勇者「睡眠不足すぎて辛い」(99)



勇者「うぅん……」モゾモゾ

賢者「起きてください勇者様、敵が来ました」

勇者「えぇ、またぁ……?朝じゃなくて敵が来たのかよぉ」

勇者「それに私10分しか寝てないよぉ……」

賢者「つまりパワーナップが完了したのですね、頭はスッキリしているはずです」ニッコリ

勇者「絶対間違ってるよこれぇ……ブラックすぎるよぉ」

ミノタウロス「ぶもぉぉ!!」

賢者「さぁ闘ってください!!私は後方支援に努めますので!!」

勇者「ふあぁ……」

ミノタウロス「欠伸だと?敵を前にして随分余裕のようだな?え?」

勇者「違うんだよぉ、ここ最近の睡眠時間1時間にも満たないんだよぉ」

ミノタウロス「そうか、ならば目を覚まさせてやる!!」

勇者「(早く終わらせて寝よう……)」

ミノタウロス「おらっ!!」ドガッ

勇者「痛ッ!!怪我しちゃった……」

賢者「勇者様、集中してください!!」

勇者「無茶言わないでよぉ……睡眠不足で集中力低下してるんだよぉ」

ミノタウロス「クク、いいサンドバックだなぁ!!」バキッドゴッ

ミノタウロス「おらっ!!」バキッ!

