!真でございますか父上!?」
信長「問答はあとだ!早く軍を……そうでなければっ!」
秀満「かかれーっ!」
信忠軍「!?」
信忠「何事ぞ!?」
信長「奇襲だ!だから早く広い場所に軍を引けとっ!」
信忠「そんないきなり言われても対応できませぬ!!」
氏郷「若殿!ここは私たちが引き受けまする!なんとか徳川様の元へ!徳川様の軍は最後尾故、すぐにでもこの小路を抜けられまする!」
信忠「わかったぞ!では―――」
秀満「そうは行かぬ!」
信忠「! 挟まれた……!」
秀満「織田信忠様とお見受けいたす。それがし明智光秀様家臣、明智秀満……お命頂戴仕る!」ヤリカマエ
信忠「そう簡単に俺の命……わたしてたまるかっ!」カタナヌキ
秀満「はあっ!」ツキカカリ
信忠「ぬぅ…!はっ!」ハネカエシ
秀満「……そこだ!」ギンッ
信忠「なっ……か、刀がっ」マルゴシ
秀満「ふふっ…辞世の句はございますかな?」クビモトニヤリヲ
信忠「ふんっ……」
信長「ぐぬぬぬ……わしも加勢できればっ!!」ジダンダ
秀満「では……」フリカブリッ
氏郷「殿!?」
秀満「はっ!」フリオロシ
信忠「っ」メヲツブリ
ターーーンッ
信忠「?」カタメアケ
秀満「あ……ぁ………ぐふっ」タオレ
氏郷「殿!ご無事ですか!?」カケヨリ
信忠「あ、あぁ…無事だが……どうして……?」
?「間一髪で間に合いましたな……若殿」
信忠「…利三!お主、生きてっ……!」
利三「ははっ、なにせ若殿の背中を預けられた身ですからな。そうやすやすと死ねませぬよ…」
信忠「いや、よかった!よかったぞ!」
利三「しかし、今の私ではこの短筒の一発が限界です……後は若殿の盾になるくらいしか……」
信忠「そんな体で俺に為に……し、しかし利三、その体でここまでどうやって……?」
利三「それは……」
光秀「はぁっはぁっ!なっ、信忠!しまった……」
信忠「光秀!その方なぜここに……!」
良勝「若殿ーっ!遅くなって申し訳ありませぬーっ!」
信忠「良勝!お主、やっと来てくれたのか!」
利堯「………」
光秀「お、おのれぇ!利堯、なぜ私を攻撃する!?裏切る気か!」
利堯「裏切ったわけではない……表返っただけだ」
光秀「くっ……!」
良勝「殿ーっ!三法師様はご無事ですぞーっ!今は安土城にて、お濃の方様が面倒を見られておりまするーっ!」
信忠「そうか!それを聞いて安心したぞーっ!」
光秀「なぜだ!なぜこうもうまくいかぬのだ!」
信長「信忠!今こそこの父の恨み、晴らして見せる時ぞ!」
信忠「はっ!明智光秀、父・織田信長の敵……潔く討たれるがよい!」カタナヒロイカマエ
光秀「すべてお前のせいだ……お前さえあの時討ち損じていなければあぁ!!」カタナヌキツツキリカカリ
信忠「ふっ……はあっ!」ハジキ
光秀「っ!……!!」ヨロケ
信忠「父上の恨み…思い知れ!」スッ
光秀「かっ……!」フクブヲバッサリ
信忠「………」
光秀「はぁ……はぁ……」カロウジテタチ
信長「とどめだ信忠!」
信忠「はああぁぁっ!!」イットウリョウダン
光秀「!!??」
ドサッ
光秀「」
信忠「……やった……やりましたぞ父上っ!」
信長「うむ、あっぱれだ!」
賢秀「光秀が倒れた……ではっ!」
氏郷「勝ったぞ……皆のもの!織田軍の勝利ぞーっ!」
諸将達「おぉーっ!!」
信長「信忠!勝ち鬨ぞ、勝ち鬨を上げるのだ!」
信忠「はい!皆、勝ち鬨だ!えいえい!」
諸将達「おぉ!」
信忠「えいえい!」
諸将達「おぉ!」
信忠「えいえい!」
諸将達「おぉ!」
信孝「お、おのれ……遅かったか……!」
秀吉「……いかがいたします信孝様?これでは信孝様の野望は実現いたしませぬぞ?」
信孝「しかし、父上の敵を兄上に討たれてしまっては……」
秀吉「では、その敵を討った若殿を討ってしまえばよいではありませぬか」
信孝「なっ……その方、本気でそのようなことを……?」
秀吉「いずれにいたしましても、そのうち信孝様の野心は若殿にばれてしまいまする……そうなれば信孝様も、味方したわしも首を切られてしまいます」
信孝「っ!」
秀吉「毒を食らわば皿まで……ここまできてしまったのです。行くとこまでいっても……変わりませぬぞ」
信孝「……」
秀吉「信孝様?」
信孝「わかった……よいか。兄上の軍は光秀に勝って油断しておる……今すぐ背後から攻めるぞ」
諸将「はっ!」
秀吉「……」
秀吉「信孝様、わしの隊は先回りをし、徳川家康を狙いましょう」
信孝「ふむ、家康か……確かに奴は厄介だ。頼むぞ」
秀吉「はっ……」
天王山・けもの道
孝高「殿、本当に家康を攻撃するおつもりで?」
秀吉「……いや、急いで若殿のそばまで行き、信孝様が攻め込んだら助けに入るぞ」
秀長「では……」
秀吉「もはや信孝様に勝機などない……このまま信孝様についていてはわしの命まで危ない……だから若殿につき、若殿の危機に駆けつけ、心象を良くすることにした」
孝高「賢明な判断で……」
「だが、そうは問屋がおろさぬというものだぞ猿?」
秀吉「!」
勝家「ふんっ、旗色が悪くなったらコロッと身を変えるとは……相も変わらず気に入らぬ」
秀吉「柴田殿……何故ここに」
勝家「信孝様につけた忍びからの情報よ……しかし、お主の考えしかと聞かせてもらったぞ」
秀吉「………」
勝家「お主も武士の端くれ……最後くらいは潔くしてはどうだ?」
秀吉「わしは……」
勝家「……」
秀吉「ごめんこうむる!かかれっ!」
諸将「はっ!」
勝家「猿に何を言っても無駄であったか!よいわ!鬼柴田が采配、冥土の土産に見せてくれよう!かかれぇ!」
諸将「はっ!」
信忠「しかし、皆が来てくれなかったら、俺は今度こそ死んでおったな」
良勝「遅れながらも急いだかいがあったというものです」
利堯「姉小路が不穏な動きを見せておりまして……下手に岐阜城を動けませなんだ。しかし姉小路は光秀に加担していることが、一揆をおこした武田の残党からわかりまして……滝川殿が姉小路を攻撃し弱体化させてくれまして、そのおかげで私も何とかこうして若殿の援軍に」
信忠「そうであったのか……」
家康「信忠殿!ご無事であったか!?」
信忠「おぉ、徳川殿。心配をかけてすまぬな。この通り、私は何ともない」
家康「ほっ……いやはや、一時は兵たちが混乱してどうなるものかと……」
信忠「徳川殿にはとんだ迷惑をかけたな…ひとまず安土へ戻りましょう」
家康「そうですな……では、わしは自軍の方に」
信孝「待たれよ!」
一同「!?」
信孝「ふんっ、家康までいるとは好都合!兄上もろとも屠ってやろう!」
家康「なっ!」
信忠「信孝!?」
信長「………」
信忠「信孝!お主何を言っているのかわかっているのか!?」
信孝「そんなことは百も承知!兄上を屠り、俺が織田家の棟梁となる!」
信長「信孝……」
氏郷「若殿、今度こそ若殿は先にこの小路を抜けて下され」
利堯「ここは我らだけでも十分に食い止められまする」
信忠「いや……ここは俺に任せてくれ」
信長「!」
氏郷「し、しかし若殿……」
信忠「よい……信孝!この俺から家督を奪いたければ奪うかがよい!だが、そんな身内の争いでいたずらに兵を消耗しても、御家の弱体化につながるだけだ!そこで俺に提案がある!」
信孝「?」
信忠「この俺と一対一で真剣勝負をせよ!それで俺を屠れば、織田家はお主のものぞ!」
一同「!?」
賢秀「若殿!そのような危険なことは!」
信忠「うるさいぞ!俺が決めたことだ、口出しは許さぬ!よいな信孝!?
信孝「……」
家臣「殿?」
信忠「どうした!?よもや臆したのではあるまいな!?そのような臆病者に、織田家の棟梁は務まらぬぞ!」
信孝「誰が臆したか!?その勝負、受けて立つ!」カタナヌキ
信忠「ふっ、それでよい……いざ!」カタナカマエ
一同「………」ゴクリ
信孝「はあぁっ!」キリカカリ
信忠「……」ヨケ
信孝「っ……はっ!」イットウリョウダン
信忠「ふっ……!とぅ!」ウケトメハネカエシ
信孝「……はぁ!」メゲズニキリカカリ
信忠「ぬぅ……はあぁぁ!」カタナヲハジキカエシ
信孝「!?」マルゴシ
信忠「はぁ……信孝、これまでだな」ケンサキヲムケ
信孝「……切ってくだされ。兄上に切られるのなら悔いはありませぬ」
信忠「ふんっ……」カタナオロシ
信孝「……兄上?」
信忠「お主は俺の血を分けた大事な兄弟だ。今後、もう馬鹿な真似を考えぬというのなら、今回の事は不問にする」
信孝「………」
信忠「答えよ、信孝」
信孝「あ、あにうえぇ……もうしわけありませぬ!」オトコナキ
信忠「お、おいおい、何をそんなに泣いておる!皆の前だぞ!」アワテ
信孝「あにうえぇ……」
信忠「まったく……これで俺が負けていたら織田家はどうなっていたことやら……」
家臣「若殿!お見事ですぞ!!」
信忠「おぉ、皆、ひやひやさせて悪かったな」
氏郷「本当ですぞ!まったく、若殿にもしものことがあったら……」
家康「いやいや、氏郷殿。もはや若殿ではなく、正式に大殿でよろしいのでは?」
氏郷「おぉ!流石は徳川殿!そうですな若殿ではなく大殿ですな!」
一同「大殿!今一度勝ち鬨を!」
信忠「うむ、そうだな……では、えいえい!」
一同「おぉーっ!!!」
安土城・天守
信忠「おー、元気そうだな三法師!」
三法師「ちちうえ!」トテトテ
信忠「よしよし」ダキアゲ
濃姫「信忠殿…ご無事で何より……それで、光秀は」
信忠「…父上の敵は討ちましたよ。安心してください」
濃姫「っ!そうですか……それは信長様もさぞお喜びにっ……!」
信忠「えぇ、父上も……父上?」アタリミマワシ
信忠(あれ?父上はどこに……)
信忠「母上、三法師をお願いします。私を少しここで一人にしてください」
濃姫「分かりました。さぁ、三法師。こちらにおいで」
三法師「おばあさま!」トテトテ
濃姫「ふふふ、だからおばあさまじゃなくお姉さまですよ~三法師?」ニコニコ
信忠「父上!いずこに行かれたのですか父上!」
信長「何をそうぞうしい……ここにおるわ」
信忠「父上!しかし、声はすれど姿は見えませぬぞ?」
信長「ふぅむ……わしのお迎えも近いのかもな」
信忠「お迎えって……なっ、父上まさか!?」
信長「うむ。そろそろ貞勝達に会いに行くとするかの……」
信忠「私を置いていく気ですか父上!」
信長「そういわれてもな……わしの未練ももうないしの……」
信忠「未練って……?」
信長「わしの未練は、光秀への恨みであり、そしてお主だ信忠」
信忠「……」
信長「お主を立派な織田家の棟梁として育てきれなかったことへの未練……しかし、今となっては、お主は皆の認める織田家の棟梁だ」
信忠「そんな……私なんてまだまだっ!」
信長「いや、お主は十分な器量を身に着けた……お主も十分に育ち、光秀も討たれた今、わしを縛るものは何もない」
信忠「……では、私もお供つかまつりますぞ父上っ……!」カタナヌキ
信長「無用だ」
信忠「嫌です!お供させて下され!」
信長「このたわけ者が!今、お主がわしの後を追えば、織田家はどうなる!?それが分からぬお主ではなかろう!!」
信忠「しかしっ……!」
信長「安心せよ。わしの共にはお蘭がおる……お主は無用だ」
信忠「父上っ……」
信長「では、お主の天下統一……第六天より見守っておるぞ」
信忠「父上ええぇぇぇっ!!!」
天正10年6月12日
織田信忠は見事、天王山の戦いにて父・織田信長の敵、明智光秀を討った。
信長の遺志を受け継いだ信忠は、その後多くの家臣に支えられながら、順調に天下統一をなした。
かくして日本は、今もなお続く、500年余に渡る太平の世がおとずれるのであった。
おわり。
最後が駆け足で申し訳ない。
もうネタ切れなんだ。
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