提督「ケッコンカッコカリか……」 (42)

大本営から書類一式と指輪が送られてきていた。
これを使うことで、艦娘とケッコンカッコカリができる。
ケッコンカッコカリすることには、艦娘の力を最大限に引き出せるというメリットがある。
だが、そう簡単にケッコンカッコカリを実行するのは躊躇われた。
いくら仮のものとはいえ、結婚であるには違いない。
性能向上のためと割り切ることができればいいのだろう。
しかし、それではあまりに不誠実。俺の望むところではない。
お互いの意思の一致をみない限り、ケッコンカッコカリはしたくない。
そして、現状俺に特定の誰かと契りを結ぶ意思はない。
みんな器量も性格も良い娘ばかりだが、書類一式と指輪は一人分しかないのだ。
誰か一人を選べと言われると正直困る。

結論。今はまだこれを使う時ではない。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1432141291


青葉「おはようございまーす!」

提督「おお、青葉か」

秘書艦の青葉が入室してくる。青葉は、俺の手元に視線を向ける。

青葉「あれっ? 何ですかそれ?」

提督「お前、ケッコンカッコカリって知ってるか?」

青葉「ええ、知ってますけど……あっ、もしかして」

俺の問いかけに対し、少し訝しむような顔をするものの、すぐに俺の意図に気づいたようだ。

提督「ああ、そうだ。そのための書類一式と指輪だよ」

青葉「なるほどなるほど。ついにうちにも支給されましたかー」

青葉の目つきが鋭くなる。心なしか雰囲気がいつもと違うような気もする。

非安価スレで頼む


青葉「それで、司令官はどうする気なんです?」

提督「というと?」

青葉「誰とケッコンカッコカリするのかってことですよ」

提督「今は決めかねるな」

青葉「意中の相手がいないということですか?」

提督「そうだな……一人を選ぶとなるとどうしても迷ってしまう」

青葉「……そうですか」

少しの間、沈黙が場を支配する。

提督「……とりあえず執務を始めるとしよう」

青葉「はい」

その後、俺も青葉もケッコンカッコカリについて触れることはなかった。

だから、このときは後にあんな事態になるとは思いもしなかった。


青葉「艦娘共! 私たちの望みはなんだっ!?」

『嫁げっ!! 嫁げっ!! 嫁げっ!!』

青葉「この催しの目的はなんだっ!?」

『嫁げっ!! 嫁げっ!! 嫁げっ!!』

青葉「私たちは鎮守府を愛しているかっ!? 司令官を愛しているかっ!?」

『ガンホー!! ガンホー!! ガンホー!!』

提督「俺たちは日本海軍だっつーの……」


青葉にケッコンカッコカリの件について話してからほんの数日後。
目の前でなされる問答に俺は困惑を隠しきれなかった。

提督「これはいったいどういうことだ?」

青葉「司令官はケッコンカッコカリの相手を決めかねているとのことで」

提督「ああ……先日言った通りだ」

青葉「ですが、私たちはあの書類一式と指輪が支給され、司令官とケッコンカッコカリできるようになるときを今か今かと待ち続けていたんです。性能の向上なんて関係なしに」

提督「そうなのか?」

多くの艦娘が俺のことを憎からず思ってくれているという実感はあった。
しかし、そこまで好いてくれているとは思わなんだ。

青葉「それで、この度はケッコンカッコカリを望む艦娘たちを集めて、誰が司令官の伴侶にふさわしいか決めようということになりました」

非常に喜ばしいことではあるが、同時に悩ましいことでもある。
ケッコンカッコカリできる相手は一人だけだからだ。
一応、例外はあるのだが。


提督「具体的には何をするんだ?」

青葉「ここに集まった娘各々が自由な方法で司令官に自らの気持ちを伝えます」

それならわざわざ催しとしてやる必要はないような気もする。
そう思いはしたが、あえて口に出すような真似はしなかった。