勇者「……うぅ痛い……けどなんか感覚が鈍い、痛いようで痛くない」

勇者「あぁダメージ受けてるせいかこのままじゃ永遠に眠れちゃう……それいいかも」ウツラウツラ

賢者「勇者様、回復アイテムです!!」ヒュッ

勇者「あ、ありがと賢者……もうすぐで瀕死になるところだったよ」フラフラ

勇者「……あれ、回復薬じゃない」

勇者「ねぇ賢者……これブラックコーヒーだよ?」

賢者「それでカフェインを補充してください!!」

勇者「ふえぇ……」カポシュ

勇者「」ゴキュゴキュ

勇者「うげぇ……苦い、気休めにもならないよぉ」

ミノタウロス「死ね!!!」

勇者「もう……寝させて!!!」ズガシュ

ミノタウロス「」バタッ

勇者「け、賢者……私敵を倒したよ……?もう寝てもいいよね?」

賢者「この時間帯は森に敵が多いようですし、留まらずに街まで向かいましょう」

勇者「ふえぇ……こんなの過剰労働だよぉ」

賢者「森を抜けましたね勇者様」

勇者「ふえぇ……私木に何度ぶつかっちゃったんだろう……おでこ痛いよぅ」

賢者「そう気に病む事はありません、犬も歩けば棒に当たります」

勇者「ふえぇ……絶対偶然じゃないよぉ、睡眠不足のせいだよぉ」

賢者「勇者様、そんなに寝たいのですか?」

勇者「そりゃそうだよぉ……人間である限り睡眠は絶対のものなんだよぉ」

賢者「甘いです!それでも勇者ですか貴方は!!!!!」

勇者「ふえぇ」ビクッ

賢者「いいですか勇者様、貴方が8時間グッスリ快眠したとしましょう」

勇者「8時間……うへへ、天国」ニヘラ

賢者「その8時間の内に貴方はどれだけ敵を倒せたでしょうか?」

勇者「ふぇ?」

賢者「1時間に貴方が一匹敵を倒せるとしたら貴方は8時間で8匹もの敵を倒せることになります」

勇者「な、何が言いたいんだよぉ……」

賢者「もし睡眠した時間を使って倒せる敵を見逃したとして」

賢者「その敵が街に入り国民を食い殺したとしたら?」

賢者「睡眠をとったばかりに国民を殺すことになるのです」

賢者「今から8時間もの十分な睡眠をとると」

賢者「貴方は国民を8人殺すことになるのです」

勇者「絶対私の責任じゃないよぉ……」

賢者「甘い!!国民の命を背負わずして何が勇者ですか!!!」

勇者「ふぇ!」ビクッ

勇者「詭弁だよぉ……これ絶対こじつけだよぉ」ブルブル

賢者「要は寝てる暇などないという事なのです、わかったのなら行きましょう?」ニッコリ

勇者「ふえぇ……もはや脅迫だよぉ」



勇者「」ウツラウツラ

賢者「起きてください!勇者様!!!」

勇者「あと5分……あと5分」

賢者「ダメです!起きてください!!」バチンバチン

勇者「ふえぇ……何という無慈悲なバイオレンス……」シクシク

勇者「あれ、もう街なんだ……」

賢者「そうです、まずカフェイン錠剤やエナジードリンク、剣山などの購入しましょう」

勇者「ふえぇ……また安眠妨害グッズかよぉ……」

賢者「さぁさぁ昼食は高麗人参ですよ、食べてください」

勇者「土臭い……」パリパリ

兵士「勇者様!!こちらへ来てらしたんですか!!賢者殿も!」

賢者「警備ご苦労様です」

勇者「あっ……どうも」

兵士「勇者様、すごいクマですね……戦いで疲れていらっしゃるんですか?」

勇者「うん、最近寝てないの……」

賢者「勇者様は魔王退治のために寝る間も惜しんでいるのです、そう全ては世界平和のために!」

兵士「なっ……人類のためにそこまで」ジーン

勇者「(ちがうよぉ……本当は賢者に強制されてるんだよぉ……)」シクシク

賢者「治安はどうですか、魔物とか入ってきたりしてないですよね?」

兵士「えぇ、魔物は入ってきていませんが……」

賢者「どうかしたのですか?」

兵士「えぇ、最近魔物とは違う何かが街の人々を脅かしているらしいのです」

賢者「魔物ではない何か?というと幽霊の類でしょうか?」

兵士「情報が不明瞭ですので詳細には告げられませんが……」

賢者「ふぅむ……聞き捨てなりませんね勇者様」

勇者「えっ……どういう事?」

賢者「勇者である貴方はこれを放っておけませんよね?」ニコッ

勇者「け、けど私は魔王退治して寝ないt」

賢者「勇者様!!!!」

勇者「はいっ!!」ビクッ

賢者「勇者様は何故魔王を討伐しなければ行けないのでしょうか」

賢者「1、睡眠をとるため」

賢者「2、国民を守るため」

賢者「3、魔王に個人的な恨みがある故に復讐するため」

賢者「さぁどれでしょう?」

勇者「い、いt」

賢者「」ギロッ

勇者「2番です……」シュン

賢者「その通り、勇者様は国民を守るために立ち上がったのです」

賢者「もしこのまま放って魔王退治に専念したとして」

勇者「国民が死んでしまったらどう責任を取るのか……と?」

賢者「はい、大分わかってきたではないですか」

賢者「ですからさっきの勇者様の発言の通りにすると本末転倒なのです」

勇者「そんなに勇者って責任重大なの……体がいくつあっても足りやしないよぉ」

賢者「勇者様も人間です、ですから世界に蔓延る問題を一気に解決するのは無理です」

賢者「ですが自分が可能ならば困ってる人に手を差し伸べるべきです、これが勇者の正しいあり方です」

勇者「……」ハッ

勇者「じ、じゃあさこの問題を解決している間に魔王に世界を滅ぼされたら……」

賢者「甘い!!!揚げ足を取ったつもりですか!!睡眠を取りたいがために自分勝手な事を言って!」パシン

勇者「ひぃい!!」

賢者「貴方は利己的であってはならないのです!!善人すぎるくらいじゃないと勇者という者は成り立たないのです!!」

賢者「大局ばかり見ていては細かい部分を見落とします!!一気に問題を解決しようとせず地道に問題を減らしていくのです!」

賢者「それが国民の幸せにつながるのです!わかりましたか!?」

勇者「ふえぇ……鬼だよこの人、絶対私を人間として尊重してないよぉ……」

賢者「私たちが調査してそれを解決して見せましょう」

兵士「いいのですか……?魔王退治で多忙のはずでは」

賢者「さっさと終わらせて本業へ戻るつもりです」

賢者「マルチタスクが私たちのモットーですから」ニコッ

兵士「ありがとうございます!実は私達兵士も手を煩わせていたところでして……」

勇者「あぁ……目が回ってきたよぉ……」フラフラ

賢者「では情報収集です勇者様、酒場に行きましょう!!」

勇者「ふえぇ……寝させてよぉ」

酒場

カランカラン

マスター「いらっしゃい」

賢者「勇者様、着きましたよ」

勇者「うーん……賢者、お願いだから寝させてよぉ」ムニャムニャ

賢者「鼻ちょうちんなんて膨らませて、起きてください勇者様!!」ユサユサ

勇者「はっ……寝れないと思ってたら寝てた」

賢者「情報収集をしましょう、きっとここならば有益な情報が手に入ります」

勇者「(そんな事より寝たいよ……)」

マスター「では何か頼んでくれるかね」

賢者「私はアイスコーヒーをお願いします」

勇者「私はオレンジジューs」

賢者「それと滋養強壮剤で」

マスター「ふむ、リポ○ダンDでよろしいかな?」

賢者「はい、以上です!」

マスター「かしこまりました」シャカシャカ

勇者「ふえぇ…飲み物を選ぶ権利すらないのかよぉ……」

マスター「君たち……冒険者かね?」

賢者「いえいえ、私たちは魔王討伐のために派遣された勇者一行です!!」バァン

マスター「何、なら君は勇者というわけかねこれは驚いたな」ハハハ

賢者「いえいえ、それほどでもありません」

勇者「はい……」

マスター「随分、疲労してるようだが……休んではどうかね」

賢者「いえいえ、心遣い大変嬉しいのですが勇者様は今多忙が故寝る間も惜しんでいる状態なのです」

マスター「た、タフだね……若さってやつかな」ハハハ

勇者「(今にも意識落ちそうなほど疲れてるのにタフって言えるのかな……)」

賢者「ところで酒場のマスターさん、私達今ある情報が欲しいのです」

マスター「ん?知っている範囲でなら答えよう」

賢者「最近街で異変が起きているようでして、詳細な情報が欲しいんですが」

マスター「異変……もしかして得体のしれないものが彷徨ってるっていう話かい?」

賢者「そうですそうです、何か知りませんか?」

マスター「魔女の仕業っていう噂を聞くけどね」

賢者「魔女……」

賢者「ならその得体のしれないものは魔女の手によって呼び出されたことになるんですか?」

マスター「そうだね、正規の召喚術で召喚されたものではないようだが」

マスター「魔女の仕業と決まったわけじゃないが、みんな怪しんでいるのはたしかさ」

賢者「その魔女とやらはどこにいるのです?山の奥とかですか?」

マスター「いーや、ここの向かいにある宿屋に居座っているよ」

賢者「なんと、結構身近にいらっしゃるんですね……好都合です!」

勇者「や、宿屋……ベッド……睡眠……ベッド!!」ハァハァ

賢者「まーた発作ですか勇者様、早くリポ○タンDをお飲みになってください」

勇者「うぅ……こういう飲み物飲みすぎてお腹気持ち悪い」ゴキュゴキュ

マスター「だが近づくのはよした方がいい、あの魔女からいい噂は聞かないからね」

マスター「関わると命の保証はないとも言われてるらしい」

賢者「大丈夫です、私達は魔王を倒そうとするもの」

賢者「魔女などに簡単にやられはしません、ねぇ勇者様!」

勇者「」ウツラウツラ

賢者「ほらほら、大の勇者とあろうお方が睡魔などに負けてどうするんですか」パチンパチンパチン

勇者「お、起きてる……起きてるからぁ……」

賢者「では話を聞いてまいります、情報提供ありがとうございました~」ズルズル

勇者「ふえぇ……」

マスター「(大丈夫かな……あの子)」

賢者「勇者様、宿屋はもう見えていますよ頑張って歩きましょう!」

勇者「む、無理らよ……ちゃんと脚がいう事聞いてくれないんだよぉ」

ボム

戦士「ん?」

勇者「(こ、このふくよかで柔らかな感触は……!!)」

勇者「zzz」グゥ

戦士「おーい、大丈夫かー?」ペチペチ

勇者「はっ、すいません!!!ぶつかってしまいました!!!」ササッ

戦士「!!」

戦士「(え、何この子めちゃくちゃプリティーじゃない……)」キュンキュン

賢者「すいません……うちの勇者様が前方不注意でぶつかってしまったようで」ペコリ

戦士「勇者?」

勇者「は、はい……一応魔王を倒すためはるばる旅を……」

戦士「もう何、勇者ごっこ~?めちゃくちゃ可愛いんですけどー!」モギュッー

勇者「ぶへっ」

賢者「ちょ、ちょっと何抱き付いているんですか!!」

戦士「ん、あんたこの子の親?」

賢者「親!?私まだ未成年です!!失礼しますね!」

戦士「最近のガキなんて歳関係なくガキつくってるもんよ、そうカッカすんなって」

賢者「だから違いますって!私は勇者様の保護者兼教育係及び護衛を務めている賢者です!!」

戦士「なーんだ国の犬かいあんた、道理でいいもん身に着けてるわけだ」

賢者「そんな事どうでもいいですから、勇者様から離れてください!」

賢者「脂肪の塊によって窒息死してしまうではないですか!!」

勇者「んー……ムニャムニャ」グースカピー

戦士「なんだ、とっても気持ちよさそうに寝ているじゃないか」

戦士「これは私の包容力あってのもんだなー」

賢者「勇者様と私は忙しいんです!ですから速やかに勇者様の開放を要求します!!」

戦士「いちいちピーピーうるせーやろーだな」

戦士「本当にこんな可愛い子が勇者なんだ……にしても目の隈すっごいな」

戦士「あんたちゃんと寝させてるの?」

賢者「え……いやまぁ、そりゃたまには寝させていますよ10分くらい」

戦士「10分!?そりゃ育ちざかりの子供にゃきつい話だぜ!!」

賢者「うるさいですね!睡眠は人生の選択において無駄な行為なのです!これは勇者学の基本です!!」

戦士「どこぞのブラック企業だよ……」

戦士「ダメだダメだ、おめーなんかに教育係任せてたらこの子壊れちまうわ」フゥ

戦士「私も仲間に入れろ」

賢者「仲間……?笑わせないでください、勇者一行は私と勇者様の二人で十分」

賢者「ならず者のような方を入れるなど以ての外です」プンスカ

戦士「おうおう、結構失礼な事言ってくれるじゃないの……」

戦士「あたしこれでも有名な戦士なんだぜ、傭兵をやっていた頃だってある」

戦士「それにあんたよりかは良識があるつもりだぜ」

賢者「な、何おう……」

戦士「まぁこの子に判断してもらったほうがいいんじゃないか?」

戦士「一体私とお前のどちらのほうが仲間として優れているか……」ニッ

賢者「そんなの決まっているでしょう、私です」フンス

賢者「ねー!そうですよね勇者様!!!」パチンパチンパチン

戦士「あっコラてめっ!私の天使に何しやがる!!」

賢者「勇者様は貴方のものではありません!」

勇者「んー……何の騒ぎ」

戦士「なぁなぁ、この賢者ちょっと頭おかしいよな」

勇者「……」

賢者「否定するところです勇者様!!!」バチン

勇者「プゲラッ!!」

戦士「てめー大人しくしてりゃ勇者ちゃんに暴力ばっか振りやがって!!」

戦士「安心しろ勇者ちゃん、私がこのキチガイ女から身を守ってやるからな」

勇者「え……何、どういう事なの」キョロキョロ

賢者「順応性を高めてください!!今この不審者が勇者様に悪知識を説き地獄へ叩き落とそうとしているのです!」

戦士「デタラメいうんじゃねー!てめーこそ勇者ちゃんにめちゃくちゃ押し付けてんじゃねーか!!」

賢者「めちゃくちゃ?タフな体作りにめげない精神、勇者のあり方をカリキュラム的に教授しているのですよ!!」

戦士「うっせー!虐待の域だよバッキャロー!!!」

賢者「虐待!?言わせておけばぁ……!!」

勇者「な、なんで喧嘩になってんの……よくわかんない」オロオロ

キャーーーーーーー!!

賢者「悲鳴!?」

戦士「あっちの方か……!」

賢者「ついてこないでください!仲間と思われたら嫌なので!!」

戦士「はぁ!?おめー今そんな事言ってる場合じゃねーだろうが!!」

勇者「」ボーッ

賢者「起きてください!!はい眠気覚ましのメガシ○キとカフェイン錠剤です!!」

勇者「うぅん」ゴキュゴキュゴクン

戦士「お前は子供になんちゅーもん飲ませてんだ……」

女「ひ、ひぃっ!!」

ドラゴン「……」フシュルー

賢者「大丈夫ですか!?」

女「ば、化け物……化け物」ガタガタ

賢者「勇者様にはそのドラゴンの退治を任せます!!私はこの女性の容態を見ますので!」

勇者「わかった」シャキン

戦士「」ポカーン

賢者「あ、貴方も来た限りは勇者様の力になってください!癪ですが使い捨ての盾くらいには……」

賢者「何をボーッと突っ立てるんですか!!」

戦士「お、お前は……ドラゴン」

戦士「生きていたのか……あの日に死んだはずじゃ……」

ドラゴン「ガァッ!!!」

勇者「危ない!!」ガバッ

ズシャ

勇者「うぅ……」

戦士「ハッ……大丈夫!?」

勇者「平気……掠り傷だから」

戦士「(違う……もしあのドラゴンなら私に襲ってきたりしない、何考えてんだ私は……)」

賢者「何やってるんですか!勇者様の足を引っ張らないでください!!」

戦士「ごめん勇者ちゃん……この借りはあいつを倒して返すから」

戦士「賢者、勇者ちゃんの手当頼んだ」バッ

賢者「えっ……」

 戦士は銀色に光る斧を振りかざし自分の数十倍もの体積を誇る竜に立ち向かう。

 竜は獲物の体を根こそぎ爪で薙ぎ払おうとするが、戦士の敏捷さの前では捉えることは
叶わずうまく躱される。

 竜のわずかな隙を見逃さず戦士は竜の脳天に斧を叩き込む!眉間を切り裂かれた竜は
痛みに耐えきれず喉を震わし鳴き叫ぶ。それは断末魔でもあり、竜は戦士の一撃で
崩れ落ちた。

賢者「ど、ドラゴンを一撃で……」

戦士「……」

サァー……

賢者「消えた……」

戦士「魔力だけで構成されてる…これは自然からできたドラゴンじゃねぇ」

戦士「恐らくは人為的に作られたモノ」

賢者「もしかして魔女につくられた……」

戦士「魔女?」

兵士「大丈夫ですか!?」

戦士「おせぇよ衛兵共!街の住人が危ない目に遭ってるってのにチンタラしやがって!」

兵士「すいません!!」

兵士「何があったのです?」

賢者「ドラゴンが現れたんですよ」

兵士「ドラゴン!?なんでそんなものが街に……」

賢者「でももう心配はいりません、この方が一応処理したので」

兵士「そうですか……いや、お役に立てなくてすいません」

戦士「謝るくらいならもっと実績上げろバカヤロー」

戦士「そこの女の人は任せた、ショックで少し混乱気味だ」

兵士「はい!」

戦士「私たちは勇者ちゃんを休ませるためにいったん宿屋へ行こう」

賢者「応急処置は済みましたが、やむを得ませんね……」

勇者「うぅ……」

宿屋

カラン

受付嬢「お、お客様!!」ガタッ

戦士「うわっ、なんだよてめぇ……客を驚かせんじゃねぇよ」

受付嬢「いえ……久しぶりにお客様が見えたのでつい」

賢者「……もしかして魔女が居座っているからですか?」ヒソヒソ

受付嬢「!!!」

受付嬢「はい……やはり皆さんその噂を聞いて来られないんですね」トホホ

賢者「大丈夫です、私達が何とかして見せますので」

受付嬢「ほ、本当ですか!?」

賢者「はい、その前にここに泊めてもらってもよろしいですか?」

受付嬢「はい喜んで!!はぁおばあちゃん……やっぱりお客様って神様だったよ!!」パァァ

戦士「変なヤローだな……」

賢者「では後ほど話を伺いに来ますので」

受付嬢「はい!こちら部屋番号301号室のカギとなっております」

賢者「勘定はやっておきますので、貴方は勇者様を部屋へ運んでください」

賢者「いいですか?抱き付いてモフモフとかしたらダメですからね」ギロリ

戦士「な、なんだよこえぇな……」

部屋

賢者「ふぅ、これで完治しましたね」

勇者「……」

戦士「ごめんな勇者ちゃん、私がボーっとしてたばっかりに」

勇者「別にいい、気にしないで」

賢者「本当ですよ!!ったく仲間になるとか言っておいて足手まといじゃないですか」

賢者「ま、まぁミスに目を瞑れば戦闘技術は中々のモノでしたけども……」

賢者「そういえばあれは自然にできたものじゃないって言ってましたがどういう事です?」

戦士「魔力で構成、要は誰かが魔術で作ったんだよアレを」

賢者「ということは……」

賢者「やはりあれは魔女が作った物なんですね!!」

戦士「さっきから何なんだよ魔女魔女って……」

賢者「近頃この街で得体のしれないものが動いてるっていう噂があったんですよ」

賢者「それでそれは魔女が召喚し悪事を働かせているという事らしいのです」

賢者「まぁドラゴンは魔物ですが、魔力で構成されてるってことはやはり魔女が生み出したもの!」

賢者「いやー、情報の信憑性が高まって参りましたね」

戦士「うさんくせぇなぁ……その魔女とやらは一体どこにいるんだっての」

賢者「この宿屋らしいです」

戦士「はぁ!?めちゃくちゃ危険じゃねーかよこの宿屋!!」

賢者「私たちはその魔女とやらの悪事を止めに来たのです」

戦士「お前らって魔王を倒すのが目的のはずじゃ……」

賢者「目の前の問題は放っておけないのが勇者の精神であり信条なのです!」

戦士「んだそりゃ……」

賢者「そういえば何故あのドラゴンが魔力で構成されてるとわかったのです?」

戦士「えっ……い、いやそりゃ長年の勘って奴だよ」

賢者「はぁ……脳が筋肉でできていてもわかるものなんですねぇ」

戦士「本当お前失礼だな……」

ジリリリリリリリリリリリリリ!!!

