幼「なっちゃった…」
男「いやだっ!」
幼「だって、お父さんの転勤なんだから、仕方ないじゃん!」
男「い、行かないでよ、幼ちゃん!」
幼「もう決まった事なんだから…」
男「いやだ!いやだ!」
幼「わ、わたしだって、行きたくないよっ!」
幼「男くんと、離れたくないよ!」
男・幼「うわーーーーーーーん!」
・
・
男「僕、幼ちゃんとお別れしたくない!」
幼「わたしも、男くんとずっと一緒がいい!」
幼「でも、すっごく遠くに引っ越すって…」
男「いつ?いつ引っ越すの?」
幼「夏休みに入ったらすぐだって…」
男「…二人で逃げよう!」
幼「逃げる?」
男「どこか、遠くに…」
幼「…どこに?」
男「…」
幼「…」
男「そうだ!僕のおばあちゃんの家なら!」
幼「男くんのおばあちゃん?」
男「おばあちゃんはすっごく優しいんだ!」
男「絶対、黙っててくれるよ!」
幼「どうやってそこまで行くの?」
男「大丈夫!電車の乗り方はわかるし」
男「行き方は覚えてるし」
男「お金も、貯金箱にある!」
男「行こう!幼ちゃん!」
幼「…うん!」
・
・
・
婆さん「ごめんね、男ちゃん…」
男「おばあちゃんの嘘つき!」
男父「母ちゃん、電話くれてありがとう」
男父「まさかこいつがこんな事するなんて思ってなくて」
男父「警察に捜索願出す所だったんだ」
男父「さ、帰ろう。二人とも」
男父「幼ちゃん。お父さんとお母さんが待ってるよ」
男「父ちゃん!僕は帰らないよ!」
男父「男!いい加減にしないか!」
男「いやだっ!僕、幼ちゃんとお別れしたくないよっ!」
幼「…男くん。もういいよ…」
男「幼ちゃん?」
幼「やっぱり無理なんだよ…」
男「いやだーーー!」
幼「わ、わたしだっていやだよ!」
男・幼「うぅ…うわーーーーーん!」
男父「…困ったな」
男父「とりあえず、幼ちゃんのお父さんに電話しよう」
男・幼「うわーーーーん!」
・
・
男父「母ちゃん、あの二人今日ここに泊めてもらってもいいかな?」
婆さん「私は構わないけど…大丈夫なのかい?」
男父「あぁ。今、幼ちゃんのお父さんと電話で話した」
男父「小さい二人には辛い事だから、ちょこっとだけ時間を、な」
婆さん「二人、同じ部屋で良いよね?」
男父「あぁ、その方が良いかな。いっぱい話しをさせてやりたいし」
・
・
男父「あー、二人とも聞いてくれ」
男・幼「…」
男父「幼ちゃん、引越しの出発は明日にするそうだよ」
男父「とりあえず、二人は今日ここに泊まる事になった」
男「…」
幼「…すみません、おじさん」
男父「明日の朝には迎えに来るから、ちゃんと家に帰るんだぞ?」
男「いやだ…うぅ…」
男父「男、これ以上わがままを言うな」
男父「幼ちゃんが一番辛いんだぞ?」
男父「お前がそんなにメソメソしてどうする!」
幼「…」
男「…」
男父「今日は二人、同じ部屋で寝なさい」
幼「え?」
男父「二人でたくさん話しをすると良い」
男父「男、ちゃんと話しをするんだぞ?」
男「…うん」
・
・
幼「ねぇ、男くん」
男「なぁに?」
幼「わたしね、男くんの事が大好き!」
男「ぼ、僕も幼ちゃんの事が好きだよ!大好き!」
幼「明日でお別れだけど…だけどね…」
幼「大人になったら…」
幼「わたしの事、迎えに来てくれる?」
男「迎え?」
幼「結婚して…お父さんとお母さんみたいに…」
幼「いつまでも一緒に居てくれる?」
男「行くよ!僕、必ず幼ちゃんを迎えに行く!」
男「今は子供だから無理だけど…」
男「絶対、幼ちゃんを迎えに行くから!」
男「その時は…僕のお嫁さんになってくれる?」
幼「…うん!わたしを男くんのお嫁さんにして下さい!」
幼「約束だよ?」
男「うん!」
男「必ず…迎えに行くから!」
幼「じゃあ、約束ね…」
男「え?」
チュッ
男「!」
幼「私のファーストキス」
男「僕もファーストキスだけど…」
幼「忘れないでね?」
男「絶対に忘れない!」
幼「…」
男「…」
幼「…ね」
男「なあに?」
幼「男くんの布団に入ってもいい?」
男「…うん」
モゾモゾ
幼「手、繋いでいい?」
男「うん」
ギュッ
幼「あったかいね…」
男「うん…」
幼「…男くん、大好きだよ…」
男「僕も、幼ちゃんの事、大好きだよ…」
・
・
・
幼「なーんて事があったよね?」
男「んあー、照れくさい!懐かしい話しだな、おい」
幼「えへへー、照れてる照れてる」
幼「その顔が見たかった!」
男「…あの頃は若かったな」
幼「今だって若いじゃない。まだ18歳なんだから」
男「まぁ、若いっちゃ若いけどさー」
幼「あの時の男の行動力は、今考えても凄いよね」
男「子供2人で電車乗り継いで、婆ちゃんの家まで…か」
男「我ながら、怖いもの知らずだったなー」
幼「小4のちびっこが出来る事じゃないわよねぇ」
男「まさか、幼が3年でこっちに戻ってくるとは」
男「夢にも思ってなかったからさー」
男「必死だったんだよ」
幼「えへへ。お互い子供だったよねぇ」
男「ところで、何で今さらそんな話しをする?」
幼「いやぁ。今朝、夢で見ちゃってさー」
男「夢、ねぇ」
幼「あ、所でさ、男」
男「何だよ?」
幼「私ね…」
幼「今度引っ越す事に…」
男「…」
男「え?マジで?」
幼「マジです」
男「だ、だって…大学はどうするの?」
男「せっかく同じ大学に通う為に、必死に勉強してるのに」
幼「…」
男「それに、さっきの話しじゃないけどさ」
男「…や、約束は?」
幼「仕方ない事なんだよ、男…」
男「い、嫌だっ!」
幼「男…」
男「俺、幼の事…大好きなんだ!」
男「行かないでくれよ、幼!」
男「もう…あんな気持ちになるのは嫌だっ!」
男「どこかに引っ越すってんなら、俺もついてくぞ!」
男「ガキだったあの頃とは違うぞ?」
男「…幼が俺の事嫌いって言うなら…諦める、けど…」
男「でも、そうじゃないなら!」
幼「…嬉しいよ、男。決まってるじゃんか」
ギュッ
男「なっ?」
幼「ごめんね、試すような事言って」
幼「でもやっと男の気持ちが聞けた…」
幼「あの時、男のおばあちゃんの家でした約束」
幼「ちゃんと守ってくれるんだよね?」
男「もちろん守る気満々だ!」
幼「私がこの町に戻ってきてからさ」
幼「また仲良く遊ぶようになったけどさ…」
幼「男の口から『付き合おう』とか」
幼「『好きだ!』とか、聞けなかったからさ」
幼「私、不安だったんだー」
幼「それこそ、あの約束の事、忘れちゃってるんじゃないか…って」
男「俺はあの時の約束を、一瞬も忘れた事は無いぞ?」
男「…まぁ、照れくさくて、口には出さなかったけどさ」
幼「…ね、男もギュってして?」
男「おう」
ギュッ
幼「約束、ね?」
幼「ずっと一緒に、居てね?」
男「ずっと一緒に、居るぞ!」
男「だから、ついていくぞ?」
男「どこに引っ越すんだ?」
男「またおじさんの転勤か?」
幼「えへへ。実は引っ越すのは私だけなんだー」
男「は?」
幼「あの家から出ようと思ってるんだ、私」
男「え?どう言う事?」
男「出ようと思ってるって…決定じゃないの?」
幼「まだ住む場所、決めてないよ」
幼「今から探すんだから」
男「え?え?マジでどう言う事?」
幼「鈍感だなぁ、男は」
男「はぁ、まあ鈍感なのは自覚してるけどさ」
幼「一緒に住もうよ、私達」
男「は?」
幼「私達の実家からあの大学までって結構遠いじゃない?」
男「…まぁそこそこ遠いな」
幼「大学まで10駅なのが、2駅くらいになったらさ」
幼「一緒に居られる時間が増えるじゃない?」
男「…」
幼「…嫌なの?」
男「いやぁ、幼はやっぱ凄いなぁと思って」
幼「そう?」
男「俺に出来ない事を平然とやってのける」
男「そこにシビレる、アコガレるゥ!」
幼「意味わかんないけど、とにかくokって事でいいよね?」
男「おう!いいですとも!」
幼「じゃあ早速不動産屋へgo!」
男「え?今から!?」
幼「思い立ったが吉日って言うじゃん!」
幼「実はもう何件かアタリはつけてあるんだよね!」
男「今日のお出かけって、そう言う事なのな?」
幼「ソユコトー」
男「…やっぱ幼、凄いや」
・
・
・
男「幼、俺の番号あった?」
幼「あったよ。私のは?」
男「おう、ちゃんとあったぞ!」
幼「ふぅ…まぁ自信はあったけどさ」
男「何が起こるかわからない、それが野球だもんな?」
幼「野球関係ないでしょ」
男「いやぁ、それにしてもこれで肩の荷が一つ、おりたなー」
幼「そうだねー。とりあえず、一つだね」
男「アパート、押さえておいて良かったなー」
幼「だよねー。この大学まで徒歩5分だもんね」
男「バイトもこの近くで探そうぜ」
幼「そうだねー」
幼「んじゃ、このまま不動産屋に行って、本契約してこよう!」
男「だな。準備も出来てるし」
幼「…始まるね、いよいよ」
男「ん?」
幼「二人での生活」
男「そうだな」
幼「ね、ウチの両親も、男の両親も認めてくれてるしさ」
幼「もういっそ入籍とかしちゃう?」
男「んー。それはなー」
幼「嫌なの?」
男「俺がちゃんと社会人になってから、改めてプロポーズしたい」
幼「!」
男「それまで待っててくれよ、幼」
幼「…うん。待ってるよ、男」
幼「約束、ね?」
チュッ
おわり
短いけど、こでれ終わりです
誰か読んでくれたらうれしいです
次スレは
男「…」ナデナデ 幼馴染「んっ、男?」
ってタイトルで立てます
では。
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