青葉「私たちは抜け駆け禁止の協定を結んでいましてね。こういう形を取らせていただきました」

そう言って、青葉は舌をチロッと出す。どうも俺の考えを察したようだ。

青葉「もちろん全員の出番が終わって、それでもケッコンしたいと思う娘がいないのなら無理に誰か一人を選べとは言いません」

一拍置いて、青葉は再び言葉を紡ぎ始める。

青葉「ともかく司令官には私たちのアプローチのために時間を割いていただきたいのです」

提督「お安い御用だ」

男冥利に尽きるし、断る理由も特にない。

青葉「ではとりあえず執務室にいてください。少ししたら最初の娘が行きますので」

提督「わかった」

>>3
艦娘安価だけならご了承いただけませんか?
一応安価スレとして進行していこうと思っていたので……

ご指摘ありがとうございます。
とりあえず展開に窮するまでは非安価で進めていこうと思います。

今一人目を書いてる途中なのですが、いったん寝ようと思います。
今日中に少なくとも二人分は書けるように頑張りますので、ゆるりとお待ちください。

予定より帰ってくるのが遅れて、まだ書きだめができていない状態です。
投稿は深夜になると思います。申し訳ございません。


提督「最初は誰が来るかな……?」

俺しかいない執務室で一人ごちる。
やがて、扉をコンコンと叩く音が聞こえてきた。

「失礼します」

提督「おう、入ってくれ」

開けられた扉の先にいたのは、時雨だった。

提督「時雨が一番手か」

時雨「うん、駆逐艦が相手じゃ不満かい?」

提督「そんなことはないさ」

時雨「よかった」

そう言って微笑んでみせる時雨。
この微笑みには男女問わず虜となるだろう。


時雨「さて……ちょっと散歩に行こうよ」

提督「少し雨降ってるぞ」

時雨「雨に打たれながらの散歩もいいものさ」

提督「まあかまわんけどな。俺は水も滴るいい男だし」

時雨「それを自分で言っちゃうんだね……」

俺が椅子から立ち上がると、時雨が近づいてきた。

時雨「さあ、行こうか」

そして、俺の手に自分の手を絡めてくる。

提督「これは俗に言う……」

時雨「恋人つなぎってやつだね」

そう言う時雨の頬は少し赤みがかっていた。


時雨「良い雨だね」

提督「まあ……悪くはないか」

ぱらぱらとした雨で、少なくとも不快な感じはしない。

時雨「……ねえ、提督」

提督「なんだ?」

時雨「あなたが僕の提督でよかった」

提督「……そうか」

提督としてこれほどうれしい言葉はない。

時雨「提督のおかげで、この鎮守府に轟沈した艦娘は一人もいない」

俺のおかげかどうかはともかく、事実として轟沈はない。

提督「これからも誰一人轟沈させやしない。何があってもな」

時雨「提督は、本当に僕たちを大事にしてくれるね」

提督「お前たちは俺にとってかけがえのない存在だからな」


時雨「この鎮守府なら……提督の下なら、僕はもう仲間を失わずにすむ。泣かなくてすむ」

艦娘になる以前の時雨は、多くの仲間が沈んでいくのを目の当たりにしている。
そんな過去をもつが故の言葉だろう。

時雨「僕の提督でいてくれてありがとう……大好きだよ」

時雨は、最高の笑顔で言い放つ。
俺は、その笑顔に見とれてしまっていた。

時雨「ねえ……少し目をつぶっていて」

提督「それまたどうして?」

時雨「いいからいいから」

時雨の意図は掴めないが、言われるままに目を閉じる。

時雨「これが僕の気持ちだよ」

時雨の言葉が聞こえた刹那、唇に柔らかい感触。
驚きに目を開けば、目の前すぐに時雨の顔がある。

時雨「ファーストキスなんだからね」

提督「……それは光栄だ」

とりあえずここまでです。
投下が遅れてしまい、大変申し訳ございません。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom