長門「プロの提督を雇おう」 (49)
・・・・AT PIN-HOLE!
■プロ提督シリーズ■
PART1 シージャック
天龍「あと15分ぐらいだな」
天龍「でも、気を抜くなよ。鎮守府に帰るまでが遠征なんだからな!」
第六駆逐隊「「「はーい!」」」
龍田「……」
龍田「動くな」グッ
天龍「っ!」
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第六駆逐隊「「「うっ!」」」
龍田「みんな動くな!」
龍田「旗艦、機首を右にまわすんだ! この便はキューバ行に変更だ!」
天龍「キューバだって!? そ、そんなところまで、行く燃料があるものか!」
龍?「まわせといったろう。おれのいうとおりにしないと………」
??「みんなバラバラになって着底することになるぞ!」バッ
天龍「あっ!」
第六駆逐隊「「「うっ!」」」
ツ級「……」
PART2 その男を釈放しろ!!
ジャパン――横須賀鎮守府
執務室
長門「……どうだ? 憲兵に逮捕されている男の調べは進んでいるか?」
妙高「あの男は、カレー洋遠征基地の爆破事件の犯人に違いありません」
妙高「しかし……なんとしても証拠がつかめません」
妙高「あの男は何もしゃべらず黙っていますが……今にきっと証拠をつかんでみせます!」
長門「……」
長門「妙高……あの男をすぐに釈放するよう、手続きを取ってくれ」
妙高「えっ!?」
妙高「な、長門さん! もう少しなんです!」
妙高「もう少し時間をいただければ、必ず、やつの正体を……!」
長門「あの男が何者か、その正体はもう分かっているんだ、妙高」
妙高「えっ!? な、長門さん! それは!?」
長門「プロ提督と呼ばれている……プロの提督だ」
妙高「プ、プロ提督!!」
妙高「な、なら、遠征基地爆破は彼の仕業に間違いありません!」
妙高「何しろ、あんな場所で、あんな綺麗な爆破を見せた提督なんですからね……!」
妙高「時間をください、長門さん! きっと彼のしっぽをつかんでみせます!」
長門「……20分ほど前、鎮守府近海でシージャックが起きた」
長門「いま……龍田に変装していた軽巡ツ級は、遠征隊を人質に取って給油をしているよ」
妙高「はあ? そ、そんな事件が起こっていたのですか。しかし……」
長門「犯人は単独だが、遠征隊を爆殺するのに十分なダイナマイトを持っているらしい」
長門「しかもツ級は、手負い狼のようにいらだっている」
長門「何をしでかすか分からないという状況なのだ……」
妙高(…………)
PART3 9万ポンドの給油
鎮守府近海 補給基地
ツ級「いつまでグズグズしているんだ! いったい、あとどれぐらいの時間がかかるのだ!?」
天龍「キュ、キューバまで行くには……9万ポンドくらい燃料がいる……」
天龍「あと一時間はかかるはずだ……」
ツ級「一時間か……」
ツ級「だが、何度もいうが、へたなまねをすると本当に何事が起こるかわからないぞ!」
ツ級「艦娘につかまるぐらいなら死を選ぶ」チャバ!
ツ級「まさか……などとは思わないことだ。おれにまさかはないんだ!」
PART4 ピン-ホール
長門「一応……狙撃の名手を集めてはいるのだ」
長門「だが、艦砲が向けられていると分かった瞬間……やつは道連れ自殺を選ぶだろう」
長門「一撃必殺でなければならない。そう思うと、鎮守府きっての名手も尻ごみをしてな」
妙高「そのために選ばれたのが……」
長門「そう、プロ提督だ」
妙高「し、しかし、そのような大事なことを……」
妙高「犯罪者に任せていいものでしょうか!?」
長門「お前の気持ちは分かる。だがな……」
長門「このことは、何とか、ではできないことなのだ」
長門「Pin-hole(針の穴)を通すパーフェクトが必要なのだ!」
長門「それがプロ提督なのだよ……妙高」
妙高「……」
PART5 男は出て来た
横須賀鎮守府 留置場
妙高「釈放よ、プロ提督……」
提督(……………………)
妙高「でも、ことわっておくと……私たちは決して、貴方のことを諦めたわけじゃない」
妙高「必ずしっぽをつかんでやるわ」
提督(……………………)
妙高「相変わらず無言の行か……」
横須賀鎮守府 廊下
大和「久しぶりですね、プロ提督……」
提督「憲兵が終わったと思ったら、艦娘か……忙しいことだ……」
大和「佐世保鎮守府の『Mの店』以来ですね」
大和「あの時は貴方を敵に回してひどい目にあいました……」
提督「…………」
大和「ところで、ぜひ、貴方に頼みたいことがあるのです」
大和「内々の話なので、こちらの部屋に……」
提督「…………」
大和「あっ、失礼しました」
大和「私も相手に無様に背中を見せるのは好きではありませんが……」
大和「ここは貴方の流儀に合わせましょう」ガチャ
PART6 あと15分!!
ツ級「いつまでかかっているんだ!」
ツ級「もう一時間は過ぎているんだぞ!」
ツ級「どうにか言ったらどうなんだ、天龍!」
天龍「と、突然のことで手間取ってるのだろうさ」
天龍「なにせ、急な話だったからな……」
ツ級「何かたくらんでいるな……」
ツ級「鎮守府に連絡しろ! あと15分しか待たないとな!」
横須賀鎮守府 通信室
大淀「長門さんたちが打った手とは、何なのでしょうか……」
明石「さあ……」
明石「とにかく、何としても引き伸ばすように言われているわ」
大淀「…………」
PART7 間宮の店
北上「ん?」
大井「まだ開店まで2時間もありますよ?」
提督「……間宮に会いたい」
北上「店長に? でも、貴方だれ?」
提督「プロ提督……」
北上「プロ提督!?」
大井「バットマンと撃ち合いでもしそうな名前ですね」フフッ
北上「ふふふっ」クスクス
北上「どっちにしろ、変なお客さんも来たもんだね」
北上「ちょっと待ってて」ガチャ
提督「……」
大井「貴方、どこから来たんですか?」
大井「所属鎮守府は?」
提督「……」
大井「耳が遠いんですか!?」ムッ
大井「ちょっと! 返事ぐらいしたらどうです!?」
北上「大井っち!」バッ
北上「や、やばいって!」グイッ
大井「もう、なんですか、北上さんったら……」
北上「へ、へへへ……どうぞ、奥へ。店長が待っています」
バタン
大井「いったい、何者なんですか、あの男は!」
北上「知らない。でも、名前を聞いただけで、店長は青くなって……」
北上「死にたくなかったら、くれぐれも丁重にご案内しろ! って」
大井「ええ……?」
間宮「つい今しがた、大和さんから『すごい男が行くからよろしく頼む』と電話がありました」
間宮「お会いできて光栄です……」サッ
提督「……」
間宮「あっ、握手を好まないとのお話でしたね。うっかりしていました……」
提督「俺が急いでいると大和は言わなかったのか?」
間宮「そ、それではすぐに……」
間宮「あっ……」チラッ
間宮「すみません、金剛さん。お話は後で……」
金剛「……」チラッ
提督「……」
PART8 時間は消却された
ツ級「よし、時間だ。おれは十分に待った」
ツ級「天龍! 出かけよう!」
ツ級「………………おれの声が小さかったようだな」チャキッ
ズキューン!
暁「ああっ!」
響「姉さん!」
ツ級「もっと分かりやすい声を出してやろうか?」
雷「なんてことを……!」
天龍「ま、待ってくれ! 言うとおりにする!」
天龍「だから、そいつらには手を出さないでくれ!」
天龍「鎮守府に伝えてくれ。これからキューバに行く、と」
電「は、はいなのです……」
ザァァァ
鎮守府 通信室
大淀「駄目です、もう阻止することはできません!」
大淀「長門さんはなんとおっしゃっているのですか!?」
明石「それが、釘付けにしろとだけ……」
大淀「くっ……」
明石「……仕方ない」
明石「機雷を浮上させます!」
PART9 特別製(スペシャル)
鎮守府 工房
間宮「それでは、後のことはお願いしますね」
夕張「はい。こちらへどうぞ」
提督「…………」
夕張「話のあらましは聞きましたよ」
夕張「それなんかいかがでしょう?」
提督「12.7cm単装砲か……」
夕張「どうぞ……」スッ
提督「ん?」
夕張「どうぞ!」
ジャキーンッ チャッ
ズキューン タンッ
夕張「ワンダフル!」
夕張「いやあ、これで貴方が本物のプロ提督だということを私も信用しますよ」
提督「試したのか?」
夕張「いえいえ! というより、身分証明書を見せていただきたかったのですよ」
夕張「とにかく……お目にかかるのは初めてですからね」
提督「他のを見せてもらおう……」
夕張「え!? 12.7cm単装砲がお気に召さないというんですか!?」
夕張「ドイツ製の世界的名砲ですよ?」
夕張「95センチの白松板を射抜こうってものです」
夕張「いったいこの砲の、何が気に入らないというんです!?」
提督「せめて……」
提督「口径が46センチはほしい」
提督「砲も弾も、それなりのものがほしいのだ……」
夕張「い、いったい……」ゴクリ
夕張「いったい、標的(ターゲット)は何なのですか!?」
提督「42キロ先の……フットボールだ」
夕張「おおっ、クレージー!!」
夕張「ふ、普通、弾は進むごとに沈むんですよ」
夕張「それだけじゃない。風速、気温、湿度も着弾を狂わす!」
夕張「ク、クレイジーだ!」
夕張「ま、まさにクレイジーだ!」
夕張「まるで……ピンホールを狙うようなものだ!」
提督「だから……それだけの砲と弾がほしくて、俺はここへ来た」
夕張「ロ、ロケット弾だって、42キロ先のフットボールに命中させる精度は持っていない!」
提督「わめくな、夕張」
提督「お前の技術のほどを聞いたから、ここを選んだのだ」
提督「俺の注文に……イエスか、ノーか?」
夕張「……」
夕張「46cm三連装砲を土台にして……作るしかなさそうですね」
夕張「3日も待ってもらえれば、できると思います……」
提督「3時間!」
提督「3時間以内に作るんだ」
夕張「さ、3時間!?」
提督「砲に1万DMMマネー、弾に1万DMMマネーを払う」
夕張「で、ですが……」
提督「俺の聞いているのはイエスかノーかだ」
夕張「……」
夕張「わ、分かりました」
夕張「すぐに取りかかります……」
夕張「私の全てを、これにかけてみます!」
PART10 目前と1キロとの接点
ドォーン!
天龍「うわっ!!」
ツ級「な、なんだ!?」
ツ級「何が起こったんだ!? 説明しろ!」
天龍「どうやら、機雷に当たったらしい」
天龍「こ、これじゃ、航海はできそうにないな」
ツ級「何が機雷だ! そう都合よく機雷に当たってたまるか!」
天龍「しかし現実なんだからしょうがねえじゃねえか!」
バシッ!
ツ級「言ったはずだぞ! 下手な小細工をするといっしょに死んでやるとな!」
鎮守府 通信室
大淀「天龍さん……ごめんなさい」
明石「しかし、修理に3時間はかかります」
明石「これで時間が引き延ばせました」
大淀「ですが……これが限界でしょうね」
明石「ええ……」
PART11 夕張ありがとう
金剛「ああ~……あ……」
金剛「う、う……ん……ああ!」
ビー! パチ
金剛「??」
金剛「どうしたんデスか?」
金剛「あなたはまだ燃えていないんデショウ?」
金剛「私だけをさんざん、シャボン玉のような気持ちにさせておいて……」
提督「仕事だ……」
金剛「それでずっと考えていたのデスか」
金剛「こっちもBurningしないでいようと思ったのに……」
金剛「……」
金剛「……? あれ? 提督?」
鎮守府 工房
夕張「ちょうど3時間、1分と間違っていませんね」スッ
夕張「どうです? 砲身が長いので、必要上基部は重くしましたが……」
夕張「バランスはいいでしょう?」
夕張「どうです、出来栄えは?」
提督「上出来だ」
提督「夕張」
夕張「はい?」
提督「ありがとう……」
夕張「……」ニコッ
夕張「明日の朝刊を楽しみにしていますよ!」
PART12 ゴールド・メダリスト
陸奥「駄目、もうこれ以上は引き伸ばせない!」
扶桑「よく引き伸ばせて、あと10分……」
陸奥「ほ、本当に彼は来るの!?」
妙高「……」
陸奥「仕方ない。その役は武蔵にやらせましょう」
妙高「えっ!? し、しかし、それは……」
陸奥「それしか方法がないわ」
陸奥「超長距離砲撃でしとめてもらいましょう」
妙高「……」
武蔵「私が犯人を!?」
陸奥「そうよ、あなたならできるわ!」
陸奥「犯人を轟沈させて!」
扶桑「ですが、撃ち損じは許されませんよ」
扶桑「至近弾を受けた犯人がどのような出かたをするか……」
武蔵「……!」
妙高「命中だけではない。一発必殺が要求されます」
武蔵「……」
武蔵「…………」
武蔵「………………!!」
武蔵「だ、駄目だ。まるで自信がない!」
陸奥「武蔵!」
陸奥「あなた、艦娘オリンピックでゴールド・メダルを取ったことを忘れたの!?」
陸奥「あなたは最後までドイツ艦と競い合い、最後の一弾でビスマルクを追い越したじゃない……」
武蔵「駄目だ、撃てない!」
武蔵「あの時、私が賭けていたのは鎮守府の栄誉だけだったが……」
武蔵「今回は艦娘の命がかかっている」
武蔵「それに、距離があり過ぎる……!」
陸奥「……!」
PART13 やつはやって来た!!
妙高「……あっ」
妙高「プロ提督です! プロ提督が来ました!」
陸奥「えっ!?」
武蔵「あれがプロ提督……!」
扶桑「観測によると、距離は41,3キロメートルです」
提督「風力は?」
扶桑「北北西の風、風速6メートル」
提督「気温と湿度」
扶桑「気温16度。湿度60パーセント!」
提督「…………」スッ
妙高(もし彼が狙撃に成功したら……)
妙高(多くの事件の実証となる!)
妙高(なにしろ、彼は遠く離れた基地を爆撃したのですから……)
妙高(…………)
提督「………………」
ツ級「さあ、天龍。ぼやぼやしないで出港だ」
ビシッ!!
ドゥーン……ドゥーン……ドゥーン……
妙高(…………!)
妙高(…………!!)
妙高(……プ、プロ提督は?)ハッ
妙高(どこへ……!?)
陸奥「もしもし、通信室!? 結果はどうなったの!?」
陸奥「もしもし!?」
END
ゴルゴ13が手元にあったから衝動的に書いた。
デイブはマジヒロイン。
ゴルゴ13は全国書店、コンビニ、床屋に置いてるから、気になったら読んでみてくれ
どこから読んでも面白いぞ
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