勇者「うぅ……何故に目覚まし時計」

賢者「こんな場所で呑気に時間をつぶしている場合ではありません!!」

賢者「勇者様!時間です!!もう15分経ったので起きてください!!」パチンパチン

勇者「ふえぇ……辛辣な人生」

賢者「早速この宿屋の主に情報を聞き込みましょう!事は一刻をあらそうのです!!」

戦士「おいおい!まだ寝かせておいてやれよ!」

賢者「戦士さん、まだいたんですか?」キョトン

戦士「薄情な野郎だなおめー……」

戦士「危なっかしくて見てらんねーよ、やっぱしばらく一緒にいてやる」

賢者「結構と言ってるじゃないですか」

勇者「い、いいんじゃないかな……仲間に入れてあげても」

賢者「え、勇者様!正気ですか!?」

勇者「優しいし強いし……それに信頼できそうだよきっと」

賢者「……」ジトー

勇者「な、なんだよぉ賢者」

賢者「この戦士という女を後ろ盾にして睡眠時間を確保しようという魂胆ですね勇者様」

勇者「ちちちちちちち、ちがうよ!!仲間はいっぱいいた方が旅に彩ががががが」

賢者「えーい目が泳いでいるのですよ!!バレバレです!!」

賢者「まったく……一旦甘えさせるとすぐこうなるんですから」

賢者「いいでしょう、たしかに腕だけはありますので」

賢者「この問題が終わるまでは仲間と言う事にしましょう、色々と使えるでしょうし」

戦士「本当何様だよおめぇ……」

賢者「……」スッ

戦士「なんだこの手は」

賢者「一応、短い期間とは言え同盟を組むのですから握手をと」

戦士「えー……」

賢者「な、何ですかその嫌そうな目は!!」

戦士「お前みたいな人格破錠者なんかと握手しないといけねーのか……」ハァ

賢者「ななななな、人格破じょ」

戦士「まぁしゃーなし、勇者ちゃんが心配だから形だけでも手を握っておいてやるよ」ニッ

賢者「ぐぬぬぬ……絶対貴方とはわかりあえませんね」

戦士「よろしくな勇者ちゃん」ギュッ

勇者「もがもが」

賢者「なっ!抱き付いてはダメですーーーー!!!」グググググ

戦士「あ?ハグぐらいいいだろうが、減るもんじゃあるまいし」

賢者「そ、そんな私ですら抱いたことが……じゃない!!」

賢者「えーい行きますよ勇者様!!そんなの使うだけの存在なんですから関わってはいけません!」

戦士「待てよ!私が仲間になった以上は勇者ちゃんを寝かせてあげるんだよ!」

戦士「ほーら、私の胸の中でお眠り」

勇者「んー……柔らかい」ウトウト

賢者「……やはり仲間というわけには行かないようですね」ゴゴゴゴゴ

賢者「私の魔法で木端微塵にされたくなかったら今すぐ勇者様から離れなさい!!」グイーー

戦士「賢者のクセにすぐ頭に血のぼらせやがって!やっぱりお前なんかに勇者ちゃんを任せられるか!」グイー

勇者「(け、結局寝れない……)」

同じ生活してて平気な賢者がまじ魔王

>>51
賢者は『眠らなくても大丈夫な病気』にかかってんだよきっと、現実世界にもたしか一人そんな人居たし。

んで『自分が大丈夫だから他人も平気』と思い込んでるタイプ。
自分が異端だと考えない恐ろしい人間なんだよきっと

応接室

受付嬢「粗茶ですが」

賢者「ありがとうございます、勇者様紅茶はブラックコーヒーよりもカフェインが豊富です」

賢者「是非グビっといってください」グイッ

勇者「あちちちち!!!」

戦士「火傷するだろうが!」

受付嬢「あのぉ……話を聞いてくれると言ってくださいましたが」

受付嬢「依頼金などはやっぱり高く……」

賢者「いえいえ結構です、私たちの労働は常に国民の幸せとトレードオフされますので」ズビビ

戦士「随分気前いいな」

受付嬢「本当にありがとうございます!何とお礼を言っていいのやら……」

賢者「気にしないでください、私達善人ですから」ニッコリ

戦士「自分で言う言葉かそれ……」

賢者「では本題に移りましょう」

賢者「その魔女はいつごろからここに?」

受付嬢「そうですね……家の祖母の代から居座っているらしいですけど」

戦士「んじゃ結構前からいるって事かよ?」

受付嬢「と言っても私がここを継いだのが1年前くらいですので……」

受付嬢「でも最初はそれなりにお客さんが入っていたんですが途端に入らなくなりまして」

受付嬢「原因は怪奇現象がどうとか……」

賢者「か、怪奇現象……?」

受付嬢「お客様がドッペルゲンガーを見たりだとか、知らない子供がひたすらにドアを叩いてくるなど」

賢者「はぁ……というと街で起こっている現象と相似しているんですかねぇ」

賢者「目撃者多数なので情報の信憑性は高いと?」

受付嬢「もちろんそれもあります……ですが私自身それを信じるのはなんとなく抵抗がありまして」

受付嬢「そう懐疑的でしたが、自分もドッペルゲンガーを見まして信じざるを得なくなりました……」

賢者「あ、貴方もドッペルゲンガーを!!?」

受付嬢「はい……」

賢者「ドッペルゲンガーってどんな感じなんですか!?」

受付嬢「えーっと……何もしゃべらずにただ歩いてるような感じです」

賢者「いいい、いつ頃見たんですか……?」

受付嬢「半年くらい前ですかね……」

賢者「なんだ……ドッペルゲンガー見たら死ぬのではないのですね……」ショボン

受付嬢「あの……すいません」ペコリ

戦士「いや、そこは謝るところじゃねーからな」

戦士「で、その怪奇現象が魔女のせいだってことなのか?」

受付嬢「ええと……正確には勝手に結び付けられたものだと思いますが」

受付嬢「人々が魔女に対するイメージは不気味という感じですから、どこかの記者が事実として書いたのではないでしょうか」

戦士「ふーん……」

戦士「あんたは魔女を疑ってないのか?」

受付嬢「懐疑的ではありますが……その反面魔女のせいではない気もします」

受付嬢「何しろそんな無差別な悪戯はしないような人ですし……」

戦士「ウチの知り合いにも魔法使いはいたが、悪質なコトはしなかったなそういや」

戦士「魔法使いって陰気で悪いイメージ持たれがちだが、案外そうでもねーよな」ハハ

受付嬢「しかし、魔女の噂で宿屋の売上も下がっているようなものなので調べないわけにはいかないですよね…」

賢者「では最近の魔女の動向についてお聞かせください!」

受付嬢「実はここ最近部屋を出ているところを見ていなくて」

賢者「部屋とか入ったりしないんですか?」

受付嬢「その……やっぱり怖くて」

賢者「はぁ、そうですか」

賢者「それじゃ魔女の性格とかどうでしょう?」

受付嬢「……結構大らかで優しそうな人でしたよ」

戦士「へぇ……ますます疑いたくなくなってきたな」

賢者「ふん、調査の過程で情を入れるなど素人ですね」フゥ

賢者「例えどんな優しかろうと全力で叩き潰してやりますから安心してください!」キラキラ

戦士「お前は問答無用すぎだバカ」

賢者「よぅし、こうなればその魔女のいる部屋とやらに乗り込みましょう!!」

賢者「直接魔女を訊問するのです!!」

戦士「強引だな……」

賢者「部屋のカギは持っているんですね?」

受付嬢「はい、それならこちらに」チャリ

賢者「では行きますよ!!勇者様!!」

勇者「zzz」

戦士「あはっ、可愛い寝顔してやがんな~」ツンツン

賢者「本当ですね、思わず食べてしまいs……」キュンキュン

賢者「ってちがいます!何分寝てるつもりですか!!起きてください!!」パチンパチン

勇者「ふぐぉ……」

戦士「もういい加減寝かせてやろうぜ……」

ゴトゴトゴト

受付嬢「あれ……魔女さんの部屋から」

賢者「行ってみましょう!!」ズリズリ

勇者「ふえぇ……引きずらないでぇ」

戦士「おいこら待て!!」

ゴツゴツゴツッ

勇者「ちょっ、賢者、階段は、や、ヴぁ」ゴツッゴツッゴツッ

……タトタトタトタト

賢者「む?こんな客のいない宿屋に足音……魔女に違いありませんね!!」

少女「」バッ

賢者「わわっ!!危ないです!!」

戦士「おいおい、賢者まてy……」

少女「どいて!!」スッ

戦士「……!」

タトタトタトタトタト……

賢者「何ですか今の子供は!むしろお前がどけって感じですよ!!」プンスカ

戦士「……」

賢者「どうしました?」

戦士「あいつ私の小さい頃にそっくりだった気がするんだが……声も、姿も」

賢者「戦士さんに小さい頃ってあったんですか?」

戦士「いやお前ずっと思ってたんだが喧嘩売ってるだろ」

賢者「冗談はさておき、あんな子供がここにいる意味がわかりませんね」

戦士「んー……窓から入ったとかじゃねぇか?私もよく入っちゃいけない場所は入ってたし」

賢者「この窓からですかー?上るのは少しばかり難易度が高いと思いますがねぇ……」キョロキョロ

賢者「魔女の隠し子と考えるのが妥当ですね」

戦士「いや、多分それはねぇと思うがなぁ……」

賢者「今はあんな子供より魔女の部屋へ行くことを優先しましょう!!」

戦士「扉が開いてるぞ……」

賢者「怪しげな笑い声などは聞こえてきませんね……」

戦士「んな古典的な魔女いねーよ…」ソーッ

賢者「あ、あれが魔女でしょうか……夕暮れの日差しを浴びて何やら黄昏ていますね」

戦士「あ……」

賢者「?」

魔女「……」

戦士「し、師匠……」

賢者「え、え!?」

戦士「間違いねぇ!10年前と何も変わっちゃいねぇ!」

戦士「なぁ!どうしてあの時私を見捨てたんだよ!!師匠!!」

魔女「誰だい……あんた」

戦士「えっ……」

戦士「あ、あぁ……たしかにガキの頃とは姿形が変わっちまったから無理もねぇよな」

戦士「ほら、あんた戦士って弟子持ってたろ?魔法を教えてくれたじゃねーかよ」

魔女「……弟子なんて持った覚えないけどねぇ」

戦士「お、おいおい忘れちまったのかよ……歳だからってそりゃ薄情すぎるぜ」

魔女「……?」

戦士「私が魔法使えなくなったからか!?だから見捨てたのか!?忘れたフリしてんのか!?」

魔女「ちょっと……あんた大丈夫かい?少し落ち着きなよ……」

戦士「もういい!!」ダッ

賢者「せ、戦士さん!!」

賢者「えーっと急展開すぎて状況が呑み込めませんが……」

勇者「今は戦士を追うのが先……」

賢者「え、勇者様?ですが魔女に話を……」

勇者「この魔女に悪い人じゃない……」

勇者「兎に角戦士を追う」

賢者「ま、まぁどっかで自殺とかされたら寝覚めが悪いですしね」

コロン……

勇者「(杖……)」

勇者「杖落としましたよ、魔女さん」

魔女「そりゃ私の杖じゃないよ、ここに来た誰かが落としたんじゃないかねぇ……」

勇者「(いや、こんな杖さっきまで……)」

賢者「では行きましょう!」ダダダ

戦士「……」

賢者「三角座りなんて、似合わないですよ戦士さん」

戦士「んだよ……こういうときは放っておくのが義理ってもんじゃねぇのかよ」

賢者「ウチの同僚にも豆腐メンタルな方がいまして、相談に乗らず放っておいたら首を吊ってしまいました」

戦士「サイテーだなお前……」

賢者「ですから、少し貴方のお話くらいは聞いてあげようかと」

賢者「急展開すぎてついていけませんでした、いきなり知り合い風な事を言いだすんですもの」

戦士「いやな、二度と会えないと思った人がここにいるとは思ってなくてな」

勇者「あの魔女とはどういう関係なの」

戦士「師弟さ、ガキの頃両親ともに亡くしていた私を魔女である師匠が拾った」

戦士「師匠は魔法使いという職業柄魔法は生活に着いて回る、だから私も自然と魔法に触れる機会は多かった」

戦士「だから師匠は私に魔法を教えた、そして師弟の関係ができて私は魔法使いを目指すようになったんだ」

賢者「はぁ、それで師弟関係ですか」

賢者「にしても驚きました、まさか戦士さんが魔術師志望だったとは」

戦士「そりゃガキだったし師匠も褒めてくれたし、そうなるのも自然だったような気もする」

戦士「でもな、使い魔を助けるために私は魔法使いの素質を捨てた」

賢者「使い魔?」

戦士「村を襲った竜がいてな、頼られていた師匠はそれを退治しようとして弱らせたんだが」

戦士「どうも情に脆かった私は、禁止されたいた使い魔の契約を竜としちまったんだ」

賢者「はぁなるほど、使い魔になればお互いの身体の状態は等しくなりますもんね」

賢者「といっても使い魔が死んでも主は死にませんけどね」

賢者「ですが子供なのに竜と使い魔の契約なんて果したら……」

戦士「あぁ、魔法は使えなくなっちまった……負担が大きすぎてな」

戦士「本来の竜の寿命も縮めちまって、私が15になるころには死んでしまったよ」

賢者「はぁ、そりゃ災難ですねぇ……」

戦士「でも今日竜が現れた時びっくりした、あの竜とは違うとは思うが……」

戦士「少し情が入っちまった、あの時と姿が変わってなかったし」

戦士「こんな私だから師匠も愛想尽かしたのか託児所に私を預けてどっか行っちまった」

戦士「それで再会したと思ったらあの態度さ、やってらんねーよ」

賢者「でも見たところもう若くなさそうでしたし、無理もないのでは……」

戦士「かもな……まぁ、あの様子じゃ悪事を働いてるってわけじゃなそーだ」

戦士「安心したぜ」

賢者「そ、そうですね……」

勇者「たしかに本人にその意志はないと思う、けどここ最近の怪奇現象はあの魔女が原因だと思う」

戦士「なんでそう思うんだ勇者ちゃん」

勇者「……いや、けどはっきりとした根拠がないからやっぱり忘れて」

賢者「ふむ……」

戦士「たしかに師匠を疑わないと手詰まりってのはわかるが……」

戦士「ん、なんだありゃ……」

スッ

勇者「」

勇者「!!!」

賢者「えっ、えっ!?勇者様がもう一人!?」

戦士「な、なんだこりゃ!!」

賢者「えーっとつまり私と戦士さん二人で勇者様を分け合えるという事に」アタフタ

戦士「落ち着け!」

戦士「もしかして噂のドッペルゲンガーって奴か……?」

勇者「何者!」

勇者「……」

賢者「特に何もしてこないですね……」

戦士「敵意は……ないのか」

勇者「杖……私が拾った杖を持ってる」

賢者「本当ですね、勇者様は杖なんて持ってませんのに」

勇者「うぅん、魔女の部屋で拾ったの」スッ

戦士「そ、その杖は私がガキの頃に使ってた……!!」

勇者「……大体トリックがわかった」

賢者「へ?」

勇者「もうすぐ賢者のドッペルゲンガーも現れる」

賢者「それってどういう……」

賢者「」スッ

賢者「び、美少女……じゃなくて私!!本当に出ました!」

賢者「と、という事は戦士さんのドッペルゲンガーも……」ブルブル

勇者「来る可能性はあるかもしれない、けど私たちのドッペルゲンガーの出現率よりは低いはず」

戦士「一体どーゆう事だよ勇者ちゃん……」

勇者「この私と賢者はきっと戦士を追うという意志で来てる」

勇者「だから現れた」

戦士「なんでそんな事が……」

勇者「試しにこのドッペルゲンガーたちから逃げ回ってみて」

戦士「お、おう」ダッ

賢者・勇者「」ダッ

戦士「うわっこっちくんな賢者!!」ゲシッゲシッ

賢者「ちょっ!私のドッペルゲンガーを蹴らないでください!」

戦士「どうなってんだよ……本当に私についてきやがった」

勇者「これはきっと……魔女の記憶から生まれたモノだよ」

賢者「魔女の記憶?」

勇者「このドッペルゲンガーには魔女の知ってる情報しかない」

勇者「戦士を追いかける意志、杖を拾った私……」

勇者「……きっとあの時のドラゴンもドッペルゲンガー、村を襲ったときの」

戦士「……マジかよ」

戦士「(じゃあ階段で会ったあのガキって……)」

戦士「(記憶が元に作られたとしたら、なんで私の事を覚えていなかったんだ……)」

勇者「きっともう一度会えばはっきりわかる、宿に戻ろうよ」

賢者「にしても勇者様すごいですね!!この推理力は英才教育の賜物です!!」ナデナデ

勇者「い、いやそれほどでも……」

戦士「行こう勇者ちゃん……私も今起きてる怪奇現象が師匠のモノなのかどうか確かめたい」

勇者「うん」

受付嬢「おかえりなさい!!探しましたよ!!」

戦士「ど、どうしたんだよ……」

受付嬢「魔女が出て行ったんです!!」

賢者「えーーー!!!」

勇者「出て行った……」

戦士「探しに行こう!!勇者ちゃん、賢者!」

賢者「こんな夜中にどこへ行ったんでしょうかねぇ……」

勇者「……」

魔女「」ヨロヨロ

盗賊「おいおい、ババァが夜中に歩いてるぜ」

大男「カモじゃねぇか」

盗賊「おらババァ!!金出せ!!」ドガッ

魔女「うぅ……何すんだい、探し物をしている途中なんだ、後にしておくれ」

盗賊「探し物って何ですかぁー?」

魔女「……よくわからないが、大事なモノを失った気がするんだよ」

盗賊「くはははは!ボケてんじゃねーのかこのババァ!!!」ドゲシッ

魔女「や、やめとくれ」

大男「金出したらやめてやるよ!!」

少女「メラ!!!」シュボォ

盗賊「あっちっち!!何すんだこのガキ!!」

少女「師匠を苛めないで!!」

大男「あぁん?」

少女「これ以上近づくと魔法で黒焦げにしちゃうんだから!!」

魔女「だ、誰だい……こんな時間に子供がで歩いたら危ないよ……」

少女「え……師匠」

大男「余所見してんじゃねーよガキ!話の途中だろうが!」バキッ

少女「うっ!!何すんのよ!」ドタッ

大男「おいこのガキ教育しちゃおうぜ」

盗賊「そうだなぁ……社会に出てみんなを不快にさせちゃマズいもんなぁ」

盗賊「俺らが教育しなおしてやるよ……」

少女「メr……」

少女「(あれ、体が透けちゃう……なんで)」

魔女「やめとくれ!!この子には手を出さないでおくれ!!」ギュッ

少女「し、師匠!?」

盗賊「はぁん?何言ってんだこのババァ、庇ってるつもりかよ」ゲシッゲシッ

大男「ヨボヨボのサンドバッグ蹴るの楽しいなぁー!!」ゲシッ

魔女「……」

戦士「てめーらどきやがれ!!!!」バキッ

盗賊「ふぐぉ!!」

大男「なんだテメーは!!!」

戦士「とっとと失せろ!!体真っ二つにすんぞ!!!」ガァッ

大男「ひぃぃ!!!」

盗賊「た、助けてくれー!!!」

戦士「大丈夫か!?」

魔女「……わ、若いの助かったよ……」

戦士「……」

賢者「魔女さん!!!」

魔女「……初めて見る顔だねぇ、あんたら衛兵か何かかい?」

賢者「えっ……」

勇者「やっぱり、記憶が形となって抜け落ちてる……」

戦士「……てことは」

少女「あ、ありがとうございます衛兵さん!!」ペコリ

少女「あれ……たしか宿屋で会った」

戦士「……こいつはガキの頃の私ってわけか」

少女「師匠……そろそろ離してよ」

魔女「だ、ダメなんだよ……あんたを離しちゃダメな気がするんだ」

魔女「探していたものがやっとわかった気がするんだ、ある日ポッカリと抜け落ちたモノが」

戦士「師匠……」

少女「ずっとこんな感じなんです、歳なのか私の事覚えてないみたいで」

戦士「なぁ、ここがどこだかわかるか……?」

少女「え?」

少女「そういえば私の知ってる村じゃないような……あれ?」

少女「……」

少女「私人間じゃないのか……だからさっき魔力を使ったときに体が透けちゃったんだ」

戦士「お前は師匠の頭から抜け落ちた記憶さ」

少女「……あぁそっか」

少女「ふーん……私は記憶をなぞってるだけの存在だったんだ」

少女「そういえば未来の記憶がある気がするよ」

少女「ドラゴンと契約し魔法を使えなくなったこと、師匠と離れた事……」

戦士「実はな私、未来のお前なんだ……」

少女「クスッ、こんな筋肉ついちゃうんだ私」

少女「もしかして戦士になったの?」

戦士「あぁ、魔法使えなくなっちまったし」

戦士「……師匠にも見捨てられちまっったし、魔法とは縁を切ることにしたのさ」

少女「……未来の私でも勘違いしてる事ってあるんだね」

戦士「魔法が使えなくなった弟子に愛想を尽かしたんだろ……?」

少女「そんな勘違いしてたんだ、全然違うよ」

戦士「え?」

少女「忘れるのが怖かったんだよ、師匠は」

少女「私を忘れてしまう前に託児所に預けたんだ」

少女「魔法を失ったからじゃないよ」

魔女「」ブルブル

少女「けど記憶を失ってしまった、時間の問題だったんだけどね」

少女「本当、認知症より厄介な病気だよ……」ハハ

戦士「私の事見捨ててないってんならおいていく必要はなかったはずだろ!!」

少女「……私の事を大事だったから、ここまで追ってきたんだよ師匠は」

少女「大事な……記憶だから」

戦士「……!」

賢者「と、とりあえず治療しないと!!」バッ

少女「うぅん、私がやるからいいよ」

戦士「お前そんな事したら!!」

少女「いいんだ、どうせもう師匠の中には戻れないから」

少女「」テレレレン

少女「これで大丈夫」ニコッ

魔女「あ……あぁ」

少女「ありがとう、きっと未来の私も本当の気持ちを知れてホッとしてるよ」

少女「私の事……大事に想ってくれてありがとう……」シュウウウ

魔女「き、消えないでおくれ!!」

少女「じゃあね、師匠の事はまかせたよ」

シュウウウウウン

魔女「あっ……消えてしまった……消えてしまった」

魔女「失ってはいけないもののはずなのに……大事な者のはずなのに」

ギュッ

戦士「消えてねぇ……ここにいるよ師匠……ッ!!」

魔女「……衛兵さん」

賢者「……」

勇者「……」

の朝

受付嬢「いらっしゃいませぇ!!!」

記者「この宿屋は呪われているってのは本当ですか!?」

受付嬢「……へ?」

記者「魔女の仕業ではなくこの宿屋が呪われてると聞きました!!」

記者「みんなそれで恐れおののいて近づかない危険スポットになっていると!!」

受付嬢「てことはみなさん怖がってこな……」

受付嬢「トホホ……結局ダメじゃないですかーーー!!」

受付嬢「せっかく売り上げが元通りになると思ったのに」

戦士「世話になったな」

賢者「一応魔女さんが責められないよう手を打っておきました、安心して外に出てください」

戦士「お、おうありがとよ」

賢者「」

勇者「」

戦士「あはは……こいつらのドッペルゲンガーまだ残ってたのな」

戦士「じゃあこの勇者ちゃんのドッペルゲンガーは抱いて毎晩就寝するとするか」

賢者「いやいやダメですよ!!」

戦士「お前のドッペルゲンガーは召使な」

賢者「はぁ!!?むしろ使われてください!」

戦士「なんでだよ」

勇者「これからどうするの?」

戦士「んー、理論系の魔術師を目指そうかな」

戦士「あれなら実技はいらねぇし」

賢者「……その、本当に行くんですか」

戦士「は?」

賢者「いえ、なんでもありません」

戦士「私は師匠と共に山の方で暮らす、だからみんなには迷惑かけねぇと思う」

戦士「短い間だったが楽しかったぜ」

勇者「元気で……」

賢者「悪事働いたら駆けつけますんで頑張ってくださいねーー!!!」

戦士「犯罪促してどうすんだよ……」

戦士「じゃあ、行こうぜ師匠」

魔女「……」

戦士「ははっ、もう言葉まで忘れちまったか師匠」

戦士「でも、忘れちまったらまた新しい記憶で埋めればいいよな」

賢者「行ってしまいましたね」

勇者「賢者寂しそうだね」

賢者「だ、誰が!あんなお荷物いらないですよ!!」

賢者「私は勇者様のお供で精一杯なのです!あんなのに構ってられません!」

賢者「さぁ行きましょう、思ったより時間が掛かってしまいました!」

勇者「いや……私もう限界……体に負担かけすぎた」

賢者「では寝ながら歩いてください!!それならば許しましょう!!」

勇者「ふえぇ……そんな鬼畜な」

賢者「さぁ急ぎますよ!!」

続くかもね

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom