【ゆるゆり】撫子「わたしたちの同居物語」 (90)

大室 撫子:大学生。妹二人とやかましく過ごす実家から晴れて上京してきた。抜群のルックスとクールな性格は皆から大人気。実は週に一度、実家にちゃんと連絡をとっている。

三輪 藍:大学生。撫子と同じ学部・同じ学科に通っている。朝起きてから昼ごはんを食べ夜寝るまで、ほとんど撫子と一緒にいる。家事の腕前は四人の中で一番。

八重野 美穂:ウェディングプランナー。みんなを振り回す性格だが、一足先に社会人になったので皆の中で一番偉いということになっている。部屋では薄着で過ごしがち。

園川 めぐみ:近所のケーキ屋さんで働くことになった、パティシエ見習い。みんなより数ヶ月遅れて同居を始めることになる。寝相が悪いが、本人は寝ているときの記憶が無い。


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【1話:はじまりの部屋の4人】



ぷるるる……


ぴっ


撫子「はい、もしもし?」


『もしもし、撫子?』


撫子「めぐみ……! 久しぶりだね、どしたの?」

めぐみ『えへへ、実はね……』


撫子「えっ、上京してきたの!? 知らなかった……!」


めぐみ『撫子をびっくりさせたくて、ちょっと秘密にしてたんだ~。こっちの方で仕事できるとこがあったの』

撫子「へぇ……! で、今日は何の用?」


めぐみ『あの、それなんだけど……実は私、まだ住む所が決まってないのよ』

撫子「決まってない……そうなんだ」


めぐみ『それでね、その……///』

撫子「?」


めぐみ『撫子のとこ……しばらく泊めてもらえる?』

撫子「えっ」



めぐみ『部屋が決まるまででいいんだけど……実は、もうすぐ近くまで来ちゃってるの♪』

撫子「えっ来てんの!? もう来ちゃってるの!? 今どこ!?」

めぐみ『今撫子のとこの最寄駅出たとこ』

撫子「えーっ! じゃあもう5分くらいで着くじゃん!」

めぐみ『楽しみに待っててね、お土産もあるからー!』ぷつっ

撫子「ちょ、ちょっと! めぐみ!? もしもしー!?」


ぷーっ ぷーっ


撫子「…………」

「はーさっぱりした。お風呂あがったわよ~……あれ、どうしたの撫子?」

「電話が来て……今、めぐみって言ってたみたいけど……?」

撫子「いや、なんか……来るんだって、めぐみ」


「来る!? ここに!?」

撫子「うん、あと5分で」

「えーっ!?」


ぴんぽーん♪


撫子「あっ、もう来ちゃった!!」

「なによ! 5分じゃなくて5秒で来ちゃったわよ!?」

めぐみ『撫子ー♪』こんこん

「ど、どうしましょ……!」


めぐみ『あ、鍵開いてる! 入るねー?』がちゃっ

撫子「あーっ!!」



めぐみ「やっほー撫子! すごいねこのおうち! とっても広……」たたたっ


撫子「め、めぐみ……」


めぐみ「え……」



美穂「や、やっほーめぐみ。おひさ~♪」

藍「わ~ほんと、久しぶりね~……///」


めぐみ「なっ……なんでみんないるの~~~~!!?///」




めぐみ「……説明してもらいましょうか、なんでみんながここにいるのか」


美穂「ちょっとちょっと、なんで私たち怒られてるみたいになってるわけ……?」ひそひそ

撫子「知らないよ……」ひそひそ


めぐみ「知らないことないでしょ!! なんであなたたちがここにいるのって話だよ!! しかもなんで美穂はバスタオル一枚なの!」ばん

美穂「そんなの今お風呂入ってたからに決まってるでしょう?」


撫子「わかったよ、もう言おうよ……」

藍「あのね、めぐみ……」



「「「わたしたち、同居してま~~す……」」」


めぐみ「うん……そうだよね、そんな感じがバリバリするもん」



撫子「あのさ、私と藍が同じ大学に入ったってのは知ってたよね?」

めぐみ「えっ、そうだっけ!?」


美穂「あらそれも知らなかったの?」

藍「あれ、言ってなかったんだっけ……」

めぐみ「言ってないよ! 聞いてないもん! 初耳!」


撫子「まあ、同じ大学に入ったんだよ。同じ学部の同じ学科なんだ」

めぐみ「えーー!? もうじゃあずっと一緒なんじゃん!!」

藍「実はそうなのよ」


撫子「それで、こっちで部屋を探すことになったんだけど……」

藍「二人で一緒に色々探してたのよね。そしたら……」


美穂「うふふ、そんなときに現れたのがこの美穂ちゃんってわけ♪」ばーん

めぐみ「……美穂、いい加減服着て」


藍「私たちが部屋を探してるところに、偶然美穂が来たの」

撫子「どうやら美穂も部屋を見に来たらしいんだけど……その場所が、私たちが探してるとこにすごい近かったんだよ」


めぐみ「あれ? そういえば美穂って今は何やってるんだっけ……」

美穂「私は今ウェディングプランナーとして頑張ってるの。ここから電車でちょっと行った所に職場があるのよ」



撫子「で、なんだじゃあ皆住む所近いんだねーってことで……」

美穂「それならみんなで一緒の部屋借りましょうよってなって……」

藍「それで、今に至るってわけ♪」


めぐみ「…………」

めぐみ「卒業して……何やってるかと思えば……」


めぐみ「私は一人地元で頑張ってたのに……!」


撫子「め、めぐみ?」



めぐみ「みんなずるいよ~~~!!///」ぽかぽか

美穂「きゃー! タオルがはだける!」


藍「ちょっとめぐみ、落ち着いて……!」

めぐみ「ずるいずるいずるい~~~!///」じたばた

撫子「こら! 下の階の人に響くでしょうが……!」



藍「ところでめぐみはどうしてここに来たの?」

めぐみ「はっ、そうだった……! あのね、実は私この近くのケーキ屋さんで働くことになったの!」

美穂「あら、やるじゃない!」


撫子「あれ……もしかして、駅からここに来る途中の……?」

めぐみ「そーそーそこ! 実は私の高校時代のバイト先の店長さんとそこのお店の店長さんがお友達で、紹介してもらったの!」

藍「そうだったの……!? 私たちもよくあそこ行くわよね」

美穂「うんうん、もう何度も行ったわ」


めぐみ「それで嬉しくってこっちに来てみたんだけど、住む所が決まってなくて……そうだ、撫子が近くに住んでるじゃない! ってなってね」

撫子「なるほど、それでこっちでの住む所が決まるまで泊めて欲しいって言ってたんだ」

めぐみ「うん……だけど」


めぐみ「だけど……考え変わった!」


めぐみ「私も今日から、ここに住むー!!」


藍「…………」

撫子「……言うと思った」


めぐみ「だっていいでしょ!? 私以外の3人が一緒に住んでるのに私だけ離れてるなんてやだー!!」ぎゃーぎゃー

撫子「わかった、わかったよ……ちゃんと正式に手続きとかしてあげるから」

めぐみ「ほんと!?///」

藍「そうね。幸いこの部屋は4人くらい入っても余裕あるし……みんなで家賃分けられるしね」


美穂「そういうことなら仕方ないわね。今日からめぐみも八重野家の一員よ!」

めぐみ「えっ……ここ美穂の家なの!?」

撫子「美穂はちゃんと働いてるから、一応この家では一番偉いことになってるんだ」

藍「ちなみに八重野家じゃないから安心していいわよ」


美穂「まあともかく、一番偉い私がめぐみを認めてあげるわ。じゃあ今日はめぐみの歓迎パーティーしましょうか!」ぽん

めぐみ「あーん美穂ありがと~~~!///」ぎゅー

美穂「きゃーちょっと! 私裸なんだけど!///」


藍「ふふ、これからはもっと賑やかになるわね」

撫子「そうだね……///」

――――――
――――
――



めぐみ「…………zzz」ぐぅ


藍「あらら、寝ちゃったわ」

美穂「まったく後片付けもしないで……」

撫子「しょうがないよ。実家からここまで来て……大変だったんでしょ?」

藍「そうよね。私お皿洗うわ」


撫子「うーん……参ったね、ゲストのこと考えてなかったからめぐみの布団がないや」

美穂「ソファにでも寝かせとく?」

撫子「それも悪いでしょ……今日は私がソファでいいよ」

美穂「えっ、じゃあ撫子の布団で寝かせるってこと!?」

撫子「うん……だめ?」

美穂「だめよ! それなら私が撫子の布団で寝る!」

撫子「いや自分ので寝てよ」


藍「待って待って、私の布団で寝かせるわ」ふきふき

美穂「そんな、悪いわよ藍。今日もお勉強大変だったんでしょ? 私がソファで寝るわ……///」

藍「ううん、それなら美穂の方が……いつもお仕事お疲れ様でしょ……?///」

撫子「なにいちゃいちゃしてんの!? もういいよ私のとこで寝かせるから!」

美穂「あ~んずるい~……!」

めぐみ「…………zzz」



<深夜>


めぐみ「……ん……」


めぐみ「……んー……」むにゃ


美穂「…………」すぅすぅ


めぐみ「なでしこぉ……」


めぐみ「だめ……置いてかないでぇ~……」もぞもぞ


美穂「んぇ……なに……?」ぴくっ


めぐみ「いっしょが……いいのぉ……」すりすり

美穂「ちょっ、めぐみ……っ! やっ、なに……!?」


めぐみ「ん~……」ちゅーっ

美穂「きゃーー! ばか! めぐみ起きて!///」ぺちぺち



藍「ん……どうしたの……?」

美穂「あ、藍! 助けて、めぐみがねぼけてるの~……!」

藍「んー……そうよね、新しいバイトみつけなきゃね……」すやすや

美穂「藍もねぼけてる!! ちょっ、撫子! 撫子ーー!」


撫子「ん……うるさいよ櫻子……静かに寝な……」

美穂「ちょっと~~……!」


めぐみ「らいしゅきぃ……///」ぎゅっ

美穂「なによこの子……寝てるくせに力強い~……!」ぐいぐい


めぐみ「…………zzz」


美穂「はぁ……まったくもう、みんな子供なんだからぁ……///」はぁ



美穂「…………」



美穂(めぐみ、私……本当はあなたのこと、心配してたのよ……?)なでなで



美穂(でもこれでまた、四人で一緒にいられるのね……///)



美穂(来てくれて……ありがとう)ちゅっ


めぐみ「…………」すぅ

――――――
――――
――


<朝>


どたどた……


めぐみ「……んー……るさいよぉ……」

美穂「うるさいじゃないわよ! ちょっとどいてめぐみ、そこ私の荷物あるの!」


めぐみ「……はれ、美穂……?」むにゃむにゃ


藍「おはようめぐみ。お寝坊さんね」

めぐみ「あ、藍……おはよー」ふああ


美穂「ああもうこんな時間っ……藍ごめん、私朝ごはんいいわ!」

めぐみ「なにやってんの美穂~……朝からさわがしくして。今日は土曜日だよ~」

美穂「何言ってんのよもう! 仕事よ仕事! 急がないと遅刻しちゃうのー!」

めぐみ「あ、そっか……美穂はもうお仕事あるんだ」


藍「はいこれ、お弁当作ったからこれは持ってってね」

美穂「も~いつもありがと~……!」

めぐみ「へ~偉い! お弁当作ってあげてるんだぁ!」

藍「まあ、早起きしたしね」


撫子「今日からめぐみもこの家で生活してくなら、ちゃんとみんなと協力し合わないとだめだからね」

美穂「そうよ。寝ぼけて人を抱き枕と勘違いしてるようなお子ちゃまじゃ困りますからね!」びしっ

めぐみ「なにそれ、何の話?」

美穂「あなたのことよ!!///」


藍「まあまあ、詳しいことは私からめぐみに話しておくから……それじゃ美穂、頑張ってね」

美穂「うんありがと! それじゃみんな、いってきま~す!」ぱたぱた

撫子「行ってらっしゃい」

めぐみ「あ、いってらっしゃーい……!」


ぱたん


めぐみ「そっかぁ……美穂大変なんだね」

撫子「美穂はいつも頑張ってるよ。私たちもちゃんと支えてあげないとね」


藍「ほらめぐみ、朝ごはんできてるわよ」

めぐみ「えーほんと!? すごーい!」

撫子「ご飯もみんなで協力するけど、基本は当番制だからね。めぐみにもちゃんと担当してもらうよ」

めぐみ「ほぇ~……私ちょっと顔洗ってこよー」




めぐみ「なるほど、二人は大学生だから土曜日はお休みなんだ。バイトとかしてないの?」もぐもぐ

撫子「うん、たまに短期でやってたりはするんだけど……どこかに属してバイトってのはしてないかなぁ」

藍「よさそうな所を探してるとこなんだけどね」


めぐみ「ところで今日はどうするの? 何して遊ぶ?」

撫子「はぁ……? 別に遊ばないよ」

めぐみ「えー!?」


撫子「昨日も言ってたけど、今日はめぐみがここに正式に住む手続きとか色々しようよ。親御さんにも言わなきゃでしょ?」

めぐみ「あ、そっか……そうだよね」

藍「そうだめぐみ、その言ってたケーキ屋さんにも行かなきゃなんじゃない?」

めぐみ「うん! でもそれは月曜日で大丈夫だよ」


撫子「面倒なことは早めに済ませておこうよ。私たちも平日は忙しいしさ」

藍「美穂と話してたけど、めぐみの布団とかも買わなきゃ。昨日大変だったらしいわよ?」

めぐみ「なにが?」

撫子「昨日は私がソファで寝て、私の布団にあんたを寝かせたんだけど……めぐみって寝相悪いじゃん。今朝美穂を抱き枕にしてたよ」

めぐみ「えー!?///」


藍「ま、まあ寝相はおいといて、めぐみの生活品とかをなんとかしないとね」

撫子「そうそう。ざっとこの部屋見てさ、足りないものとかない? 調達してこようよ」

めぐみ「わかった! 今日はいろいろ買うぞ~!」




美穂「ただいま~! めぐみー! あなたの入居祝いで色々買っ……」がちゃっ


めぐみ「ああ美穂。おかえり」


美穂「え……なに、出かける準備なんかしちゃって……どうしたの?」


撫子「めぐみ、あと15分くらいで出ないと新幹線来ちゃうみたい」

めぐみ「わかった。もう出れるから」


美穂「な、なによめぐみ……新幹線って……! 何かあるの?」


めぐみ「ああ、あの……帰るの。富山に」

美穂「えっ!?」


藍「今日一日、色々あって……そういうことになったのよね」

めぐみ「うん……そういうことなんだ」よいしょ

美穂「そっ、そんなぁ……!」



めぐみ「あー……なんかごめんね? 突然おしかけてきて、翌日には帰っちゃうなんてさ……」

撫子「まぁまぁ、仕方ないでしょ」

めぐみ「いきなりすぎたのがアレだったんだよね。もっと事前に連絡しとけばなぁ……」

藍「そうね……そうすれば勝手は違ったかもしれないわね」



美穂「なんで……なんでよぉ!!」ぎゅっ


めぐみ「えっ……美穂……?///」


美穂「一体なにがいけなかったの!? 納得してもらえなかったの!?」

めぐみ「うん、まぁ……そんなとこかな」


美穂「じゃあそれなら……私も行く! 一緒に富山に行ってあげるわ!! 私明日仕事休みだから! 」

めぐみ「えぇ?」


撫子「ちょ、ちょっと美穂……」

美穂「だってそうじゃない!! こんなのってないわよ! これから一緒に……一緒にいられると思ったのに……!///」


美穂「一緒に富山に帰ってあげる! そしてめぐみの家に行くわ! なんとしてでも……めぐみをこの家に住めるようにする!」


めぐみ「美穂……ほんと……?」ぱあっ

美穂「ほんとよ! 私とあなたの仲じゃない……昨日は一緒に寝た仲じゃない……!///」


めぐみ「ありがとう美穂! 私一人じゃたぶん持ちきれないから助かるよ~!」



美穂「……ほぇ?」ぽかん

美穂「も、持ちきれないって……何が?」


めぐみ「お菓子作りの道具!」

美穂「オカシヅクリノ……ドウグ……?」



撫子「なんかね、今日生活用品見に行こうとして、めぐみに『何が足りなそう?』って聞いたら……」


めぐみ「キッチン周りに、お菓子作りの道具が全然ないのこの家! でも新しく買うのもなんでしょ? だから一旦帰って、私が家で使ってたやつ持ってこようかなーと思って」


美穂「…………」


美穂「な……」


美穂「なによーーバカーー!!///」ぺちっ

めぐみ「痛っ!」


美穂「まぎらわしい言い方しないでよ! 私てっきりめぐみの親御さんに同居の許可が貰えなくて『帰ってこい』って言われちゃったのかと思ったじゃない!!」

めぐみ「親は大丈夫だったよ! 一人暮らしさせるよりよっぽど安心って言われた」


美穂「も~~!……っていうか、お菓子作りの道具なんかどうでもよくない!?」

めぐみ「よくないよ~! 私これでもパティシエ見習いなんだからね!? 納得いく環境にしたいの!」

藍「めぐみが持ってきたいっていうならそうさせてあげましょうよ」

撫子「そうだよ。それで私たちにも色々お菓子作ってもらおう」

めぐみ「えへへ~、任せてよ!」


美穂「ああもう~……! そんなの親に連絡して送ってもらえばいいんじゃないの!? わざわざいかなくても~!」

めぐみ「まあそうだけど、帰ってちゃんと報告したりとかもいろいろあるからさぁ。料理道具だけじゃなくて普通に持ってきたいものとかもあるしー」

撫子「それに今は新幹線通ったからさ、帰るにしてもそんなに大変なことじゃないよ。3時間で富山行けるんだよ」

藍「良い時代よね~」

美穂「む~~……!!」ぷくー

めぐみ「なに美穂……そんなに私に行ってほしくないの?」

美穂「ち、違うわよ! 私のテンション返してってこと! 明日お休みだからちゃんと祝ってあげようと思ったのに……!///」

めぐみ「パーティーなら昨日したじゃん」

美穂「あんな急なのじゃなくて、もっとちゃんとしたやつやってあげたいの~~!」

藍「さすがブライダルプランナーね」


めぐみ「今夜帰って、明日には戻ってこれるようにするから! そしたらパーティーしてよ♪」

美穂「もう……///」はぁ


撫子「めぐみ、もう行かないとだよ」

めぐみ「そうだね。それじゃみんな、また明日~!」

藍「気を付けてね~」


ぱたん


美穂「まったくもう……めぐみったら……!」ぷんすか

撫子「どうしたの美穂、珍しいねそんなになって」

美穂「別に~……」


藍「ところで美穂、この袋はなぁに?」

美穂「お肉!」

撫子「えっ……?」


美穂「めぐみのために買ってきてあげたのに……お鍋しようと思って。でももういいんだから! 三人で食べちゃいましょ!」

撫子「いいよ、明日の夜までとっとこうよ……」

美穂「やだ! なんかめぐみには食べさせたくなくなっちゃったー!」

藍「美穂ったら……子どもみたいねぇ」

美穂「へーんだ! 私がこの家で一番大人なんです~!」

撫子「わかったよ。美穂の言うとおりにしてあげるから」

美穂「あはっ♪ 撫子好き~!」

藍「それじゃあご飯の用意しますか」

撫子「うん」

【2話:めぐみのパティシエ修行!】


めぐみ「はぁ~~……疲れたぁ~」ぐでん


藍「あっめぐみ。おかえりー」

撫子「どうだった? こっちのケーキ屋さんは」


めぐみ「も~大変だよぉ! やっぱり都会のお店は違うわぁ……まずお客さんの量が圧倒的!」

藍「もともと人気あるとこだものね。大変そう」


撫子「もういろいろ作らせてもらえるの?」

めぐみ「ぜ~んぜんだよ! 見習いの身だから、当分の間は補助って感じ……でも早く作れるようになりたいんだ~」

藍「偉いわね。向上心があって」

撫子「今度うちでも作ってみてよ。簡単なのでもいいからさ」

めぐみ「おー! まっかせて!」



美穂「ご飯できてるわよー、ほら」

めぐみ「あれっ、美穂もう帰って来てたの!? 早いねー」

美穂「めぐみが遅いのよ。私はちゃんとお仕事済ませて早い時間に帰ってこれてるんだから」

めぐみ「うう~ずるい! ホワイト企業だ!」

美穂「めぐみだって生クリームいっぱいのホワイト企業なんでしょ」


撫子「やりがいがあるならいいことじゃん。私たちもサポートするからさ、頑張ってね」

藍「そうね。早くお店に慣れるといいわね」

めぐみ「あ、ありがとみんな……///」

――――――
――――
――


<美穂・帰り道>


美穂「はーあ、やっと案件終わったわぁ~……」


美穂「大きな仕事が終わった後は気持ちがいいわね~、みんなに何か買って行ってあげようかしら」



美穂「あらっ……?」


美穂(ここ……めぐみのケーキ屋さん……)


美穂「………あ、めぐみいる……」ちらっ


美穂(よ~しっ……)



うぃーん


いらっしゃいませー♪


「園川さんホールおねが~い!」

めぐみ「は、はーいっ!」



めぐみ「いらっしゃいませー! ……って」


美穂「うふふ、頑張ってるわね」

めぐみ「わー美穂~! もうお仕事終わったの?」


美穂「今日ね、私も担当してたお客さんの結婚式当日だったのよ。だからやっと大きな仕事が終わった感じね」

めぐみ「へ~……! じゃあひと段落ついたんだ」

美穂「それで自分へのご褒美ってわけ♪ さあさあ案内して~?」

めぐみ「はいはい……それではこちらへどうぞ~」




めぐみ「お待たせしました。メイプルロールになります」かちゃ

美穂「わ~おいしそ~! ……めぐみが作ったの?」

めぐみ「違うよ~、私はまだまだ下っ端だもん」

美穂「なーんだ。いただきまーす♪」

めぐみ「あんまり食べたら夕飯食べられなくなるよ?」

美穂「なによお母さんみたいなこと言って~……あむ」ぱくっ


めぐみ「私今日は9時くらいには帰れると思うから。みんなに言っといて?」

美穂「おっけー。あ、そうだ。撫子たちにもケーキ買ってってあげたいから用意しておいて? めぐみのおまかせでいいから」

めぐみ「え、それってもしかして……」


美穂「……もちろんめぐみの分も入ってるわよ。だから自分が好きなの選びなさい♪」

めぐみ「わ~い、おごりだ~♪」



「園川さーん」

めぐみ「あっ、は~い! ……ごめん美穂、いくね」

美穂「うん。頑張ってね」


たたた……


美穂(めぐみ……大変そう)


美穂(でも……これが夢だったのよね。高校時代からずっと言ってた……)


美穂(……甘い夢だこと)ぱくっ

――――――
――――
――


<ある晩>


美穂「ただいま~」がちゃっ


藍「あっ美穂。おかえり」

美穂「ねえなんなの? 外まですっごくいい香りがするけど……」

藍「うふふ、今日めぐみがお仕事お休みだから、ケーキ作ってくれてるの」

美穂「えー!///」



めぐみ「違う違う、こんな感じでやるの」さっさっ

撫子「意外と難しいんだね……///」


美穂「ちょっとなによ、撫子がやってるじゃない!」

めぐみ「私は簡単にできちゃうもーん。いい機会だから撫子に私の凄さを教えてあげようと思って♪」

撫子「いや、確かにこれは……すごい。ちゃんとしたやつ作るには、素人じゃだめだね」

めぐみ「これがプロと素人の差よ!」ふふん

美穂「いやまだお店では作らせてもらえてないんでしょ」


めぐみ「みんなが勉強頑張ってる受験期とか、集中特訓してたりしたんだよねー実は。こっちに越してくる前も色々やってたし」

藍「そうだったのね」

美穂「へぇ、さすが実家から器具を持ってきただけはあるわね」


撫子「というかもうすぐ夕飯だから、そっちも用意しなきゃ。ケーキと並行して作るね」

めぐみ「おねが~い」

藍「あっ、手伝うわ」


美穂「じゃあキッチン部隊はみんなに任せて、私はお風呂入っちゃうわね~」

藍「うん、そうね」

美穂「ふぅ…………」ぱさっ


美穂「…………」



美穂(……もし、一人暮らしだったら)


美穂(誰もいない、真っ暗な部屋に帰ってきて……)


美穂(お菓子の香りも、笑い声も何もない空間で……)


美穂(仕事の疲れに飲まれながら、お風呂入って、簡単なごはん食べて……)


美穂(喋る人も、いなくて……)



美穂「…………」とてとて



めぐみ「さぁ、仕上げ入るよ~!」


美穂「めぐみ……みんな……ありがと!」ぎゅっ

めぐみ「わっ、美穂? お風呂行ったんじゃなかったの? ……あれ、なんか柔らかい」


撫子「わーー! 美穂裸じゃん!///」

藍「ちょっとちょっと……!」

美穂「いいじゃない別に……こうしてでも感謝の想いを伝えたかったの♪」

めぐみ「なに!? 今裸なの!? 背中にはりつかれて見えない!」

美穂「あら、見たいのぉ?」うふっ

撫子「せめてタオル巻け!///」ばさっ

美穂「ああん……っ」




ぱくっ


美穂「……おいしい!」

めぐみ「ほんと!?」


撫子「うん、おいしいね……!」

藍「すごいわねえ、こんなのがお家で作れちゃうなんて」

めぐみ「えへへへ……///」


美穂「私……この前お店で食べたものよりおいしいと思うわ!」

めぐみ「えーほんと?」

美穂「ほんとよ! ケーキの種類が違うとかじゃなくて……こっちの方がいい!」

撫子「作りたてってのもあるのかな」

藍「そうね、そして何よりも……めぐみが作ってくれたからよ♪」

めぐみ「ちょっとなにーもー! みんな褒めすぎ~!///」きゃー


美穂「本当においしいもの! 私こんなの初めて食べた!」

撫子「ふふ……なに? なんか美穂今日テンション高いね」

美穂「あはははは!」



<後日>


美穂「ねぇ~ん今日もケーキ作ってよぉ?」

めぐみ「いや、私はいいんだけど……撫子と藍がね?」

美穂「?」



撫子「……最近お菓子ばっかり作るから」

藍「ちょっと……ね///」


美穂「なあに? 飽きちゃったの? あんなに美味しいのに」

めぐみ「違うみたいだよ……」


撫子「……大学生になるとさ、なかなか運動とかもできないもんだね」

藍「どうしようかしらね……」


美穂「あ、もしかして……太っちゃったのぉ?」


撫子「…………」

藍「……そ、そう」


美穂「あはははは! あーはははは!」

撫子「なに笑ってんの!///」


美穂「そっか、私やめぐみは結構動き回るけど、藍と撫子は基本デスク作業だものね! そりゃ太っちゃうわぁ~」

藍「深刻な問題よ……」


美穂「まあいいや。それじゃめぐみ、私だけに作ってよ! それならいいでしょ?」

撫子「だめー!」

藍「お菓子のいい匂いがしちゃったら、私たちだって我慢できないもの……///」

めぐみ「そういうことだってさ。美穂ケーキ食べたかったらお店に来てね」

美穂「え~……お店のケーキはめぐみのケーキじゃないじゃない。私はめぐみが作ったやつが食べたいのに」


美穂「……こうなったらもう、撫子と藍にダイエットしてもらうしかないわね。二人とも今日は夕飯抜き!」

撫子「はぁ!?」

藍「そんな~……!///」

美穂「冗談よ」


めぐみ「ふふふふ……まあ誕生日とかクリスマスには作ろうとおもうから、それを楽しみにしててね」

撫子「……早く痩せなきゃ」

藍「そうね……」

【3話:だらしないわよ、みんな!】


藍「ただいま~」

撫子「あ、おかえり」


めぐみ「どこ行ってたの~?」

藍「お夕飯の買い物……って」


めぐみ「?」


藍「めぐみ……あんまり散らかしちゃダメじゃない」

めぐみ「ほぇ? どこを?」

藍「いやあなたの周り! 脱いだものがたくさん!」


めぐみ「あーこれか、あとで洗濯機に持ってこうと思ってさ」

藍「今持ってっちゃいなさい……すぐそこに洗濯機あるんだから」

めぐみ「あはは、藍お母さんみたいだね~」


「はーっ、お風呂あがったわよ~」

藍「あ、美……っ!!?」


美穂「あら藍。おかえりなさい」

藍「美穂~~~!! 服着なさい~~!///」


美穂「大丈夫よ? パンツは履いてるから」ぺらっ

藍「下だけじゃなくて上も!! 見えちゃってるから!」

美穂「だって夏はあっついんだもの~……」ぱたぱた

藍「む~……!///」

撫子「ちょっとみんな……だらしなくなってきたね」

藍「あっ、撫子! そうよ言ってやって!」


美穂「なによ一体~」ぶーぶー

めぐみ「怒られる予感~」


撫子「最初のうちはお互い気をつけてたけど……だんだん実家で過ごしてるような『素の自分』が出てきちゃってるんだよ」

藍「そうそう!!」

美穂「んー……」

めぐみ「……否定はできない」


撫子「リラックスするのは構わないけど、そういうところはちゃんとしなきゃ。特にこの家は4人家族用の作りなんだから、大事なことだよ」

藍「さすが撫子……!///」きゃっきゃっ



美穂「じゃあ言わせて貰うけど、あれはなんですかー」びしっ

撫子「?」


美穂「撫子たちの大学のプリント類が毎日溜まっていくんですけどー、扇風機の風でこっちにとんできまーす」ひらひら

撫子「ちょっ、誰扇風機つけたの!? これは一次的にここに置いてるだけだったの!」


めぐみ「でもああいうプリント類がむき出しで詰まれてるのは私もどうかと思うよ」

撫子「違うの、これはそろそろ荷物も増えてきたしラック的なものを置こうかって藍と相談してたとこなの! こいつらももうすぐ片付けるから!」

美穂「早くなんとかしないと、間違えて紙飛行機にしてあそんじゃいまーす」

撫子「やめてよ!///」

藍「はぁ……これはそろそろ、大掃除ね!」ぱんっ


めぐみ「大掃除?」


藍「あのね、私たちがここでの生活に慣れてきたって言うのもあるけど、だんだん全体的に散らかってきちゃってるっていうのが大きな原因だと思うのよ」

撫子「ほう」


藍「部屋を綺麗にしておけば、綺麗に使おうって自然に思うものでしょ? だからここらで大掃除をしましょう!」

美穂「なるほどね。そしたらついでに収納家具とかも検討しましょうか」

めぐみ「おおっ、いいねー!」


撫子「よし、こういうのは日にちを合わせてやろう。今度の日曜日休みの人ー」

藍「はいっ」

美穂「はーいっ」

めぐみ「私仕事……」


撫子「じゃあめぐみは有給休暇とってきてね」

めぐみ「ええええ!? やだよ! ってかそんな急に無理だから!///」


藍「めぐみは仕方ないから、3人で頑張りましょう。めぐみのところも容赦なく片付けちゃうから、捨てられたくないものとかあったらわかるようにしておいてね」

めぐみ「ひえー! 藍が本気だ!」


藍「快適な生活は綺麗なおうちからよ。じゃあそういうことでよろしくね」

美穂「しゃーない、やりますか~」ぱさっ

撫子「美穂は早く服着て!!///」



<日曜日>


藍「こうなってくると、掃除機欲しいわよねぇ……」

撫子「んーそうだね……でもそこそこ高いんだよなぁ」

美穂「掃除機なんか使っていいの? 下の階の人に迷惑にならない?」

撫子「大丈夫でしょ。この部屋かなりいい作りだから」


美穂「じゃああれ買いましょうよ、ルンバ! あの勝手に動いてくれるやつ!」

撫子「高いよ!!」

藍「あんなのにウロチョロされちゃ迷惑よ!」

美穂「二人ともなんか今日怖いわよ……」


撫子「掃除くらい自分たちの手でやらなきゃ。それにうちにはもうめぐみがいるし、ルンバは飼えません」

美穂「めぐみはルンバと同等の、しかもペットとして扱われてるの……?」


藍「とりあえず、買うものは綺麗にしてから決めましょう。美穂はクイックルワイパー部隊やって」

美穂「はいはーい」

藍「撫子はゴミまとめておいて。ゴミの日になったら出しましょう」


撫子「藍は?」

藍「私は……風呂場からトイレから窓のサッシまで、徹底的にやるわ」すっ

美穂「あーっ! あの棒は!」

撫子「あれはミワ棒だ! マツイ棒をぱくったやつだ!」

美穂「じゃあマツイ棒じゃない」

藍「さあ、いくわよ!」




めぐみ「今日はみんなで大掃除やってるらしいから……早くあがらせてもらっちゃった! 私もお手伝いしなきゃ!」


めぐみ「ひょっとしてもうとんでもなく綺麗になってるのかなー……」がちゃっ


めぐみ「ただいまー!」



藍「あっこれ! 懐かし~……!」

撫子「このときめぐみがさ……」

美穂「あはははは! 思い出しちゃった~!///」


きゃっきゃっ……


めぐみ「あれ……? みんな何やってるの?」


藍「あらめぐみお帰りなさい。早かったわね」

めぐみ「なんだろ……私が見た所、掃除の途中っぽい感じなんだけど……」


撫子「あっ、もうこんな時間!」

美穂「やばい、急がないとめぐみが帰ってきちゃうわ!」

めぐみ「いやもう帰ってきてるよ!! 何やって……あーっ! 卒業アルバム!」


藍「えへへ……///」

めぐみ「ひょっとして卒アル見てたら掃除そっちのけになっちゃったの……!? 一番陥りやすいやつじゃん!」

撫子「ごめんごめん……止まんなくてさ」


めぐみ「私も手伝うから掃除しちゃおうよ! 夕飯になっちゃうよ!」

藍「そ、そうね。さすがに再開しないと」

――――――
――――
――



めぐみ「きもちいーい……///」

美穂「やっぱり綺麗な部屋は違うわね。布団も干しておいてよかったわ」


撫子「これからはこの状態をキープするように綺麗につかっていこうね」

めぐみ「そうだね~」


藍「…………」


撫子「どしたの? 藍」


藍「ん? いや、あの……」


藍「みんなで、写真撮らない?」

美穂「んー?」


藍「戸棚を買うって、今日決まったから……その上に写真立てとか置こうと思うの! 私たち皆の写真!」

めぐみ「あーいいねー! そういえばここに住むようになってから写真とか撮ってないや!」


撫子「…………」

美穂「写真苦手の撫子さんが何か言いたそうにしてますけど」

撫子「いや……いいよ。そういうことなら、写真立ても買おうか」

藍「ほんと……?///」


撫子「この家での思い出とか……形に残るもの、まだ無いもんね」

美穂「はいはーい! それなら私カメラ新しいやつ買っちゃう! 実は仕事でも使えそうないいやつ見つけたの~!」

めぐみ「みんなで卒アルの続き作っちゃおーう!」

藍「決定ね♪」

撫子「ふふ……///」



<その後日>


ぱしゃり!



めぐみ「んわっ! ん~……なに……?」むにゃむにゃ


美穂「あはは! めぐみの寝顔ゲッツ♪」


めぐみ「あっ、写真とったー……! 今私の寝顔とったでしょ~!!」

美穂「これ写真立てに飾っちゃいましょ~!」きゃっきゃっ

めぐみ「やーだー! やめてー!///」どたどた


撫子「静かにしてよ! 下の階の人に怒られちゃう!」

めぐみ「だって美穂が~!」


美穂「うふふ、ちなみに撫子の寝顔はもう撮影済・み♪」

撫子「!?」


撫子「ケシテヤル……ゼッタイケシテヤル……」ゴゴゴ


美穂「きゃー! 撫子が怒った~!///」

めぐみ「いいぞー撫子! ついでに私の写真も消しちゃって~!」

撫子「ソレハ……ゲンゾウスル……」

めぐみ「なんでよ!///」


きゃーきゃー……



藍「も~、静かにしなさーい!!」ばんっ


撫子「あ、ごめん……」


藍「あなたたちは何歳!? もうほとんど成人でしょう! 子供みたいなことしてないで!」

めぐみ「ママ聞いてよ~! 美穂がいじわるするの~!」

藍「誰がママよ!///」


美穂「ちなみに藍の寝顔はもう現像してあるわ、ほら♪」ぱさっ

藍「えっ!?」


撫子「あ、でも綺麗だ」

めぐみ「ほんとだ! 寝顔が綺麗だ! 完璧だ!!」

藍「お、大人というのはこういうものなのよ……///」

撫子「やっぱりさすがだね藍は」

めぐみ「母は強し、だね」

藍「だから誰が母よ!」

【4話:櫻子ちゃんがやってきた!】



美穂「そういえば……最近撫子って、携帯をあまりいじらなくなったわよね」


撫子「え?」


めぐみ「言われてみれば確かに! 昔はもっと携帯ばっかり見てたよね!」

藍「そう考えると、そうね」


撫子「んー確かに……そういえば携帯どこいったっけな」

美穂「場所さえも危ういの!?」


撫子「いやほら、いつもみんなで一緒にいるからさ。携帯を持つ必要が薄れてきちゃったというか」

めぐみ「あはは、そのセリフを高校時代の携帯依存症真っ盛りだった撫子に聞かせたいね」

撫子「私自分ではそんなに依存症だったとは思って無いんだけど……」



藍「大丈夫? 携帯ある?」

撫子「いや、たぶんバッグに…………あ、あったあった」


美穂「ここ数日開くことさえなかったんじゃない? 大事なメールとか来てたりして~!」

撫子「はは、大丈……」てちてち


撫子「っ…………!?」びくっ


藍「ど、どしたの?」

撫子「『撫子、最近連絡無いけどどうしたの? 櫻子がそっちに行ってみたいとせがむので出発させました。あとのことはよろしくね♪』……」


めぐみ「な、なにそれ」

撫子「いや……お母さんから今日来てたメール……」

美穂「へー、櫻子ちゃんくるの?」


撫子「やっばい……!! 私ちょっと出かけてくる!!」だっ

藍「え、どうして?」


撫子「お母さん何もわかってなさすぎ!! 櫻子がまともに新幹線乗れるわけないじゃん!! 絶対迷子になってるって!」がちゃっ


ぱたん


藍「あらら、行っちゃった……」

めぐみ「何あの焦りっぷり……」

美穂「相変わらず妹離れできてないのねー、撫子……」


めぐみ「ほんとに櫻子ちゃん来るのかな、だったら歓迎してあげなきゃじゃない?」

藍「そうね。ちょっと準備しましょうか」




櫻子「やっほーみんな! 久しぶり~!」


めぐみ「櫻子ちゃんいらっしゃ~い♪」

美穂「いぇーい!」ぱぁん


撫子「やっほーじゃないでしょ……先輩なんだから敬語使いな」

美穂「いいのよ撫子。そんな固いのは逆に嫌よ」


藍「櫻子ちゃん、電車大丈夫だった?」

櫻子「も~全然平気! なのにねーちゃんったらいっぱい電話かけてきて心配して……私だって電車くらい大丈夫なのに!」

藍「そうなの?」

撫子「……まあ、結構近くまで順調に来れてたみたい」



櫻子「ってかすごいねこの家~! ひろーい!」

美穂「私が案内してあげるわ。こっちこっち~♪」



美穂「まずここがリビング!」

櫻子「わ~、ソファーとかもあるんだ」

撫子「今日そこで寝てもらうから」

櫻子「えー!?」


めぐみ「そんなことさせない! 私たちがちゃんと寝る場所も用意してあげるからね!」

櫻子「ありがとめぐみねーちゃん…………んん?」ぷっ

めぐみ「?」


櫻子「あはははは! 何これー!///」

美穂「これ傑作でしょ? めぐみの寝顔の写真」


めぐみ「ちょーっ、なにこれ!? いつの間に現像したの!? しかも可愛い写真立てに入れて飾らないでよ!!///」

藍「あら、少し前から普通に飾ってあったからてっきり同意の元なのかと……」

めぐみ「同意するわけないでしょ!!///」



美穂「一応こっちにベランダもあるのよ」

櫻子「わー、いろいろ干してある」ぱちん

めぐみ「それ私のパンツ!!///」


櫻子「みんなの洗濯物一緒なの?」

藍「最初は分けようかと少し思ったけど……みんな一緒でいいわよねってなったの」

櫻子「ふーん……なんか、家族みたいだね」

美穂「こっちが寝る部屋に使ってるとこなの」

藍「本当は、起きたらちゃんと布団たたんで、寝るときにまた敷いてってしようと思ったんだけど……」

めぐみ「みんな朝とか忙しいから、大体いつも敷いたまんまなの……///」


櫻子「ちょ……ちょっと待って? 布団4つ並んでるけど……」

めぐみ「?」


美穂「あっ、もちろん並んで寝てるわよ」

櫻子「えええぇぇ~~~~!?」


藍「部屋を分けるわけにもいかないし、かといって部屋の四隅にそれぞれ布団敷くのも変じゃない? ってことで……一応ずっとこんな感じよね」

めぐみ「今となっては普通だけど……確かにちょっとおかしいのかな」


櫻子「…………」ぱしゃぱしゃ

撫子「……なんで布団の写真撮ってるの!?」


櫻子「いや、お母さんと花子に言われてて……ねーちゃんがどんな生活してるか知りたいからたくさん写真撮ってきてって」

撫子「恥ずかしいよ! やめて!」

美穂「ちなみに撫子のは右から2番目よ」

櫻子「えー、じゃあ挟まれて寝てるんだ……」

撫子「仕方ないでしょ!?///」



美穂「こちらがキッチンになります~」

櫻子「うわ、なんか色々ある~!」

めぐみ「私がよくお菓子作るから、これはその道具なの♪」

撫子「駅からここに来る時ケーキ屋さん見たでしょ? めぐみはあそこで働いてるの」

櫻子「へ~……!///」

めぐみ「ちなみに、今日は櫻子ちゃんが来るってことでケーキ貰ってきてあるの! 後で食べようね~」

櫻子「うわーい!!」

美穂「そしてここがお風呂よ」

櫻子「え、意外と広~い!」

撫子「確かに、都会にしちゃそこそこ広いほうだね」

櫻子「じゃあひょっとして、いつも二人くらい一緒に……」

撫子「それはさすがにしないよ」

櫻子「なーんだ、びっくりした」


美穂「でも急いでるときはたまに二人くらいぱぱっと入っちゃうわよね」

めぐみ「みんな活動時間帯が微妙に違うから仕方ないよね~」

櫻子「じゃあ入ってんじゃん!!」

撫子「私は入ってないから! いつも美穂とめぐみが勝手に乗り込んでくるだけだから!///」



美穂「ざっとこんな感じかしらねー。櫻子ちゃん写真いっぱいとれた?」

櫻子「とれたとれたー。これならお母さんと花子にもちゃんと紹介できそう!」

撫子「偏見が満載な気がしてならないんだけど……」


藍「じゃあそろそろお夕飯の用意しましょうか」

美穂「櫻子ちゃん何か食べたいものある?」

櫻子「カマンベールピザがいい~! デリバリーの!」

撫子「出前かい!!」

櫻子「うそうそ、何でもいいよ~」



<夕飯>


藍「撫子は大学でもすごく人気なのよ」

櫻子「いつも思うけど……本当にそうなのぉ? 愛想ゼロ人間のくせにー」

撫子「…………」

美穂「そういうところがクールで人気なのよね」

めぐみ「それは高校の頃からずっとそうだよね~」


藍「あら、もうこんな時間……櫻子ちゃん、こっちにはいつまでいるの?」

櫻子「ん~……実は明日には帰らないとなんだぁ」

撫子「普通に学校あるんだから、仕方ないね」


櫻子「んーっ、でも一日でも来れてよかった! ここ二週間くらいねーちゃんから連絡来なかったから、みんな心配してたんだよ?」

めぐみ「二週間で!? 私二ヶ月くらい音沙汰無いけど特に大丈夫だなぁ」

撫子「いや、まあね……///」


美穂「あら、めぐみ知らなかったの? 撫子はここまで実家への週一での連絡を欠かしてこなかったのよ」

めぐみ「うそー!? そんなに電話してたの?」

撫子「なんで美穂は知ってるの……」


美穂「だっていつもその連絡のためだけに携帯持って出かけるじゃない? コンビニ行ったフリして帰ってくるけど」

藍「ちなみに私もとっくに気づいてたから……もう連絡するのにコンビニ行かなくても平気よ?」

撫子「じゃあ……今度からは家でかけることにします……///」


櫻子「まあ、ねーちゃんが元気そうでよかった。ずっと家族のいる家で過ごしてたから、一人暮らしなんてできるわけないってみんな思ってたんだよね~」

撫子「アンタにだけは言われたくないよ」


櫻子「優秀なお友達がたくさんいるからやっていけてるんだよね。みんな、これからもねーちゃんをよろしくお願いします!」

藍「そんな……どっちかといえば私たちは、いつも撫子に助けられてる側よ?」

美穂「そうよね。掃除とかゴミ出しとかやってくれるものね」

撫子「雑用!?」

櫻子「あはははは!!」

――――――
――――
――



めぐみ「ふぃ~、お風呂出たよー……あれ、櫻子ちゃんは?」

藍「もう撫子と布団のほう行っちゃったわ」





撫子「ひま子とは……仲良くできてるの?」

櫻子「い、一応ね」

撫子「そっか……喧嘩なんかしちゃだめだからね」


櫻子「花子が……しっかりしてきてさ、ねーちゃんみたいになってきちゃった」

撫子「なってきちゃったって、なにそれ……アンタみたいになるよりはいいじゃん」

櫻子「可愛気がないんだもん! ……たまに寂しがってるけどね。本当は今日もこっちに来たがってたの」

撫子「…………」


櫻子「だから……そんな感じだから、たまには帰ってきてね。夏休みとか……お正月とかは、絶対帰ってきてって言ってた」

撫子「誰が?」

櫻子「み、みんなが」

撫子「みんなの中に……櫻子は入ってるの?」

櫻子「そりゃ……入ってるよ」


撫子「……わかった。近いうちに連休あるし、そこで帰ろうかな」

櫻子「ほんとに……?」

撫子「ん……」



撫子「明日……一人でちゃんと帰れる?」

櫻子「……わかんない」

撫子「新幹線上手に乗れたの……たまたまなの?」

櫻子「う……うん」


撫子「じゃあ明日は、乗るやつ間違えないように近くまで着いていってあげるから……お母さんたちによろしくね」

櫻子「わかった……あ! そうだ、こっちのおみやげ買ってこなきゃなの!」

撫子「はいはい、それも探してあげるから……っていうかめぐみがケーキ持たせたがってたよ」

櫻子「ケーキもいいけど、他にもいろいろ買う!」


撫子「わかったわかった……今日はもう、寝な」


櫻子「うん……おやすみ」

撫子「おやすみ、櫻子……」



撫子「zzz……」


藍(あらら、一緒に寝ちゃったわ)

めぐみ(あはは、本当仲良いんだね……///)

――――――
――――
――


<翌日・駅>


撫子「このあたりまでくればもうわかるよね。後はこれ乗れば富山まで着くから」

櫻子「ありがとー!」


めぐみ「じゃーねー櫻子ちゃん、また来てね!」

藍「ええ。いつでも歓迎よ」


櫻子「ありがとみんな……あ、そうだめぐみねーちゃん、最後に私とねーちゃんのツーショット撮って!」

撫子「えっ?」


めぐみ「ツーショット? ポーズとかいいの?」

櫻子「ぴっと立って撮るの! ねーちゃんがいない間、私がどこまで身長大きくなるか確かめるから! 私が高校入るくらいにはねーちゃんより大きくなってるかもよ~?」

藍「そうね。櫻子ちゃんは今がぐんぐんの成長期だものね」


めぐみ「じゃあ撮るよ~、撫子笑ってー」

撫子「…………」


めぐみ「撫子笑ってー!」

撫子「早く撮ってよ! 電車行っちゃうでしょ!///」

櫻子「笑いなよこんな時くらい!」

撫子「いいってば……!」


[―――番線、まもなく発車いたします……]


撫子「わー急いで急いで!」

めぐみ「はいチーズ!」ぱしゃり


撫子「ほら、荷物持って」

櫻子「ありがと~! じゃあまたね、ばいばーいっ!」よいしょ


藍「気をつけてね~」ふりふり

撫子「じゃあねー」



ぷしゅー


がたんごとん……


めぐみ「わーーーーっ!! 櫻子ちゃんの携帯返してなかった!!///」

藍「写真撮ったままめぐみが持ってたの!?」

撫子「ちょっ、バカ何してんの!? ちょっ、櫻子ー! 携帯忘れてる~~!!」

櫻子『』がーん




<その後日>


向日葵「……で、携帯だけ送ってもらったんですのね」

櫻子「新幹線だから、簡単に引き返せなくてさー……まあこうして無事に帰ってこれたからよかったよ」

花子「まったくおっちょこちょいだし」


向日葵「それで、撫子さんがどんな感じで過ごしてるかの写真は撮ってきてくれたんですの?」

櫻子「あーとったとった! 待っててね……」てちてち



櫻子「ん? あれっ!」


花子「どうしたし?」

櫻子「私が撮った覚えの無い写真がたくさん入ってる!!」

向日葵「どういうことですの?」


櫻子「あ、メールも来てる……『櫻子ちゃんへ、美穂です。お仕事で見送りにいけなくてゴメンネ☆ 携帯忘れちゃったって聞いたから、お詫びに撫子の写真をいっぱい撮っておきました♪』……だって!」


向日葵「なるほど、ルームメイトの方が追加で撮ってくれたんですのね」

花子「見たいし!」


櫻子「私だけでも結構撮ったんだけどなー、一体どんなのが…………」ぴくっ


櫻子「…………」

向日葵「……櫻子?」



櫻子「…………」すっ


向日葵「こっ、これは……!?///」


花子「何これ!? どう見ても撫子おねえちゃんがお風呂入ってるところの盗撮にしか見えない! こっちは寝顔コレクションだし…………あっ! 寝てるところにキスしてる写真とかもあるし~~!!///」


櫻子「……いやー、楽しそうだね、ルームシェア……」

向日葵「これが一般的なルームシェアなんですの!? なんか違くありません!?///」

花子「撫子おねえちゃんは大丈夫なの!? ちゃんと家で休めてるか心配だし!!」

【5話:風邪ひいちゃった!】


めぐみ「買ってきたよぉ~」たたたっ

藍「あ~めぐみ、ありがと」


めぐみ「体温計って意外と高いんだねぇ! でもみんな使うものだしあった方がいいよね」

藍「そうね……むしろこの家で今まで誰も使ってこなかったのが驚きよ」



撫子「ごめんね、みんな……世話かけさせて」けほっけほっ

藍「いいのよ。最近体調悪そうにしてたものね」

めぐみ「撫子が風邪ひくとはねぇ」

撫子「私だって、風邪くらい引くよ……」

めぐみ「えへへ、なんか撫子ってなんでも完璧だから、風邪も引かないと思ってた」



美穂「も~、寝てる人がいるんだから静かにして~……」がちゃっ

藍「あっ、美穂おはよう」

美穂「おはようじゃないわよ、私今日お仕事お休みだから二度寝するの~」ふぁぁ


めぐみ「ねえ美穂、見て見て」

美穂「なによぉ……」


めぐみ「撫子が風邪引いちゃったの」


撫子「…………」ぐったり


美穂「…………!」はっ



美穂「まっっっかせて~~~~!!」きらーん

めぐみ「あはは、わかってくれた」

撫子「嫌な予感……///」

藍「ごめんね撫子、本当はずっと着いててあげたいんだけど……」

撫子「ん、いいよ。藍まで学校休むことないって」

美穂「むしろ撫子が休んでる分、授業出てプリントとか貰ってこなきゃだものね」

藍「そうね……」


めぐみ「私も看病してあげたいけど、お仕事なんだよなぁ~……」

撫子「めぐみは食べ物作ってる人なんだから、風邪っぴきと一緒にいちゃだめだって……早く仕事いきな」こほこほ

めぐみ「え~ん、心配してるのにー!」


美穂「となれば、今日た・ま・た・まお仕事がお休みの美穂ちゃんが撫子の専属ナースになるってわけね♪」

撫子「…………」はぁ


藍「ごめんね美穂、お願いしていい? 私たちもなるべく早く帰ってくるから」

めぐみ「私もケーキ用の保冷剤持ってきてあげるから」

撫子「保冷剤はいいよ……」


美穂「任せて任せて。今日一日で治してみせるから!」

撫子「それ美穂次第じゃないでしょ……」

藍「頼むわね、ありがとう!」




美穂「撫子~、ポカリ買ってきたわよ~」

撫子「ありがと……ってこれアクエリアスじゃん!」


美穂「へへ、うそうそ。ちゃーんとポカリも買ってありまーす」じゃーん

撫子「これやりたいがためにアクエリ買ったの……?」



美穂「さて撫子、何して欲しい? 紙芝居でも読んであげましょうか?」

撫子「いいよそんなの……とりあえず、今は寝てるよ」

美穂「え~そんなのつまんない~!」

撫子「もともと風邪なんて面白いもんじゃないんだよ!!///」


美穂「まったくしょうがないわね、今は寝てなさい。起きる頃までにはおかゆ用意しておいてあげるから」

撫子「え、ありがと……なんだ美穂ちゃんと普通のことしてくれるんだね」

美穂「当然よ! 私を何だと思ってるの?」

撫子「てっきり今日はだるい身体で美穂とずっと遊ぶ日になると思ってたからさ……」


美穂「撫子が遊びたいならそれでもいいけど、早く治したいでしょ? 藍たちに心配かけさせたくないだろうし」

撫子「……よくわかるね」

美穂「私のことが気になって眠れないなら、向こうの部屋にいっててあげるわよ?」


撫子「いや……いいよ、ここにいても」


美穂「そう? じゃあなんかあったら大きい声で叫びなさいね」

撫子「普通に呼ぶよ……」


ぱたぱた……



撫子(美穂は……本当はいつも、全部をわかってる子なんだ……)


撫子(みんなをちゃんと見て、気を利かせて、楽しくしてくれて……)


撫子(でもそういうとこ、人には隠したがるんだよね……)


撫子(……変わってないなぁ……)


撫子「…………」すぅすぅ


美穂「…………」




撫子「………っ…」はぁはぁ


美穂「あっ、起きた……!」


撫子「あ、美穂……」

美穂「撫子、すごい熱よ……! 汗もすごいでしょう」


撫子「はは、私、風邪引くといつもこうなんだよ……一気に熱出るの。その代わりすぐに治るんだけどね……///」

美穂「でもこの熱は笑えないわよ……熱止め買ってこようかしら」

撫子「いいっていいって、もう少し寝れば下がるから……」


美穂「だめよ」ぐいっ

撫子「えっ……?」


美穂「薬買ってくるわ。すぐ戻るから、おとなしく待っててね」


撫子「…………う、うん」



たたた……


撫子(……あんな真剣な顔して)


撫子(私、そんなにやばそうに見えるのかな……)


撫子(……あっ!!)



撫子「そうだ……思い出した……私……」


撫子「昔……美穂に、風邪の看病してあげたんだ……!」


撫子「そうだよ……私が走って熱止め買いに行ったんだ……今のセリフ、あのとき私が美穂に言ったやつだ……」


撫子(美穂は……そのことをちゃんと覚えてるんだ……)




撫子「…………」こくこく

美穂「……大丈夫?」


撫子「ん……ありがとう」

美穂「インフルエンザじゃないわよね……流行ってるとは聞かないし」

撫子「心配いらないよ。明日には絶対楽になってるって」


美穂「……もしあれなら、私……明日も仕事休もうかしら」

撫子「いいって、楽になれば自分でもなんとかできるから……」


美穂「…………」


美穂「ねえ、撫子……覚えてる?」

撫子「ん……?」


美穂「私たちが……付き合いだした頃、私が大きな風邪を引いて……撫子は看病してくれたわね」


撫子「……うん、私もさっき、それ思い出してた」



美穂「私……あのときのこと、本当に忘れられないの」


美穂「人ってやっぱり不定期でも風邪引くじゃない……だからそのたびに思い出して……今でもずっと残ってるの」

撫子「…………」


美穂「私はあのとき、結構な大風邪だったんだけど……親がいなくてね、撫子がいなかったらどうなってたのかしら」

撫子「…………」


美穂「普通の風邪だと思ってた私は、特に気にも留めず笑ってたわ……『風邪引いたのがちょうど彼女ができたときで、助かったわ』って」


美穂「そしたら撫子は……『付き合ってなくたって、来たけどね』って……言ったわよね」


美穂「あのときの真剣な顔……忘れられないわ。この人と付き合ってよかったって、本当に思えた……」


美穂「私に対してあんな顔してくれる人……撫子以外に、いなかったもの」


撫子「…………」

美穂「私が大人しくしてなかったから、そこから風邪は悪化して……でも撫子がずっとついててくれたおかげで、なんとか回復した」


美穂「そのとき思ったわ……一生をかけて、お返ししなきゃって」

撫子「そんなこと……思ってたの……?」


美穂「命の恩人って、こういうことを言うのねって……本当よ?」

撫子「へぇ……」


美穂「撫子が適切な看病をしてくれたって、それもあるんだけど……傍に安心できる人がついててくれたことが、私にとって一番大きなことだったの」



美穂「撫子……私は」



美穂「私が傍にいると、安心する……?」



美穂「…………?」ちらっ


撫子「…………」すぅすぅ


美穂「……ふふっ……///」


美穂「早く元気になってね、撫子……」なでなで


――――――
――――
――

<翌朝>


ぴぴぴ……


藍「あらっ、結構熱下がってる!」

撫子「よかった、だいぶ身体も楽になってきたよ」

めぐみ「えーつまんない、今日は私がお休みだから看病してあげようと思ったのに~……」

撫子「もともと私は回復力があるの」


藍「それもあるけど……一番は美穂のおかげかしらね」

撫子「うん……美穂、私が寝てる間も色々してくれてたみたい」

めぐみ「いいとこあるね、美穂」

撫子「そうだね」



藍「ところで美穂はまだ起きてないの?」

めぐみ「あ、そういえば……そろそろ起きないと会社遅れちゃうんじゃないかな。起こして来……」


がちゃっ


美穂「っ…………」


藍「あ、来た来た。美穂おはよ」


美穂「体温計……貸して……!///」ばっ

撫子「えっ」



めぐみ「ま、まさか……」


藍「うそ……!?」



ぴぴぴぴ……


美穂「いやーーっ! 39℃もあるわ!」

撫子「えーーっ!? ちょっ、私のが移ったにしても私よりひどいじゃん!」


美穂「私昔からこうなのよ! 一旦風邪引くととことん弱っちゃうの~!」

めぐみ「弱ってるようには見えないんだけど……」


撫子「どうすんのこれ、会社に連絡しなきゃじゃん」

藍「そうね、こんなんじゃお仕事は無理だわ……」

美穂「熱い~、身体が熱い~……///」ぜぇぜぇ


めぐみ「わ、わかったよ! 今日は私が撫子と美穂の看病するから」

撫子「私も美穂を助けなきゃ……!」

美穂「撫子はだめよ! 風邪がぶり返したらどうするの! ああでも昔みたいに撫子に看病されたい……♪」

めぐみ「元気だねあんた!!///」

【6話:おとなとこどもと、こどもとおとな】


ぴんぽーん


藍「撫子~、お荷物届いたわよ~」

撫子「あ、きたきた」


めぐみ「?」



撫子「よい……しょ」どすん

めぐみ「わーわーなに? そのでっかい荷物」

藍「なんだと思う?」

めぐみ「え~……あ、Wii Uでしょ! やったー!」


撫子「子供じゃないんだから……これはプリンターだよ。家から送ってもらったんだ」

めぐみ「プリンター?」

藍「この家、私と撫子のパソコンはあるけどプリンターが無かったの。いちいち外にコピーにしにいくのも大変でね……お金かかるし」


美穂「大学生ってそんなにプリンターとか使うの?」

撫子「すっごい使うよ。コピーもたくさんとるし、印刷物を提出することも多いし……」

藍「パソコン使えないとダメな感じよ」

めぐみ「ほぇ~……」


撫子「もうすぐ試験とかもあるしさ、集中的に頑張らなきゃなんだ」

めぐみ「へぇ~なんだか懐かしいなー。高校時代に戻ったみたい!」

藍「二人はもうテストなんて無いのよねぇ」

美穂「その代わり変化のない日々よ~? 毎日毎日同じことの繰り返しなんだから」

めぐみ「懐かしいなぁ、テストか~……大学と高校ってどっちの方が大変?」

撫子「わかりきったこと聞かないでよ……」

美穂「撫子と藍は名門の大学だものね」

藍「単位落とさないようにしなきゃね」


撫子「あっそうだ藍、この前の講義のノートなんだけど……」

藍「あああれね。ちょっと待って……」



めぐみ「大学って……どんなとこなんだろ?」

美穂「ん~私たちにはわからないわねぇ……」


めぐみ「何か楽しそうなイメージあるけど……そういうわけでもないの?」

美穂「…………」


美穂「そうだ! めぐみ、今度お休み合わせてさ……撫子たちの大学に行ってみない?」ひそひそ


めぐみ「えっ、大学ってそんな簡単に行っていいの?」

美穂「意外とオープンなもんなのよ? 私たちは学生と見分けつかないだろうし、大丈夫大丈夫~」

めぐみ「そ、それなら……撫子と藍が普段どんな感じか見てみたい!///」

美穂「ふふ、決まりね♪」



<作戦決行の日>


撫子「それじゃ、行ってくるね」

藍「お夕飯よろしく~」

めぐみ「はいはい、いってらっしゃーい」ふりふり


ぱたん



美穂「ふふふ……よし、変装ターイム!」

めぐみ「いぇ~い!」


美穂「大学って言っても今時はオシャレな女が多いわ! なめられないようにしなきゃ」すちゃ

めぐみ「サングラスなんかしなくていいでしょ!///」

美穂「なによ、撫子にばれたら何言われるかわかんないでしょ。それに私くらいの可愛さだと普通に歩いてるだけできゃーきゃー言われちゃうのよ」

めぐみ「絶対無い方がいいと思う……」


美穂「めぐみもちゃんとオシャレしていきなさい。打倒コンサバ女子!」

めぐみ「美穂は女子大生と戦ってるの……??」




<大学>


めぐみ「撫子の学部とか知ってるの?」

美穂「当たり前じゃない。そんなの知らずに来たらただの迷子よ」

めぐみ「すっごいねー大学って。こんなとこなんだ」

美穂「めちゃめちゃ広いわね……撫子たちの居場所は、えーっと……」


めぐみ「あ、見てみてこのポスター。スイーツサークルだって! みんなで作ったりもしま~すだってよ」

美穂「サークルねぇ……そういえば撫子と藍はどこにも入ってなさそうだけど」

めぐみ「ふーん……なんかもったいなくない? 楽しそうなとこいろいろあるよー」


美穂「あ、こっちだって講義室。行ってみましょ」

『…………』


めぐみ(わぁ……すっごいたくさんの生徒さんだね……!)

美穂(この大学でも結構大きいほうの講義室みたいね……高校とはまるで違うわ)


めぐみ(撫子いるかな……あ、いた!)

美穂(見つけるの早いわね)



撫子「…………」

藍「…………」かりかり


めぐみ(……なんか、あれだね)

美穂(来てみたはいいものの……どうしていいかわからないわね)



美穂(ねぇ、私たちも入って講義受けてみましょ♪)すたすた

めぐみ(え!? えっ!?///)



美穂「お隣よろしいかしら?」

「あ……どうぞ」



美穂「…………」すとん

めぐみ「まずいって美穂……! 関係ない人が授業受けちゃ~……!!」

美穂「ちょっとくらいならバレないわよ。それにこんな大きい教室なんだし」

めぐみ「そうだけど~……」


めぐみ(なんだろうこの気まずさ……でも周りの人も、みんな私たちと同じくらいの子なんだよね……)


美穂(めぐみ……あのモニターよく見えないんだけど、何が映ってるの?)ひそひそ

めぐみ(サングラス外しなよ!!///)

美穂(ああそっか……でも結局内容は難しすぎて理解できないわね)ちゃっ

めぐみ(さっぱりだね……)

めぐみ(高校の頃から……進学目指してた撫子たちとは徐々に勉強の内容が違っていったから、わかってたけど……)


めぐみ(こんなのでも、昔は一緒の範囲を勉強して、一緒にテストに向けて頑張ったりしてたんだよなぁ……)



ぴりりりりり!!


めぐみ「えっ」

美穂「ちょ……!///」


めぐみ(や、やばい電話来ちゃった!)

美穂(何やってんのよもーー! マナーモードにしときなさいよ!///)

めぐみ(いや私たち学生じゃないしさ……ごめん私出てくるね!)ぴゅーん



藍「ん……?」

めぐみ「…………」たたたっ


藍(……見間違いかな、めぐみにそっくり……)


撫子「」ばさっ


藍「あら、撫子ノート落ちちゃったわよ」ひそひそ

撫子「…………」ふるふる


藍「……撫子?」


撫子「めぐみだ……」


藍「え、えっ?」


撫子「今の、めぐみだよ……! ということは……」きょろきょろ


美穂(あっ)


撫子「あっ……!!」

藍「あ……」



美穂(うふ♪)ぴーす


撫子(美穂~~~~!!!///)

藍(何してるのよ……もう……!)はぁ



<講義後>


撫子「こんなところで何をしてるんですかねぇ……」ごごご

美穂「や~ん怖い~♪」

めぐみ「えへへへへ……」


藍「ほんとにびっくりした。一体どうしたの?」

美穂「めぐみがね、大学ってどういうところなの? 気になって夜も眠れな~い! っていうから仕方なく連れてきてあげたのよ」


撫子「それならそうでまず私たちに相談してよ……! あと講義に入ってきちゃダメでしょ!」

美穂「でも私、普通の大学生と見分けつかないでしょ?」きゃぴーん

藍「サングラスがなければね……」



めぐみ「ところで撫子、今の時間ってもしかして……」


撫子「今は昼休みだよ。13時から3限目が始まるの」

めぐみ「わーやっぱり! それならみんなでカフェ行こうよ! 私ずっと気になってたの~!」

藍「ふふ、じゃあそうしましょうか」


美穂「3限は何の授業なの? 私が出ても大丈夫そうな感じのやつ?」

撫子「そんなものはない!!」



<帰り道>


めぐみ「なんか大変そうだけど……でも楽しそうだね、大学生」

美穂「そうねぇ……大人になれた学生って感じだものね。ちょっとだけうらやましいわ」


めぐみ「美穂は別に頭悪かったわけじゃないじゃん。大学行こうとは思わなかったの?」

美穂「んー、まあね。大学に行く私を想像したとき……どうしてるかのビジョンが全く見えなかったの。きっと目的もなくふわふわしてたと思うわ」

めぐみ「ふーん……」


美穂「……めぐみも同じじゃない? 製菓学校行こうとかは思わなかったの?」

めぐみ「私は、バイトのツテもあったし……わざわざ行かなくてもいいかなぁって」

美穂「……その感覚に似たものかしら。高校の続きをしたい気持ちはあったけど……わざわざ行かなくても、ってね」



美穂「……藍は、すごい子よね」

めぐみ「!!」



美穂「あの子は……かなり早い段階から、撫子と同じ道に進むことを決めてたわ。一緒の大学に受かる保証なんてなかったのに……」

めぐみ「っ…………」


美穂「それを聞かされた時……『私も一緒に行きたい』とは言えなかった。めぐみもそうじゃない?」

めぐみ「……うん」


美穂「私ね、撫子の気持ちは、実はよくわからないんだけど……藍の気持ちはよくわかる」


美穂「…………」

めぐみ「…………」


めぐみ「美穂……撫子のこと、好き?」


美穂「…………」


美穂「……好きよ。それは、きっと……ちょうどめぐみと、同じくらいにね」


めぐみ「…………!」


美穂「…………」

めぐみ「…………」



美穂「さ……帰ってお夕飯の準備、しましょうか」

めぐみ「うん……そうだね」



<その夜>


撫子「藍、ここなんだっけ……」

藍「ああ、そこは後で確認しとけって先生に流されちゃったとこよ。あのね……」ぺらぺら


めぐみ「なんだろなー、大学は楽しそうだったけど、やっぱり勉強してるとこを見ちゃうと高校を思い出しちゃうな。『もう勉強はいいや!』ってなっちゃう」

美穂「さらっと講義見ただけでも、なんか心に来たわ……お仕事してる方が楽~」

撫子「他人事だと思って……」

藍「まあまあ、今はテスト間近で大変なときなのよ。終わったら気楽になれるわ」



めぐみ「ところで今日思ったんだけどさ、二人はサークルとか入らないの? なんか楽しそうなとこいっぱいあったけど」

撫子「んー……バイトとかするかもと思って遠慮してたんだよね」

藍「そうね、それに……」


美穂「待った! 藍の言おうとしてることわかった!」

藍「え?」



美穂「ふふ、サークルに入らないのはズバリ……撫子を他の誰かに取られちゃうかもと思ってるからでしょ♪」

藍「まっ……!///」


撫子「何言ってんの……」

美穂「当たってるでしょ? 外れてはいないでしょ?」



藍「はぁ……じゃあ、この際だから本当のこと言ってあげる」

美穂「きゃー来た! 告白タイム!?」

めぐみ「え……っ?///」どきっ



藍「あのね、私や撫子がサークルに入らない理由……それは……」


めぐみ「そ、それは……?///」



藍「……美穂がいたからよ」


美穂「……えっ」

撫子「せっかく3人で暮らしてたのにさ……私たちだけ楽しく遊んでたら、美穂妬くでしょ?」

美穂「やっ、妬かないわよ!///」


藍「妬かないとしても、美穂を一人にするのは悪いじゃない……それにね」


藍「私はどこか新しいところに身を置くより、みんなと一緒にいる方がたのしいの」

美穂「っ……!」



撫子「今はめぐみもいるから、なおさらだね。家にいる方が楽しいし、これから先もサークルとかは入らないかな」

藍「バイトは良さそうな所探してるけどね」

めぐみ「そっかー嬉しいね~、ねー美穂?」


美穂「ん……そうね」


美穂(…………)


藍「どうしたの……美穂?」


美穂「いえ……」

めぐみ「??」


美穂「ふふっ……あーあ、めぐみがこの家に来てくれて本当によかった」

めぐみ「な、なんで?」


美穂「だって肩身狭かったんだもーん。私だけ働いちゃってて……」


撫子「美穂がいるから、なるべく家にいようとしてあげてるのに?」

美穂「撫子にはわからないと思うわ、私の気持ち~」

撫子「ふーん……」



めぐみ「さて、明日も早いや……私はもう寝るね」

藍「あっ、ごめんね。お休みなさい。私たちはもう少し勉強してるけど……うるさくしないから」


美穂「ふぁーあ……私も寝ようかしら」

撫子「そうなの? おやすみ、美穂」



美穂「……おやすみ、撫子……藍」

ぱたん



美穂「…………」


めぐみ「美穂……」


美穂「やめて……いいの、放っておいて」

めぐみ「でも……」


美穂「だめ……優しくしないで……」

めぐみ「!」



美穂「私……みんなの前で……泣きたくないの……っ」ぽろぽろ


めぐみ「っ…………」



美穂「ふふ、あーあ……二人とも、いつの間にか……遠くまで行っちゃってた……」


めぐみ「ごめんね……大学行こうなんて、言わなきゃよかったかな」

美穂「いいの……いいのよ」


美穂「変よねぇ……私、今までの中で今が一番、みんなのことが好きみたい……///」


めぐみ「…………」



美穂「もう……今日は寝るわ。おやすみ、めぐみ……」

めぐみ「うん……おやすみ」




めぐみ(…………)


めぐみ(美穂が泣くとこ、初めて見たなぁ……)


めぐみ(私が来るまで……美穂はどんな気持ちでこの家に住んでたんだろ)


めぐみ(撫子を追いかけて……藍と正面から、向き合いたかったのかな……)


めぐみ(……いや……でもそれなら、美穂はきっと同じ大学に行ってた……)


めぐみ(それをしなかった……それができなかった……苦渋の決断だったけど、美穂はそんな自分を認めたくなかったんだ……)


めぐみ(引きずってる、なんて……かっこ悪く思われてるんじゃないかって、怖かったのかな)


めぐみ(藍に……最後の勝負を、仕掛けてたのかな)


めぐみ(それが……負けちゃったのかな)


めぐみ「美穂…………」なでなで


美穂「…………」すぅ


めぐみ(みんな……すごいなぁ。私なんか、ただ撫子が好きで、ただみんなと一緒にいたくてっていうだけなのに……)


めぐみ(撫子の気持ち……私たち、全然わかんないままなんだね……)


めぐみ(…………)


めぐみ「ふぁぁ…………寝よ」ころん



美穂「…………」じっ

――――――
――――
――


<真夜中>


藍「……美穂?」


美穂「…………」


藍「ああ、よかった……どうしたの? みんなが寝たらこっそり外に来てほしいなんて。メール見てびっくりしちゃった」


美穂「藍に……大事な話があるの」


藍「えっ……なあに?」


美穂「今すぐ答えを出せとは言わないわ。ただ……いつまでも答えを出さなかったら、私はあなたを怒るわよ」


藍「っ……!?///」どきっ

【7話:交錯する、涙と想い】


めぐみ「今日の夕飯は新メニュ~♪」るんるん

めぐみ「都会のスーパーも意外と安いよねぇ。早く作らないと、みんなが帰ってきちゃうな」たたたっ



めぐみ「………ん?」ぴくっ


『~~~……!』



めぐみ(な、なに……? うちの前で誰か喧嘩してる……!?)


めぐみ「えっ、嘘っ……!」



美穂「撫子から切り出せるわけないじゃない!! あなたが動かなくてどうするの!?」

藍「で、でもめぐみに……めぐみになんて……!///」ぽろぽろ

美穂「いつまでも逃げてたら、あなたは……いいえ! 私たちはみんな、一生前に進めないのよっ!!」


めぐみ「わーーっ! ちょっ、二人とも~~!」ばばっ



美穂「め、めぐみ……!」はっ

藍「っ……」ぐすっ


めぐみ「なにやってんのこんな家の前なんかで……二人が喧嘩なんてしてるの初めて見たよ……!」

藍「ご、ごめんなさい……」


美穂「いいわ……中に入りましょう。今日は私たち3人しかいないものね」すたすた



めぐみ「あ、藍……どうしちゃったの? そんなに泣いて……」なでなで

藍「ううん、なんでも、何でも……ないの……///」




美穂「めぐみ、ちょっと来て」


めぐみ「う、うん……?」



藍「…………」

めぐみ「…………」


美穂「藍……ちゃんとあなたの口から言いなさい」


めぐみ「ちょ、ちょっと何なの……美穂怖いよ」



藍「…………」


藍「め、めぐみ……」



藍「私……撫子のことが……好きなの……!」


めぐみ「え……」



藍「ごめんなさい……ごめんなさい……!///」ぽろぽろ


めぐみ「あ、藍……?」


美穂「…………」

藍「あ、あのね……めぐみが撫子と付き合ってること、私ずっと知ってたの……」

めぐみ「!」



美穂「……撫子もめぐみも隠そうとしてたけど、あなたたちは高2の春から付き合いだしたのよね」


めぐみ「…………」



めぐみ「なんだ……知ってたんだ……みんな」


美穂「ええ知ってたわ。そして……まだその関係は続いてるということもね」

藍「…………」



美穂「ごめんね、めぐみ……改めて、今のあなたと撫子のことをちゃんと説明してほしいの。今日は撫子は帰ってこないわ……実家に帰ったから」


美穂「だから……今夜全部話し合いましょう。私たちがそれぞれ、今までずっと隠してきた秘密を」


めぐみ「…………」


めぐみ「うん……わかった。全部言う」

めぐみ「高校二年になって……私と撫子が初めて同じクラスになった時、私は撫子に一目惚れしちゃって、止まんなくって……すぐ撫子に告白した」


めぐみ「玉砕するだろうなと思ってたけど……撫子は了承してくれた。女同士なのに全然、そんなの気にしないみたいで」


めぐみ「そこから一年たって、私たちがみんな一緒のクラスになっても……ずっと付き合ってた。付き合ってることは内緒にしようって二人で決めたから、藍にも美穂にもばれないようにしてたつもりだっんだけど……なんだ、みんな知ってたんだね」

藍「…………」


美穂「めぐみ……そのお付き合いは、三年生の間もずっと続いていたのよね?」

めぐみ「う、うん」


美穂「そして……今でもまだ、続いているのよね」


めぐみ「……うん……たぶん」


藍「…………」



めぐみ「たぶん、続いて……る……」


めぐみ「続いてると、私は思ってる……」


めぐみ「だって、別れようなんて言ったことないし、言われたこともないから……!」



美穂「……めぐみ、あなたの今の気持ちを聞かせて」


めぐみ「今の、気持ち……」

藍「…………」

めぐみ「私たちはずっと付き合ってたんだけど……受験期に入って、私と撫子の距離は離れちゃった。二人とも、進路が違ったから」


めぐみ「撫子は進学するために、ずっと勉強してて……私も、邪魔になっちゃうんじゃないかって思って、ちょっと遠慮してた。それでも電話とかはしてたんだけど……デートとかは、あんまりなくなった」


めぐみ「そのあと大学に受かって、卒業して……撫子はこっちに移った。私はしばらく、地元に残ったままだった。付き合いをどうするとか、そんな話はしなかった……」


めぐみ「今はこっちに来て、また一緒になれたけど……高校卒業してから今の今まで、一回も別れ話なんてしたことないの」


めぐみ「だから、まだ付き合ってる……そう思ってた……」


めぐみ「誰にも言ってないけど……本当は、前のバイト先に無理言ってこっちに来させてもらったの……! 撫子とずっと一緒にいたかったから……!」



藍「私は……最低よ」


めぐみ「えっ……!?」



藍「めぐみと撫子が付き合っているのもわかってるのに、進路まで撫子と一緒にして、地元から離れて密かに一緒に住んで……」


藍「私は……めぐみから、撫子を奪った……!!」


めぐみ「あ、藍……!」



藍「二人が離れることをわかってた! だからそこに付けこむように、自分の進路まで捻じ曲げた! 撫子と同じ大学に入ること、めぐみには隠して……横取りするように、撫子を連れてこんなところまで来た……!///」

めぐみ「…………」


藍「最低……最低の、弱虫よ……///」ぽろぽろ

美穂「藍……」

藍「私には……答えが選べなかったの……」


藍「出会った時から、一番最初からずっと撫子が好きだったのに……撫子にはもうめぐみがいたから、想いを伝えることができなかった……」


藍「めぐみも大事なお友達だったし、在学中に告白でもして、撫子もめぐみも失うなんてことにはなりたくなくて……ずっと告白はしなかった。いえ、できなかった……」



藍「でも……でも卒業が近くなってきた頃には気づいてしまった……!! 高校が終わっちゃえば、もう私はみんなと一緒にいることができないんだって……!」


藍「学生だから、クラスメイトだから、撫子の隣の席だから、だから私はずっと撫子と一緒にいられた……付き合ってないのに、それはまるで付き合ってるみたいに楽しかった。でも卒業して離ればなれになったら、もう一生想いをちゃんと伝えられる機会なんてなくなっちゃう……」


藍「勉強という名目で一緒にいることもできなくなって、私は撫子に想いを伝えないまま卒業していくのかって……でもそんな未来と、めぐみとの関係を失うことを天秤にかけることさえ怖くて、私は答えを引き延ばすように撫子と同じ進路をとった……」


藍「私には、撫子を繋ぎとめておける力がなかったの!! でも友達を失う恐怖にとらわれて、かけらの勇気も出せなかったのよ……!!」


めぐみ「あ、藍……っ」



藍「そして……撫子はそんな私にまで、気づいてた……」


藍「撫子はめぐみと付き合ってたはずなのに、私を受け入れてくれた……私なんかより正式に付き合ってるめぐみの方が大事なはずなのに、撫子は私まで一緒に守ってくれた……///」


藍「撫子は、ずっとそういう人だよね……私たちの誰一人として、欠けることなく守ろうとするの。全員が全員幸せになれるような答えを、ずっと真剣に追いかけてる……」


藍「例え彼女がいたとしても、目の前の私を助けてくれる……撫子はそういう人。わかってた……だから、ずっと大好きだった……///」


藍「私は撫子のそんな気持ちが嬉しかった……けどそんな優しさに甘えて、めぐみのことから目を背けてた! 本当に撫子のことが好きなら、めぐみにちゃんと言わなきゃいけないのに……ずっと怖くて怖くて、言えないまま奪うようなことをして……!///」


藍「ごめんね、めぐみ……ごめんなさい……!」ぎゅっ



藍「撫子と別れてなんて、言うつもりは無いわ……ただ……こんな私を許して欲しいの……」


藍「私は……めぐみのことも、大好きだから……!///」ぽろぽろ


めぐみ「…………」

美穂「めぐみ……私も、めぐみにはいっぱい謝らないといけない……」


めぐみ「えっ……」


美穂「私も、藍と同じ……めぐみと撫子が離れることがわかってたから、そこに付け入ろうなんて邪な考えをもってたこともあったわ。でも私は弱いから……藍のように自分の進路まで変えられるほどじゃなかった……」


美穂「それなのに、仕事場が近いからって理由で、ルームシェアを持ちかけて……私が一番撫子から遠い存在なのに、一番ぐいぐいと卑怯なアプローチをしてた……」


美穂「勝ち目なんてないのに、最初からわかってたのに、なんでかしらね……///」ぽろぽろ



めぐみ「や、やめて……やめてよ……」


めぐみ「私の方が、みんなに謝らなきゃいけないこと、たくさんあるのに……!!」



めぐみ「私は二年になってから撫子と付き合った! 撫子と初めて会ったのがそこだったから、だけど……だけど私が付き合う前、一年生の頃に美穂は撫子と付き合ってたんでしょ!?」


美穂「!!」


藍「そ、そうだったの……!?」


美穂「…………」

めぐみ「美穂はね、本当は高校に入るよりもずっと前に……撫子と出会ってるの! 撫子も美穂のことを覚えてて……高校に入って再開を果たした二人はすぐに付き合った。撫子が前に話してくれことだから、それは本当のことなんだよね……?」


美穂「……ええ。一年の頃……私は撫子としばらく付き合ってた」


めぐみ「美穂と撫子は、二年に上がってクラスが離れた……そこに何も知らない私が来て、勝手に撫子に告白しちゃった。でもあの時だって撫子は、まだ美穂と付き合ってたんだよね……!?」


美穂「……ええ」

藍「そんな……! じゃあ撫子は、なんで美穂を……」


美穂「……私が、そう言ったから」



美穂「……私たちの付き合いがこんなに長続きするなんて、そのときは思えなかった。学生同士の、それも女同士の恋なんて……絶対に長続きするものじゃない。それがわかってたから……それでも撫子とずっと一緒にいたかったから、クラスが離れて一人になった私は、撫子と友達に戻ることを決めた……」


美穂「『園川さんって子に告白されちゃった』って私に相談してきて……私はそのときめぐみのこと何も知らなかったけど……一目見て、撫子をずっと幸せにしてくれる人って思えたから、私はめぐみを信じた……」


美穂「ふふ……三年になってまた撫子と一緒になって、今こうして曲がりなりにも撫子と一緒に住んでるなんて……当時の私は考えもしなかったのよ……///」



美穂「でも、あのとき友だちに戻らなければよかったなんて思ってはいないわ! 私は今の自分が好き! 今この瞬間、撫子も藍もめぐみもみんなのことが大好き! みんなとずっと、一緒にいたい……!///」


美穂「だから、めぐみは撫子と付き合って、正解だったのよ……!」


めぐみ「美穂ぉ……」



めぐみ「わたし……わたし、本当ずるいね……」ぽろぽろ


藍「めぐみ……」ぐすっ



めぐみ「付き合ってるなんて、形にも残らない約束だけをとりつけて、それで撫子を縛って……美穂から撫子を奪って、藍の想いまで閉じ込めて……」


めぐみ「撫子と付き合ってる毎日は、本当に楽しかった……でもその陰で、みんなはずっと苦しんでたんだね……」


めぐみ「ごめんね……私ばっかり……ごめんねぇ……///」


美穂「いいのよ……めぐみはそれで、よかったのよ……!」ぎゅっ

めぐみ「……藍」


藍「な、なに……?」



めぐみ「撫子に……告白してよ」


藍「えっ……!?」



めぐみ「私と撫子、ずっと離れてたし……言葉の約束が残ってるだけで、今は藍の方が撫子の彼女には近いでしょ。私がこっちに来なければ、藍はもっと早く撫子に告白できたかもしれないのに……ごめんね」


藍「そ、そんなこと……!」


めぐみ「いいの……もう、いいんだよ、藍」


めぐみ「撫子の彼女は……藍だよ」


藍「!!!」



めぐみ「私も……撫子と、ちゃんと別れるね」

美穂「め、めぐみ……」


藍「そんな……!! めぐみだって……撫子のこと、好きなんでしょう!?」


めぐみ「うん。大好きだよ……」


めぐみ「でも、今の私にとっては……この四人でずっと一緒にいることの方が大事なの……!」


藍「っ……」



めぐみ「もう私の番は、終わりだから。だから、藍の番なんだよ!」


めぐみ「藍のこと……ずっとずっと、応援するよぉ……!!///」


藍「うっ……うぅぅ、あぁぁあぁ……///」ぽろぽろ


美穂「藍……」ぎゅっ


めぐみ「藍……私たちは、藍のことだって大好きなんだよ……?」なでなで


美穂「あなたのこと……私たちはずっと見てたもの。その顔を見てるだけで、本当に本当に撫子のことが好きなんだって、よーくわかるの……」


めぐみ「おめでとう、藍……」


美穂「私たちは、あなたの幸せを……誰より強く願っているわ……///」


――――――
――――
――

<夜>


撫子『……もしもし?』


美穂「もしもし……ごめんなさいね、こんな夜中に」


撫子『ううん、むしろ……私のお願い聞いてくれてありがとね……美穂』


美穂「……藍とめぐみは、寝ちゃったわ。二人とも、泣き疲れたみたい」


撫子『……そっか』



美穂「……めぐみも、藍も、答えが出せたと思う。あなたが帰ってきたら……ちゃんと自分の口から言えるはずよ」


撫子『……美穂は?』


美穂「えっ?」


撫子『美穂は……答えを出せたの?』


美穂「…………」



美穂「私ね……今、本当に心から、晴れやかな気持ちなの」


撫子『…………』


美穂「それはきっと、私が……いえ、私たちがみんな、一番いい道に進めてる気がするからだと思う……」


美穂「だから、私はこの答えを信じる……過去のことなんかどうでもいい、今この瞬間の気持ちを一番大事にしたい……!」



撫子『……ひとつだけ、言わせて』


美穂「……なに?」


撫子『私は……美穂のことも、大好きなんだからね』


美穂「…………」


美穂「……早く帰ってきてね、撫子。待ってるわ♪」


撫子『うん……ありがとう……///』

【8話:とある休日の昼さがり】


めぐみ「えへへ、デートかぁ……///」


美穂「なぁに? ニヤニヤしちゃって」

めぐみ「だって見たでしょ? 出かける前の藍の顔! あんなに嬉しそうな藍初めて見たよ~」

美穂「まあ、正式に付き合って初めてのデートだもの……そりゃああなっちゃうわよね」


めぐみ「今頃何してるんだろなぁ、撫子も藍も……」

美穂「そんなに気になるなら探しに行ってみる? まだ間に合うかもよ」

めぐみ「いやいいって……! 潜入はこの前の大学の件で懲りてるし……」

美穂「冗談よ。こんな良き日に……邪魔立てなんて野暮なことはしないわ」


めぐみ「んー、それにしてもせっかくの休みだし……私も何かしたいなぁ」

美穂「あら、じゃあ私たちもデート行く?」

めぐみ「ええっ!? わ、私と美穂で!?///」

美穂「だめ?」

めぐみ「だ、だめじゃないけど……なんか、行きたいとこあるの?」


美穂「……行きたいところってのは、特にないわね」

めぐみ「ないんかい!」びしっ

美穂「というか疲れちゃうでしょ、デートなんて。たまの休みの日くらいゆっくりしましょうよ」

めぐみ「あ、良いこと言うじゃん! 私も立ち仕事ばっかりで身体が大変なの~」ごろん



美穂「それじゃ今日はめぐみにマッサージでもしてあげようかな。うつ伏せになって?」

めぐみ「えーいいの? 嬉しい~」


美穂「いつも大変でしょう? ほらふくらはぎとかパンパンじゃない」

めぐみ「そーなんだよー……大変だよねぇ社会人って」

美穂「今日はエステティシャン美穂ちゃんがめぐみを癒してあげる♪」もみもみ

めぐみ「うぉー効くぅ~……?」

――――――
――――
――



めぐみ「ん~……はい、じゃあそろそろ交代!」

美穂「ん?」


めぐみ「私も美穂にマッサージしてあげる。私だけしてもらうのもなんでしょ?」

美穂「い、いいの?」

めぐみ「ほらほら、横になれ~」

美穂「きゃあん?」


めぐみ「どこが凝ってるとかある? もんであげるよ」

美穂「ん~……おしり!」

めぐみ「真面目に答えて」

美穂「あら、本当なのよ? 私デスク作業多いから腰とかおしりとか結構来るの~」

めぐみ「そうなの? ……じゃあおしりいくけど」もみもみ



美穂「んぁぁん……きもちぃ~……///」

めぐみ「へ、変な声出さないでよ……」

美穂「いいじゃない、今日は私とめぐみしかいないんだし……」

めぐみ「そ、そうだけどさ」


美穂「あっ……んゃ、んぅぅ……」

めぐみ(美穂の声……えろいんだよなぁ……///)

美穂「ねえ……もっと下」

めぐみ「ここ?」


美穂「もうちょい下」

めぐみ「こ……ここ?」


美穂「じれったいわね、ここを触ってっていってるの」ぱしっ

めぐみ「ちょ……!///」


美穂「手……動かして」

めぐみ「ねえ、これは……やばいって……」

美穂「おねがい、ここが凝ってるの」

めぐみ「こんなとこ凝らないでしょ! 何に使ってるわけでもないのに!」

美穂「ええ、その通り……使ってない。ここしばらく使ってないわ……ご無沙汰なの」


美穂「だから今日は、めぐみにいじってほしい……///」

めぐみ(……!)ぞくっ



美穂「めぐみ……もっとこっちに来て」

めぐみ「そ、そんな……こんなの……///」


美穂「めぐみは私と……嫌?」

めぐみ「いやじゃない! いやじゃない、けど……」


美穂「撫子と藍がいなくて、私とあなたが二人きり……こんな日、これからもそうそうないでしょ」


美穂「めぐみだって……溜まってるんじゃない?」さわさわ

めぐみ「!」びくっ


美穂「ほらほら……どう?」

めぐみ「や、やぁ……っ、んん……!///」

美穂「うふっ、可愛い……?」


めぐみ「み、美穂ぉ……」

美穂「めぐみ……ここに寝て」とさっ

めぐみ「……?」


美穂「私の目を見て……今から大事なことを言うわ」

めぐみ「え……」



美穂「めぐみ……私は、あなたのことが好き」

めぐみ「っ!!///」


美穂「ふふ……ごめんね、こんな中途半端なときに告白しちゃって……」


めぐみ「なんで……いつから……」


美穂「いつからか……そんなのは忘れちゃった。でも勘違いしないで欲しいのはね……私は撫子を諦めたからめぐみに流れてるんじゃないのよ」

めぐみ「……!」


美穂「そりゃあ高校の頃は、めぐみは普通のお友達だったけど……今はあの時と、全然違うの」


美穂「あなたがここに来てくれた日。ここに住むようになった日……私は、本当に嬉しかった」


美穂「そしてあなたが頑張ってる姿を、今までずっと見てきて……なんだかほっとけないのよ、あなたのこと……///」


美穂「めぐみが嫌ならやめる。もう絶対こんなこともしないって誓う。でも……」


美穂「めぐみは……私のこと好き……?///」


めぐみ「っ……///」どきっ

美穂「あのね、私が藍に、撫子やめぐみに想いを伝えろって言ったのは……藍のためでもめぐみのためでもあったけど、本当は自分のためでもあったのよ」

めぐみ「え……?」


美穂「だって、藍が動かなかったら……めぐみはいつまでも撫子の彼女だったんだもの。私……それじゃめぐみに近づけないじゃない……」

めぐみ「み、美穂…………!」


美穂「愛に飢えてるから、こんなことしてるんじゃないの……残された選択肢にすがってるわけじゃないの」



美穂「私は、心から……めぐみを、愛してる」



めぐみ「…………」ぽろぽろ


美穂「めぐみ……?」



めぐみ「ばかだな、私……また美穂を見てあげられてなかった……」


めぐみ「こんなに近くにいたのに……ずっと隣で、私を思ってくれてたのに……///」

美穂「…………」

めぐみ「私……本当の正直な気持ちを、ちゃんと言うよ」


美穂「ん……」


めぐみ「あのね……美穂のこと、そんな風に思ったことはなかった……」


めぐみ「こんな私なんかのことを、好きでいてくれてるのに……それに気づいてあげられなかった……ごめんね……///」


美穂「…………」


めぐみ「今からでも……間に合うのかなぁ……」


美穂「!」


めぐみ「私、美穂のこと……もっともっと知りたいよ! もっとちゃんとわかってあげたい……!」ぎゅっ


めぐみ「……私も、美穂が、大好きだから……///」


美穂「め、めぐみぃ……!」

めぐみ「えへへ……よろしくね、美穂……♪」ちゅっ

美穂「んっ……!///」


めぐみ「ふふ……どうしたの、泣いちゃってるよ……///」


美穂「ん……嬉しい、嬉しいのよ……///」



めぐみ「これからも、ずっと一緒だよ……ずっと、ずっと」


美穂「めぐみ……ありがとう……///」


めぐみ「こちらこそ。美穂の気持ち、すごく嬉しいよ……」にこっ


美穂「ねえ……もっと、もっとキスして……!///」


めぐみ「ふふ……撫子たちが帰ってくるまで、いくらでもしてあげる」ちゅっ


美穂「ん……」ぎゅっ



めぐみ「あと、こっちも……してもいいよ?」

美穂「えっ……よ、よかったの?」


めぐみ「美穂がしたいっていうなら……えへへ、ちょっと久しぶりだけどさ」

美穂「し、したいっ! めぐみと……したい……///」

めぐみ「うん……わかった」


美穂「ねえ、めぐみ……」

めぐみ「ん?」


美穂「私……こんなこと、撫子ともしたことないのよ……?///」

めぐみ「!」ぞくっ


美穂「あなたが……初めてなの……///」


めぐみ「……ちょっと、美穂」きゅっ

美穂「んっ……?」


めぐみ「ごめん、私……今日は止まんないかも……!///」

美穂「ちょ、え……? きゃっ……!///」とさっ


めぐみ「美穂の可愛い部分……私しか知らない顔……いっぱい見つけたい……」ちゅっ


美穂「あ、あぁあっ…めぐみ……///」


――――――
――――
――

【9話:寝相のわるさにかこつけて】


<真夜中>



美穂「……ん……」




美穂「ん~あっつい……///」ぬぎぬぎ


美穂「…………zzz」



めぐみ「…………zzz」むにゃむにゃ



めぐみ「んー……明日の……仕込み……」


めぐみ「やります……やりますぅ……」もぞもぞ


ぎゅっ


美穂「………ん~…」


めぐみ「生地を……こねて……」もみもみ


美穂「あんっ……やぁ、もぉ……///」ぴくっ




藍「…ん………」むくっ


藍(トイレ……)ふぁぁ



藍「…………」じっ


藍(ん……!?)びくっ



めぐみ「……あれぇ、固い~……」もみもみ


美穂「んぁ……ん、らめよぉ……///」くすくす


藍(きゃーーーーっ!!///)


藍(みっ、みみみみ見てない見てないから……私は何も……!)


藍(この二人……何のつもりなの~……!?///)



<翌朝>


藍「二人とも! 仲が良いのはわかるけど……ああいうのはどうかと思うわ!///」


めぐみ「どしたの藍、何の話?」

美穂「二人ともって……もう一人は私のこと?」

藍「そうよ、美穂とめぐみ! 昨日の晩何してたか自分でわかってるの!?」


めぐみ「昨日の……」

美穂「晩??」ぽかん



撫子「いや昨日の晩じゃなくてもいいけど……朝起きて二人見てびっくりだよ、半裸で抱き合ってんだから……この家でわいせつ行為は許さないよ」

藍「そうそう!」


めぐみ「またその話かぁ……だから違うんだって、寝てたらいつも勝手にそうなっちゃうの~」

美穂「そうよ、好きでやってるわけじゃないわよ。朝起きたらいつもめぐみが私にのしかかってて……私だって参ってるわ! 被害者よ!」

藍「本当に寝相なの……!? 私にはわざとやってるようにしか見えないけど……!///」

めぐみ(まあ、一応わざとじゃないんだけど……)

美穂(ほとんどわざとよね……)



撫子「私も藍の意見に同意……だいたい美穂はなんでいつも朝起きると服が脱げてるの?」

美穂「だから何度も言ってるじゃない。私は暑がりだから、ちょっとでも暑いと思ったら寝てるときでも無意識に服脱いじゃうみたいなのよ。親が言うには4才からずっとそうらしいわ」

藍「なにそれ……」


撫子「……めぐみは?」

めぐみ「私も寝相悪すぎってよく言われるけど……抱き枕があれば多少改善するんだって。だからほら、この抱き枕いつも使ってるの」ぽんぽん

撫子「それいつも使ってないじゃん! いつも早々に部屋の端っこまで蹴っ飛ばして、そんで隣の美穂に抱きついてるよ!」

めぐみ「えーわかんないよ! 寝てるときの記憶がないんだもん! しょうがないよ!///」



藍「はぁ……これはもう、寝床改革ね」

撫子「そうだね……風紀を守るためには仕方ない」


めぐみ「あーこんな時間だ! ごめんみんな、私仕事行くね!」ばっ

美穂「あっ、私ももう行かなきゃ……じゃあねー皆、ばいば~いっ」たたたっ


藍「…………」

撫子「よし……今夜から場所を移そう」

藍「そうね……これからも住み続けていくんだから、ここらで改善しないと!」



<夜>


撫子「めぐみ、テーブルあげるからそっち持って」

めぐみ「えっ? 掃除でもするの?」

藍「違うの、今日から部屋をふたつに分けて寝るのよ」

めぐみ「あー、朝言ってたやつか~」


美穂「ちょっと、私場所移りたくない~! エアコンの近くがいいのぉ!」

撫子「わかったよ、美穂の場所は今までどおりでいいから……他を動かすね」


めぐみ「面倒だなあ、これから毎日寝るときはテーブル移動させて布団敷くの?」

藍「風紀を守るためなのよ」


撫子「今までの部屋に美穂と藍、新しく作った方の部屋に私とめぐみが寝るから。オッケー?」

めぐみ(ちぇー、美穂と離れちゃうのかぁ……)ぷくー


美穂「ちょっとめぐみ、ねぼけて撫子を襲っちゃだめだからね!」

藍「あなたはいつも襲われてたのよ!?」

めぐみ「ふぁ~眠……私もう寝る~……」ごろん



<その真夜中>


めぐみ「………ん…」むくっ


めぐみ(といれ……)よたよた



じゃーっ


藍「…………」すぅすぅ



めぐみ「ん~……」ばたっ


藍「んぁっ……なに……?」



めぐみ「…………」むにゃむにゃ


藍「ちょ……っとめぐみぃ……! あなたの布団はあっちでしょう……!///」


めぐみ「…………zzz」もぞもぞ


藍(ひゃっ……!///)ぞくっ


めぐみ「ん~……ふわふわ……ケーキ……」もみもみ

藍「っ!?」


藍「ば……っかぁぁぁ……!!///」ぺちん


めぐみ「んわぁっ……!」


藍(やってられないわ……向こうの布団に逃げなきゃ……!)


――――――
――――
――

<翌朝>


撫子「……で、なんで藍とめぐみは寝る場所入れ替わってるの?」


藍「違うのよ! めぐみが夜中に、トイレ行った帰りに私の寝てるところにのしかかってきたの~!」

めぐみ「ごめ~ん……たぶん寝てる場所が急に変わっちゃったから、今まで寝てる所に帰っちゃったんだよぉ」


美穂「あははは! そううまくはいかないものなのね~」

撫子「あんたはなんでまた裸なの!?」

美穂「暑かったからよ」



めぐみ「ごめんね藍、私やっぱりだめみたい! もう子供の頃からこんな感じだし、いまさら直らないよぉ」

美穂「同感で~す」

藍「そんなこと言ったって、このままじゃあ……!///」

撫子「まあまあ仕方ないよ……とりあえずこのまま部屋は分けて、藍と私は向こうに避難しよう」

藍「ん~……」



<その日の深夜>


撫子「…………」すぅすぅ


藍(これはこれで……なんか寝られないじゃない……!)もんもん


藍(撫子と二人きりだし、向こうの部屋は閉まってるから見えないけど……だからこそとんでもないことしちゃってるんじゃないかって気になっちゃうしぃ……!///)


藍(ど、どうすんのよ……めぐみがまた裸の美穂の上に覆いかぶさって……)


藍(昨日私にしたみたいに、か、身体を……!///)かあああっ


藍(いっ、いけない! いけないわ!)ふるふる



藍(…………)



藍(わたし……溜まってるのかなぁ……///)はぁ



撫子「ん……」もぞっ


藍「っ?」


撫子「…………」さわさわ


藍(ひゃっ!!///)


撫子「…………」ぎゅっ


藍「うあぁっ……///」


藍(近い! 近い! 撫子近い~っ!)


撫子「…………zzz」


藍(なによもう……私以外全員寝相悪いじゃないの! まさか撫子まで……!)


藍「…………」じっ

撫子「…………」すぅ


藍(う……///)


藍(そ、そうよ……みんな寝相が悪いの。だから寝相のせいにすれば、誰も文句なんか言えない……!)


藍(今なら誰も……見てない!///)ぎゅっ


撫子「ん……」むにゃ


藍(撫子~~っ……?)ぎゅー


――――――
――――
――

<翌朝>


ぴぴぴぴぴ……


めぐみ「ん~…………はっ!」ぱんっ


めぐみ「あ……あー朝か……」


めぐみ「今日は早く行って仕込みしなきゃ……ふぁぁ……」むくり



めぐみ「顔あらお…………ん?」ぴくっ


めぐみ「な、なぁっ……!!///」


撫子「…………zzz」

藍「ん~……///」すりすり


めぐみ「わっ……わぁーー! わぁ~~~~!!///」ぶんぶん



撫子「んっ……なにめぐみ、もすこし寝かせてよ……」

めぐみ「いやいやいや! ちょっと藍なにやってんの! 人のこと言えないじゃん!///」

藍「あっ……? ひ、ひがうのよこれは……ねぞうが……」むにゃ

めぐみ「うそつけー! 顔がにんまりしてるよ~!」ぐいぐい


美穂「もー朝からうるさいわね、何してるのよぉ」

めぐみ「あんたは服着てきてよ!!///」

美穂「いつも言ってるでしょ、暑いときは服着たくないの」

めぐみ「今日涼しいでしょ! 外雨降ってるよ!!」


撫子「も~、るっさいなぁ……もう誰がどう寝ようがどうでもいいや……」

藍「私も……みんなのこと気にしないわ……///」

美穂「あーあ、私も二度寝しようかしら」もぞもぞ

めぐみ「こら! 二人の間に潜り込むな~!!」

【10話:スイート・タイム】



美穂「たっだいま~」がちゃ

めぐみ「あ、おかえりー早いね」


美穂「仕事が一段落ついたから、今日は早めにあがれたの。撫子たちはまだ学校?」

めぐみ「そうみたい。でももうすぐ帰ってくるでしょ」しゃかしゃか


美穂「……何を作ってるの?」

めぐみ「えへへ、わからない?」


美穂「全然見当もつかないわ。餃子?」

めぐみ「いや見当はつくでしょ! こんなに甘い香り漂ってるんだから餃子なわけないじゃん!」

美穂「冗談よ、シュークリームでしょ」

めぐみ「あたりー! 生シューでしたー♪」


美穂「今生地を焼いてるとこなのね。うわっ、クリームこんなに使うの!?」

めぐみ「えへへ、ちょっと作りすぎちゃった。まあ生クリームは何にでも使えるじゃん? 朝ごはんの食パンとかさ」

美穂「めぐみ……あなたお菓子屋さんなんだからもう少しマシな使い方しなさい」

めぐみ「えーおいしいんだよ?」



美穂(……♪)ぴこん


美穂「ちょっとこれ混ぜさせて?」

めぐみ「ん? いいけど」

美穂「……~♪」しゃかしゃか


めぐみ「んーもうちょっとかなぁ、まだふくらみが足りな……」


美穂「えいっ!」ぺちょっ

めぐみ「いぎゃーー! 何!?///」びくっ


美穂「あーん手が滑っちゃったぁ♪」


めぐみ「ちょ、ばかー! 今『えいっ!』って言ったじゃん! わざとぶっかけにきてたじゃん!」

美穂「誰にでもミスはあることじゃない。それにほら、これでシュークリームにちょうどいい分量になったんじゃない?」


めぐみ「そういう問題じゃなーい!! ああもう服が~……うわ髪にもついてる!?」

美穂「ごめんごめん、服脱ぎましょうか」

めぐみ「うぇぇ、脱がして~……」



美穂「…………」するっ


美穂「あーむっ♪」ぱくっ

めぐみ「ひゃっ!!///」


美穂「わーあま~い……?」

めぐみ「何やってるの!? 変なとこなめないで!!」


美穂「違うのよ、クリームがついちゃってるからとってあげないとでしょ?」

めぐみ「いやいいって! シャワー浴びるから!」

美穂「シャワー浴びてる間に生地がこげちゃったらどうするの~?」

めぐみ「……!」はっ

美穂「うふふ、めぐみってやっぱり肌綺麗ね~……///」

めぐみ「や、やめてよ……やばいってぇ……」


美穂「これクリームの甘さだけじゃなさそうね~。ずっとお菓子屋さんで働いてるからめぐみ自身も甘くなっちゃったのかな?」

めぐみ「そんなわけあるかぁ!」


美穂「いやいやありえるわよ、ほらここもプリンみたいに柔らかいじゃな~い?」

めぐみ「ちょっ……もー、美穂っ!」ぐいっ

美穂「きゃっ……!」


めぐみ「す、するなら……ちゃんと、布団いこうよ……///」


美穂(う……///)むらっ



美穂「ひ、卑怯よめぐみ……その顔は……」ぎゅっ

めぐみ「ちょっ、だから……!」


美穂(そんな顔されたら、私だって……!)ちゅっ

めぐみ「ああっ……!///」


「きゃーーっ!!///」


美穂「っ!?」びくっ

めぐみ「うわー!?」



撫子「……あーあ、やっぱりこんなことだろうと……///」

美穂「ちょ、ちょっといつの間に帰ってきてたの!? 音しなかったけど……」


藍「だ、だってめぐみの悲鳴が聞こえたから! 泥棒にでも入られちゃったのかと思って、こっそり入ってみたんだけど……」

めぐみ「え、え~……」


藍「な、なにしてたの、そんな裸で……///」

美穂「こっ、ここここれは違うのよ!? めぐみが生クリームついちゃったっていうから仕方なく服を脱がして仕方なく綺麗にしてあげようと……!」

めぐみ「仕方なくじゃないじゃん! 思いっきり美穂がぶっかけてきたんでしょうがー!」


撫子「い、いやいいよ、今ならまだ見なかったことにできるから……私たち夕飯の買い物行ってくるね」そそくさ

美穂「ちょっとちょっと、そんな目で見ないで!? 私べつに念願の生クリームプレイをやりたかったとかそういうのじゃないのよ!」

めぐみ「全部自分で言っちゃってるじゃんか!!」


藍「い、いいのよ本当に……ただこれからは、もっと気をつけてこっそりお願いね……///」たじたじ

美穂「ああっ、待ってぇ~!」




撫子「…………」


藍「…………」


撫子「……あの二人、進んでるね」

藍「そ、そうね……///」


撫子「……いつの間にか、追い抜かされちゃったかな」

藍「!」どきっ


藍「あっ、あ、あの……」

撫子「?」


藍「わ、私も……撫子がしたいっていうなら……いつでも、OKなんだけど……///」

撫子「っ……///」


撫子「……っふふ、あははは!」

藍「わ、笑うことないじゃない!」


撫子「いやいや、はぁ……藍って意外と、なんだね」

藍「ちっ、ちがうわ! 少なくともあの二人よりそんなのは全然あれなんだから!///」


撫子「いいよ。私も」

藍「……えっ」


撫子「藍が望むなら……生クリームでもなんでも、やってあげる」

藍「ふ、普通ので……いいです……///」


撫子「じゃあ、二人っきりになれたら……だね」

藍「ええ……」ぎゅっ



撫子「……ところで帰ったらさ、あの二人に付き合ってるかどうか問い詰めてみない?」

藍「えっ……そんなの100%クロに決まってるわよ」


撫子「いやまあ、そうなんだけど……ちゃんと言ってもらいたいじゃん。私たちが付き合ってるのは知られてるんだから、向こうだって秘密にしちゃだめでしょ」

藍「……ふふ、それ高校時代ずっと付き合いを隠してた撫子の意見とは思えないわ」

撫子「そ、それはだって……昔と今は同じようで違うじゃん。もう私たち4人は、家族みたいなもんでしょ?」

藍「ええ、そうね……///」


撫子「さ、帰ってごはんにしようか」

藍「どうする? 帰ってもまだやってたら……」

撫子「そしたらもう……ホテルでも行って時間つぶす?」

藍「///」ぽっ

【おまけ】

<朝>


藍「け、結婚式!?///」


美穂「そう。二人の式を挙げたいなと思って」

めぐみ「そっかそっか、美穂ウェディングプランナーだもんね! そういうの得意じゃ~ん!」


撫子「う、嬉しいけどさ……お金もかかるし、あまり人目に触れるのは困るし、ちょっとなぁ……///」

美穂「どんだけ盛大な式あげるつもりよ。この家の中でやる小さい式よ」

藍「あ、なんだ……」


美穂「でもちゃんとしたやつにしてあげるわよ? 私にはドレスのツテもあるし、ウェディングケーキ係りだってここにいるし」

めぐみ「それ私!?」


撫子「そっか……そう考えると二人とも良い職業ついてるよね……///」

藍「そういうことなら……やってみてもいいかもね」


美穂「うふふ、思い出に残る日を作りましょ♪ いつがいいとか決まったら、すぐに言ってね」


撫子「うん……あっ、もうこんな時間だ」

藍「あら、急がなきゃ。遅刻しちゃうわ」

めぐみ「あ、私もそろそろだ」



藍「じゃあ二人とも、私たちもう行くわね」

撫子「美穂は今日お休みなんだっけ? 夕飯よろしくね」

美穂「はいはい、任せちゃいなさ~い」

藍「行ってきま~す」

ぱたん


美穂「…………」にやり


めぐみ「私もそろそろ行か……わぁっ!」


美穂「えへへ、めぐみ~……今日は帰り何時くらい?///」ぎゅっ

めぐみ「きゅ、急に人が変わったね……でも今日は8時くらいには帰ってこれるかな」


美穂「あらよかった! 待ってるわね~」にこっ


めぐみ「よーし、それじゃ行ってくるね」

美穂「あっ、ちょっと~……行って来ますのチューは?」


めぐみ「え、今日も……? もう甘えん坊さんだなぁ……撫子たちに見られてない日は毎日したがるね」くすっ


美穂「お願い……///」んー


ちゅっ


美穂(もっと、もっと強く……?)きゅっ

めぐみ「わぁ、ちょっと美穂ってば……///」



撫子「大変! 忘れ物し……っ」がちゃっ


美穂「んむっ!?」びくっ

めぐみ「わぁーっ!!///」



撫子「あ……///」かああっ


美穂「なっ、撫子っ……違うわよ!? これは別に行ってきますのチューとかじゃないの!」

めぐみ「いや言っちゃってるし!!」がーん


撫子「だ、大丈夫だから、私忘れ物取りにきただけだから……藍には言わないでおいてあげるから……」そそくさ

美穂「引かないでぇ! 撫子にもしてあげるからぁ!」


撫子「いいっていいって! お、お幸せに~!///」がちゃっっ

めぐみ「ま、待って撫子! 私じゃないからね!? 美穂がしたいって言い出したんだからね!?」たたたっ

美穂「あー! ずるいわよめぐみ! ちょっ、待ちなさ~い!」



~fin~

ありがとうございました。

1月末の【撫子「世界で一番可愛い花」】、3月末の【櫻子「めぐみの雨と、恋で咲く花」】、そして今回となでみほ・なでめぐ・なであいが書けてよかったです。

またどこかでよろしくお願いします。

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